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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122421
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】軌道パッド
(51)【国際特許分類】
   E01B 9/68 20060101AFI20220816BHJP
   E01B 9/44 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
E01B9/68
E01B9/44
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019642
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】597034059
【氏名又は名称】エスライト技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩一
(72)【発明者】
【氏名】玉井 翠
(72)【発明者】
【氏名】飯田 登
(72)【発明者】
【氏名】平山 智幸
(72)【発明者】
【氏名】平山 美里
【テーマコード(参考)】
2D056
【Fターム(参考)】
2D056AD01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】過大な位置ずれを阻止する軌道パッドを提供する。
【解決手段】平板状のパッド本体12と、レールの長さ方向におけるパッド本体の両端縁に連接された延長部14であって、レールに対する横断方向D2で延び下方に突出したリブ16を有する延長部14とを有する軌道パッド10において、リブ16の支持体の方向に向かう面が、支持体から離れるに従って次第に下方に傾斜する傾斜面16aとされており、レールにより軌道パッド10が引きずられたときに、リブ16が支持体とレールとの間に楔状に押し込まれる状態となることにより、レールからの引きずりに抗するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
まくらぎ、タイプレート等の支持体の上面に面するように設定されるパッド本体下面、レールの下面に面するように設定されるパッド本体上面を有する平板状のパッド本体と、
レールの長さ方向における該パッド本体の両端縁の少なくとも一方に連接された延長部であって、該レールに対する横断方向で延び下方に突出したリブを有する延長部と、
を有する軌道パッドであって、
該リブの該支持体の方向に向かう面が、該支持体から離れるに従って次第に下方に傾斜する傾斜面とされており、レールにより該軌道パッドが引きずられたときに、該リブが支持体とレールとの間に楔状に引き込まれる状態となることにより、レールからの引きずり力に抗するようにされていることを特徴とする軌道パッド。
【請求項2】
該延長部が、該パッド本体の該両端縁に連接するように一対設けられている請求項1に記載の軌道パッド。
【請求項3】
該延長部が、該レールに対する横断方向で延び上方に突出したリブを有する請求項1又は2に記載の軌道パッド。
【請求項4】
該上方に突出したリブの該パッド本体の方向に向かう面が、該パッド本体から離れるに従って次第に上方に傾斜する傾斜面を有する請求項3に記載の軌道パッド。
【請求項5】
該延長部が、該パッド本体下面から該パッド本体下面に対して面一で延びる延長部下面を有し、該下方に突出したリブの該傾斜面が、該延長部下面に連続して延びるようにされている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の軌道パッド。
【請求項6】
該下方に突出したリブの該傾斜面が、該延長部下面に接する湾曲面をなすよう下方に傾斜するようにされている請求項5に記載の軌道パッド。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の軌道において用いられる軌道パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道パッドは、ゴムや樹脂などの弾性材によって作られる平板上の部材であり、まくらぎやタイプレートなどのレール支持体とレールとの間に設置されて、主に車両通過時の支持体への衝撃を緩和するために用いられる。
【0003】
この軌道パッド上に支持されるレールは、例えば高温となる夏にはレールが伸長し、それに伴い軌道パッドが引きずられ、適正な設定位置からずれてしまい、場合によっては、まくらぎやタイプレートから外れてしまう場合も生じる。
【0004】
軌道パッドには、その上面にレールとの摩擦を低減するための軌道パッドと同じ幅の鋼板を張り付けたものがあり、この鋼板を当該軌道パッドのレール長手方向長さよりも長くしてそのレール方向両端を下方に折り曲げたり、該両端から左右方向に突出させたりして係止部を設け、当該軌道パッドに上述のようなレールからの引きずりによる位置ずれが生じたときに、この係止部が、まくらぎやタイプレートに係合することにより、当該軌道パッドの過剰な位置ずれを阻止するようにしたものがある(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
これに対して、そのような鋼板のない軌道パッドでも、当該軌道パッドのレール長手方向両端を延ばして、その下面に横断方向に延びるリブ(凸条部)を設けたものがある(特許文献3及び4)。特許文献3及び4では、その[意匠にかかる物品の説明]において、「本物品の左右両端の底面側に設けられた凸部がタイプレートの側面に掛かるので、レール上を列車が走行する際に進行方向へレールが滑ることがあっても、レールとともに本物品が滑ってタイプレートから脱落することを防ぐことができる。」としている。すなわち、この軌道パッドでは、軌道パッドの底面から直角に立ち上げた凸部(上述した「リブ(凸条部)」)をタイプレートの側面に係合させることにより当該軌道パッドの変位を阻止しようとするものである。しかし、この凸部は、ゴムや樹脂からなる平板上の軌道パッドと同じ材質のもので作られることを想定していると考えられる。したがって、上述のような夏の高温によるレールの伸長による引きずりに対して当該リブが十分抗し得るものとは考えにくい。しかも、当該リブは軌道パッドの底面から直角に立ち上げられたものとされている。このため、レールからの上述のような引きずりが生じてリブがまくらぎやタイプレートによって係止された場合、それらまくらぎやタイプレートから当該リブに作用する力により、軌道パッドの底面から直角に立ち上げられた部分に過大な応力集中を生じ、その部分に亀裂が生じ、リブが軌道パッドから破断されやすいと考えられる。本願出願人の関係会社である新日本エスライト工業でも、主にタイプレート上への設置工事を容易にする目的で同様のリブを設けた軌道パッドを製造販売しているが、実際に設置さているそのような軌道パッドにおいては、リブの直角の立ち上がり部分から亀裂が生じている事例が発生している。
【0006】
さらに、在来線で用いられるまくらぎではコンクリート製のものがあり、この場合のコンクリート製まくらぎは、レール長手方向の両側面が傾斜されて横断面台形とされているのが普通であり、軌道パッドをそのレール長手方向の両側部において横断面台形とされているまくらぎの傾斜側面に沿うよう折り曲げて傾斜側壁とした形のものがある。この傾斜側壁はまくらぎへの設置を容易にするためのものであり、傾斜側壁によって当該軌道パッドのレール方向での位置ずれを阻止しようとするものではないし、そのような機能を奏し得るようなものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-237802公報
【特許文献2】特開平11-323801公報
【特許文献3】意匠登録第1522469公報
【特許文献4】意匠登録第1522470公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ゴムや樹脂などの弾性材からなる軌道パッドにおいて、上述のごとくレールからの引きずりが生じた場合でも、亀裂などが生じるおそれが少なく且つまくらぎやタイプレートなどのレール支持体に対する軌道パッドの設置位置からの過剰なずれに対して有効な阻止作用を奏するリブを備えた軌道パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
まくらぎ、タイプレート等の支持体の上面に面するように設定されるパッド本体下面、レールの下面に面するように設定されるパッド本体上面を有する平板状のパッド本体と、
レールの長さ方向における該パッド本体の両端縁の少なくとも一方に連接された延長部であって、該レールに対する横断方向で延び下方に突出したリブを有する延長部と、
を有する軌道パッドであって、
該リブの該支持体の方向に向かう面が、該支持体から離れるに従って次第に下方に傾斜する傾斜面とされており、レールにより該軌道パッドが引きずられたときに、該リブが支持体とレールとの間に楔状に押し込まれる状態となることにより、レールからの引きずりに抗するようにされていることを特徴とする軌道パッドを提供する。
この軌道パッドでは、例えば夏の猛暑時にレールが伸長して当該軌道パッドが該レールからの引きずりを受けた場合、当該リブは支持体との間に楔状に押し込まれる状態となることによりレールからの引きずりに抗することを可能としている。これは特許文献3及び4において「凸部がタイプレートの側面に掛かるので、----タイプレートから脱落することを防ぐことができる」とする機能的原理とは異なるものである。しかも、特許文献3及び4における軌道パッドのように、リブ(凸部)の支持体に面する側面が軌道パッドに対して直角に立ち上げられたものとは異なり、本発明に係る軌道パッドにおけるリブの側面は、当該リブが支持体との間に楔状に押し込まれることを可能とする傾斜面を備えているものであり、上述のごときリブ側面の立ち上がり部分での亀裂も大幅に回避することが可能となる。
【0010】
この軌道パッドにおいては、
該延長部を、該パッド本体の該両端縁に連接するように一対設けられるようにすることができる。レールの伸縮による軌道パッドへのレール長手方向両方向での引きずりに対応できるようにするものである。
【0011】
また、該延長部が、レールに対する横断方向で延び上方に突出したリブを有するようにすることもできる。
レールの敷設においては、レールの高さを調整するための可変パッドが設けられる場合がある。この可変パッドは、通常は、軌道パッドの下に平たい袋を設置し、その中に硬化性の液状樹脂を充填して当該袋を膨らませ、軌道パッド上にあるレールの高さを調整するものであるが、高さの調整という点では、軌道パッドの上、すなわち軌道パッドとレールとの間に設置することも可能である、その場合、上方に突出したリブは、その可変パッドが軌道パッドに対してレール長手方向で変位するのを阻止する機能を奏し得る。
【0012】
さらに、
該上方に突出したリブの該パッド本体の方向に向かう面が、該パッド本体から離れるに従って次第に上方に傾斜する傾斜面を有するようにすることができる。
特許文献3、4について述べたように、リブをパッド本体に対して直角に立ち上げた場合には、リブの立上り部分に応力集中が生じやすくなることを考慮したものである。
【0013】
また、
該延長部が、該パッド本体下面から該パッド本体下面に対して面一で延びる延長部下面を有し、該下方に突出したリブの該傾斜面が、該延長部下面に連続して延びるようにすることができる。
レールの伸縮が一定以上になったときに、レールによる引きずりに対するリブによる抵抗を生じるようにするものである。
【0014】
この場合、
該下方に突出したリブの該傾斜面が、該延長部下面に接する湾曲面をなすように下方に傾斜するようにすることができる。
【0015】
以下、本発明に係る軌道パッドの実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の軌道パッドの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の軌道パッドをタイプレートとレールとの間に設置するようにした例を示している。
図3図2に示す軌道パッドの設置において、レール長手方向でのズレが生じていないときのタイプレートと、軌道パッドと、可変パッドとの位置関係を示す図である。
図4】レールが伸長することにより、図3の状態にあった軌道パッドのレール長手方向での引きずりが生じた状態を示す図である。
図5】本発明に係る軌道パッドの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の第1の実施形態に係る軌道パッド10を図1ないし図4に基づき説明する。この軌道パッド10は、樹脂やゴムなどの弾性材によって作られており、タイプレートTの上面に面するように設定されるパッド本体下面12a、レールRの下面に面するように設定されるパッド本体上面12bを有する平板状のパッド本体12と、レールRの長さ方向(図3で見て左右方向)D1におけるパッド本体12の両端縁に連接された延長部14、14であって、レールRに対する横断方向(図2で見て左右方向)D2に延び下方に突出したリブ16を備える延長部14、14とを有する。図示の例では、タイプレートTと軌道パッド10との間には段落[0011]で述べた可変パッドAが設けられており、図3に示すように、その両端縁には、この可変パッドAに充填された液体樹脂がタイプレートTと軌道パッド10との間で押圧されて両側に押し出され固化して形成されたリブAaが形成されている。可変パッドAは、このリブAaなどの作用によりタイプレートTに対するレール長手方向での動きが阻止されるが、時間の経過とともに、通過する車両からの衝撃により当該リブAaに破断が生じることなどによって、レール長手方向での位置ずれが生じるようになる。従って、可変パッドAは、タイプレートTに対するレール長手方向での動きの阻止作用が有効でタイプレートTとレール長手方向で一体化している状態では、上記の[課題を解決するための手段]や添付の[特許請求の範囲]で述べられている「支持体」の一部を構成するものとなる。
【0018】
図3にもっともよく示されるように、リブ16はそのタイプレートTの方向に向かう面が、該タイプレートTから離れるに従って次第に下方に傾斜する傾斜面16aとされている。この傾斜面16aは、例えばレールRが、図4に示す例のように、レール長手方向D1左方に伸長して当該軌道パッド10が同方向に引きずられた場合に、リブ16が可変パッドAとレールRとの間に楔状に押し込まれる状態となるようにする作用を有する。この状態で、レールが更に図4で見て左方に伸長し、軌道パッド10を更に引きずるような場合、この楔状とされるリブ16がその引きずりに抗する作用をなし、当該軌道パッド10が同方向へ過大にずれるのを阻止する作用をなす。前述の通り、可変パッドAは、リブAaの破断等によりタイプレートTに対するレール長手方向での動きを阻止する作用が低下して、軌道パッド10がレールRによってレール長手方向D1で引きずられた場合に、同軌道パッド10と共にレール長手方向D1で引きずられる場合が生じ得る。図示の軌道パッド10では、そのような場合には、リブ16がタイプレートTとレールRとの間に楔状に押し込まれ、レールRによる引きずりに抗する作用を生じ得るようにされている。
【0019】
図示の実施形態では、延長部14が、パッド本体上面12b及びパッド本体下面12aからそれぞれ面一で延びる延長部上面14b及び延長部下面14aを有し、リブ16の傾斜面16aは、延長部下面14aに接する湾曲面をなすよう下方に傾斜するようにされている。更にこの実施形態では、傾斜面16aの終端に近づいた位置で湾曲の向きが反転し、円弧状をなして延長部上面14bに続くようになっている。
【0020】
上述の実施形態では、可変パッドAを軌道パッド10とタイプレートTとの間に配置するものを示したが、可変パッドAは必ずしも用いる必要はなく、また、可変パッドAを軌道パッドの上に設定することもできる。そのような場合に用いるのに適した本発明に係る軌道パッド10の第2の実施形態を図5に示す。
【0021】
すなわち、この第2の実施形態では、パッド本体12、延長部14及び、下方に傾斜する傾斜面16aを備えるリブ16を有するという点では上述の実施形態のものと同じであるが、図で見て左右の延長部上面14bがそれぞれリブ16とほぼ同様の形状のリブ18を備えることを特徴としている。可変パッドAは、これら2つのリブ18の間においてパッド本体上面12bとレールRとの間に設置され、従って、当該軌道パッド10上に安定的に保持されることが可能となる。
【0022】
以上、本発明に係る軌道パッドの実施形態につき説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、延長部14はパッド本体12の一方の縁からだけ延出したものとすることができる。また、リブ16の傾斜面16aは湾曲したものではなく直線状のものとすることができる。また、延長部14、14がパッド本体12の両端縁のそれぞれ中央部分から延出した形状とされているが、これに限らず、例えばパッド本体12の両端縁の全長部分から、又は一方の側に寄った部分から延出した形状とすることができる。
【符号の説明】
【0023】
軌道パッド10;
パッド本体12;
パッド本体下面12a;
パッド本体上面12b;
延長部14;
延長部上面14b;
延長部下面14a;
リブ16;
傾斜面16a;
リブ18;
レールR;
タイプレートT;
レール長さ方向D1;
横断方向D2;
可変パッドA;
可変パッドのリブAa
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
まくらぎ、タイプレート等の支持体の上面に面するように設定されるパッド本体下面、レールの下面に面するように設定されるパッド本体上面を有する平板状のパッド本体と、
レールの長さ方向における該パッド本体の両端縁の少なくとも一方からレールの長さ方向に延長された延長部であって、該レールに対する横断方向で延び下方に突出したリブを有する延長部と、
を有する軌道パッドであり、レールにより該軌道パッドが引きずられて変位したときに、該リブの該支持体に向かう面が該支持体に係合することにより該軌道パッドの該変位を阻止するようにした軌道パッドであって
該リブの該支持体の方向に向かう該面が、該支持体から離れるに従って次第に下方に傾斜する傾斜面とされており、レールにより該軌道パッドが引きずられて変位したときに、該リブが支持体とレールとの間に楔状に引き込まれて該傾斜面が該支持体に係合することにより、当該軌道パッドの該変位を阻止する作用を奏するようにされていることを特徴とする軌道パッド。