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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122431
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】簡易構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
E04B1/343 R ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019655
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】利根川 勝
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 知朗
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多くの人が通行する通路を広く使用できる簡易構造物を提供する。
【解決手段】一の簡易構造物1aと、他の簡易構造物1bがあり、一の簡易構造物の長手方向端部側の側面側に他の簡易構造物の長手方向端部が対向して配置されており、簡易構造物は、支柱6と桁3と必要に応じて破風21を有し、支柱は、支柱取付金具61で桁を支えており、一の簡易構造物の長手方向端部側の支柱と他の簡易構造物の支柱が次の数式8を満たすよう設置され芯合わせされている簡易構造物。

【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の簡易構造物と、他の簡易構造物があり、
一の簡易構造物の長手方向端部側の側面側に他の簡易構造物の長手方向端部が対向して配置されており、
簡易構造物は、支柱と桁と必要に応じて破風を有し、
支柱は、支柱取付金具で桁を支えており、
一の簡易構造物の長手方向端部側の支柱と他の簡易構造物の支柱が次の数式を満たすよう設置され芯合わせされている簡易構造物。
【数8】
h:破風(屋根端部被覆材)の桁長手方向の寸法(厚さ)
β:破風(屋根端部被覆材)と桁の端面との間隔寸法
S1:支柱から第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の桁の端面までの寸法
Y:支柱の桁長手方向の寸法
γ:第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の長手方向端部と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面とのずれ寸法
X:支柱の桁幅方向の寸法
Z2:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面から支柱外側面までの間隔寸法
R:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面から屋根外側面までの屋根張り出し寸法
【請求項2】
一の簡易構造物と、他の簡易構造物があり、
一の簡易構造物の長手方向端部側の側面側に他の簡易構造物の長手方向端部が対向して配置されており、
簡易構造物は、支柱と桁と必要に応じて破風を有し、
支柱は、支柱取付金具で桁を支えており、
一の簡易構造物の長手方向端部側の支柱と他の簡易構造物の支柱が次の数式を満たすよう設置され芯合わせされている簡易構造物。
【数9】
h:破風(屋根端部被覆材)の桁長手方向の寸法(厚さ)
β:破風(屋根端部被覆材)と桁の端面との間隔寸法
S1:支柱から第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の桁の端面までの寸法
Y:支柱の桁長手方向の寸法
γ:第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の長手方向端部と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面とのずれ寸法
K:桁の幅寸法
Z1:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁内側面から支柱内側面までの間隔寸法
X:支柱の桁幅方向の寸法
R:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面から屋根外側面までの屋根張り出し寸法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路シェルターなどの簡易構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シェルター等の簡易構造物は、支柱が通路の幅方向両側に、この通路の長手方向に沿って複数立設し、通路の長手方向に沿う支柱間に架設された桁に屋根を支持したものが知られている。
【0003】
【非特許文献1】三協立山株式会社、「通路シェルター ブレラウェイS」、WEBサイト、https://alumi.st-grp.co.jp/products/public/shelter_passage/brellaway_s/plan.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のシェルターは、限られた面積の通路に設けられるものであるので、多くの人が通行する通路を広く使用できる簡易構造物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
一の簡易構造物と、他の簡易構造物があり、一の簡易構造物の長手方向端部側の側面側に他の簡易構造物の長手方向端部が対向して配置されており、簡易構造物は、支柱と桁と必要に応じて破風を有し、支柱は、支柱取付金具で桁を支えており、一の簡易構造物の長手方向端部側の支柱と他の簡易構造物の支柱が次の数式を満たすよう設置され芯合わせされている簡易構造物
【数8】
h:破風(屋根端部被覆材)の桁長手方向の寸法(厚さ)
β:破風(屋根端部被覆材)と桁の端面との間隔寸法
S1:支柱から第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の桁の端面までの寸法
Y:支柱の桁長手方向の寸法
γ:第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の長手方向端部と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面とのずれ寸法
X:支柱の桁幅方向の寸法
Z2:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面から支柱外側面までの間隔寸法
R:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面から屋根外側面までの屋根張り出し寸法
【0006】
また、別態様として、以下の構成を具備することで課題を解決した。
一の簡易構造物と、他の簡易構造物があり、一の簡易構造物の長手方向端部側の側面側に他の簡易構造物の長手方向端部が対向して配置されており、簡易構造物は、支柱と桁と必要に応じて破風を有し、支柱は、支柱取付金具で桁を支えており、一の簡易構造物の長手方向端部側の支柱と他の簡易構造物の支柱が次の数式を満たすよう設置され芯合わせされている簡易構造物。
【数9】
h:破風(屋根端部被覆材)の桁長手方向の寸法(厚さ)
β:破風(屋根端部被覆材)と桁の端面との間隔寸法
S1:支柱から第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の桁の端面までの寸法
Y:支柱の桁長手方向の寸法
γ:第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の長手方向端部と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面とのずれ寸法
K:桁の幅寸法
Z1:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁内側面から支柱内側面までの間隔寸法
X:支柱の桁幅方向の寸法
R:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面から屋根外側面までの屋根張り出し寸法
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上の構成により、多くの人が通行する通路を広く使用できる簡易構造物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】直角に曲がった通路を覆う2つのフラットシェルターの配置説明図。(A)平面図。(B)正面図。
図2】支柱の芯合わせ説明図。(A)矩形の支柱。(B)楕円形の支柱。(C)T形の支柱。(D)ひしゃげたH形の支柱。
図3】フラットシェルター(簡易構造物)の直交配置部分の説明図。
図4】フラットシェルター(簡易構造物)の直交配置部分の拡大図。(A)図3に付した楕円の領域の拡大図。(B)図4(A)に付した矩形の領域の拡大図。
図5図5は、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の支柱位置調整の説明図。
図6】屋根が桁より側方に張り出しているフラットシェルターの説明図。(A)要部の平面図。(B)図6(A)のA-A間の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
実施形態1は、一対の桁3間に屋根4が丁度収まっており、桁3の側面と屋根4の側面が同面となっている例である。
【0010】
図1は、直角に曲がった通路を覆う2つのフラットシェルター(簡易構造物)1の配置説明図である。図3より、各々のフラットシェルター(簡易構造物)1は、同じ構造、同じ部品が採用されており、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11側の側面12側に第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの長手方向端部11が対向して配置されることで、直角に曲がった通路を覆っている。
フラットシェルター(簡易構造物)1は、一対の桁3を有しており、各々の桁3は下面から支柱6で支えられている。また、一対の桁3の間には多数の垂木5が取り付けられている。隣接する垂木5の間には、中央が桁3の長手方向に沿って凸に湾曲した屋根4が取り付けられており、フラットシェルター(簡易構造物)1の上面を覆っている。一対の桁3の両端面34に沿って、妻垂木51が設けられている。さらに、妻垂木51と屋根端部41と一対の桁3とを覆い隠す破風(屋根端部被覆材)21が取り付けられ、内部構造が見えないように美観を高めている。
図1(A)で示された第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aと第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁3を支える多数の支柱6は、それぞれのフラットシェルター1ごとに一直線に並ぶように、芯合わせされている。
また、直角に曲がった通路の部分では、矢印で示した方向から見ると、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの支柱6と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの支柱6が一直線に並ぶようになっている。異なるフラットシェルター(簡易構造物)1間の支柱6間でも芯合わせがなされて、支柱6の並びの統一感を高めている。
【0011】
(支柱の桁の長手方向の寸法Xと桁の幅方向の寸法Yの定義)
フラットシェルター(簡易構造物)1は、意匠的な観点を重視するため、これまでも様々な形状の支柱6が用いられてきた。図2は支柱6の芯合わせ説明図であり、図2(A)は一般的な矩形の支柱6の例である。フラットシェルター(簡易構造物)1の桁3の下面には、支柱6が支柱取付金具61で取り付けられ、フラットシェルター(簡易構造物)1を支えている。様々な形状の支柱6が存在する中で、桁3に支柱6を設置した状態で、桁外側面33に最も近い支柱6の面から、桁内側面32に最も近い支柱6の面との桁幅方向の寸法をXとする。また、桁3に支柱6を設置した状態で、桁3の一の端面34に最も近い支柱6の面から、桁3の他の端面34に最も近い支柱6の面との桁長手方向の寸法をYとする。(なお、「一の」「他の」は、どちらか一方を「一の」としたとき、他方が「他の」となる意味であって、桁3の端部34のどちらを「一の」としてもよいことは言うまでもない。)
図2(B)は、楕円形の支柱6の例であり、この例では楕円形の短軸がXとなり、楕円の長軸がYとなる。
図2(C)はT字形の支柱6である。桁3に支柱6を設置した状態で、桁3の長手方向の寸法がXとなることが看て取れる。Yもこれまで述べた定義通りである。
図2(D)はひしゃげたH形状の支柱6であり、右と左がずれたH形状の形状をしている。桁3に支柱6を設置した状態で、桁3の一の端面34に最も近い支柱6の面から、桁3の他の端面34に最も近い支柱の面との桁長手方向の寸法をYとの定義に従うYを図示している。
S1は、桁3の端面34から最も近い支柱6の面までの距離を表している。
【0012】
(支柱位置合わせ軸)
図2より、フラットシェルター(簡易構造物)1における、芯合わせ軸Aとは、桁3の長手方向に延びる軸であって、桁3に支柱6を設置した状態で、支柱6の1/2*Xを通る軸をいう。桁3の長手方向に多数直列にフラットシェルター(簡易構造物)1が直線的に並ぶ場合は、この芯合わせ軸Aに沿って多数の支柱6を桁3に取り付けることで、支柱6の芯合わせが完了する。
【0013】
(直交配置)
直角に曲がった通路では、図3より、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aと、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bがあり、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11側の側面12側に第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの長手方向端部11が対向して配置されている。この配置を「直交配置」という。
【0014】
(芯合わせ)
図3は、フラットシェルター(簡易構造物)1の直交配置部分の説明図である。
第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの左右一対の桁3に取り付けられた支柱6は、一点鎖線で示された第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの芯合わせ軸Aで芯合わせされている。また、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの一対の桁3に取り付けられた支柱6は、二点鎖線で示された第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aで芯合わせされている。
【0015】
(直交配置の芯合わせ)
図3、4を参照されたい。直交配置する場合、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11側の支柱6と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bが芯合わせされているとは、図示されているように第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aの延長線が、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11側の支柱6の、桁幅方向の寸法Yの真ん中(1/2*Yとなる位置)を通過することを意味する。以下、「直交配置の芯合わせ」という。
【0016】
支柱6は桁3の長手方向に自由に動かせるから、直交配置の芯合わせを行うことは、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11側の支柱6の位置を桁3の端面34に近づけて調整するだけで、簡単に出来るようにみえる。しかし、図4(A)に図示するように、桁3の端面34の近くには、桁3の端面34を含め屋根端部41全体を覆い隠す破風(屋根端部被覆材)21が設けられることがある。また、支柱取付金具61を取り付ける場所を確保しなくてはならず、直交配置の芯合わせをするため支柱6を桁3の端面34方向に動かすことができないなど数々の制約があり思うように支柱6を動かすことができない。
【0017】
そのため、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの支柱6をすべて立設し、最後に、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11側の支柱6をその場で直交配置の芯合わせをしようと試みても、芯合わせできる位置に支柱6を立てることができないことが起き得る。また、直交配置の芯合わせには、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aの延長線が関与するから、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aの位置も考慮しなくてはならず、直交配置の芯合わせをすることを前提に、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aが決められていなければならない。このように、直交配置の芯合わせは、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aと第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの総合的な部材の位置関係を整理しないとできない。
【0018】
(芯合わせ軸)
これまで、直交配置の芯合わせが行われてこなかった理由として、前述した総合的な部材の関係を整理することが難しかったことに加え、様々な形状の支柱6があり、様々なタイプのフラットシェルター1が開発されてきた中で、どういう状態が芯合わせであるかという定義自体が存在しなかったことを挙げることができる。
本発明の実施形態では、前述の如く直交配置の芯合わせを定義し、それを実現する関係数式を導き出すことで課題の解決を目指す。
【0019】
(直交配置の芯合わせを可能とする条件)
図4(A)は図3に付した楕円の領域の拡大図であり、図4(B)は図4(A)に付した矩形の領域の拡大図である。
図4(A)を参照されたい、前述したように直交配置の芯合わせをするとは、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸A(二点鎖線)の延長線が、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11側の支柱6の桁長手方向の寸法Yの真ん中(1/2*Yとなる位置)を通ることである。
以下、「第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aの延長線」を単に「延長線」という。
【0020】
そこで、直交配置の芯合わせを可能とする条件を数式(等式)として求める。
前述したように、実施形態1は、一対の桁3の間に屋根4が丁度収まっており、桁3の側面と屋根4の側面が同面となっている例である。フラットシェルター1の最も外側に位置するのは、桁外側面33(屋根4の外側面43)である。
【0021】
(基準)
延長線の位置が直交芯合わせの基礎となるから、この位置を何らかの基準から求める必要がある。
直交配置の芯合わせに必要となる基準は、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aの位置の特定に使われる。そして基準は、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aを通る、延長線の位置を特定するのにも使われる。
すなわち、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの支柱6は、基準から寸法○○mmに位置し、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの支柱6は基準から××mmに位置するなど、共通の基準からの寸法として決めることができるものでなくてはならない。
【0022】
そのためには、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aと平行になる線や面でなくてはならない。また、分かりやすいものであることが好ましい。
基準として適するもの一例として、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの最も外側に位置し、直交配置時に第1フラットシェルター(一の簡易構造物)とも外観を揃えるために使われる第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33(屋根4の外側面43)を挙げることができる。そこで、実施形態では、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aと平行になるという条件を満たす第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33を基準とする。
【0023】
(等式)
第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aの位置は、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33を基準とし、そこからの寸法(図4(A)のA2参照)として計算すればよいこととなる。この寸法を下記の式[数1]の右辺A2とする。
【0024】
第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの支柱6の位置は、右辺と同様に、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33を基準として、延長線までの寸法、すなわち、当該桁外側面33から第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの支柱6の桁長手方向の寸法Yの真ん中(1/2*Yとなる位置)までの寸法(図4(A)のA1参照)を計算すればよい。この寸法を下記の式[数1]の左辺A1とする。
直交配置の芯合わせを可能とする条件は、次の[数1]が成立することである。
【数1】
【0025】
前述の定義に従えば、
[第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの芯合わせ軸Aの位置]=[第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの支柱6]の[桁幅方向の寸法の真ん中(1/2*Xとなる位置)]

延長線の位置=[第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの直交配置の芯合わせを行おうとする支柱6]の[桁長手方向の寸法Yの真ん中(1/2*Yとなる位置)]
であり、
基準は、[第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33]の位置であるから、A1とA2を求めるには、図4(A)で示したA1とA2を言葉で表現した通り、次の寸法を導けばよい。
A1:[第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33]から、[第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの直交配置の芯合わせを行おうとする支柱6]の[桁長手方向の寸法Yの真ん中(1/2*Yとなる位置)]までの寸法
A2:[第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33]から、[第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの支柱6]の[桁幅方向の寸法の真ん中(1/2*Xとなる位置)]までの寸法
そこで、等式の左辺A1と右辺A2を導き出し、等式の完成を目指す。
【0026】
(左辺)
左辺A1を求めるには、図4(A)に図示したA1に含まれる様々な寸法要素を積算すればよい。
左辺A1を計算するに当たり、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aで最も端になるのが、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11(図3(A)・図3(B)参照)である。当該長手方向端部11と基準[第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33]とは、γのずれ寸法がある。
ここで、γを以下のように定義する。
γ(ずれ寸法):第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33とのずれ寸法。
以下、γをずれ寸法という。
【0027】
長手方向端部11には、破風(屋根端部被覆材)21が設けられており、桁3や屋根端部41を隠し、美観を高めている。破風(屋根端部被覆材)21の前面が第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11となっているので、ずれ寸法γに加えて、破風(屋根端部被覆材)21の前面を起点として延長線までの寸法を求めれば、左辺A1が求まる。
【0028】
まず、破風(屋根端部被覆材)21の厚さを
h:破風(屋根端部被覆材)21の桁長手方向の寸法(厚さ)
と定義し、式に繰り込む。
なお、屋根端部被覆材2の例として破風21を示したが、フラットシェルター(簡易構造物)1の長手方向端部11の最端部が破風(屋根端部被覆材)21でなくともよい。屋根端部被覆材2となり得るものを含み得る。前述の説明で「破風(屋根端部被覆材)21の前面が第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11となっている」と前提を置いたのは、破風21よりも外側に何も部材が存在せず、破風21が、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11となっていることを明らかにするためである。
仮に、破風(屋根端部被覆材)21より外側にさらに何らかの屋根端部被覆材2が存在し、その部材の前面がフラットシェルター(簡易構造物)1の長手方向端部11となっている場合は、破風21の厚さと何らかの屋根端部被覆材2の厚さの合計が、hとなる。
【0029】
(第1フラットシェルターの長手方向端部から桁の端面までの寸法)
第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11と桁3の端面34との寸法を求める。実施形態の場合、直交配置の芯合わせを可能とするために、支柱取付金具61の一部が桁3の端面34から飛び出してしまっている。支柱取付金具61の桁3の端面34から飛び出し寸法をS2とする。また、支柱取付金具61の一部が桁3の端面34から飛び出しているため、直接破風(屋根端部被覆材)21を桁3の端面34に接触させることができない。うまく収めるために、破風(屋根端部被覆材)21と桁3の端面34の間に隙間、すなわち、チリ寸法βが設けられる。飛び出し寸法S2やチリ寸法βは、必ず設けられるものではなく、共に0mmとなることもある。逆に、図示していないが、桁3の端面34に桁小口キャップ(図示せず)があるため、チリ寸法βが、大きく設けられることもある。
チリ寸法βは、次のように定義される。
β(チリ寸法):破風(屋根端部被覆材)21と桁3の端面34の間の隙間寸法
【0030】
以上のように、破風(屋根端部被覆材)21と桁3の端面34の間には、様々な状況が考えられる。実施形態では、計算をするに当たり、破風(屋根端部被覆材)21と桁3の端面34の間隔をチリ寸法β(0mm≦βとなり得る)として考慮することとした。
他方、それぞれの状況を細かく考え、図4(B)のように、「支柱取付金具61の一部が桁3の端面34から飛び出している飛び出し寸法S2」を求め、「支柱取付金具の先端から破風(屋根端部被覆材)21までの寸法S3」を求めることもできるが、結局、β=S2+S3となるから、チリ寸法βを別の等価式として表しただけとなる。チリ寸法β、すなわち破風(屋根端部被覆材)21と桁3の端面34の間隔として整理してしまえば、破風(屋根端部被覆材)21と桁3の端面34に何らかの部材が存在するとしてもそれぞれの状況を細かく分析し計算しなくともよくなる。
ただし、本発明には、上述のS2やS3を考慮した式を組み立てるように、チリ寸法βに含まれるあらゆる要素について積算した等価式も含まれることは言うまでもない。
結局、(第1フラットシェルターの長手方向端部11から桁3の端面34までの寸法)=[破風(屋根端部被覆材)21の桁長手方向の寸法(厚さ)h]+[チリ寸法β]=h+βとして計算される。
【0031】
(基準から第2フラットシェルターの芯合わせ軸までの寸法)
図4(A)のように、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11側の支柱6から桁3の端面34までの寸法S1を求める。次いで、支柱6の桁長手方向の寸法Yの1/2、即ち、1/2*Yを前記寸法S1に加えたものが、第1フラットシェルターの桁3の端面34から、[支柱の桁長手方向の寸法Yの真ん中(1/2*Yとなる位置)]までの寸法となる。
つまり、
γ(ずれ寸法):第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33とのずれ寸法
h:破風(屋根端部被覆材)の桁長手方向の寸法(厚さ)
β:(チリ寸法):破風(屋根端部被覆材)21と桁3の端面34との間隔寸法
S1:支柱6から第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの桁3の端面34までの寸法
Y:支柱6の桁長手方向の寸法
と置いたとき
【数2】
が、求めようとする左辺A1となる。
【0032】
(右辺)
図4(A)を参照されたい。実施形態では、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33を、基準としたため、右辺A2は、[第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33]から[芯合わせ軸A]までの寸法となる。
【0033】
A2:右辺
X:支柱の桁幅方向の寸法
Z1:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁内側面32から支柱内側面62までの間隔寸法
Z2:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33から支柱外側面63までの間隔寸法
K:桁3の幅寸法
と置いたとき、
【数3】
と記述することができる。
【0034】
また[数3]の等価の式として、
【数4】
も本発明に含まれる。
【0035】
以上のように導いた、左辺と右辺を等式として結び整理すると、
【数5】
または、
【数6】
が成立する時、直交配置の芯合わせができることとなる。
【0036】
実際に、フラットシェルター1を設置する場合、例えば、次のような手順で等式を成立させることができる。
フラットシェルター1の設置者は、まず、フラットシェルター1の設置するに当たり、数ある部品のバリエーションの中から支柱6と桁3、必要に応じて破風21を選択する。これを決めることにより、支柱6に関連するパラメータXとYが定まり、桁3に関連するパラメータKと破風21に関するパラメータhが定まる。
γ(ずれ寸法)とβ(チリ寸法)を決め、パラメータZ1またはZ2を等式が成立するように調整すればよい。
場合によっては、選んだ部品が適切でなかったため、部品に関するパラメータを入力すると、桁3に対して支柱6の位置を決めるパラメータS1、Z1、Z2をどのように調整しても等式が成立しないことがある。このような場合は、部品の選択を変える必要がある。
【0037】
(第1フラットシェルターの支柱位置調整)
図5は、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの支柱位置調整の説明図である。図5を観ても分かるように、延長線は、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの桁幅方向に延びており、上記[数5]の式を満たしたまま第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの支柱6を桁3の内側や外側に向けて動かすことができる。第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁内側面32から支柱内側面62までの間隔寸法Z1と、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの桁内側面32から支柱6までの間隔寸法z1を等しくするという条件を更に追加することができる。
第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの桁外側面33から支柱6外面の間隔寸法z2も同様にZ2が等しい位置まで支柱6を動かすことができる。
【数7】
[数5]に対しては(数7の2)を、[数6]に対しては(数7の1)を満足するという条件を追加すれば、桁3の幅方向に対する支柱位置合わせ軸の位置が、両フラットシェルター1ともに同じ位置となり、さらに意匠的に優れた支柱6の配置となり好ましい。
【0038】
(様々な変形例)
ずれ寸法γは、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面33とのずれ寸法と定義したが、γがマイナスになることがあり得る。その場合、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11が第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33より飛び出ている場合である。その場合、γ=-10mmなどとして計算されることとなる。
また、破風21を設けない場合、桁3の端面34に取り付けられた桁小口キャップ(図示せず)が第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11になり、屋根端部被覆材2となる。この場合、桁小口キャップの桁長手方向の飛び出し寸法をhとして考慮する必要がある。ただし、桁小口キャップは、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aの長手方向端部11の全体を覆うわけではないので、屋根端部被覆材2に含めずh=0として計算することもあり得る。屋根端部被覆材2の定義をどのように置くかは、設置者に任される。
さらに、チリ寸法β(破風(屋根端部被覆材)21と桁3の端面34の間の隙間寸法)は、状況に応じて設けられるものであるのでβ=0となることもあり得る。
【0039】
以上の図1図5の例は、桁3の側面と屋根4の側面が同面となっている例であった。図6は、屋根4が桁3より側方に張り出しているフラットシェルター1の説明図(実施形態2)である。このような場合、幅方向で最も外側にある構造物が、屋根外側面43になり、右辺の補正が必要となる。
【0040】
(右辺の補正)
屋根外側面43と屋根内側面42は、桁外側面33よりも外側にある。[数5]、[数6]は、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面33が第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bで最も外側に位置しているという前提で導いた式であった。そこで、屋根4が桁3より側方に張り出しているフラットシェルター1の場合には、直交配置の芯合わせをする際、補正が必要となる。

R(屋根張り出し寸法):第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bの桁外側面から屋根外側面までの屋根張り出し寸法
を右辺に加えることで式を補正できる。
【0041】
【数8】
【0042】
【数9】
【0043】
当然のことながら、R(張り出し寸法)が無い場合は、R=0となり、[数8]と[数5]は同じ式となる。同様に、[数9]は、[数6]と同じ式となる。
【0044】
本発明は、直交配置の支柱6の芯合わせを可能にするものである。支柱6が揃っていないと、第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aと第2フラットシェルター1bとの接続部において、支柱6の並びが変わり、通路の幅が急に狭くなるなどする。特に多くの歩行者が通路幅いっぱいに行き交う場合、直交配置部分で支柱6が障害となって通行を妨げることもあった。前述の本発明の実施形態では、直交配置の支柱6の芯合わせがなされているため、支柱6の位置が通路内側に変化することはなく、多くの人が通行する通路幅を最大限に有効利用することができる。また、フラットシェルター(簡易構造物)1に入ろうとする歩行者が、支柱6の並びに目を向けることはよくあることである。前述の本発明の実施形態では、支柱6の並びが第1フラットシェルター(一の簡易構造物)1aと第2フラットシェルター1b間でずれることが無く、フラットシェルター(簡易構造物)1の意匠性を高めることに寄与する。
【0045】
以上のように、本発明は、これまでなされてこなかった直交配置の支柱6の芯合わせを部材間の関係を整理することで、芯合わせをできるようにしたものである。また、それを実現するために必要な数式を[数8]及び[数9]として示した。また、本発明の基本となるのは、基準を決めて、直交配置の芯合わせしようとする支柱6の位置を特定することにある。基準は、第2フラットシェルター(他の簡易構造物)1bと平行な線や面であればよく、実施形態と異なるものを基準とした場合は、その等価式も本発明に含まれる。
フラットシェルター1の長手方向端部11や側面12に前述した部材以外の何らかの部材が取り付けられるようになっても、補正式を構築できる限りは、本発明の均等物といえる。
以上のように、上記実施形態では、[数8]及び[数9]と等価となり得るパラメータや数式を数々説明してきた。[数8]及び[数9]と実質的に等価な簡易構造物もすべて本発明に包含される。
【0046】
本発明に係る実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 フラットシェルター(簡易構造物)
1a 第1フラットシェルター(一の簡易構造物)
1b 第2フラットシェルター(他の簡易構造物)
11 長手方向端部
12 側面
2 屋根端部被覆材
21 破風
3 桁
32 桁内側面
33 桁外側面
34 端面
4 屋根
41 屋根端部
42 屋根内側面
43 屋根外側面
5 垂木
51 妻垂木
6 支柱
61 支柱取付金具
62 支柱内側面
63 支柱外側面
A 芯合わせ軸
h:破風(屋根端部被覆材)の桁長手方向の寸法(厚さ)
K:桁の幅寸法
R(屋根張り出し寸法):第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面から屋根外側面までの屋根張り出し寸法
S1:支柱から第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の桁の端面までの寸法
S2:第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の支柱取付金具の、桁の端面から飛び出し寸法
S3:支柱取付金具の先端から破風までの寸法
Z1:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁内側面から支柱内側面までの間隔寸法
Z2:第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面から支柱外側面までの間隔寸法
β(チリ寸法):破風(屋根端部被覆材)と桁の端面との間隔寸法
γ(ずれ寸法):第1フラットシェルター(一の簡易構造物)の端面と第2フラットシェルター(他の簡易構造物)の桁外側面とのずれ寸法
X:支柱の桁幅方向の寸法
Y:支柱の桁長手方向の寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6