(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122435
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20220816BHJP
B60P 3/00 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
B25J5/00 A
B60P3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019664
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今岡 紀章
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS34
3C707CS08
3C707WA16
3C707WM22
(57)【要約】
【課題】物体が搭載される場合の脚部の負荷を抑制し、かつ、物体の搭載を容易にすることができるロボットを提供すること。
【解決手段】本体部と、本体部に接続されている一対の脚部とを備え、本体部の姿勢を安定させるモードである搭載モードを含むモード群の中から選択されたモードで動作するロボットであって、一対の脚部は、それぞれ、上側脚部材、下側脚部材、本体部と上側脚部材とを接続する第1の関節部、および、上側脚部材と下側脚部材とを接続する第2の関節部と、を有し、搭載モードが選択されると、第1の関節部は、第2の関節部が第1の関節部より前方、かつ、第1の関節部より本体部の幅方向外側に位置するように、上側脚部材を本体部に対して回転させ、第2の関節部は、本体部の位置が下がるように、下側脚部材を上側脚部材に対して回転させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部に接続されている一対の脚部とを備え、前記本体部の姿勢を安定させるモードである搭載モードを含むモード群の中から選択されたモードで動作するロボットであって、
前記一対の脚部は、それぞれ、上側脚部材、下側脚部材、前記本体部と前記上側脚部材とを接続する第1の関節部、および、前記上側脚部材と前記下側脚部材とを接続する第2の関節部と、を有し、
前記搭載モードが選択されると、前記第1の関節部は、前記第2の関節部が前記第1の関節部より前方、かつ、前記第1の関節部より前記本体部の幅方向外側に位置するように、前記上側脚部材を前記本体部に対して回転させ、前記第2の関節部は、前記本体部の位置が下がるように、前記下側脚部材を前記上側脚部材に対して回転させる、
ロボット。
【請求項2】
前記搭載モードにおいて、前記本体部の幅方向における前記第2の関節部同士の距離は、前記本体部の幅方向の長さよりも大きい、
請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記搭載モードにおいて、前記本体部の幅方向における前記下側脚部材同士の距離は、前記本体部の幅方向の長さよりも大きい、
請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記一対の脚部は、それぞれ、足部材、前記足部材と前記下側脚部材とを接続する第3の関節部、および、前記足部材に取り付けられている車輪をさらに有し、
前記搭載モードから前記ロボットが移動するときのモードである移動モードに移行する移行モードにおいて、前記一対の脚部は、前記一対の脚部が伸長するように、かつ、前記車輪が回転することで前記足部材が支持面に沿って前記本体部の幅方向内側に向けて移動するように動作する、
請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記移行モードにおいて、前記一対の脚部は、前記一対の脚部の前記第3の関節部の軌跡がそれぞれ平面視において2つの円弧を有するように、かつ、前記移動モードへの移行が完了したときに前記車輪が前記ロボットの進行方向に向くように動作する、
請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記移行モードにおいて、前記一対の脚部は、前記第3の関節部が前記軌跡の前記2つの円弧上にあるとき、前記車輪が前記支持面に対して傾斜した状態となるように動作する、
請求項5に記載のロボット。
【請求項7】
本体部と、膝関節を有し前記本体部に股関節を介して接続された一対の脚部とを備え、
前記本体部に物体が搭載される際、前記膝関節が前記股関節よりも前方かつ前記股関節よりも前記本体部の幅方向外側に位置するように、前記一対の脚部が前記本体部に対して回転し、前記本体部の位置が下がるように、前記一対の脚部の膝関節が屈曲する、
ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている搭乗型ロボットは、搭乗者が座る座席と一対の脚リンクを備えている。特許文献1のロボットは、人が搭乗するために座席を下げる場合、搭乗の妨げにならないように、膝関節を後方に移動させるように一対の脚リンクを屈曲させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のロボットは、足首関節から足首関節の前方にある足先までの長さが比較的長く、かつ、ロボットの重心が足首関節より前方に位置するように構成されている。また、特許文献1のロボットは、上記のように、搭乗者が搭乗する場合、膝関節は、後方に移動するため、重心から離れる。よって、特許文献1のロボットにおいては、一対の脚リンクへの負荷、ひいては、一対の脚リンクを屈曲させるためのトルクが比較的大きくなる。また、一対の脚リンクが屈曲する方向によっては、一対の脚リンクが搭乗者の搭乗の妨げになる場合がある。また、座席が十分に下がっていない場合、搭乗者のロボットへの搭乗が困難になる。
【0005】
本開示は、物体が搭載される場合の脚部の負荷を抑制し、かつ、物体の搭載を容易にすることができるロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のロボットは、本体部と、本体部に接続されている一対の脚部とを備え、本体部の姿勢を安定させるモードである搭載モードを含むモード群の中から選択されたモードで動作するロボットであって、一対の脚部は、それぞれ、上側脚部材、下側脚部材、本体部と上側脚部材とを接続する第1の関節部、および、上側脚部材と下側脚部材とを接続する第2の関節部と、を有し、搭載モードが選択されると、第1の関節部は、第2の関節部が第1の関節部より前方、かつ、第1の関節部より本体部の幅方向外側に位置するように、上側脚部材を本体部に対して回転させ、第2の関節部は、本体部の位置が下がるように、下側脚部材を上側脚部材に対して回転させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示のロボットによれば、物体が搭載される場合の脚部の負荷を抑制し、かつ、物体の搭載を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係るロボットの概要図であり、移動モードにおけるロボットの移動基本姿勢を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るロボットの概要図であり、搭載モードにおけるロボットの搭載姿勢を示す図である。
【
図7】搭載モードから移動モードに移行する移行モードにおける第3の関節部の軌跡を示す図である。
【
図8】搭載モードから移動モードに移行する移行モードにおける第3の関節部の軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態におけるロボット1について、図面を参照しながら説明する。以下では、ロボット1が載っている面に近づく方向を下方、当該面から離れる方向を上方、ロボット1が前進移動する際に向かう方向を前方、その逆方向を後方、前方を向くロボット1から左に向かう方向および右に向かう方向を左方および右方とする。
図1においては、上側および下側がそれぞれロボット1の上方および下方であり、左側および右側がロボット1の前方および後方であり、紙面手間側および奥側がロボット1の左方および右方に相当する。
【0010】
ロボット1は、人および物品等の物体を搭載して移動する搭載型ロボットである。
図1には、支持面Sに載っているロボット1が示されている。支持面Sは、地面および床面などである。また、
図1から
図3に示されているロボット1は、後述する移動モードにおける移動基本姿勢をとっている。
【0011】
ロボット1は、
図1から
図6に示されるように、本体部10および一対の脚部20を備えている。本体部10は、搭載部11および接続部12を備えている。
【0012】
搭載部11は、物体を搭載可能に設けられている。搭載部11は、人Mがロボット1の前方を向いて腰かけられるように設けられている。
【0013】
接続部12は、搭載部11の底面に固定されている。接続部12には、一対の脚部20が接続されている。
【0014】
一対の脚部20は、それぞれ、接続部12の左右両側に接続されている。一対の脚部20は、本体部10を移動させるように動作する。すなわち、ロボット1は、二足歩行によって移動可能に構成されている。一対の脚部20は、互いに同様に構成されている。以下、1つの脚部20についてのみ説明する。
【0015】
脚部20は、上側脚部材21、下側脚部材22、および、足部材23をそれぞれ1つ備えている。また、脚部20は、第1から第3の関節部J1,J2,J3を備えている。
【0016】
第1の関節部J1は、接続部12と上側脚部材21の第1端部とを相対回転させるように接続する。移動基本姿勢において、第1の関節部J1は、上方から下方に向かうにしたがって後方から前方に向かうように上側脚部材21を傾斜させる。
【0017】
第1の関節部J1は、第1の回転中心RC1にて互いに交差する3つの軸線周りに、接続部12と上側脚部材21とを相対回転させるように動作する。これらの3つの軸線は、第1のω軸線ω1、φ軸線φ1および第1のψ軸線ψ1である。第1のω軸線ω1は、第1の回転中心RC1を通り、上側脚部材21の延びる方向に沿って延びる軸線Aを、第1の回転中心RC1が位置する仮想の水平面に投影させた軸線である。移動基本姿勢において、第1のω軸線ω1は、前後方向に沿って延びている。
【0018】
φ軸線φ1は、上下方向に沿って延びる軸線である。第1のψ軸線ψ1は、第1のω軸線ω1およびφ軸線φ1に直交する軸線である。つまり、移動基本姿勢において、第1のψ軸線ψ1は、左右方向に沿って延びている。第1の関節部J1は、人の股関節に相当する。
【0019】
第2の関節部J2は、上側脚部材21の第2端部と下側脚部材22の第1端部とを相対回転させるように接続する。移動基本姿勢において、第2の関節部J2は、上方から下方に向かうにしたがって前方から後方に向かうように下側脚部材22を傾斜させる。
【0020】
第2の関節部J2は、上述の軸線A上に位置する第2の回転中心RC2を通る1つの軸線周りに上側脚部材21と下側脚部材22とを相対回転させるように動作する。この1つの軸線は、第1のψ軸線ψ1と平行である第2のψ軸線ψ2である。第2の関節部J2は、人の膝関節に相当する。
【0021】
第3の関節部J3は、下側脚部材22の第2端部と足部材23とを相対回転させるように接続する。移動基本姿勢において、第3の関節部J3は、足部材23を下側脚部材22の第2端部から前後方向に沿って前方に向けて延びるように位置させる。
【0022】
第3の関節部J3は、第3の回転中心RC3にて互いに直交する2つの軸線周りに、下側脚部材22と足部材23とを相対回転させるように動作する。これらの2つの軸線は、第2のω軸線ω2および第3のψ軸線ψ3である。第2のω軸線ω2は、第1のω軸線ω1と平行な軸線である。つまり、移動基本姿勢において、第2のω軸線ω2は、前後方向に沿って延びている。また、移動基本姿勢において、第2のω軸線ω2と第1のω軸線ω1とは、平面視において重なる。第3のψ軸線ψ3は、第1のψ軸線ψ1および第2のψ軸線ψ2と平行な軸線である。
【0023】
なお、上側脚部材21、下側脚部材22、および、足部材23は、互いに分割された複数の部材によって構成されてもよい。また、上側脚部材21、下側脚部材22、および、足部材23が、互いに分割された複数の部材によって構成されている場合、脚部20は、分割された複数の部位同士を相対回転させるように接続する関節部をさらに備えてもよい。換言すれば、脚部20は、人の脚と異なる構造、例えば膝関節に相当する関節を複数備える構造を有してもよい。
【0024】
また、足部材23には、支持面Sに接触し、足部材23に対して相対回転する2つの車輪24が取り付けられている。2つの車輪24は、第2のω軸線ω2に沿って配置されている。つまり、2つの車輪24は、移動基本姿勢において前後方向に沿うように、足部材23に配置されている。また、第1から第3の関節部J1,J2,J3が動作して、足部材23の向きおよび傾きが変更されることで、車輪24の向きおよび傾きは、変更される。
【0025】
なお、車輪24の個数は、2つに限定されないことは言うまでもない。例えば、車輪24の個数が1つである場合、脚部20の軽量化およびコンパクト化を図ることができる。また、車輪24の個数が3つ以上である場合、支持面Sの面積が小さい場所(例えば階段)においても、2つ以上の車輪24を支持面Sに接触させることができる。つまり、ロボット1の安定化を図ることができる。なお、一対の脚部20は、車輪24を備えなくてもよい。
【0026】
さらに、一対の脚部20は、第1から第3の関節部J1,J2,J3および車輪24をそれぞれ駆動する複数の駆動装置(不図示)を有している。駆動装置は、例えばサーボモータである。
【0027】
また、ロボット1は、複数のモードを含むモード群の中から選択されたモードで動作する。モード群は、少なくとも移動モード、搭載モードおよび移行モードを含んでいる。
【0028】
移動モードは、ロボット1が移動するときのモードである。移動モードが選択されると、ロボット1は、
図1から
図3に示される移動基本姿勢をとる。その後、一対の脚部20が伸長および屈曲するように第1から第3の関節部J1,J2,J3が動作することで、移動する。また、ロボット1は、車輪24が回転することで移動する。さらに、ロボット1は、第1から第3の関節部J1,J2,J3の動作、および、車輪24の回転の組み合わせによって移動する。
【0029】
また、移動モードにおいて、支持面Sに対する本体部10の高さをおおよそ一定にするように、一対の脚部20が動作する。移動モードにおける本体部10の高さは、搭載部11に腰掛けている人Mの目線の高さと、自立している人Mの目線の高さとがおおよそ等しくなるように設定されている。よって、搭載部11に腰掛けている人Mは、自立して歩行している場合と比べて違和感なく移動することができる。
【0030】
搭載モードは、例えば搭載部11に物体を搭載するときや、搭載部11を安定して静止させるときに利用されるモードである。搭載モードにおいて、搭載部11ひいては本体部10の姿勢は、人Mが搭乗可能な姿勢である。また、搭載モードにおいて、搭載部11ひいては本体部10の姿勢は、搭載部11に搭載されている物体が落ちないように静止している姿勢である。すなわち、搭載モードは、ロボット1が移動を行わず、本体部10の姿勢を安定させるモードである。搭載モードが選択されると、ロボット1は、
図4から
図6に示される搭載姿勢をとる。移動モードであるときに搭載モードが選択されると、移行モードを経由して搭載モードとなる。搭載モードにおいて、一対の脚部20は動作しない。
【0031】
搭載モードが選択されると、つまり、搭載姿勢に移行するとき、第1の関節部J1は、第2の関節部J2が第1の関節部J1より前方、かつ、第1の関節部J1より本体部10の幅方向外側に位置するように、上側脚部材21を本体部10に対して回転させる。よって、搭載モードにおいて、一対の脚部20における2つの第1のω軸線ω1は、平面視においてV字状になっている。また、搭載姿勢において、第2の関節部J2は、第1の関節部J1より上方に位置する。
【0032】
また、搭載モードが選択されると、第2の関節部J2は、搭載部11ひいては本体部10の位置が下がるように、下側脚部材22を上側脚部材21に対して回転させる。具体的には、第2の関節部J2は、第2の関節部J2より第3の関節部J3を後方に位置させるように動作する。また、搭載姿勢において、第3の関節部J3は、第1の関節部J1より前方に位置する。つまり、搭載姿勢において、第3の関節部J3は、前後方向において、第1の関節部J1と第2の関節部J2の間に位置する。
【0033】
さらに、搭載姿勢において、本体部10の幅方向における第2の関節部J2同士の距離は、本体部10の幅方向の長さよりも大きい。よって、本体部10をより下方に位置させることができるため、搭載部11に人M等の物体をより搭載させやすくすることができる。
【0034】
また、搭載姿勢において、本体部10の幅方向における下側脚部材22同士の距離は、本体部10の幅方向の長さよりも大きい。また、搭載姿勢において、第2のω軸線ω2と第1のω軸線ω1とは、平面視において一致する。よって、本体部10をさらに下方に位置させることができるため、本体部10に人M等の物体をさらに搭載させやすくすることができるとともに、ロボット1の姿勢の安定化を図ることができる。また、一対の脚部20が物体を搭載させるときの邪魔にならないようにすることができる。
【0035】
移行モードは、搭載モードから移動モードに移行するときに経由するモードである。また、移行モードは、移動モードから搭載モードに移行するときに経由するモードである。
【0036】
搭載モードから移動モードにモードが移行する場合、ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わるように、一対の脚部20は動作する。一方、移動モードから搭載モードにモードが移行する場合、ロボット1の姿勢が移動基本姿勢から搭載姿勢に変わるように、一対の脚部20は動作する。
【0037】
また、本体部10には、ロボット1を制御する図示しない制御装置が配置されている。制御装置は、第1から第3の関節部J1,J2,J3および車輪24をそれぞれ駆動する複数の駆動装置を制御することで、一対の脚部20を動作させる。制御装置は、図示しない移動操作部および切替操作部を備えている。
【0038】
移動操作部は、移動モードにおいて、ロボット1の移動方向および移動量を設定するものである。制御装置は、移動操作部の操作に基づいて、一対の脚部20を動作させる。移動操作部は、例えばジョイスティックである。移動操作部は、搭載部11に配置されていてもよく、その場合、搭載部11に腰掛けている人Mが操作しやすい位置に配置することで、ロボット1の操作性を向上させることができる。
【0039】
切替操作部は、モードを選択する、例えば、移動モードと搭載モードとを切り替えるものである。ロボット1が移動モードで動作している場合に、切替操作部が操作されると、ロボット1が移動基本姿勢をとるように一対の脚部20が動作する。ロボット1が移動基本姿勢をとると、移行モードを経由して搭載モードに移行するが開始される。
【0040】
ロボット1が搭載モードで動作している場合に、切替操作部が操作されると、移行モードを経由して移動モードに移行する。このとき、ロボット1の姿勢は搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる。切替操作部は、例えばスイッチである。切替操作部は、搭載部11に配置されていても良く、その場合、搭載部11に腰掛けている人Mおよび自立している人が操作しやすい位置に配置することで、ロボット1の操作性を向上させることができる。
【0041】
制御装置は、目的地が入力される入力部を備え、移動操作部が操作されなくても、入力部に入力された目的地にロボット1が到着するように、一対の脚部20を動作させるように構成されていてもよい。
【0042】
なお、制御装置は、ロボット1に配置されておらず、有線または無線通信によってロボット1を遠隔制御することができるように構成されていてもよい。
【0043】
次に、搭載モードから移動モードに移行する際、つまり、搭載姿勢から移動基本姿勢に姿勢が変わる際の移行モードにおける一対の脚部20の動作について
図7を用いて説明する。
図7は、脚部20を下側から見た状態を示している。なお、ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合、一対の脚部20の動作は、左右対称であるため、右側の脚部20の動作についてのみ説明する。また、移行モードにおける脚部20の動作とは、第1から第3の関節部J1,J2,J3が動作し、かつ、車輪24が回転することである。
【0044】
ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合、脚部20は、脚部20が伸長するように、かつ、車輪24が回転することで足部材23が支持面Sに沿って本体部10の幅方向内側に向けて移動するように動作する。また、脚部20は、車輪24が支持面Sに対して傾斜しないように、つまり、車輪24の回転軸が支持面Sと平行な状態を維持するように動作する。車輪24が支持面Sに接触して回転することで、足部材23は支持面Sに沿って移動する。
【0045】
また、ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合、第3の関節部J3が
図7に3つの太矢印にて示されている軌跡を描くように脚部20が動作する。
図7に太矢印にて示されている軌跡は、具体的には、第3の回転中心RC3の軌跡である。また、
図7に太矢印にて示されている軌跡は、第3の回転中心RC3を通る仮想の水平面(以下、仮想水平面とする。)に描かれる。つまり、
図7に太矢印にて示されている軌跡は平面視における軌跡を左右方向に反転したものである。
【0046】
第3の回転中心RC3が
図7に太矢印にて示されている軌跡を描くように脚部20が動作する場合、第1の回転中心RC1ひいては本体部10は支持面Sに直交する方向に沿って上昇する。つまり、支持面Sが水平面である場合、搭載部11は斜め上方向ではなく鉛直方向上方に移動する。よって、移行モードにおいて、搭載部11に搭載された人M等の物体が滑り落ちること、および、ロボット1が安定した姿勢をとろうとすることに起因する振動が発生することを防ぐことができる。また、搭載部11は鉛直方向に沿って上方に向けて移動するため、ロボット1の鉛直方向に直交する方向の振動が発生することを防ぐことができる。
【0047】
なお、
図7において搭載姿勢における脚部20は、実線にて示されているとともに、符号に添え字「(a)」が付されている。また、
図7において移動基本姿勢における脚部20は、2点鎖線にて示されているとともに、符号に添え字「(b)」が付されている。
【0048】
以下、移行モードにおいて、ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合に、第3の回転中心RC3が描く軌跡について説明する。第3の回転中心RC3が描く軌跡は、第1の仮想円IC1、第2の仮想円IC2および仮想直線ILに沿うように描かれる。
【0049】
第1の仮想円IC1は、仮想水平面において、搭載姿勢における第3の回転中心RC3を通り、搭載姿勢における第2のω軸線ω2に接する任意の半径を有する円である。
【0050】
第2の仮想円IC2は、仮想水平面において、移動基本姿勢における第3の回転中心RC3を通り、移動基本姿勢における第2のω軸線ω2に接する任意の半径を有する円である。第2の仮想円IC2の大きさは、第1の仮想円IC1との交点が1点以下となるように定められている。具体的には、第1の仮想円IC1と第2の仮想円IC2との交点は、ゼロである。つまり、第1の仮想円IC1と第2の仮想円IC2は、離れている。
【0051】
仮想直線ILは、第1の仮想円IC1と第2の仮想円IC2とに接する直線である。
【0052】
ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合、脚部20が動作することで、第3の回転中心RC3は、点P1から、第1の仮想円IC1に沿って、点P2まで移動する。点P1は、搭載姿勢における第3の回転中心RC3が位置する点である。点P2は、第1の仮想円IC1と仮想直線ILとの接点である。
【0053】
続けて、脚部20が動作することで、第3の回転中心RC3は、点P2から仮想直線ILに沿って、第2の仮想円IC2と仮想直線ILとの接点である点P3まで移動する。さらに、脚部20が動作することで、第3の回転中心RC3は、点P3から、第2の仮想円IC2に沿って、移動基本姿勢における第3の回転中心RC3が位置する点P4まで移動する。
【0054】
第3の回転中心RC3が点P4に位置したとき、ロボット1は移動基本姿勢をとるため、移動モードへの移行が完了する。上記のように、第3の回転中心RC3が描く軌跡は、2つの円弧を有している。また、移行モードが完了したとき、ロボット1が移動基本姿勢をとっているため、一対の脚部20それぞれの車輪24は、同じ方向、具体的には、ロボット1が前進移動する方向を向いている。すなわち、一対の脚部20それぞれの車輪24は、ロボット1の進行方向を向いている。
【0055】
なお、第3の回転中心RC3の第1の仮想円IC1上での移動量、仮想直線IL上での移動量、および第2の仮想円IC2上での移動量は、第1の仮想円IC1の大きさおよび第2の仮想円IC2の大きさを調整することで任意に設定することができる。また、第2の仮想円IC2と第1の仮想円IC1との交点が1点である場合、仮想直線ILは軌跡に含まれず、点P2と点P3とが同じ点となる。
【0056】
また、上記の第3の回転中心RC3が描く軌跡は、移行モードにおいてロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わるときのものである。逆に、移行モードにおいてロボット1の姿勢が移動基本姿勢から搭載姿勢に変わるときは、第3の回転中心RC3が上記の軌跡を逆に辿るように脚部20は動作する。
【0057】
本開示は、これまでに説明した実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0058】
例えば、上記のようにロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合、車輪24を支持面Sに対して傾斜させないようにして、脚部20が動作している。一方、ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合に、軌跡上のある点において、車輪24を支持面Sに対して傾斜させるように、脚部20が動作するようにしてもよい。
【0059】
車輪24を傾斜させる場合、足部材23が第2のω軸線ω2周りに回転するように第3の関節部J3が動作する。すなわち、車輪24が傾斜する場合、足部材23が足部材23の幅方向に傾斜する。車輪24が足部材23の幅方向の一方に傾斜した場合、足部材23の幅方向の一方にかかる荷重が、足部材23の幅方向の他方にかかる荷重よりも大きくなる。
【0060】
以下、移行モードにおいて、ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合に、車輪24を支持面Sに対して傾斜させるように、脚部20が動作する場合について、
図8を用いて説明する。
図8は、脚部20を下側から見た状態を示している。なお、
図8において、破線の矢印は、支持面Sに対する車輪24の傾斜角度が変化する際の第3の回転中心RC3の軌跡を示している。
図8において、実線の矢印は、足部材23が移動する際の第3の回転中心RC3の軌跡を示している。
【0061】
第3の回転中心RC3は、車輪24が支持面Sに対して傾斜していない場合に第2のω軸線ω2上に位置し、支持面Sに対する車輪24の傾斜角度の変化とともに足部材23の幅方向に沿って移動する。第2のω軸線ω2と足部材23の幅方向とは、直交している。
【0062】
ロボット1の姿勢が搭載姿勢から移動基本姿勢に変わる場合、第3の回転中心RC3は、
図8に示されるように、平面視において、点P5から点P12まで移動する。点P5は、ロボット1が搭載姿勢をとっているときの第3の回転中心RC3の位置である。点P12は、ロボット1が移動基本姿勢をとっているときの第3の回転中心RC3の位置である。
【0063】
また、第3の回転中心RC3は、点P5から点P12まで移動する途中で、第3の仮想円IC3および第4の仮想円IC4に沿って移動する。
【0064】
第3の仮想円IC3は、点P6を通り、かつ、搭載姿勢における第2のω軸線ω2に平行な第2の仮想直線IL2に接する任意の半径を有する円である。点P6は、搭載姿勢における足部材23の幅方向において、点P5より本体部10の幅方向外側に位置する点である。点P5から点P6までの距離は、距離D1である。距離D1は、任意に設定することができる。
【0065】
第4の仮想円IC4は、第3の仮想直線IL3および第4の仮想直線IL4の両方に接する円である。第3の仮想直線IL3は、点P11を通り、かつ、移動基本姿勢における第2のω軸線ω2に平行な直線である。点P11は、移動基本姿勢における足部材23の幅方向において、点P12より本体部10の幅方向内側に位置する点である。点P12から点P11までの距離は、距離D2である。距離D2は、任意に設定することができる。第4の仮想直線IL4は、第5の仮想直線IL5と平行、かつ、第5の仮想直線IL5との距離が距離D1と距離D2を合わせた距離である直線である。第5の仮想直線IL5は、後述する点P7において、第3の仮想円IC3に接する直線である。
【0066】
また、第3の仮想円IC3および第4の仮想円IC4は、交点を2つ有するようにそれぞれの半径が設定されている。
【0067】
ロボット1の姿勢が搭載姿勢であり、かつ、車輪24が傾斜していない場合、第3の回転中心RC3は、点P5に位置する。第3の関節部J3が動作して車輪24が足部材23の幅方向において本体部10の幅方向外側に傾斜することで、第3の回転中心RC3は、点P5から、足部材23の幅方向に沿って点P6に移動する。
【0068】
第3の回転中心RC3が点P6に位置する場合、足部材23の幅方向における本体部10の幅方向外側にかかる荷重が、足部材23の幅方向における本体部10の幅方向内側にかかる荷重よりも大きくなる。
【0069】
続けて、車輪24が傾斜したまま、脚部20が動作することで、第3の回転中心RC3は、点P6から第3の仮想円IC3に沿って本体部10の幅方向内側に向けて点P7まで移動する。さらに、第3の関節部J3が動作して車輪24が傾斜していない状態に戻されることで、第3の回転中心RC3は、点P7から点P8に移動する。点P8は、点P7より、第3の回転中心RC3が点P7に位置するときの足部材23の幅方向に沿って本体部10の幅方向内側に位置する点である。点P8は、点P7から距離D1離れている点である。
【0070】
さらに、車輪24が傾斜していない状態で脚部20が動作することで、第3の回転中心RC3は点P8から第5の仮想直線IL5と平行に点P9まで移動する。点P9は、第4の仮想円IC4と第4の仮想直線IL4との接点である点P10より、第3の回転中心RC3が点P8に位置するときの足部材23の幅方向に沿って本体部10の幅方向外側に位置する点である。点P9は、点P10から距離D2離れている点である。
【0071】
続けて、第3の回転中心RC3が点P9に位置するときに、第3の関節部J3が動作して車輪24が足部材23の幅方向における本体部10の幅方向内側に傾斜することで、第3の回転中心RC3は点P9から点P10に移動する。
【0072】
第3の回転中心RC3が点P10に位置する場合、足部材23の幅方向における本体部10の幅方向内側にかかる荷重が、足部材23の幅方向における本体部10の幅方向外側にかかる荷重よりも大きくなる。
【0073】
続けて、車輪24が傾斜したまま、脚部20が動作することで、第3の回転中心RC3は、点P10から第4の仮想円IC4に沿って本体部10の幅方向内側に向けて点P11まで移動する。さらに、第3の関節部J3が動作して車輪24が傾斜していない状態に戻されることで、第3の回転中心RC3は、点P11から点P12に移動する。第3の回転中心RC3が点P12に到達するとロボット1は移動基本姿勢となり、移動モードへの移行が完了する。
【0074】
また、
図7に示される車輪24を一度も傾斜させない場合の軌跡と、
図8に示される車輪24を傾斜させた場合の軌跡とを比較すると、車輪24を傾斜させた場合の軌跡の方が、仮想円の半径を大きくすることができる。よって、車輪24を一度も傾斜させない場合に比べて、車輪24を傾斜させた場合は、車輪24と支持面Sとの摩擦抵抗ひいては駆動装置の負荷を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、ロボットに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 ロボット
10 本体部
20 脚部
21 上側脚部材
22 下側脚部材
23 足部材
24 車輪
S 支持面