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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122456
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】グラウト材用の注入管
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20220816BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
E21D11/10 C
E21D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019697
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503203111
【氏名又は名称】扶桑鋼管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 聡
(72)【発明者】
【氏名】望戸 健雄
(72)【発明者】
【氏名】丸山 深直
(72)【発明者】
【氏名】池元 康彦
(72)【発明者】
【氏名】江村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】布施 志郎
(72)【発明者】
【氏名】黒木 和歩
(72)【発明者】
【氏名】葛西 多津美
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 知昭
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155CA01
2D155JA01
2D155LA15
(57)【要約】
【課題】 グラウト材用の注入管1への高止水逆止弁30取付部のシール性を向上させる。
【解決手段】 高止水逆止弁30の筒状本体31は、外周面におねじ31aを有し、注入管1の管体10の内周面のめねじ12にねじ込み固定されるとともに、筒状本体31のねじ込み方向先端側の外周面にOリング35、36が2段に装着される。第1のOリング35は、前記めねじ12の終端部に全周にわたって形成された段差面(テーパ面)13に押圧され、第2のOリング36は、更に先端側に装着され、管体10のストレートな内周面に押圧される。高止水逆止弁30の弁体33は、ポペット形で、スプリング34により弁孔31cに対し閉弁方向に付勢される。そして、弁体33は、その閉弁動作方向の後端側にフランジ33bを有し、フランジ33bの根元部にOリング37が装着される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の外殻部材とその周辺の地山との間の空隙に、地下構造物内からグラウト材を注入するために、前記外殻部材に設けられる注入管であって、
前記外殻部材にその内側から外側へ貫通するように設けられる前記注入管の管体と、
前記管体内に地山側からの逆流を防止するように設置される逆止弁と、
を含んで構成され、
前記逆止弁は、
外周面におねじを有し、前記管体内にその内側の端部からグラウト材注入方向と同方向にねじ込まれて前記管体の内周面に形成されためねじに螺合され、ねじ込み方向後端側に弁孔を有する底板部を備え、ねじ込み方向先端側にグラウト材の通過孔を有する蓋部を備える筒状の弁本体と、
前記弁本体内で前記底板部と前記蓋部との間に配置されて、前記弁孔に対向するポペット形の弁体と、
前記弁体を前記弁孔に対し閉弁方向に付勢するスプリングと、
前記弁本体のねじ込み方向先端側の外周面に装着され、前記弁本体の外周面と前記管体の内周面との間をシールする弁本体Oリングと、
を含むことを特徴とする、グラウト材用の注入管。
【請求項2】
前記弁本体Oリングは、前記管体の内周面に形成された前記めねじの終端部に全周にわたって形成された段差面に押圧されることを特徴とする、請求項1記載のグラウト材用の注入管。
【請求項3】
前記弁本体Oリングは、2段に設けられ、
第1の弁本体Oリングは、前記管体の内周面に形成された前記めねじの終端部に全周にわたって形成された段差面に押圧され、
第2の弁本体Oリングは、前記第1の弁本体Oリングより前記弁本体のねじ込み方向で更に先端側に装着され、前記管体のストレートな内周面に押圧されることを特徴とする、請求項1記載のグラウト材用の注入管。
【請求項4】
前記段差面は、テーパ面であることを特徴とする、請求項2又は請求項3記載のグラウト材用の注入管。
【請求項5】
前記弁体は、グラウト材注入方向とは逆方向である閉弁動作方向の後端側に設けられて前記弁孔の最大径部より大径のフランジと、このフランジの根元部に装着される弁体Oリングとを有し、この弁体Oリングは、前記弁体の閉弁時に、前記フランジと、前記底板部の弁孔形成面との間をシールすることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載のグラウト材用の注入管。
【請求項6】
前記管体内に、前記逆止弁とは別に、前記逆止弁より地山側に位置して、地山側からの逆流を防止するように設置される簡易逆止弁を更に含んで構成されることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載のグラウト材用の注入管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の外殻部材とその周辺の地山との間の空隙に、地下構造物内からグラウト材(裏込め材)を注入するために、前記外殻部材に設けられる逆止弁付きの注入管に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道、共同溝、道路、鉄道等の管路として用いられるシールドトンネルは、シールド工法により形成される。
シールド工法では、例えば、地山に発進立坑と到達立坑とを構築し、発進立坑から到達立坑へ向けてシールド掘進機で地山を掘削しながら、シールド掘進機の後部で次々とセグメントをトンネル周方向に組み立ててセグメントリングを構築するとともに、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向に連結することで円筒状の覆工体を構築する。この工法では、シールド掘進機は、その後方の構築済みのセグメントリングを推進ジャッキで後方へ押圧し、その反力として発生する推力によって、地山を掘削しながら前進する。
【0003】
また、シールドトンネル工事では、シールド掘進機による掘削地盤(地山)と構築済みのセグメントリング(覆工体)との間の空隙にグラウト材(裏込め材)を注入する。このグラウト材をシールドトンネル内から注入する場合には、例えば、セグメントの内面側(トンネル空間側)から外面側(地山側)に貫通するようにセグメントに設けられた注入管が用いられる。この注入管内には、前記空隙に注入したグラウト材などがシールドトンネル内に逆流しないように、逆止弁が設置される。
【0004】
かかる逆止弁としては、特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1に記載の逆止弁では、その円筒状の弁本体の外周面におねじを有し、弁本体が注入管の管体内にその内側の端部からねじ込まれて管体の内周面に形成されためねじに螺合される。
【0005】
ここで、注入管の管体の内径は逆止弁の弁本体の先端側で細くなっていて、逆止弁の弁本体を注入管の管体に螺着した状態で、弁本体の先端側が管体の内面に圧接する。これにより、逆止弁と注入管との間がシールされ、ねじの隙間からのグラウト材の漏れを防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07-158388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の逆止弁付きの注入管では、逆止弁の弁本体と注入管の管体とのねじの隙間からのグラウト材の漏れを防止するため、注入管の管体の径を途中で変化させる必要があるなど、構造が複雑化することから、簡素化が求められている。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑み、比較的簡単な構造で、注入管への逆止弁取付部のシール性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、地下構造物の外殻部材とその周辺の地山との間の空隙に、地下構造物内からグラウト材を注入するために、前記外殻部材に設けられる注入管であって、
前記外殻部材にその内側から外側へ貫通するように設けられる前記注入管の管体と、
前記管体内に地山側からの逆流を防止するように設置される逆止弁と、
を含んで構成され、
前記逆止弁は、
外周面におねじを有し、前記管体内にその内側の端部からグラウト材注入方向と同方向にねじ込まれて前記管体の内周面に形成されためねじに螺合され、ねじ込み方向後端側に弁孔を有する底板部を備え、ねじ込み方向先端側にグラウト材の通過孔を有する蓋部を備える筒状の弁本体と、
前記弁本体内で前記底板部と前記蓋部との間に配置されて、前記弁孔に対向するポペット形の弁体と、
前記弁体を前記弁孔に対し閉弁方向に付勢するスプリングと、
前記弁本体のねじ込み方向先端側の外周面に装着され、前記弁本体の外周面と前記管体の内周面との間をシールする弁本体Oリングと、を含むことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記弁本体Oリングは、前記管体の内周面に形成された前記めねじの終端部に全周にわたって形成された段差面に押圧される構成とするとよい。
あるいは、前記弁本体Oリングは、2段に設けられ、
第1の弁本体Oリングは、前記管体の内周面に形成された前記めねじの終端部に全周にわたって形成された段差面に押圧され、
第2の弁本体Oリングは、前記第1の弁本体Oリングより前記弁本体のねじ込み方向で更に先端側に装着され、前記管体のストレートな内周面に押圧される構成としてもよい。
【0011】
また、前記弁体は、グラウト材注入方向とは逆方向である閉弁動作方向の後端側に設けられて前記弁孔の最大径部より大径のフランジと、このフランジの根元部に装着される弁体Oリングとを有し、この弁体Oリングは、前記弁体の閉弁時に、前記フランジと、前記底板部の弁孔形成面との間をシールする構成とするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、注入管の管体とこれにねじ込み固定される逆止弁の弁本体との隙間を弁本体Oリングによりシールするため、簡単な構造で、シール性を向上させることができる。
【0013】
また、弁本体Oリングを段差面に押圧する構造、あるいは、弁本体Oリングを2段にして、第1の弁本体Oリングについては、段差面に押圧し、第2の弁本体Oリングについては、ストレートな内周面に押圧する構造とすることで、シール性を更に高めることができる。
【0014】
また、弁体についても、フランジの根元に弁体Oリングを装着することで、閉弁時のシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態として示すグラウト材用の注入管の縦断面図
図2図1のI矢視図に相当する高止水逆止弁の平面図
図3図2のII-II矢視断面図に相当する高止水逆止弁の状態別の縦断面図
図4】高止水逆止弁の分解図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態として示すグラウト材用の注入管の縦断面図である。
【0017】
本実施形態のグラウト材用の注入管1(特にその管体10)は、地下構造物の外殻部材、ここではシールドトンネルの覆工体であるセグメントリングを構成するセグメントのうち、例えば天端側のセグメントSに、これを貫通するように取付けられる。
【0018】
なお、グラウト材用の注入管1は、多くの場合、天端部のセグメントに設けられて、トンネル内から地山側に、従って通常は下から上にグラウト材を注入するため、図1では、注入管1の上側が地山側(セグメント外側)、注入管1の下側がトンネル空間側(セグメント内側)となる。
【0019】
この注入管1を用いることで、セグメントリングとその周辺の地山との間の空隙に、セグメント内側(トンネル内)からグラウト材(裏込め材)を注入することが可能となる。
【0020】
グラウト材用の注入管1は、注入管1の主体をなす鋼製の管体10と、管体10内に2段に設置されて地山側からの逆流を防止する簡易逆止弁20及び高止水逆止弁30と、注入後に管体10のセグメント内側の端部(トンネル内への開口端部)を塞ぐ閉止プラグ40と、を含んで構成される。
【0021】
管体10は、例えばRCセグメントの場合、セグメントの工場での成型時にセグメントを内側から外側へ貫通するようにセグメントに埋設される。なお、図示しないが、管体10の外周側には、セグメントにおける管体10の位置決めのため、補強筋が取付けられたり、水密性の確保のため、水膨張性を有するOリングが取付けられたりすることもある。
【0022】
管体10の内周側には、簡易逆止弁20の取付けのため、管体10のセグメント外側(地山側)の端部から内方に向かってめねじ11が形成されるとともに、高止水逆止弁30及び閉止プラグ40の取付けのため、管体10のセグメント内側(トンネル空間側)の端部から内方に向かってめねじ12が形成されている。なお、閉止プラグ40取付位置のめねじ12は、グラウト材の注入時(このときは閉止プラグ40が取付けられていない)に、グラウト材供給ホースの先端部のニップル又はプラグをねじ込み固定するために用いることができる。
【0023】
本実施形態では、簡易逆止弁20は、管体10に対しその外側(地山側)の端部から取付けるようになっているため、工場でのセグメント製造時から現場でのセグメントリング構築前までの間に取付けられる。
これに対し、高止水逆止弁30は、管体10に対しその内側(トンネル空間側)の端部から取付けるようになっているため、工場でのセグメント製造時から現場でのグラウト材注入前までに取付けられる。
【0024】
簡易逆止弁20は、硬質樹脂製の円筒状の弁本体21と、弁本体21内の中央に固定配置した軟質樹脂製の隔壁22と、隔壁22と一体で弾性変形可能なヒンジ部23を介してつながっている一対の半円形のフラップ式の弁体24とから構成される。
【0025】
弁本体21はその外周面におねじ21aを有し、管体10内に外側(地山側)の端部からグラウト材注入方向と逆方向にねじ込まれ、めねじ11に螺合されて固定される。
【0026】
また、弁本体21の内周面には段差が付されて一対の半円リング状の弁座21bが設けられ、この弁座21bにフラップ式の弁体24の先端縁が着座するようになっている。
【0027】
従って、簡易逆止弁20は、通常、弁体24がヒンジ部23の弾性復元力で弁座21bに着座して、閉弁している。
グラウト材の注入時は、グラウト材の注入圧により、ヒンジ部23が弾性変形して弁体24が点線示のように押し上げられ、開弁する。注入後は、ヒンジ部23の弾性復元力により弁体24が弁座21bに着座して、閉弁し、グラウト材の逆流が防止される。
【0028】
次に高止水逆止弁30について、図1に加え、図2図4を参照して、説明する。
図2図1のI矢視図に相当する高止水逆止弁の平面図である。図3図2のII-II矢視断面図に相当する高止水逆止弁の状態別の縦断面図で、(A)は注入前の閉弁状態、(B)は注入中の開弁状態、(C)は注入後の閉弁状態を示している。図4は高止水逆止弁の平面視及び縦断面視での分解図である。なお、図2図4左側の平面図では、部品範囲を明確にするために部品ごとにハッチングを付してある。
【0029】
高止水逆止弁30は、円筒状で底板部及び蓋部を有する樹脂製の弁本体31、32と、樹脂製の弁体33と、鋼製のスプリング(コイルばね)34と、3種のOリング35~37とを含んで構成される。
また、上記の弁本体は、製造の便宜上、底板部付きの筒状本体31と、蓋部をなす蓋部材32との2個のパーツからなる。従って、高止水逆止弁30は、7部品からなる。
なお、樹脂としては、ポリアセタール(POM)を採用するが、硬質エンジニアプラスチックであれば、他の樹脂でも可能である。
【0030】
筒状本体31はその外周面におねじ31aを有し、管体10内に内側(トンネル空間側)の端部からグラウト材注入方向と同方向にねじ込まれ、めねじ12に螺合されて固定される。
【0031】
また、筒状本体31の外周面にはおねじ31aよりねじ込み方向先端側(上側)に2つのOリング取付溝が形成され、第1及び第2のOリング(弁本体Oリング)35、36が取付けられる。
【0032】
第1のOリング35は、管体10の内周面に形成されためねじ12の終端部(ねじ山切り上がり部)に全周にわたって形成されたリング状の段差面13に押圧される。
この段差面13は図示のごとくテーパ面とするのがよく、テーパ角度は、ストレートな内周面を0°、内周面と直角な面を90°とすると、30°~60°の範囲がよく、45°が最適である。30°未満では、ねじ込み方向に十分な接触圧力を確保できず、60°超過では、ねじ込み方向の寸法誤差を吸収できないからである。
【0033】
第2のOリング36は、第1のOリング35より更に先端側に装着され、第1のOリング35より、線径(太さ)が小さく、外径も小さい。従って、第2のOリング36は、段差面(テーパ面)13を超えた位置で、管体10のストレートな内周面に押圧される。
【0034】
このような2段構成のOリング35、36を備えることで、注入管1の管体10とこれにねじ込み固定される高止水逆止弁30の筒状本体31との隙間を確実にシールすることができる。
【0035】
筒状本体31は、その下端側(グラウト材注入方向と同方向のねじ込み方向の後端側)に底板部(弁座部)31bを一体に備え、底板部31bにはその中央に弁孔31cが形成されている。弁孔31cは下方(グラウト材注入方向と逆方向)に向かって、先すぼまりのテーパをなしている。
【0036】
蓋部材32は、弁体摺動部及びスプリング受部となる中央の円筒部32aと、外周側の円環部32bと、円筒部32aと円環部32bとをつなぐ放射状のリブ32cとを有し、隣り合うリブ32c、32c間がグラウト材の通過孔32dとなっている。
【0037】
そして、蓋部材32は、筒状本体31に対し、その上端側(ねじ込み方向の先端側)に位置するように組付けられる。
ワンタッチでの組付けを可能にするため、筒状本体31はその上端面から突出する複数の係止爪31dを有し、蓋部材32は外周側の円環部32bに前記複数の爪31dが嵌入係止される複数の係止孔32eを有している(図4参照)。係止爪31dは若干の可撓性を有し、係止孔32eに嵌入することで、ロック状態となる。
【0038】
筒状本体31内で、底板部31bと蓋部材32との間には、蓋部材32の組付け前に、弁体33及びスプリング34が収納される(図4参照)。
【0039】
弁体33は、弁孔31cに対向するポペット形の弁部33aと、弁部33aの後端から外周側に張り出して底板部31bの弁孔形成面に対向するフランジ部33bと、弁部33aの背面から後方に突出する円筒部33cとを含む。
【0040】
弁部33aは、弁孔31cのテーパと同一角度のテーパを有している。
フランジ部33bは、弁孔31cの最大径部より大径であり、その根元側にOリング(弁体Oリング)37が装着される。このOリング37は、弁体33の閉弁時に、フランジ部33bと、底板部31bの弁孔形成面との間をシールする。
円筒部33cは、蓋部材32の円筒部32a内に摺動自在に支持される。
【0041】
スプリング34は、その一端が蓋部材32の円筒部32a内にその下端開口部32f(図4)より挿入されて保持され、他端が弁体33の円筒部33c内にその上端開口部33d(図4)より挿入されて弁部33aの背面に作用している。
従って、スプリング34は、弁体33を弁孔31cに対し閉弁方向に付勢する。
【0042】
従って、高止水逆止弁30は、通常、弁体33がスプリング34の付勢力で弁孔31cに着座して、閉弁している(図3(A)参照)。
グラウト材の注入時は、グラウト材の注入圧により、スプリング34の付勢力に抗して弁体33が押し上げられ、開弁(弁孔31cを開放)する(図3(B)参照)。注入後は、スプリング34の付勢力により弁体33が弁孔31cに着座して、閉弁(弁孔31cを閉鎖)し、グラウト材の逆流が阻止される(図3(C)参照)。
なお、図3では断面位置より奥側の部品を点線で示している。
【0043】
次に閉止プラグ40について図1により説明する。
閉止プラグ40は、グラウト材の注入後に注入管1の管体10の内側(トンネル空間側)の開口端部を閉止するためのもので、確実な閉止を可能とするため、鋳鉄製である。
閉止プラグ40は、管体10の内周面のめねじ12に螺合するおねじ部41と、管体10の端面に押圧されるフランジ42とを有し、このフランジ42の根元部にOリング(プラグ用Oリング)43が装着されている。
【0044】
上記のような簡易逆止弁20及び高止水逆止弁30付きの注入管1を用いることで、セグメントリング構築後に、注入管1の管体10のセグメント内側の端部に接続したグラウト材供給ホースよりグラウト材を供給し、その注入圧で高止水逆止弁30及び簡易逆止弁を開弁させて、セグメント外面と地山との隙間にグラウト材を注入することができる。
【0045】
グラウト材の注入後は、簡易逆止弁20においては、フラップ式の弁体24が弁座21bに着座して、閉弁し、地山側からのグラウト材の逆流が防止される。
高止水逆止弁30においては、スプリング34の付勢力により弁体33が弁孔31cに着座して、閉弁(弁孔31cを閉鎖)し、地山側からのグラウト材の逆流が防止される。
【0046】
このように、地山側からの逆流防止のため、逆止弁を2段構成とすることで、逆流防止を確実なものとすることができる。
また、逆流方向前段の簡易逆止弁20の耐圧は1MPa程度であるが、逆流方向後段の高止水逆止弁30の耐圧は4MPa程度であり、簡易逆止弁20が破壊されたとしても、高止水逆止弁30で必要十分な逆流防止性能を維持することができる。
【0047】
高止水逆止弁30については、特に、下記のような構造を採用したことで、高耐圧を得ている。
高止水逆止弁30の筒状本体31は、その外周面におねじ31aを有し、注入管1の管体10の内周面に形成されためねじ12に螺合されて取付けられるが、筒状本体31のねじ込み方向先端側の外周面にOリング35、36が装着されている。従って、Oリング35、36により筒状本体31の外周面と管体10の内周面との間を確実にシールすることができる。
【0048】
また、Oリング35、36は、以下のように、2段に設けられている。
第1のOリング35は、管体10の内周面に形成されためねじ12の終端部(ねじ山切り上がり部)に全周にわたって形成されたリング状の段差面(テーパ面)13に押圧されている。
第2のOリング36は、第1のOリング35より筒状本体31のねじ込み方向で更に先端側に装着され、管体10のストレートな内周面に押圧されている。
これらにより、より十分なシール機能が得られている。
【0049】
また、弁体33はポペット形で、その弁部33aは、先すぼまりの弁孔31cのテーパ角と同じテーパ角を有する構成としている。これにより、閉弁時のシール性を向上させることができる。
【0050】
また、弁体33は、グラウト材注入方向とは逆方向である閉弁動作方向の後端側に設けられて弁孔31cの最大径部より大径のフランジ33bと、このフランジ33bの根元部に装着されるOリング37とを有し、このOリング37が、弁体33の閉弁時に、フランジ33bと、底板部31bの弁孔形成面との間をシールする構成としている。これにより、閉弁時のシール性をより向上させている。
【0051】
高止水逆止弁30については、上記のような構造により、耐圧性能を向上する一方、簡易逆止弁20と同様、樹脂製としている。樹脂製とすることで、低価格化、金型による仕様変更の容易化を図ることができる。また、シールドトンネルの経年劣化後に、グラウト材の再注入が必要となった場合に、高止水逆止弁30が固化していたとしても、樹脂製であれば、トンネル空間側からドリルで破壊して貫通させ、中を掃除して、新品をセットすれば、再注入も可能である。
【0052】
また、簡易逆止弁20については、高止水逆止弁30より地山側に位置するので、高止水逆止弁30が、管体10内にセグメント内側の端部から装着されるのに対し、簡易逆止弁20は、管体10内にセグメント外側の端部から装着される構成としている。これにより、2つの逆止弁の装着作業を容易化することができる。
【0053】
グラウト材の注入後は、注入管1の管体10のセグメント内面側の端部を閉止するため、閉止プラグ40を取付ける。閉止プラグ40は、管体10のめねじ12に螺合するおねじ部41と、管体10の端面に押圧されるフランジ42とを有し、このフランジ42の根元部にOリング43が装着される。これにより、グラウト材の逆流防止をより確実なものとすることができる。
なお、閉止プラグ40については、樹脂製とすることも可能であるが、鋳鉄製とすることで、より十分な耐圧性能が得られる。
【0054】
なお、図示の実施形態はあくまで本発明を概略的に例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 グラウト材用の注入管
10 管体
11、12 めねじ
13 段差面(テーパ面)
20 簡易逆止弁
21 弁本体
21a おねじ
21b 弁座
22 隔壁
23 ヒンジ部
24 弁体
30 高止水逆止弁
31 筒状本体(弁本体)
31a おねじ
31b 底板部(弁座部)
31c 弁孔
31d 係止爪
32 蓋部材(弁本体)
32a 円筒部
32b 円環部
32c リブ
32d グラウト材の通過孔
32e 係止孔
32f 下端開口部
33 弁体
33a 弁部
33b フランジ部
33c 円筒部
33d 上端開口部
34 スプリング
35 第1のOリング(弁本体Oリング)
36 第2のOリング(弁本体Oリング)
37 Oリング(弁体Oリング)
40 閉止プラグ
41 おねじ部
42 フランジ
43 Oリング
図1
図2
図3
図4