(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122465
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20220816BHJP
B65F 7/00 20060101ALI20220816BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20220816BHJP
F27D 3/06 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B09B3/00 303Z
B65F7/00 ZAB
F27D3/12 C
F27D3/06 A
F27D3/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019711
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】堤 博文
(72)【発明者】
【氏名】三澤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】小川 圭一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 紳吾
【テーマコード(参考)】
3E025
4D004
4K055
【Fターム(参考)】
3E025AA04
3E025CA12
3E025DC02
3E025DC07
3E025DE11
4D004AA50
4D004AB05
4D004AC04
4D004CA21
4D004CB04
4D004CB42
4D004CB45
4K055AA05
4K055EA00
4K055GA00
4K055GA07
(57)【要約】
【課題】化学剤を無害化するための加熱処理を大量の廃棄物について行う場合であっても、加熱炉内への廃棄物の搬入、加熱処理後の廃棄物の回収、及び、加熱処理後の廃棄物の加熱炉内からの搬出を容易に行えるようにする。
【解決手段】廃棄物処理システム1は、廃棄物の加熱処理を行う加熱炉13と、廃棄物を収容する耐熱性の加熱処理用容器10と、廃棄物を収容した加熱処理用容器10を積載して加熱炉13内に進入し、加熱炉13での加熱処理の処理時間の間、加熱炉13内に留まり、前記処理時間が経過した後、加熱処理用容器10を積載した状態で加熱炉13内から退出するように自走する台車15と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物に含まれる化学剤が無害化するように前記廃棄物を加熱処理する廃棄物処理システムであって、
前記廃棄物の加熱処理を行う加熱炉と、
前記廃棄物を収容する少なくとも1つの耐熱性の加熱処理用容器と、
前記廃棄物を収容した前記加熱処理用容器を積載して前記加熱炉内に進入し、前記加熱炉での加熱処理の処理時間の間、前記加熱炉内に留まり、前記処理時間が経過した後、前記加熱処理用容器を積載した状態で前記加熱炉内から退出するように自走する台車と、を備える、廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの加熱処理用容器は、第1の加熱処理用容器及び第2の加熱処理用容器を含み、
前記第1及び第2の加熱処理用容器は、それぞれ、その加熱処理用容器のうち前記廃棄物を受ける部分である廃棄物トレーと、その廃棄物トレーを囲むように構成されてその廃棄物トレーに固定されたフレームとを有し、
前記第1及び第2の加熱処理用容器のそれぞれの前記フレームは、その第1及び第2の加熱処理用容器の前記廃棄物トレー同士の間に隙間が形成される形態で互いに上下に積み重ね可能に構成され、
前記台車は、互いに積み重ねられた状態の前記第1及び第2の加熱処理用容器を積載して自走可能に構成され、
前記加熱炉は、互いに積み重ねられた状態の前記第1及び第2の加熱処理用容器を積載した前記台車を受け入れ可能に構成されている、請求項1に記載の廃棄物処理システム。
【請求項3】
前記第1及び第2の加熱処理用容器の前記フレーム同士が積み重ねられた状態でそれらのフレームが上下に分離するのを阻止するようにそれらのフレーム同士を連結する連結部材をさらに備える、請求項2に記載の廃棄物処理システム。
【請求項4】
前記廃棄物トレーは、前記廃棄物を受ける面である受面を有し、
前記受面は、その周縁部から中央部へ向かうにつれて高さが低下するように下向きに凸の湾曲した形状を有する、請求項2又は3に記載の廃棄物処理システム。
【請求項5】
加熱処理前の前記廃棄物である処理前廃棄物が収容されていて前記加熱処理用容器よりも耐熱性が低い処理前廃棄物容器から前記処理前廃棄物を前記加熱処理用容器へ移し替える処理前移替装置をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の廃棄物処理システム。
【請求項6】
前記処理前移替装置は、前記加熱処理用容器よりも高い位置で前記処理前廃棄物容器から前記処理前廃棄物を放出させる処理前廃棄物放出装置と、前記処理前廃棄物放出装置により前記処理前廃棄物容器から放出された前記処理前廃棄物を受け入れて前記加熱処理用容器へ導く処理前廃棄物シュートと、前記処理前廃棄物シュートの出口に設けられ、前記処理前廃棄物シュート内を通って落下する前記処理前廃棄物が前記処理前廃棄物シュートの出口から放出されるのを阻止するように前記処理前廃棄物シュートの出口を塞ぐ処理前シュート出口閉塞状態と、前記処理前廃棄物が前記処理前廃棄物シュートの出口から放出されるのを許容するように前記処理前廃棄物シュートの出口を開放する処理前シュート出口開放状態とを取り得るように構成された処理前廃棄物ゲートと、を有する、請求項5に記載の廃棄物処理システム。
【請求項7】
加熱処理後の前記廃棄物である処理後廃棄物を前記加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ移し替える処理後移替装置をさらに備え、
前記処理後移替装置は、前記加熱処理用容器から前記処理後廃棄物を取り出してその処理後廃棄物を前記処理後廃棄物容器よりも高い位置から落とす処理後廃棄物落下装置と、前記処理後廃棄物落下装置により落とされた前記処理後廃棄物を受け入れて前記処理後廃棄物容器へ導く処理後廃棄物シュートと、前記処理後廃棄物シュートの出口に設けられ、前記処理後廃棄物シュート内を通って落下する前記処理後廃棄物が前記処理後廃棄物シュートの出口から放出されるのを阻止するように前記処理後廃棄物シュートの出口を塞ぐ処理後シュート出口閉塞状態と、前記処理後廃棄物が前記処理後廃棄物シュートの出口から放出されるのを許容するように前記処理後廃棄物シュートの出口を開放する処理後シュート出口開放状態とを取り得るように構成された処理後廃棄物ゲートと、を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の廃棄物処理システム。
【請求項8】
前記処理後移替装置は、前記処理後廃棄物シュートの出口の下方において前記処理後廃棄物容器を支持するとともにその支持した処理後廃棄物容器を上下に昇降可能に構成された昇降装置をさらに有する、請求項7に記載の廃棄物処理システム。
【請求項9】
廃棄物に含まれる化学剤が無害化するように前記廃棄物を加熱処理する廃棄物処理方法であって、
加熱処理前の前記廃棄物が収容された処理前廃棄物容器からその処理前廃棄物容器よりも高い耐熱性を有する加熱処理用容器へ前記廃棄物を移し替える処理前廃棄物移替工程と、
前記処理前廃棄物移替工程により前記廃棄物が収容された前記加熱処理用容器を台車上に積載する積載工程と、
前記台車が自走して加熱炉内に進入することにより前記廃棄物を収容した前記加熱処理用容器を前記加熱炉内に搬入する搬入工程と、
前記加熱炉内に搬入された前記加熱処理用容器に収容された前記廃棄物を前記加熱処理用容器ごと加熱処理する加熱処理工程と、
前記加熱炉での加熱処理の処理時間の経過後、前記台車が自走して前記加熱炉内から退出することにより加熱処理後の前記廃棄物を収容した前記加熱処理用容器を前記加熱炉内から搬出する搬出工程と、を備える、廃棄物処理方法。
【請求項10】
前記処理前廃棄物移替工程は、前記加熱処理用容器よりも高い位置に配置されていてその内部を通して前記加熱処理用容器へ加熱処理前の前記廃棄物を導く処理前廃棄物シュートの出口を塞いだ状態で前記処理前廃棄物容器から放出させた加熱処理前の前記廃棄物を当該廃棄物が前記処理前廃棄物シュート内を落下するようにその処理前廃棄物シュート内に投入する処理前廃棄物投入工程と、前記処理前廃棄物投入工程の後、前記処理前廃棄物シュートの出口が塞がれていることによって前記処理前廃棄物シュート内で滞積した加熱処理前の前記廃棄物を前記処理前廃棄物シュートの出口を開放することにより当該出口から放出させて前記加熱処理用容器内へ導入する処理前廃棄物導入工程と、を含む、請求項9に記載の廃棄物処理方法。
【請求項11】
前記搬出工程の後、加熱処理後の前記廃棄物である処理後廃棄物が収容された前記加熱処理用容器を前記台車上から降ろす降し工程と、
前記台車上から降ろされた前記加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ前記処理後廃棄物を移し替える処理後廃棄物移替工程と、をさらに備え、
前記処理後廃棄物移替工程は、前記処理後廃棄物容器よりも高い位置に配置されていてその内部を通して前記処理後廃棄物容器へ前記処理後廃棄物を導く処理後廃棄物シュートの出口を塞いだ状態で、前記台車上から降ろされた前記加熱処理用容器から取り出した前記処理後廃棄物を当該処理後廃棄物が前記処理後廃棄物シュート内を落下するようにその処理後廃棄物シュート内に投入する処理後廃棄物投入工程と、前記処理後廃棄物投入工程の後、前記処理後廃棄物シュートの出口が塞がれていることによって前記処理後廃棄物シュート内で滞積した前記処理後廃棄物を前記処理後廃棄物シュートの出口を開放することにより当該出口から放出させて前記処理後廃棄物容器内へ導入する処理後廃棄物導入工程と、を含む、請求項9又は10に記載の廃棄物処理方法。
【請求項12】
前記処理後廃棄物移替工程は、前記処理後廃棄物導入工程に先立って前記処理後廃棄物容器を持ち上げて前記処理後廃棄物シュートの出口に接近させる容器接近工程をさらに含み、
前記処理後廃棄物導入工程では、前記容器接近工程において前記処理後廃棄物シュートの出口に接近させた前記処理後廃棄物容器内へ前記処理後廃棄物シュートの出口から放出される前記処理後廃棄物を導入し、
前記処理後廃棄物移替工程は、前記処理後廃棄物導入工程の後、前記処理後廃棄物が収容された前記処理後廃棄物容器を降下させる容器降下工程、をさらに含む、請求項11に記載の廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学剤を含有する廃棄物、例えば、化学弾を爆破処理した後に残る残渣(弾殻の破片及びダスト)についてその廃棄物に含まれる化学剤が無害化するように当該廃棄物を加熱処理する廃棄物処理システムが知られている。下記特許文献1には、そのような廃棄物処理システムの一例としての無害化装置が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された無害化装置は、化学弾を爆破処理した後に残る爆破残渣を高温に加熱して化学剤を無害化する装置であり、爆破残渣を内部で高温に加熱する加熱炉と、加熱炉内から排出される排ガスを処理するガス処理装置と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示された無害化装置で用いられる加熱炉は、小型の電気炉であり、一度に加熱処理できる廃棄物の量は多くないため、大量の廃棄物を加熱処理する場合には、多数回に分けて加熱処理を行う必要がある。このため、加熱炉内への廃棄物の搬入、及び、加熱処理後の廃棄物の加熱炉内からの搬出を多数回行うことになり、その搬入及び搬出のための作業が非常に煩雑になる。
【0006】
また、一般に焼鈍炉として用いられている加熱炉では、その内部に設けられた耐火物からなる土台上に被処理物を直接載せて加熱処理を行うことが一般的である。このため、仮にこのような加熱炉で上記の爆破残渣のように多数の弾殻の破片及びダストを含んでいる廃棄物を被処理物として加熱処理を行う場合には、加熱炉内の土台上から加熱処理後の廃棄物を集めて回収する作業が非常に煩雑になる。
【0007】
本発明の目的は、化学剤を無害化するための加熱処理を大量の廃棄物について行う場合であっても、加熱炉内への廃棄物の搬入、加熱処理後の廃棄物の回収、及び、加熱処理後の廃棄物の加熱炉内からの搬出を容易に行える廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供される廃棄物処理システムは、廃棄物に含まれる化学剤が無害化するように前記廃棄物を加熱処理するものである。この廃棄物処理システムは、前記廃棄物の加熱処理を行う加熱炉と、前記廃棄物を収容する少なくとも1つの耐熱性の加熱処理用容器と、前記廃棄物を収容した前記加熱処理用容器を積載して前記加熱炉内に進入し、前記加熱炉での加熱処理の処理時間の間、前記加熱炉内に留まり、前記処理時間が経過した後、前記加熱処理用容器を積載した状態で前記加熱炉内から退出するように自走する台車と、を備える。
【0009】
この廃棄物処理システムでは、台車が自走することでその台車に積載された加熱処理用容器に収容された廃棄物を加熱炉内へ搬入できるとともに加熱処理後の廃棄物を加熱炉内から搬出できるため、化学剤を無害化するための加熱処理を大量の廃棄物について行う場合であっても、加熱炉内への廃棄物の搬入及び加熱処理後の廃棄物の加熱炉内からの搬出を容易に行える。しかも、この廃棄物処理システムでは、廃棄物が加熱処理用容器に収容された状態で加熱炉内において加熱処理されるため、廃棄物が多数の破片及びダストを含んでいる場合であっても加熱処理後の廃棄物を集めなくても加熱処理用容器ごと加熱処理後の廃棄物を加熱炉内から搬出できる。このため、加熱処理後の廃棄物の回収を容易に行える。また、化学剤を無害化するための加熱処理では非常に高い温度まで廃棄物を加熱するが、仮に廃棄物が耐熱性の低い容器に収容された状態でこのような加熱処理が行われた場合には容器が熱で変形し、その容器内から加熱処理後の廃棄物を取り出すことが困難になって加熱処理後の廃棄物の回収が困難になる虞がある。これに対し、この廃棄物処理システムでは、廃棄物を収容して加熱炉内で加熱処理される容器が耐熱性の加熱処理用容器であるため、化学剤を無害化するための高温の加熱処理の熱で加熱処理用容器が変形するのを抑制できる。そのため、加熱処理後の廃棄物を加熱処理用容器から容易に取り出すことができ、加熱処理後の廃棄物の回収を容易に行える。
【0010】
前記少なくとも1つの加熱処理用容器は、第1の加熱処理用容器及び第2の加熱処理用容器を含み、前記第1及び第2の加熱処理用容器は、それぞれ、その加熱処理用容器のうち前記廃棄物を受ける部分である廃棄物トレーと、その廃棄物トレーを囲むように構成されてその廃棄物トレーに固定されたフレームとを有し、前記第1及び第2の加熱処理用容器のそれぞれの前記フレームは、その第1及び第2の加熱処理用容器の前記廃棄物トレー同士の間に隙間が形成される形態で互いに上下に積み重ね可能に構成され、前記台車は、互いに積み重ねられた状態の前記第1及び第2の加熱処理用容器を積載して自走可能に構成され、前記加熱炉は、互いに積み重ねられた状態の前記第1及び第2の加熱処理用容器を積載した前記台車を受け入れ可能に構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、各々の廃棄物トレーに廃棄物を載せた第1及び第2の加熱処理用容器が積み重ねられてそれらの廃棄物トレー同士の間に隙間が形成された状態でその第1及び第2の加熱処理用容器を台車に積載して加熱炉内に搬入し、加熱処理を行うことができる。このため、加熱炉内での加熱処理において、互いに積み重ねられた状態の第1及び第2の加熱処理用容器の各々の廃棄物トレー同士の間に熱気が通り、その結果、それらの加熱処理用容器の各々の廃棄物トレーに載せられた廃棄物を効率的に加熱処理することができる。
【0012】
前記廃棄物処理システムは、前記第1及び第2の加熱処理用容器の前記フレーム同士が積み重ねられた状態でそれらのフレームが上下に分離するのを阻止するようにそれらのフレーム同士を連結する連結部材をさらに備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、加熱炉を収容する建屋の1階の床面よりも低い位置にある設置面上(例えば半地下の床面上)に加熱炉を設置して建屋の高さを低減して建屋の建設コストを低減しつつ、その加熱炉とともに前記設置面上に設置されて1階の床面よりも低い位置にある台車上にフォークリフトで1階の床面上から積み重ねられた状態の第1及び第2の加熱処理用容器を積載することができる。具体的には、積み重ねられた状態の第1及び第2加熱処理用容器を積載した台車を受け入れ可能な加熱炉の高さは必然的に大きくなり、しかもその加熱炉の上方にメンテナンス用の空間を確保する必要があることから、建屋の1階の床面上に加熱炉を設置する場合には、建屋の高さを大きく取らざるを得ず、建屋の建設コストが増大するが、高さの大きい加熱炉を1階の床面よりも低い位置にある設置面上に設置することで建屋の高さを低減でき、その結果、建屋の建設コストを低減できる。さらに、この構成によれば、フォークリフトが1階の床面上で積み重ねられた状態の第1及び第2の加熱処理用容器のうち上側の加熱処理用容器をフォークですくうことによってその上側の加熱処理用容器と連結された下側の加熱処理用容器も持ち上げることができるため、フォークを1階の床面よりも低い位置まで下ろせなくても、1階の床面上からその床面よりも低い位置にある台車上へ積み重ねられた状態の第1及び第2の加熱処理用容器を下ろして積載することができる。
【0014】
前記廃棄物トレーは、前記廃棄物を受ける面である受面を有し、前記受面は、その周縁部から中央部へ向かうにつれて高さが低下するように下向きに凸の湾曲した形状を有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、廃棄物トレーに載せられた加熱処理後の廃棄物を容易に残らず取り出すことができる。例えば、加熱処理用容器のうち廃棄物を受ける部分の受面が隅部を形成するように曲折した部分を有する場合には、加熱処理後の廃棄物を取り出す際、前記隅部に廃棄物が残り、加熱処理後の廃棄物を残らず取り出すことが困難になる。これに対し、本構成では、加熱処理用容器のうち廃棄物を受ける部分である廃棄物トレーの受面がその周縁部から中央部へ向かうにつれて高さが低下するように下向きに凸の湾曲した形状を有するため、隅部が形成されず、前記のような隅部への廃棄物の残存が生じない。このため、廃棄物トレーに載せられた加熱処理後の廃棄物を容易に残らず取り出すことができる。
【0016】
前記廃棄物処理システムは、加熱処理前の前記廃棄物である処理前廃棄物が収容されていて前記加熱処理用容器よりも耐熱性が低い処理前廃棄物容器から前記処理前廃棄物を前記加熱処理用容器へ移し替える処理前移替装置をさらに備えることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、廃棄物処理システムに供される処理前廃棄物を収容した処理前廃棄物容器の耐熱性が低い場合であっても、処理前移替装置によって処理前廃棄物容器からより耐熱性の高い加熱処理用容器へ処理前廃棄物を移し替えることができ、加熱炉内で容器ごと廃棄物が加熱処理される際に熱による容器の変形を回避できる。
【0018】
前記処理前移替装置は、前記加熱処理用容器よりも高い位置で前記処理前廃棄物容器から前記処理前廃棄物を放出させる処理前廃棄物放出装置と、前記処理前廃棄物放出装置により前記処理前廃棄物容器から放出された前記処理前廃棄物を受け入れて前記加熱処理用容器へ導く処理前廃棄物シュートと、前記処理前廃棄物シュートの出口に設けられ、前記処理前廃棄物シュート内を通って落下する前記処理前廃棄物が前記処理前廃棄物シュートの出口から放出されるのを阻止するように前記処理前廃棄物シュートの出口を塞ぐ処理前シュート出口閉塞状態と、前記処理前廃棄物が前記処理前廃棄物シュートの出口から放出されるのを許容するように前記処理前廃棄物シュートの出口を開放する処理前シュート出口開放状態とを取り得るように構成された処理前廃棄物ゲートと、を有することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、処理前廃棄物容器から処理前廃棄物を加熱処理用容器へ移し替えるときに処理前廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、加熱処理用容器内に一旦入った処理前廃棄物が落下の勢いで加熱処理用容器から飛び出したりするのを防ぐことができ、その結果、処理前廃棄物による周囲の環境への汚染の拡大を防ぐことができる。例えば、処理前廃棄物容器から処理前廃棄物シュート内に放出されてその処理前廃棄物シュート内を落下する処理前廃棄物がその勢いのまま処理前廃棄物シュートの出口から放出される場合には、処理前廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理前廃棄物が加熱処理用容器内に一旦入ったとしても勢いで加熱処理用容器から飛び出したりする虞がある。これに対し、本構成では、処理前廃棄物シュートの出口に、処理前廃棄物シュート内を通って落下する処理前廃棄物が処理前廃棄物シュートの出口から放出されるのを阻止するようにその出口を塞ぐ処理前シュート出口閉塞状態と、処理前廃棄物が処理前廃棄物シュートの出口から放出されるのを許容するようにその出口を開放する処理前シュート出口開放状態とを取り得るように構成された処理前廃棄物ゲートが設けられているため、処理前廃棄物が処理前廃棄物シュート内を落下するときには処理前廃棄物ゲートを処理前シュート出口閉塞状態にして処理前廃棄物シュートの出口を塞いで処理前廃棄物の落下の勢いを殺し、その後、処理前廃棄物シュート内の出口付近に滞積した処理前廃棄物を、処理前廃棄物ゲートを処理前シュート出口開放状態に切り換えることで処理前廃棄物シュートの出口から弱い勢いで放出させて加熱処理用容器内へ導入することができる。そのため、処理前廃棄物容器から処理前廃棄物を加熱処理用容器へ移し替えるときに処理前廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、加熱処理用容器内に一旦入った処理前廃棄物が落下の勢いで加熱処理用容器から飛び出したりするのを防ぐことができる。
【0020】
前記廃棄物処理システムは、加熱処理後の前記廃棄物である処理後廃棄物を前記加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ移し替える処理後移替装置をさらに備え、前記処理後移替装置は、前記加熱処理用容器から前記処理後廃棄物を取り出してその処理後廃棄物を前記処理後廃棄物容器よりも高い位置から落とす処理後廃棄物落下装置と、前記処理後廃棄物落下装置により落とされた前記処理後廃棄物を受け入れて前記処理後廃棄物容器へ導く処理後廃棄物シュートと、前記処理後廃棄物シュートの出口に設けられ、前記処理後廃棄物シュート内を通って落下する前記処理後廃棄物が前記処理後廃棄物シュートの出口から放出されるのを阻止するように前記処理後廃棄物シュートの出口を塞ぐ処理後シュート出口閉塞状態と、前記処理後廃棄物が前記処理後廃棄物シュートの出口から放出されるのを許容するように前記処理後廃棄物シュートの出口を開放する処理後シュート出口開放状態とを取り得るように構成された処理後廃棄物ゲートと、を有することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、処理後廃棄物を加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ移し替えるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器内にセットされる収容袋が処理後廃棄物の落下の勢いで傷ついたりするのを防ぐことができる。例えば、処理後廃棄物シュート内を落下する処理後廃棄物がその勢いのまま処理後廃棄物シュートの出口から放出される場合には、処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器内にセットされる収容袋内に処理後廃棄物が落下の勢いのまま飛び込んで収容袋が傷ついたりする虞がある。これに対し、本構成では、処理後廃棄物シュートの出口に、処理後廃棄物シュート内を通って落下する処理後廃棄物が処理後廃棄物シュートの出口から放出されるのを阻止するようにその出口を塞ぐ処理後シュート出口閉塞状態と、処理後廃棄物が処理後廃棄物シュートの出口から放出されるのを許容するようにその出口を開放する処理後シュート出口開放状態とを取り得るように構成された処理後廃棄物ゲートが設けられているため、処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート内を落下するときには処理後廃棄物ゲートを処理後シュート出口閉塞状態にして処理後廃棄物シュートの出口を塞いで処理後廃棄物の落下の勢いを止め、その後、処理後廃棄物シュート内の出口付近に滞積した処理後廃棄物を、処理後廃棄物ゲートを処理後シュート出口開放状態に切り換えることで処理後廃棄物シュートの出口から弱い勢いで放出させて処理後廃棄物容器内へ導入することができる。そのため、処理後廃棄物を加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ移し替えるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器内にセットされる収容袋が処理後廃棄物の落下の勢いで傷ついたりするのを防ぐことができる。
【0022】
前記処理後移替装置は、前記処理後廃棄物シュートの出口の下方において前記処理後廃棄物容器を支持するとともにその支持した処理後廃棄物容器を上下に昇降可能に構成された昇降装置をさらに有することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、処理後廃棄物シュートの出口から処理後廃棄物が放出されて処理後廃棄物容器内に導入されるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器内にセットされる収容袋が処理後廃棄物の落下の勢いで傷ついたりするのをより確実に防ぐことができる。具体的に、処理後廃棄物シュートの出口から処理後廃棄物が放出されるときには昇降装置により処理後廃棄物容器を持ち上げて処理後廃棄物シュートの出口に接近させ、それによって、処理後廃棄物シュートの出口と処理後廃棄物容器との間の間隙から処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散するのをより確実に防ぐことができるとともに、処理後廃棄物容器内への処理後廃棄物の落下の勢いを低減して収容袋が傷つくのをより確実に防ぐことができる。
【0024】
本発明により提供される廃棄物処理方法は、廃棄物に含まれる化学剤が無害化するように前記廃棄物を加熱処理する廃棄物処理方法である。この廃棄物処理方法は、加熱処理前の前記廃棄物が収容された処理前廃棄物容器からその処理前廃棄物容器よりも高い耐熱性を有する加熱処理用容器へ前記廃棄物を移し替える処理前廃棄物移替工程と、前記処理前廃棄物移替工程により前記廃棄物が収容された前記加熱処理用容器を台車上に積載する積載工程と、前記台車が自走して加熱炉内に進入することにより前記廃棄物を収容した前記加熱処理用容器を前記加熱炉内に搬入する搬入工程と、前記加熱炉内に搬入された前記加熱処理用容器に収容された前記廃棄物を前記加熱処理用容器ごと加熱処理する加熱処理工程と、前記加熱炉での加熱処理の処理時間の経過後、前記台車が自走して前記加熱炉内から退出することにより加熱処理後の前記廃棄物を収容した前記加熱処理用容器を前記加熱炉内から搬出する搬出工程と、を備える。
【0025】
この廃棄物処理方法では、台車が自走することでその台車に積載された加熱処理用容器に収容された廃棄物を加熱炉内へ搬入できるとともに加熱処理後の廃棄物を加熱炉内から搬出できるため、化学剤を無害化するための加熱処理を大量の廃棄物について行う場合であっても、加熱炉内への廃棄物の搬入及び加熱処理後の廃棄物の加熱炉内からの搬出を容易に行える。しかも、この廃棄物処理方法では、加熱処理工程において、加熱処理用容器に収容された廃棄物を加熱処理用容器ごと加熱処理するため、廃棄物が多数の破片及びダストを含んでいる場合であっても加熱処理後の廃棄物を集めなくても加熱処理用容器ごと加熱処理後の廃棄物を加熱炉内から搬出できる。このため、加熱処理後の廃棄物の回収を容易に行える。さらに、この廃棄物処理方法では、処理前廃棄物容器からそれよりも高い耐熱性を有する加熱処理用容器へ廃棄物が移し替えられ、その加熱処理用容器に収容された廃棄物を加熱処理用容器ごと加熱処理するため、化学剤を無害化するための高温の加熱処理の熱で加熱処理用容器が変形するのを抑制できる。そのため、加熱処理後の廃棄物を加熱処理用容器から容易に取り出すことができ、加熱処理後の廃棄物の回収を容易に行える。
【0026】
前記処理前廃棄物移替工程は、前記加熱処理用容器よりも高い位置に配置されていてその内部を通して前記加熱処理用容器へ加熱処理前の前記廃棄物を導く処理前廃棄物シュートの出口を塞いだ状態で前記処理前廃棄物容器から放出させた加熱処理前の前記廃棄物を当該廃棄物が前記処理前廃棄物シュート内を落下するようにその処理前廃棄物シュート内に投入する処理前廃棄物投入工程と、前記処理前廃棄物投入工程の後、前記処理前廃棄物シュートの出口が塞がれていることによって前記処理前廃棄物シュート内で滞積した加熱処理前の前記廃棄物を前記処理前廃棄物シュートの出口を開放することにより当該出口から放出させて前記加熱処理用容器内へ導入する処理前廃棄物導入工程と、を含むことが好ましい。
【0027】
こうすれば、処理前廃棄物容器から加熱処理前の廃棄物を加熱処理用容器へ移し替えるときにその廃棄物に含まれる粉状のものが当該廃棄物の落下の勢いで飛散したり、加熱処理用容器に一旦入った加熱処理前の廃棄物が落下の勢いで加熱処理用容器から飛び出したりするのを防ぐことができ、その結果、加熱処理前の廃棄物による周囲の環境への汚染の拡大を防ぐことができる。具体的には、処理前廃棄物投入工程において、処理前廃棄物シュートの出口を塞いだ状態で処理前廃棄物容器から放出させた加熱処理前の廃棄物を当該廃棄物が処理前廃棄物シュート内を落下するようにその処理前廃棄物シュート内に投入するため、処理前廃棄物シュートの出口で廃棄物の落下の勢いを止めて処理前廃棄物シュート内の前記出口付近に廃棄物を滞積させ、その後、処理前廃棄物導入工程において処理前廃棄物シュートの出口を開放することにより、処理前廃棄物シュート内で滞積した廃棄物を処理前廃棄物シュートの出口から弱い勢いで放出させて加熱処理用容器内に導入することができる。そのため、処理前廃棄物容器から処理前廃棄物を加熱処理用容器へ移し替えるときに加熱処理前の廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、加熱処理用容器内に一旦入った加熱処理前の廃棄物が落下の勢いで加熱処理用容器から飛び出したりするのを防ぐことができる。
【0028】
前記廃棄物処理方法は、前記搬出工程の後、加熱処理後の前記廃棄物である処理後廃棄物が収容された前記加熱処理用容器を前記台車上から降ろす降し工程と、前記台車上から降ろされた前記加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ前記処理後廃棄物を移し替える処理後廃棄物移替工程と、をさらに備え、前記処理後廃棄物移替工程は、前記処理後廃棄物容器よりも高い位置に配置されていてその内部を通して前記処理後廃棄物容器へ前記処理後廃棄物を導く処理後廃棄物シュートの出口を塞いだ状態で、前記台車上から降ろされた前記加熱処理用容器から取り出した前記処理後廃棄物を当該処理後廃棄物が前記処理後廃棄物シュート内を落下するようにその処理後廃棄物シュート内に投入する処理後廃棄物投入工程と、前記処理後廃棄物投入工程の後、前記処理後廃棄物シュートの出口が塞がれていることによって前記処理後廃棄物シュート内で滞積した前記処理後廃棄物を前記処理後廃棄物シュートの出口を開放することにより当該出口から放出させて前記処理後廃棄物容器内へ導入する処理後廃棄物導入工程と、を含むことが好ましい。
【0029】
こうすれば、処理後廃棄物を加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ移し替えるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが処理後廃棄物の落下の勢いで飛散したり、処理後廃棄物容器内にセットされる収容袋が処理後廃棄物の落下の勢いで傷ついたりするのを防ぐことができる。具体的には、処理後廃棄物投入工程において、処理後廃棄物シュートの出口を塞いだ状態で加熱処理用容器から取り出した処理後廃棄物を当該処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート内を落下するようにその処理後廃棄物シュート内に投入するため、処理後廃棄物シュートの出口で処理後廃棄物の落下の勢いを止めて処理後廃棄物シュート内の前記出口付近に処理後廃棄物を滞積させ、その後、処理後廃棄物導入工程において処理後廃棄物シュートの出口を開放することにより、処理後廃棄物シュート内で滞積した処理後廃棄物を処理後廃棄物シュートの出口から弱い勢いで放出させて処理後廃棄物容器に導入することができる。そのため、処理後廃棄物を加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ移し替えるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが処理後廃棄物の落下の勢いで飛散したり、処理後廃棄物容器内にセットされる収容袋が処理後廃棄物の落下の勢いで傷ついたりするのを防ぐことができる。
【0030】
前記処理後廃棄物移替工程は、前記処理後廃棄物導入工程に先立って前記処理後廃棄物容器を持ち上げて前記処理後廃棄物シュートの出口に接近させる容器接近工程をさらに含み、前記処理後廃棄物導入工程では、前記容器接近工程において前記処理後廃棄物シュートの出口に接近させた前記処理後廃棄物容器内へ前記処理後廃棄物シュートの出口から放出される前記処理後廃棄物を導入し、前記処理後廃棄物移替工程は、前記処理後廃棄物導入工程の後、前記処理後廃棄物が収容された前記処理後廃棄物容器を降下させる容器降下工程、をさらに含むことが好ましい。
【0031】
こうすれば、処理後廃棄物シュートの出口から処理後廃棄物が放出されて処理後廃棄物容器内に導入されるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器内にセットされる収容袋が処理後廃棄物の落下の勢いで傷ついたりするのをより確実に防ぐことができる。具体的には、容器接近工程において処理後廃棄物容器を持ち上げて処理後廃棄物シュートの出口に接近させておき、処理後廃棄物導入工程では、その処理後廃棄物シュートの出口に接近させた処理後廃棄物容器内へ処理後廃棄物シュートの出口から放出される処理後廃棄物を導入するため、処理後廃棄物シュートの出口と処理後廃棄物容器との間の隙間から処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散するのをより確実に防ぐことができるとともに、処理後廃棄物容器内への処理後廃棄物の落下の勢いをより低減して収容袋が傷つくのをより確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、化学剤を無害化するための加熱処理を大量の廃棄物について行う場合であっても、加熱炉内への廃棄物の搬入、加熱処理後の廃棄物の回収、及び、加熱処理後の廃棄物の加熱炉内からの搬出を容易に行うことが可能な廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態による廃棄物処理システムの処理前廃棄物容器から加熱処理用容器へ処理前廃棄物を移し替えるセクション及び処理前廃棄物が収容された加熱処理用容器を運搬する工程を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による廃棄物処理システムの台車へ加熱処理用容器を積載する工程、台車による加熱炉内への廃棄物の搬入、加熱炉内での加熱処理、台車による加熱処理後の廃棄物の加熱炉内からの搬出及び冷却炉への搬入、冷却炉内での冷却処理、台車による冷却炉内からの廃棄物の搬出、及び、台車から加熱処理用容器を降ろして運搬する工程を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態による廃棄物処理システムの加熱処理用容器から処理後廃棄物容器へ処理後廃棄物を移し替えるセクションを示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態による廃棄物処理システムに用いられる加熱処理用容器の正面図である。
【
図5】
図4に示した加熱処理用容器の側面図である。
【
図6】
図4に示した加熱処理用容器の平面図(上面図)である。
【
図7】
図4中のVII-VII位置における加熱処理用容器の断面図である。
【
図8】積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器及び上段加熱処理用容器の正面図である。
【
図9】積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器及び上段加熱処理用容器の側面図である。
【
図10】積み重ねられて互いに連結された下段加熱処理用容器及び上段加熱処理用容器の正面図であって上段加熱処理用容器が持ち上げられたときの状態を示す図である。
【
図11】積み重ねられて互いに連結された下段加熱処理用容器及び上段加熱処理用容器の側面図であって上段加熱処理用容器が持ち上げられたときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0035】
本発明の一実施形態による廃棄物処理システム1は、化学剤を含有する廃棄物をその廃棄物に含まれる化学剤が無害化するように加熱処理するものである。以下、本実施形態による廃棄物処理システム1のことを単に処理システム1と称する。本実施形態の処理システム1により処理される前記廃棄物は、例えば、化学弾が爆破処理されて生じる破砕された多数の弾殻の破片及びダスト等を含む爆破残渣である。また、この廃棄物に含まれる化学剤は、例えば、マスタード、ルイサイト、ジフェニルシアノアルシン、ジフェニルクロロアルシン、クロロアセトフェノン等である。加熱処理前の廃棄物である処理前廃棄物は処理前廃棄物容器100に収容され、その処理前廃棄物容器100が密封された状態で処理システム1に供される。処理前廃棄物容器100は、本実施形態では鋼鉄製のドラム缶であり、後述の加熱処理用容器10よりも耐熱性が低いものである。
【0036】
本実施形態による処理システム1は、
図1~
図3に示されるように、エレベータ2と、ローラコンベア4と、処理前移替装置6と、複数の加熱処理用容器10と、リーチリフト11と、フォークリフト12と、加熱炉13と、冷却炉14と、台車15と、処理後移替装置16と、を備える。
【0037】
エレベータ2は、処理前廃棄物が収容された処理前廃棄物容器100を、処理システム1が設置される建屋の1階から2階へ持ち上げる装置である。建屋の2階には、密封された処理前廃棄物容器100を開封するための開封室22が設けられており、エレベータ2によって持ち上げられた処理前廃棄物容器100は、自動的に開封室22内へ送り込まれるようになっている。
【0038】
ローラコンベア4は、開封室22内に設置され、開封室22内に送り込まれた処理前廃棄物容器100を載せて搬送するものである。開封室22内において、このローラコンベア4上で作業者により処理前廃棄物容器100が開封される、すなわち処理前廃棄物容器100の上部の蓋100aが外されて当該処理前廃棄物容器100の開口が開放されるようになっている。
【0039】
処理前移替装置6は、処理前廃棄物容器100から処理前廃棄物を加熱処理用容器10へ移し替える装置である。この処理前移替装置6は、ローラコンベア4による搬送方向の下流側に設置されている。処理前移替装置6は、処理前廃棄物放出装置23と、処理前廃棄物シュート24と、処理前廃棄物ゲート25と、を有する。
【0040】
処理前廃棄物放出装置23は、建屋の1階に設置された加熱処理用容器10よりも高い位置、具体的には建屋の2階において処理前廃棄物容器100から処理前廃棄物を放出させる装置である。具体的には、この処理前廃棄物放出装置23は、前記のように作業者により開封されてローラコンベア4によって搬送されてきた処理前廃棄物容器100を持ち上げて反転させ、それによって処理前廃棄物容器100内の処理前廃棄物をその処理前廃棄物容器100の開口から放出させるように構成されている。
【0041】
処理前廃棄物シュート24は、処理前廃棄物放出装置23により処理前廃棄物容器100から放出された処理前廃棄物を受け入れてその処理前廃棄物を建屋の1階に設置された加熱処理用容器10へ導くものである。この処理前廃棄物シュート24は、建屋の2階の床を貫通してその2階から1階に亘って設置されている。処理前廃棄物シュート24は、受入部26と、ガイド部27とを有する。
【0042】
受入部26は、処理前廃棄物放出装置23により処理前廃棄物容器100から放出された処理前廃棄物を受け入れる部分であり、その上部が建屋の2階に設置されているとともに、その下部が建屋の2階の床を貫通して1階に突出している。受入部26は、筒状に構成され、その上部に対して下部が窄まっている。
【0043】
ガイド部27は、受入部26内を通って当該受入部26の下部の出口から落下する処理前廃棄物を加熱処理用容器10へ導く部分である。ガイド部27は、建屋の1階において受入部26の下部の出口から落下する処理前廃棄物を受けるように配置されているとともに、受けた処理前廃棄物が加熱処理用容器10へ向かって当該ガイド部27内を斜めに滑り落ちるように傾斜している。
【0044】
処理前廃棄物ゲート25は、処理前廃棄物シュート24の下端部の出口、すなわちガイド部27の出口に設けられている。この処理前廃棄物ゲート25は、処理前シュート出口閉塞状態と、処理前シュート出口開放状態とを取り得るように構成されている。前記処理前シュート出口閉塞状態は、処理前廃棄物シュート24内を通って落下する処理前廃棄物、具体的にはガイド部27内を滑り落ちる処理前廃棄物がガイド部27の出口から放出されるのを阻止するようにそのガイド部27の出口を塞ぐ状態である。前記処理前シュート出口開放状態は、処理前廃棄物がガイド部27の出口から放出されるのを許容するようにガイド部27の出口を開放する状態である。処理前廃棄物ゲート25は、前記処理前シュート出口閉塞状態になることでガイド部27の出口において処理前廃棄物の放出を阻止して、処理前廃棄物シュート24内を落下する処理前廃棄物の落下の勢いを止め、その後、前記処理前シュート出口開放状態に切り換わることにより、ガイド部27内において当該処理前廃棄物ゲート25の上流側に滞積した処理前廃棄物を弱い勢いでガイド部27の出口から放出させるように構成されている。
【0045】
処理前廃棄物ゲート25は、処理前廃棄物ストッパ30と、図略のストッパ駆動部とを有する。
【0046】
処理前廃棄物ストッパ30は、板状のものであり、
図1に示すように、ガイド部27の出口を塞ぐ閉塞位置30aとガイド部27の出口を開放する開放位置30bとの間で回動可能となるようにガイド部27に設置されている。処理前廃棄物ストッパ30が閉塞位置30aにある状態が前記処理前シュート出口閉塞状態であり、処理前廃棄物ストッパ30が開放位置30bにある状態が前記処理前シュート出口開放状態である。
【0047】
前記ストッパ駆動部は、処理前廃棄物ストッパ30を閉塞位置30aと開放位置30bとの間で移動させる駆動装置である。
【0048】
処理前廃棄物ゲート25は、処理前廃棄物放出装置23により処理前廃棄物容器100が反転される前、すなわち処理前廃棄物シュート24に処理前廃棄物が投入される前からストッパ駆動部が処理前廃棄物ストッパ30を閉塞位置30aに配置することにより前記処理前シュート出口閉塞状態になっており、処理前廃棄物放出装置23により処理前廃棄物容器100が反転された時点から所定時間の間、前記処理前シュート出口閉塞状態で維持される。そして、前記所定時間の経過後、ストッパ駆動部が処理前廃棄物ストッパ30を開放位置30bへ移動させ、それによって処理前廃棄物ゲート25が前記処理前シュート出口開放状態に切り換わるようになっている。前記所定時間は予め設定されている。具体的には、処理前廃棄物放出装置23により処理前廃棄物容器100が反転された時点からその処理前廃棄物容器100内の全ての処理前廃棄物が処理前廃棄物シュート24の出口(ガイド部27の出口)から放出されるまでにかかる時間が予め計測され、その計測された時間よりも長い時間に前記所定時間が設定されている。
【0049】
複数の加熱処理用容器10は、それぞれ、処理前廃棄物シュート24の出口(ガイド部27の出口)から放出された処理前廃棄物を受けて収容する容器であり、その処理前廃棄物を収容した状態で後述のように加熱炉13へ搬送されてその加熱炉13内で加熱処理を受ける。このため、各加熱処理用容器10は、高い耐熱性を有する素材、すなわち熱変形に対する高い耐性を有する素材によって形成され、具体的にはステンレス鋼(例えばSUS310S)によって形成されている。つまり、各加熱処理用容器10は、処理前廃棄物容器100の素材である鋼鉄よりも耐熱性が高い素材によって形成されている。また、加熱処理用容器10は、二段に積み重ね可能に構成されている。すなわち、前記複数の加熱処理用容器10は、下段加熱処理用容器10aとその上に積み重ねられる上段加熱処理用容器10bとを含んでいる。下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bは、本発明における第1の加熱処理用容器及び第2の加熱処理用容器の一例である。
【0050】
各加熱処理用容器10は、
図4及び
図5に示されるように、廃棄物トレー52と、フレーム54とを有する。
【0051】
廃棄物トレー52は、加熱処理用容器10のうち廃棄物を受ける部分であり、その周縁部から中央部へ向かうにつれて高さが低下するように下向きに凸の湾曲した形状、すなわち椀状をなしている。廃棄物トレー52は、ステンレス鋼(例えばSUS310S)によって形成されている。廃棄物トレー52は、
図6に示されるように、上方から見て円形の外形を有するとともにその上部に円形の開口を有する。廃棄物トレー52は、当該廃棄物トレー52の内側の面であって廃棄物を受ける面である受面52a(
図4参照)を有する。この受面52aは、その周縁部から中央部へ向かうにつれて高さが低下するように下向きに凸の湾曲した形状を有する。すなわち、この受面52aは、その周縁部の位置が最も高く且つその中央部の位置が最も低くなるように湾曲した凹面である。また、廃棄物トレー52は、当該廃棄物トレー52の外側の面である外面52bを有する。この外面52bは、前記受面52aに沿うように湾曲した形状を有する凸面である。
【0052】
フレーム54は、廃棄物トレー52を囲むように構成されてその廃棄物トレー52に溶接によって固定されている。このフレーム54は、廃棄物トレー52と同様のステンレス鋼によって形成されている。下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bのそれぞれのフレーム54は、
図8及び
図9に示されるように、下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bの廃棄物トレー52同士の間に隙間が形成される形態で互いに上下に積み重ね可能に構成されている。
【0053】
フレーム54は、
図4~
図6に示されるように、ベース部56と、複数の脚部58と、上枠60と、複数のブラケット62と、を有する。
【0054】
ベース部56は、加熱処理用容器10の底部を構成するものである。ベース部56は、平面視で矩形状の外形をなしている。このベース部56は、フォークリフト12のフォーク12aを差し込むための差込凹部64と、後述の連結棒80を挿入するための挿通孔66とを有する。
【0055】
ベース部56は、互いに直交して延びるように組み合わされて接合された複数の横板68と複数の縦板69を有し、前記差込凹部64と前記挿通孔66は、各横板68に設けられている。具体的に、各横板68には2つの差込凹部64が設けられており、その2つの差込凹部64は横板68の延び方向に間隔をあけて配置されている。各差込凹部64は、横板68の下端から上向きに窪んでいる。また、各横板68には2つの挿通孔66が設けられており、その2つの挿通孔66は、横板68の延び方向において前記2つの差込凹部64の両外側に配置され、各横板68をその板厚方向に貫通している。
【0056】
複数の脚部58は、ベース部56上に立設されている。具体的には、
図7に示されるように、脚部58は、平面視で、ベース部56の四隅の上にそれぞれ立設されるとともに、ベース部56の四辺のそれぞれの中央位置においてベース部56上にそれぞれ立設されている。
【0057】
上枠60は、4本の枠材が矩形状に組み合わされて互いに接合されることによって形成されている。この上枠60は、前記複数の脚部58のそれぞれの上端部に固定されている。前記廃棄物トレー52は、この上枠60と、前記複数の脚部58のうちベース部56の四辺のそれぞれの中央位置に立設された4本の脚部58とに対して接合されて固定されている。
【0058】
ブラケット62は、二段の加熱処理用容器10が積み重ねられた状態で上段加熱処理用容器10bのベース部56の挿通孔66に挿通される後述の連結棒80と結合する部分である。各加熱処理用容器10のフレーム54は、4つのブラケット62を有しており、その4つのブラケット62は互いに向かい合うように配置されたもの同士が対になっている。すなわち、各加熱処理用容器10のフレーム54は、二対のブラケット62を有する。その二対のブラケット62は、それらの間に前記2つの挿通孔66の間の間隔と対応する間隔をあけて配置されている。各ブラケット62は、アーチ状をなし、上枠60から上側へ突出するように上枠60に固定されている。各ブラケット62は、そのアーチ状の内側を向く当該ブラケット62の内側面と上枠60の上面とで連結棒80が挿通される空間を囲むように構成されている。このブラケット62の内側面と上枠60の上面とによって囲まれた空間に連結棒80が挿通されることにより、ブラケット62が連結棒80と結合するようになっている。
【0059】
本実施形態による処理システム1は、下段加熱処理用容器10aと上段加熱処理用容器10の各々のフレーム54同士が積み重ねられた状態でそれらのフレーム54が上下に分離するのを阻止するようにそれらのフレーム54同士を連結する複数の連結棒80(
図10及び
図11参照)を備えている。この連結棒80は、本発明における連結部材の一例である。この連結棒80は、下段加熱処理用容器10aのフレーム54と上段加熱処理用容器10bのフレーム54とが積み重ねられた状態で、上段加熱処理用容器10bのフレーム54のベース部56に設けられた各挿通孔66と、下段加熱処理用容器10aのフレーム54の対応するブラケット62の内側面及び上枠60の上面によって囲まれた空間とに挿通され、それによって、その下段加熱処理用容器10aのフレーム54と上段加熱処理用容器10bのフレーム54とが上下に分離するのを阻止するようにそれらのフレーム54同士を連結する。
【0060】
図10及び
図11は、積み重ねられて互いに連結された状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bのうちの上段加熱処理用容器10bが後述のように持ち上げられたときの状態を示しているため、下段加熱処理用容器10aのフレーム54の上枠60と上段加熱処理用容器10bのフレーム54のベース部56との間に隙間が生じているが、上段加熱処理用容器10bが下段加熱処理用容器10a上に積載された状態では、下段加熱処理用容器10bの上枠60の上面に上段加熱処理用容器10bのベース部56が接触するように、その下段加熱処理用容器10bの上枠60上に上段加熱処理用容器10bのベース部56が載置される。
【0061】
連結棒80は、連結棒本体81と、2つの離脱阻止部82とを有する。
【0062】
連結棒本体81は、直線的に延びる棒状をなし、前記ブラケット62の内側の向く面と上枠60の上面とによって囲まれた空間と、前記挿通孔66とに挿通される部分である。
【0063】
2つの離脱阻止部82は、連結棒本体81の延び方向における両端にそれぞれ取り付けられている。各離脱阻止部82は、連結棒本体81が下段加熱処理用容器10aのブラケット62の内側面と上枠60の上面とによって囲まれた空間に挿通された状態で、連結棒80が連結棒本体81の延び方向に沿ってブラケット62から離脱する向きに変位した場合にそのブラケット62から当該連結棒80が離脱するのを阻止する部分である。各離脱阻止部82は、連結棒本体81の延び方向に対して直交する方向において連結棒本体81から外側へ突出する突出部82aを有し、前記のように連結棒80がブラケット62から離脱する向きに変位した場合にこの突出部82aがブラケット62に当接することによってブラケット62からの連結棒80の離脱が阻止されるようになっている。連結棒本体81の延び方向に対して直交する方向における当該離脱阻止部82の寸法は、ブラケット62の内側面と上枠60の上面とによって囲まれた空間、及び、前記挿通孔66を当該離脱阻止部82が通過可能な寸法となっている。連結棒80によって下段加熱処理用容器10aのフレーム54と上段加熱処理用容器10bのフレーム54とが連結されるときには、前記突出部82aが上向きに突出するように連結棒80が配置される。
【0064】
リーチリフト11は、処理前移替装置6により処理前廃棄物が入れられた加熱処理用容器10を仮置場所まで運搬するために用いられ、また、加熱処理後に冷却炉14での冷却処理が終わった後、台車15によって冷却炉14から搬出され、フォークリフト12によって運搬されて仮置場所に仮置きされた加熱処理用容器10を処理後移替装置16まで運搬するために用いられるものである。
【0065】
フォークリフト12は、廃棄物が収容された加熱処理用容器10を運搬するものである。具体的には、フォークリフト12は、上下に積み重ねられて互いに連結された下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bをそれらの仮置場所から運搬して台車15上に積載するために用いられ、また、加熱処理後に冷却炉14での冷却処理が終わった後、台車15によって冷却炉14から搬出された下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを台車15上から持ち上げるとともに仮置場所まで運搬するために用いられるものである。このフォークリフト12は、昇降可能なフォーク12aを有し、このフォーク12aにより加熱処理用容器10を持ち上げる。
【0066】
加熱炉13は、廃棄物に含まれる化学剤が無害化するようにその廃棄物の加熱処理を行うものである。この加熱炉13は、例えば、その炉内の温度が900℃で8時間に亘る加熱処理を行う。加熱炉13は、建屋の1階の床面よりも低い位置にある半地下の床面上に設置されている。前記半地下の床面は、本発明における設置面の一例である。加熱炉13は、半地下の床面から建屋の1階の空間を越えて2階の空間に達する高さを有する。加熱炉13は、互いに積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載した台車15をその炉内に受け入れ可能に構成されている。
【0067】
冷却炉14は、加熱炉13で加熱処理された後の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを台車15ごと受け入れて、各加熱処理用容器10及びそれらに収容された加熱処理後の廃棄物(処理後廃棄物)を冷却するものである。この冷却炉14は、例えば、外気温と同等の温度の空気がその炉内に流れるようになっており、その炉内で約24時間保持することにより、各加熱処理用容器10及びそれらに収容された処理後廃棄物の温度を低下させる。
【0068】
台車15は、廃棄物を収容した加熱処理用容器10を積載して自走し、その廃棄物を収容した加熱処理用容器10の加熱炉13内への搬入及び加熱炉13内からの搬出、また、加熱処理後の廃棄物を収容した加熱処理用容器10の冷却炉14内への搬入及び冷却炉14内からの搬出を行うものである。台車15は、廃棄物をそれぞれ収容して互いに積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載して自走可能に構成されている。この台車15は、互いに積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載して加熱炉13内に進入し、加熱炉13での加熱処理の処理時間の間、加熱炉13内に留まり、前記処理時間が経過した後、下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載した状態で加熱炉13内から退出し、その後、冷却炉14内に進入してその冷却炉14での冷却処理の処理時間の間、冷却炉14内に留まり、その冷却処理の処理時間が経過した後、冷却炉14から退出するように自走する。この台車15は、前記半地下の床面上に設置されている。
【0069】
処理後移替装置16(
図3参照)は、加熱処理後に冷却された後の廃棄物である処理後廃棄物を加熱処理用容器10から処理後廃棄物容器101へ移し替える装置である。処理後廃棄物容器101は、本実施形態では処理前廃棄物容器100と同様のドラム缶である。処理後移替装置16は、処理後廃棄物落下装置38と、処理後廃棄物シュート40と、処理後廃棄物ゲート42と、図略の計量器と、昇降装置43と、を有する。
【0070】
処理後廃棄物落下装置38は、加熱炉13での加熱処理及び冷却炉14での冷却処理を経た後の処理後廃棄物を収容した加熱処理用容器10から処理後廃棄物を取り出してその処理後廃棄物を処理後廃棄物容器101よりも高い位置から落とす装置である。この処理後廃棄物落下装置38は、処理後容器反転装置44と、エプロンコンベア46と、を有する。
【0071】
処理後容器反転装置44は、加熱処理及び冷却処理を経た後の処理後廃棄物を収容した加熱処理用容器10を持ち上げてその加熱処理用容器10から処理後廃棄物が放出されるように当該加熱処理用容器10を反転させる装置である。この処理後容器反転装置44は、加熱処理用容器10から放出される処理後廃棄物がエプロンコンベア46上に落下するように加熱処理用容器10を反転させる。
【0072】
エプロンコンベア46は、その上に落下した処理後廃棄物を搬送する装置であり、その搬送方向の下流側へ向かうにつれて高くなるように斜めに配置されている。このエプロンコンベア46の搬送方向における下流側の端部は、処理後廃棄物シュート40の上方に配置されており、その下流側の端部から当該エプロンコンベア46上の処理後廃棄物が落下するようになっている。
【0073】
処理後廃棄物シュート40は、処理後廃棄物落下装置38により落とされた処理後廃棄物、すなわち前記エプロンコンベア46の下流側の端部から落とされた処理後廃棄物を受け入れてその処理後廃棄物を処理後廃棄物容器101の開口へ導くものである。処理後廃棄物シュート40は、中空状をなしているとともに、その上端部が処理後廃棄物を受け入れるために開口した入口となっており、その下端部が当該処理後廃棄物シュート40内を通って落下する処理後廃棄物を放出するために開口した出口となっている。処理後廃棄物シュート40の出口は、当該処理後廃棄物シュート40の入口よりも小径となっている。
【0074】
処理後廃棄物ゲート42は、処理後廃棄物シュート40の出口に設けられている。この処理後廃棄物ゲート42は、処理後廃棄物シュート40内を通って落下する処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート40の出口から放出されるのを阻止するように処理後廃棄物シュート40の出口を塞ぐ処理後シュート出口閉塞状態と、処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート40の出口から放出されるのを許容するように処理後廃棄物シュート40の出口を開放する処理後シュート出口開放状態とを取り得るように構成されている。処理後廃棄物ゲート42は、前記処理後シュート出口閉塞状態になることで処理後廃棄物シュート40の出口において処理後廃棄物の放出を阻止してその処理前廃棄物の落下の勢いを止め、その後、前記処理後シュート出口開放状態に切り換わることにより、処理後廃棄物シュート40内において当該処理後廃棄物ゲート42の上側に滞積した処理後廃棄物を弱い勢いで処理後廃棄物シュート40の出口から落下させるように構成されている。
【0075】
処理後廃棄物ゲート42は、一対の処理後廃棄物ストッパ48と、ストッパ回動中心部49と、図略のストッパ駆動部と、を有する。
【0076】
一対の処理後廃棄物ストッパ48は、それぞれ板状のものであり、ストッパ回動中心部49を介して処理後廃棄物シュート40に取り付けられている。一対の処理後廃棄物ストッパ48のそれぞれは、
図3に示すように、ストッパ回動中心部49を中心として、処理後廃棄物シュート40の出口を塞ぐ閉塞位置48aと処理後廃棄物シュート40の出口を開放する開放位置48bとの間で回動可能となっている。一対の処理後廃棄物ストッパ48が閉塞位置48aにある状態が前記処理後シュート出口閉塞状態であり、一対の処理後廃棄物ストッパ48が開放位置48bにある状態が前記処理後シュート出口開放状態である。
【0077】
図略のストッパ駆動部は、一対の処理後廃棄物ストッパ48を同時に閉塞位置48aと開放位置48bとの間で移動させる駆動装置である。
【0078】
図略の計量器は、処理後廃棄物シュート40に付設されており、前記エプロンコンベア46から処理後廃棄物シュート40内に投入された処理後廃棄物の重量、すなわち処理後廃棄物シュート40内に溜まった処理後廃棄物の重量を計測する装置である。
【0079】
処理後廃棄物ゲート42は、処理後容器反転装置44により加熱処理用容器10が反転される前からストッパ駆動部が一対の処理後廃棄物ストッパ48を閉塞位置48aに配置することにより前記処理後シュート出口閉塞状態になっており、処理後容器反転装置44により加熱処理用容器10が反転されてから前記計量器によって計測される処理後廃棄物シュート40内への処理後廃棄物の投入量(重量)が所定量に達するまで前記処理後シュート出口閉塞状態で維持される。そして、前記計量器によって計測される処理後廃棄物シュート40内への処理後廃棄物の投入量が所定量に達した後、ストッパ駆動部が一対の処理後廃棄物ストッパ48を開放位置48bへ移動させ、それによって処理後廃棄物ゲート42が前記処理後シュート出口開放状態に切り換わるようになっている。
【0080】
昇降装置43は、処理後廃棄物シュート40の出口の下方において処理後廃棄物容器101を支持するとともにその支持した処理後廃棄物容器101を上下に昇降可能に構成されている。この昇降装置43は、その上に処理後廃棄物容器101を載せてその処理後廃棄物容器101の開口が上向きになる姿勢で当該処理後廃棄物容器101を支持し、その状態で当該昇降装置43の高さが変化することで処理後廃棄物容器101を昇降させる。この昇降装置43は、処理後廃棄物シュート40の出口から処理後廃棄物が放出されるときには処理後廃棄物容器101を持ち上げて処理後廃棄物シュート40の出口に接近させておき、処理後廃棄物容器101内への処理後廃棄物の収容が完了した後、その処理後廃棄物を収容した処理後廃棄物容器101を降下させるように構成されている。
【0081】
次に、本実施形態の処理システム1により行われる廃棄物処理方法、すなわち、廃棄物に含まれる化学剤が無害化するように廃棄物を加熱処理する廃棄物処理方法について説明する。この廃棄物処理方法は、以下に説明される、処理前廃棄物移替工程、連結工程、積載工程、加熱炉内搬入工程、加熱処理工程、加熱炉外搬出工程、冷却炉内搬入工程、冷却工程、冷却炉外搬出工程、降し工程、連結解除工程、及び、処理後廃棄物移替工程を含む。
【0082】
この廃棄物処理方法では、まず、処理前廃棄物が収容された密封状態の処理前廃棄物容器100がエレベータ2(
図1参照)内に送り込まれ、そのエレベータ2により処理前廃棄物容器100が建屋の1階から2階へ持ち上げられる。この2階へ持ち上げられた処理前廃棄物容器100は、自動的に開封室22内へ送り込まれる。
【0083】
開封室22内に送り込まれた処理前廃棄物容器100は、ローラコンベア4によって搬送され、その途中で作業者によって上部の蓋100aが外されて開封される。この後、ローラコンベア4によって搬送された処理前廃棄物容器100からその処理前廃棄物容器100よりも高い耐熱性を有する加熱処理用容器10へ処理前廃棄物を移し替える処理前廃棄物移替工程が処理前移替装置6によって行われる。この処理前廃棄物移替工程は、処理前廃棄物投入工程と、処理前廃棄物導入工程とを含む。
【0084】
処理前廃棄物投入工程は、加熱処理用容器10よりも高い位置に配置されていてその内部を通して加熱処理用容器10へ処理前廃棄物を導く処理前廃棄物シュート24の出口を処理前廃棄物ゲート25によって塞いだ状態で、処理前廃棄物容器100から放出させた処理前廃棄物を当該処理前廃棄物が処理前廃棄物シュート24内を落下するようにその処理前廃棄物シュート24内に投入する工程である。この処理前廃棄物投入工程では、ローラコンベア4によって搬送された処理前廃棄物容器100が処理前廃棄物放出装置23により反転されてその処理前廃棄物容器100内の処理前廃棄物が処理前廃棄物シュート24の受入部26内に投入される。この受入部26内に投入された処理前廃棄物は、受入部26内を通ってガイド部27内へ落下し、そのガイド部27内を滑り落ちる。この時、処理前廃棄物ゲート25が処理前シュート出口閉塞状態になっていて、その処理前廃棄物ゲート25によりガイド部27の出口が塞がれている。そのため、処理前廃棄物は、ガイド部27の出口から放出されず、ガイド部27内において処理前廃棄物ゲート25の上流側に滞積する。
【0085】
この処理前廃棄物投入工程の後、前記処理前廃棄物導入工程が行われる。この処理前廃棄物導入工程は、処理前廃棄物シュート24のガイド部27内で滞積した処理前廃棄物を処理前廃棄物シュート24の出口(ガイド部27の出口)を開放することにより当該出口から放出させて加熱処理用容器10内へ導入する工程である。この処理後廃棄物導入工程では、処理前廃棄物ゲート25が処理前シュート出口閉塞状態から処理前シュート出口開放状態に切り換わり、ガイド部27の出口が開放される。それにより、ガイド部27内に滞積していた処理前廃棄物がガイド部27の出口から放出されて落下し、加熱処理用容器10内へ導入される。具体的には、落下した処理前廃棄物が加熱処理用容器10内の廃棄物トレー52の受面52a上に載る。
【0086】
処理前廃棄物導入工程の後、作業者がリーチリフト11を操作して、そのリーチリフト11により処理前廃棄物が収容された加熱処理用容器10を仮置場所まで運搬する。この仮置場所は、1階の床面上にある。そして、この仮置場所において、加熱処理用容器10を上下二段に積み重ね、その積み重ねた状態の二段の加熱処理用容器10のフレーム54同士が上下に分離するのを阻止するようにそれらのフレーム54同士を連結棒80で連結する連結工程が行われる。
【0087】
具体的に、この連結工程では、1階の床面上に下段加熱処理用容器10aを置き、その下段加熱処理用容器10aのフレーム54上に上段加熱処理用容器10bのフレーム54を積むことによって下段加熱処理用容器10a上に上段加熱処理用容器10bを積み重ねる。このとき、
図8及び
図9に示されるように、下段加熱処理用容器10aのフレーム54の上枠60上に上段加熱処理用容器10bのフレーム54のベース部56を載置し、下段加熱処理用容器10aの向かい合う各対のブラケット62と上段加熱処理用容器10bのベース部56に設けられた対応する挿通孔66とを位置合わせする。そして、作業者が、下段加熱処理用容器10aの第1の対のブラケット62とそれに対して位置合わせされた上段加熱処理用容器10bの挿通孔66とに連結棒80(
図10及び
図11参照)を挿通するとともに、下段加熱処理用容器10aの第2の対のブラケット62とそれに対して位置合わせされた上段加熱処理用容器10bの挿通孔66とに別の連結棒80を挿通する。これにより、下段加熱処理用容器10aと上段加熱処理用容器10bとが積み重ねられた状態で上下に分離しないように2本の連結棒80を介して互いに連結される。以上のように下段加熱処理用容器10aと上段加熱処理用容器10bとが積み重られた状態で、それらの加熱処理用容器10a,10bの廃棄物トレー52同士の間には隙間が形成される。
【0088】
次に、作業者がフォークリフト12を操作して、そのフォークリフト12により、積み重ねられて互いに連結された状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを運搬し、積み降ろし場所で待機している台車15上に積載する積載工程が行われる。
【0089】
この積載工程では、まず、仮置場所に仮置きされた下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bのうち下段加熱処理用容器10aのベース部56に設けられた差込凹部64にフォークリフト12のフォーク12aを差し込んでその下段加熱処理用容器10aをすくうことによって下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを持ち上げ、その状態でそれらの下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bをフォークリフト12によって運搬する。
【0090】
そして、任意の場所で下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを一旦降ろし、次に、フォーク12aを上段加熱処理用容器10bのベース部56に設けられた差込凹部64に差し直して上段加熱処理用容器10bをすくって持ち上げる。このように上段加熱処理用容器10bを持ち上げることにより、その上段加熱処理用容器10bに連結されている下段加熱処理用容器10aも持ち上げられる。そして、フォークリフト12がこのように下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを持ち上げた状態で1階の床面上を走行してその下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積み降ろし場所で待機する台車15上まで運び、その台車15上に積載する(
図2参照)。
【0091】
前記積み降ろし場所は半地下の床面上で1階の床面との段差の手前にあり、台車15は1階の床面よりも低い位置にある。この台車15への積載の際、フォークリフト12は、その車体が1階の床面上に位置した状態で、下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを持ち上げたフォーク12aを前記積み降ろし場所で待機する台車15上の空間に突き出して下ろすことにより、台車15上に積み重ねた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載する。
【0092】
次に、処理前廃棄物を収容した加熱処理用容器10を加熱炉13内に搬入する加熱炉内搬入工程が行われる。この加熱炉内搬入工程では、積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載した台車15が自走して加熱炉13内に進入し、それによって、処理前廃棄物をそれぞれ収容した下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bが加熱炉13内に搬入される。この加熱炉内搬入工程は、本発明における搬入工程に相当する。
【0093】
次に、加熱炉13内に搬入された下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bにそれぞれ収容された廃棄物をそれらの下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bごと加熱処理する加熱処理工程が行われる。この加熱炉13における加熱処理は、例えば、加熱炉13内の温度を900℃で8時間に亘って維持するものである。台車15は、この加熱処理の処理時間の間、加熱炉13内に留まる。
【0094】
そして、加熱処理の処理時間の経過後、台車15が自走して加熱炉13内から退出することにより加熱処理後の廃棄物をそれぞれ収容した下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを加熱炉13内から外部へ搬出する加熱炉外搬出工程が行われる。この加熱炉外搬出工程は、本発明における搬出工程に相当する。
【0095】
次に、加熱処理後の廃棄物を収容した加熱処理用容器10を冷却炉14内に搬入する冷却炉内搬入工程が行われる。この冷却炉内搬入工程では、積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載した台車15が自走して冷却炉14内に進入し、それによって、加熱処理後の廃棄物をそれぞれ収容した下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bが冷却炉14内に搬入される。
【0096】
次に、冷却炉14内に搬入された下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bにそれぞれ収容された廃棄物をそれらの下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bごと冷却する冷却工程が行われる。この冷却工程では、冷却炉14内に外気温と同等の温度の空気が流され、加熱処理後の廃棄物及びそれを収容する各加熱処理用容器10a,10bは、その冷却炉14内の環境に例えば約24時間に亘って曝されることによって冷却される。台車15は、この冷却時間の間、冷却炉14内に留まる。
【0097】
そして、冷却炉14における冷却時間の経過後、台車15が自走して冷却炉14内から退出することにより冷却後の廃棄物をそれぞれ収容した下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを冷却炉14内から外部へ搬出する冷却炉外搬出工程が行われる。冷却炉14内から退出した台車15は、前記積み降ろし場所まで移動する。
【0098】
次に、加熱処理後、冷却された廃棄物である処理後廃棄物が収容された下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを台車15上から降ろす降し工程が行われる。この降し工程では、作業者がフォークリフト12を操作して、そのフォークリフト12により、台車15上の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを持ち上げて台車15上から降ろす。このとき、フォークリフト12の車体は1階の床面上に位置した状態で、フォーク12aを上段加熱処理用容器10bのベース部56に設けられた差込凹部64に差し込んで上段加熱処理用容器10bをすくって持ち上げる。このように上段加熱処理用容器10bを持ち上げることにより、その上段加熱処理用容器10bに連結されている下段加熱処理用容器10aも持ち上げられる。そして、下段加熱処理用容器10aの下端の位置が1階の床面よりも高い位置になるまで下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを持ち上げる。この持ち上げた状態でフォークリフト12が1階の床面上を走行して、仮置場所まで下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを運搬する。
【0099】
次に、仮置場所において、作業者が、下段加熱処理用容器10aと上段加熱処理用容器10bとを連結していた連結棒80をそれらの加熱処理用容器10a,10bから取り外して連結を解除し、その下段加熱処理用容器10aと上段加熱処理用容器10bとを互いに分離可能な状態にする連結解除工程が行われる。
【0100】
次に、
図3に示されるように、作業者がリーチリフト11を操作して、そのリーチリフト11により仮置場所から加熱処理用容器10を1つずつ処理後移替装置16へ運搬する。この後、加熱処理用容器10から処理後廃棄物容器101へ処理後廃棄物を移し替える処理後廃棄物移替工程が行われる。この処理後廃棄物移替工程は、処理後移替装置16によって行われる。処理後廃棄物移替工程は、処理後廃棄物投入工程と、処理後廃棄物導入工程と、容器接近工程と、容器降下工程と、を含む。
【0101】
処理後廃棄物投入工程は、処理後廃棄物容器101よりも高い位置に配置されていてその内部を通して処理後廃棄物容器101へ処理後廃棄物を導く処理後廃棄物シュート40の出口を塞いだ状態で、加熱処理用容器10から取り出した処理後廃棄物を当該処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート40内を落下するようにその処理後廃棄物シュート40内に投入する工程である。具体的に、この処理後廃棄物投入工程では、上記のようにリーチリフト11により運搬された加熱処理用容器10が、処理後廃棄物落下装置38の処理後容器反転装置44にセットされる。その後、処理後容器反転装置44が加熱処理用容器10を持ち上げて反転させ、その加熱処理用容器10内に収容された処理後廃棄物をエプロンコンベア46上に落とす。エプロンコンベア46は、その上に落とされた処理後廃棄物を搬送し、その搬送方向の下流側の端部から処理後廃棄物を落下させて処理後廃棄物シュート40内に投入する。この時、処理後廃棄物ゲート42が処理後シュート出口閉塞状態となっていてその処理後廃棄物ゲート42により処理後廃棄物シュート40の出口が閉塞されているため、処理後廃棄物シュート40内に投入されて落下する処理後廃棄物は、処理後廃棄物シュート40の出口から放出されず、処理後廃棄物シュート40内において処理後廃棄物ゲート42上に滞積する。
【0102】
その後、処理後廃棄物導入工程が行われる。この処理後廃棄物導入工程は、処理後廃棄物シュート40内で滞積した処理後廃棄物を処理後廃棄物シュート40の出口を開放することにより当該出口から放出させて処理後廃棄物容器101内へ導入する工程である。具体的に、この処理後廃棄物導入工程では、処理後廃棄物ゲート42が処理後シュート出口閉塞状態から処理後シュート出口開放状態に切り換わり、処理後廃棄物シュート40の出口が開放される。それにより、処理後廃棄物シュート40内で滞積していた処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート40の出口から放出されて落下し、その出口の下方に配置された処理後廃棄物容器101内へ導入される。処理後廃棄物容器101内には収容袋(例えば麻袋もしくはラミネート袋)がセットされており、処理後廃棄物シュート40の出口から落下する処理後廃棄物はその収容袋内に入る。
【0103】
処理後廃棄物移替工程では、前記処理後廃棄物導入工程に先立って、昇降装置43が処理後廃棄物容器101を持ち上げて処理後廃棄物シュート40の出口に接近させる容器接近工程が行われる。このため、処理後廃棄物シュート40の出口から落下する処理後廃棄物は弱い勢いで処理後廃棄物容器101内に導入される。
【0104】
そして、前記処理後廃棄物導入工程の後、昇降装置43が、処理後廃棄物を収容した処理後廃棄物容器101を降下させる容器降下工程が行われる。
【0105】
その後、処理後廃棄物を収容した処理後廃棄物容器101は、後工程へ送られ、上部の蓋101aが閉じられて密封される。その後、この密封された処理後廃棄物容器101は搬出される。
【0106】
以上のようにして本実施形態の処理システム1による廃棄物処理方法が行われる。
【0107】
本実施形態では、台車15が自走することでその台車15に積載された加熱処理用容器10に収容された処理前廃棄物を加熱炉13内へ搬入できるとともに処理後廃棄物を加熱炉13内から搬出できるため、化学剤を無害化するための加熱処理を大量の廃棄物について行う場合であっても、加熱炉13内への処理前廃棄物の搬入及び処理後廃棄物の加熱炉13内からの搬出を容易に行える。
【0108】
しかも、本実施形態では、廃棄物が加熱処理用容器10に収容された状態で加熱炉13内において加熱処理されるため、廃棄物が多数の破片及びダストを含んでいる場合であっても処理後廃棄物を回収するために処理後廃棄物を集める作業を行う必要がなく、加熱処理用容器10ごと処理後廃棄物を加熱炉13内から搬出できる。このため、処理後廃棄物の回収を容易に行える。
【0109】
また、化学剤を無害化するための加熱処理では非常に高い温度まで廃棄物を加熱するが、本実施形態では、廃棄物を収容して加熱炉13内で加熱処理される容器が高い耐熱性を有する加熱処理用容器10であるため、化学剤を無害化するための高温の加熱処理の熱で加熱処理用容器10が変形するのを抑制できる。そのため、処理後廃棄物を加熱処理用容器10から容易に取り出すことができ、処理後廃棄物の回収を容易に行える。
【0110】
また、本実施形態では、各加熱処理用容器10のフレーム54が、下段加熱処理用容器10aのフレーム54の上に上段加熱処理用容器10bのフレーム54を下段加熱処理用容器10aの廃棄物トレー52と上段加熱処理用容器10bの廃棄物トレー52との間に隙間が形成されるように積み重ねることが可能に構成されている。このため、各々の廃棄物トレー52に廃棄物を載せた下段加熱処理用容器10aと上段加熱処理用容器10bとが積み重ねられてそれらの廃棄物トレー52同士の間に隙間が形成された状態でその下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを台車15に積載して加熱炉13内に搬入し、加熱処理を行うことができる。このため、加熱炉13内での加熱処理において、下段加熱処理用容器10aの廃棄物トレー52と上段加熱処理用容器10bの廃棄物トレー52との間に熱気が通り、その結果、下段加熱処理用容器10aの廃棄物トレー52に載せられた廃棄物と上段加熱処理用容器10bの廃棄物トレー52に載せられた廃棄物とをそれぞれ効率的に加熱処理することができる。
【0111】
また、本実施形態では、下段加熱処理用容器10aの上に上段加熱処理用容器10bが積み重ねられた状態でその下段加熱処理用容器10aのフレーム54と上段加熱処理用容器10bのフレーム54とが連結棒80により連結される。このため、加熱炉13を収容する建屋の1階の床面よりも低い位置にある半地下の床面上に加熱炉13を設置して建屋の高さを低減して建屋の建設コストを低減しつつ、その加熱炉13とともに半地下の床面上に設置されて1階の床面よりも低い位置にある台車15上にフォークリフト12で1階の床面上から積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載することができる。
【0112】
具体的には、積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載した台車15を受け入れ可能な加熱炉13の高さは大きく、しかもその加熱炉13の上方にメンテナンス用の空間を確保する必要があることから、仮に建屋の1階の床面上に加熱炉13を設置する場合には建屋の高さを大きく取らざるを得ず、建屋の建設コストが増大する。これに対し、本実施形態では、高さの大きい加熱炉13が半地下の床面上に設置されることで建屋の高さを低減でき、その結果、建屋の建設コストを低減できる。
【0113】
一方、加熱炉13が半地下の床面上に設置されることに伴って、その加熱炉13内へ廃棄物を搬入する台車15も必然的に半地下の床面上に設置され、その結果、台車15は1階の床面よりも低い位置に配置される。この台車15上に、積み重ねられた状態の下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを1階の床面上からフォークリフト12で積載する場合、仮にフォークリフト12のフォーク12aで下段加熱処理用容器10aをすくってその下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを持ち上げると、フォークリフト12のフォーク12aは1階の床面よりも低い位置に下げることは困難であることから、1階の床面よりも低い位置にある当該台車15上に下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載することが困難になる。これに対し、本実施形態では、積み重ねられた下段加熱処理用容器10aと上段加熱処理用容器10bの各々のフレーム54同士が連結棒80によって連結されることから、フォークリフト12のフォーク12aで上段加熱処理用容器10bをすくうことによってその上段加熱処理用容器10bとともに下段加熱処理用容器10aも持ち上げることができる。このため、フォーク12aを1階の床面よりも低い位置まで下ろせなくても、そのフォーク12aによって上段加熱処理用容器10bを支持した状態で下段加熱処理用容器10aを1階の床面よりも低い位置まで下ろすことが可能となり、その結果、1階の床面よりも低い位置にある台車15上に下段加熱処理用容器10a及び上段加熱処理用容器10bを積載することができる。
【0114】
また、本実施形態では、各加熱処理用容器10の廃棄物トレー52の受面52aはその周縁部から中央部へ向かうにつれて高さが低下するように下向きに凸の湾曲した形状を有するため、各加熱処理用容器10に収容された処理後廃棄物、すなわち廃棄物トレー52の受面52a上に載せられた処理後廃棄物を容易に残らず取り出すことができる。例えば、加熱処理用容器のうち廃棄物を受ける受面が隅部を形成するように曲折した部分を有する場合には、加熱処理後の廃棄物を取り出す際、前記隅部に廃棄物が残り、加熱処理後の廃棄物を全て残らず取り出すことが困難になる。これに対し、本実施形態では、各加熱処理用容器10の廃棄物トレー52の受面52aがその周縁部から中央部へ向かうにつれて高さが低下するように下向きに凸の湾曲した形状を有するため、隅部が形成されず、前記のような隅部への廃棄物の残存が生じない。このため、廃棄物トレー52に載せられた処理後廃棄物を容易に残らず取り出すことができる。
【0115】
また、本実施形態では、処理前移替装置6において処理前廃棄物容器100から処理前廃棄物を加熱処理用容器10へ移し替えるときに、処理前廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、加熱処理用容器10内に一旦入った処理前廃棄物(廃棄物トレー52上に一旦載った処理前廃棄物)が落下の勢いで加熱処理用容器10から飛び出したりするのを防ぐことができ、その結果、処理前廃棄物による周囲の環境への汚染の拡大を防ぐことができる。
【0116】
例えば、処理前廃棄物容器100から処理前廃棄物シュート24内に放出されてその処理前廃棄物シュート24内を落下する処理前廃棄物がその勢いのまま処理前廃棄物シュート24の出口から放出される場合には、処理前廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理前廃棄物が加熱処理用容器10内に一旦入ったとしても勢いで加熱処理用容器10から飛び出したりする虞がある。これに対し、本実施形態では、処理前廃棄物シュート24の出口に、処理前廃棄物シュート24内を通って落下する処理前廃棄物が処理前廃棄物シュート24の出口から放出されるのを阻止するようにその出口を塞ぐ処理前シュート出口閉塞状態と、処理前廃棄物が処理前廃棄物シュート24の出口から放出されるのを許容するようにその出口を開放する処理前シュート出口開放状態とを取り得るように構成された処理前廃棄物ゲート25が設けられているため、処理前廃棄物が処理前廃棄物シュート内を落下するときには処理前廃棄物ゲート25を処理前シュート出口閉塞状態にして処理前廃棄物シュート24の出口を塞いで処理前廃棄物の落下の勢いを止め、その後、処理前廃棄物シュート24内の出口付近に滞積した処理前廃棄物を、処理前廃棄物ゲート25が処理前シュート出口開放状態に切り換わることで処理前廃棄物シュート24の出口から弱い勢いで放出させて加熱処理用容器10内へ導入することができる。そのため、処理前移替装置6において処理前廃棄物容器100から処理前廃棄物を加熱処理用容器10へ移し替えるときに処理前廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、加熱処理用容器10内に一旦入った処理前廃棄物が落下の勢いで加熱処理用容器10から飛び出したりするのを防ぐことができる。
【0117】
また、本実施形態では、処理後移替装置16において処理後廃棄物を加熱処理用容器10から処理後廃棄物容器101へ移し替えるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器101内にセットされる収容袋が処理後廃棄物の落下の勢いで傷ついたりするのを防ぐことができる。
【0118】
例えば、処理後移替装置16において処理後廃棄物シュート40内を落下する処理後廃棄物がその勢いのまま処理後廃棄物シュート40の出口から放出される場合には、処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器101内にセットされる収容袋内に処理後廃棄物が落下の勢いのまま飛び込んで収容袋を傷つけたりする虞がある。これに対し、本実施形態では、処理後廃棄物シュート40の出口に、処理後廃棄物シュート40内を落下する処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート40の出口から放出されるのを阻止するようにその出口を塞ぐ処理後シュート出口閉塞状態と、処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート40の出口から放出されるのを許容するようにその出口を開放する処理後シュート出口開放状態とを取り得るように構成された処理後廃棄物ゲート42が設けられているため、処理後廃棄物が処理後廃棄物シュート40内を落下するときには処理後廃棄物ゲート42を処理後シュート出口閉塞状態にして処理後廃棄物シュート40の出口を塞いで処理後廃棄物の落下の勢いを殺し、その後、処理後廃棄物シュート40内の出口付近に滞積した処理後廃棄物を、処理後廃棄物ゲート42が処理後シュート出口開放状態に切り換わることで処理後廃棄物シュート40の出口から弱い勢いで放出させて処理後廃棄物容器101内へ導入することができる。そのため、処理後移替装置16において処理後廃棄物を加熱処理用容器10から処理後廃棄物容器101へ移し替えるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器101内にセットされる収容袋を処理後廃棄物の落下の勢いで傷つけたりするのを防ぐことができる。
【0119】
また、本実施形態では、処理後移替装置16が、処理後廃棄物シュート40の出口の下方において処理後廃棄物容器101を支持するとともにその支持した処理後廃棄物容器101を上下に昇降可能に構成された昇降装置43を有するため、処理後廃棄物シュート40の出口から処理後廃棄物が落下して処理後廃棄物容器101内に導入されるときに処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散したり、処理後廃棄物容器101内にセットされた収容袋が落下する処理後廃棄物によって傷ついたりするのをより確実に防ぐことができる。
【0120】
具体的に、処理後廃棄物シュート40の出口から処理後廃棄物が落下するときには昇降装置43により処理後廃棄物容器101を上昇させて処理後廃棄物シュート40の出口に近接した位置に配置し、それによって、処理後廃棄物シュート40の出口と処理後廃棄物容器101との間の間隙から処理後廃棄物に含まれる粉状のものが飛散するのをより確実に防ぐことができるとともに、処理後廃棄物容器101内への処理後廃棄物の落下の勢いを低減して収容袋が傷つけられるのをより確実に防ぐことができる。
【0121】
(変形例)
本発明による廃棄物処理システムは、前記のようなものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による廃棄物処理システムに以下のような構成を採用可能である。
【0122】
台車上に積載する加熱処理用容器は、必ずしも二段積みのものに限定されず、一段積みのものであっても、また、三段以上積み重ねられたものであってもよい。
【0123】
処理前廃棄物ゲートは、必ずしも処理前シュート出口閉塞状態と処理前シュート出口開放状態とに自動的に切り換わるものに限定されず、作業者等のスイッチ操作に応じて処理前シュート出口閉塞状態と処理前シュート出口開放状態とに切り換わるものであってもよい。
【0124】
また、処理後廃棄物ゲートは、必ずしも処理後シュート出口閉塞状態と処理後シュート出口開放状態とに自動的に切り換わるものに限定されず、作業者のスイッチ操作に応じて処理後シュート出口閉塞状態と処理後シュート開放状態とに切り換わるものであってもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 廃棄物処理システム
6 処理前移替装置
10 加熱処理用容器
10a 下段加熱処理用容器
10b 上段加熱処理用容器
13 加熱炉
15 台車
16 処理後移替装置
23 処理前廃棄物放出装置
24 処理前廃棄物シュート
25 処理前廃棄物ゲート
38 処理後廃棄物落下装置
40 処理後廃棄物シュート
42 処理後廃棄物ゲート
43 昇降装置
52 廃棄物トレー
52a 受面
54 フレーム
80 連結棒(連結部材)
100 処理前廃棄物容器
101 処理後廃棄物容器