(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122510
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】シャトルコック
(51)【国際特許分類】
A63B 67/187 20160101AFI20220816BHJP
【FI】
A63B67/187
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019785
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】中谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙介
(57)【要約】
【課題】風によるプレーへの影響を抑制しつつ飛行してプレーヤやラケットに衝突した際の衝撃を緩和できるシャトルコックを提供すること。
【解決手段】シャトルコック(1)はスカート部(4)を保持するベース部(2)を備えて構成される。ベース部は、スカート部を保持する領域を形成する保持部(24)と、ラケットによって打撃される領域を形成する外側形成部(21)と、外側形成部より内方領域を形成する芯形成部(22)とを備えている。芯形成部の少なくとも一部は、立体的な格子構造によって構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカート部を保持するベース部を備えたシャトルコックにおいて、
前記ベース部は、前記スカート部を保持する領域を形成する保持部と、
ラケットによって打撃される領域を形成する外側形成部と、
前記外側形成部より内方領域を形成する芯形成部とを備え、
前記芯形成部の少なくとも一部は、立体的な格子構造によって構成されていることを特徴とするシャトルコック。
【請求項2】
前記外側形成部の少なくとも一部は、立体的な格子構造によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシャトルコック。
【請求項3】
前記芯形成部の全て及び前記外側形成部の全てが立体的な格子構造によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシャトルコック。
【請求項4】
前記立体的な格子構造は、複数のストリップを立体的に連結して前記芯形成部及び前記外側形成部に単一の通気領域を形成することを特徴とする請求項2に記載のシャトルコック。
【請求項5】
前記外側形成部は、前記ベース部の内外で通気可能な外周開口を備え、該外周開口は多角形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシャトルコック。
【請求項6】
前記芯形成部は、前記外側形成部と所定間隔を隔てて配設された層状部を備え、該層状部には通気可能な複数の内部開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシャトルコック。
【請求項7】
前記ベース部は、前記ラケットの打撃によって弾性変形可能な合成樹脂によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のシャトルコック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用のラケットにて打撃されるシャトルコックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バドミントン用のシャトルコックとして、概ね半球状のベース部に天然羽毛や樹脂製の人工羽根からなる翼部(以下、スカート部ともいう)を設けたものが知られている(特許文献1参照)。ベース部は、天然のコルクや、コルク粒子を固めて形成したコルクを用いたり、合成樹脂によって成形したりすることで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バドミントンにあっては、屋内だけでなく屋外でもプレーを楽しみたいとのニーズがある。しかし、屋外でのバドミントンのプレーは、風の影響によってシャトルコックの飛行軌道が変化し易くなり、風の強さによってはプレーを楽しみ難くなる、という問題がある。
【0005】
かかる問題を解消するため、シャトルコックを高重量化することを検討したが、飛行したシャトルコックがプレーヤやラケットに衝突すると衝撃が大きくなる、という問題が発生する。このように、シャトルコックでの風による影響の低減作用と、衝突時の衝撃抑制作用とはトレードオフの関係となるが、本発明者は鋭意検討を行うことで、それら2つの作用両方を同時に得ることができる発明を案出したものである。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、風によるプレーへの影響を抑制しつつ飛行してプレーヤやラケットに衝突した際の衝撃を緩和することができるシャトルコックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における一態様のシャトルコックは、スカート部を保持するベース部を備えたシャトルコックにおいて、前記ベース部は、前記スカート部を保持する領域を形成する保持部と、ラケットによって打撃される領域を形成する外側形成部と、前記外側形成部より内方領域を形成する芯形成部とを備え、前記芯形成部の少なくとも一部は、立体的な格子構造によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、立体的な格子構造にてベース部の芯形成部に空気だけが存在する空間を大きく確保でき、ベース部自体の変形量増大を図ってベース部の変形に要する時間を長くすることができる。これにより、シャトルコックが飛行してベース部がプレーヤやラケットに衝突しても、その際の衝撃を緩和することができる。これにより、屋外等での風の影響によって飛行軌道を変化し難くすべく従来のシャトルコックより重くしても、衝撃緩和を図ることができる。このように、立体的な格子構造を採用することで、トレードオフの関係にある風による影響の低減作用と、衝突時の衝撃緩和作用とを同時に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係るシャトルコックの概略斜視図である。
【
図3】前記シャトルコックのベース部の拡大平面図である。
【
図5】変形例に係るシャトルコックにおけるベース部の概略斜視図である。
【
図6】他の変形例に係るシャトルコックにおけるベース部の概略斜視図である。
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、実施の形態に係るシャトルコックの概略斜視図である。
図2は、前記シャトルコックの正面図である。
図3は、前記シャトルコックのベース部の拡大平面図である。
【0011】
図1から
図3に示すように、シャトルコック1は、ベース部2と、ベース部2に保持されるスカート部4(
図3では不図示)とを備えている。シャトルコック1は、バドミントン等のラケットスポーツのラケット(不図示)によって打撃されることで飛行される。以下の説明において、シャトルコック1のうちベース部2が設けられた側を前側とし、その反対側(スカート部4の側)を後側とする。
【0012】
ベース部2は、該ベース部2の外周面に沿って配設されてラケットによって打撃される領域を形成する外側形成部21を備えている。外側形成部21は、前側に半球状の曲面に沿う領域と、後側に該曲面に連なる円柱状の曲面に沿う領域とを有している。また、ベース部2は、外側形成部21より内方領域となるベース部2の肉厚部分(芯部分)を形成する芯形成部22とを備えている。ベース部2は、ラケットの打撃によって弾性変形可能な合成樹脂によって構成されている。外側形成部21及び芯形成部22を含むベース部2の具体的な構成については後述する。
【0013】
スカート部4は、ベース部2の後側に設けられており、合成樹脂(例えばナイロン樹脂)による一体成形品によって形成されている。なお、図示のスカート部4は一例であり、天然羽毛や樹脂製の人工羽根によって構成したり、合成樹脂にて図示した構成とは異なる形態にしたりする等、プレーできる限りにおいて種々の構成を採用できる。
【0014】
スカート部4は、本実施の形態では、ベース部2の後端にて円環状に並ぶように複数設けられ、ベース部2から離れるにつれて互いの間隔が広くなる羽軸41と、羽軸41の後方領域に設けられる格子部42とを備えている。格子部42によって、隣接する羽軸41同士が繋がるようになっている。
【0015】
続いて、ベース部2の具体的構成と、ベース部2及びスカート部4の連結部分の具体的な構成について、
図4を加えて説明する。
図4は、
図3のA-Aに沿う断面図である。
図4にも示すように、ベース部2は、その内側にスカート部4を保持する領域を形成する内側形成部となる保持部24を備えている。保持部24は、ベース部2の後部を前方に陥没させた形状を備え、スカート部4の前端側と嵌合してスカート部4との接続状態を維持可能に設けられている。
【0016】
具体的には、保持部24は、外側形成部21及び芯形成部22の後端が連結される基部26と、基部26の中央に形成された開口26a周りから前方に向かう円筒内周形状に沿う第1収容部27とを備えている。また、保持部24は、第1収容部27の前方を覆うようにドーム状に形成された第2収容部28を備え、第2収容部28の後端側の径寸法は第1収容部27の内径より大きく形成されている。なお、第1収容部27の前端には、スカート部4の後述する引っ掛け部45が嵌り合う段部が形成される。
【0017】
スカート部4は、複数の羽軸41の前方に設けられた嵌合部43を更に備えている。嵌合部43は、複数の羽軸41の前端から前方に延出する円柱状の挿入部44と、挿入部44の前端にて挿入部44より大径のフランジ状に形成される引っ掛け部45とを備えている。本実施の形態では、ベース部2にスカート部4を保持させる場合、保持部24及び嵌合部43の少なくとも一方を変形させつつ保持部24の内部に嵌合部43を押し込んで挿入する。そして、保持部24に嵌合部43を挿入した状態で、引っ掛け部45が第1収容部27の前端と嵌り合い、ベース部2にスカート部4が保持される。保持部24と嵌合部43との間には、必要に応じて接着剤等が設けられる。
【0018】
ベース部2にあっては、外側形成部21の全て及び芯形成部22の全てが立体的な格子構造によって構成されている。また、ベース部2における保持部24の第1収容部27の全て及び第2収容部28の全ても立体的な格子構造によって構成されている。
【0019】
ここで、本実施の形態の立体的な格子構造は、複数のストリップ31を立体的に連結して構成され、立体的なメッシュ状に形成されている。より具体的に説明すると、該立体的な格子構造を構成すべく、外側形成部21は、複数のストリップ31を連結することで略三角形状の外周開口32(
図1及び
図3参照)をベース部2の外周面に沿って複数並べて形成した単一の層構造をなしている。外側形成部21にて、外周開口32は、前側の半球状の曲面に沿う領域にて概略正三角形状に形成され、後側の円柱状の曲面に沿う領域にて概略直角二等辺三角形状に形成される(
図2参照)。
【0020】
また、ベース部2の立体的な格子構造を構成すべく、保持部24は、外側形成部21より内側にて外側形成部21と概ね平行になる単一の層構造をなしている。また、保持部24は、複数のストリップ31を連結することで略三角形状の内周開口34を並べて形成している。なお、
図4は、保持部27における第1収容部27にて、ストリップ31が前後方向に直線状に延出した位置にて断面視しており、断面視した位置で内周開口34が表れていないだけで第1収容部27に内周開口34が形成される。
【0021】
更に、ベース部2の立体的な格子構造を構成すべく、芯形成部22は、外側形成部21と保持部24との間に形成される単一の層状部35を備えている。言い換えると、層状部35は、外側形成部21及び保持部24の両方から所定間隔を隔て、それらと概ね平行に配設されている。また、芯形成部22は、層状部35と外側形成部21を連結したり層状部35と保持部24を連結したりするストリップ31からなる複数の接続部36を備えている。複数の接続部36によって、層状部35が外側形成部21と保持部24との間で位置決めされる。
【0022】
層状部35は、外側形成部21及び保持部24と同様に複数のストリップ31を連結して形成される。また、層状部35には、外周開口32及び内周開口34と同様に略三角形状の内部開口37が複数形成されている。また、芯形成部22においては、接続部36と、外側形成部21、保持部24及び層状部35を形成するストリップ31とによって囲われる内部開口38も複数形成される。
【0023】
上述した各開口32、34、37、38によって、外側形成部21及び芯形成部22を含むベース部2には、相互に独立せずに連なった状態となる単一の通気領域が形成される。単一の通気領域は、隣り合う開口32、34、37、38にて、それぞれの開口32、34、37、38を通過して跨ぐ空間が繋がった状態となって形成される。そして、外周開口32は、ベース部2の内外で通気することが可能となり、外周開口32を通過する空気は内部開口37、38にも流れるようになる。
【0024】
このように本実施の形態では、上述のようにベース部2を立体的な格子構造により構成したので、芯形成部22にてストリップ31が存在せずに空気だけが存在する空間を大きく確保することができる。これにより、シャトルコック1が飛行してベース部2がプレーヤやラケットに衝突するときに、ベース部2に空間を確保した分、ベース部2自体の変形を大きくでき、該変形に掛かる時間を長くすることができる。この結果、ベース部2の衝突の際、立体的な格子構造の変形にて衝撃を吸収して緩和することができる。
【0025】
また、立体的な格子構造における複数のストリップ31を用いることで、ベース部2に空気だけが存在する空間を大きく確保することが可能となる。これにより、従来のシャトルコックのベース部を構成するコルクや発泡樹脂と同じ比重の物をストリップ31に使った場合、従来のコルクや発泡樹脂を使用したベース部に比べて、本実施の形態の方がベース部2としての比重が小さくなり、ベース部2の重量も小さくなる。よって、プレー中の風の影響を減らすためには、本実施の形態のシャトルコック1にて重量を大きくする必要がある。このため、ストリップ31に従来のコルクや発泡樹脂より比重を大きくした素材を用いたり、ベース部2の任意の位置やストリップ31などに錘などの追加パーツをつけたり、スカート部4の厚みを厚くするなどして、シャトルコック1の重量を大きくする。このように重量を大きくすることで、屋外等での風によって飛行軌道を変化し難くしてプレーを楽しみ易くすることができる。以上のように、ベース部2に立体的な格子構造を採用することで、トレードオフの関係にある風による影響の低減作用と、上述した衝突時の衝撃緩和作用とを同時に得ることができる。なお、シャトルコック1に重量を大きくする構成を採用しないことで、従来のシャトルコックに比べて軽量化したシャトルコック1にしても良い。
【0026】
なお、特に限定されるものでないが、各開口32、34、37、38における最大幅としては1mm以上とすることが好ましく、それぞれのストリップ31の太さは、最も細い箇所で0.5mm以上とすることが好ましい。かかる数値範囲に設定することで、上述した風による影響の低減作用と、衝突時の衝撃緩和作用との両方をより良く発揮することができる。
【0027】
更に、ベース部2の立体的な格子構造によってベース部2に単一の通気領域が形成されるので、シャトルコック1の飛行時に各開口32、34、37、38を通じてベース部2の内外で空気が流れ易くなる。これにより、屋外等で風が吹いていても、該風がベース部2を通過するようになり、これによっても飛行軌道の変化を抑制し、プレーをより楽しみ易くすることができる。
【0028】
また、ベース部2は、外側形成部21と、保持部24と、芯形成部22の層状部35とによって多層な立体的な格子構造としたので、衝撃を吸収する変形を実現しつつ、ラケットの打撃に十分耐え得る剛性、耐久性を発揮できる。更には、シャトルコック1が打撃された際のラケットの打球面に対する反発性を良好に発揮できる設計を採用可能となる。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0030】
ベース部2は、外側形成部21の全て及び芯形成部22の全てが立体的な格子構造となる構成を説明したが、これに限られるものでない。本発明は、芯形成部22の少なくとも一部が立体的な格子構造である限りにおいて、種々の構成を採用することができる。例としては、外側形成部21の全領域或いは一部領域となる平面視で半分領域が立体的な格子構造でなく一定の厚みの層状に形成される構成を挙げることができる。また、例として、芯形成部22の一部領域となる保持部24を囲う所定厚領域が立体的な格子構造でなく一定の厚みで中実に形成される構成も挙げることができる。
【0031】
また、多層な立体的な格子構造を構成する外側形成部21、保持部24及び芯形成部22の層状部35(以下、外側形成部21等とする)は、複数のストリップ31で各開口32、34、37を形成することに限定されるものでない。例えば、外側形成部21等が一定の厚みの層状体により形成され、該層状体に複数の孔を並べて形成して各開口32、34、37としてもよい。
【0032】
更に、保持部24は、立体的な格子構造でなく、内部開口37を形成せずに所定の厚みを有する層状に形成してもよい。また、保持部24は、基部26だけの構成として該基部26に接着等によってスカート部4を固定し、各収容部27、28の形成領域を芯形成部22に変更して立体的な格子構造としてもよい。更に、保持部24は、スカート部4を保持する領域を形成すればよく、例えば、視認した状態で小さな穴を形成した構成とし、該穴に差し込んで固定可能なピンをスカート部4に設けてもよい。
【0033】
また、各開口32、34、37の形状は、三角形以外の多角形状にしたり、円形や楕円形、一部の辺が湾曲した多角形状にする等、種々の形状を採用することができる。例を挙げると、
図5及び
図6に示すベース部2の構成を挙げることができる。
図5は、変形例に係るシャトルコックにおけるベース部の概略斜視図である。
図6は、他の変形例に係るシャトルコックにおけるベース部の概略斜視図である。
【0034】
図5の変形例のベース部2は、外周開口32が主として六角形状に形成され、場所によって五角形等の他の多角形状の外周開口32が混在する構成となっている。
図6の変形例のベース部2は、外周開口32が主として六角形状又は菱形状に形成され、場所によって五角形等の他の多角形状の外周開口32が混在する構成となっている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、風によるプレーへの影響を抑制しつつ飛行してプレーヤやラケットに衝突した際の衝撃を緩和することができるシャトルコックに関する。
【符号の説明】
【0036】
1 シャトルコック
2 ベース部
4 スカート部
21 外側形成部
22 芯形成部
24 保持部
31 ストリップ
32 外周開口
35 層状部
37 内部開口
38 内部開口