(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122521
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】スローアウェイバイトのシャンクと結合可能な基台(クイックチェンジバイトホルダー)
(51)【国際特許分類】
B23B 29/00 20060101AFI20220816BHJP
B23B 29/12 20060101ALI20220816BHJP
B23B 27/10 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B23B29/00 C
B23B29/12 Z
B23B27/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019809
(22)【出願日】2021-02-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】521063627
【氏名又は名称】松井 芳和
(74)【代理人】
【識別番号】100195970
【弁理士】
【氏名又は名称】本夛 伸介
(72)【発明者】
【氏名】松井 芳和
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046BB07
3C046KK01
3C046MM01
(57)【要約】
【課題】シャンクに結合される基台において、刃部(バイト)を直接収容できて交換の容易性を向上するとともに、流路を形成して切削油を供給できて旋削加工の作業性を向上することができる基台を提供する。
【解決手段】基台は、シャンクに挿入して固定される凸設した挿入部31と、シャンクの先端と当接する円環状の当接部32と、刃部を凹溝33A内に着脱自在に装着できる刃装着部33と、刃部4を刃装着部33に固定する固定部5と、を有する。固定部5は、凹溝33Aに向かって貫通したネジ孔33Bが刃装着部33に形成されており、ネジ孔33B内に挿通されたボルト等の締結手段によって刃部を凹溝33Aの対向する壁に押圧して、刃部を刃装着部33に固定する。また、基台は、挿入部31の中心軸を通り、当接部32の径方向に向かって一直線に形成され、当接部32から刃装着部33の油孔H1にかけて、切削油が流れる流路が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤の刃物台に取り付けられるシャンクに着脱自在に結合され、回転する加工物に刃先を接触させて旋削加工するために用いられる基台であって、
前記シャンクに挿入して結合する挿入部と、
前記刃先を有する刃部を装着する刃装着部と、
前記挿入部と前記刃装着部との間に位置し、シャンクの先端と当接する当接部と、
を有し、
前記刃装着部は、前記刃部を収容する凹溝が形成されており、前記刃部を前記凹溝内で固定する固定部を有することを特徴とする基台。
【請求項2】
前記挿入部の軸心を通り、前記当接部において軸心から略直角に直行し、前記当接部から前記刃装着部に形成された油孔にかけて切削油の流路が形成されていることを特徴とする請求項1記載の基台。
【請求項3】
前記当接部の周縁に貫出した開放端を有し、前記開放端を開閉可能な蓋体が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の基台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋削加工に用いるスローアウェイバイトの旋削工具に関し、刃部における刃先交換の容易性及び旋削加工の作業性を向上するものに関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤を用いた加工に使われる旋削工具としては、先端部分の刃先と胴体部分のシャンクが別の部品になっており、それらをねじや押さえ具等で機械的に結合可能なスローアウェイバイトが存在する。スローアウェイバイトは、先端の刃先を交換可能で、交換用の刃先(インサート、スローアウェイチップ、バイトなどと称される)は一般的に成形済みの製品として販売され、シャンクに取り付ければすぐに使用できる。
【0003】
標準的な形状の刃先はISOで規格化されており、摩耗や破損により切れ味が悪くなった場合に、刃先を研磨するのではなく、刃先を交換するものであり、利便性やコスト面や生産性に優れているため、現在では主流のバイトとして用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の切削用工具は、刃先を備える切削用刃部と、シャンクの先端部に設けられた刃部座を有する基部と、切削用刃部を刃部座に収容して保持する刃部保持体とを有しており、刃部保持体を基部から取り外すことにより、切削用刃部を刃部座から取り外して、切削用刃部を交換するものである。また、刃部座には、市販の切削用チップを収容することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-98457号公報(明細書[0086]-[0087]、[0089])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この切削用工具は、基部とは別の刃部保持体を有する必要があり、刃先切削用刃部の交換及び保持において部品点数が多くなる。切削用刃部も刃部保持体や装着する基台で保持可能な形状や構造に限定されることとなり、切削用刃部の選定に自由度が制限されてしまう。
【0007】
また、一般的な切削用工具は、刃部の形状に合わせてシャンク(ホルダー)も選定することから、シャンク(ホルダー)自体の取り換えも必要となる。
【0008】
本発明は、シャンクに結合される基台において、刃部を直接収容できて交換の容易性を向上するとともに、流路を形成して切削油を供給できて旋削加工の作業性を向上することができる基台を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のものを提供する。
【0010】
(1) 旋盤の刃物台に取り付けられるシャンクに着脱自在に結合され、回転する加工物に刃先を接触させて旋削加工するために用いられる基台であって、前記シャンクに挿入して結合する挿入部と、前記刃先を有する刃部を装着する刃装着部と、前記挿入部と前記刃装着部との間に位置し、シャンクの先端と当接する当接部と、を有し、前記刃装着部は、前記刃部を収容する凹溝が形成されており、前記刃部を前記凹溝内で固定する固定部を有することを特徴とする基台。
【0011】
本発明の基台によれば、挿入部と、刃装着部と、当接部と、を有し、刃装着部は、刃部を収容する凹溝が形成されており、刃部を凹溝内で固定する固定部を有することから、刃部を基台に直接収容して固定することができ、部品点数の削減や刃部の交換の容易性の向上に資する。また、凹溝内に収容可能な刃部であればよく、様々な刃先のアレンジが可能である。開放した凹溝に収容することで、刃部の形状の幅も広がる。
【0012】
(2) 前記挿入部の軸心を通り、前記当接部において軸心から略直角に直行し、前記当接部から前記刃装着部に形成された油孔にかけて切削油の流路が形成されていることを特徴とする基台。
【0013】
本発明の基台によれば、切削油の流路が形成されていることから、刃装着部に形成された油孔から切削油を供給することで旋削加工の作業性の向上に資する。どのような刃部であっても確実に切削油を供給できる。
【0014】
(3) 前記当接部の周縁に貫出した開放端を有し、前記開放端を開閉可能な蓋体が設けられていることを特徴とする基台。
【0015】
本発明の基台によれば、当接部の周縁に貫出した開放端を有し、開放端を開閉可能な蓋体が設けられていることから、開放端から基台内部のメンテナンスを可能とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、凹溝内に収容可能な刃部において、様々な刃先のアレンジが可能であり、どのような刃先であっても油孔から切削油を供給可能であり、開放端から基台内部のメンテナンスを可能であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る旋削工具の外観構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
【0019】
図1に示す切削工具1は、シャンク部2と、基台3(クイックチェンジバイトホルダー)と、を備えている。
図2に基台3の詳細を示しており、(A)と(B)は互いに反対方向からの斜視図である。
【0020】
シャンク部2は、金属製の円筒円柱状であり、図示上下に延びる円柱状の軸部21と、軸部21の先端を円筒状に成型したリング部22と、を有し、軸部21が工作機械の主軸のチャックに把持されて、工作機械に取り付けられる部分である。
【0021】
基台3は、シャンク部2のリング部22先端と略同径であり、リング部22に挿入して固定される凸設した挿入部31と、シャンク部2の先端と当接する円環状の当接部32と、加工物を切削する刃部4を開放した凹溝33A内に着脱自在に装着できる刃装着部33と、刃部4(バイト)を刃装着部33に固定する固定部5と、を有する。刃装着部33にはR形成されており、刃先の相対的回転に干渉しないようにしている。
【0022】
固定部5は、凹溝33Aに向かって貫通したネジ孔33Bが刃装着部33に形成されており、ネジ孔33B内に挿通されたボルト等の締結手段によって刃部4を凹溝33Aの対向する壁に押圧して、刃部4を刃装着部33に固定する。
図2に示すように、固定部5のボルトは、凹溝外側において六角溝が形成され、凹溝内側において窪みが形成され、六角溝に六角レンジ等を挿入して刃部4を凹溝内で締結する。
【0023】
基台3は、切削油が流れる流路が形成されている。
図4に示すように、挿入部31の中心軸を通る軸方向に形成された流路R1と、当接部32の径方向に向かって一直線に形成された流路R2と、当接部32から刃装着部33にかけて形成された流路R3と、を有し、流路R2と流路R3の分岐箇所には流路R2下流側で開放しており、開放端H2には通常時においてネジ等による蓋体6が設けられている。切削油の油漏れを防ぐため蓋体6には気密性が要求され、ネジにより塞ぐ場合にはネジ止め用の接着剤(ネジロックボンド)を用いるとよい。また、流路R3の出口箇所は開放した油孔H1が形成されており、油孔H1から刃部4に切削油が供給される。
【0024】
図4(B)は、工作機械に取り付けられた姿勢での流路の状態図であり、R1-R2はL字状に形成され、R2-R3は左下向きに形成されている。なお、L字箇所は、流路の穴開け加工の際に生じた切り穴によって窪みがあっても性能上問題ない。
【0025】
切削油が流れる通常時は開放端H2に蓋体6が設けられて開放端H2を閉じているが、切削油や塵などによる流路の目詰まりが生じた場合には、蓋体6を取り外して開放端H2を開き、流路内の清掃を簡単に行うことができる。なお、蓋体6をして開放端H2を閉じたまま、流路内にエアーを流して(吹き付けて)流路R1-R2-R3内の掃除を行うこともできるが、細長いブラシを用いて流路内の掃除を行う場合には、分岐箇所からの流路R3方向や流路R2-R1方向への掃除を簡単に行うことができる。
【0026】
図5は、基台3をシャンク部2と結合し、基台3に刃部4を取り付けた状態を示している。
【0027】
刃部4は、加工物を切削する刃先4Aを有しており、刃先4Aの延びる方向が刃部4の長手方向(左右方向とする)を向き、刃先4Aの作用する方向が周方向であるように凹溝33A内に配置される。
【0028】
基台3とシャンク部2との結合は、基台3の挿入部31に設けられた貫通孔31Aとシャンク部2のリング部22に設けられた貫通孔22Aを位置決めして合致させ、両貫通孔に締結具7(クランプネジ)を挿入して結合する。なお、シャンク2の先端に形成された凹溝22Bに基台3の当接部32又は挿入部31に設けられた嵌合凸部(不図示)を嵌合するなどして結合することも可能である。また、シャンク2の先端に基台3との結合を強化するドライブリングを取り付けることにより、剛性が高くなり、シャンク2と基台3との回転を防止することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 切削工具
2 シャンク部
3 基台
4 刃部
5 固定部
6 蓋体
7 締結具
【手続補正書】
【提出日】2021-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤の刃物台に取り付けられるシャンクに着脱自在に結合され、回転する加工物に刃先を接触させて旋削加工するために用いられる基台であって、
前記シャンクに挿入して結合する挿入部と、
前記刃先を有する刃部を装着する刃装着部と、
前記挿入部と前記刃装着部との間に位置し、シャンクの先端と当接する当接部と、
を有し、
前記刃装着部は、前記刃部を収容する凹溝が形成されており、前記刃部を前記凹溝内で固定する固定部を有し、
前記固定部は、前記凹溝に向かって貫通したネジ孔が刃装着部に形成されており、前記ネジ孔内に挿通された締結手段によって前記刃部を前記凹溝の壁に押圧して前記刃装着部に固定するものであり、
前記挿入部の軸心を通り、前記当接部において軸心から略直角に直行し、前記当接部から前記刃装着部に形成された油孔にかけて切削油の流路が形成されており、
前記流路中に、前記当接部の周縁に貫出した開放端を有し、前記開放端を開閉可能な蓋体が設けられ、前記蓋体を取り外して前記開放端を開き、前記開放端からの前記流路内の掃除を可能にすることを特徴とする基台。