(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122535
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ホーム屋根の開閉構造、開閉方法、及び、杭及び柱の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 7/16 20060101AFI20220816BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
E04B7/16 C
E02D5/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019827
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】坪内 浩治
(72)【発明者】
【氏名】福島 賢二
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 厚介
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA31
2D041CA01
2D041CB01
2D041CB05
2D041DA01
2D041EB10
(57)【要約】
【課題】 駅ホーム1のホーム屋根2の上方に人工地盤躯体を構築するため、駅ホーム1の地盤に場所打ちコンクリート杭3を構築し、杭3に連ねて鉄骨柱を構築する。
【解決手段】 ホーム屋根2に開口部100を形成し、両開き式の一対の引き戸からなる開閉構造を設ける。杭工事では、開口部100を開いて、杭構築部材としての鉄筋籠33を搬入し、開口部100を閉鎖してから、場所打ちコンクリート杭3を構築する。その後の柱工事では、開口部100を再び開いて、鉄骨柱を搬入・連結し、開口部100を貫通させた状態で、柱貫通部を雨仕舞いする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅ホームの地盤に杭を打設するための杭構築部材を搬入可能であり、杭上に立設される柱を貫通させて雨仕舞い可能である、ホーム屋根の開閉構造であって、
ホーム屋根に設けられて前記杭構築部材を搬入可能な開口部と、
前記開口部を開閉する両開き式の一対の引き戸と、
前記一対の引き戸の戸当たり部に凹状に形成されて前記柱を貫通可能な柱貫通部と、
前記柱貫通部を塞ぐことができる着脱可能な蓋部材と、
前記柱貫通部と前記柱との空隙に設けられる雨仕舞い構造と、
を含む、ホーム屋根の開閉構造。
【請求項2】
前記ホーム屋根上にその長手方向に配置したレールを更に含み、
前記一対の引き戸は、前記レール上をスライド移動可能に構成されることを特徴とする、請求項1記載のホーム屋根の開閉構造。
【請求項3】
前記雨仕舞い構造は、
前記一対の引き戸に閉状態で取付けられ、前記柱貫通部を囲んで立上がる枠状の覆い部材と、
前記柱に全周にわたって液密に取付けられて下向きに拡開し、前記覆い部材の上端部に被さるスカート部材と、
を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のホーム屋根の開閉構造。
【請求項4】
駅ホームの地盤に杭を打設するための杭構築部材を搬入可能とし、杭の構築後に、杭上に立設される柱を貫通させて雨仕舞い可能とする、ホーム屋根の開閉方法であって、
ホーム屋根に前記杭構築部材を搬入可能な大きさの開口部を設けること、
前記開口部を開閉する両開き式の一対の引き戸を設けること、
前記一対の引き戸の戸当たり部に凹部を設けることで前記一対の引き戸を閉じた状態で前記柱が貫通可能な柱貫通部を設けること、
を含み、
前記一対の引き戸を閉じた状態で前記柱貫通部に蓋部材を被せることにより、前記開口部を閉鎖する第1形態、
前記蓋部材を外して前記一対の引き戸を開くことにより、前記開口部を開放して、前記杭構築部材を搬入可能とする第2形態、及び、
前記第2形態にて前記柱を貫通させ、前記一対の引き戸を閉じ、前記柱貫通部と前記柱との空隙に雨仕舞い構造を適用した第3形態
をとることができる、ホーム屋根の開閉方法。
【請求項5】
ホーム屋根の上方に人工地盤躯体を構築するための工事での、杭及び柱の構築方法であって、
ホーム屋根に設けた開口部に対する両開き式の一対の引き戸を開き、開口部を開放する、第1の開口部開放工程と、
杭構築部材を前記開口部から搬入して駅ホームの地盤に建込む、杭構築部材建込み工程と、
前記引き戸を閉じて、前記開口部を閉鎖する、第1の開口部閉鎖工程と、
前記杭構築部材を用いて杭を構築する、杭構築工程と、
前記引き戸を再び開いて、前記開口部を開放する、第2の開口部開放工程と、
前記柱を前記開口部から搬入して前記開口部を貫通させた状態で前記杭に連結する柱連結工程と、
前記柱が前記開口部を貫通している状態で、前記柱の回りの開口部を雨仕舞いする第2の開口部閉鎖工程と、
を含む、杭及び柱の構築方法。
【請求項6】
前記一対の引き戸は、これらの戸当たり部に凹状に形成されて前記柱を貫通可能な柱貫通部と、柱貫通部を塞ぐことができる着脱可能な蓋部材とを有し、
前記第1及び第2の開口部開放工程では、前記一対の引き戸の開放に先立って前記蓋部材を取外し、
前記第1の開口部閉鎖工程では、前記一対の引き戸を閉じるとともに、前記蓋部材により前記柱貫通部を塞ぎ、
前記第2の開口部閉鎖工程では、前記一対の引き戸を閉じるとともに、前記柱貫通部と前記柱との空隙を雨仕舞いすることを特徴とする、請求項5記載の杭及び柱の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のホーム屋根(上屋)上方に人工地盤躯体を構築するために用いる、ホーム屋根の開閉構造及び開閉方法に関する。
本発明はまた、前記人工地盤躯体を支持する杭及び柱の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のホーム屋根上方に人工地盤躯体を構築するための工事では、ホーム側の地盤に基礎となる杭(例えば場所打ち杭)を打設し、人工地盤躯体を支持するための柱(例えば鉄骨柱)を杭上に立設してホーム屋根を貫通させる。
【0003】
このため、ホーム屋根には、杭構築部材(鉄筋籠など)を搬入するための開閉可能な開口部を設ける必要があり、また柱を貫通させた状態で雨仕舞いする必要がある。
【0004】
関連技術としては、特許文献1に記載の工事例がある。
これは、屋上スラブの下方の既設梁から立設されて屋上スラブから突出する束柱の上端部に新設鉄骨を接続して、屋上階の上方に新設される構造物の土台の一部とする場合の工事例である。
【0005】
屋上スラブには束柱を貫通させるための貫通孔(開口部)が設けられ、貫通孔の周囲にはシール部材を介在させて枠状に立上がる固定部材が設けられる。そして、固定部材の上部には、ヒンジによる開き戸タイプの蓋部材(天蓋)が取付けられる。
従って、束柱及び新設鉄骨が設けられるまでの間、蓋部材により貫通孔を閉じた状態で養生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の工事例では、開き戸タイプの蓋部材を用いていて、蓋部材が上方に持ち上げられて開く構造のため、蓋部材の重量が大きくなると、安全に開閉することが難しい。
【0008】
また、特許文献1に記載の工事例の場合、束柱及び新設鉄骨が設けられた後に、貫通孔(開口部)と束柱又は新設鉄骨との間の空隙を雨仕舞いすることはできない。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑み、駅のホーム屋根上方に人工地盤躯体を構築するために用いる、ホーム屋根の最適な開閉構造及び開閉方法を提供することを課題とする。
本発明はまた、前記人工地盤躯体を支持する杭及び柱の最適な構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るホーム屋根の開閉構造は、
駅ホームの地盤に杭を打設するための杭構築部材を搬入可能であり、杭上に立設される柱を貫通させて雨仕舞い可能である、ホーム屋根の開閉構造であって、
ホーム屋根に設けられて前記杭構築部材を搬入可能な開口部と、
前記開口部を開閉する両開き式の一対の引き戸と、
前記一対の引き戸の戸当たり部に凹状に形成されて前記柱を貫通可能な柱貫通部と、
前記柱貫通部を塞ぐことができる着脱可能な蓋部材と、
前記柱貫通部と前記柱との空隙に設けられる雨仕舞い構造と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るホーム屋根の開閉方法は、
駅ホームの地盤に杭を打設するための杭構築部材を搬入可能とし、杭の構築後に、杭上に立設される柱を貫通させて雨仕舞い可能とする、ホーム屋根の開閉方法であって、
ホーム屋根に前記杭構築部材を搬入可能な大きさの開口部を設けること、
前記開口部を開閉する両開き式の一対の引き戸を設けること、
前記一対の引き戸の戸当たり部に凹部を設けることで前記一対の引き戸を閉じた状態で前記柱が貫通可能な柱貫通部を設けること、
を含み、
前記一対の引き戸を閉じた状態で前記柱貫通部に蓋部材を被せることにより、前記開口部を閉鎖する第1形態、
前記蓋部材を外して前記一対の引き戸を開くことにより、前記開口部を開放して、前記杭構築部材を搬入可能とする第2形態、及び、
前記第2形態にて前記柱を貫通させ、前記一対の引き戸を閉じ、前記柱貫通部と前記柱との空隙に雨仕舞い構造を適用した第3形態
をとることができることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る杭及び柱の構築方法は、
ホーム屋根の上方に人工地盤躯体を構築するための工事での、杭及び柱の構築方法であって、
ホーム屋根に設けた開口部に対する両開き式の一対の引き戸を開き、開口部を開放する、第1の開口部開放工程と、
杭構築部材を前記開口部から搬入して駅ホームの地盤に建込む、杭構築部材建込み工程と、
前記引き戸を閉じて、前記開口部を閉鎖する、第1の開口部閉鎖工程と、
前記杭構築部材を用いて杭を構築する、杭構築工程と、
前記引き戸を再び開いて、前記開口部を開放する、第2の開口部開放工程と、
前記柱を前記開口部から搬入して前記開口部を貫通させた状態で前記杭に連結する柱連結工程と、
前記柱が前記開口部を貫通している状態で、前記柱の回りの開口部を雨仕舞いする第2の開口部閉鎖工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホーム屋根の開閉を好適に実現でき、杭及び柱の構築を好適に実施することができる。
特に、ホーム屋根の開閉のため、両開き式の一対の引き戸(言い換えれば引き戸タイプの扉)を用いることで、スムーズかつ安全な開閉を実現できる。
また、一対の引き戸の戸当たり部に凹部を設けることで柱貫通部を形成してあるので、柱貫通部と柱との空隙を雨仕舞いすればよく、柱貫通状態での雨仕舞いは容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ホーム屋根上方に人工地盤躯体を構築する工事例を示す駅ホームの断面図
【
図3】ホーム屋根開閉構造の作動状態別の正面から見た断面図
【
図4】ホーム屋根開閉構造の作動状態別の側面から見た断面図
【
図5】杭工事の流れをS1~S3のステップに分けて示す図
【
図6】柱工事の流れをS4~S5のステップに分けて示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態として駅のホーム屋根上方に人工地盤躯体を構築する場合の工事例を示す駅ホーム(鉄道駅のプラットホーム)の断面図である。
【0016】
本工事例は、既存の鉄道駅の上空に駅ビルを建設することを目的として、既存の駅ホーム1の既存のホーム屋根2の上方に、人工地盤躯体5を構築するため、人工地盤躯体5を支持する杭(場所打ちコンクリート杭)3及び柱(鉄骨柱)4を構築する工事である。
また、本工事例では、駅の機能や列車運行を維持しながらの施工とするため、工事領域に対して仮囲い6を設けて、乗降客の安全を確保する。
【0017】
本工事は、杭工事と、その後の柱工事とに分けられる。
杭工事では、駅ホーム1の地盤に杭3を打設する。より詳しくは、BH工法又はTBH工法により、口元パイプ建込み、掘削、スライム処理、鉄筋籠建込み、コンクリート打設を行って、場所打ちコンクリート杭3を造成する。
【0018】
柱工事では、杭3上に鉄骨柱4を搬入して連結し、鉄骨柱4はホーム屋根2を貫通させる。
その後は、鉄骨柱4により支持させて、人工地盤躯体5(床版5a及び大梁5b)を構築する。
【0019】
上記の杭工事では、杭3の構築部材としての鉄筋籠は、ホーム屋根2に開口部100を設けてそこから搬入する必要がある。また、上記の柱工事では、鉄骨柱4は、ホーム屋根2に設けた開口部100から搬入する他、開口部100を貫通させた状態で雨仕舞いする必要がある。
このため、既存のホーム屋根2に対し、開口部100を含む開閉構造を設ける。
【0020】
次に本実施形態でのホーム屋根2の開閉構造について、
図2~
図4により説明する。
図2はホーム屋根開閉構造の平面図で、(a)は閉鎖(全閉)状態、(b)は鉄筋籠搬入時などの開放(全開)状態、(c)は柱貫通時の雨仕舞い状態を示している。
【0021】
図3はホーム屋根開閉構造の正面から見た断面図で、
図3(a)は
図2(a)のIIIa-IIIa矢視断面図、
図3(b)は
図2(b)のIIIb-IIIb矢視断面図、
図3(c)は
図2(c)のIIIc-IIIc矢視断面図である。
【0022】
図4はホーム屋根開閉構造の側面から見た断面図で、
図4(a)は
図2(a)のIVa-IVa矢視断面図、
図4(b)は
図2(b)のIVb-IVb矢視断面図、
図4(c)は
図2(c)のIVc-IVc矢視断面図である。
【0023】
既存のホーム屋根2は、折板屋根であり、駅ホーム1(ホーム屋根2)の長手方向に所定の間隔で配置されて長手方向と直交する方向に延在する複数の梁鋼材21と、梁鋼材21の上にこれらと交差する方向に配置される複数の骨組み鋼材22と、骨組み鋼材22の上に載置されて固定された折板屋根23と、を含んで構成される。
【0024】
また、ホーム屋根2(折板屋根23)は、梁鋼材21の傾斜により、駅ホーム1の長手方向と直交する方向に水勾配を有している。そして、折板屋根23の山部及び谷部は水勾配の方向に延在している。
なお、既存のホーム屋根2がスレート屋根の場合、折板屋根に変更してから工事するようにするとよい。
【0025】
ホーム屋根2(折板屋根23)には、杭の打設位置の真上に、矩形の開口部100が設けられる。開口部100は、鉄筋籠33を搬入可能な大きさで、縁部の4辺には雨水の進入防止用の立上がり部101が設けられる。
【0026】
そして、ホーム屋根2の開口部100には、その上に、開口部100を開閉する両開き式の一対の引き戸102A、102Bが設けられる。これら一対の引き戸102A、102Bは、ホーム屋根2の長手方向(水勾配の方向と直交する方向)にスライドして、開閉する。
【0027】
そして、一対の引き戸102A、102Bをスライド可能とするため、ホーム屋根2(折板屋根23)の上に、主レール103、104と補助レール105、106とが設けられる。
【0028】
主レール103は、開口部100の上縁に沿って配置され、開口部100の左右に(開口部100を超える位置まで)連続している。
主レール104は、開口部100の下縁に沿って配置され、開口部100の左右に(開口部100を超える位置まで)連続している。
【0029】
補助レール105、106は、主レール103と104との間に、これらと平行に配置されている。なお、補助レール105、106は開口部100の左右に分断状態で設けられている。
【0030】
そして、一対の引き戸102A、102Bの下面側には、前記主レール103、104及び補助レール105、106に対応させて複数の車輪(キャスター)107が設けられている。これにより、一対の引き戸102A、102Bは、レール103~106上をスライド移動可能に構成されている。
なお、レール103~106は、
図4から理解できるように、骨組み鋼材22に対応させてその直上に設けるのが望ましい。
【0031】
一対の引き戸102A、102Bの戸当たり部には、それぞれの中央に凹部108A、108Bがあり、両引き戸102A、102Bが突き合わされた閉鎖状態で、凹部108A、108B間に矩形の柱貫通部(小開口部)109が形成される。
【0032】
柱貫通部109は、鉄骨柱4が貫通して雨仕舞い可能な大きさを有し、縁部は所定の高さ分立上がって雨水の進入防止用の立上がり部110A、110Bを形成している。なお、立ち上がり部110A、110Bは、引き戸102Aの凹部108A側と、引き戸102Bの凹部108B側とに分かれて形成されている。
【0033】
そして、柱貫通部109に被せてこれを塞ぐことができるように、矩形で縁部に立下がり部を有する蓋部材111が用意されている。なお、蓋部材111は、引き戸102Aの凹部108A側と引き戸102Bの凹部108B側とに別々に設けるようにしてもよい。
【0034】
従って、一対の引き戸102A、102Bは、下記の3形態(第1形態、第2形態及び第3形態)をとることができる。
【0035】
〔第1形態〕
図2(a)のように、一対の引き戸102A、102Bを閉じた状態で柱貫通部109に蓋部材111を被せることにより、開口部100を閉鎖する形態
【0036】
〔第2形態〕
図2(b)のように、蓋部材111を外して一対の引き戸102A、102Bを開くことにより、開口部100を開放して、鉄筋籠33を搬入可能とする形態
【0037】
〔第3形態〕
図2(c)のように、前記第2形態にて鉄骨柱4を貫通させ、一対の引き戸102A、102Bを閉じ、柱貫通部109と鉄骨柱4との空隙に雨仕舞い構造を適用した形態
【0038】
前記第3形態での雨仕舞い構造の具体例について、
図3(c)及び
図4(c)を参照して、説明する。
雨仕舞い構造は、本実施形態では、一対の引き戸102A、102Bの柱貫通部109回りに設けられる覆い部材112と、鉄骨柱4側に設けられるスカート部材113と、を含んで構成される。
【0039】
覆い部材112は、一対の引き戸102A、102Bに閉状態で取付けられ、柱貫通部109の縁部の立上がり部110A、110Bを囲んで立上がる枠状の部材である。
スカート部材113は、鉄骨柱4に全周にわたって液密に取付けられて下向きに拡開し、覆い部材112の上端部に被さる部材である。
【0040】
なお、覆い部材112及びスカート部材113は、鉄骨柱4に対し左右からの取付けを可能とするため、半割に形成されている。
また、図示しないが、液密性の確保のため、必要箇所にパッキン等を適用することは言うまでもない。
【0041】
次に本実施形態での杭工事及び柱工事について、ホーム屋根の開閉と関連づけて、
図5及び
図6により説明する。
なお、
図5は杭工事の流れをS1~S3のステップに分けて示す図、
図6は杭工事に続く柱工事の流れをS4~S5のステップに分けて示す図である。
【0042】
図5のステップS1は、既設の駅ホーム1及びホーム屋根2を示している。
また、杭工事に先立って(又はその過程で)、ホーム屋根2に開口部100を含む開閉構造が設けられ、
図2(a)のように一対の引き戸102A、102B(及び蓋部材111)により開口部100を閉じている状態を示している。
【0043】
図5のステップS2では、杭工事に先立つ準備工程として、盛土式ホーム塗装を撤去し、仮覆工するとともに、盛土部を掘削し、盤下げして、施工基面31を造成する。そして、駅ホーム1上に工事箇所を囲む仮囲い6を設置する。
【0044】
そして、施工基面31の杭の打設箇所へ口元管32を建込み、その後、BHマシン又はTBHマシン(図示せず)をセットして、所定の深度まで削孔する。
【0045】
そして、BHマシン又はTBHマシンによる削孔後に、ホーム屋根2の開口部100を開いて、鉄筋籠33の建込みを行う。
【0046】
すなわち、
図2(b)のようにホーム屋根2に設けた開口部100に対する両開き式の一対の引き戸102A、102Bを開き、開口部100を開放する(第1の開口部開放工程)。このときは、一対の引き戸102A、102Bの開放に先立って蓋部材111を取外す。
そして、杭構築部材である鉄筋籠33をクレーン(図示せず)により吊りハンガー34を介して吊り下ろし、開口部100から搬入して、駅ホーム1の地盤に建込む(杭構築部材建込み工程)。鉄筋籠33は上下に複数に分割されていて、分割単位の搬入ごとに下段鉄筋籠と上段鉄筋籠を機械式継手で接合する。
【0047】
図5のステップS3では、鉄筋籠33の建込み後、一対の引き戸102A、102Bを閉じて、開口部100を閉鎖する(第1の開口部閉鎖工程)。このときは、
図2(a)のように一対の引き戸102A、102Bを閉じるとともに、蓋部材111により柱貫通部109を塞ぐ。
【0048】
そして、杭構築部材である鉄筋籠33を用いて、杭3を構築する(杭構築工程)。
すなわち、鉄筋籠33が建込まれている削孔内にコンクリートを打設して、場所打ちコンクリート杭3を構築する。
【0049】
次に柱工事について説明する。
図6のステップS4では、
図2(b)のように一対の引き戸102A、102Bを再び開いて、開口部100を開放する(第2の開口部開放工程)。このときも、一対の引き戸102A、102Bの開放に先立って蓋部材111を取外す。
【0050】
そして、クレーンにより吊って、鉄骨柱4をホーム屋根2の開口部100から搬入し、開口部100を貫通させた状態で、杭3に連結する(柱連結工程)。
【0051】
柱連結工程では、杭頭処理、ソケット管設置、背面モルタル充填、根巻き部鉄筋組立、杭頭コンクリート打設、アンカーボルト設置、ベースプレート設置(図示35)、無収縮モルタル打設を行って、鉄骨柱4を建方する。
【0052】
図6のステップS5では、鉄骨柱4が開口部100を貫通している状態で、鉄骨柱4の回りの開口部100を雨仕舞いする(第2の開口部閉鎖工程)。このときは、一対の引き戸102A、102Bを閉じるとともに、柱貫通部109と鉄骨柱4との空隙を
図3(c)及び
図4(c)のように覆い部材112及びスカート部材113と必要なパッキン等により雨仕舞いする。
【0053】
鉄骨柱4の建方、及び雨仕舞い後は、施工基面31の上を埋め戻すなどして、駅ホーム1を修復する。
【0054】
なお、本実施形態では、杭構築部材としての鉄筋籠33の搬入、及び、鉄骨柱4の搬入に、ホーム屋根2の開口部100を利用したが、杭の構築用のBHマシン又はHTBマシンの搬入に、ホーム屋根2の開口部100を利用してもよい。
【0055】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を概略的に例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 駅ホーム
2 ホーム屋根(折板屋根)
3 場所打ちコンクリート杭
4 鉄骨柱
5 人工地盤躯体
5a 床版
5b 大梁
6 仮囲い
21 梁鋼材
22 骨組み鋼材
23 折板屋根
31 施工基面
32 口元管
33 鉄筋籠
34 吊りハンガー
35 ベースプレート
100 開口部
101 立上がり部
102A、102B 引き戸
103、104 主レール
105、106 補助レール
107 車輪
108A、108B 凹部
109 柱貫通部(小開口部)
110A、110B 立上がり部
111 蓋部材
112 覆い部材
113 スカート部材