(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012255
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】吸着治具
(51)【国際特許分類】
F16B 47/00 20060101AFI20220107BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F16B47/00 A
B25J15/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113957
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000161840
【氏名又は名称】京三電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(72)【発明者】
【氏名】吉成 彰
【テーマコード(参考)】
3C707
3J038
【Fターム(参考)】
3C707FT02
3C707FT06
3C707FU05
3J038CA06
3J038CA09
3J038CB04
(57)【要約】
【課題】軽量かつコンパクトな構造を有し、低コストで製造でき、片手で操作可能な吸着治具および多様な用途に対応して汎用的に使用できる吸着治具を提供する。
【解決手段】物品の面に対して弾性変形して密着可能なパッド(14)と、一端が前記パッドに連通されたエア配管(17)と、前記エア配管の他端に接続され、前記パッドを前記物品の面上で弾性変形させることにより、前記物品の面と前記パッドによって形成された閉鎖空間(20)から、前記エア配管を介して前記閉鎖空間(20)内の空気を外部に排出する開閉弁(15)と、前記空気を外部に排出した開閉弁を閉じて前記パッドと前記エア配管と前記開閉弁の内部を負圧にし、前記パッドを前記物品に対して吸着させる弁作動部(16)と、前記パッドと前記開閉弁との間に介設される中間部材(12)と、を有する吸着治具を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の面(21)に対して弾性変形して密着可能なパッド(14)と、
一端が前記パッドに連通されたエア配管(17)と、
前記エア配管の他端に接続され、前記パッドを前記物品の面上で弾性変形させることにより、前記物品の面と前記パッドによって形成された閉鎖空間(20)から、前記エア配管を介して前記閉鎖空間(20)内の空気を外部に排出する開閉弁(15)と、
前記空気を外部に排出した開閉弁を閉じて前記パッドと前記エア配管と前記開閉弁の内部を負圧にし、前記パッドを前記物品に対して吸着させる弁作動部(16)と、
前記パッドと前記開閉弁との間に介設される中間部材(12)と、
を有する吸着治具。
【請求項2】
前記中間部材は、前記パッドと前記開閉弁との間の長さを可変可能に構成され、前記エア配管は可撓性を有し、少なくとも、前記中間部材の長さの変更に追随可能な長さを有する請求項1記載の吸着治具。
【請求項3】
前記開閉弁を支持するとともに、前記中間部材を取り付け可能な固定部(11)を有し、前記中間部材は、長手方向に沿って1以上の長孔が形成され、前記長孔の任意の位置で前記固定部に着脱可能に取り付けられる請求項2記載の吸着治具。
【請求項4】
物品の面に対して弾性変形して密着可能なパッド(14)と、
一端が前記パッドに連通されたエア配管(17)と、
前記エア配管の他端に接続され、前記パッドを前記物品の面上で弾性変形させることにより、前記物品の面と前記パッドによって形成された閉鎖空間(20)から、前記エア配管を介して前記閉鎖空間(20)内の空気を外部に排出する開閉弁(15)と、
前記空気を外部に排出した開閉弁を閉じて前記パッドと前記エア配管と前記開閉弁の内部を負圧にし、前記パッドを前記物品に対して吸着させる弁作動部(16)と、
一端で前記開閉弁を支持する本体部(18)と、
一端で前記パッドを取り付ける可動部(19)と、
前記可動部が、前記本体部方向に回動可能に、前記可動部の他端を前記本体部の他端に接合する接合部(19b)と、を有する吸着治具。
【請求項5】
前記接合部は、前記本体部の他端と前記可動部の他端とを摺動回動可能に支持する支軸部(19d)と、前記可動部を所定角度まで前記本体部側に回動した位置で係止する係止部(19e)とを有する請求項4記載の吸着治具。
【請求項6】
前記接合部は、前記本体部の他端と前記可動部の他端とを摺動回動可能に支持する支軸部と、前記可動部の長手方向に対して直交する方向に、前記可動部の他端を押動して前記可動部を前記摺動回動させる押動部(18b)と、を有する請求項4または請求項5記載の吸着治具。
【請求項7】
前記可動部の他端は、回転軸を介して前記摺動回動する方向と同一方向に回転するカムフォロア(19f)を配設し、前記押動部は、前記カムフォロアに当接し、前記カムフォロアを押動することにより、前記可動部を回動させる請求項6記載の吸着治具。
【請求項8】
少なくとも、前記押動部の押し端位置および戻し端位置で、前記可動部の回動を規制する角度ロック機構(18h)を有する請求項6または請求項7記載の吸着治具。
【請求項9】
一端を前記本体部に固定され、他端を前記可動部に固定された戻しバネ(18f)を有し、前記押動部の押動距離に対応して回転付勢された前記戻しバネは、前記押動部を押動状態から解放すると、前記可動部を前記戻し端方向に復帰させる請求項8記載の吸着治具。
【請求項10】
前記可動部は、中間部材で形成されている請求項4から請求項9までのいずれか1項に記載の吸着治具。
【請求項11】
前記中間部材は、前記可動部の長さを可変可能に構成され、前記エア配管は可撓性を有し、少なくとも、前記中間部材の長さの変更に追随可能な長さを有する請求項10記載の吸着治具。
【請求項12】
前記可動部は、前記接合部で軸支されたブラケット(19b)と前記パッドを取り付けたアーム部(19a)とから構成され、前記アーム部は、長手方向に沿って1以上の長孔が形成され、前記長孔の任意の位置で前記ブラケットに着脱可能に取り付けられる請求項11記載の吸着治具。
【請求項13】
前記弁作動部は、前記開閉弁を閉方向に押圧する押圧レバー(16a)を有する請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の吸着治具。
【請求項14】
前記弁作動部は、前記押圧レバーを任意の位置に配置できるように、所定方向に回転可能である請求項13記載の吸着治具。
【請求項15】
前記パッドは、保持部(13)を介して着脱自在に取り付けられ交換可能である請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の吸着治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドを物品の表面で弾性変形させて吸着し、該物品を搬送等する吸着治具に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、複数の部品、容器、カード、シート等の物品を1個単位でピッキングまたは段積みする場合、手扱いによる作業よりも、前記物品表面にパッドを吸着させて所望の位置に搬送する吸着治具を使用する方が作業効率がよい。
【0003】
この種の吸着治具としては、たとえば、弾性変形可能な吸盤が連接される装置本体内に、前記吸盤内部と大気とを連通させる空気流通路を形成し、該空気流通路内に作用杆一端を移動自在に挿入して弁を構成せしめ、作用杆を常時閉弁方向へ付勢すると共に、駆動手段により装置本体を作用杆の軸線方向へ往復移動させて開弁と閉弁を順次繰り返し、前記装置本体の近傍に作用杆の他端と係合してこれを開弁方向へ移動させる押圧手段を配設し、この装置本体に対して駆動手段の接続端を該装置本体の往復動方向へ移動自在に連結し、これら装置本体と接続端との間にバネを介在して吸盤を常時被吸着物の方向へ付勢させるものが提案されていた(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、吸着パッドと、空気配管を介して吸着パッドと連結の気密室と、スプリングの弾性力により球状体を吸入口に押圧して吸入口を常時閉とし、該気密室が正圧時は吸排気弁を開とする2ポート弁と、前記吸排気弁を開閉させる釈放ボタンと、2ポート弁および吸着パッドに固着の筒状部材からなる吸着治具が提案されていた(たとえば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平2-29065号公報
【特許文献2】特開平9-174476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の吸着治具は、本体部分を大気の流入路とするために内部空間を確保する必要があり、筒状に形成されていた。したがって、片手で吸着治具を持ちながら作業をするような場合、重量が重くなり、外形も一定の大きさを要するため、持ちにくいという問題があった。また、狭小な空間での作業等、用途によっては、作業性が悪く、作業効率の低下を招くおそれがあった。
【0007】
また、特許文献1にかかる吸着治具は、形状が複雑なため、製造コストが高くなるという問題があった。特許文献2にかかる吸着治具は、パッドが、吸着治具本体を形成する筒状部材に固着されているため、パッドの向き、パッドを取り付けたアーム部分の長さを調整することができず、固定されたパッドの向き、アーム部分の長さで対応可能な用途に限定されるという不具合があった。さらに、パッドが固定されているため、用途に対応したパッドの交換、消耗・劣化したパッドの交換も、容易ではなかった。
【0008】
本明細書における開示は、上記課題を解消させるためのものであり、軽量かつコンパクトな構造を有し、低コストで製造でき、片手で操作可能な吸着治具の提供を第1の目的とする。
【0009】
また、多様な用途に対応して汎用的に使用できる吸着治具の提供を第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書における開示の一つの局面は、上記目的を達成させるために、物品の面に対して弾性変形して密着可能なパッドと、
一端が前記パッドに連通されたエア配管と、
前記エア配管の他端に接続され、前記パッドを前記物品の面上で弾性変形させることにより、前記物品の面と前記パッドによって形成された閉鎖空間から、前記エア配管を介して前記閉鎖空間内の空気を外部に排出する開閉弁と、
前記空気を外部に排出した開閉弁を閉じて前記パッドと前記エア配管と前記開閉弁の内部を負圧にし、前記パッドを前記物品に対して吸着させる弁作動部と、
前記パッドと前記開閉弁との間に介設される中間部材と、
を有する吸着治具を提供する。
【0011】
この構成によれば、前記パッドと前記開閉弁との間は、中間部材で形成されているため、片手で把持し、吸着、搬送の操作が可能である。
【0012】
なお、前記中間部材は、前記パッドと前記開閉弁との間の長さを可変可能に構成してもよい。そして、前記エア配管は、可撓性を有するものであって、少なくとも、前記中間部材の長さの変更に追随可能な長さを有するようにすればよい。
【0013】
本明細書における開示の別の局面は、上記目的を達成させるために、物品の面に対して弾性変形して密着可能なパッドと、
一端が前記パッドに連通されたエア配管と、
前記エア配管の他端に接続され、前記パッドを前記物品の面上で弾性変形させることにより、前記物品の面と前記パッドによって形成された閉鎖空間から、前記エア配管を介して前記閉鎖空間内の空気を外部に排出する開閉弁と、
前記空気を外部に排出した開閉弁を閉じて前記パッドと前記エア配管と前記開閉弁の内部を負圧にし、前記パッドを前記物品に対して吸着させる弁作動部と、
一端で前記開閉弁を支持する本体部と、
一端で前記パッドを取り付ける可動部と、
前記可動部が、前記本体部方向に回動可能に、前記可動部の他端を前記本体部の他端に接合する接合部とを有する吸着治具を提供する。
【0014】
この構成によれば、パッドを取り付けた可動部を回動させた位置で物品を吸着し、搬送することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吸着治具は、パッドと前記開閉弁との間を片手で把持可能な長さおよび厚さを有する中間部材で形成したため、軽量かつコンパクトな構造とすることが可能になり、かつ、低コストで製造でき、片手で操作が可能になるという効果を奏する。
【0016】
また、前記パッドと前記開閉弁との間の長さ、前記パッドの角度を可変可能な構成とし、さらには吸着パッドを交換可能な構成としたため、多様な用途に対応して汎用的に使用できる吸着治具を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本明細書で開示する吸着治具の第1実施形態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の中間部材の変形例を示す側断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の第1変形例を示す図であり、(A)は、正面図、(B)は、側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の第2変形例の側面図である。
【
図5】
図5は、本明細書で開示する吸着治具の第2実施形態を示す図であり、(A)は、第2実施形態にかかる吸着治具の側面図、(B)は、可動部を90度の回動させた状態の側面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の変形例を示す図であり、(A)は、側面図、(B)は、可動部を90度の回動させた状態の側面図である。
【
図7】
図7は、本明細書で開示する吸着治具の使用状態を示す図である。
【
図8】
図8は、本明細書で開示する吸着治具の第1実施例を示した図であり、(A)は、垂下のシート状のワークを吸着する状態を示した図、(B)は、可動部を90度回動させてシート状のワークを吸着する状態を示した図である。
【
図9】
図9は、本明細書で開示する吸着治具の第2実施例を示した図であり、(A)は、垂下の球体のワークを吸着する状態を示した図、(B)は、可動部を90度回動させて球体のワークを吸着する状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本明細書による開示を実施するための形態を説明する。先に説明した実施形態に対応する構成要素を後続の実施形態が有する場合には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、各実施形態において構成の一部のみを説明している場合、当該構成の他の部分については先行して説明した実施形態の参照符号を使用する場合がある。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示していない場合でも、特に当該組み合わせに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。また、図中の各部材の大きさは、説明を容易とするため適宜強調されており、実際の寸法、部材間の比率を示すものではない。さらに、以下の図面は、例示の目的を意図したものであり、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本明細書で開示する吸着治具1の第1実施形態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。吸着治具1は、ワーク等の被吸着物品の面に対して弾性変形して密着可能なパッド14と、一端がパッド14に連通されたエア配管17と、エア配管17の他端に接続され、パッド14を前記被吸着物品の面上で弾性変形させることにより、前記被吸着物品の面とパッド14によって形成された閉鎖空間20から、エア配管17を介して前記閉鎖空間内の空気を外部に排出する開閉弁15と、前記空気を外部に排出した開閉弁15を閉じてパッド14とエア配管17と開閉弁15の内部を負圧にし、パッド14を前記被吸着物品に対して吸着させる弁作動部16と、パッド14と開閉弁15との間に介設された中間部材であって、片手で把持可能な長さおよび厚さを有する金属、樹脂からなる板状プレート12とから構成される。
【0020】
本実施の形態では、パッド14は、ゴム、樹脂等の弾性変形可能な素材からなり、底面側が開口された円錐台形の外形を有する。前記円錐台形の上部は、エア配管17の一端が、保持部13を介して気密に接続されている。
【0021】
保持部13は、継ぎ手13aと、エア配管17側のナット13dおよび座金13eと、パッド14側のナット13bおよび座金13cとから構成されている。したがって、パッド14は、エア配管17側のナット13dを外して容易に交換することが可能な構造になっている。なお、パッド14を着脱自在に交換する構造は、たとえば、スクリューキャップ式の構造でもよく、前記構造に限定されない。
【0022】
エア配管17は、可撓性を有する中空のゴム管で形成されている。後述するように、吸着治具1を操作する場合、片手で板状プレート12を把持するため、少なくとも、エア配管17と板状プレート12との間に、片手(指)が入るスペースを設けるようにしている。本実施の形態では、エア配管17は、板状プレート12に対して、弧状に湾曲させて前記スペースを設け、他端を開閉弁15に接続している。
【0023】
開閉弁15は、本実施の形態では、外部に通じる常時開の開口を有する2ポート15aと、2ポート15aを閉じる閉塞軸15bと、エア配管17の他端と螺合して接続する開閉弁側継ぎ手15cとから構成されている。
【0024】
弁作動部16は、本実施の形態では、閉塞軸15bに連なるノックボタン式の押圧ボタンで形成されている。前記押圧ボタンのヘッド部分を垂下に押す(押下する)と、閉塞軸15bがパッド14側(下方側)に移動し、2ポート15aを閉塞する。弁作動部16は、付勢手段(図示せず)によって、前記押下する前の状態に戻す機構になっているため、2ポート15aを開状態とするためには、前記押圧ボタンを押下状態から解除すればよい。
【0025】
板状プレート12は、側面視でL字状に曲げられた一端部を有する。この一端部に継ぎ手13aを貫通させ、ナット13dおよび座金13eと、ナット13bおよび座金13cとで挟持し保持部13を取り付けている。一方、板状プレート12の他端部は、直接開閉弁15に接続してもよいが、本実施の形態では、所定の厚みを有する直方体状の固定部11の一側面と面接触するように合着させ、取付けネジ12aで取付けている。
【0026】
次に、吸着治具1の作用について説明する。パッド14の前記底面側を被吸着物品の面に押し付けて弾性変形(圧縮変形)させる。前記被吸着物品の面とパッド14の内表面とで形成された閉鎖空間20内の空気は、前記圧縮変形によって、エア配管17を介して、2ポート15aの開口から外部に押し出される。
【0027】
空気を外部に排出後、弁作動部16を押下すると、閉塞軸15bによって、2ポート15aの前記開口が閉塞され、パッド14、エア配管17および開閉弁15の内部は、負圧となり、パッド14は、前記圧縮変形した状態で、前記被吸着物品に密着し、前記被吸着物品を持ち上げて搬送することができる。
【0028】
吸着状態を解除する場合は、弁作動部16の押下状態を解放して前記付勢手段によってもとの位置に戻せばよい。すなわち、2ポート15aの開口から、外気を取り込み、開閉弁15の内部、エア配管17およびパッド14が一瞬で正圧状態となり、圧縮変形状態だったパッド14がもとの形状に戻り、前記被吸着物品から離れる。
【0029】
従来の治具では、作業時に把持する本体部分に空気の流出路を設けていたため、治具全体の重量が重くなり、外形も大きくなっていた。したがって、作業性が悪く、連続した搬送作業を行う場合には、作業者の負荷が大きくなり、作業効率を低下させる原因になっていた。
【0030】
吸着治具1は、作業時に把持する部分を片手で容易に把持可能な長さおよび厚さの板状プレート12で形成し、前記エアの流出路は、可撓性を有するエア配管17によって、前記把持する部分とは別体とし、さらに、板状プレート12との近接を回避させるために湾曲させて取り付けている。したがって、吸着治具1は、従来の治具に比べて、軽量化、コンパクト化を実現し、作業性を向上させることができる。さらに、簡易な構造とすることで、製造コストを低減することができる。ただし、中間部材は、板状プレート12のように、板状の形状に限定するものではなく、片手で容易に把持可能な長さおよび厚さを有するものであれば、
図2で示すように、中空部材121のような構造にしてもよい。中空部材121は、上部を取付けネジ121aによって固定部11に取り付けられている。中空部材121の下部は、パッド14の閉鎖空間20とエア配管17との間を連通する中空部121bが形成されている。中空部121bのエア配管17側は、L字状に屈曲し、先端はバーブ継手121cが形成され、エア配管17に挿入することにより、中空部121とエア配管17とを気密に接合することができる。
【0031】
<第1実施形態の第1変形例>
図3は、第1実施形態の第1変形例を示す図であり、(A)は、正面図、(B)は、側面図である。本第1変形例は、板状プレート12の長さを可変可能に構成し、エア配管17は、少なくとも、板状プレート12の長さの変更に追随可能な長さを有するものである。すなわち、
図1でエア配管17の長さは、前記湾曲させることが可能な長さになっているが、第1変形例は、さらに、エア配管17が、前記可変可能な板状プレート12の長さの変更に追随可能な長さとするものである。
【0032】
具体的には、本第1変形例では、固定部11に前記合着させる板状プレート12の面の長手方向に長孔12bを形成し、長孔12bの任意の位置で、取付けネジ12aによって固定部11と着脱可能に取り付けられる構成になっている。したがって、板状プレート12が、固定部11から突出する長さは、長孔12bの長さで無段階に可変可能になっている。また、前記長孔12bを形成することにより、板状プレート12は、さらなる軽量化を図ることができる。
【0033】
なお、本第1変形例では、長孔を2本並列に開口しているが、並列させる長孔の数はこれに限定するものではない。さらに、前記長手方向に形成する孔の数も複数形成してもよい。この場合、長さの変更は段階的な変更となる。
【0034】
<第1実施形態の第2変形例>
図4は、第1実施形態における第2変形例の側面図である。本第2変形例では、弁作動部16のヘッド部分に、枢軸に固定された押圧レバー16aを設けた構成になっている。押圧レバー16aで押圧することにより、開閉弁15の閉塞軸15bを閉方向に押圧することができる。
【0035】
押圧レバー16aを設けることにより、弁作動部16を作動させる面積が大きくなり、かつ、テコの原理によって、たとえば、指1本で容易に押圧することができる。したがって、弁作動部16の操作性が向上する。
【0036】
本第2変形例では、弁作動部16は、
図1、
図3と異なる位置に取り付けている。すなわち、弁作動部16によって閉塞軸15bを押す方向が、エア配管17による空気の流れ方向に対して、直交する方向に押圧するように取り付けられている。したがって、押圧レバー16aも、押圧方向が前記直交する方向に枢軸回動するように取り付けられている。
【0037】
また、吸着治具1の上面視で押圧レバー16aと周方向で180度反対側には、押圧レバー16aの取り付け位置よりも僅かに固定部11側の位置に、鍔部16bが設けられている。吸着治具1を片手で把持して操作する場合、鍔部16b下方に人差し指を密着させて固定部11を握ると、親指付け根から母指球の間が押圧レバー16aに接触するようになる。そして、親指以外の四指と母指球とで吸着治具1を挟扼することで、弁作動部16を作動させることができる。したがって、押圧レバー16a(及び鍔部16b)によって、吸着治具1を把持する片手の僅かな動きで、容易に被吸着物品の吸着と解放ができるため、吸着治具1を使用する搬送作業において、押圧と解除の繰り返し操作の負荷が軽減され作業性が向上する。
【0038】
なお、上述の吸着治具1の握り方は、例示にすぎず、前記とは逆に、鍔部16bに人差し指側の親指の付け根を押し当てて、人差し指および親指以外の三指で固定部11を握り、人差し指で押圧レバー16aを押すように把持してもよい。この場合、人差し指の押圧方向は、前記三指を固定部11に巻き付ける方向に一致している。したがって、押圧レバー16aで押圧と解除の繰り返し操作で操作ミスが起こりにくく、作業の効率化を図ることができる。
【0039】
さらに、押圧レバー16aを有する弁作動部16は、固定部11を回転軸として回転可能に構成してもよい(図示せず)。このように構成することで、操作者の握り方に応じて、最適な位置に押圧レバー16aを配置することができる。
【0040】
<第2実施形態>
図5は、本明細書で開示する吸着治具1の第2実施形態を示す図であり、(A)は、側面図であり、(B)は、後述する可動部を90度回動させた状態の側面図である。本実施形態にかかる吸着治具1は、第1実施形態同様、パッド14と、エア配管17と、開閉弁15と、弁作動部16とを有する。一方、第1実施形態と異なり、操作時に片手で把持する部分が、開閉弁15を支持する本体部18と、パッド14を取り付ける可動部19とで構成されている。
【0041】
本実施の形態では、可動部19は、一端側がパッド14を取り付けるアーム部19aと、他端側が本体部18と接合するためのブラケット19bとを有する。
【0042】
アーム部19aは、前記第1実施形態(
図1)で説明した板状プレート12に該当し、片手で把持可能な長さおよび厚さを有する。ただし、アーム部19aは、板状の形状に限定するものではない。
【0043】
また、アーム部19aは、
図1の板状プレート12同様、側面視でL字状に曲げられた一端部を有する。この一端部に継ぎ手13aを貫通させ、ナット13dおよび座金13eと、ナット13bおよび座金13cとで挟持し保持部13を取り付けている。したがって、パッド14は、エア配管17側のナット13dを外して容易に交換することが可能な構造になっている。アーム部19aは、ブラケット19bに、取付けネジ19cによって取り付けられている。
【0044】
ブラケット19bは、本体部18と摺動回動可能に支持する支軸部19dと、可動部19を所定角度まで本体部18側に回動した位置で、係止する係止部19eを有する。
【0045】
本実施の形態では、可動部19の回動角度が0度の
図5(A)の位置と、90度回動させた
図5(B)の位置で係止するように、係止孔を設けているが、係止部19eの軌道上に、さらに複数の係止孔を設け、細かく刻んだ角度で係止させるようにしてもよい。
【0046】
エア配管17の一端は、第1実施形態同様、パッド14と、保持部13を介して気密に接続されている。また、アーム部19aも、第1実施形態同様、長さを可変可能に構成され、エア配管17は可撓性を有し、少なくとも、アーム部19aの長さの変更に追随可能な長さを有する。
【0047】
弁作動部16は、
図4同様、押圧レバー16aを有し、本体部18に回転軸18cを追加し、回転可能に構成してもよい。また、本体部18に係止部18dを追加し、回転軸18cを係止することにより、回転位置を保持する。
【0048】
<第2実施形態の変形例>
図6は、第2実施形態の変形例を示す図であり、(A)は、側面図、(B)は、可動部を90度回動させた状態の側面図である。
図5で説明した第2実施形態にかかる吸着治具1は、可動部19を手動で回動させる機構であるが、本変形例では、可動部19を押動ボタン18bによって回動させる機構である。押動ボタン18bは、本体部18にネジ止めされたホルダ18aに、可動部19の長手方向に直交する方向でブラケット19bを押動可能に取り付けられている。さらに、本変形例では、ブラケット19bに、回転軸を介して、可動部19が前記摺動回動する方向と同一方向に回転するカムフォロア19fを配設し、押動ボタン18bの先端は、カムフォロア19fに当接し、押動ボタン18bでカムフォロア19fを押動することにより、ブラケット19bが押動され、可動部19が回動するようになっている。
【0049】
ホルダ18aは、押動ボタン18bが、前記直交する方向の可動範囲において、押し端位置と戻し端位置で、可動部19の回動を規制する角度ロック機構18hを有する。本実施の形態では、角度ロック機構18hは、ホルダ18aおよび係止部18eにより保持されている。すなわち、
図6(A)の状態(可動部19の回動角度が0度の状態)と、
図6(B)の状態(可動部19の回動角度が90度の状態)で、角度ロック機構18hに形成された係止孔部(図示せず)に、係止部18eで回動角度0度と回動角度90度の状態で係止されている。
【0050】
また、本実施形態では、一端を本体部18に固定し、他端を可動部19に固定した戻しバネ18fを有する。押動ボタン18bを押すと、可動部19は、本体部18方向に回動するが、戻しバネ18fは、押動ボタン18bの押動距離に対応して回転付勢される。押動ボタン18bを押動状態から解放すると、回動した可動部19を前記戻し端位置に復帰させる。
【0051】
本変形例において、戻しバネ18fの具体的な構成は、一端を本体部18に取り付けられたバネポスト18gに掛止し、他端をブラケット19bに取り付けられたバネポスト19gに掛止する。
【0052】
なお、本変形例では、角度ロック機構18hにより、前記のとおり、可動部19の回動角度が0度のときと回動角度が90度のときに、前記係止孔部により係止されるが、0度から90度の間の任意の角度であっても、維持させることが可能である。この場合、戻しバネ18fの回転付勢力が働いているため、前記任意の角度を維持するには、押動ボタン18bを当該係止させた押し位置で維持すればよい。また、このような操作方法によれば、たとえば、回動角度として45度を所望した場合に、押動ボタン18bの押動する力の過不足によって、所望の角度未満または所望の角度超過の場合、押動ボタン18bをさらに押動方向または復帰方向に調整することにより、無段階で所望の回動角度を得ることができる。
【0053】
<実施例>
図7乃至
図9を使用して、吸着治具1の具体的実施例を説明する。
【0054】
図7は、本明細書で開示する吸着治具1を使って、プラスチック製のワークWを吸着搬送する状態を示した図である。吸着治具1は、片手Hで、固定部11および板状プレート12を把持可能な長さ、厚さを有する。
図7は、
図4で説明したとおり、人差し指を鍔部16bの下方に密着させて、固定部11を把持し、親指付け根から母指球の間で押圧レバー16aに当てている状態を示している。したがって、親指以外の四指と母指球とで吸着治具1を挟扼する僅かな動作で、弁作動部16を作動させて、ワークWを吸着し持ち上げることができる。ワークWのように、薄手のプラスチック製品が複数枚重なっている場合、静電気などにより、上下のワークWが密着し、手扱いの作業では、1個単位で取り出すのは作業時間を要する。さらに、ワークWの鋭利な縁辺部で指を切ることもあり、作業効率が低下する。吸着治具1を使用すれば、積層したワークWでも、容易に1個単位で持ち上げることができるとともに、片手で操作可能なため、同時進行で、別の片手により他の作業が可能となり、作業効率が向上する。また、
図7のワークWのように、径が小さいカップ状の内部底面で吸着する場合、板状プレート12の長さを変更し、内部空間には、パッド14および板状プレート12のみを入れるようにすればよい。
【0055】
また、
図8(A)で示すように、シート状の積層品bを1枚ずつピッキングする場合、
図9(A)で示すように、球体、円筒形など、曲面を有する物品Sの表面に吸着してピッキングする場合、など、被吸着物品の態様に応じて、適合するパッド14を容易に交換することができる。さらに、
図8(B)および
図9(B)で示すように、被吸着物品が、操作者の横にある場合も、可動部19を回動させれば、容易に吸着、搬送ができるため、作業性が向上する。
【0056】
この明細書で開示された技術は、前記実施形態に制限されない。すなわち、例示的に示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。また、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。さらに、開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0057】
1 吸着治具
11 固定部
12 板状プレート
13 保持部
14 パッド
15 開閉弁
16 弁作動部
17 エア配管
18 本体部
19 可動部
20 閉鎖空間
21 物品の面