(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122561
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】飛沫検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/06 20060101AFI20220816BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01N15/06 D
G01N1/02 A
G01N1/02 B
G01N15/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019882
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】倉田 孝男
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克巳
(72)【発明者】
【氏名】室伏 祥子
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA05
2G052AA28
2G052AD03
2G052AD04
2G052BA14
2G052CA04
2G052CA11
2G052GA11
(57)【要約】
【課題】人から出る飛沫と、空気中の塵とを簡易的に区別することができる飛沫検出装置を提供する。
【解決手段】飛沫検出装置は、空気が流入する流入口と空気が流出する流出口とを有する流路と、流路上に位置するセルと、セルにある空気に対して、500nm以下の波長の光を照射する光源と、セルにある空気から放射される光のうち、500nmよりも長い波長の光の強度を取得する検知部と、取得した強度に基づいて、空気に含まれる飛沫の濃度に関連する信号を出力する出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流入する流入口と前記空気が流出する流出口とを有する流路と、
前記流路上に位置するセルと、
前記セルにある前記空気に対して、500nm以下の波長の光を照射する光源と、
前記セルにある前記空気から放射される光のうち、500nmよりも長い波長の光の強度を取得する検知部と、
前記強度に基づいて、前記空気に含まれる飛沫の濃度に関連する信号を出力する出力部と、
を備える飛沫検出装置。
【請求項2】
前記光源から照射される光の光路上、かつ、前記光源と前記セルの間に、500nmよりも長い波長の光を除去する光源側フィルタを更に備える、請求項1に記載の飛沫検出装置。
【請求項3】
前記セルにある前記空気から放射される光の光路上、かつ、前記セルと前記検知部の間に、500nm以下の波長の光を除去する検出側フィルタを更に備える、請求項1又は2に記載の飛沫検出装置。
【請求項4】
前記強度に基づいて、ユーザに対する警報が必要か否かを判定する判定部を更に備え、
前記判定部によって前記警報が必要であると判定された場合に、前記出力部は、前記信号として前記警報を出力する、請求項1~3のいずれか一項に記載の飛沫検出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記強度が第1閾値以上である場合に前記警報が必要であると判定する、請求項4に記載の飛沫検出装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記強度の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上である場合に前記警報が必要であると判定する、請求項4又は5に記載の飛沫検出装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記強度の所定期間中の時間平均が第3閾値以上である場合に前記警報が必要であると判定する、請求項4~6のいずれか一項に記載の飛沫検出装置。
【請求項8】
前記検知部は、前記光源によって照射される光の進行方向と略直交する方向に進む光の強度を取得する、請求項1~7のいずれか一項に記載の飛沫検出装置。
【請求項9】
前記流路は、前記流入口と前記セルの間の区間、又は、前記セルと前記流出口の間の区間において屈曲している、請求項1~8のいずれか一項に記載の飛沫検出装置。
【請求項10】
前記流路上の、前記流入口と前記セルの間の区間に設けられた捕集部を更に備え、
前記捕集部は、前記空気に含まれる、所定サイズよりも大きいサイズを有する浮遊物を捕集する、請求項1~9のいずれか一項に記載の飛沫検出装置。
【請求項11】
前記捕集部は、前記流路を通過する前記空気の旋回により発生する遠心力によって、前記浮遊物を捕集するサイクロンである、請求項10に記載の飛沫検出装置。
【請求項12】
前記流入口から前記セルを経由して前記流出口に向かう前記空気の流れを生成する送風機を更に備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の飛沫検出装置。
【請求項13】
前記セルの内面は、500nmよりも長い波長の光を放射しない、又は、放射しにくい非蛍光性物質で覆われている、請求項1~12のいずれか一項に記載の飛沫検出装置。
【請求項14】
前記出力部からの前記信号を受信して前記信号に基づいたユーザへの報知を行う報知部を更に備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の飛沫検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛沫検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人が滞在する空間に浮遊する微粒子を捕集し、捕集した微粒子に含まれる感染性物質が所定量を超える場合に、感染性物質を排出したことが疑われる疑排出者を特定して疑排出者に関する情報を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術は、感染性物質を検知するためにレーザ光を用いた蛍光分析法または表面増強ラマン分光測定方法を用いている。そのため、人から出る飛沫(唾液、粘液など)と、空気中の塵(ホコリ、ダストなど)とを簡易的に区別できないという問題が生じていた。
【0005】
本開示は上述の状況を鑑みて成されたものである。即ち、本開示は、人から出る飛沫と、空気中の塵とを簡易的に区別することができる飛沫検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る飛沫検出装置は、空気が流入する流入口と空気が流出する流出口とを有する流路と、流路上に位置するセルと、セルにある空気に対して、500nm以下の波長の光を照射する光源と、検知部と、出力部と、を備える。検知部は、セルにある空気から放射される光のうち、500nmよりも長い波長の光の強度を取得する。出力部は、強度に基づいて、空気に含まれる飛沫の濃度に関連する信号を出力する。
【0007】
上記飛沫検出装置は、光源から照射される光の光路上、かつ、光源とセルの間に、500nmよりも長い波長の光を除去する光源側フィルタを更に備えるものであってもよい。
【0008】
上記飛沫検出装置は、セルにある空気から放射される光の光路上、かつ、セルと検知部の間に、500nm以下の波長の光を除去する検出側フィルタを更に備えるものであってもよい。
【0009】
上記飛沫検出装置は、強度に基づいて、ユーザに対する警報が必要か否かを判定する判定部を更に備えるものであってもよい。また、判定部によって警報が必要であると判定された場合に、出力部は、信号として警報を出力するものであってもよい。
【0010】
判定部は、強度が第1閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。
【0011】
判定部は、強度の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。
【0012】
判定部は、強度の所定期間中の時間平均が第3閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。
【0013】
検知部は、光源によって照射される光の進行方向と略直交する方向に進む光の強度を取得するものであってもよい。
【0014】
流路は、流入口とセルの間の区間、又は、セルと流出口の間の区間において屈曲しているものであってもよい。
【0015】
上記飛沫検出装置は、流路上の、流入口とセルの間の区間に設けられた捕集部を更に備えるものであってもよい。捕集部は、空気に含まれる、所定サイズよりも大きいサイズを有する浮遊物を捕集するものであってもよい。
【0016】
捕集部は、流路を通過する空気の旋回により発生する遠心力によって、浮遊物を捕集するサイクロンであってもよい。
【0017】
上記飛沫検出装置は、流入口からセルを経由して流出口に向かう空気の流れを生成する送風機を更に備えるものであってもよい。
【0018】
セルの内面は、500nmよりも長い波長の光を放射しない、又は、放射しにくい非蛍光性物質で覆われているものであってもよい。
【0019】
上記飛沫検出装置は、出力部からの信号を受信して信号に基づいたユーザへの報知を行う報知部を更に備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、人から出る飛沫と、空気中の塵とを簡易的に区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る飛沫検出装置の構成を示す模式図である。
【
図2】飛沫検出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態の変形例に係る飛沫検出装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
[飛沫検出装置の構成]
図1は、本開示の実施形態に係る飛沫検出装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、飛沫検出装置1は、流路と、セルCLと、光源21と、検知部23と、出力部25と、判定部27と、報知部29と、を備える。流路は、流入口11と流出口13とを有する。
図1では、黒矢印にて流路中の空気の流れが示されている。なお、流路上に送風機15が設けられ、送風機15が、流入口11から流出口13に向かう空気の流れを生成するものであってもよい。報知部29は、飛沫検出装置1の外部に設けられた外部機器であってもよい。
【0024】
なお、流路の大部分と、セルCLと、光源21と、検知部23は、筐体HGに格納されており、流入口11と流出口13は、筐体HGの外部に向かって開口している。流入口11には、筐体HGの外部から空気が流入し、流出口13からは、筐体HGの外部に向かって空気が流出する。筐体HGは、筐体HGの外部の光を内部に透過させない部材で構成されている。なお、筐体HGの内壁は、光を反射しない黒色に塗装されていてもよい。また、筐体HGの内壁は、非蛍光であってもよい。筐体HGの内壁は、500nmよりも長い波長の光を放射しない、又は、放射しにくい、非蛍光性物質で覆われているものであってもよい。
【0025】
セルCLは、流路上に設けられる。セルCLには、流入口11から流入した空気が導入され、セルCL内を通過した空気は、流出口13から流出する。なお、セルCLの内面(流入口11から流入した空気と接する面)は、500nmよりも長い波長の光を放射しない、又は、放射しにくい、非蛍光性物質で覆われているものであってもよい。
【0026】
なお、
図1に示すように、流路は、流入口11とセルCLの間の区間において屈曲しているものであってもよい。また、流路は、セルCLと流出口13の間の区間において屈曲しているものであってもよい。これらの区間で流路を屈曲させることで、流入口11又は流出口13から流路内に入射した光が、セルCLに到達することが抑制される。さらには、流入口11又は流出口13から流路内に入射した光が、検知部23に入射することが抑制される。
【0027】
光源21は、セルCL内を通過中の空気に対して、主に、500nm以下の波長の光を照射する。光源21が照射する照射光R1は、セルCLの中央部に位置する領域TGに向かって進行する。光源21は、LED、紫外線ランプなどであってもよい。光源21の例は、これらに限定されない。
【0028】
なお、光源21から照射される照射光R1の光路上であって、光源21とセルCLの間には、500nmよりも長い波長の光を除去する光源側フィルタF1が設けられていてもよい。これにより、照射光R1のうち、500nmよりも長い波長の光が領域TGに向かって進行することが抑制される。光源側フィルタF1は、回折格子、プリズムなどの分光器であってもよい。
【0029】
光源21から照射される照射光R1の光路上には、
図1に示すように、照射光R1を透過させるレンズL1、窓板W1が設けられていてもよい。照射光R1は、レンズL1によって集光されて、セルCL内に導入されるものであってもよい。その他、照射光R1は、図示しないリフレクタによって集光されて、セルCL内に導入されるものであってもよい。これらにより、セルCL以外に光を照射せずに、セルCL内に効率的に光を照射できる。
【0030】
レンズL1、窓板W1は、石英などの無機ガラス、ポリメタクリル酸メチル樹脂などの有機ガラスなどであってもよい。照射光R1を透過させるものであれば、レンズL1、窓板W1の例は、これらに限定されない。
【0031】
検知部23は、セルCL内を通過中の空気から放射される光のうち、主に、500nmよりも長い波長の光の強度を取得する。
図1では、検知部23に入射する入射光R2は、セルCLの中央部に位置する領域TGから放射されるものとして示されている。なお、照射光R1と入射光R2は、平行ではなく、略直交しているものであってもよい。例えば、検知部23は、フォトダイオード、光電子増倍管などである。
【0032】
なお、セルCLにある空気から放射される入射光R2の光路上、かつ、セルCLと検知部23の間に、500nm以下の波長の光を除去する検出側フィルタF2が設けられていてもよい。これにより、500nm以下の波長の光が検知部23に入射することが抑制される。検出側フィルタF2は、回折格子、プリズムなどの分光器であってもよい。
【0033】
セルCLにある空気から放射される入射光R2の光路上には、
図1に示すように、入射光R2を透過させるレンズL2、窓板W2が設けられていてもよい。入射光R2は、レンズL2によって集光されて、検知部23に導入されるものであってもよい。その他、入射光R2は、図示しない凹面鏡によって集光されて、検知部23に導入されるものであってもよい。また、入射光R2を検知部23に導入する際に、スリット、光彩絞りを用いて、入射光R2の光量の調整、入射光R2以外の迷光の遮断が行われてもよい。
【0034】
レンズL2、窓板W2は、石英などの無機ガラス、ポリメタクリル酸メチル樹脂などの有機ガラスなどであってもよい。入射光R2を透過させるものであれば、レンズL2、窓板W2の例は、これらに限定されない。
【0035】
検知部23による強度の取得の対象となる光には、セルCL内を通過中の空気中に含まれる浮遊物が、光源21が照射する照射光R1を受けて放射する蛍光又は燐光が含まれる。蛍光又は燐光の強度は、浮遊物の濃度におおむね比例する。そのため、検知部23によって光の強度を取得することで、セルCL内を通過中の空気中に含まれる浮遊物の濃度を推定できる。推定される濃度の単位としては、例えば、単位体積当たりの浮遊物の個数、単位体積当たりの浮遊物の重量、などが挙げられる。
【0036】
また、空気中に含まれる浮遊物のうち人から出る飛沫は生物由来の物質を含む。そのため、人から出る飛沫は、500nmよりも長い波長の光の蛍光又は燐光を放射する傾向が大きい。一方、空気中に含まれる浮遊物のうち生物由来ではない物質は、500nmよりも長い波長の光の蛍光又は燐光を放射する傾向が小さい。そのため、500nmよりも長い波長の光の強度に基づいて、空気中を浮遊する、人から出る飛沫の濃度を推定することができる。
【0037】
出力部25は、検知部23によって取得した光の強度に基づいて、セルCL内を通過中の空気に含まれる飛沫の濃度に関連する信号(飛沫の濃度を示す信号、飛沫に関するユーザに対する警報など)を出力する。出力部25が出力する信号は、アナログ信号であってもデジタル信号であってもよい。出力部25は、後述する報知部29に飛沫の濃度に関連する信号を出力するものであってもよい。
【0038】
出力部25が出力する信号は、図示しない外部機器に送信されるものであってもよい。例えば、飛沫の濃度に関連する信号が換気扇に送信され、飛沫の濃度が高いほど、換気扇による換気量を大きくするよう換気扇が制御されるものであってもよい。また、飛沫の濃度に関連する信号が空気清浄機に送信され、飛沫の濃度が高いほど、空気清浄機の出力を大きくするよう空気清浄機が制御されるものであってもよい。
【0039】
判定部27は、検知部23によって取得した光の強度に基づいて、ユーザに対する警報が必要か否かを判定する。なお、判定部27によって警報が必要であると判定された場合に、出力部25は、信号として警報を出力するものであってもよい。
【0040】
例えば、判定部27は、検知部23によって取得した光の強度が第1閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。ここで、第1閾値は、警報を発する必要がある空気中の飛沫の濃度を基準にして定められる。検知部によって取得した強度が大きいほど、空気中に浮遊する生物由来の物質の濃度は高いといえる。そのため、警報を発する必要がある空気中の飛沫の濃度のうち、最低値の濃度の浮遊物を含む空気から放射される光の強度を、第1閾値として、事前に定められる。
【0041】
なお、判定部27は、検知部23によって取得した光の強度から、所定のゲインを差し引いた値を、判定に用いる強度とするものであってもよい。ここで、所定のゲインとは、飛沫検出装置1を測定対象となる環境に置いた際に、測定を開始する前のバックグラウンドのノイズを基準に定められる。例えば、会議室、宴会場、飲食店などの人が密集しうる環境に飛沫検出装置1を置き、人混みが発生していない状態で検知部23によって取得した光の強度を所定のゲインとして定めてもよい。これにより、バックグラウンドのノイズに起因する誤判定を抑制できる。
【0042】
また、判定部27は、検知部23によって取得した光の強度の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。
【0043】
より具体的には、判定部27は、所定時間の過去に検知部23によって取得した光の強度を記憶し、取得した最新の強度が、過去の強度から変化した変化量を算出する。判定部27は、当該変化量を所定時間で除算することで、単位時間当たりの変化量を算出する。そして、判定部27は、単位時間当たりの変化量が第2閾値以上であるか否かを判定するものであってもよい。これにより、空気中の飛沫が急激に増えた場合に、ユーザに対して警報を発する必要があると判定できる。
【0044】
さらに、判定部27は、検知部23によって取得した光の強度の所定期間中の時間平均が第3閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。
【0045】
より具体的には、判定部27は、過去の所定期間中に取得した、複数の光の強度を記憶し、当該複数の光の強度の平均を算出する。そして、判定部27は、当該平均が第3閾値以上であるか否かを判定するものであってもよい。これにより、強度の測定誤差が悪い場合、又は、空気中の飛沫濃度の揺らぎがある場合であっても、ユーザに対して警報を発する必要があると判定する際の誤判定を抑制できる。
【0046】
報知部29は、出力部25から、飛沫の濃度に関連する信号を受信して、信号に基づいたユーザへの報知を行う。
【0047】
例えば、飛沫の濃度に関連する信号として、飛沫の濃度を示す信号を受信した場合、報知部29は、飛沫の濃度が高いほど明るく点灯するものであってもよい。また、報知部29は、飛沫の濃度が高いほど高い頻度で点滅するものであってもよい。さらに、報知部29は、飛沫の濃度を、数字又はグラフによって図示しない画面上に表示するものであってもよい。
【0048】
飛沫の濃度に関連する信号として、飛沫に関するユーザに対する警報を受信した場合、報知部29は、警報を報知するため、点灯又は点滅するものであってもよい。
【0049】
報知部29は、各種の情報を視覚情報によって情報を提示するものに限定されない。報知部29は、ブザー、又は、スピーカーなどを用いて聴覚情報によってユーザに情報を提示するものであってもよいし、振動を発生させて、振動による刺激によってユーザに情報を提示するものであってもよい。また、報知部29は、飛沫検出装置1の外部に設けられた外部機器であってもよい。例えば、報知部29は、ディスプレイ、スマートフォンなどの画像を表示する装置であってもよい。報知部29は、画像、動画などを表示してユーザに注意喚起するものであってもよい。報知部29は、飛沫の濃度に関連する信号を表示するものであってもよい。報知部29の例は、これらに限定されない。
【0050】
[変形例に係る飛沫検出装置の構成]
図3は、本開示の実施形態の変形例に係る飛沫検出装置の構成を示す模式図である。
図1に示す飛沫検出装置1と比較して、
図3に示す飛沫検出装置1Aは、捕集部31及び回収ボックス33を備える。
【0051】
捕集部31は、流路上の、流入口11とセルCLの間の区間に設けられる。捕集部31は、空気に含まれる、所定サイズよりも大きいサイズを有する浮遊物を捕集する。例えば、捕集部31は、分粒器であってもよい。捕集部31は、所定サイズの大きさの空孔を有するフィルタであってもよいし、流路を通過する空気の旋回により発生する遠心力によって、浮遊物を捕集するサイクロンであってもよい。なお、所定サイズ以下のサイズを有する浮遊物は、捕集部31によって捕集されずにセルCLに流れ込む。
【0052】
回収ボックス33は、捕集部31によって捕集した浮遊物が流れ込む容器である。特に、捕集部31がサイクロンである場合、所定サイズよりも大きいサイズを有する浮遊物は、捕集部31に蓄積せずに捕集部31の外部に排出されるため、回収ボックス33によって捕集した浮遊物を回収する。回収ボックス33は、飛沫検出装置1Aの所定運転時間が経過するたびに交換されるものであってもよい。
【0053】
[飛沫検出装置の処理手順]
次に、本開示に係る飛沫検出装置の処理手順を、
図2のフローチャートを参照して説明する。
図2のフローチャートの処理は、ユーザが飛沫検出装置1,1Aを稼働させた際に開始される。
【0054】
ステップS101にて、送風機15が起動され、流入口11から流出口13に向かう空気の流れが生成される。
【0055】
ステップS103にて、検知部23は、飛沫検出装置1,1Aを稼働させた直後における、セルCL内を通過中の空気から放射される光の強度を、初期強度として取得する。なお、初期強度を取得するタイミングは、飛沫検出装置1,1Aを稼働させた直後に限定されず、ユーザの指示したタイミングであってもよい。
【0056】
ステップS105にて、判定部27は、取得した初期強度を所定のゲインとして記憶する。
【0057】
ステップS107にて、検知部23は、セルCL内を通過中の空気から放射される光の強度を取得する。
【0058】
ステップS109にて、出力部25は、検知部23によって取得した光の強度に基づいて、飛沫濃度の信号(飛沫の濃度に関連する信号)を生成する。その他、判定部27は、検知部23によって取得した光の強度に基づく判定を行ってもよい。
【0059】
ステップS111にて、出力部25は、飛沫濃度の信号を出力する。
【0060】
ステップS113にて、ユーザの指示に基づいて、測定を終了するか否かが判定される。測定を終了しない場合(ステップS113でNOの場合)には、ステップS107に戻る。また、測定を終了する場合(ステップS113でYESの場合)には、
図3のフローチャートで示される処理を終了する。
【0061】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本開示に係る飛沫検出装置は、空気が流入する流入口と空気が流出する流出口とを有する流路と、流路上に位置するセルと、セルにある空気に対して、500nm以下の波長の光を照射する光源と、検知部と、出力部と、を備える。検知部は、セルにある空気から放射される光のうち、500nmよりも長い波長の光の強度を取得する。出力部は、強度に基づいて、空気に含まれる飛沫の濃度に関連する信号を出力する。
【0062】
これにより、人から出る飛沫と、空気中の塵とを簡易的に区別することができる。例えば、人から出る飛沫は、生物由来の物質を含み、500nmよりも長い波長の光の蛍光又は燐光を放射する傾向が大きい。例えば、生体検知に良く使われるリボフラビン(ビタミンB2)、模擬細菌としてよく使われるスキムミルクは、500nmよりも長い波長において蛍光強度のピークを有する。一方、生物由来ではない物質は、500nmよりも長い波長の光の蛍光又は燐光を放射する傾向が小さい。そのため、500nmよりも長い波長の光の強度に基づいて、空気中を浮遊する、人から出る飛沫の濃度を推定することができる。
【0063】
上記飛沫検出装置は、光源から照射される光の光路上、かつ、光源とセルの間に、500nmよりも長い波長の光を除去する光源側フィルタを更に備えるものであってもよい。これにより、空気中に浮遊する浮遊物による散乱光が検知部に入射することを抑制できる。その結果、空気中の飛沫の濃度の推定の誤差が悪化してしまうのを抑制できる。
【0064】
上記飛沫検出装置は、セルにある空気から放射される光の光路上、かつ、セルと検知部の間に、500nm以下の波長の光を除去する検出側フィルタを更に備えるものであってもよい。これにより、光源から照射される光、又は、空気中に浮遊する浮遊物による散乱光が検知部に入射することを抑制できる。その結果、人から出る飛沫の濃度の推定の誤差が悪化してしまうのを抑制できる。
【0065】
上記飛沫検出装置は、強度に基づいて、ユーザに対する警報が必要か否かを判定する判定部を更に備えるものであってもよい。また、判定部によって警報が必要であると判定された場合に、出力部は、信号として警報を出力するものであってもよい。検知部によって取得した強度が大きいほど、空気中に浮遊する生物由来の物質の濃度は高いといえる。そのため、空気中の飛沫の濃度に基づいて、ユーザに対して警報を発する必要があるか否かを判定できる。また、警報を出力することで、実際に、ユーザに対して警報を発することができる。
【0066】
判定部は、強度が第1閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。これにより、空気中の飛沫の濃度が所定の濃度以上となった場合に、ユーザに対して警報を発する必要があると判定できる。また、実際にユーザに警報を発することで、ユーザは、会話を控えたり、飛沫検出装置が設置された部屋から退避したり、部屋の換気を行ったりできる。すなわち、ユーザの健康を守ることができるよう、ユーザの行動を促すことができる。
【0067】
判定部は、強度の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。これにより、空気中の飛沫の濃度の変化が所定値以上となった場合に、ユーザに対して警報を発する必要があると判定できる。また、実際にユーザに警報を発することで、ユーザは、会話を控えたり、飛沫検出装置が設置された部屋から退避したり、部屋の換気を行ったりできる。すなわち、ユーザの健康を守ることができるよう、ユーザの行動を促すことができる。
【0068】
判定部は、強度の所定期間中の時間平均が第3閾値以上である場合に警報が必要であると判定するものであってもよい。これにより、空気中の飛沫の濃度を所定期間において時間平均して得られる平均濃度に基づいて、ユーザに対して警報を発する必要があるか否かを判定できる。特に、強度の測定誤差が悪い場合、又は、空気中の飛沫濃度の揺らぎがある場合であっても、ユーザに対して警報を発する必要があると判定する際の誤判定を抑制できる。
【0069】
検知部は、光源によって照射される光の進行方向と略直交する方向に進む光の強度を取得するものであってもよい。これにより、光源から照射される光、又は、空気中に浮遊する浮遊物による散乱光が検知部に入射することを抑制できる。その結果、人から出る飛沫の濃度の推定の誤差が悪化してしまうのを抑制できる。
【0070】
特に、空気中に浮遊する浮遊物による散乱光のうち、レイリー散乱(光の波長よりも小さいサイズの粒子による散乱)は、光源によって照射される光の進行方向と略直交する方向において最も小さくなる。そのため、空気中に浮遊する浮遊物による散乱光による影響を最小化できる。
【0071】
また、空気中に浮遊する浮遊物による散乱光のうち、ミー散乱(光の波長と同程度のサイズの粒子による散乱)は、光源によって照射される光の進行方向への散乱の割合が比較的大きい。そのため、光源によって照射される光の進行方向と異なる方向に進む光の強度を取得することで、空気中に浮遊する浮遊物による散乱光による影響を抑制できる。特に、光源によって照射される光の進行方向と略直交する方向に進む光の強度を取得することで、空気中に浮遊する浮遊物による散乱光による影響を抑制できる。
【0072】
流路は、流入口とセルの間の区間、又は、セルと流出口の間の区間において屈曲しているものであってもよい。これにより、流入口又は流出口から流路内に入射した光がセルに到達して、検知部に入射することを抑制できる。その結果、人から出る飛沫の濃度の推定の誤差が悪化してしまうのを抑制できる。
【0073】
上記飛沫検出装置は、流路上の、流入口とセルの間の区間に設けられた捕集部を更に備えるものであってもよい。捕集部は、空気に含まれる、所定サイズよりも大きいサイズを有する浮遊物を捕集するものであってもよい。これにより、空気に含まれる浮遊物のうち、人の健康に影響を及ぼす可能性が高いウィルスなどの含む飛沫を対象として、濃度を推定することができる。
【0074】
一般に、粒子の沈降速度は粒径の2乗に比例する。例えば、比重が1、球形の粒子の空気中における沈降速度を算出すると、空気中において直径5μm程度の粒子の沈降速度は毎分5cm程度であるのに対し、直径1μm程度の粒子の沈降速度は毎時12cm程度である。そのため、サイズが小さい浮遊物は、長時間に渡って空気中を浮遊しやすく、人が吸い込んだり、人の粘膜などに付着したりする可能性が高い。
【0075】
したがって、所定サイズよりも大きいサイズを有する浮遊物を取り除くことで、人の健康に影響を及ぼす可能性が高いウィルスなどの含む飛沫を対象として、濃度を推定することができる。その結果、人の健康に影響を及ぼす可能性が高い飛沫の濃度の推定の精度を向上させることができる。
【0076】
捕集部は、流路を通過する空気の旋回により発生する遠心力によって、浮遊物を捕集するサイクロンであってもよい。これにより、人の健康に影響を及ぼす可能性が低い浮遊物を、空気中から効果的に取り除くことができる。特に、目の細かいフィルタなどで浮遊物を捕集する場合と比較して、遠心力によって浮遊物を捕集する場合には、捕集の過程で、浮遊物がより小さなサイズの浮遊物に分裂してしまうことが抑制される。さらに、捕集した浮遊物が、再度、空気中に放出されてしまうことが抑制される。そのため、人の健康に影響を及ぼす可能性が高い飛沫の濃度の推定の精度を向上させることができる。
【0077】
上記飛沫検出装置は、流入口からセルを経由して流出口に向かう空気の流れを生成する送風機を更に備えるものであってもよい。これにより、飛沫検出装置の周囲にある空気を効果的にセルの内部に取り込むことができる。その結果、飛沫検出装置の周囲にある空気中を浮遊する、人から出る飛沫の濃度を、より効果的に推定することができる。
【0078】
セルの内面は、500nmよりも長い波長の光を放射しない、又は、放射しにくい非蛍光性物質で覆われているものであってもよい。これにより、光源から照射される光を受けて、セルの内面から放射された光が検知部に入射して、人から出る飛沫の濃度の推定の誤差が悪化してしまうのを抑制できる。
【0079】
上記飛沫検出装置は、出力部からの信号を受信して信号に基づいたユーザへの報知を行う報知部を更に備えるものであってもよい。これにより、ユーザは、会話を控えたり、飛沫検出装置が設置された部屋から退避したり、部屋の換気を行ったりできる。すなわち、ユーザの健康を守ることができるよう、ユーザの行動を促すことができる。
【0080】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサ、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置、又は、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0081】
本開示によれば、人から出る飛沫と、空気中の塵とを簡易的に区別することができるため、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する。」に貢献することができる。
【0082】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,1A 飛沫検出装置
11 流入口
13 流出口
15 送風機
21 光源
23 検知部
25 出力部
27 判定部
29 報知部
31 捕集部
CL セル
F1 光源側フィルタ
F2 検出側フィルタ