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特開2022-122640電子レンジ加熱用発熱シート、および電子レンジ加熱用発熱シートを用いた容器
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  • 特開-電子レンジ加熱用発熱シート、および電子レンジ加熱用発熱シートを用いた容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122640
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱用発熱シート、および電子レンジ加熱用発熱シートを用いた容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220816BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220816BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20220816BHJP
   A47J 36/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B65D81/34 W
B65D65/40 D
A47J27/00 107
A47J36/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020002
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 義久
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
【テーマコード(参考)】
3E013
3E086
4B055
【Fターム(参考)】
3E013BA02
3E013BB01
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC06
3E013BC12
3E013BC13
3E013BC14
3E013BD03
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF42
3E013BF43
3E013BG02
3E013BG12
3E086AB01
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB37
3E086BB41
3E086CA01
4B055AA10
4B055BA22
4B055BA70
4B055CA02
4B055CA71
4B055CB16
4B055CC43
4B055DB15
4B055FB02
4B055FB54
4B055FC07
(57)【要約】
【課題】マイクロ波のエネルギーを効率良く使用することにより、食品に短時間で焦げ目を付けたり、クリスピー感(パリパリ感)をだしたりする加熱調理に適した電子レンジ加熱用発熱シートを提供する。
【解決手段】耐熱性フィルム層とアルミニウム蒸着層とをこの順に積層形成した発熱フィルムのアルミニウム蒸着層面に接着剤層を介して板紙を積層形成し、前記板紙が、坪量100~500g/mの厚紙であることを特徴とする電子レンジ加熱用発熱シートである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性フィルム層とアルミニウム蒸着層とをこの順に積層形成した発熱フィルムのアルミニウム蒸着層面に接着剤層を介して板紙を積層形成したことを特徴とする電子レンジ加熱用発熱シート。
【請求項2】
前記板紙が、坪量100~500g/mの厚紙であることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用発熱シート。
【請求項3】
前記耐熱性フィルム層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ加熱用発熱シート。
【請求項4】
前記アルミニウム蒸着層が、アルミニウムを60±20Å程度で薄膜蒸着したものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電子レンジ加熱用発熱シート。
【請求項5】
前記接着剤層が、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤、またはアクリル系エマルジョン接着剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電子レンジ加熱用発熱シート。
【請求項6】
前記請求項1~請求項5のいずれかに記載の電子レンジ加熱用発熱シートを用いた容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を電子レンジのマイクロ波により加熱したり焦げ目を付けたりして加熱調理するためのシートにおいて、マイクロ波のエネルギーを効率良く使用し、食品に短時間で焦げ目を付けるための高周波加熱調理用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
食品を高周波を用いて加熱しながら焦げ目を付けたりして加熱調理するための高周波加熱調理用シートとして、従来より、電子レンジ加熱用発熱シートがある。
【0003】
上記電子レンジ加熱用発熱シートは、耐熱性のプラスチックフィルムに、真空蒸着法などによりアルミニウムの極薄膜(導電材料を例えば60Å程度の極薄膜によって比較的高い電気抵抗性膜にしたもの)を形成し、蒸着面へ接着剤を介して薄紙をラミネートしたものである。
【0004】
電子レンジ加熱用発熱シートは、アルミニウム蒸着層が極薄膜であるために、電子レンジの高周波(マイクロ波)は、通常のアルミ箔のような反射を発生せず、ほとんどのマイクロ波は、極薄膜の電気抵抗によるジュール熱として変換吸収され、あるいは極薄膜の蒸着層は透過する。
【0005】
蒸着層に吸収したマイクロ波は、ジュール熱として蒸着層を加熱し、一方、透過したマイクロ波は、食品を加熱する。
【0006】
電子レンジ加熱用発熱シートは、例えば、カートンの内側やトレーの底面に貼り合わせて、電子レンジ用発熱体付きパッケージなどとして利用されている。
【0007】
2020年以降の新型コロナウイルスの流行や、共働き世帯や少人数世帯の増加により、調理された食品を購入して家で食べる中食の需要が伸びており、冷凍食品やテイクアウトした総菜を、簡便かつ迅速に加熱調理して賞味できることが要求されるようになっている。
【0008】
上記冷凍食品や総菜の加熱調理では、ただ温めるだけではなく、食品によっては、迅速に焦げ目を付けたり、クリスピー感(パリパリ感)を出したりする加熱調理法が必要とされており、従来より薄紙サセプターが利用されている。
【0009】
特許文献1に示す電子レンジ加熱用発熱シートは、図3に示すように、少なくとも耐熱性フィルム層1表面に、アルミニウム蒸着層2を設けた発熱フィルムの該アルミニウム蒸着層2上に接着剤層3を介して、薄紙5を積層形成した積層体を規定のサイズにカットし、薄紙5面に接着剤層6を介して紙トレー11に貼り合わせたものであるが、貼り合わせることができるサイズに制約があり、形状も四角形に限られるという問題があった。
【0010】
また、焦げ目やクリスピー感を増すためには、図4に示すように、電子レンジ加熱用発熱シートと食品Fの接地面をできるだけ高温加熱する必要があり、高温加熱することで加熱調理時間の短縮効果も期待できる。しかしながら、従来の電子レンジ加熱用発熱シートは、発熱フィルムが収縮することで発熱フィルムにひび割れが発生することがあり、ひび割れ部で電磁誘導の途切れが起こり、マイクロ波のエネルギーを効率良く発熱することができない。したがって、焦げ目が付かなかったり、焦げ目がついても時間が掛かる問題が
あった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008-62990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は高周波加熱調理用シートである電子レンジ加熱用発熱シートにおいて、食材の形に合わせるといった自由な形状に加工でき、かつ、マイクロ波のエネルギーを効率良く使用することにより、食品に短時間で焦げ目を付けたり、クリスピー感(パリパリ感)をだしたりする加熱調理に適した電子レンジ加熱用発熱シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明は、耐熱性フィルム層とアルミニウム蒸着層とをこの順に積層形成したフィルムのアルミニウム蒸着層面に接着剤層を介して板紙を積層形成したことを特徴とする電子レンジ加熱用発熱シートである。
【0014】
次に、請求項2に記載の発明は、前記板紙が、坪量100~500g/mの厚紙であることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用発熱シートである。
【0015】
次に、請求項3に記載の発明は、前記耐熱性フィルム層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ加熱用発熱シートである。
【0016】
次に、請求項4に記載の発明は、前記アルミニウム蒸着層が、アルミニウムを60±20Å程度で薄膜蒸着したものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電子レンジ加熱用発熱シートである。
【0017】
次に、請求項5に記載の発明は、前記接着剤層が、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤、またはアクリル系エマルジョン接着剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電子レンジ加熱用発熱シートである。
【0018】
次に、請求項5に記載の発明は、前記請求項1~請求項5のいずれかに記載の電子レンジ加熱用発熱シートを用いた容器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電子レンジ加熱用発熱シートは、発熱フィルムに接着剤層を介して板紙に積層形成することで、発熱フィルムの収縮を抑制する。収縮を抑制することで発熱フィルムのひび割れによる電磁誘導の途切れを起こりにくくし、マイクロ波のエネルギーを効率良く発熱することができる。
【0020】
図2に示すように、本発明の電子レンジ加熱用発熱シートAに食品Bなどの焦げ目を付ける対象物を載せて電子レンジ庫21に置いて加熱を行うことにより、電子レンジのマイクロ波が電子レンジ加熱用発熱シートAの発熱フィルムA1及び食品Fを発熱させ、この発熱フィルムA1の熱が食品Fの発熱フィルム接地面にも伝わり、食品Fの接地面がこんがり焼けてクリスピー感や風味が向上する。
【0021】
本発明の請求項1によれば、耐熱性フィルム層とアルミニウム蒸着層とをこの順に積層形成したフィルムのアルミニウム蒸着層面に接着剤層を介して板紙を積層形成したことを特徴とする。発熱フィルムと板紙を直接ラミネートすることで、紙トレーとを別途貼り合わせる貼りが不要となる。従来の薄紙にラミネートした電子レンジ加熱用発熱シートでは四角形に限られていた形状も、本発明の電子レンジ加熱用発熱シートは打抜加工することができるため、食材の形に合わせるといった形状の自由を実現する。
【0022】
本発明の請求項2によれば、板紙が、坪量100~500g/mの厚紙であることを特徴とする。発熱フィルムと厚紙をラミネートすることで、薄紙とラミネートしたときよりも、発熱フィルムの収縮が抑制され、発熱フィルムのひび割れによる電磁誘導の途切れが起こりにくくなる。従来の電子レンジ加熱用発熱シートよりもマイクロ波のエネルギーを効率良く発熱することができ、高温加熱が可能となり、加熱調理時間の短縮効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の電子レンジ加熱用発熱シートの側断面図である。
図2】本発明の電子レンジ加熱用発熱シートと食品等の概要側断面図である。
図3】従来の電子レンジ加熱用発熱シートの側断面図である。
図4】電子レンジ庫内の従来の電子レンジ加熱用発熱シートと食品等の概要側断面図である。
図5】電子レンジ庫内の本発明の厚紙サセプター台紙と食品等の実施例の側断面図である。
図6】電子レンジ庫内の従来の電子レンジ加熱用発熱シートと食品等の比較例の側断面図である。
図7】電子レンジ庫内の発熱フィルム単体と食品等の比較例の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の電子レンジ加熱用発熱シートの実施の形態を、図面に基づいて以下に詳細に説明する。図1は、本発明の電子レンジ加熱用発熱シートの側断面図であり、耐熱性フィルム層1と、アルミニウム蒸着層2とを、この順に積層形成した発熱フィルムA1の前記アルミニウム蒸着層2面に、接着剤層3を介して板紙4を積層形成したものである。
【0025】
前記耐熱性フィルム層1は、電子レンジによる高周波加熱によるアルミニウム蒸着層2による発熱に対して耐熱性のあるフィルムが使用され、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好適である。
【0026】
前記アルミニウム蒸着層2は、耐熱性フィルム層1面に、例えば60±20Å程度の通常の蒸着層厚と同様の層厚にて蒸着形成されている。
【0027】
前記接着剤層3は、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤、またはアクリル系エマルジョン接着剤が好適である。この接着剤のガラス転移点Tgは、本発明においては特に限定されるものではないが、例えば30℃以上であればよく、30℃~180℃の接着剤を使用することができる。
【0028】
前記板紙4は、坪量100~500g/mの厚紙である。
【0029】
図2に示す本発明の電子レンジ加熱用発熱シートAは、電子レンジのマイクロ波が電子レンジ加熱用発熱シートAの発熱フィルムA1及び食品Fを発熱させ、この発熱フィルムA1の熱が食品Fの発熱フィルム接地面にも伝わり、食品Fの接地面がこんがり焼けてクリスピー感や風味が向上するものである。
【実施例0030】
以下に本発明の具体的実施例および比較例について説明する。
【0031】
<実施例1>
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムによる耐熱性フィルム層1の表面に60Å厚のアルミニウム蒸着層2を蒸着して、発熱フィルムA1を作製した。
【0032】
次に、発熱フィルムA1のアルミニウム蒸着層2側に、接着剤層3により、板紙4として三菱製紙株式会社製のNパールカード坪量450g/mをラミネートして、本発明の電子レンジ加熱用発熱シートAのサンプル1を作製した。
【0033】
<実施例2>
実施例1と同様にして作製した発熱フィルムA1を、接着剤層3により、板紙4として三菱製紙株式会社製のNパールカード坪量260g/mをラミネートして、電子レンジ加熱用発熱シートAのサンプル2を作製した。
【0034】
<実施例3>
実施例1と同様にして作製した発熱フィルムA1を、接着剤層3により、板紙4として三菱製紙株式会社製のNパールカード坪量500g/mをラミネートして、電子レンジ加熱用発熱シートAのサンプル3を作製した。
【0035】
<実施例4>
実施例1と同様にして作製した発熱フィルムA1を、接着剤層3により、板紙4として三菱製紙株式会社製のNパールカード坪量200g/mをラミネートして、電子レンジ加熱用発熱シートAのサンプル4を作製した。
【0036】
<比較例1>
実施例1と同様にして作製した発熱フィルムA1を、接着剤層3により、薄紙として天間特殊製紙社製のM中性紙坪量32g/mをラミネートして、電子レンジ加熱用発熱シートBのサンプル3を作製した。
【0037】
<比較例2>
実施例1と同様にして作製した発熱フィルムA1をサンプル4とした。
【0038】
図5に実施例1~4、図6に比較例1、図7に比較例2の側断面図を示す。
【0039】
<評価方法>
上記のように作製した実施例1~4、および比較例1~2の各サンプルを紙トレー11上に乗せ、その上に食品Fとして「レンジピッツァ&ピッツァ」を載置し、電子レンジ庫内21にて600wの電子レンジにて3分間加熱した。取り出した後、底面の焦げ具合および加熱後の発熱フィルムの収縮度を目視にて評価した。
【0040】
(評価基準1)
底面の焦げ目の評価基準は以下のとおりである。
◎:焦げ目がハッキリ付いた。
〇:焦げ目あり。
△:薄い焦げ目あり。
×:焦げ目なし。
【0041】
(評価基準2)
加熱後の収縮性の評価基準は以下のとおりである。
〇:収縮は見られず、ひび割れない。
△:収縮によるカールあり、ひび割れは多い。
×:収縮によるカールあり、ボロボロにひび割れ。
【0042】
また、食材Fと発熱フィルムA1の間の温度を、125℃~250℃まで確認可能なサーモラベル(登録商標)、および-190℃~260℃まで計測可能な蛍光式光ファイバー温度計を用いて最高温度の測定を行った。
【0043】
<評価結果>
上記実施例1~4、比較例1~2の評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、実施例1の電子レンジ加熱用発熱シートは、比較例1の電子レンジ加熱用発熱シートよりも、食材Fと発熱フィルムA1間の温度がサーモラベル(登録商標)で20℃、光ファイバー温度計で40℃高くなり、焦げ目がハッキリ付きクリスピー感も向上した。実施例2~4についても温度計で20℃以上高くなり、焦げ目やクリスピー感も実施例1と同様に向上した。また、実施例加熱後の発熱フィルムの収縮も少なく、トレーなしで使用することができ、別途貼り合わせる工程が不要となり低コストかつ自由な形状に打抜して使用できることが判った。比較例2の発熱フィルムは、他の実施例や比較例よりも最高温度が低いことに加えて、加熱後の発熱フィルムがボロボロにひび割れてしまい、食品に付着したことから、発熱フィルム単体での使用は不適であることが分かった。
【符号の説明】
【0046】
A:電子レンジ加熱用発熱シート
A1:発熱フィルム
C:従来の電子レンジ加熱用発熱シート
1:耐熱フィルム層
2:アルミニウム蒸着層
3:接着剤層
4:板紙
5:接着剤層
11:紙トレー
21:電子レンジ庫
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7