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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122641
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】高耐性包材用積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220816BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020003
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 勇作
(72)【発明者】
【氏名】高山 雅恵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB52
3E086BB90
3E086CA40
4F100AB01B
4F100AB10B
4F100AB33B
4F100AK01E
4F100AK04C
4F100AK06D
4F100AK41A
4F100AK63D
4F100AK63E
4F100AL04C
4F100AL07C
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00C
4F100CB00D
4F100EH20C
4F100EH20D
4F100EJ64B
4F100GB15
4F100JA04C
4F100JA06D
4F100JA13C
4F100JA13D
4F100JB16E
4F100JK06
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】内容物耐性が高く、ヘアカラー剤、次亜塩素酸水や香料など包材へのアタックが強い内容物用の包材に適用できる高耐性包材用積層体を提供すること。
【解決手段】表層側から、基材層、金属層、表面改質層、接着層、熱可塑性樹脂層8の順に積層され、接着層が少なくとも酸変性ポリエチレンと低密度ポリエチレン7を含み、かつ、金属層側に酸変性ポリエチレン層が、熱可塑性樹脂層側に低密度ポリエチレン層が配置された溶融共押出し層であり、基材層、金属層、熱可塑性樹脂層とサンドイッチラミネートされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層側から、基材層、金属層、接着層、熱可塑性樹脂層の順に積層され、前記金属層は少なくとも接着層側の面に表面改質層を有し、前記接着層は少なくとも酸変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含み、かつ、金属層側に酸変ポリエチレン層が、熱可塑性樹脂層側に低密度ポリエチレン層が配置された溶融共押出し層であり、基材層、金属層、熱可塑性樹脂層とサンドイッチラミネートされていることを特徴とする高耐性包材用積層体。
【請求項2】
前記酸変性ポリエチレン層が、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンからなり、前記熱可塑性樹脂層が直鎖状低密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1に記載の高耐性包材用積層体。
【請求項3】
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンが、示差走査熱量測定において、90℃~100℃に第1融点ピークを示し、かつ、50℃から低温側に20℃以上連続した第2融点ピークを示す成分を含むことを特徴とする請求項2に記載の高耐性包材用積層体。
【請求項4】
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1wt%以上1.0wt%以下であり、密度が0.88g/cm以上0.90g/cm以下であり、メルトフローレートが8.5以上12.0以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の高耐性包材用積層体。
【請求項5】
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンが、示差走査熱量測定において、100℃付近にブロードな第1融点ピークを示し、かつ、110℃~130℃の間に2つのピークが連続した第2融点ピークを示す成分を含むことを特徴とする請求項2に記載の高耐性包材用積層体。
【請求項6】
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1wt%以上1.0wt%以下であり、密度が0.90g/cm以上0.92g/cm以下であり、メルトフローレートが5.5以上7.5以下であることを特徴とする請求項2または5記載の高耐性包材用積層体。
【請求項7】
前記接着層における無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンの溶融共押出しの層厚比が、25:75~75:25であることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の高耐性包材用積層体。
【請求項8】
前記直鎖状低密度ポリエチレンが、密度が0.915g/cm以上0.940g/cm以下であることを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の高耐性包材用積層体。
【請求項9】
前記低密度ポリエチレンが、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm以下であり、メルトフローレートが6.0以上8.5以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の高耐性包材用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐内容物性を有する包材を形成する積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料として、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素その他の、内容物を変質させる気体の侵入を遮断するガスバリア性を有する積層体が一般に用いられている。
【0003】
積層体では、耐性包材の用途であっても、接着層を形成する接着剤として一般的にウレタン2液硬化タイプのドライラミネート用接着剤が用いられる。しかし、包装材料により包装される内容物には、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、高沸点有機溶媒などを含有するものが多くあり、これらの内容物を包装するとドライラミネート用接着剤層に悪影響を及ぼし、積層体のラミネート強度の低下を招き、剥離が生じることがあった。
【0004】
すなわち、耐内容物性を要する包材の場合、内容物による包装体のデラミネーション(剥離)を防ぐような内容物耐性が求められるが、一般的なドライラミネーションでは、アルミニウム箔とシーラント層間のラミネート強度が経時的に低下し、その結果デラミネーション(剥離)が引き起こされるという問題があった。
【0005】
このような状況に対応するため、ラミネート加工に使用される接着剤の改良が種々行われており、アルコール耐性のあるものなどが提案されている(例えば特許文献1)。また接着剤として、幅広い種類の透明バリアフィルムやアルミニウム箔との接着性に優れ、内容物耐性に優れたものとして、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンを使った積層体が提案されている。しかし無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンは押出し加工時のネックインが大きいため、押出し加工性が悪いという問題があった。
【0006】
一方、アルミニウム箔などの金属箔は、ヘアカラー剤のような高い酸性もしくはアルカリ性の内容物によって腐食して、細かなピンホールを生じることが知られている。ピンホールを生じるとバリア性が劣化してその部分から酸素が侵入し、ヘアカラー剤に斑点状の変色が発生する。そのため、アルミニウム箔などの金属箔に化成処理を施すことが行われている。
【0007】
例えば特許文献2には、ヘアカラー剤用包装材として、アルミニウム箔とシーラントフィルムを熱可塑性樹脂の押し出しにより接着することによって、ヘアカラー剤によるデラミネーションを防止し、かつアルミニウム箔表面にリン酸クロメート処理などの化成処理を行うことによって腐食防止を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5915710号公報
【特許文献2】特許第4945871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、包材へのアタック性が強い内容物用の包材に適用できる積層体を提供することを課題とする。また、積層体に使用される、アルミニウムとの接着性に優れた無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンが、メルトフローレート(以下、MFRと略記する。)が大きく押出し加工時のネックインが大きいため、押出し加工性が悪いという問題を解決することを課題とする。また、接着強度を発現させるために高温での熱処理が必要となるため、積層体にしわが入ってしまうことがあるという問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、表層側から、基材層、金属層、接着層、熱可塑性樹脂層の順に積層され、前記金属層は少なくとも接着層側の面に表面改質層を有し、前記接着層は少なくとも酸変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含み、かつ、金属層側に酸変性ポリエチレン層が、熱可塑性樹脂層側に低密度ポリエチレン層が配置された溶融共押出し層であり、基材層、金属層、熱可塑性樹脂層とサンドイッチラミネートされていることを特徴とする高耐性包材用積層体を提供する。
【0011】
上記高耐性包材用積層体によれば、内容物に影響を受ける金属層と熱可塑性樹脂層の間の接着層として、酸変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンを使用し、金属層側に酸変性ポリエチレン層が配置される様にすることで内容物耐性が得られ、また、接着層の熱可塑性樹脂層側に低密度ポリエチレン層を配置することで、溶融共押出し時のネックインを低減することができるために加工性の高く、かつ金属層が接着層側の面に表面改質層を有することで包材へのアタックが強い内容物用の包材に適用できる高耐性包材用積層体を得ることができる。
【0012】
上記高耐性包材用積層体において、前記酸変性ポリエチレン層が、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンからなり、前記熱可塑性樹脂層が直鎖状低密度ポリエチレンからなるものとすると好ましい。内容物耐性と接着性をより高められ、より加工性の向上が図れる。
【0013】
上記高耐性包材用積層体において、前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンが、示差走査熱量測定において、90℃~100℃に第1融点ピークを示し、かつ、50℃から低温側に20℃以上連続した第2融点ピークを示す成分を含むものとすると好ましい。より低温から接着強度が発現し、熱処理時のしわの発生を抑制することができる。
【0014】
上記高耐性包材用積層体において、前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1wt%以上1.0wt%以下であり、密度が0.88g/cm以上0.90g/cm以下であり、メルトフローレートが8.5以上12.0以下であるものとすると好ましい。接着層の成膜時により平滑性の高い成膜が行える。
【0015】
上記高耐性包材用積層体において、前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンが、示差走査熱量測定において、100℃付近にブロードな第1融点ピークを示し、かつ、110℃~130℃の間に2つのピークが連続した第2融点ピークを示す成分を含むものとすると好ましい。
【0016】
前項の高耐性包材用積層体において、前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1wt%以上1.0wt%以下であり、密度が0.90g/cm以上0.92g/cm以下であり、メルトフローレートが5.5以上7.5以下であるものとすると好ましい。接着層の成膜時により平滑性の高い成膜が行える。
【0017】
上記高耐性包材用積層体において、前記接着層における無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンの溶融共押出しの層厚比が、25:75~75:25であるものとすると好ましい。ネックインを効果的に低減することができると共に高価格の無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの使用量を抑制することができる。
【0018】
上記高耐性包材用積層体において、前記直鎖状低密度ポリエチレンが、密度が0.915g/cm以上0.940g/cm以下であるものとすると好ましい。
【0019】
上記高耐性包材用積層体において、前記低密度ポリエチレンが、密度が0.910g/cm以上0.930g/cm以下であり、メルトフローレートが6.0以上8.5以
下であるものとすると好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、内容物耐性が高く、ヘアカラー剤、次亜塩素酸水や香料など包材へのアタックが強い内容物用の包材に適用できる高耐性包材用積層体が得られる。また、接着層を酸変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含むものとすることで、溶融共押出しラミネート時のネックインを低減することができ、また熱処理時のしわの発生を抑制することもでき、加工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の高耐性包材用積層体の一形態の断面模式図である。
図2】無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンのDSC測定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の高耐性包材用積層体の一形態の断面模式図である。本実施形態の積層体1は、少なくとも基材層2、接着剤層4、金属層5、酸変性ポリエチレン層6と低密度ポリエチレン層7を含む接着層9、熱可塑性樹脂層8が順次積層された構成である。そして、金属層5の接着剤層4側の面には改質処理層10が形成されている。基材層2には印刷インキ層3を設けることができる。
【0024】
基材層2を形成する樹脂としては、この種の包装材料に通常用いられるポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いれば良く、例えばポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン-2、6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等のポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0025】
基材層2の厚みは特に限定されるものではないが、通常は二軸延伸することによって得られる延伸フィルムが用いられ、9μm~50μmの範囲の厚みのものが望ましい。基材層としては上記から1種のみを使用した単層でも、2種以上を使用した多層でもよい。
【0026】
印刷インキ層3は必須ではないが、積層体やパウチに情報を表示するために必要な場合などには、特に限定するものではないが、公知のグラビアインキ等により印刷して設けることができる。
【0027】
図1では図示してないが、基材層2と金属層5は接着剤を介して積層される。接着剤として一般的に使用される接着剤であれば限定されない。例えば2液硬化型のウレタン接着剤が好適に用いられる。
【0028】
金属層5は、金属箔からなる層であり、金属箔の材料としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等が使用できるが、なかでも、汎用性、フレキシブル性の観点からアルミニウムまたはアルミニウム合金が特に望ましい。また、金属箔は、薄いほどピンホールが発生しやすいため、必要なバリア性を確保するためには厚さが5μm~50μmであることが望ましい。
【0029】
内容物を押し出して吐出させた後に起こるエアバックによる酸素流入を防ぐために包装袋にデッドホールド性を持たせる場合は、アルミニウム箔の場合、厚みを12μm以上とするとさらに好ましい。
【0030】
表面改質層10は、例えばヘアカラー剤に用いられるモノエタノールやアンモニア、洗浄剤に用いられる次亜塩素酸塩、水酸化ナトリウムなどの強アルカリ性の液体や、香料原液のエステル、テルペンなどの有機溶剤、リモネン、メントールなどの香料成分、あるいは高濃度アルコールが金属層5を構成する金属箔に内容物側から浸透してきた際に、金属層5が腐食しデラミネーションを起こすことがあるため、それを防ぐために設けられるものである。
【0031】
表面改質層10は、ジルコニウム、クロム、チタン、ハフニウムなどの金属またはその塩のいずれかを含む無機皮膜と、該無機皮膜を覆う有機高分子皮膜からなる層とすることが好ましい。無機皮膜は、例えばジルコニウム系の化成被膜処理剤(サーフコートEC1000A(日本ペイント・サーフケミカルズ製)など)や、クロム系の化成被膜処理剤(サーフコートNR-X(同前)など)を公知のコーティング法を適宜採用して金属箔上に設けることができるが、これらに限定されない。有機高分子皮膜としては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。
【0032】
熱可塑性樹脂層8を構成する樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂(EP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの金属架橋物等が挙げられる。なかでも、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。これら熱可塑性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ここで酸変性ポリエチレン層6と低密度ポリエチレン層7は溶融共押出しで積層されている。そして基材層2、印刷インキ層3、接着剤層4、金属層5と、熱可塑性樹脂層8とでサンドイッチラミネーションにより積層され、接着されている。ここで、金属層5に形成された改質処理層10と、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン層6が接するように積層される。このような構成とすることにより、金属層と接着層の接着強度が向上し、かつ内容物浸透によるアタックによるデラミネーションを抑制することで密着力が、長期保存しても維持することができる。
【0034】
無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンは酸変性ポリエチレンの一つとして本発明に好ましく用いられる。無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンは、ポリエチレンを無水マレイン酸によりグラフト変性したポリエチレンである。そして本発明に使用される無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンは、図2に示す様に、示差走査熱量測定(DSC測定)を行ったとき、90℃~100℃に第1融点ピークを示し、かつ、50℃から低温側に20℃以上連続した第2融点ピークを示す成分を含むものとすると好ましい。
【0035】
低温側に第2融点ピークを有するものとすることで、低温から接着性が発現するため、熱処理時のしわの発生を抑制することができる。
【0036】
また、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率は、0.1wt%以上1.0wt%以下であると好ましい。0.1wt%を下回るとラミネート強度の低下につながりやすく、1.0wt%を超えると水分の吸着が多くなり、発泡につながり、コスト高や黄変に原因ともなる。また、押し出し機やダイス金属に吸着しやすくなり、ヤケの原因となるなど加工性が低下する恐れがある。
【0037】
また接着層9における無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンの溶融共押出しの層厚比は、25:75~75:25であるものとすると好ましい。無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン6の比率が25:75よりも少なくなると、接着性が不安定となる恐れがある。また、低密度ポリエチレン7の比率が75:25よりも少なくなると、ネックインの改善効果が失われる恐れがある。また無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの比率が増え過ぎ、その価格が一般の押出し用樹脂に比べ4倍程度高価であるため、コスト面でも不利である。
【0038】
本発明の高耐性包材用積層フィルムは、基材層2、金属層5が積層された積層体と、熱可塑性樹脂層8の間に、接着層を、金属層側に酸変性ポリエチレン層6を、熱可塑性樹脂層側に低密度ポリエチレン層7となるようにそれぞれ配置して溶融共押出しし、基材層、金属層と前記熱可塑性樹脂層とでサンドイッチラミネートして積層することで製造することができる。前述のとおり、溶融共押出しする酸変性ポリエチレン層6と低密度ポリエチレン層7の層厚比は、25:75~75:25となる様に溶融共押出しすることが好ましい。
【実施例0039】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。各実施例および比較例の結果は表1および表2にまとめる。
【0040】
<実施例1>
(材料)
実施例1では以下の材料を用いた。
・基材:ポリエステルフィルム(厚さ12μm、FE2001、フタムラ化学(株)製)
・接着剤:脂肪族エステル系ウレタン接着剤、主剤(A525、三井化学(株)製)、硬化剤(A52、三井化学(株)製)
・金属層:アルミ基材(厚さ9μm、1N30、東洋アルミニウム(株)製)
・表面改質層:ジルコニウム化合物と有機高分子被膜材料を含むコート剤、サーフコート EC1000A/B 日本ペイント・サーフケミカルズ
・接着層
:無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(M605、三菱ケミカル(株)製、第1融点ピーク98℃、第2融点ピーク50℃、密度0.88g/cm、MFR10g/cm
:低密度ポリエチレン(LC600A、日本ポリエチレン(株)製、融点106℃、密度0.918g/cm、MFR7.0g/cm
・熱可塑性樹脂層:(直鎖状低密度ポリエチレン、MTNST、フタムラ化学(株)製、膜厚40μm)
【0041】
(積層体)
まず基材と金属層とを接着剤を介して積層し、次に金属層の基材を積層した面とは反対の面に、固形分が約10mg/mとなるように表面改質層塗液を塗布し、表面改質層を形成した。次に金属層の表面改質層が形成された面に、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンが積層される向きで接着層の無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンを、それぞれ厚さ10μmで溶融共押出しし、基材、金属層、接着層、熱可塑性樹脂層の順となるようにサンドイッチラミネートした。ラミネート後、140℃で15秒間、ヒーターロールに抱かせる様に加熱し、積層体を作製した。
【0042】
・ネックインの確認
:溶融共押出し時のTダイ幅は360mm(エアギャップ120mm)のものを使用し、押出し後の樹脂幅は303mmであった。参考として、接着層に低密度ポリエチレンを使用せずM605単層とした場合は、押出し後の樹脂幅が253mmとなり、低密度ポリエチレンを溶融共押出しすることでネックインが改善できることが確認された。
【0043】
(パウチ)
作成した上記の積層体を、端部をシールして3方パウチの形状として、下記の各内容物を充填して保存試験を行った。
・内容物1:ヘアカラー1剤
・内容物2:香料原液
・保存条件:温度50℃、湿度は制御せず。
・保存期間:直後(0日)、1ヶ月(30日)、2ヶ月(60日)、3ヶ月(90)の4条件。
【0044】
(評価)
保存後のパウチから、15mm幅で試験サンプルを切り出し、金属層と接着層の間の接着強度(JISK7127準拠)を引張速度300m/minで測定した。
・測定器:RTF-1250((株)エー・アンド・ディー製)
【0045】
<比較例1>
表面改質層を設けなかったこと以外は実施例1と同様に積層体構成とし、3方パウチを作製した。内容物及び保存条件、評価は実施例1と同様である。
【0046】
<比較例2>
表面改質層を設けず、接着層を以下の材料とし、ドライラミネートで基材、接着剤、金属層、接着層、熱可塑性樹脂層の順で積層したこと以外は実施例1と同様に積層体構成とし、3方パウチを作製した。
・接着剤:エステル系ウレタン接着剤、主剤(LX500、DICグラフィックス(株)製)、硬化剤(KW75、DICグラフィックス(株)製)
内容物及び保存条件、評価は実施例1と同様である。
【0047】
表1に評価結果を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、本発明の積層体では、アタックの強い内容物の保存後も接着強度の低下が見られず、良好な結果であった。一方比較例では接着強度が大きく低下してしまった。
【符号の説明】
【0050】
1・・・積層体
2・・・基材層
3・・・印刷インキ層
4・・・接着剤層
5・・・金属層
6・・・酸変性ポリエチレン層
7・・・低密度ポリエチレン層
8・・・熱可塑性樹脂層
9・・・接着層
10・・・表面改質層
図1
図2