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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122645
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20220816BHJP
   B01D 45/12 20060101ALI20220816BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20220816BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20220816BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20220816BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20220816BHJP
【FI】
A61L9/20
B01D45/12
F24F8/22
F24F7/007 B
F24F11/74
F24F8/80 150
F24F8/80 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020011
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】721000930
【氏名又は名称】中島 慎一
(72)【発明者】
【氏名】中島 慎一
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
4C180
4D031
【Fターム(参考)】
3L056BD04
3L260AB18
3L260BA09
3L260BA16
3L260CA02
3L260CA03
3L260CA04
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA18
3L260CA20
3L260CB54
3L260EA22
3L260FC22
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH11
4C180KK01
4C180KK03
4C180KK04
4C180LL04
4C180LL11
4D031AC04
4D031BA03
4D031BB02
4D031BB10
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】簡易な構造かつ安価に、気体に含まれる対象物を不活化するとともに、消費電力の小さい空気清浄機を提供する。
【解決手段】空気清浄機1は、対象物を含んだ気体を吸い込む吸入部2と、吸入した気体を旋回させて気体に含まれる対象物を捕集するサイクロン室3と、前記吸入部2から前記サイクロン室3へ向かう気体の流れを形成するファン4と、前記サイクロン室内の対象物を不活化させる波長を有する紫外線照射手段5と、前記サイクロン室から気体を排出する排出部6と、前記ファン4の風量を制御する風量制御手段7と、前記紫外線照射手段5の光量を制御する光量制御手段8と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を含んだ気体を吸い込む吸入部と、吸入した気体を旋回させて気体に含まれる対象物を捕集するサイクロン室と、前記吸入部から前記サイクロン室へ向かう気体の流れを形成するファンと、前記サイクロン室内の対象物を不活化させる波長を有する紫外線照射手段と、前記サイクロン室から気体を排出する排出部と、前記ファンの風量を制御する風量制御手段と、前記紫外線照射手段の光量を制御する光量制御手段と、
を備えることを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
前記光量制御手段は、前記対象物の不活化に必要な紫外線の光量および照射期間の一方または両方の紫外線照射制御を行い、その紫外線照射制御は、一定時間間隔毎に繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記光量制御手段は、前記風量制御手段の制御する風量に応じて、前記対象物の不活化に必要な紫外線の光量、照射期間、および紫外線照射制御の少なくとも一つを繰り返す時間間隔を変化させることを特徴とする請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記風量制御手段は、前記紫外線照射手段による紫外線照射期間中において、前記ファンを停止または低速回転することを特徴とする請求項2または3に記載の空気清浄機。
【請求項5】
温度センサ、湿度センサ、騒音センサ、照度センサ、人感センサ、バイオセンサの中の少なくともひとつのセンサをさらに備え、
上記センサによる検出に基づいて、前記ファンおよび前記紫外線照射手段を制御することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項6】
動作モードを指示する動作モード指示手段と、対象物の不活化を優先する第1の動作モードと、静音性を優先する第2の動作モードと、低消費電力を優先する第3の動作モードと、全自動で動作する第4の動作モードの中の少なくともふたつ以上の動作モードと、前記動作モードの中のひとつを選択する動作モード選択手段とをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記全自動で動作する第4の動作モードは、ニューラルネットワークによって制御されることを特徴とする請求項6に記載の空気清浄機。
【請求項8】
指定時間後に電源をオフにするタイマーと、指定時間後に指定した前記何れかの動作モードで電源をオンにするタイマーとの何れか、または両方を備え、
前記動作モード指示手段は、前記タイマーによって制御されることを特徴する請求項6または7に記載の空気清浄機。
【請求項9】
加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサの中の少なくともひとつのセンサを備え、
上記センサの検出に基づいて、前記風量制御手段は前記ファンを緊急停止し、前記光量制御手段は前記紫外線照射手段を緊急停止することを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項10】
前記紫外線照射手段は、前記サイクロン室の下部に、前記排出部の方向に照射するように配置することを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項11】
前記紫外線照射手段から発生する熱を放熱する放熱手段をさらに備え、
前記ファンにより、前記放熱手段の放熱を行うことを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項12】
前記吸入部と前記サイクロン室とを連結する気体の流路は、
前記サイクロン室の外壁部が前記流路の一部をなすことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項13】
前記吸入部と前記サイクロン室とを連結する気体の流路は、らせん形状であることを特徴とする請求項12に記載の空気清浄機。
【請求項14】
前記らせん形状の気体の流路の回転方向と、サイクロン室内の気体の回転方向が同一であることを特徴とする請求項13に記載の空気清浄機。
【請求項15】
前記サイクロン室の内壁は、紫外線反射材料によって構成されていることを特徴とする請求項1~14の何れか1項に記載の空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流路を流れる流体に紫外線を照射することにより殺菌する流体殺菌装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)特許文献1の流体殺菌装置は、装置の大きさに対し、流路を複雑な形状で延長することにより、流体に紫外線が照射される時間が長くなるように構成されている。また、サイクロン室内においても紫外線を照射する構成が提案されている。
特許文献2に記載された空気清浄機は、サイクロン捕集部内の旋回する空気に紫外線を照射する構成が提案されている。
特許文献3に記載されたガス浄化器は、サイクロン型形状のチャンバ内において、紫外線を用いた光触媒により汚染物質を浄化する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-175258
【特許文献2】特開2019-120436
【特許文献3】特表2014-522317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の流体殺菌装置は、流体を吸い込む吸込部と流体を排出する排出部との流路を非直線状にして距離を長く設定し、その間紫外線を照射し続けることで殺菌する構成となっている。
しかしながら、この構成では迷路のような流路を実現するために、装置が大型化し重量も重くなる問題がある。また、流路が複雑で圧力損失が大きく、ファンに大きな最大静圧が求められる問題があるとともに、紫外線ランプを多数配置することによって、消費電力が大きくなる問題もある。
いっぽう、紫外線ランプの数を減らすために、流路の壁を紫外線透過材料で構成する方式も示されているが、このような紫外線透過材料を用いると材料費や加工費が高くなる問題があり、複数枚透過した紫外線はその透過率により大きく減衰してしまい、必要な光量を得ることができない問題がある。
また、異物の集塵を目的としたサイクロン室では毒性対象物の滅菌を十分に行うことはできないとともに、サイクロン室の紫外線照射を継続的に行うことにより消費電力が大きくなる問題がある。
【0005】
上述した特許文献2の空気清浄機は、サイクロン捕集部内の旋回する空気に紫外線を照射する構成が提案されているが、この構成では空気清浄機の風量の調整によらず、紫外線照射が一定に行われるので、消費電力が大きくなる問題がある。
【0006】
上述した特許文献3のガス浄化器は、サイクロン型形状のチャンバ内において、紫外線を用いた光触媒により汚染物質を浄化する構成が提案されているが、常時紫外線に照射されるため、消費電力が大きくなる問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、簡易な構造かつ安価に、気体に含まれる対象物を不活化するとともに、消費電力の小さい空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気清浄機は、対象物を含んだ気体を吸い込む吸入部と、吸入した気体を旋回させて気体に含まれる対象物を捕集するサイクロン室と、前記吸入部から前記サイクロン室へ向かう気体の流れを形成するファンと、前記サイクロン室内の対象物を不活化させる波長を有する紫外線照射手段と、前記サイクロン室から気体を排出する排出部と、前記ファンの風量を制御する風量制御手段と、前記紫外線照射手段の光量を制御する光量制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の空気清浄機は、前記光量制御手段は、前記対象物の不活化に必要な紫外線の光量および照射期間の一方または両方の紫外線照射制御を行い、その紫外線照射制御は、一定時間間隔毎に繰り返されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の空気清浄機は、前記光量制御手段は、前記風量制御手段の制御する風量に応じて、前記対象物の不活化に必要な紫外線の光量、照射期間、および紫外線照射制御の少なくとも一つを繰り返す時間間隔を変化させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の空気清浄機は、前記風量制御手段は、前記紫外線照射手段による紫外線照射期間中において、前記ファンを停止または低速回転することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の空気清浄機は、温度センサ、湿度センサ、騒音センサ、照度センサ、人感センサ、バイオセンサの中の少なくともひとつのセンサをさらに備え、上記センサによる検出に基づいて、前記ファンおよび前記紫外線照射手段を制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の空気清浄機は、動作モードを指示する動作モード指示手段と、対象物の不活化を優先する第1の動作モードと、静音性を優先する第2の動作モードと、低消費電力を優先する第3の動作モードと、全自動で動作する第4の動作モードの中の少なくともふたつ以上の動作モードと、前記動作モードの中のひとつを選択する動作モード選択手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の空気清浄機は、前記全自動で動作する第4の動作モードは、ニューラルネットワークによって制御されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の空気清浄機は、指定時間後に電源をオフにするタイマーと、指定時間後に指定した前記何れかの動作モードで電源をオンにするタイマーとの何れか、または両方を備え、前記動作モード指示手段は、前記タイマーによって制御されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の空気清浄機は、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサの中の少なくともひとつのセンサを備え、上記センサの検出に基づいて、前記風量制御手段は前記ファンを緊急停止し、前記光量制御手段は前記紫外線照射手段を緊急停止することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の空気清浄機は、前記紫外線照射手段は、前記サイクロン室の下部に、前記排出部の方向に照射するように配置することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の空気清浄機は、前記紫外線照射手段から発生する熱を放熱する放熱手段をさらに備え、前記ファンにより、前記放熱手段の放熱を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の空気清浄機は、前記吸入部と前記サイクロン室とを連結する気体の流路は、前記サイクロン室の外壁部が前記流路の一部をなすことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の空気清浄機は、前記吸入部と前記サイクロン室とを連結する気体の流路は、らせん形状であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の空気清浄機は、前記らせん形状の気体の流路の回転方向と、サイクロン室内の気体の回転方向が同一であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の空気清浄機は、前記サイクロン室の内壁は、紫外線反射材料によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡易な構造かつ安価に、気体に含まれる対象物を不活化するとともに、消費電力の小さい空気清浄機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
図2】紫外線照射手段の状態を示すタイミングダイアグラムである。
図3】紫外線照射手段の動作例を示す表である。
図4】ファンの状態を示すタイミングダイアグラムである。
図5】本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
図6】本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
図7】ニューラルネットワークの構成例を示す概略図である。
図8】本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
図9】本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
図10】本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
図11】本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
図12】本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
図13】本発明の空気清浄機の気体の流路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第1実施形態について図を参照して説明する。図1は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
空気清浄機1は、対象物を含んだ気体を吸い込む吸入部2と、吸入した気体を旋回させて気体に含まれる対象物を捕集するサイクロン室3と、前記吸入部から前記サイクロン室へ向かう気体の流れを形成するファン4と、前記サイクロン室内の対象物を不活化させる波長を有する紫外線照射手段5と、前記サイクロン室から気体を排出する排出部6と、前記ファンの風量を制御する風量制御手段7と、前記紫外線照射手段の光量を制御する光量制御手段8とを備えている。
ここで対象物とは、ウイルスや細菌などの病原体や、それらを含んだ飛沫やエアロゾルなどの気体と共に移動するものを指す。
【0026】
風量制御手段7は、ファン4の動作、風量の調整、停止を行うものである。ファン4によって吸入部2から吸入された気体は、サイクロン室3に送られ、サイクロン室3に流入した気体は、旋回気流により対象物が捕集され、排出部6より対象物を分離した空気が排出される。光量制御手段8は、捕集された対象物に応じて、紫外線照射手段5の点灯、光量の調整、停止を行うものである。このような構成によれば、捕集された対象物に応じて、不活化に必要な紫外線照射を行うことができるので、対象物の確実な不活化と、低消費電力化を両立することができる。
【0027】
次に、図2のタイミングダイアグラムを用いて、光量制御手段8による紫外線照射手段5の制御例について説明する。
紫外線による対象物の不活化効果は、対象物表面の照度に照射時間を乗じることで得られる単位面積当たりのエネルギーで評価される。例えば、紫外線照射手段5をUV-LEDを用いて構成する場合は、ピーク波長、光出力、指向性、サイクロン室3の形状、配置するUV-LEDの個数などをパラメータとし、不活化に必要な紫外線の照射時間を設定する。
【0028】
図2において、光量制御信号は、光量制御手段8からの出力信号であり、紫外線照射手段5に入力される。紫外線照射手段5は、光量制御信号がハイレベルの期間t1において紫外線照射を行い、光量制御信号がローレベルの期間t2において、紫外線照射を停止するよう制御される。
ここで例として、不活化に必要な紫外線の照射時間をt1とし、ある一定の紫外線点灯周期t3において紫外線の照射と停止を繰り返すように制御すると、紫外線照射手段の消費電力を常時点灯している場合と比較し、t1/t3に削減することができる。
【0029】
このような制御によれば、不活化に必要な紫外線照射を定期的に行うことで、対象物の確実な不活化と、さらなる低消費電力化を両立することができる。
ここで、紫外線照射手段5を制御する方法として光量制御信号を用いた方式を示したが、その他の有線や無線通信でもよく、この制御信号に限られるものではない。
【0030】
次に、図3の表を用いて、風量制御手段7を変更した場合の紫外線照射手段5の動作について説明する。
一般的に空気清浄機は風量を調整する機能を有している。本実施形態において風量を調整する場合は、風量制御手段7によって吸入部2から吸入する気体の量を変化させる。ここで、サイクロン室3は旋回気流により対象物を捕集するが、吸入部2から取り入れる風量によってサイクロン室3の旋回気流の速度が変化する。
一般的に、サイクロンによる微粒子の分離は、気流の速度を上げると大きな遠心力が得られるので分離径が小さくなり、取り込まれる微粒子の量は大きくなる。逆に、気流の速度を下げると分離径が大きくなるため、一部の対象物が捕集できずに排出されてしまうが、風速が遅いためサイクロン室内に留まっている時間は長くなる。
【0031】
そこで、本実施形態では次のような制御を行う。
風量を多くした場合は対象物を多く捕集するので、紫外線照射手段5の光量を多くするか、照射期間を長くするか、その両方を行うことで不活化を確実に行う。
また、風量を少なくした場合は、対象物はサイクロン室内に長く留まっている一方、一部の対象物が排出部6から排出されてしまう。よって、紫外線照射手段5の照射時間を長くするか、紫外線点灯周期を短くしても良いし、もしくは常時点灯しても良い。さらに、光量を多くするのも好適である。
【0032】
このような制御によれば、空気清浄機1の風量を調整した場合においても、各風量に応じて適切な紫外線の光量、照射期間、および紫外線点灯周期において紫外線照射が行われるため、対象物の確実な不活化を行うことができる。
図3の表は、このような制御の一例として示しているが、必ずしも紫外線の強度、照射時間、および紫外線点灯周期はこの表のとおりではなくても良いし、サイクロン室の形状などに応じて、対象物の不活化に最適な紫外線照射方法は異なっても良い。
【0033】
次に、図4のタイミングダイアグラムを用いて、紫外線照射手段5による紫外線照射期間中の風量制御手段7の動作について説明する。
図4において、風量制御信号は風量制御手段7の内部信号であり、風量制御信号がハイレベルの期間t2においてファン4を動作させ、風量制御信号がローレベルの期間t1においてファン4を停止、または低速回転するように制御される。
ここで、風量制御信号は前記光量制御信号に対し論理が反転した信号となっている。すなわち、ファン動作期間t2において対象物の捕集を行い、紫外線照射期間t1において対象物の不活化が行われる。
【0034】
このような制御によれば、紫外線照射期間中はファン4の動作を停止、または低速回転するように動作するので、ここで紫外線点灯周期をt3とすると、ファン4の消費電力をおよそt2/t3に削減することができる。
また、紫外線照射手段5とファン4を足し合わせたピーク電流を削減することができるので、バッテリーによる駆動に適するとともに、バッテリーによる動作時間を長くすることができる。
ここで、内部信号としての風量制御信号は、ハイレベルにおいてファン4を動作させ、ローレベルにおいてファン4を停止、または低速回転するとしたが、制御信号はこの方式に限られるものではなく、ローレベルにおいてファン4を作動させ、ハイレベルにおいてファン4を停止、または低速回転するなどその他の制御方法をとっても構わない。
【0035】
<第2実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第2実施形態について図を参照して説明する。図5は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
第1実施形態との違いは、空気清浄機1aは、温度センサ9、湿度センサ10、騒音センサ11、照度センサ12、人感センサ13、バイオセンサ14の中の少なくともひとつのセンサをさらに備え、そのセンサ情報に基づいて、ファン4や、紫外線照射手段5を制御するように構成されている点である。
【0036】
一般的に、ウイルスや細菌などの病原体は、温度や湿度が低くなると生存性が高くなり、飛沫やエアロゾルは、湿度が低くなることで飛散しやすくなることが知られている。すなわち、温度センサ9もしくは湿度センサ10、またはその両方のセンサ情報に基づいて、紫外線照射手段5の光量や、ファン4の風量を制御することで、第1実施形態よりもさらに確実にウイルスや細菌の不活化を行うことができる。
【0037】
また、ファンは風量が多くなると騒音が大きくなり、風量が少なくなると騒音は小さくなることから、騒音センサ11のセンサ情報に基づいて、耳障りにならないよう風量制御手段7によるファン4の風量を少なくするよう制御することで、騒音の気にならない空気清浄機1aを提供することができる。
【0038】
さらに、照度センサ12、または人感センサ13、もしくはその両方のセンサが検知した場合は空気清浄機1aの動作を開始し、どちらのセンサも検知がない場合は空気清浄機1aの動作を停止する。また、長時間どちらのセンサも検知がない場合は自動メンテナンスなどを行うことにより、省エネルギーな空気清浄機1aを提供できるとともに、使い勝手が向上する。
【0039】
くわえて、バイオセンサ14によってウイルスや細菌を検知し、これらが検出された場合には空気清浄機1aの動作を開始するなど、バイオセンサの検知によって空気清浄機1aの動作開始や停止または風量や光量の制御を行うことで、さらに使い勝手の良い空気清浄機1aを提供できる。
【0040】
このような構成によれば、温度センサ9、湿度センサ10、騒音センサ11、照度センサ12、人感センサ13、バイオセンサ14の中の少なくともひとつのセンサを備え、そのセンサ情報に基づいて、紫外線照射手段5や、ファン4を制御することで、ウイルスや細菌の生存率や、飛沫やエアロゾルの飛散しやすさに応じてのより確実な不活化や、低騒音かつ自動運転可能な空気清浄機1aを提供することができる。
【0041】
<第3実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第3実施形態について図を参照して説明する。図6は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
第2実施形態との違いは、動作モードを指示する動作モード指示手段20と、対象物の不活化を優先する第1の動作モード15と、静音性を優先する第2の動作モード16と、低消費電力を優先する第3の動作モード17と、全自動で動作する第4の動作モード18の中の少なくともふたつ以上の動作モードと、前記動作モードの中のひとつを選択する動作モード選択手段19とをさらに備えるよう構成されている点である。
【0042】
第1の動作モード15は、対象物の不活化を優先するモードである。温度センサ9、湿度センサ10、騒音センサ11、照度センサ12、人感センサ13、バイオセンサ14の中の少なくともひとつのセンサ情報に基づいて、もっとも対象物の不活化に適した制御になるように 風量制御手段7および光量制御手段8へ制御情報を出力する。
例えば、具体的には、温度センサ9、湿度センサ10のセンサ情報から、もっともサイクロン室3における対象物の捕集性能が高くなるような風量制御を行い、バイオセンサ14のセンサ情報に応じて、紫外線照射光量を多くしたり、紫外線照射期間を長くするなどの制御を行う。
【0043】
第2の動作モード16は、静音性を優先するモードである。温度センサ9、湿度センサ10、騒音センサ11、照度センサ12、人感センサ13、バイオセンサ14の中の少なくともひとつのセンサ情報に基づいて、もっとも騒音が耳障りにならないように風量制御手段7および光量制御手段8へ制御情報を出力する。
例えば、具体的には、騒音センサ11、人感センサ13のセンサ情報から、人物の接近を検知しながら、接近した人物にとって耳障りにならないよう風量制御手段7によるファン4の風量を少なくし、風量に応じて不活化に必要な光量制御手段8による紫外線照射手段5の制御などを行う。
【0044】
第3の動作モード17は、低消費電力を優先するモードである。温度センサ9、湿度センサ10、騒音センサ11、照度センサ12、人感センサ13、バイオセンサ14の中の少なくともひとつのセンサ情報に基づいて、もっとも消費される電力が小さく、空気清浄機1b全体のピーク電流が小さくなるように風量制御手段7および光量制御手段8へ制御情報を出力する。
例えば、具体的には、風量制御手段7によるファン4の動作と、光量制御手段8による紫外線照射手段5の動作を時分割に行うとともに、バイオセンサ14によるウイルスや細菌の検知によって、さらにファン4の動作や紫外線照射手段5の照射を最小にするなどの制御を行う。
【0045】
第4の動作モード18は、全自動で動作するモードである。温度センサ9、湿度センサ10、騒音センサ11、照度センサ12、人感センサ13、バイオセンサ14の中の少なくともひとつのセンサ情報に基づいて、対象物の不活化、静音性および消費電力のバランスを考慮した制御になるように風量制御手段7および光量制御手段8へ制御情報を出力する。
例えば、具体的には、上記センサ情報から、対象物であるウイルスや細菌などの病原体の生存性や、それらを含んだ飛沫やエアロゾルの飛散しやすさ、人物が不快と感じる騒音、また空気清浄機全体の消費電力のバランスを考慮するなどの制御を行う。
【0046】
動作モード指示手段20は、たとえばスイッチやタッチパネルなどのユーザインタフェースにより動作モードを指示するものであるが、必ずしもこの構成に限られるものではない。
動作モード選択手段19は、動作モード指示手段20の指示により、第1の動作モード15、第2の動作モード16、第3の動作モード17、または第4の動作モード18の何れかひとつを選択して、前記動作モードから出力された制御情報を、風量制御手段7および光量制御手段8へ出力するものである。
【0047】
このような構成によれば、動作モード指示手段20に動作モードを指示することにより、対象物の不活化を優先する第1の動作モード15と、静音性を優先する第2の動作モード16と、低消費電力を優先する第3の動作モード17と、全自動で動作する第4の動作モード18の中の少なくともふたつ以上の動作モードの中から、ひとつの動作モードを選択可能な空気清浄機1bを提供することができる。
【0048】
次に図7を用いて、前記全自動で動作する第4の動作モードの制御例について説明する。図7は、ニューラルネットワークの構成例を示す概略図である。
本発明者は、サイクロンにおける微粒子の分離性能について、サイクロン室の形状や、吸入部の形状、気流出口管を含めた排出部の形状、風速、風量、ファンの構造、圧力損失、温度、湿度など、数々のパラメータを変化させながら種々の流体シミュレーション等を実施してきた。その結果、微粒子の分離性能は、これらのパラメータにより複雑なふるまいをすることがシミュレーションや実験結果として得られている。
図7は、このようなふるまいから教師データを作成し、温度センサ9、湿度センサ10、騒音センサ11、照度センサ12、人感センサ13、バイオセンサ14の情報から、対象物の不活化、静音性、低消費電力などを含む観点において最適化された風量制御手段7および光量制御手段8への制御情報を出力する学習済みのニューラルネットワークの構成例である。
【0049】
このような構成によれば、全自動で動作する前記第4の動作モード18は、さらに的確な全自動モードを実現できるとともに、使用者の好みをさらに学習することで、ニューラルネットワークをアップデートすることが可能な空気清浄機1bを提供することができる。
【0050】
<第4実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第4実施形態について図を参照して説明する。図8は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
第3実施形態との違いは、指定時間後に電源をオフにするタイマーと、指定時間後に指定した前記何れかの動作モードで電源をオンにするタイマーとの何れか、または両方の機能を有するタイマー21をさらに備えるよう構成されている点である。
【0051】
このような構成によれば、指定時間後に自動的に電源をオフにする、または指定時間後に指定した動作モードで自動的に電源をオンにする、の何れか、または両方が可能な空気清浄機1cを提供することができる。
【0052】
<第5実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第5実施形態について図を参照して説明する。図9は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
本実施形態の空気清浄機1dでは、加速度センサ22、ジャイロセンサ23、地磁気センサ24の中の少なくともひとつのセンサと、緊急停止指示手段25とをさらに備え、上記センサの検出に基づいて、前記緊急停止指示手段25は、風量制御手段7にファン4を緊急停止するように指示し、光量制御手段8に紫外線照射手段5を緊急停止するように指示するよう構成されている点である。
【0053】
一般的に、サイクロンによる微粒子の遠心分離は、粒子に作用している遠心力、壁面からの反力、重力の影響を受けることが知られている。仮に、空気清浄機1dが横転すると、サイクロン室3も横転してしまい、捕集効率が低下してしまう。
また、空気清浄機1dに強い衝撃が加わったり、人為的な破壊などが行われると、ファン4が動作中に暴露して負傷する可能性がある。さらに紫外線照射手段5が照射中に暴露すると、使用する波長によっては目の障害や皮膚のDNA損傷などによる疾病の誘発なども懸念される。
【0054】
本実施形態においては、加速度センサ22、ジャイロセンサ23、地磁気センサ24の中の少なくともひとつのセンサを備え、加速度センサ22は衝撃を検知することが可能であり、ジャイロセンサ23は姿勢の変化を検知可能であり、地磁気センサ24は方位を検知可能である。これらセンサ情報を組み合わせることで、誤差の少ない高精度な姿勢検知が可能である。
これら衝撃、方位の変化や姿勢検知に基づいて、空気清浄機1dのファン4および紫外線照射手段5を緊急停止することで、ウイルスや細菌を含んだ対象物を飛散させることもなく、ファン4や紫外線照射手段5が仮に暴露してしまうことがあっても、安全に本体を停止することで負傷、障害、病気などの発生リスクを最小限にする空気清浄機1dを提供することができる。
【0055】
<第6実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第6実施形態について図を参照して説明する。図10は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
本実施形態の空気清浄機1eでは、前記紫外線照射手段5は、前記サイクロン室3の下部に、前記排出部6の方向に照射するように配置されている点である。
ここで一例として、サイクロン室3は、主に円筒形状からなる円筒部3a、当該円筒部から連続して形成され円錐形状をなす円錐部3b、および当該円錐部に連続し前記サイクロン室3に取り込まれた対象物を集める捕集部3cを有している。本実施形態の空気清浄機1eにおいては、紫外線照射手段5は、捕集部3cに、排出部6の方向に照射するように配置されている。
【0056】
このような構成によれば、紫外線照射手段5から照射される紫外線が、サイクロン室3の全体に対して照射されるので、捕集した対象物および旋回する空気に含まれる対象物の両方に対して、効率的に不活化を行うことができる空気清浄機1eを提供することができる。
【0057】
図10において、サイクロン室3は、円筒部3a、円錐部3b、捕集部3cにより構成されているとしたが、円筒部3aがなく、円錐部3bと捕集部3cによって構成される構造や、円錐部3bがなく、円筒部3aと捕集部3cによって構成される構造や、円筒部3aのみや円錐部3bのみの捕集部3cがない構造でも構わない。また、他の実施形態についても同様である。
【0058】
<第7実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第7実施形態について図を参照して説明する。図11は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
本実施形態の空気清浄機1fでは、紫外線照射手段5に接続され、当該紫外線照射手段5から発生する熱を放熱する放熱手段26をさらに備え、前記吸入部2から前記サイクロン室3へ向かう気体の流れを形成するファン4により、前記放熱手段26の放熱を行うように構成されている点である。
【0059】
一般的に、紫外線照射手段5の一例である紫外線を照射するUV-LEDは、消費電力が大きいことが知られている。消費電力が大きいと、UV-LEDそのものが発熱し、発光効率の低下やピーク波長のシフトなどの影響があり、対象物の不活化を行う効果が低下する恐れがある。そのため、ヒートシンク等の放熱手段を用いることがあるが、効率よく放熱するためには強制空冷が必要になる。
本実施形態においては、紫外線照射手段5から発生する熱を放熱する放熱手段26の強制空冷する際に、吸入部2からサイクロン室3へ向かう気体の流れの一部を用いることでファンの数を増やす必要がない。
【0060】
このような構成によれば、紫外線照射手段5の放熱を効率的に行いながら、ファンの数を増やすことなく安価な空気清浄機1fを提供することができる。
なお、図11において、紫外線照射手段5の位置は、第6実施形態と同じ位置となっているが、第1実施形態の位置にあっても同様の効果が得られる。
【0061】
<第8実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第8実施形態について図を参照して説明する。図12は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
本実施形態の空気清浄機1gでは、吸入部2a、2bとサイクロン室3とを連結する気体の流路は、前記サイクロン室の外壁部が前記流路の一部をなすように構成されている。なお、図12において、風量制御手段7、光量制御手段8は記載を省略しているが、これらは他の実施形態と同様である。
【0062】
一般的に、サイクロンによる微粒子の遠心分離は、一定以上のサイクロン室への入口風速が必要となる。また、風量と風速には、以下の数式が成立することが分かっている。
風量Q=通過する面積S×風速V
よって、ある風量のファンを用いて、サイクロン室の入口風速を速くするには、気体の通過する面積を徐々に小さくすれば良いことが分かる。
【0063】
図12において、ファン4は吸入部2a、2bからサイクロン室3へ向かう気体の流れを形成するファンであり、この気体の流路の一部は、サイクロン室の外壁部に沿って形成される。
ここで、サイクロン室3の下部の形状は、円筒部3aに比べ細く、ファン4からサイクロン室3へ向かう気体は、サイクロン室3の入口に向けて通過する面積が小さくなることから、風速が速くなる。
【0064】
このような構成によれば、サイクロン室3の外壁部をサイクロン室3へ向かう気体の流路の一部とすることにより、風速を速くするとともに、部品点数を削減しての低価格化や小型化が実現可能な空気清浄機1gを提供することができる。
【0065】
<第9実施形態>
以下に、本発明の空気清浄機の第9実施形態について図を参照して説明する。図13は本発明の空気清浄機の一例を示す図である。
本実施形態の空気清浄機1hでは、吸入部2a、2bとサイクロン室3とを連結する気体の流路の一部は、サイクロン室3の外壁部に図示しないらせん形状の溝により、図13に示すように、吸入部2a、2bから吸入された気体は、らせん形状に上昇しながら風速が上がるように構成されている。
【0066】
このような構成によれば、吸入部2a、2bとサイクロン室3とを連結する気体の流路は、らせん形状になだらかに変化することから、圧力損失が小さくなる。よって、最大静圧の小さい、消費電力の低いファンを使用することができるので、消費電力のより小さい空気清浄機1hを提供することができる。
なお、図13において、紫外線照射手段5、放熱手段26は記載を省略しているが、これらは第8実施形態と同様である。また、サイクロン室3、排出部6の形状が異なるが、本実施形態の効果に影響はない。
【0067】
また、図13においては、吸入部2a、2bとサイクロン室3とを連結する気体の流路のらせん形状の回転方向と、サイクロン室3内の気体の回転方向を同一にしている。
【0068】
このような構成によれば、らせん形状に上昇しながら風速を上げた気体を、速度を維持したままサイクロン室3の入口からサイクロン室3内に気体を取り込むことができるので、さらに確実かつ効率的にサイクロンによる微粒子の遠心分離を行うことができる空気清浄機1hを提供することができる。
【0069】
さらに、サイクロン室3の内壁を紫外線反射材料によって構成することにより、紫外線が内壁で反射されサイクロン室3内で対象物に対してより多く照射され、ウイルスや細菌を含んだ対象物の不活化の効果がさらに高まるので好適である。
【符号の説明】
【0070】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h 空気清浄機
2,2a,2b 吸入部
3 サイクロン室
3a 円筒部
3b 円錐部
3c 捕集部
4 ファン
5 紫外線照射手段
6,6a,6b 排出部
7 風量制御手段
8 光量制御手段
9 温度センサ
10 湿度センサ
11 騒音センサ
12 照度センサ
13 人感センサ
14 バイオセンサ
15 第1の動作モード
16 第2の動作モード
17 第3の動作モード
18 第4の動作モード
19 動作モード選択手段
20 動作モード指示手段
21 タイマー
22 加速度センサ
23 ジャイロセンサ
24 地磁気センサ
25 緊急停止指示手段
26 放熱手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13