(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122718
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】流体輸送用ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/08 20060101AFI20220816BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20220816BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220816BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
F16L11/08 B
C08J5/00 CER
C08J5/00 CEZ
C08L101/00
C08L21/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020142
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
(72)【発明者】
【氏名】眞榮田 大介
【テーマコード(参考)】
3H111
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
3H111BA15
3H111BA25
3H111BA29
3H111CC03
3H111CC07
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3H111EA04
3H111EA17
4F071AA02
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4J002AA01W
4J002AC00X
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4J002CL01W
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4J002CL05W
4J002GF00
(57)【要約】
【課題】低温での耐疲労性と高温での耐衝撃圧力性に優れた流体輸送用ホースを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂およびエラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物からなる内層と、内層の外側に配置される補強層と、補強層の外側に配置される外層とを含む流体輸送用ホースであって、熱可塑性樹脂組成物の-40℃における貯蔵弾性率E′Lと、80℃における貯蔵弾性率E′Hが、式(1)、(2)および(3)
E′L ≦ 1500MPa ・・・(1)
E′H ≧ 40MPa ・・・(2)
E′H/E′L ≧ 0.05 ・・・(3)
を満たすことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂およびエラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物からなる内層と、内層の外側に配置される補強層と、補強層の外側に配置される外層とを含む流体輸送用ホースであって、熱可塑性樹脂組成物の-40℃における貯蔵弾性率E′Lと、80℃における貯蔵弾性率E′Hが、式(1)、(2)および(3)
E′L ≦ 1500MPa ・・・(1)
E′H ≧ 40MPa ・・・(2)
E′H/E′L ≧ 0.05 ・・・(3)
を満たすことを特徴とする流体輸送用ホース。
【請求項2】
熱可塑性樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含む連続相とエラストマーを含む分散相とからなり、エラストマーの少なくとも一部が架橋されていることを特徴とする請求項1に記載の流体輸送用ホース。
【請求項3】
熱可塑性樹脂組成物の21℃および相対湿度50%における酸素透過係数が0.1mm・cc/(m2・day・mmHg)以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の流体輸送用ホース。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ビニルアルコール系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
【請求項5】
エラストマーが、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ブチル系エラストマー、ジエン系ゴムおよびそれらの変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
【請求項6】
熱可塑性樹脂組成物を30℃、圧力90MPaの水素雰囲気下で24時間暴露し、大気圧まで減圧した際の体積Vと、暴露前の体積V0の比V/V0が1.08未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
【請求項7】
熱可塑性樹脂組成物を30℃、圧力90MPaの水素雰囲気下で24時間暴露した際の水素溶解量が3000質量ppm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
【請求項8】
熱可塑性樹脂組成物の温度-35℃、ひずみ18%および周波数6.7Hzでの繰り返し伸張における破断回数が200万回以上であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
【請求項9】
外層の25℃における10%モジュラスが10MPa以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
【請求項10】
補強層が引張弾性率100GPa以上の有機繊維または鋼線を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体輸送用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド11と変性オレフィン系エラストマーとを含む樹脂組成物からなる水素ガスバリア層と、前記水素ガスバリア層の外側に配設された補強層と、前記補強層の外側に配設されたポリアミド樹脂を含む外被層とを有する水素輸送部品が知られている(国際公開第2018/155491号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2018/155491号に記載された水素輸送部品は、高温での耐衝撃圧力性が充分ではない。
本発明は、低温での耐疲労性と高温での耐衝撃圧力性に優れた流体輸送用ホースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、熱可塑性樹脂を含む連続相とエラストマーを含む分散相とからなる熱可塑性樹脂組成物において、分散相のエラストマーを架橋することにより、高温での弾性率低下を抑制できることを見いだし、本発明を完成した。
本発明は、熱可塑性樹脂およびエラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物からなる内層と、内層の外側に配置される補強層と、補強層の外側に配置される外層とを含む流体輸送用ホースであって、熱可塑性樹脂組成物の-40℃における貯蔵弾性率E′Lと、80℃における貯蔵弾性率E′Hが、式(1)、(2)および(3)
E′L ≦ 1500MPa ・・・(1)
E′H ≧ 40MPa ・・・(2)
E′H/E′L ≧ 0.05 ・・・(3)
を満たすことを特徴とする。
【0006】
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]熱可塑性樹脂およびエラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物からなる内層と、内層の外側に配置される補強層と、補強層の外側に配置される外層とを含む流体輸送用ホースであって、熱可塑性樹脂組成物の-40℃における貯蔵弾性率E′Lと、80℃における貯蔵弾性率E′Hが、式(1)、(2)および(3)
E′L ≦ 1500MPa ・・・(1)
E′H ≧ 40MPa ・・・(2)
E′H/E′L ≧ 0.05 ・・・(3)
を満たすことを特徴とする流体輸送用ホース。
[2]熱可塑性樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含む連続相とエラストマーを含む分散相とからなり、エラストマーの少なくとも一部が架橋されていることを特徴とする[1]に記載の流体輸送用ホース。
[3]熱可塑性樹脂組成物の21℃および相対湿度50%における酸素透過係数が0.1mm・cc/(m2・day・mmHg)以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の流体輸送用ホース。
[4]熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ビニルアルコール系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の流体輸送用ホース。
[5]エラストマーが、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ブチル系エラストマー、ジエン系ゴムおよびそれらの変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の流体輸送用ホース。
[6]熱可塑性樹脂組成物を30℃、圧力90MPaの水素雰囲気下で24時間暴露し、大気圧まで減圧した際の体積(V)と、暴露前の体積(V0)の比V/V0が1.08未満であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の流体輸送用ホース。
[7]熱可塑性樹脂組成物を30℃、圧力90MPaの水素雰囲気下で24時間暴露した際の水素溶解量が3000質量ppm以下であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の流体輸送用ホース。
[8]熱可塑性樹脂組成物の温度-35℃、ひずみ18%および周波数6.7Hzでの繰り返し伸張における破断回数が200万回以上であることを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載の流体輸送用ホース。
[9]外層の25℃における10%モジュラスが10MPa以下であることを特徴とする[1]~[8]のいずれかに記載の流体輸送用ホース。
[10]補強層が引張弾性率100GPa以上の有機繊維または鋼線を含むことを特徴とする[1]~[9]のいずれかに記載の流体輸送用ホース。
【発明の効果】
【0007】
本発明の流体輸送用ホースは、低温での耐疲労性と高温での耐衝撃圧力性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、流体輸送用ホースに関する。輸送する流体は、限定するものではないが、水素、エアコンディショナー用冷媒、不活性ガス、燃料、油、水などが挙げられる。なかでも、本発明の流体輸送用ホースは、水素ホースに好適である。
【0009】
本発明の流体輸送用ホースは、熱可塑性樹脂およびエラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物からなる内層と、内層の外側に配置される補強層と、補強層の外側に配置される外層とを含む。
【0010】
本発明の流体輸送用ホースは、熱可塑性樹脂組成物の-40℃における貯蔵弾性率E′Lと、80℃における貯蔵弾性率E′Hが、式(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とする。
E′L ≦ 1500MPa ・・・(1)
E′H ≧ 40MPa ・・・(2)
E′H/E′L ≧ 0.05 ・・・(3)
【0011】
熱可塑性樹脂組成物の-40℃における貯蔵弾性率E′Lは、
E′L≦1500MPa ・・・(1)
を満たし、好ましくは
20MPa≦E′L≦1450MPa ・・・(1′)
を満たし、より好ましくは
50MPa≦E′L≦1400MPa ・・・(1″)
を満たす。
E′Lが上記の式を満たすことにより、熱可塑性樹脂組成物が低温での耐疲労性に優れる。
E′Lが上記の式を満たすようにする方法は、熱可塑性樹脂およびエラストマーの種類の選定、組成比の調整、可塑剤や軟化剤等の添加などが挙げられる。
【0012】
熱可塑性樹脂組成物の80℃における貯蔵弾性率E′Hは、
40MPa≦E′H ・・・(2)
を満たし、好ましくは
45MPa≦E′H≦1000MPa ・・・(2′)
を満たし、より好ましくは
50MPa≦E′H≦800MPa ・・・(2″)
を満たす。
E′Hが上記の式を満たすことにより、高温での耐衝撃圧力性に優れ、加締めで破損しない。
E′Hが上記の式を満たすようにする方法は、熱可塑性樹脂およびエラストマーの種類の選定、組成比の調整、繊維やフィラーの添加などが挙げられる。。
【0013】
80℃における貯蔵弾性率と-40℃における貯蔵弾性率の比(E′H/E′L)は、
0.05≦E′H/E′L ・・・(3)
を満たし、好ましくは
0.06≦E′H/E′L≦0.30 ・・・(3′)
を満たし、より好ましくは
0.07≦E′H/E′L≦0.25 ・・・(3″)
を満たす。
E′H/E′Lが上記の式を満たすことにより、弾性率の温度依存性が小さく、ホースの剛性が使用温度に左右されにくいため、安定した取り扱い性が得られる。
E′H/E′Lが上記の式を満たすようにする方法は、熱可塑性樹脂およびエラストマーの種類の選定、組成比の調整、添加剤の使用などが挙げられる。
【0014】
貯蔵弾性率E′は、粘弾性体に動歪を印加した際の応力-ひずみ特性から得られる複素弾性率のうち、実数部のことを指し、粘弾性の弾性項に対応する。
動的貯蔵弾性率は、JIS K7198に記載の方法に準拠して求めることができる。具体的には、試料に初期伸張を加えた上で、加振機により周期的振動である正弦波の動歪を与え、その際の応力と変位を測定することで複素弾性率を求め、その実数部の定数として求めることができる。本発明においては、初期伸張5%、周波数20Hz、動歪0.1%にて測定した。
【0015】
流体輸送用ホースの内層は、熱可塑性樹脂およびエラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物からなる。
熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、熱可塑性樹脂を含む連続相とエラストマーを含む分散相とからなる。換言すれば、熱可塑性樹脂が連続相(マトリックス)を形成し、エラストマーが分散相(ドメイン)を形成している。すなわち、熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、海島構造を有する。熱可塑性樹脂組成物が海島構造を有することにより、輸送する流体の透過を抑制しながら低温での耐疲労性を得やすい。
【0016】
熱可塑性樹脂は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、好ましくは、ポリアミド樹脂、ビニルアルコール系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0017】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド610、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド1010、ポリアミド1012などが挙げられるが、好ましくはポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1012である。
【0018】
ビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、エチレン-ブテンジオール共重合体などが挙げられるが、なかでもエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレンとビニルアルコールの共重合割合に依存して、融点および酸素透過係数が変化する。好ましいエチレンの共重合割合は25~48モル%である。なかでも、エチレンの共重合割合が48モル%のエチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレンの共重合割合が38モル%のエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0019】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられるが、好ましくはポリブチレンテレフタレートである。
【0020】
連続相は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリアミド樹脂、ビニルアルコール系樹脂およびポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂や、各種添加剤を含んでもよい。
【0021】
エラストマーは、本発明の効果を奏する限り限定されないが、好ましくは、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ブチル系エラストマー、ジエン系ゴムおよびそれらの変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
オレフィン系エラストマーとしては、エチレン-α-オレフィン共重合体、またはエチレン-不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体などが挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ペンテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体およびそれらの酸変性物などが挙げられる。エチレン-不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0023】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、およびそれらの無水マレイン酸変性品などが挙げられるが、なかでもスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0024】
ブチル系エラストマーとしては、イソブチレン-イソプレン共重合体(IIR)およびそのハロゲン化物、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)およびその変性物が挙げられ、なかでもスチレン-イソブチレン-スチレン共重合体が好ましい。
【0025】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)(乳化重合SBR、溶液重合SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エポキシ化天然ゴム、それらの水素添加物などが挙げられるが、好ましくは天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムである。
【0026】
エラストマーの少なくとも一部が架橋されていることが好ましい。エラストマーの少なくとも一部を架橋することにより、熱可塑性樹脂組成物の高温での弾性率低下を抑制することができ、熱可塑性樹脂組成物が高温での耐衝撃圧力性に優れる。エラストマーの少なくとも一部を架橋する方法は、熱可塑性樹脂とエラストマーを溶融混練する際に、エラストマーを架橋し得る架橋剤を添加する、動的架橋が挙げられる。架橋剤としては、1分子中に複数のアミノ基を有する化合物が好ましく、なかでも3,3′-ジアミノジフェニルスルホン(3,3′-DAS)、4,4′-ジアミノジフェニルスルホン(4,4′-DAS)、N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)などのジアミンが好ましい。
【0027】
分散相は、本発明の効果を阻害しない範囲で、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ブチル系エラストマー、ジエン系ゴムおよびそれらの変性物以外のエラストマーや、各種添加剤を含んでもよい。
【0028】
内層を構成する熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有率は、熱可塑性樹脂組成物中の全ポリマー成分の10~97質量%であることが好ましく、15~95質量%であることがより好ましく、20~93質量%であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有率が少なすぎると、流体の透過を抑制するのが難しく、多すぎると、低温での耐疲労性が不十分となりやすい。
【0029】
内層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のエラストマーの含有率は、熱可塑性樹脂組成物中の全ポリマー成分の3~85質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましく、7~75質量%であることがさらに好ましい。エラストマーの含有率が少なすぎると、低温での耐疲労性が不十分となりやすく、多すぎると、流体の透過を抑制するのが難しく、高温での耐衝撃圧力性もバランスし難くなる。
【0030】
内層を構成する熱可塑性樹脂組成物中の連続相と分散相の体積比率は、好ましくは95:5~25:75であり、より好ましくは92:8~28:72であり、さらに好ましくは90:10~30:70である。連続相と分散相の体積比率が上記の数値範囲にあることにより、流体の耐透過性、低温での耐疲労性、高温での耐衝撃圧力性のバランスを取りやすい。
【0031】
内層を構成する熱可塑性樹脂組成物は、21℃および相対湿度50%における酸素透過係数が、好ましくは0.1mm・cc/(m2・day・mmHg)以下であり、より好ましくは0.00001~0.08mm・cc/(m2・day・mmHg)であり、さらに好ましくは0.0001~0.06mm・cc/(m2・day・mmHg)である。酸素透過係数がこの数値範囲内にあることにより、熱可塑性樹脂組成物が水素ホースやエアコンディショナーホースなどの流体輸送用ホースの内層用材料として適用することができる。酸素透過係数をこの数値範囲内にする方法は、熱可塑性樹脂およびエラストマーの種類の選定、組成比の調整などが挙げられる。
【0032】
内層を構成する熱可塑性樹脂組成物を30℃、圧力90MPaの水素雰囲気下で24時間暴露し、大気圧まで減圧した際の体積Vと、暴露前の体積V0の比V/V0は、好ましくは1.08未満であり、より好ましくは1.00~1.07であり、さらに好ましくは1.00~1.06である。V/V0がこの範囲にあることにより、水素やヘリウムなどの分子サイズの小さな流体を高圧で輸送する場合、減圧された際の寸法変化が小さく、補強層に内層が食い込むことによる破壊起点の発生を抑制できる。
【0033】
内層を構成する熱可塑性樹脂組成物を30℃、圧力90MPaの水素雰囲気下で24時間暴露した際の水素溶解量は、好ましくは3000質量ppm以下であり、より好ましくは2800質量ppm以下であり、さらに好ましくは2600質量ppm以下である。水素溶解量がこの範囲にあることにより、水素やヘリウムなどの分子サイズの小さな流体を高圧で輸送する場合、内層中に留まる流体分子が少なく、減圧時の内層内部での膨張による破壊を抑制できる。
【0034】
内層を構成する熱可塑性樹脂組成物は、温度-35℃、ひずみ18%および周波数6.7Hzでの繰り返し伸張における破断回数が、好ましくは200万回以上であり、より好ましくは250万回以上であり、さらに好ましくは300万回以上である。破断回数がこの数値以上にあることにより、熱可塑性樹脂組成物が低温での耐疲労性に優れる。破断回数をこの数値以上にする方法は、熱可塑性樹脂およびエラストマーの種類の選定、組成比の調整、熱可塑性樹脂とエラストマーの界面を補強し得る成分の添加などが挙げられる。
【0035】
内層を構成する熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、たとえば、熱可塑性樹脂と、エラストマーと、所望により架橋剤とを、溶融混錬することにより製造することができる。
【0036】
内層の厚さは、好ましくは0.2~2.0mmであり、より好ましくは0.3~1.8mmであり、さらに好ましくは0.4~1.6mmである。内層の厚さが薄すぎると、溶融押出が困難になったり、押出手法が限定される虞があり、厚すぎると、ホースの柔軟性が不足し、取り扱い性が悪くなる虞がある。
【0037】
流体輸送用ホースは、内層の外側に配置される補強層を含む。補強層は内層と外層の間に設けられる層であり、通常、金属線材または有機繊維を編組して形成されたブレード層またはスパイラル層からなる。金属線材としては、鋼線、銅および銅合金の線、アルミニウムおよびアルミニウム合金の線、マグネシウム合金の線、チタンおよびチタン合金の線などが挙げられるが、好ましくは鋼線である。金属線材の線径は、好ましくは0.25~0.40mmである。有機繊維としては、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)繊維、アラミド繊維、炭素繊維などが挙げられるが、好ましくはPBO繊維である。有機繊維の線径は、好ましくは0.25~0.30mmである。
【0038】
補強層は、好ましくは、引張弾性率100GPa以上の有機繊維または鋼線を含む。補強層が引張弾性率100GPa以上の有機繊維または鋼線を含むことにより、高い内圧が加わってもホースの変形を小さくすることができる。有機繊維または鋼線の引張弾性率は、より好ましくは150GPa以上である。
【0039】
流体輸送用ホースは、補強層の外側に配置される外層を含む。
外層の25℃における10%モジュラスは、好ましくは10MPa以下であり、より好ましくは0.1~9MPaであり、さらに好ましくは0.2~8MPaである。10%モジュラスがこの数値範囲内にあることにより、使用時に擦れや接触しても外層が破損しにくく、かつ曲げ剛性を低くできるためホースの取り扱い性が向上する。
【0040】
外層を構成する材料としては、限定するものではないが、熱可塑性エラストマー、加硫ゴムなどが挙げられるが、好ましくは熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーとしては、限定するものではないが、好ましくはポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
【0041】
ポリエステルエラストマー(TPEE)は、ハードセグメントがポリエステル(たとえばポリブチレンテレフタレート)であり、ソフトセグメントがポリエーテル(たとえばポリテトラメチレングリコール)またはポリエステル(たとえば脂肪族ポリエステル)である熱可塑性エラストマーである。ポリエステルエラストマーは市販されており、本発明に市販品を用いることができる。ポリエステルエラストマーの市販品としては、東洋紡株式会社製「ペルプレン」(登録商標)、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)などが挙げられる。
【0042】
ポリアミドエラストマー(TPA)は、ハードセグメントがポリアミド(たとえばポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12)であり、ソフトセグメントがポリエーテル(たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)である熱可塑性エラストマーである。ポリアミドエラストマーは市販されており、本発明に市販品を用いることができる。ポリアミドエラストマーの市販品としては、宇部興産株式会社製「UBESTA」(登録商標)XPAシリーズ、アルケマ社製「PEBAX」(登録商標)などが挙げられる。
【0043】
ポリウレタンエラストマーは、ウレタン結合を有するハードセグメントと、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートなどのソフトセグメントからなるブロック共重合体である。ポリウレタンエラストマーは市販されており、本発明に市販品を用いることができる。ポリウレタンエラストマーの市販品としては、BASF社製「エラストラン」(登録商標)、日本ミラクトラン製「ミラクトラン」(登録商標)、大日精化工業製「レザミン」(登録商標)などが挙げられる。
【0044】
外層の厚さは、好ましくは0.2~1.2mmであり、より好ましくは0.3~1.0mmであり、さらに好ましくは0.4~0.8mmである。外層の厚さが薄すぎると、ホースを取り扱う際の擦れ、変形、衝撃などにより破壊されやすくなり、補強層を十分に保護できない虞があり、厚すぎると、ホース重量が大きくなり、取り扱い性が悪くなる。
【0045】
流体輸送用ホースの製造方法は、特に限定されないが、次のようにして製造することができる。まず内層(内管)を押出成形によりチューブ状に押出し、次いでそのチューブ上に補強層となる繊維を編組し、さらにその繊維上に外層(外管)を押出成形により被覆することで製造することができる。
【実施例0046】
[原材料]
以下の実施例および比較例において使用した原材料は次のとおりである。
【0047】
(内層用熱可塑性樹脂)
PA11: ポリアミド11、アルケマ社製「RILSAN」(登録商標)BESN OTL
PA12: ポリアミド12、宇部興産株式会社製「UBESTA」(登録商標)3020U
PA1010: ポリアミド1010、ダイセル・エボニック株式会社製「ベスタミド」(登録商標)DS16
PA610: ポリアミド610、東レ株式会社「アミラン」(登録商標)CM2001
PA6/12: ポリアミド6/12共重合体、宇部興産株式会社製「UBEナイロン」7024B
PA6/66: ポリアミド6/66共重合体、宇部興産株式会社製「UBEナイロン」5023B
PA6: ポリアミド6、宇部興産株式会社製「UBEナイロン」1013B
EVOH: エチレン-ビニルアルコール共重合体、三菱ケミカル株式会社製「Soarnol」(登録商標) H4815B
【0048】
(内層用エラストマー)
酸変性EBR-1: 無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体、三井化学株式会社製「タフマー」(登録商標)MH7010
酸変性EBR-2: 無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体、三井化学株式会社製「タフマー」(登録商標)MH5020
酸変性SEBS: 無水マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、旭化成株式会社製「タフテック」(登録商標)M1943
酸変性SBS: 無水マレイン酸変性スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、旭化成株式会社製「タフプレン」(登録商標)912
Br-IPMS: 臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体、エクソンモービル・ケミカル社製「EXXPRO」(登録商標)3745
【0049】
(架橋剤)
3,3′-DAS: 3,3′-ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン株式会社製
4,4′-DAS: 4,4′-ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン株式会社製
6PPD: N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、フレキシス株式会社製「サントフレックス」(登録商標)
【0050】
(外層材)
TPEE: 熱可塑性ポリエステルエラストマー、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)4057N(25℃における10%モジュラス=3.9MPa)
【0051】
(1)熱可塑性樹脂組成物の調製
シリンダー温度を220℃に設定した二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に、表1~表3に示す配合で、熱可塑性樹脂、エラストマーおよび架橋剤を導入し、滞留時間約5分で溶融混練し、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイスからストランド状に押出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0052】
(2)ホースの作製
上記(1)の手順で調製したペレット状の熱可塑性樹脂組成物を内径9mm、厚さ1mmのチューブ状に押出した。このチューブを内層とし、その外側に補強層として、PBO繊維のブレード層を3層編組し、さらにその外側に鋼線のブレード層を1層編組した。さらに、補強層の外側に熱可塑性ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)4057N)を厚さ0.7mmで押出して外層とし、ホースを作製した。
【0053】
上記(1)の手順で調製した熱可塑性樹脂組成物(内層材)について、-40℃における貯蔵弾性率(E′L)、80℃における貯蔵弾性率(E′H)、酸素透過係数、および低温(-35℃)での耐疲労性を測定し、外層材の熱可塑性ポリエステルエラストマーについて10%モジュラスを測定し、上記(2)で作製したホースについて低温(-40℃)および高温(80℃)における耐衝撃圧力性を評価した。結果を表1~表3に示す。
なお、各測定・評価項目の測定・評価方法は、次のとおりである。
【0054】
[熱可塑性樹脂組成物(内層材)の貯蔵弾性率E′の測定]
上記(1)の手順で調製したペレット状の熱可塑性樹脂組成物を550mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を組成物中で融点の最も高い材料の融点+20℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚み0.2mmのシートに成形した。
このシートを所定の大きさの短冊に切り出し、JIS K7198に記載の方法に準拠し、初期伸張5%、周波数20Hz、動歪0.1%にて動的貯蔵弾性率を測定した。
【0055】
[熱可塑性樹脂組成物(内層材)の酸素透過係数の測定]
上記[熱可塑性樹脂組成物(内層材)の貯蔵弾性率E′の測定]と同様に、熱可塑性樹脂組成物(内層材)を平均厚み0.2mmのシートに成形した。
このシートを所定の大きさに切り出し、MOCON社製OXTRAN1/50を用いて、21℃、相対湿度50%の条件で酸素透過係数を求めた。
【0056】
[内層材の水素暴露による体積変化率の測定]
(1)の手順で調製したペレット状の熱可塑性樹脂組成物を200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を組成物中で融点の最も高い材料の融点+20℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度1m/minの条件で平均厚み1.0mmのシートに成形した。このシートを直径13mmの円盤状に切り出し、耐圧容器に入れ、30℃、90MPaで24時間、水素暴露を行った。大気圧まで減圧した直後に、キーエンス2次元多点寸法測定器TM-3000にて円盤状サンプルの面積を測定し、体積変化率を算出した。水素の脱離とともに体積は小さくなっていくが、その過程でもっとも大きい体積(最大値)を、同様に測定した暴露前の体積で割った値を体積変化率とした。体積変化率が1.08以上では、ホースとして水素を繰返し輸送すると、体積変化により補強層に内層が食い込み、耐久性が低下する。
【0057】
[内層材の水素暴露による水素溶解量の測定]
上記[内層材の水素暴露による体積変化の測定]と同様に、30℃、90MPaで24時間水素暴露し、大気圧まで減圧した直後に、30℃で窒素を充満した管内に円盤を静置し、管の端部から一定時間ごとに管内の気体をガスクロマトグラフィーへ導入し、試料内部から脱離していく水素を検出し、水素が検出されなくなるまで測定を継続し、検出された水素量を積算することで、暴露により試料へ溶解していた水素量を求めた。
【0058】
[熱可塑性樹脂組成物(内層材)の低温での耐疲労性の測定]
上記[熱可塑性樹脂組成物(内層材)の貯蔵弾性率E′の測定]と同様に、平均厚み0.2mmのシートに成形し、そのシートから、幅5mm、長さ200mmの短冊を20本切り出し、株式会社上島製作所製の定歪定荷重疲労試験機により、温度-35℃、ひずみ18%、速度6.7Hzの条件で繰返し伸張変形を与えた。20本のうち12本(60%)が破断した回数を破断回数と定義し、破断回数が高いほど、低温での繰返し変形に対して有利で好ましく、破断回数が200万回未満のものは「不可」、200万回以上500万回未満のものは「良」、500万回以上のものは「優」と判定した。
【0059】
[外層材の10%モジュラスの測定]
外層材の熱可塑性ポリエステルエラストマーを550mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を230℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚み0.2mmのシートに成形した。このシートをJIS 3号ダンベル形状に打抜き、JIS K6301「加硫ゴム物理試験方法」に準じて、25℃および引張速度500mm/minで引張試験を行った。得られた応力ひずみ曲線から10%伸張時における応力(10%モジュラス)を求めた。
【0060】
[ホースの耐衝撃圧力性の評価]
JIS K6330-8「ゴム及び樹脂ホース試験方法-第8部:衝撃圧力試験」に準じて、U字に固定したホース内に流体を循環させ、周波数1Hz、昇圧速度50MPa/sで90MPaの衝撃波形の圧力を10万回またはホースが破損するまで印加し、終了後に内層の破損がないものについては〇、内層に破損が見られたものは×とした。
低温(-40℃)における耐衝撃圧力性の試験は、流体として-40℃に冷却した窒素ガスを用いて実施した。
高温(80℃)における耐衝撃圧力性の試験は、流体として80℃の油を用いて実施した。
【0061】
【0062】
【0063】
本発明の流体輸送用ホースは、水素ステーションに設置されたディスペンサーから燃料電池自動車等に水素ガスを充填するホースや自動車のエアコンディショナーの冷媒輸送用ホースなどの流体輸送用ホースとして好適に利用することができる。
熱可塑性樹脂およびエラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物からなる内層と、内層の外側に配置される補強層と、補強層の外側に配置される外層とを含む流体輸送用ホースであって、エラストマーの少なくとも一部が架橋されており、熱可塑性樹脂組成物の-40℃における貯蔵弾性率E′Lと、80℃における貯蔵弾性率E′Hが、式(1)、(2)および(3)
E′L ≦ 1500MPa ・・・(1)
E′H ≧ 40MPa ・・・(2)
E′H/E′L ≧ 0.05 ・・・(3)
を満たすことを特徴とする流体輸送用ホース。
熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ビニルアルコール系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
エラストマーが、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ブチル系エラストマー、ジエン系ゴムおよびそれらの変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
熱可塑性樹脂組成物を30℃、圧力90MPaの水素雰囲気下で24時間暴露した際の水素溶解量が3000質量ppm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。
熱可塑性樹脂組成物の温度-35℃、ひずみ18%および周波数6.7Hzでの繰り返し伸張における破断回数が200万回以上であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の流体輸送用ホース。