(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012274
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】運動発生装置
(51)【国際特許分類】
H02K 53/00 20060101AFI20220107BHJP
H02K 27/14 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H02K53/00
H02K27/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113989
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】514136381
【氏名又は名称】株式会社ボールスクリュージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 健治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マグネットの吸引・反発を利用して、往復運動を確立することによる運動発生装置を提供する。
【解決手段】往復運動発生部2と回転運動発生部3とを備える運動発生装置1。往復運動発生部は、可動マグネット装着孔に可動マグネットが装着され、前後方向に移動可能なマグネットローター10Aと、固定マグネット装着孔に固定マグネットが装着され、マグネットローターの前後に移動不能に配置されるマグネットベース12Aと、マグネットローターと一体的に移動し、可動および固定マグネットによる吸引・反発により前後方向へ往復直線運動可能なスピンドル20と、スピンドルと一体的に前後方向に移動可能で、かつスピンドルを所定角度回動させるためにスピンドルに対して左右方向に移動可能に連結されるラック22とを備える。ラックの左右方向の移動は、ラックの両端方向に設置されているカム24Aによって制御される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動発生部と回転運動発生部とを備える運動発生装置であって、前記往復運動発生部は、可動マグネット装着孔に可動マグネットが装着され、前後方向に移動可能なマグネットローターと、固定マグネット装着孔に固定マグネットが装着され、前記マグネットローターの前後に移動不能に配置されるマグネットベースと、前記マグネットローターと一体的に移動し、前記可動および固定マグネットによる吸引・反発により前後方向へ往復直線運動可能なスピンドルと、前記スピンドルと一体的に前後方向に移動可能で、かつ前記スピンドルを所定角度回動させるために前記スピンドルに対して左右方向に移動可能に連結されるラックとを備えており、前記ラックの左右方向の移動は、前記ラックの両端方向に設置されているカムによって制御されることを特徴とする往復運動発生部。
【請求項2】
請求項1に記載の往復運動発生部の前記スピンドルの往復直線運動を回転運動に変換する運動発生装置の回転運動発生部であって、前記回転運動発生部は、複数のメイン駆動ギアおよびこれと一体回転するメインシャフトと、複数のサブ駆動ギアおよびこれと一体回転するサブシャフトと、前記メインシャフトと一体回転するウエイトローターとを備えており、前記スピンドルの前進運動により、前記メイン駆動ギアは、前記メインシャフトを介して前記ウエイトローターを回転させ、同時に、前記サブ駆動ギアは空転し、かつ前記スピンドルの後退運動により、前記メイン駆動ギアは空転し、同時に、前記サブ駆動ギアは、前記サブシャフトと、前記サブ駆動ギアおよび前記メイン駆動ギアの間に設けられている中間ギアとを介して前記メイン駆動ギアに回転力を伝達することにより、前記ウエイトローターを回転させ、これにより、前記ウエイトローターが常に一定の方向に回転することを特徴とする回転運動発生部。
【請求項3】
前記ラックの両端方向に設置されている2個の前記カムの形状は、前記カムの先端部が台形をなすほぼ同一形状であって、前記先端部の位置は、前記カムが前記ラックの両端方向にほぼ平行に設置されている状態で逆になっていることを特徴とする請求項1に記載の往復運動発生部。
【請求項4】
前記カムの前記先端部の台形の高さ(H)は、前記マグネットローターを前記マグネットローターに装着されている前記マグネットの設置角度(φ)分だけ回動させるために必要な前記ラックの左右方向の移動距離にほぼ等しくなることを特徴とする請求項3に記載の往復運動発生部。
【請求項5】
前記マグネットローターの前記可動マグネット装着孔に装着されている前記可動マグネットのN極およびS極の配置と前記マグネットベースの前記固定マグネット装着孔に装着されている前記固定マグネットのN極およびS極の配置との関係は、前記マグネットローターが回動していない0°の位置において、前記マグネットローターとその前に位置する前記マグネットベースとは、互いに吸引し合う配置であり、前記マグネットローターとその後方に位置する前記マグネットベースとは、互いに反発し合う配置であることを特徴とする請求項1に記載の往復運動発生部。
【請求項6】
前記マグネットローターの前後面の前記可動マグネット装着孔に、前記可動マグネットがそれぞれ2個以上装着されていることを特徴とする請求項1に記載の往復運動発生部。
【請求項7】
前記マグネットベースの前後面の前記固定マグネット装着孔に、前記固定マグネットがそれぞれ2個以上装着されていることを特徴とする請求項1に記載の往復運動発生部。
【請求項8】
前記メイン駆動ギアおよび前記サブ駆動ギアには、ワンウエイクラッチが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の回転運動発生部。
【請求項9】
前記往復運動発生部および/または前記回転運動発生部の各構成部分にアルミニウム合金を使用していることを特徴とする請求項1に記載の往復運動発生部および/または請求項2に記載の回転運動発生部。
【請求項10】
前記往復運動発生部および/または前記回転運動発生部は、アルミニウム合金製のハウジング内に収められていることを特徴とする請求項1に記載の往復運動発生部および/または請求項2に記載の回転運動発生部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動発生装置に関し、より詳細には、マグネットの吸引・反発を利用することにより、往復運動を確立させる往復運動発生部、および、この往復運動を回転運動に変換することにより、常に一定方向の回転運動を発生させる回転運動発生部を備える運動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、永久磁石回転機構およびこの永久磁石回転機構を備えた永久磁石発電装置に関し、発電用などの永久磁石回転機構において、回転出力の安定化とともに、製作・調整の容易化を図るため、中央磁石筒5aと、その周りに配設された複数の外側磁石筒7a~9aとが磁気的結合により連動回転し、中央磁石筒5aの回転力で発電機を駆動する永久磁石回転機構において、中央磁石筒5aはN極またはS極の同一磁極に設定された第1の外周面を備え、外側磁石筒7a~9aはそれぞれ第1の外周面と同じ磁極の同一磁極に設定された第2の外周面を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の永久磁石回転機構は、N極またはS極の配置を工夫しているが、回転による永久磁石の相互作用によって脈動(コギング)が発生しやすくなることは明らかであり、脈動による角速度の変化は、軸受や伝動ベルト等でエネルギーの損失となってしまう。
【0005】
そこで、本発明では、マグネットを回転させることなく、マグネットの吸引・反発を利用することにより、まず、往復運動を確立させる往復運動発生部と、つぎに、この往復運動を利用して回転運動を確立させる回転運動発生部とを備える運動発生装置により上記問題点を解消することを目的とする。さらに、往復運動を確立することができるため、回転運動を利用するだけでなく、往復運動を利用する分野、装置に適用可能とすることで、マグネットの活用領域を広げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 上記課題を解決するために、往復運動発生部と回転運動発生部とを備える運動発生装置であって、前記往復運動発生部は、可動マグネット装着孔に可動マグネットが装着され、前後方向に移動可能なマグネットローターと、固定マグネット装着孔に固定マグネットが装着され、前記マグネットローターの前後に移動不能に配置されるマグネットベースと、前記マグネットローターと一体的に移動し、前記可動および固定マグネットによる吸引・反発により前後方向へ往復直線運動可能なスピンドルと、前記スピンドルと一体的に前後方向に移動可能で、かつ前記スピンドルを所定角度回動させるために前記スピンドルに対して左右方向に移動可能に連結されるラックとを備えており、前記ラックの左右方向の移動は、前記ラックの両端方向に設置されているカムによって制御され、
前記回転運動発生部は、前記往復運動発生部の前記スピンドルの往復直線運動を回転運動に変換することを特徴としている。
【0007】
このような構成の往復運動発生部は、マグネットローターがその前方に設けられ、移動不能に配置されているマグネットベースと吸引し合うことによる前進と、マグネットローターがマグネットベースに近接するとマグネットローターがマグネットベースと反発し合うことによる後退とを繰り返すことにより、往復直線運動を発生する。このような、マグネットローターとマグネットベースとの間の吸引・反発は、ラックの左右方向の移動がスピンドルを介してマグネットローターの回動に変換されることにより生じ、吸引から反発、および、反発から吸引のタイミングは、ラックの両端方向に設置されているカムによって制御されている。
【0008】
上記の往復運動発生部の各構成要素の作動については、以下の「発明を実施するための形態」において、詳細に説明する。なお、マグネットローターおよびマグネットベースに装着されているマグネットは、本実施形態では、ネオジム系永久磁石を用いている。
【0009】
(2) 上記(1)項に記載の運動発生装置において、前記回転運動発生部は、複数のメイン駆動ギアおよびこれと一体回転するメインシャフトと、複数のサブ駆動ギアおよびこれと一体回転するサブシャフトと、前記メインシャフトと一体回転するウエイトローターとを備えており、前記スピンドルの前進運動により、前記メイン駆動ギアは、前記メインシャフトを介して前記ウエイトローターを回転させ、同時に、前記サブ駆動ギアは空転し、かつ前記スピンドルの後退運動により、前記メイン駆動ギアは空転し、同時に、前記サブ駆動ギアは、前記サブシャフトと、前記サブ駆動ギアおよび前記メイン駆動ギアの間に設けられている中間ギアとを介して前記メイン駆動ギアに回転力を伝達することにより、前記ウエイトローターを回転させ、これにより、前記ウエイトローターが常に一定の方向に回転することを特徴としている。
【0010】
このような構成の回転運動発生部は、特許文献1のようなマグネットの回転機構を用いることなく、マグネットの吸引・反発を利用することによる往復直線運動を利用するため、前述のような脈動(コギング)の発生による軸受や伝動ベルト等におけるエネルギー損失の問題を解消することができる。なお、スピンドルの前進運動のときはサブ駆動ギアを空転させ、スピンドルの後退運動のときはメイン駆動ギアを空転させるのは、ウエイトローターを常に一定の方向に回転させるためであり、この機構としては、従来から種々の方法が知られている。ここでは、メイン駆動ギアとメインシャフトとの間、サブ駆動ギアとサブシャフトとの間に、ワンウエイクラッチを設けることによって実現している。
【0011】
上記(1)項において、往復運動発生部が往復直線運動を発生することができるため、往復直線運動が必要な用途に対しては、(1)項の往復運動発生部だけを準備すればよく、回転運動が必要な用途に対しては、上記(2)項の回転運動発生部まで準備することで、マグネットの吸引・反発効果を広範囲に活用することができる。
【0012】
(3) 上記(1)項において、前記ラックの両端方向に設置されている2個の前記カムの形状は、前記カムの先端部が台形をなすほぼ同一形状であって、前記先端部の位置は、前記カムが前記ラックの両端方向にほぼ平行に設置されている状態で逆になっていることを特徴としている。
【0013】
前述のように、マグネットローターおよびマグネットベースが互いに吸引したり、互いに反発したりするのは、双方に装着されているマグネットのN極およびS極の配置によるが、本装置ではマグネットローターに装着されているマグネットのN極およびS極の配置を、ラックの左右方向の移動がスピンドルを介してマグネットローターの回動に変換されることにより調整している。ここで、ラックの左右方向の移動距離は、カムの先端部の台形の高さにより、また、ラックの左右方向の移動をいつのタイミングにより行うかは、カムの長さ方向における台形を設ける位置により調節することができる。マグネットローターがマグネットベースに対し前進、後退する際のN極およびS極の配置については、以下の「発明を実施するための形態」において、
図8を用いて説明している。
【0014】
(4) 上記(3)項において、前記カムの前記先端部の台形の高さ(H)は、前記マグネットローターを前記マグネットローターに装着されている前記マグネットの設置角度(φ)分だけ回動させるために必要な前記ラックの左右方向の移動距離にほぼ等しくなることを特徴としている。
【0015】
マグネットローターおよびマグネットベースを互いに「吸引または反発」から「反発または吸引」へ変化させるためには、マグネットローターの可動マグネット装着孔に装着されている複数の各可動マグネット同士の設置角度(φ)分だけマグネットローターを回動させることにより、マグネットベースに対するマグネットローターのN極またはS極の配置を変えることで行うことができる。
【0016】
(5) 上記(1)項において、前記マグネットローターの可動マグネット装着孔に装着されている前記可動マグネットのN極およびS極の配置と前記マグネットベースの前記固定マグネット装着孔に装着されている固定マグネットのN極およびS極の配置との関係は、前記マグネットローターが回動していない0°の位置において、前記マグネットローターとその前に位置する前記マグネットベースとは、互いに吸引し合う配置であり、前記マグネットローターとその後方に位置する前記マグネットベースとは、互いに反発し合う配置であることを特徴としている。
【0017】
各マグネットの吸引・反発を効果的に利用するため、0°の位置(
図2および
図7参照)において、マグネットローターとその前方に位置するマグネットベースとの間では、互いに吸引し合い、マグネットローターとその後方に位置するマグネットベースとの間では、互いに反発し合う配置であることが、マグネットローターの往復運動を安定させるために効果的である。
【0018】
(6) 上記(1)項において、前記マグネットローターの前後面の前記可動マグネット装着孔に、前記可動マグネットがそれぞれ2個以上装着されていることを特徴としている。
【0019】
往復直線運動または回転運動を利用する対象が、大きい負荷を必要とする場合は、安定した往復直線運動または回転運動を維持するために、可動マグネット装着孔に可動マグネットをそれぞれ2個以上装着することが適当である。2個以上装着する方法としては、マグネットを1個ずつ装着しているローターを2枚以上貼り合わせて1枚のマグネットローターとすることができる。
【0020】
(7) 上記(1)項において、前記マグネットベースの前後面の前記固定マグネット装着孔に、前記固定マグネットがそれぞれ2個以上装着されていることを特徴としている。
【0021】
往復直線運動または回転運動を利用する対象が、大きい負荷を必要とする場合は、安定した往復直線運動または回転運動を維持するために、固定マグネット装着孔に固定マグネットをそれぞれ2個以上装着してもよい。この場合は、マグネットベースがマグネットローターを吸引または反発する力が強くなり、その結果として、マグネットローターの往復直線運動が安定する。なお、マグネットローターおよびマグネットベースのマグネット装着孔の両方にマグネットを2個以上装着してもよい。
【0022】
(8) 上記(2)項において、前記メイン駆動ギアおよび前記サブ駆動ギアには、ワンウエイクラッチが設けられていることを特徴としている。
【0023】
前述のように、スピンドルの前進・後退運動のどちらかにおいて、メイン駆動ギアまたはサブ駆動ギアを空転させるためにワンウエイクラッチを設けることによって、ウエイトローターを常に一定の方向に回転させることができる。
【0024】
(9) 上記(1)および/または(2)項において、前記往復運動発生部および/または前記回転運動発生部の各構成部分にアルミニウム合金を使用していることを特徴としている。
【0025】
運動発生装置全体の軽量化を図るため各構成部分にアルミニウム合金、例えば、軽量かつ高強度である7000系合金を使用することができる。
【0026】
(10) 上記(1)および/または(2)項において、前記往復運動発生部および/または前記回転運動発生部は、アルミニウム合金製のハウジング内に収められていることを特徴としている。
【0027】
マグネットローターおよびマグネットベースには、多数のマグネットを装着しており、さらにマグネットにはネオジム系永久磁石を使用しているため、装置の周りに強い磁力線が存在しており、周囲の計器類に影響を与える。マグネットローターおよびマグネットベースをハウジング内に収めることで、この影響を遮断するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】
図1に示す運動発生装置をX方向から見た斜視図である(ハウジングは省略)。
【
図3】(a)は、ラック設置側から見た第1マグネットローターの可動マグネットの配置図である。(b)は、(a)のA-A線断面図である。
【
図4】(a)は、ラック設置側から見た第1マグネットベースの固定マグネットの配置図である。(b)は、(a)のA-A線断面図である。
【
図5】
図1のラック、カムおよび反転ブロックを模式的に示した詳細図である。
【
図6】
図2の中心基準線Zにおけるマグネットローターおよびマグネットベースの縦断面に配置されているマグネットのN極とS極とを示す図である。
【
図7】
図2の0°および左右22.5°の位置に配置されているマグネットのN極とS極とを示す図である。
【
図8】
図7において、マグネットローターがストッパーで拘束されている状態(a)から拘束が解除され、ステップ1からステップ4まで状態(b)、(c)、(d)を経由して1往復する各状態におけるマグネットローターおよびマグネットベースのマグネットのN極とS極とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同様の部分には、同一符号を付している。なお、本発明の運動発生装置は、この実施形態に説明されたもののみに限定されるものではない。
【0030】
図1は、本発明の運動発生装置1の平面図で、
図2は、
図1に示す運動発生装置1をX方向から見た斜視図である。なお、ハウジングは省略している。この運動発生装置1は、往復運動発生部2と回転運動発生部3とから構成され、往復運動発生部2は、第1および第2マグネットローター10A、10B、第1、第2および第3マグネットベース12A、12B、12C、複数の可動マグネット14aおよび固定マグネット14b(
図3、4参照)、スピンドル20、ラック22、および第1および第2カム24A、24Bを備えており、回転運動発生部3は、メインおよびサブシャフト30A、30B、メイン駆動ギア32A、32B、32C、サブ駆動ギア34A、34B、34C、中間ギア36A、36B、およびメインおよびサブウエイトローター38A、38Bを備えている。さらに、往復運動発生部2および回転運動発生部3は、メインおよびサブウエイトローター38A、38Bを除きハウジング40に納められている。
【0031】
図2において、マグネットローター10A、10Bの可動マグネット装着孔16A(
図3参照)およびマグネットベース12A、12B、12Cの固定マグネット装着孔16Bには、複数の可動マグネット14a(
図3参照)および固定マグネット14bがそれぞれ装着されている。マグネットベース12A、12B、12Cは、ハウジング40に固定されている。第1および第2マグネットローター10A、10B、スピンドル20、およびラック22は、一体化されており、マグネットローター10A、10Bおよびマグネットベース12A、12B、12Cのマグネット装着孔16A、16Bに装着されているマグネット14a、14bの吸引力・反発力により、前後方向に一定の距離、一定の周期で、一体として往復運動を行うことができる。また、ラック22の左右方向への往復運動を回転運動に変換することにより、第1および第2マグネットローター10A、10Bとスピンドル20とは、前後方向の往復運動と共に、左右方向に所定の角度で回動することができる。
【0032】
図2から分かるように、スピンドル20の先端の外周には歯が形成されており、これがメイン駆動ギア32Aおよびサブ駆動ギア34Aとかみ合うことにより、スピンドル20の前後方向の往復運動を回転運動に変換する。ここで、メイン駆動ギア32A、32B、32Cとメインシャフト30Aとの間には、ワンウエイクラッチ46が設置され、サブ駆動ギア34A、34B、34Cとサブシャフト30Bとの間にも、ワンウエイクラッチ46が設置されている。これにより、スピンドル20が前進する時は、メイン駆動ギア32Aに回転力が伝達され、サブ駆動ギア34Aは空転するだけとなり、スピンドル20が後退する時は、メイン駆動ギア32Aは空転するだけとなり、サブ駆動ギア34Aに回転力が伝達される。
【0033】
スピンドル20の前後方向の往復運動が、メインウエイトローター38Aの一定方向の回転に変換される工程について説明する。スピンドル20が前進すると、メイン駆動ギア32Aに回転力が伝達され、
図2において左側から回転運動発生部3を見ると、メイン駆動ギア32Aは、反時計回りに回転する。この回転力は、メインシャフト30Aを介してメインウエイトローター38Aに伝達され、メインウエイトローター38Aは、反時計回りに回転する。スピンドル20が後退すると、サブ駆動ギア34Aに回転力が伝達され、サブ駆動ギア34Aは、反時計回りに回転する。この回転力は、サブシャフト30Bおよびサブ駆動ギア34Bを介して中間ギア36Aに伝達され、中間ギア36Aは、時計回りに回転する。次に、中間ギア36Aは、メイン駆動ギア32Bとかみ合い、メイン駆動ギア32Bに反時計回りに回転力を伝達するため、メインシャフト30Aを介してメインウエイトローター38Aは、反時計回りに回転する。これにより、スピンドル20の前後方向の往復運動が、メインウエイトローター38Aの反時計回りの一定方向の回転に変換される。
【0034】
図3において、(a)は、ラック22設置側から見た第1マグネットローター10Aの可動マグネット装着孔16Aに装着されている可動マグネット14aの配置図である。本実施形態では、可動マグネット14aは、円盤状の第1マグネットローター10Aの中心から放射状に16列設けられている。この場合、中心から上向きの垂直線を0°とすると、左右の可動マグネット14aの列は、それぞれ22.5°離れている配置となる。また、可動マグネット14aは、列毎に3箇所設けられており、計48個のネオジム系永久磁石が装着されている。装着されている可動マグネット14aのN極、S極の向きは、0°の位置では外側からN極、N極、N極、22.5°離れた隣の列では、外側からS極、S極、S極と、22.5°毎にN極、S極の向きが逆になるように装着されている。
【0035】
図3において、(b)は、(a)のA-A線断面図における可動マグネット14aの配置を示している。可動マグネット14aは、可動マグネット装着孔の1箇所当り前後方向に2個装着されている。本実施形態では、1枚の円盤状のマグネットローターに48個の可動マグネット14aを装着したものを2枚重ね、これらを植込みボルトで第1マグネットローター10Aとして組み立てている。この可動マグネット14aの配置は一例であり、本発明に係る往復運動または回転運動を利用する対象により適宜選択することができる。例えば、マグネットローターを2枚重ねる代わりに、マグネットローターの径を大きくしてもよいし、マグネットローターの中心から放射状に設ける列数を増加させてもよい。なお、(a)、(b)に示すように、第1マグネットローター10Aは、メカロック48を用いてスピンドル20と一体化している。マグネットローター10A、10Bの材質は、軽量かつ高強度である7000系アルミニウム合金を使用している。
【0036】
図4において、(a)は、ラック22設置側から見た第1マグネットベース12Aの固定マグネット装着孔16Bに装着されている固定マグネット14bの配置図である。本実施形態では、
図3の(a)に示す第1マグネットローター10Aと同様に、固定マグネット14bは、正方形の第1マグネットベース12Aの中心から放射状に16列設けられている。すなわち、計48個のネオジム系永久磁石が装着されている。装着されている固定マグネット14bのN極、S極の向きは、
図3の(a)に示す第1マグネットローター10Aと反対となっている。すなわち、0°の位置では外側からS極、S極、S極、22.5°離れた隣の列では、外側からN極、N極、N極と、22.5°毎にN極、S極の向きが逆になるように装着されている。
【0037】
図4において、(b)は、(a)のA-A線断面図における固定マグネット14bの配置を示している。第1マグネットローター10Aと異なり、固定マグネット14bは、固定マグネット装着孔1箇所当り1個装着されている。もちろん、この構成は、本発明に係る往復運動を利用する対象により適宜選択することができ、例えば、
図6に示すように、第2マグネットベース12Bでは、マグネットベースを2枚重ねる構成を採用している。ここでは、固定マグネット装着孔1箇所当り固定マグネット14bが2個装着されている。なお、マグネットベース12A、12B、12Cの材質は、マグネットローターと同様に、軽量かつ高強度である7000系アルミニウム合金を使用している。
【0038】
図5は、ラック22、第1カム24A、第2カム24Bおよび反転ブロック29の詳細を示している。ラック22は、マグネットローター10A、10Bおよびスピンドル20を回動させるために設けられており、第1カム24A、第2カム24Bは、ラック22の左右方向の移動を制御するために設けられており、反転ブロック29は、スピンドル20とラック22とを一体化するために設けられている。なお、スピンドル20が左右方向に回動できるように、スピンドル20と反転ブロック29とに間には、軸受49が設けられている。
【0039】
ラック22は、円柱状のバーであり、中央部には、スピンドル20とかみ合うための歯が形成されており、その両端には、カム24Aまたは24Bに沿って転動するための反転ゴマ26A、26Bが設置されている。ラック22は、反転ブロック29により軸受28A、28Bを介して支えられており、ラック22に形成されている歯とスピンドル20に形成されている歯とが、かみ合うように調整されている。ラック22の歯とスピンドル20の歯がかみ合うことにより、ラック22の左右方向の移動がスピンドル20の左右方向の回動に変換される。なお、ラック22の材質は、機械構造用炭素鋼または7000系アルミニウム合金が使用される。
【0040】
カム24A、24Bは、平面カムであり、ラック22を左右方向に移動させるために、カムの先端部が台形となっている。
図5に示すように、先端部の台形が反対の位置になるようにカム24A、24Bは、設置されている。ラック22は、スピンドル20と一体で前後方向に移動する。この際に、例えば、ラック22の先端に設置されている反転ゴマ26Aは、第1カム24Aに沿って前進し、カムの先端部の台形に達すると台形に沿って進み、その高さHだけラック22を右側に移動させる。反転ゴマ26Aが台形の上底に達すると、反対側の反転ゴマ26Bが第2カム24Bに接するようになる。このタイミングで、ラック22は、後方に移動を開始し、反転ゴマ26Bは、第2カム24Bに沿って後退し、カムの先端の台形に達すると台形に沿って後退し、その高さHだけラック22を左側に移動させる。反転ゴマ26Bが台形の上底に達すると、反対側の反転ゴマ26Aが第1カム24Aに接するようになる。
【0041】
このように、ラック22は、第1カム24Aの台形によって右側にHだけ移動し、次に、第2カム24Bの台形によって左側にHだけ移動するので、1回のサイクルでHの振幅で左右に移動する。ラック22は、スピンドル20とかみ合って、Hに相当するだけスピンドル20を左右に回動させる。このHの高さは、スピンドル20、ひいてはマグネットローター10A、10Bが
図2、
図3、
図4に示すマグネットの設置角度φにほぼ等しい角度だけ、左右に回動するように設定されている。設置角度φの具体的数値は、本実施形態では、
図2等に示すように22.5°であり、これは、マグネットローター10A、10Bが前進すると、それに伴って右側に22.5°回転し、後退すると、それに伴って左側に22.5°回転する。すなわち22.5°の振幅で左右に回動する。この回動により、マグネットローター10A、10Bは、前進するときは、前方のマグネットベースと吸引し合い、後方のマグネットベースと反発し合うようなN極、S極の組み合わせを取ることができ、後退するときは、後方のマグネットベースと吸引し合い、前方のマグネットベースと反発し合うようなN極、S極の組み合わせを取ることができる。なお、カム24A、24Bの材質は、ステンレス鋼、例えばSUS304が使用される。
【0042】
図6は、
図2の中心基準線Zにおけるマグネットローター10A、10Bおよびマグネットベース12A、12B、12Cの縦断面に配置されているマグネットのN極とS極とを示している。例えば、マグネットローター10Aとその前後に位置するマグネットベース12B、12Aとの間のN極とS極との関係を説明する。マグネットローター10Aと、その前方に位置するマグネットベース12Bとの間では、装着されているマグネットの最外周においてS極とN極、第2周においてS極とN極、第3周においてS極とN極と、互いに吸引し合うようにマグネットが配置されている。一方、マグネットローター10Aと、その後方に位置するマグネットベース12Aとの間では、装着されているマグネットの最外周においてN極とN極、第2周においてN極とN極、第3周においてN極とN極と、互いに反発し合うようにマグネットが配置されている。マグネットローター10Bとその前後に位置するマグネットベース12C、12Bとの間のN極とS極との関係も同様であり、マグネットローター10Bとその前方に位置するマグネットベース12Cとの間では、互いに吸引し合うように、一方、マグネットローター10Bと、その後方に位置するマグネットベース12Bとの間では、互いに反発し合うようにマグネットが配置されている。
【0043】
図7は、
図2の0°および左右22.5°の位置に配置されているマグネットのN極とS極とを示している。これは、
図6において、Y方向、すなわち、往復運動発生部2を真上から見たときのマグネットのN極とS極の配置と同じである。
図7によると、マグネットローター10A、10Bと、それぞれその前方に位置するマグネットベース12B、12Cとの間では、互いに吸引し合うように、一方、マグネットローター10A、10Bと、それぞれその後方に位置するマグネットベース12A、12Bとの間では、互いに反発し合うようにマグネットが配置されていることがより明確に理解することができる。
【0044】
図8は、
図7において、マグネットローター10A、10Bがストッパー42で拘束されている状態(a)から拘束が解除され、ステップ1からステップ4まで状態(b)、(c)、(d)を経由して1往復する各状態におけるマグネットローターおよびマグネットベースのマグネットのN極とS極とを示している。状態(a)は、
図1に示すストッパー42を効かせてマグネットローター10A、10Bが前後に移動しないように拘束している状態である。往復運動発生部2を拘束状態にするには、往復運動発生部2を
図7に示す状態で組み立てたのち、ストッパー用ハンドル44を廻すとストッパー42の先端がスピンドル20の後端部に当たり、スピンドル20、マグネットローター10A、10B、およびラック22を前方に移動させる。ラック22が前方に移動する際に、ラック22は、第1カム24Aに沿って進み、先端の台形に接すると、スピンドル20を介してマグネットローター10A、10Bを回転させ、最終的には、約22.5°回転させると、状態(a)になってマグネットローターの拘束が終了する。この状態では、マグネットローターとその前方に位置するマグネットベースとの間では、互いに反発し合うようなN極とS極の配置となっている。なお、本実施形態では、状態(a)で、マグネットローターとその後方のマグネットベースとの間は、約20mm空間が存在している。この空間をマグネットローターが移動するので、マグネットローターは、1サイクルで、後退約20mm、前進約20mm移動することになる。
【0045】
ステップ1は、ストッパー42による拘束を解いて、マグネットローター10A、10Bが後方に移動する状態であり、状態(b)で表される。このとき、ラック22は、第2カム24Bに沿って移動し、まだ台形まで達していない状態である。そのため、マグネットローター10A、10BとマグネットベースとのN極とS極との配置は、状態(a)と同じである。したがって、マグネットローターは、前方のマグネットベースから反発力を受け、後方のマグネットベースから吸引力を受けるため、後方へ力強く移動する。
【0046】
ステップ2は、マグネットローターが後方のマグネットベースに近接している状態であり、状態(c)で表される。このとき、ラック22は、第2カム24Bの台形に沿って移動することにより、左側に台形の高さHだけ移動し、マグネットローターは、スピンドル20を介して状態(b)から左側に約22.5°回転する。22.5°は、
図2、
図3、
図4に示すマグネットの設置角度φであるため、回転後は、マグネットローターのマグネットベースに対するN極とS極の配置は、状態(b)のN極とS極の配置と逆になる。すなわち、マグネットローターと後方のマグネットベースとは反発し合う状態、マグネットローターと前方のマグネットベースとは吸引し合う状態となっている。この状態(c)では、各マグネットローター10A、10Bの前方に約20mmの空間が生じている。
【0047】
ステップ3は、状態(c)からマグネットローターが前方に移動する状態であり、状態(d)で表される。このとき、ラック22は、第1カム24Aに沿って移動し、まだ台形まで達していない状態である。そのため、マグネットローターとマグネットベースとのN極とS極との配置は、状態(c)と同じである。したがって、マグネットローターは、後方のマグネットベースから反発力を受け、前方のマグネットベースから吸引力を受けるため、前方へ力強く移動する。
【0048】
ステップ4は、マグネットローターが前方のマグネットベースに近接している状態であり、状態(a)で表される。このとき、ラック22は、第1カム24Aの台形に沿って移動することにより、右側に台形の高さHだけ移動し、マグネットローターは、スピンドル20を介して状態(d)から右側に約22.5°回転する。したがって、ストッパー42によって拘束されていたときと同じN極、S極の配置となっている。ただし、この状態では、ストッパー42は効いていないので、自動的にマグネットローターは、ステップ1に移行し、順次、状態(b)から状態(a)のステップを繰り返していく。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、マグネットの吸引・反発を利用するため、構造を簡単にすることができ、発生する往復運動、および回転運動は、規則正しく安定しており、さらに用途に応じ、装置の小型化、大型化が容易なため、往復運動発生部は、玩具、調理器、工具、真空ポンプ等、回転運動発生部は、医療機器、回転工具、回転装置、発電機等に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 運動発生装置
2 往復運動発生部
3 回転運動発生部
10A 第1マグネットローター
10B 第2マグネットローター
12A 第1マグネットベース
12B 第2マグネットベース
12C 第3マグネットベース
14a 可動マグネット
14b 固定マグネット
16A 可動マグネット装着孔
16B 固定マグネット装着孔
20 スピンドル
22 ラック
24A 第1カム
24B 第2カム
26A、26B 反転ゴマ
28A、28B 軸受
29 反転ブロック
30A メインシャフト
30B サブシャフト
30C、30D 中間シャフト
32A、32B、32C メイン駆動ギア
34A、34B、34C サブ駆動ギア
36A、36B 中間ギア
38A メインウエイトローター
38B サブウエイトローター
40 ハウジング
42 ストッパー
44 ストッパー用ハンドル
46 ワンウエイクラッチ
48 メカロック
49 軸受