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特開2022-122749吹付塗料の塗装検査装置、吹付塗料の塗装検査方法及び塗装検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122749
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】吹付塗料の塗装検査装置、吹付塗料の塗装検査方法及び塗装検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/08 20060101AFI20220816BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220816BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B05B12/08
B05D3/00 D
B05D1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020196
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 琴音
【テーマコード(参考)】
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA09
4D075AA37
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA85
4D075AA86
4D075BB48Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB02
4D075DB04
4D075DB07
4D075DC12
4D075EA05
4D075EC11
4D075EC17
4D075EC30
4F035AA03
4F035BB21
4F035BB22
(57)【要約】
【課題】被塗装物に付着するまでの飛翔中の塗料を観察することにより塗装後の塗装不良部位を予測して作業性の向上を図る吹付塗料の塗装検査装置、その方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】吹付塗料の塗装検査装置は、吹付塗装の噴出部から被塗装物に対し噴出し飛翔中の吹付塗料の噴霧雲を撮影する撮影部と、吹付塗料の噴霧雲の温度を計測する温度計測部と、噴出部から噴出する吹付塗料の噴霧雲を解析する解析部を備え、解析部は、撮影部により撮影される噴霧雲の飛翔中の移動の軌跡を推定する軌跡推定部と、温度計測部により計測される噴霧雲の温度を取得する温度取得部と、噴霧雲中の温度変化が生じている領域を温度変化領域として特定する領域特定部と、噴霧雲中における温度変化領域の移動の軌跡を推定し、被塗装物への温度変化領域の付着予想位置を推定する付着位置推定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物を吹付塗装する吹付塗料の塗装検査装置であって、
前記の塗装検査装置は、
前記吹付塗装の噴出部から前記被塗装物に対し噴出し飛翔中の前記吹付塗料の噴霧雲を撮影する撮影部と、
前記吹付塗料の前記噴霧雲の温度を計測する温度計測部と、
前記撮影部により撮影された撮影データと、前記温度計測部により測定された温度に基づいて前記噴出部から噴出する前記吹付塗料の噴霧雲を解析する解析部と、を備え、
前記解析部は、
前記撮影部により撮影される前記噴霧雲の飛翔中の移動の軌跡を推定する軌跡推定部と、
前記温度計測部により計測される前記噴霧雲の温度を取得する温度取得部と、
前記噴霧雲において当該噴霧雲内における温度変化が生じている領域を温度変化領域として特定する領域特定部と、
前記噴霧雲中における前記温度変化領域の移動の軌跡を推定し、前記被塗装物への前記温度変化領域の付着予想位置を推定する付着位置推定部と、を備える
ことを特徴とする吹付塗料の塗装検査装置。
【請求項2】
前記解析部は、
前記被塗装物の形状情報を取得する形状取得部と、
前記被塗装物における前記付着予想位置を出力する出力部を備え、
前記出力部は、前記形状情報に前記付着予想位置を組み合わせて出力する請求項1に記載の吹付塗料の塗装検査装置。
【請求項3】
前記温度変化領域は、前記噴霧雲内における温度が所定の閾値を超過している領域である請求項1または2に記載の吹付塗料の塗装検査装置。
【請求項4】
前記温度変化領域は、前記噴霧雲内における温度変化が所定の閾値以下の領域である請求項1または2に記載の吹付塗料の塗装検査装置。
【請求項5】
前記撮影部は、レーザ光源と光学カメラを備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吹付塗料の塗装検査装置。
【請求項6】
前記温度計測部はサーマルカメラである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の吹付塗料の塗装検査装置。
【請求項7】
吹付塗料の噴出部から被塗装物に対し噴出し飛翔中の前記吹付塗料の噴霧雲を撮影する撮影部と、
前記吹付塗料の前記噴霧雲の温度を計測する温度計測部と、
前記撮影部により撮影された撮影データと、前記温度計測部により測定された温度に基づいて前記噴出部から噴出する前記吹付塗料の噴霧雲を解析する解析部とを備える吹付塗料の塗装検査装置における塗装検査方法であって、
前記解析部は、
前記撮影部により撮影される前記噴霧雲の飛翔中の移動の軌跡を推定する軌跡推定ステップと、
前記温度計測部により計測される前記噴霧雲の温度を取得する温度取得ステップと、
前記噴霧雲において当該噴霧雲内における温度変化が生じている領域を温度変化領域として特定する領域特定ステップと、
前記噴霧雲中における前記温度変化領域の移動の軌跡を推定し、前記被塗装物への前記温度変化領域の付着位置を推定する付着位置推定ステップと、を実行する
ことを特徴とする吹付塗料の塗装検査方法。
【請求項8】
吹付塗料の噴出部から被塗装物に対し噴出し飛翔中の前記吹付塗料の噴霧雲を撮影する撮影部と、
前記吹付塗料の前記噴霧雲の温度を計測する温度計測部と、
前記撮影部により撮影された撮影データと、前記温度計測部により測定された温度に基づいて前記噴出部から噴出する前記吹付塗料の噴霧雲を解析する解析部とを備える吹付塗料の塗装検査装置における塗装検査プログラムであって、
前記解析部は、
前記撮影部により撮影される前記噴霧雲の飛翔中の移動の軌跡を推定する軌跡推定機能と、
前記温度計測部により計測される前記噴霧雲の温度を取得する温度取得機能と、
前記噴霧雲において当該噴霧雲内の温度変化が生じている領域を温度変化領域として特定する領域特定機能と、
前記噴霧雲中における前記温度変化領域の移動の軌跡を推定し、前記被塗装物への前記温度変化領域の付着位置を推定する付着位置推定機能と、を実現する
ことを特徴とする吹付塗料の塗装検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吹付塗料の塗装検査装置、吹付塗料の塗装検査方法及び塗装検査プログラムに関し、特に飛翔中の吹付塗料の状態から塗装の適否を判定する吹付塗料の塗装検査装置と、その塗装検査方法及び塗装検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、乗用車等の車体の鋼板に塗装する際、複雑な車体形状に追従させて均一に塗装する必要から吹付塗装が多用されている。この場合、塗装装置から噴射される塗料が飛翔して被塗装物である鋼板に付着するまでの間に、吹付塗料が塗装室内等を浮遊する異物(砂塵、鉄粉等)を巻き込むことがある。
【0003】
異物を巻き込んだ塗料がそのまま飛翔して被塗装物である鋼板に付着すると、当該部位に塗料の塊が生じる。周囲の正常な塗装部位と比較して局所的な肉厚な部位が形成され、塗装不良部位が生じる。現状、塗装後の被塗装物の表面は目視等により全数検査され、事後的に塗装不良部位は研磨されて塗装の厚さが均質化される。
【0004】
このことから、塗装不良部位を自動的に検査する方法、装置が検討、提案されている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1において提案されている装置は、塗料が塗布された後、塗装後の被塗装物の表面の温度を測定することにより、塗料の厚さの良否判定を行う。具体的には、塗装された後の塗料の揮発に起因する温度変化から塗装の良否が判定されている。そのため、既存の技術は、既に塗装を終えた後の塗装の良否判定の域を出なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-97998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一連の経緯から、発明者は、塗装の途中段階において、塗装後に生じ得る塗装不良部位を予測して、塗装とその後の研磨等の一連の作業に要する時間短縮について鋭意検討してきた。その結果、飛翔中の塗料の状態を直接観察することにより、塗装不良を推定可能であることを見いだした。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、被塗装物に付着するまでの間の飛翔中の塗料を観察することにより、塗料が被塗装物に付着して塗装を終えた後に生じ得る塗装不良部位を予測し、作業性の向上を図る吹付塗料の塗装検査装置と、その塗装検査方法及び塗装検査プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、実施形態の被塗装物を吹付塗装する吹付塗料の塗装検査装置は、吹付塗装の噴出部から被塗装物に対し噴出し飛翔中の吹付塗料の噴霧雲を撮影する撮影部と、吹付塗料の噴霧雲の温度を計測する温度計測部と、撮影部により撮影された撮影データと、温度計測部により測定された温度に基づいて噴出部から噴出する吹付塗料の噴霧雲を解析する解析部とを備え、解析部は、撮影部により撮影される噴霧雲の飛翔中の移動の軌跡を推定する軌跡推定部と、温度計測部により計測される噴霧雲の温度を取得する温度取得部と、噴霧雲において当該噴霧雲内における温度変化が生じている領域を温度変化領域として特定する領域特定部と、噴霧雲中における温度変化領域の移動の軌跡を推定し、被塗装物への温度変化領域の付着予想位置を推定する付着位置推定部とを備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、解析部は、被塗装物の形状情報を取得する形状取得部と、被塗装物における付着予想位置を出力する出力部を備え、出力部は、形状情報に付着予想位置を組み合わせて出力することとしてもよい。
【0010】
さらに、温度変化領域は、噴霧雲内における温度が所定の閾値を超過している領域であることとしてもよく、あるいは、温度変化領域は、噴霧雲内における温度変化が所定の閾値以下の領域であることとしてもよい。
【0011】
さらに、撮影部は、レーザ光源と光学カメラを備えることとしてもよい。
【0012】
さらに、温度計測部はサーマルカメラであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吹付塗料の塗装検査装置によると、塗装検査装置は、吹付塗装の噴出部から被塗装物に対し噴出し飛翔中の吹付塗料の噴霧雲を撮影する撮影部と、吹付塗料の噴霧雲の温度を計測する温度計測部と、撮影部により撮影された撮影データと、温度計測部により測定された温度に基づいて噴出部から噴出する吹付塗料の噴霧雲を解析する解析部とを備え、解析部は、撮影部により撮影される噴霧雲の飛翔中の移動の軌跡を推定する軌跡推定部と、温度計測部により計測される噴霧雲の温度を取得する温度取得部と、噴霧雲において当該噴霧雲内における温度変化が生じている領域を温度変化領域として特定する領域特定部と、噴霧雲中における温度変化領域の移動の軌跡を推定し、被塗装物への温度変化領域の付着予想位置を推定する付着位置推定部とを備えるため、被塗装物に付着するまでの間の飛翔中の塗料を観察することにより、塗料が被塗装物に付着して塗装を終えた後に生じ得る塗装不良部位を予測し、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の吹付塗料の塗装検査装置を示す概略図である。
図2】解析部の構成を示すブロック図である。
図3】解析部内の機能部を示すブロック図である。
図4】(A)吹付塗料の噴霧雲の移動軌跡を示す第1模式図、(B)その第2模式図、(C)その第3模式図である。
図5】(A)正常な吹付塗料の揮発を示す模式図、(B)異物を含む吹付塗料の揮発を示す模式図である。
図6】(A)異物を含む吹付塗料の噴霧雲の移動軌跡を示す第1模式図、(B)その第2模式図、(C)その第3模式図である。
図7】被塗装物の塗装後を推定する模式図である。
図8】表示部における表示画像例である。
図9】実施形態の吹付塗料の塗装検査方法を説明する第1フローチャートである。
図10】実施形態の吹付塗料の塗装検査方法を説明する第2フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の吹付塗料の塗装検査は、例えば、車両の車体を構成するステンレス鋼板、アルミニウム板、さらには各種機械の金属板等の被塗装物に対し、吹付塗料が吹付塗装される。実施形態の吹付塗料の塗装検査は、このときの塗装の良否を検査する装置である。特に、吹付塗料にあっては、被塗装物へ到達する間に周囲に浮遊する異物が吹付塗料に巻き込まれて被塗装物の表面に付着する。そうすると、塗装の厚さに不均一を生じさせる。
【0016】
そこで、吹付塗料が被塗装物へ到達するまで間(吹付塗料の飛翔中)において当該吹付塗料を観察して、被塗装物へ吹付塗料が付着(塗装)された後における塗装の異常領域を推定する検査装置である。
【0017】
図1は実施形態の吹付塗料の塗装検査装置1の構成を示す概略図である。吹付塗料2は噴出部3から噴出されて被塗装物Wに付着し、被塗装物Wの塗装が行われる。吹付塗料2は、公知の塗料(ペンキ)、静電塗装等に使用される塗料等であり限定されない。噴出部3は塗装用のガン等であり、塗料の供給部、圧縮空気の供給部等(いずれも図示せず)が接続されている。噴出部3はロボットアーム(図示せず)に接続され、噴出部3は被塗装物Wに対して一定の距離、速度により移動する。噴出部3の移動に伴って被塗装物Wは塗装される。
【0018】
吹付塗料2の塗装に静電塗装が用いられる場合、吹付塗料2の個々の粒子は帯電している。すると、被塗装物Wを塗装する塗装設備の空間内に存在する微細な粉塵、埃等は、電気的に吹付塗料2の粒子と結合しやすくなる。このため、吹付塗料とともに微細な粉塵や埃も非塗装物Wに付着する可能性があることから塗装後の不良を生じやすい原因となる。そこで、噴出部3から噴出する吹付塗料2により被塗装物Wを塗装する塗装設備に、実施形態の吹付塗料の塗装検査装置1は設置される。塗装検査装置1は塗装不良の可能性のある領域を予測、推定して、塗装後の検査及び研磨の範囲を縮小して作業効率の向上に寄与することができる。ここで言う塗装不良とは、異物を巻き込んだ塗料がそのまま飛翔して被塗装物に付着する結果、塗料の塊が生じることである。周囲の正常な塗装部位と比較して局所的に肉厚な部位が生じ、事後的に研磨が必要になることである。
【0019】
吹付塗料の塗装検査装置1は、撮影部4、温度計測部5、及び解析部10を備え、撮影部4と温度計測部5は解析部10に有線または無線により信号送信可能に接続されている。さらに、撮影部4における撮影を補助するためのシートレーザの照射部6が備えられる。
【0020】
撮影部4は、吹付塗装のための噴出部3から被塗装物Wに対して噴出し飛翔中の吹付塗料2の噴霧雲21(図4参照)を撮影する。吹付塗料2は無数の微細な粒子であり、その粒子の集合体として噴霧雲21が形成される。このような、無数の微細な粒子の流れの解析のため、粒子画像流速測定法(PIV:Particle Image Velocimetry)が用いられる。
【0021】
そこで、実施形態の吹付塗料の塗装検査装置1は粒子画像流速測定法(PIV)の機器を用いる。撮影部4はCCDカメラ、またはCMOSイメージセンサ等を備えた光学カメラであり、被塗装物Wを塗装している空間内を飛翔する吹付塗料2の粒子を撮影する。そして、撮影時の光源として、シートレーザの照射部6(レーザ光源)が設置される。撮影部4による噴霧雲21の撮影により、噴霧雲21の撮影データが調製される。
【0022】
温度計測部5は、吹付塗料2の粒子の集合体として空間中を飛翔する噴霧雲21の温度を測定する機器であり、サーマルカメラ、サーモグラフィカメラ等と称される。吹付塗料2の飛翔中、当該吹付塗料2から溶剤が揮発(蒸発)する。その際、気化熱が生じて吹付塗料2の温度は低下する。このため、噴霧雲21の領域は周囲の空間よりも低温度の領域となる。そこで、温度計測部5を通じて噴霧雲21の温度が計測され、温度データが調製される。
【0023】
解析部10は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末、スマートフォン等、種々の電子計算機(計算リソース、コンピュータ)であり、図2のブロック図から理解されるように、ハードウェア的にCPU11、RAM12、ROM13、記憶部14、I/O(インプット・アウトプットインターフェース)15により構成される。その他にメインメモリ、LSI等も含まれる。またソフトウェア的に、メインメモリにロードされた塗装検査プログラム等により実現される。
【0024】
解析部10の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、解析部10は各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行することで実現される。このプログラムを格納する記録媒体は、「一時的でない有形の媒体」、例えば、CD、DVD、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、このプログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワーク、放送波等)を介して解析部10(コンピュータ)に供給されてもよい。
【0025】
解析部10における各種の記憶部は、ROM12、RAM13であり、記憶部14としてのHDDまたはSSD等の記憶装置である。また、演算処理を実行する各機能部はCPU11等の演算素子である。解析部10は、図3のブロック図のとおり、形状取得部100、軌跡推定部110、温度取得部120、領域特定部130、付着位置推定部140、出力部150等の機能部を備える。
【0026】
I/O15は通信(送受信)用のインターフェース、バッファ等である。I/O15は撮影部4及び温度計測部5等からの入力信号の受信、表示部7等への出力信号の送信に用いられ、CPU11と連携する。表示部7は公知のディスプレイ(液晶表示装置、有機EL表示装置等)である。加えて、表示部7はタブレット端末、スマートフォン等の画像表示機能を備える機器としてもよい。
【0027】
解析部10は、撮影部4により撮影された撮影データと、温度計測部5により測定された温度に基づいて噴出部3から噴出する吹付塗料2の噴霧雲21を解析する機能を備える。解析部10の個々の機能部について、図3のブロック図等を参照して順に説明する。
【0028】
形状取得部100は、被塗装物Wの形状情報を取得する。被塗装物Wの形状情報とは、被塗装物Wの形状、大きさ(寸法)の関する数値の情報であり、具体的には、鋼板等の被塗装物WのCADデータである。吹付塗料の塗装検査装置1の目的は、被塗装物Wに塗装された後の不良部位を予測して作業者及び次の工程に知らせることにある。そこで、予め被塗装物Wの形状情報(鋼板のCADのデータ)が解析部10にて取得される。これは、後出の温度変化領域の付着予想位置を推定するための被塗装物W側の数値情報として用いるためである。被塗装物Wの形状情報の取得は、被塗装物Wの型替え等に応じて実行される。
【0029】
軌跡推定部110は、撮影部4により撮影される噴霧雲21の飛翔中の移動の軌跡を推定する。
【0030】
温度取得部120は、温度計測部5により計測される噴霧雲21の温度を取得する。
【0031】
図4の模式図は、噴出部3から噴出した吹付塗料2が被塗装物Wへ到達する間の様子を示す。図4(A)は噴出部3から噴出した直後の吹付塗料2であり、その集合体として噴霧雲21が形成される。噴出部3から噴出する吹付塗料2は円錐状に広がる。従って、吹付塗料2の個々の粒子は噴出部3を起点として直線状に飛翔するとみなすことができる。図示の撮影部4による撮影時点では、噴霧雲21は例えば台形(台形錘)として把握される。このとき、噴霧雲21は撮影部4により撮影され、同時に、温度計測部5により温度が計測される(以後同様)。
【0032】
噴出部3から吹付塗料2が噴射されると、噴射直後から吹付塗料2に含まれる溶剤の揮発(蒸発)が始まる。そこで、気化熱の影響から空間中の噴霧雲21の領域の温度は周囲よりも低下する。従って、温度計測部5は、噴霧雲21の領域を周囲よりも温度の低い領域として計測することができる。
【0033】
図4(B)はさらに噴霧雲21が飛翔している状態である。噴出部3から噴出する吹付塗料2は円錐状に広がることから、吹付塗料2の個々の粒子は噴出部3を起点として直線状に飛翔している。従って、例えば、図4(A)及び(B)の状態の飛翔中の移動の軌跡が撮影部4により撮影されていれば、双方の噴霧雲21の位置の差異から移動方向と移動速度が判明し、図4(C)のとおり、噴霧雲21の飛翔中の移動の軌跡は推定可能である。むろん、撮影部4による撮影頻度を増やして推定精度を高めることに加え、撮影部4は動画として常時撮影状態としても良い。
【0034】
領域特定部130は、噴霧雲21において当該噴霧雲21内における温度変化が生じている領域を温度変化領域22(図6参照)として特定する。
【0035】
ここで、図5の模式図を用い、吹付塗料2に含まれる溶剤の揮発(蒸発)と、吹付塗料2に異物25が含まれているときの揮発の状態について説明する。図5(A)は飛翔中の吹付塗料2を拡大して示す模式図である。吹付塗料2の各粒子は、噴出部3から噴出した時点では色素成分と溶剤を含む大きさである(紙面左側)。その後、飛翔中に吹付塗料2の各粒子中の溶剤は揮発するため、吹付塗料2の粒子の体積が徐々に減少して粒径が小さくなる(紙面右側)。このとき、吹付塗料2の各粒子中の溶剤の揮発により気化熱が生じることから、吹付塗料2が集まって形成される噴霧雲21(図4参照)は周囲よりも温度低下した領域として温度計測部5により計測される。
【0036】
次に、図5(B)は、噴出部3から噴出して飛翔している吹付塗料2の粒子が浮遊中の異物25と接触し、吹付塗料2の粒子が異物25を巻き込んだ状態を示す模式図である(紙面左側)。異物25が吹付塗料2に含まれていても溶剤の揮発は進む(紙面右側)。しかしながら、異物25が吹付塗料2に含まれていることから粒子の大きさに変化が生じる。すると、表面積の変化等から吹付塗料2の粒子中の溶剤の揮発に変化が生じる。具体的には、異物25を含む粒子ほど溶剤の揮発は遅く、気化熱の熱量は少なくなる。結果、図5(A)の正常の吹付塗料2の粒子の温度低下に比べて、図5(B)の異物25を含む吹付塗料2の粒子は相対的に高い温度となる。これが温度変化領域22(図6参照)である。
【0037】
当該温度変化は温度計測部5を通じて計測される。例えば、図5(B)の紙面左側は、噴出部3からの吹付塗料2の噴出からt秒経過時点であり、同紙面右側では、t+Δt秒経過時点である。すると、異物25が吹付塗料2に含まれている粒子は、t+Δt秒経過時点において、当該粒子は周囲の粒子相対的に高い温度として検出される。
【0038】
図6の模式図は、噴出部3から噴出した吹付塗料2が被塗装物Wへ到達する間の噴霧雲21の様子を示す。図6(A)は噴出部3から噴出した直後の吹付塗料2であり、その集合体として噴霧雲21が形成される。噴出部3から噴出する吹付塗料2は円錐状に広がる。図示の撮影部4による撮影時点では、噴霧雲21は台形(台形錘)として把握される。このとき、噴霧雲21は撮影部4により撮影され、同時に、温度計測部5により温度が計測される(以後同様)。
【0039】
続く図6(B)において、噴出部3から噴出された吹付塗料2が飛翔している間に、吹付塗料2に浮遊している異物が巻き込まれることがある。図6(A)及び(B)の状態においても、噴射直後から吹付塗料2に含まれる溶剤の揮発(蒸発)が始まる。この場合、噴霧雲21の内部において、異物25を含む吹付塗料2の粒子の領域は相対的に僅かに高い温度となり、温度変化領域22が発生する。温度変化領域22の発生は温度計測部5による温度計測を通じて確認される。
【0040】
図6のように、温度変化領域22が噴霧雲21に発生している場合であっても、図6(A)及び(B)の状態の飛翔中の移動の軌跡が撮影部4により撮影されていれば、双方の噴霧雲21の位置の差異から移動方向と移動速度が判明し、図6(C)のとおり噴霧雲21及びその中の温度変化領域22の飛翔中の移動の軌跡は推定可能である。むろん、撮影部4による撮影頻度を増やして推定精度を高めることに加え、撮影部4は動画として常時撮影状態としても良い。
【0041】
噴霧雲21中における温度変化領域22の特定は、温度変化領域22の温度が周囲の噴霧雲21から所定の温度の閾値を超過していることとしてもよい。前述のとおり、温度変化領域22の温度は、その周囲の噴霧雲21の温度よりも高くなる。そこで、所定温度の閾値、例えば、噴霧雲21内の周囲温度よりも0.5℃高温であることを基準に温度変化領域22の特定が可能となる。なお、閾値による区分は1段階に限らず、例えば、噴霧雲21内の周囲温度よりも0.5℃の高温、0.8℃の高温のように2段階とすることができる。こうして、飛翔中の噴霧雲21は温度変化の閾値に達している領域(温度変化領域22)と温度変化の閾値に達していない領域(温度変化領域22を除く噴霧雲21)に区分される。
【0042】
あるいは、温度変化領域22は、噴霧雲21内における温度変化が所定の閾値以下の領域であるとして特定してもよい。異物25を含む吹付塗料2の粒子からなる領域は相対的に僅かに高い温度となり、温度変化領域22が発生する。温度変化領域22と温度変化領域22以外の領域の分離は可能となる。例えば、噴霧雲21内の温度変化が閾値の0.5℃以下であること等を基準に温度変化領域22とそれ以外の領域の特定及び分離が可能となる。そこで、温度変化領域22のみの移動の軌跡予想として、演算処理量等を軽減することが可能となる。こうして、飛翔中の噴霧雲21は温度変化の閾値に達している領域(温度変化領域22)と温度変化の閾値に達していない領域(温度変化領域22を除く噴霧雲21)に区分される。そこで、温度変化領域22のみの移動の軌跡予想として、演算処理量等を軽減することが可能となる。
【0043】
付着位置推定部140は、噴霧雲21中における温度変化領域22の移動の軌跡を推定し、被塗装物Wへの温度変化領域22の付着位置を推定する。
そして、出力部150は、被塗装物Wにおける付着予想位置を出力する。
【0044】
前述の図6(C)において噴霧雲21及び温度変化領域22の飛翔の移動軌跡の推定から、被塗装物Wへの温度変化領域22の到達する位置は推定可能となる。さらに具体的には、図7の被塗装物の塗装後を推定する模式図として表される。
【0045】
被塗装物Wの表面Wsに吹付塗料2の噴霧雲21が付着して塗装領域24が形成される。ここで、温度変化領域22を含む噴霧雲21が飛翔し表面Wsに付着するため、温度変化領域22に含まれる吹付塗料2も一緒に表面Wsに付着することが予想される。当該予想位置が付着予想位置26である。付着予想位置26の塗装不良の蓋然性は他の塗装領域24よりも高い。そこで、付着予想位置26が予め判明していれば、塗装後の研磨において、被塗装物Wの表面Ws全体を検査するのではなく、付着予想位置26を重点的に検査して研磨すればよく、作業効率は高まる。
【0046】
図7のとおり、被塗装物Wにおける付着予想位置26が推定される。そこで、当該付着予想位置26の推定結果の活用として、推定結果が作業者の端末(図2の表示部7)へ送信される。図8は表示部7における表示画像例である。表示部7の画面31には形状取得部100を通じて取得された被塗装物Wの形状情報に基づいた被塗装物の画像Wi(CGも含まれる)が表示されている。被塗装物の画像Wiには、塗装領域24と付着予想位置26が表示されている。このように、被塗装物の画像は作業者に視覚的に容易に認識可能な情報として構成されるため、作業現場における情報共有、作業性の向上に貢献可能となる。
【0047】
続いて、実施形態の塗装検査方法を塗装検査プログラムとともに説明する。実施形態の塗装検査方法は、塗装検査プログラムに基づいて、解析部10(CPU11)により実行される。塗装検査プログラムは、解析部10(CPU11)に対して、形状取得機能、軌跡推定機能、温度取得機能、領域特定機能、付着位置推定機能、出力機能等を実行させる。各機能は前述の説明と重複するため、詳細は省略する。
【0048】
図9のフローチャートは、塗装検査方法における形状取得ステップ(S100)の実行を示す。図10のフローチャートは、塗装検査方法の全体の流れであり、軌跡推定ステップ(S110)、温度取得ステップ(S120)、領域特定ステップ(S130)、付着位置推定ステップ(S140)、出力ステップ(S150)等の実行を示す。その他、塗装検査方法は、記憶、格納、呼び出し、演算、比較等の各種の図示しないステップも備える。
【0049】
解析部10(CPU11)において、形状取得ステップ(S100)における処理は形状取得部100の説明に対応する。軌跡推定ステップ(S110)における処理は軌跡推定部110の説明に対応する。温度取得ステップ(S120)における処理は温度取得部120の説明に対応する。領域特定ステップ(S130)における処理は領域特定部130の説明に対応する。付着位置推定ステップ(S140)における処理は付着位置推定部140の説明に対応する。出力ステップ(S150)における処理は出力部150の説明に対応する。各ステップにおける具体的な処理は、前述の各機能部の説明のとおりであるため、詳細を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の吹付塗料の塗装検査装置は、飛翔中の吹付塗料の温度変化の状態から塗料中への異物の混入のおそれを認識し、被塗装物の塗装の異常領域を推定するため、塗装後の検査作業の軽減、研磨箇所の限定等の作業効率の向上に貢献することができる。また、吹付塗料の塗装検査方法、吹付塗料の塗装検査プログラムにおいても同様の効果を発揮し得る。
【符号の説明】
【0051】
1 吹付塗料の塗装検査装置
2 吹付塗料
3 噴出部
4 撮影部
5 温度計測部
6 照射部(レーザ光源)
7 表示部
10 解析部
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 記憶部
15 I/O
21 噴霧雲
22 温度変化領域
24 塗装領域
25 異物
26 付着予想位置
31 画面
100 形状取得部
110 軌跡推定部
120 温度取得部
130 領域特定部
140 付着位置推定部
150 出力部
W 被塗装物
Wi 被塗装物の画像
Ws 被塗装物の表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10