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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122757
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】配管システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 24/06 20060101AFI20220816BHJP
   F17D 1/13 20060101ALI20220816BHJP
   F16L 55/07 20060101ALI20220816BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
F16K24/06 A
F17D1/13
F16L55/07 B
E03C1/122 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020206
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 博之
【テーマコード(参考)】
2D061
3H055
3J071
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB10
2D061AC08
3H055AA22
3H055CC03
3H055CC15
3H055GG37
3H055JJ03
3J071AA16
3J071BB14
3J071CC12
3J071FF12
(57)【要約】
【課題】配管形状に応じて異なる飛び散り方をする排水による汚染抑制を効果的に行うことができる配管システムを提供する。
【解決手段】縦配管2と、横配管3と、配管内の圧力を調整する吸気弁装置5とを備えた配管システム1であって、吸気弁装置5は、縦配管2に設置される第一吸気弁装置6と、横配管3に設置される第二吸気弁装置7とを備えて構成されており、第一吸気弁装置6は、縦配管用の第一通気部材50を備え、第二吸気弁装置6は、第一通気部材50と形状が異なる横配管用の第二通気部材150を備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦配管と、横配管と、配管内の圧力を調整する吸気弁装置とを備えた配管システムであって、
前記吸気弁装置は、前記縦配管に設置される第一吸気弁装置と、前記横配管に設置される第二吸気弁装置とを有して構成されおり、
前記第一吸気弁装置は、縦配管用の第一通気部材を備え、
前記第二吸気弁装置は、前記第一通気部材と形状が異なる横配管用の第二通気部材を備えている
ことを特徴とする配管システム。
【請求項2】
前記第一吸気弁装置は、弁体と、当該弁体の下方に設置される前記第一通気部材とを備え、
前記第二吸気弁装置は、弁体と、当該弁体の下方に設置される前記第二通気部材とを備えており、
前記第一通気部材および前記第二通気部材は、通気口の下端部から下方に延在する壁部をそれぞれ備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の配管システム。
【請求項3】
前記第二通気部材の前記壁部は、前記第一通気部材の前記壁部と比較してその延在長さが短い
ことを特徴とする請求項2に記載の配管システム。
【請求項4】
前記壁部は、前記通気口の下端縁に沿って形成されており、
前記第一通気部材の前記壁部の下端部には、切欠き部が形成されている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の配管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
居住空間に設置される排水設備からの配水管の内部では、排水の流れに応じて管内圧力のバランスが崩れ、正圧または負圧の状態になる。これに起因して、排水設備に取り付けられたトラップで封水破壊が生じてしまうと、排水設備を経由して下水からの臭気が室内に浸入してしまう。
【0003】
そこで、従来は、排水配管の途中に吸気弁や通気弁等の管路内の内圧を外気との関係で調整可能な装置が設置されている。吸気弁の構造としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1の吸気弁装置は、配水管路内において外気圧と排水管路内圧力との間に圧力差が生じた場合に、弁体が移動することにより吸気孔を開放する構造となっている。この吸気弁装置は、天面部から基部に至る円筒状のガイド軸に沿うように弁体を移動させるとなっている。このような構造によって、吸気弁装置のコンパクト化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2014-74483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の吸気弁装置は、コンパクトになったことで、排水面の近くに弁体が近づく構造となる。よって、飛び跳ねた排水が弁体を汚染しやすくなるため、汚染防止のための適切な防護部材が必要となる。ところで、排水設備から下水管に至る配管は、左右横方向に延在する横配管と、上下縦方向に延在する縦配管との組み合わせによって構成されているが、従来の吸気弁装置は、横配管と縦配管とで同じものが取り付けられていた。ここで、本発明者らは、横配管と縦配管とでは、内部を流れる排水の流れ方が異なるため、各配管内での排水の飛び散り方が異なることを見出した。そして、本発明者らは、配管の形状に応じて効果的な汚染防止対策を行うことができるように鋭意検討を行った。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、配管形状に応じて異なる飛び散り方をする排水による汚染抑制を効果的に行うことができる配管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、縦配管と、横配管と、配管内の圧力を調整する吸気弁装置とを備えた配管システムであって、前記吸気弁装置は、前記縦配管に設置される第一吸気弁装置と、前記横配管に設置される第二吸気弁装置とを備えて構成されており、前記第一吸気弁装置は、縦配管用の第一通気部材を備え、前記第二吸気弁装置は、前記第一通気部材と形状が異なる横配管用の第二通気部材を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の配管システムによれば、縦配管に適した縦配管用の第一通気部材を備えた第一吸気弁装置と、横配管に適した横配管用の第二通気部材を備えた第二吸気弁装置と、を備え、各吸気弁装置をそれぞれ適所に設けているので、配管形状に応じて異なる飛び散り方をする排水による汚染抑制を効果的に行うことができる。
【0009】
本発明の配管システムにおいては、前記第一吸気弁装置は、弁体と、当該弁体の下方に設置される前記第一通気部材とを備え、前記第二吸気弁装置は、弁体と、当該弁体の下方に設置される前記第二通気部材とを備えており、前記第一通気部材および前記第二通気部材は、通気口の下端部から下方に延在する壁部をそれぞれ備えているものが好ましい。このような構成によれば、下方から飛び跳ねる排水が壁部に当たり通気口内に浸入するのを効率的に抑制できる。
【0010】
本発明の配管システムにおいては、前記第二通気部材の前記壁部は、前記第一通気部材の前記壁部と比較してその延在長さが短いものが好ましい。このような構成によれば、水平方向に対する飛び跳ねの傾斜角度が小さい横配管に、延在長さが小さい壁部を設けた第二通気部材を設けることで、通気口に届かない排水の飛び跳ねをすくい上げることなく、通気口に届く角度の排水のみを効率的に遮って、汚染抑制を図ることができる。
【0011】
本発明の配管システムにおいては、前記壁部は、前記通気口の下端縁に沿って形成されており、前記第一通気部材の前記壁部の下端部には、切欠き部が形成されているものが好ましい。このような構成によれば、水平方向に対する飛び跳ねの傾斜角度が大きく通気口に排水が届きやすい縦配管に、切欠き部が形成された壁部を備えた第一通気部材を設けることで、通気口に届いた排水を切欠き部から効率的に落下させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように本発明に係る配管システムによれば、配管形状に応じて異なる飛び散り方をする排水による汚染抑制を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る配管システムを模式的に示す図面である。
図2】第一吸気弁装置の外観を示す底面方向からの斜視図である。
図3図2に対応する第一吸気弁装置の分解斜視図である。
図4】第一吸気弁装置の保護部材を示す図面であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、(c)は底面図である。
図5】第一吸気弁装置の保護部材を示す上面方向からの斜視図である。
図6】第二吸気弁装置の外観を示す底面方向からの斜視図である。
図7】第二通気部材の保護部材を示す図面であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、(c)は底面図である。
図8】第二通気部材の保護部材を示す上面方向からの斜視図である。
図9】第一吸気弁装置の作用効果を説明するための概念図である。
図10】第二吸気弁装置の作用効果を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特段指定のない限りは、本発明を限定するものではない。また、各図面は本発明の特徴を分かりやすくするために示すものであり、各構成要素の寸法比率などが、実際のものと同一であるとは限らない。
【0015】
図1に示す住宅内の居住空間100の床下には、洗面台、洗濯機、トイレや浴槽などの排水設備101から排出された排水が、不図示の下水道管へと案内される排水管路106が形成されている。
ここで、排水管路106は、排水横管路104および排水縦管路105とを備えて構成されるものである。排水横管路104および排水縦管路105は、複数のパイプ102および複数の継手103がつながることにより形成されている。
各排水設備101は、所定位置において排水パイプ107を介して継手103に接続しており、各排水設備101からの排水は、排水パイプ107および継手103によって所定方向(下水配管側)に案内される。このようにして、建物内には排水管路106が形成される。
【0016】
(配管システムの構成)
本実施形態の配管システム1は、縦配管2と、横配管3と、これら配管内の圧力を調整する吸気弁装置5とを備えている。
縦配管2は、排水管路106のうち、縦方向に延在する配管であって、排水縦管路105にて構成されている。横配管3は、排水管路106のうち、横方向に延在する配管であって、排水横管路104にて構成されている。
【0017】
吸気弁装置5は、排水管路106内で生じた圧力低下(負圧)を解消するためのものであって、排水管路106の途中に複数個所設けられている。吸気弁装置5は、圧力低下が生じた際に開弁して外気を取り込む。吸気弁装置5は、縦配管2に設置される第一吸気弁装置6と、横配管3に設置される第二吸気弁装置7とを有して構成されている。第一吸気弁装置6は、縦配管用の第一通気部材50を備えている。第二吸気弁装置7は、第一通気部50と形状が異なる横配管用の第二通気部材150を備えている。
【0018】
第一吸気弁装置6は、縦配管2の上端部に設けられている。具体的には、第一吸気弁装置6は、縦配管2と横配管3とを接続する継手103の上部に設置されており、横配管3の下流端部や縦配管2の上流端部で圧力低下が生じた際に開弁される。
【0019】
第二吸気弁装置7は、例えば、横配管3の上流側において、継手103の上部に設けられた上部分岐部103A(図9参照)に設置されており、継手103の近傍の横配管3内で圧力低下が生じた際に開弁される。
【0020】
以上のように、吸気弁装置5は、排水管路106内の圧力低下が起こる場所や圧力低下が起こりそうな場所に設置される。
【0021】
(第一吸気弁装置の構成)
図2および図3に示すように、第一吸気弁装置6は、吸気弁本体部10と、カバー体40と、第一通気部材50と、を備えて構成される。
【0022】
カバー体(いわゆる蓋体)40は、吸気弁本体部10の上部を覆うものであって、吸気弁本体部10による通気が可能な状態で設置されている。
カバー体40は、カバー体本体41と、このカバー体本体41から下方に向けて延出する被係合突出部42と、このカバー体本体41から上方に向けて延出する操作突起43と、から構成される。
【0023】
カバー体本体41は、合成樹脂などで形成される円盤状の部材であり、吸気弁本体部10の上面を覆う。
カバー体本体41の一部には円形状に開口する目印開口部44が形成されている。
【0024】
目印開口部44は、第一吸気弁装置6の取付け完了を示す合図を目視で確認可能にするものである。具体的には、目印開口部44は、第一吸気弁装置6の取付前後で、色が変わる。
目印開口部44は、所定の操作前において、第2の筒本体18の上面を望むことができ、また、所定の操作後には、後述する第2の筒本体18上面に設ける不図示の目印突起部の天面を目印開口部44から望むことができる。
そこで、例えば、第2の筒本体18の色味をグレー色とした場合に、取付け未完了時に目印開口部44内はグレー色となり、不図示の目印突起部の天面を赤色とした場合には、取付け完了時に目印開口部44内は赤色に変わる。
すなわち、操作突起43の回動操作によって、目印開口部44内の色味が、不図示の目印突起部の天面が見える状態と見えない状態とで切り替える構成とした。
従って、作業者は、目印開口部44内の色の変化を捉えることにより、第一吸気弁装置6の取り付けが完了したことを、目視にて確認することができる。
【0025】
被係合突出部42は、吸気弁本体部10に対してカバー体40を係合させるとともに、カバー体40と吸気弁本体部10とを離間させるために設けられている。
具体的には、被係合突出部42の内側において、後述する吸気弁本体部10の係合片部13が取付け可能な形状を有する略区形状の片々様の部材である。
被係合突出部42は、カバー体本体41の下面から下方へ突出する。
被係合突出部42を係合片部13に取付けることにより、カバー体40と、吸気弁本体部10とは一体的に固定しつつ、カバー体40と吸気弁本体部10との間に外気が連通する空間が設けることができる。
なお、本実施形態において、被係合突出部42はカバー体本体41に3つ設けているが、その数および位置は、適宜変更してもよい。
【0026】
操作突起43は、第一吸気弁装置6を、上部分岐部103Aに取付ける際の操作を容易にするためのものである。
操作突起43は、カバー体本体41の一部から上方に向けて突出するよう設けられている。
具体的な操作として、第一吸気弁装置6を上部分岐部103Aに取付ける時に、先ず、第一吸気弁装置6を上部分岐部103A内に載置しておき、その後、第一吸気弁装置6を上方から軽く押し付けながら、いずれか2つの操作突起43を渡るようにして取付器具(工具)を配し、当該取付器具を回動させる。これにより、カバー体40および後述する第1筒部材11が一体的に回動する。これに伴い、後述する吸気弁本体部10の固定パッキン16の一部が拡径方向に変形しようとするが、上部分岐部103Aの内径以上に広げることはできないため、固定パッキン16は上部分岐部103A内壁に押圧され、水密性が高まった姿勢となり、第一吸気弁装置6の容易な取り外しができなくなる(固定された状態)。
本実施形態において、操作突起43は、カバー体本体41に対して、4つ設けられているが、その数および位置は、工具による操作が可能になる範囲において、適宜変更してもよい。
【0027】
吸気弁本体部10は、後述する弁体24のハウジングとなる部材であって、外気を吸気するとともに、排水管路106内に通気する。
吸気弁本体部10は、合成樹脂により形成されとともに、略円筒状の形態を有する。
吸気弁本体部10は、第1筒部材11と、滑り片15と、固定パッキン16と、第2筒部材17と、シール座金21と、シールパッキン22と、弁体24と、ばね部材27と、第一通気部材50のガイド軸51と、から構成される。
【0028】
第1筒部材11は、吸気弁本体部10の上部を構成する。
第1筒部材11は、カバー体40を吸気弁本体部10に対して相対的に固定するための部材である。
第1筒部材11は、第2筒部材17の一部がその内側に配置可能な略筒状の第1の筒本体12と、その筒本体12から上方に向けて延出する係合片部13と、から形成される。
【0029】
第1の筒本体12の内径は、第2筒部材17の外径の一部よりやや大きく設けられており、第1の筒本体12の内側面には、後述する第2の筒本体18の溝20に適合可能な不図示の凸部が形成されている。
その不図示の凸部を第2の筒本体18の溝20に嵌め合わせた状態で、第1の筒本体12を所定方向に回動操作することにより、第1の筒本体12は相対的に下方に移動する。これに伴い、第1の筒本体12の底面が固定パッキン16を押圧し、固定パッキン16を変形させることができる。
従って、第1の筒本体12は、カバー体40に設けられた操作突起43の回動操作に応じて、固定パッキン16の押圧と、その押圧状態の開放を行うことができる。
【0030】
係合片部13は、カバー体40の被係合突出部42に係合するための部材であり、係合片部13は、被係合突出部42に係合した状態で、吸気弁本体部10による通気を可能にする。
係合片部13の外周には、径方向外側に向けて延出する凸14が形成されている。この凸14は、被係合突出部42の内側に設けられる不図示の凹に対応するものであって、この凸14とその不図示の凹との係合により、カバー体40に係合する。
【0031】
滑り片15は、第1筒部材11の回動操作を容易にするとともに、第一吸気弁装置6の固定を確実にする。
滑り片15は、第1筒部材11の底面と、固定パッキン16との間に設けられている。
滑り片15は、第2筒部材17に対して第1筒部材11を回動させた際に、その回動操作を行いやすくするとともに、固定パッキン16の変形を確実に行えるようにできる。
なお、滑り片15を使用する、使用しないという選択は設計変更の範囲内である。
【0032】
固定パッキン16は、上部分岐部103A内において、第一吸気弁装置6を水密な状態で、固定するためのものであり、弾性変形可能な樹脂等から形成される。
固定パッキン16は、略円筒状の部材であって、第2筒部材17の外周面に設置される。この状態の固定パッキン16の上端は、第1筒部材11の底面に配される。
この構成により、カバー体40の回動により第1筒部材11が相対的に下方に移動してくることで、固定パッキン16は、上下方向から押圧され、径方向外側へ突出するように変形される。この固定パッキン16の変形により、上部分岐部103Aと、第一吸気弁装置6とを水密に固定できる。
【0033】
第2筒部材17は、吸気弁本体部10の下部を構成するものであり、その内側には、弁体24が摺動可能に設置できる。
第2筒部材17は、略円筒状の第2の筒本体18と、吸気孔19と、不図示の係合部と、を有する。
【0034】
第2の筒本体18は、その外周面に、第1筒部材11の取付け操作時において第1筒部材11の凸を配した状態で、第1筒部材11の回動を可能にするための溝20が設けられるとともに、上面に吸気孔19が設けられている。
【0035】
溝20は、上方から下方に向けて移動する際に、水平面の座標が連続的に移動する、いわゆるらせん状に形成されている。
この構成により、第2筒部材17に対し、第1筒部材11を所定方向に回動することにともない、第1筒部材11の高さを上下いずれの方向に移動させることができる。
【0036】
吸気孔19は、外気空間に連通するものであって、その開口時において外気を吸気するものである。
通常時、吸気孔19の下端部には、後述するシール部23および弁体24が密着しており、外気空間と排水管路106とは遮蔽された状態である。排水管路106内に負圧が生じた時には、弁体24が下降することにより、吸気孔19が開口し、外気を排水管路106内に流入させる。
【0037】
不図示の係合部は、後述する第一通気部材50の被係合部54が係合可能なものであって、雄雌の関係であればよい。
具体的には、係合爪または係合爪をひっかけるための開口のいずれかであればよく、本実施形態においては、不図示の開口が三つ設けられている。被係合部54の係合爪が、この係合部に引っかかることで、吸気弁本体部10と、第一通気部材50とを一体的にできる。
【0038】
シール座金21は、シールパッキン22の密着性を向上するためのものである。
本実施形態において、シール座金21は、合成樹脂等により形成されている。
シール座金21は、シールパッキン22と一緒に、弁体24上のシール係止部26によって係止されることにより、シールパッキン22の密着性を向上する。
【0039】
シールパッキン22は、第2筒部材17に着座して吸気孔19を閉塞するためのものである。
シールパッキン22は、シール座金21よりも外径が大きい円環様の部材であり、シールパッキン22の内側には、シール座金21を配置可能な溝が設けられている。
【0040】
シール部23は、弁体24の摺動に合わせて、吸気孔19の閉塞/開口を可能にするものである。
シール部23は、上述のシール座金21と、シールパッキン22と、で構成される。
シール部23は、後述する弁体24の天面のシール係止部26によって、弁体24の天面に係止された状態で、弁体24に対して圧着される。
【0041】
弁体24は、合成樹脂等からなり、天面が閉塞した円筒様に外形形状が形成されたものである。弁体24の外径は第2の筒本体18の内径よりも小さいため、弁体24は第2の筒本体18内において上下方向に移動する。
弁体24は、ばね部材27による弾性力を付勢に利用して、第2筒部材17の吸気孔19を閉塞/開口可能に摺動するが、本実施形態において、弁体24の摺動方向は後述するガイド軸51の延出方向と平行に設けられている。
弁体24は、ばね保持部25と、シール係止部26と、を備えている。
【0042】
なお、弁体24の付勢手段は、ばね等の弾性力を利用する以外にも、磁力、空気圧、油圧など、通常時は吸気孔19を閉塞状態でその姿勢を維持する機構であれば、適宜変更できる。
また、本実施形態の弁体24は、円筒様の中空形状に成形することにより、通水側が満管時に、フロートしやすい円筒状に形成しているが、弁体24の形状はこれにかぎられるものではなく円盤様、球体の一部、円錐、角錐といった種々の形状に適宜変更してもよい。
【0043】
ばね保持部25は、弁体24の一部から弁体24の天面よりも上方に向けて延出しており、その上端部が閉塞するとともに、内側が開口する略筒状に形成されている。
このばね保持部25の内側には、ばね部材27の伸張時および圧縮時のいずれの状態において、ばね部材27および後述するガイド軸51が所定の状態で配される。
【0044】
ばね部材27は、弁体24の内側において、通常時に、弁体24が吸気孔19に対して閉塞状態となるようその姿勢を維持させるための付勢手段である。
ばね部材27は、ばね保持部25と、ガイド軸51との間に配される。
【0045】
第一通気部材50は、その全体が略円盤状の形態を有する。
第一通気部材50は、吸気弁本体部10の下方に取付けられた状態で、排水管路106内において飛び跳ねた排水が吸気弁本体部10の通気口内に入り込むのを防止する。
第一通気部材50は、ガイド軸51と、仕切り部52と、壁部53と、被係合部54と、通気口55と、外周部56と、から構成される。
【0046】
ガイド軸51は、このガイド軸51に沿うようにして弁体24を摺動させるものである。
ガイド軸51は、仕切り部52の一部から上方に向けて延出する円筒状の部材である。
ガイド軸51は、仕切り部52の中央に形成され、その上端部には、ばね部材27が取付けられる。具体的には、ガイド軸51には、その上端においてばね部材27を保持するための縮経凸部51Aが設けられており、縮経凸部51Aの外周にばね部材27の内周を嵌め込む様にして、ばね部材27を保持する。
【0047】
仕切り部52は、第一吸気弁装置6において吸気弁本体部10側と通水側とを仕切るものである。
仕切り部52は、吸気弁の開口時において外気の吸気を許容しつつ、通水側から飛び跳ねた排水が吸気弁本体部10側に行かないよう、物理的にその浸入を防止する。
【0048】
本実施形態において、仕切り部52は、外周部56よりも内側に配される円盤様の仕切り板52Aと、仕切り板52Aの一部より中心方向に向けて延出する桟52Bと、から構成され、その一部に吸気のための通気口55が形成されている。仕切り板52Aは、外周部に対して下方に突出しており、外周部56と仕切り板52Aとの境界部に段部57が形成されている。通気口55は、仕切り板52Aの中心部において、桟52Bを除いた部分に形成されている。
【0049】
壁部53は、通水側から飛び跳ねた排水が仕切り部52に至る前に、その進行を妨げるものである。
壁部53は、通気口55の下端部から下方に延在して設けられている。具体的には、壁部53は、仕切り部52の仕切り板52Aの一部から、通水側に向かって延出して設けられている。第一通気部材50の壁部53の下方への延在長さは、後記する第二通気部材150の壁部153の下方への延在長さよりも長い。壁部53は、通気口55の周縁部に沿って形成されており、通気口55と同心の円弧形状を呈している。壁部53は、通気口55の周縁を囲うようにして、3つ設けられている。各壁部53,53の間には、切欠き部53Aが形成されており、隣り合う壁部53,53同士が離間している。切欠き部53Aは、排水が垂れ落ちしやすくするためのものであって、本実施形態では、壁部53の下端部から上端部までの全長に渡って形成されている。なお、切欠き部53Aは、壁部53の下端部に形成されていればよく、隣り合う壁部53,53の上部同士が繋がっていてもよい。
【0050】
壁部53は、外周部56よりも内側に設けられていることから、壁部53の外周面と、排水管路106の内周面とは、所定距離離間し、その間に空間が設けられている。
飛び跳ねた排水の一部は、壁部53に衝突したのち、その外周面および内周面を沿うようにして、垂れ落ちていく。
【0051】
被係合部54は、吸気弁本体部10に第一通気部材50を係止するためのものである。
本実施形態の被係合部54は、不図示の係合部(爪)を係合する部分であって、係合部が係合可能な形状となっている。被係合部54は、外周部56に沿って、等間隔で3か所に形成されている。被係合部54に不図示の係合部を係合することで、吸気弁本体部10と、第一通気部材50とを一体にできる。
【0052】
(第二吸気弁装置の構成)
第二吸気弁装置7について図6乃至図8を参照して説明する。第二吸気弁装置7は、図6に示すように、吸気弁本体部10と、カバー体40と、第二通気部材150と、を備えて構成されており、第二通気部材150の構成が第一吸気弁装置6と異なっている。第二通気部材150以外の吸気弁本体部10とカバー体40については、第一吸気弁装置6と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0053】
図7および図8に示すように、第二通気部材150は、ガイド軸51と、仕切り部152と、壁部153と、被係合部54と、通気口55と、外周部56と、から構成される。第二通気部材150は、仕切り部152と壁部153の構成が第一通気部材50と異なっている。仕切り部152と壁部153以外のガイド軸51と被係合部54と通気口55と外周部56については、第一通気部材50と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。第二通気部材150の配管(横配管3)への固定構造と第一通気部材50の配管(縦配管2)への固定構造は、同様の構成である。具体的には、通気部材50,150に形成した爪部を配管の段部に係止したり、通気部材50,150に形成した雄ネジ部を配管の雌ネジ部に螺合させたり、通気部材50,150を配管の開口部に嵌合させる等、公知の構成である。
【0054】
第二通気部材150の仕切り部152は、外周部56よりも内側に配される円盤様の仕切り板152Aと、仕切り板152Aの一部より中心方向に向けて延出する桟52Bと、から構成され、その一部に吸気のための通気口55が形成されている。仕切り板152Aは、外周部56との間に段差がなく、外周部56の底面と面一になっている。その他の桟52Bと通気口55については、第一通気部材50と同じである。
【0055】
壁部153は、通気口55の下端部から下方に延在して設けられている。第二通気部材150の壁部153の下方への延在長さは、第一通気部材50の壁部53の下方への延在長さよりも短い。壁部153は、通気口55の周縁部に沿って形成されている。壁部153は、切欠き部が設けられておらず、全周に渡って繋がった円筒形状を呈している。壁部153の円筒形状は、通気口55と同心である。
【0056】
壁部153は、外周部56よりも内側に設けられていることから、壁部153の外周面と、上部分岐部103Aの内周面とは、所定距離離間し、その間に空間が設けられている。飛び跳ねた排水の一部は、壁部153に衝突したのち、その外周面および内周面を沿うようにして、垂れ落ちていく。
【0057】
以下に、本実施形態に係る配管システム1の作用効果を説明する。
まず、第一通気部材50を備える第一吸気弁装置6の作用効果について、図9を用いて説明する。
図9に示すように、横配管3から縦配管2に向かうように進んだ排水は、継手103によって下方に落水するが、横配管3内で増水した排水は勢いそのままに継手103内に流れ込むため、継手103内の内壁に衝突することで、排水の飛び跳ねが起こりやすい状態にある。例えば、図9中のW1~W3にて示す、飛び跳ねた排水W1は、壁部53の外周面に衝突する。また、飛び跳ねた排水W2や飛び跳ねた排水W3は、仕切り部52の仕切り板52A(図2参照)や桟52B(図2参照)に衝突する。以上のように、飛び跳ねた各排水W1~W3の多くは、第一通気部材50によって止められるため、通気口55の内部の吸気弁本体部10への排水の浸入を抑制することができる。第一通気部材50に衝突した排水は、仕切り板52Aや桟52Bに沿って壁部53へ到達し、壁部53に沿って流下し、壁部53の下端から落下する。このとき、壁部53の下端部には、切欠き部53Aが形成されているので、壁部53の角部に排水が集まって落下し易くなっている。
【0058】
また、縦配管2の上端部においては、飛び跳ねる排水W1の水面に対する角度(以下、「飛び跳ね角度」という)が大きいので、壁部53の下方への延在長さが比較的長くすることで、多くの排水W1を遮っている。壁部53の下を通過した排水は、遮られる排水W1よりも飛び跳ね角度が小さいものであるので、通気口55に届き難い。さらに、第一吸気弁装置6は、下面に段部57を備えているので、壁部53の下端位置をより一層低くすることができ、より多くの排水W1を遮ることができる。また、段部57を設けたことで、外周部56に届いた排水が落下し易くなっている。
【0059】
以上のように、縦配管2用の第一通気部材50は、通気口55に向かって飛び跳ねた排水W1~W3を効果的に遮ることができる。つまり、第一通気部材50を備えた第一吸気弁装置6は、縦配管2に特化した作用効果を奏することができる。
【0060】
次に、第二通気部材150を備える第二吸気弁装置7の作用効果について、図10を用いて説明する。
図10に示すように、横配管3内で飛び跳ねる排水W11は、下流側に流れる排水の表面から下流側の斜め上方に向かって跳ねる。飛び跳ねた排水W1は、壁部153の外周面に衝突することで、内側の通気口55へ到達するのを抑制されている。横配管3内では、飛び跳ねる排水W11の飛び跳ね角度が小さいので、通気口55の方向に直接向かって飛び跳ねる排水は少ない。そこで、横配管3用の第二通気部材150は、壁部153の下方への延在長さを第一通気部材50の壁部53よりも短くしている。これによって、飛び跳ね角度がさらに小さい排水W12のすくい上げを防止しつつ、通気口55への排水W11の飛び跳ねを効率的に抑制している。また、壁部153は、切欠き部を有さず、全周に渡って繋がって形成されているので、横方向からの排水W11の浸入を防いでいる。
【0061】
以上のように、横配管3用の第二吸気弁装置7は、第二通気部材150に向かって飛び跳ねた排水W11を効率的に遮ることができる。つまり、第二通気部材150を備えた第二吸気弁装置7は、横配管3に特化した作用効果を奏することができる。
【0062】
以上、説明したように、本発明においては、縦配管2では比較的上向きに飛び跳ねた排水が第一通気部材50に到達し易い傾向であるのに対し、横配管3では横向きに飛び跳ねた排水が第二通気部材150に到達し易い傾向がある点に着目した。そして、本実施形態の配管システム1によれば、縦配管2に適した第一通気部材50を備えた第一吸気弁装置6と、横配管3に適した第二通気部材150を備えた第二吸気弁装置7とをそれぞれ適所に設けているので、配管形状に応じて異なる飛び散り方をする排水による汚染防止を効果的に行うことができる。
【0063】
また、第一通気部材50は壁部53を備え、第二通気部材150は壁部153を備えているので、下方から飛び跳ねる排水が壁部53,153に当たり、通気口55内に浸入するのを効率的に抑制できる。
【0064】
本実施形態では、第二通気部材150の壁部153は、第一通気部材50の壁部53と比較してその延在長さが短いので、水平方向に対する飛び跳ねの傾斜角度が小さい横配管3に、延在長さが小さい壁部を設けた第二通気部材150を設けることで、通気口に届かない排水の飛び跳ねを受けることなく、通気口に届く角度の排水のみを効率的に受けて、汚染防止を図ることができる。
【0065】
本実施形態では、第一通気部材50の壁部53は、通気口55の下端縁に沿って形成されており、壁部53の下端部には、切欠き部53Aが形成されているので、水平方向に対する飛び跳ねの傾斜角度が大きく通気口55に排水が届きやすい縦配管2に第一通気部材150を設けることで、通気口55に届いた排水を切欠き部53Aから効率的に落下させることができる。
【0066】
本実施形態では、第一通気部材50の配管への固定構造と第二通気部材150の配管への固定構造とは同様の構成であるので、例えば施工現場において配管形態が変更になった場合等に、第一通気部材50と第二通気部材150とが変更になっても、対応可能で取り付けを容易に行うことができる。
【0067】
一方、排水縦管路105内に負圧が発生した場合には、第一吸気弁装置6の第一通気部材50の通気口55および第二吸気弁装置7の第二通気部材150の通気口55を通じて、吸気弁本体部10内の弁体24近傍の圧力が低下する。配管システム1においては、排水管路106内の圧力低下に伴い、弁体24が下降し、吸気孔19が開口する。開口した吸気孔19から外気が排水管路106内に入り込み、差圧が解消される。これによって、排水パイプのS字トラップ内の水が引き流されるのを防止できる。差圧の解消後は、弁体24が上昇し、吸気孔19が閉塞され、通常状態に戻る。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。例えば、前記実施形態では、壁部53に切欠き部53Aを設けて、排水を落下し易くしているが、これに限定されるものではない。壁部を円筒形状に形成して、円筒の下端部に下方に突出する突起を設けてもよい。このような構成によれば、壁部に流れた排水は突起に集まり落下し易くなる。
【符号の説明】
【0069】
1 配管システム
2 縦配管
3 横配管
5 吸気弁装置
6 第一吸気弁装置
7 第二吸気弁装置
50 第一通気部材
53 壁部
53A 切欠き部
54 被係合部
55 通気口
150 第二通気部材
153 壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10