(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122764
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】チタン系多孔質体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/11 20060101AFI20220816BHJP
B22F 3/035 20060101ALI20220816BHJP
C22C 1/04 20060101ALI20220816BHJP
C22C 1/08 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B22F3/11 C
B22F3/035 C
C22C1/04 E
C22C1/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020222
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴則
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA06
4K018BA03
4K018BB02
4K018CA14
4K018CA44
4K018DA21
4K018DA32
4K018DA33
4K018FA08
4K018FA22
4K018FA24
4K018KA22
4K018KA57
4K018KA70
(57)【要約】
【課題】比較的均一な空隙率を有し、比較的高い表面平滑性を備えたチタン系多孔質体を得ることができるチタン系多孔質体の製造方法を提供する。
【解決手段】この発明のチタン系多孔質体の製造方法は、チタン系繊維1を網状部材21上に供給し、該網状部材21の振動のみにより、前記網状部材21上の当該チタン系繊維1を前記網状部材21から成形面11上に落下させて堆積させる原料堆積工程と、原料堆積工程で堆積させた前記チタン系繊維1を焼結させ、チタン系焼結体を得る原料焼結工程とを含み、原料堆積工程で前記網状部材21上に供給する前記チタン系繊維1の繊維太さTfに対する繊維長さLfの比であるアスペクト比が、10~70であり、原料堆積工程で前記網状部材21として、前記繊維長さLfに対する網目22の目開きの最長寸法Lmの長さの比が0.9~2.4である網状部材21を用いるというものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系多孔質体を製造する方法であって、
チタン系繊維を網状部材上に供給し、該網状部材の振動のみにより、前記網状部材上の当該チタン系繊維を前記網状部材から成形面上に落下させて堆積させる原料堆積工程と、
原料堆積工程で堆積させた前記チタン系繊維を焼結させ、チタン系焼結体を得る原料焼結工程とを含み、
原料堆積工程で前記網状部材上に供給する前記チタン系繊維の繊維太さに対する繊維長さの比であるアスペクト比が、10~70であり、
原料堆積工程で前記網状部材として、前記繊維長さに対する網目の目開きの最長寸法の長さの比が0.9~2.4である網状部材を用いる、チタン系多孔質体の製造方法。
【請求項2】
原料堆積工程で前記網状部材上に供給する前記チタン系繊維の前記繊維長さが、1.0mm~6.0mmの範囲内である、請求項1に記載のチタン系多孔質体の製造方法。
【請求項3】
前記チタン系多孔質体の空隙率が60%~95%である、請求項1又は2に記載のチタン系多孔質体の製造方法。
【請求項4】
原料焼結工程の後、前記チタン系焼結体の表面を酸化させる表面酸化工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のチタン系多孔質体の製造方法。
【請求項5】
前記チタン系多孔質体の厚みが0.1mm~5.0mmの範囲内である、請求項1~4のいずれか一項に記載のチタン系多孔質体の製造方法。
【請求項6】
少なくとも一方の表面の表面粗さRzが100μm以下であるチタン系多孔質体を製造する、請求項1~5のいずれか一項に記載のチタン系多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チタン系繊維からチタン系多孔質体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
純チタン製又はチタン合金製のチタン系多孔質体は、たとえば特許文献1又は2に記載された方法により製造されることがある。
【0003】
特許文献1には、「金属または無機材料の繊維、特に金属繊維を均一に解砕、分散し、型に充填すること」を目的として、「金属繊維を解砕、分散および充填し、シート状多孔質体を作製する方法において、篩上に上記金属繊維を供給し、この金属繊維に断続的に圧力を加えながら篩うことによって上記金属繊維を解砕、分散および充填することを特徴とするシート状多孔質体の製造方法」が提案されている。
【0004】
特許文献2では、「断面が多角形であり、前記多角形の最長の辺である長稜が200μm以下、最短の辺である短稜の長稜に対する比が0.5以下、全長が1~5mm、アスペクト比が20~200であるチタン繊維を圧縮し、得られた圧縮成形体を焼結することを特徴とするチタン焼結多孔体の製造方法」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-246966号公報
【特許文献2】特開2012-172179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チタン系多孔質体は、たとえば、水の電気分解のガス拡散層ないし電極や、照明器具等に使用する装飾具として用いられ得る。このような用途では、所要の通気性もしくは通液性又は美観等を実現するため、チタン系多孔質体の均一な空隙率及び、高い表面平滑性が求められる場合がある。
【0007】
特許文献1に記載された製造方法では、「金属繊維に断続的に圧力を加えながら篩う」こととしているので、その圧力の作用により、「金属繊維」であるチタン系繊維が折れ曲がって変形することがある。この場合、チタン系繊維の当該変形箇所で、焼結後に得られるチタン系多孔質体の空隙率が不均一になり、またチタン系多孔質体の表面に凹凸が生じて平滑性が損なわれる。よって、製造されるチタン系多孔質体の表面性状について、特許文献1に記載の製造方法は改善の余地があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の製造方法は、焼結前にチタン系繊維を圧縮することから、その際にチタン系繊維が部分的に押し潰され、チタン系多孔質体の空隙率にばらつきが生じることが懸念される。よって、製造されるチタン系多孔質体の空隙率の制御について、特許文献2に記載の製造方法は改善の余地があった。
【0009】
この発明の目的は、比較的均一な空隙率を有し、比較的高い表面平滑性を備えたチタン系多孔質体を得ることができるチタン系多孔質体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
チタン系多孔質体の空隙率を比較的均一にするとともに表面平滑性を高めるには、その製造時に、網状部材上に供給したチタン系繊維を加圧せずに該網状部材を振動させることにより、すなわち網状部材の振動のみにより、チタン系繊維を網状部材から成形面上に落下させて堆積させることが有効であると考えられる。但し、チタン系繊維は、特許文献1にも記載されているように凝集していることがあり、そのような凝集体では網状部材を通過し難い。これに対し、発明者は鋭意検討の結果、チタン系繊維の寸法形状と網状部材の網目の大きさとを調整すると、チタン系繊維を網状部材に向けて加圧しなくとも、チタン系繊維の凝集体が解砕されながら網状部材を通過して成形面上に良好に堆積されることを見出した。
【0011】
この発明のチタン系多孔質体の製造方法は、チタン系繊維を網状部材上に供給し、該網状部材の振動のみにより、前記網状部材上の当該チタン系繊維を前記網状部材から成形面上に落下させて堆積させる原料堆積工程と、原料堆積工程で堆積させた前記チタン系繊維を焼結させ、チタン系焼結体を得る原料焼結工程とを含み、原料堆積工程で前記網状部材上に供給する前記チタン系繊維の繊維太さに対する繊維長さの比であるアスペクト比が、10~70であり、原料堆積工程で前記網状部材として、前記繊維長さに対する網目の目開きの最長寸法の長さの比が0.9~2.4である網状部材を用いるというものである。
【0012】
原料堆積工程で前記網状部材上に供給する前記チタン系繊維の前記繊維長さは、1.0mm~6.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0013】
前記チタン系多孔質体の空隙率は60%~95%であることが好ましい。
【0014】
この発明のチタン系多孔質体の製造方法は、原料焼結工程の後、前記チタン系焼結体の表面を酸化させる表面酸化工程をさらに含むことが好ましい。
【0015】
前記チタン系多孔質体の厚みは0.1mm~5.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
この発明のチタン系多孔質体の製造方法では、少なくとも一方の表面の表面粗さRzが100μm以下であるチタン系多孔質体を製造できる場合がある。
【発明の効果】
【0017】
この発明のチタン系多孔質体の製造方法によれば、比較的均一な空隙率を有し、比較的高い表面平滑性を備えたチタン系多孔質体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】チタン系繊維が折れ曲がり繊維であるか否かの判断方法を示す模式図である。
【
図2】この発明の一の実施形態に係るチタン系多孔質体の製造方法における原料堆積工程を模式的に示す、鉛直方向に沿う断面図である。
【
図3】
図2の原料堆積工程で用いることができる網状部材の一例を示す部分拡大平面図である。
【
図4】他の例の網状部材の網目を示す平面図である。
【
図5】実施例で作製したチタン系多孔質体の空隙率の分布を評価する際の区画領域を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態に係るチタン系多孔質体の製造方法には、チタン系繊維を網状部材上に供給し、該網状部材の振動のみにより、前記網状部材上の当該チタン系繊維を前記網状部材から成形面上に落下させて堆積させる原料堆積工程と、原料堆積工程で堆積させた前記チタン系繊維を焼結させ、チタン系焼結体を得る原料焼結工程とが含まれる。
【0020】
ここで、原料堆積工程で網状部材上に供給するチタン系繊維は、繊維太さに対する繊維長さの比であるアスペクト比が10~70であるものとする。そして、原料堆積工程で用いる網状部材としては、前記繊維長さに対する前記網目の目開きの最長寸法の長さの比が0.9~2.4であるものとする。この場合、チタン系繊維の一部が凝集していたとしても、網状部材上のチタン系繊維をその網状部材に向けて加圧せずに網状部材を振動させるだけで、チタン系繊維が網状部材の網目を通過しやすくなる。それにより網状部材上のチタン系繊維をその網状部材に向けて加圧しなくとも、成形面上に多くのチタン系繊維が堆積するので、網状部材上で加圧されることに起因するチタン系繊維の折れ曲がり変形が抑制されて、チタン系繊維が成形面上に良好に堆積する。その結果として、空隙率がある程度均一で高い表面平滑性を有するチタン系多孔質体を製造することができる。
【0021】
(チタン系繊維)
チタン系繊維は、チタンを含有するものであり、たとえば純チタン製又はチタン合金製である。純チタン製又はチタン合金製のいずれであっても、チタン系多孔質体のチタン含有量は、75質量%以上である場合がある。
【0022】
チタン系繊維は、純チタン製の場合、JIS H4600(2012)の純チタン1~4種に相当する純度とすることができる。チタン系繊維のチタン含有量(純度)は、たとえば98質量%以上、典型的には99.0質量%~99.8質量%とする場合がある。
【0023】
チタン合金製のチタン系繊維の場合、チタン合金は、Tiと、Fe、Sn、Cr、Al、V、Mn、Zr、Mo、白金族(Pt、Pd、Ru等)、Ni等から選ばれる少なくとも1種の金属との合金である。具体例としては、Ti-6-4(Ti-6Al-4V)、Ti-5Al-2.5Sn、Ti-8-1-1(Ti-8Al-1Mo-1V)、Ti-6-2-4-2(Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo-0.1Si)、Ti-6-6-2(Ti-6Al-6V-2Sn-0.7Fe-0.7Cu)、Ti-6-2-4-6(Ti-6Al-2Sn-4Zr-6Mo)、SP700(Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo)、Ti-17(Ti-5Al-2Sn-2Zr-4Mo-4Cr)、β-CEZ(Ti-5Al-2Sn-4Zr-4Mo-2Cr-1Fe)、TIMETAL555、Ti-5553(Ti-5Al-5Mo-5V-3Cr-0.5Fe)、TIMETAL21S(Ti-15Mo-2.7Nb-3Al-0.2Si)、TIMETAL LCB(Ti-4.5Fe-6.8Mo-1.5Al)、10-2-3(Ti-10V-2Fe-3Al)、Beta C(Ti-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Cr)、Ti-8823(Ti-8Mo-8V-2Fe-3Al)、15-3(Ti-15V-3Cr-3Al-3Sn)、BetaIII(Ti-11.5Mo-6Zr-4.5Sn)、Ti-13V-11Cr-3Al等のチタン合金を挙げることができる。なお、上記の合金の具体例において、各金属元素の前に付記した数字は、当該金属元素の含有量(質量%)を表している。例えば、「Ti-6Al-4V」は、合金元素として6質量%のAlと4質量%のVとを含有するチタン合金を意味する。チタン合金製のチタン系繊維の場合、チタン系繊維のチタン含有量は、たとえば75質量%~97質量%、典型的には85質量%~97質量%とする場合がある。
【0024】
チタン系繊維は繊維状であり、より詳細には、繊維太さTfに対する繊維長さLfの比であるアスペクト比(Lf/Tf)が10~70であるものとする。チタン系繊維のアスペクト比(Lf/Tf)を10~70の範囲内とし、後述の原料堆積工程で、所定の目開きの網目を有する網状部材を使用すれば、チタン系繊維が網状部材を通過しやすくなり成形面上に良好に堆積する。このような観点から、チタン系繊維のアスペクト比(Lf/Tf)は、20~50であることが好ましい。なお、チタン系繊維のアスペクト比(Lf/Tf)が10未満となるとチタン系繊維が網状部材を過度に通過しやすくなり、場合によってはチタン系繊維のダマ(凝集)がほぐれる前に網状部材を通過してしまい、チタン系焼結体内における空隙率のばらつきが大きくなる。チタン系繊維のアスペクト比(Lf/Tf)が70を超えるとチタン系繊維が過度に長いために網状部材を通過しにくくなり、チタン系焼結体内における空隙率のばらつきが大きくなる。
ここでいうアスペクト比(Lf/Tf)は、走査電子顕微鏡(SEM)により各チタン系繊維の繊維太さ及び繊維長さを測定し、それらの繊維太さに対する繊維長さの比として算出される各チタン系繊維のアスペクト比の平均値を意味する。走査電子顕微鏡で、100本の各チタン系繊維について、チタン系繊維の輪郭線上の任意の二点間の最も長い直線距離を繊維長さとし、その繊維長さに直交する方向で輪郭線上の任意の二点間の最も長い直線距離を繊維太さとしてそれぞれ測定する。測定した各繊維の繊維長さと繊維太さから平均値を求め、該平均値をそれぞれチタン系繊維の長さ、チタン系繊維の太さの値とする。
【0025】
チタン系繊維の繊維長さLfは、好ましくは1.0mm~6.0mmの範囲内、より好ましくは1.5mm~4.0mmの範囲内とする。繊維長さLfがこのような範囲内であれば、後述する原料堆積工程にて使用する網状部材の網目の目開きとの関係で、比較的短時間のうちに、振動する網状部材上にてチタン系繊維の凝集が解消されつつチタン系繊維が網状部材を通過しやすくなる。また、その結果、チタン系多孔質体の空隙率が良好に均一になる。チタン系繊維のこの繊維長さLfは、上述したアスペクト比を求める際に測定される各チタン系繊維の繊維長さの平均値とする。
【0026】
上述したようなチタン系繊維は、たとえば、チタン含有塊ないし板等に対してコイル切削法又はびびり振動切削法等を行うことにより作製することができる。この場合、球状ではなく繊維状の粉末が得られやすく、これをチタン系繊維として良好に用いることができる。
【0027】
チタン系繊維は、折れ曲がり繊維の割合が、本数基準で7%以下であることが好ましい。折れ曲がり繊維の割合がこのように少ないと、チタン系多孔質体の表面から突出し得る繊維部分が減るので、チタン系多孔質体がさらに高い表面平滑性を有するものになる。ここで、チタン系繊維が折れ曲がり繊維であるか否かの判断は、次のようにして行う。光学顕微鏡でチタン系繊維を観察し、
図1(a)に示すように、チタン系繊維1の周囲を取り囲む最小包含円Cmin上に位置する二点の端点Pe1及びPe2を結ぶ線分をLS1とする。そして、端点Pe1及びPe2を結ぶ線分LS1に直交する垂線のうち、その線分LS1から、垂線方向の外側(線分LS1から離れた側)にあるチタン系繊維1の外輪郭線上の点までの距離が最も長くなる垂線の線分をLS2とする。端点Pe1及びPe2間の線分LS1の長さL1に対する、最も長い垂線の線分LS2の長さL2の比(L2/L1)が0.1以上であれば、当該チタン系繊維1は折れ曲がり繊維であると判断する。なお、
図1(b)に示すように途中で二股以上に分岐し、二点の端点Pe1及びPe2以外にさらに他の一点以上の端点Pe3があるチタン系繊維1a(つまり、三点以上の端点Pe1、Pe2及びPe3があるチタン系繊維1a)であっても、端点Pe1及びPe2が二点だけであるチタン系繊維1と同様に、最小包含円Cminを用いて比(L2/L1)を算出し、折れ曲がり繊維であるか否かの判断を行う。仮に三点以上の端点が最少包含円上に位置するチタン系繊維である場合、上記の判断を行わず、そのようなチタン系繊維は折れ曲がり繊維とみなすものとする。
【0028】
チタン系繊維に折れ曲がり繊維が含まれる場合、当該折れ曲がり繊維は、先述したアスペクト比(Lf/Tf)や繊維長さLfの測定に考慮しないものとする。チタン系繊維から折れ曲がり繊維を除外して残った残部及び別途加える補充部について、先に述べた方法によりアスペクト比(Lf/Tf)や繊維長さLfを求める。たとえばチタン系繊維から100本のサンプルを抽出し、そのなかに折れ曲がり繊維が含まれていた場合は、サンプルから当該折れ曲がり繊維を除外し、その除外した分の本数をさらに補充することにより、折れ曲がり繊維が含まれなくなったサンプルに対してアスペクト比(Lf/Tf)や繊維長さLfの測定を行うことができる。
【0029】
(原料堆積工程)
原料堆積工程では、上記のチタン系繊維1を、
図2に示すように、バインダー等を用いず乾式で成形面11上に堆積させる。このとき、たとえば
図3に示すような、チタン系繊維1が通過する網目22を有する網状部材21を用いる。より詳細には、空気などの気体中もしくは真空中にて、網状部材21上にチタン系繊維1を供給し、その状態で網状部材21を、たとえば
図2に矢印で示すように振動させることにより、チタン系繊維1を網状部材21の網目22から通過させ、チタン系繊維1を網状部材21から成形面11上に落下させて堆積させる。
【0030】
網状部材21の網目22の平面形状は特に問わず、多角形状又は、真円や楕円、長円を含む円形状等とすることができる。そしてここでは、該網目22の寸法に関し、平面視で網目22に内包されて網目22の図心Cmを通る最も長い線分Smaxの長さLmの、先述したチタン系繊維1の繊維長さLfに対する比(Lm/Lf)が、0.9~2.4になるように、網目22の寸法が調整された網状部材21を用いる。網目22における上記の最も長い線分の長さLmは、目開きの最長寸法Lmともいう。
【0031】
上記の比(Lm/Lf)を満たす寸法の網目22を有する網状部材21を用いることにより、網状部材21を振動させると、当該網状部材21上のチタン系繊維1が網状部材21の網目22を通過して成形面11上に落下しやすいので、成形面11上にチタン系繊維1を良好に堆積させることができる。この際、網状部材21上のチタン系繊維1を加圧する必要はない。
【0032】
チタン系繊維1を網状部材21から成形面上に落下させるに際しては、チタン系繊維1が供給された網状部材21を振動させるだけで十分である。このとき、網状部材21上のチタン系繊維1に対し、チタン系繊維1が網状部材21の網目22を通る方向へ圧力を意図的に作用させることは要しないので、チタン系繊維1の折れ曲がり変形の発生が抑制される。なお、網状部材21が平板状の外輪郭形状を有する場合、上述したチタン系繊維1が網目22を通る方向とは、その平板状の網状部材21に直交する方向に相当する。好ましくは、チタン系繊維1を網状部材21から落下させる際に、チタン系繊維1が網目22を通る方向以外の方向にもチタン系繊維1を加圧しないこととする。
【0033】
これにより、多くは折れ曲がり変形がほぼ生じておらず直線状に近いチタン系繊維1がより多く成形面11上に堆積するので、成形面11上でチタン系繊維1間の隙間の大きさが均一になる傾向がある。また、折れ曲がり変形が生じたチタン系繊維が、成形面11上の堆積表面から突出しにくくなる。その結果、後述する原料焼結工程で、空隙率が均一で表面平滑性が確保されたチタン系焼結体が得られる。
【0034】
チタン系繊維1の繊維長さLfに対する網目22の目開きの最長寸法Lmの比(Lm/Lf)が0.9未満である場合は、チタン系繊維1に対して網目22の大きさが小さすぎることにより、網目22をチタン系繊維1が通過しにくくなる。上記の比(Lm/Lf)が2.4を超える場合は、チタン系繊維1に対して網目22の大きさが大きすぎるので、網目22をチタン系繊維1が過度に通過しやすくなる。いずれの場合であっても、チタン系焼結体内で空隙率がばらつきやすくなってしまう。チタン系繊維1の繊維長さLfに対する網目22の目開きの最長寸法Lmの比(Lm/Lf)は、0.9~1.2であることが好ましい。
【0035】
図3に示すところでは、平面視で正方形状の網目22を有する網状部材21としている。但し、網状部材はこれに限らず、三角形、長方形等の他の四角形状又は、それらよりも角の多い多角形状、あるいは、真円、長円もしくは楕円等の円形状等の網目を有するものとすることができる。
【0036】
たとえば、
図4(a)に示す網目22aは正三角形状である。この網目22aでは、一つの頂点Vm及び図心Cmを通り当該三角形に内包される線分の長さが、目開きの最長寸法Lmになる。なお、いずれの頂点Vmから図心Cmを通るように引いた線分も同じ長さになり、それらの全てが最も長い線分Smaxであるとみなすことができる。
図4(b)には、平面視で等脚台形状をなす網目22bを示している。この網目22bでは、その等脚台形の底辺側の頂点Vmと図心Cmとを通る線分が最も長い線分Smaxになり、当該線分Smaxの長さが目開きの最長寸法Lmに相当する。
【0037】
図4(c)に示す真円形状の網目22cでは、その直径が最も長い線分Smaxになる。また、
図4(d)に示す楕円形状の網目22dでは、長軸が最も長い線分Smaxである。
【0038】
網状部材21は、チタン系繊維1を通過させる孔としての網目22が複数設けられたものであればよい。網状部材21は、金属板等に網目22を構成する多数の孔が形成されたもの(いわゆるパンチングメタル等)であってもよいが、
図3に示すような、多数本の線材23が格子状等に並んで配置されたことにより当該線材23間に上記の孔としての網目22が形成されたもののほうが好ましい。これは、パンチングメタルでは隣り合う孔間がある程度の距離で離れていることから、チタン系繊維1の落下に時間がかかる可能性があり、原料堆積工程の長期化のおそれがあるからである。なお網状部材21は、篩別に用いる篩としてもよい。
図2に示す例のように、網状部材21は、網部分の周囲が周壁部分24で囲まれたものとすることもできる。この場合、網状部材21上のチタン系繊維1の、網部分の周囲からの意図しない落下が周壁部分24で抑制される。網状部材21の外観形状は平板状でもよいし、その少なくとも一部に曲面を含む形状でもよい。曲面を含む場合、目開きの最長寸法は、平板状にしてから測定する。
【0039】
網状部材21の振動方向は、チタン系繊維1を堆積させる成形面11に実質的に平行な方向(水平方向等)とすることが多いが、成形面11に平行な方向に対して傾斜もしくは直交する方向でもよい。網状部材21の振動は、人手により行うことが可能であり、あるいは装置を用いて行ってもよい。網状部材21の網部分の下面と成形面11との間の距離である落下高さは、例えば2cm~50cmとすることができる。
【0040】
チタン系繊維1を成形面11上に堆積させるに当っては、成形面11上の所期した堆積領域の全域にチタン系繊維1が堆積するように、成形面11の上方側にて網状部材21を振動させつつ移動させることができる。成形面11の上方側での網状部材21の移動態様は適宜設定することができるが、たとえば、成形面11の平面視で、網状部材21を、上記の堆積領域の一方の側部と他方の側部との間で往復させつつ、堆積領域の一端部から他端部に向かって徐々に動かして蛇行させることができる。網状部材21が成形面11上の同じ堆積位置を複数回通るように、網状部材21を移動させてもよい。但し、成形面11上のチタン系繊維1の堆積厚みが所定の厚みになるようにすることが好適である。
【0041】
網状部材21から落下したチタン系繊維1を堆積させる成形面11は、たとえば
図2に示すように、実質的に平板状の成形型12上に設けられたものとすることができる。図示は省略するが、板状部材に、成形面を取り囲む側壁が一体に又は、別個の部材として着脱可能に設けられた成形型を用いることもできる。成形型12の材質は、たとえば、石英、炭素、窒化ホウ素、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等とすることができる。
【0042】
チタン系繊維1を堆積させるに先立って、成形面11の少なくともチタン系繊維1の堆積領域には、窒化ホウ素(BN)及び/又はホウ化チタン(TiB2)等を含む離型層をコーティングすることができる。これにより、原料焼結工程での焼結後の成形面11からのチタン系焼結体の剥離が容易になる。炭素製の成形型12では、窒化ホウ素(BN)を含む離型剤を用いることが好ましい。
【0043】
チタン系繊維1を網状部材21から落下させて成形面11上に堆積させるに当っては、成形面11の面積として72900cm2を基準面積としたとき、堆積に要する時間は、成形面11のその基準面積当たり、10分~25分、さらに15分~20分であることが好ましい。
【0044】
(原料焼結工程)
成形面上にチタン系繊維を堆積させた後は、堆積したチタン系繊維を加熱炉内に配置し、チタン系繊維を加熱して焼結させる原料焼結工程を行う。これにより、シート状のチタン系焼結体が得られる。なお、多くの場合では、成形型とともにチタン系繊維を加熱炉内に配置するが、成形型は加熱炉に入れないこともある。
【0045】
原料焼結工程では、堆積したチタン系繊維の全体を十分に焼結させるため、チタン系繊維を900℃~1100℃の温度に、1時間~3時間にわたって加熱することが好ましい。また、チタン系繊維を加熱する際には、たとえば10-2Pa~10-4Pa程度の真空等の減圧雰囲気または、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とすることが好適である。これにより、チタン系繊維の過剰な酸窒化を防ぐことができる。ここでは、窒素ガスは不活性ガスには該当しないものとする。
【0046】
成形面上でチタン系繊維を加熱してチタン系焼結体を得た場合は、チタン系焼結体を成形面から剥離させることがある。このとき、先述の離型剤は、チタン系焼結体の容易な剥離を可能にする。なお、成形面から剥離させたチタン系焼結体は、必要に応じてその外縁部分を切断して除去してもよい。また、チタン系焼結体に対してプレス加工又はロール圧延を行って厚みを調整することもある。プレス加工やロール圧延の圧下率は、たとえば60%以下、好ましくは10~50%、より好ましくは20~50%である。圧下率Rは、圧下前(プレス又は圧延前等)の厚みT1と、圧下後(プレス又は圧延後等)の厚みT2から、次式:R=100×(T1-T2)/T1より求める。プレス加工又はロール圧延の後、さらに加熱による焼結を行ってもよい。プレス加工又はロール圧延後の焼結は、上記の初めの焼結と同様の条件とすることができる。
【0047】
これにより得られたチタン系焼結体を、チタン系多孔質体とすることができる。あるいは、チタン系焼結体にさらに次に述べる表面酸化工程を行い、表面酸化工程を経た後のものをチタン系多孔質体とすることもできる。
【0048】
(表面酸化工程)
表面酸化工程では、公知の手法にて、所定の電解浴を用いた陽極酸化等により、チタン系焼結体に酸化処理を施すことができる。酸化処理で適切な電解条件を設定することにより、チタン系焼結体を覆う酸化被膜層厚を調整することができる。それにより、その酸化被膜層でチタン含有繊維が所定の色に着色され、所期した美観を呈するチタン系多孔質体が得られる。
【0049】
酸化処理は、これに限定されないが、たとえば、次に述べるようにして行うことができる。
まず、チタン系焼結体を脱脂処理および酸洗処理に供する。脱脂処理は酸化被膜層形成時の濡れ性を向上し、色むらを抑制するために行う。エタノールやアセトン、アルカリ性溶液を用いて脱脂処理を行うことができる。酸洗処理は表面粗さを均一にする、スマットを除去するために実施する。酸洗処理は1回でもよいし複数回行ってもよい。例えばフッ酸-硝酸混合液やフッ酸-過酸化水素系水溶液を用いて酸洗処理を行うことができる。チタンイオンをキレート化し安定化させることで、より均一な表面を得られることから、フッ酸-過酸化水素系水溶液を用いて酸洗処理を行うことが好ましい。
その後、酸化処理を実施することができる。酸化処理の手順の一例は以下の通りである。非導電性電解槽中(プラスチック製、ガラス製、塩化ビニル製等)に硫酸銅(II)水溶液を注入する。非導電性電解槽内部にステンレスまたはチタン製の陰極を挿入する。チタン系焼結体をクリップで挟み込み陽極とし、硫酸銅(II)水溶液に浸漬する。狙いの干渉色が発色する電圧に調整して通電する。電圧の変化によって発色を変化させることが可能である。酸化被膜層形成後は通電を停止し、非導電性電解槽からチタン系焼結体を取り出し、水洗する。水洗後、変色防止の目的で適宜表面塗装等をしてもよい。
【0050】
(チタン系多孔質体)
以上に述べたようにして製造されるチタン系多孔質体は、チタンを含有し、たとえば純チタン製又はチタン合金製であり、先述したチタン系繊維と実質的に同様の組成になることが多い。チタン合金製のチタン系多孔質体のチタン含有量は、75質量%以上である場合がある。また、純チタン製のチタン系多孔質体のチタン含有量は、98質量%以上である場合がある。
【0051】
チタン系多孔質体は、全体として外形(外側の輪郭)がシート状である。シート状のチタン系多孔質体の厚みは、たとえば0.1mm~5.0mm、典型的には0.2mm~2.0mmの範囲内である。チタン系多孔質体の厚みは、シックネスゲージ、たとえばミツトヨ社製ABSデジマチックシックネスゲージ547-321などを使用して測定できる。
【0052】
チタン系多孔質体の空隙率は、60%~95%、さらに70%~90%であることが好ましい。チタン系多孔質体の空隙率εは、チタン系多孔質体の幅、長さ、厚みから求めた体積および質量から算出した見かけ密度ρ’と、チタン系多孔質体を構成する金属の真密度ρ(例えば、純チタンの場合は4.51g/cm3、Ti-6Al-4Vの場合は4.43g/cm3)を用いて、下記式により算出する。
ε=(1-ρ’/ρ)×100
【0053】
チタン系多孔質体の少なくとも一方の表面の表面粗さRzは、好ましくは100μm以下、より好ましくは85μm以下である。これにより、より良好な表面平滑性が確保される。なお、チタン系多孔質体の少なくとも一方の表面の表面粗さRzは、たとえば50μm以上、典型的には60μm以上になることがある。表面粗さRzは、JIS B0601(2001)に規定される算術平均粗さを意味し、Mitutoyo製サーフテストSJ-210により測定する。
【0054】
また、チタン系多孔質体の導電率は、2.0×103S/cm以上3.0×103S/cm以下、さらに2.4×103S/cm以上2.7×103S/cm以下であることが好ましい。この導電率は、JIS K7194に準拠し、三菱化学アナリテック低抵抗率計MCP-T610により測定する。
【実施例0055】
この発明の製造方法によりチタン系多孔質体を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0056】
まず原料堆積時に網状部材上でチタン系繊維を加圧しなかった場合と加圧した場合の、堆積後のチタン系繊維の性状を比較するため、表1に示す参考例1及び参考例2のそれぞれについて、原料堆積試験を行った。
【0057】
参考例1では、チタン系繊維を網状部材としての篩上で加圧せずに、30gのチタン系繊維を10cm~20cmの高さから乾式で落下させ、チタン系繊維を所定の表面(堆積面)上に堆積させた。
参考例2では、篩上に配置したチタン系繊維に対し、その篩のメッシュと同程度の面積の平板を有する押圧器具を回転させつつ押し付ける加圧を行いながら、チタン系繊維を篩から堆積面上に乾式で落下させたことを除いて、参考例1と同様とした。
なお、参考例1及び2では、篩としては、平面視で外輪郭形状が円形状であり、網目形状が正方形状であるものを用いた。
【0058】
その結果、篩上に配置する前のチタン系繊維中の折れ曲がり繊維の割合は5.6%であったのに対し、参考例2では、表1に示すように、当該割合が42.9%と大幅に増加していた。一方、参考例1では、チタン系繊維中の折れ曲がり繊維の割合は変化せずに5.6%であった。なお、折れ曲がり繊維の割合は、先に述べた方法により算出した。
【0059】
【0060】
上記の結果より、チタン系繊維を篩から落下させる際に加圧すると、折れ曲がり繊維が増大することが解かった。そして、このような折れ曲がり繊維が含まれるチタン系繊維を加熱して焼結させると、最終的に製造されるチタン系多孔質体で折れ曲がり繊維が表面から突出しやすくなり、表面平滑性が損なわれると考えられる。それ故に、以下に述べる発明例及び比較例はいずれも、原料堆積工程でチタン系繊維を篩上で加圧せずに落下させることとした。
【0061】
次に、先述した原料堆積工程及び原料焼結工程を行い、平面形状がほぼ矩形状で厚みが0.3mmのシート状のチタン系多孔質体を作製した。チタン系繊維及び、原料堆積工程で用いた網状部材の条件を表2に示す。
【0062】
いずれの発明例1~5及び比較例1~4においても、チタン系繊維は、チタン含有量が99質量%である純チタン製のものとした。また原料堆積工程では、炭素製で平板状の成形型(セッター)の成形面を予め窒化ホウ素(BN)の粉末でコーティングし、そこに離型層を形成した。その後、成形面上の周囲に側壁部材を配置し、その上方側から篩を用いて30gのチタン系繊維を10cm~20cmの高さから乾式で落下させ、チタン系繊維を成形面上で側壁部材の内側の領域に堆積させた。成形面の面積は99225cm2であり、側壁部材の内側におけるチタン系繊維の堆積領域の面積は72900cm2とした。原料焼結工程では、成形面上のチタン系繊維を1000℃の温度に3時間にわたって加熱し、チタン系繊維を焼結させた。その後、圧下率40%でロール圧延を行い、上記の加熱と同様の条件で再度焼結を行った。これにより、チタン系多孔質体を得た。
【0063】
なお、比較例2及び3では、チタン系繊維を篩から落下させるのに30分以上の時間を要したことから、チタン系多孔質体の作製を中止し、その後の焼結等を行わなかった。それ故に、比較例2及び3では、チタン系多孔質体が得られなかった。
【0064】
(平滑性の評価)
発明例1~5並びに比較例1及び4で得られた各チタン系多孔質体について、先述した方法により表面粗さRzを測定した。シート状のチタン系多孔質体のシート両面の表面粗さRzのうち、無作為に選択した一方の表面の表面粗さRzを表2に示す。表面粗さRzは100μm以下を合格とした。さらに、表面粗さRzは85μm以下をより良好とした。なお、チタン系繊維を用いて製造したシート状のチタン系多孔質体では、成形面側に位置していた表面の表面粗さと、その裏側の表面の表面粗さがほぼ同程度になる傾向がある。そのため、ここでは、無作為に選択した一方の表面の表面粗さRzを確認することとした。
【0065】
(空隙率の均一性の評価)
図5に破線で示すように、平面視でチタン系多孔質体31を取り囲む仮想の四角形を設定し、その四角形を縦横にそれぞれ5等分して25個の区画領域Apを設定した。そして、それぞれの区画領域Apにおけるチタン系多孔質体31の各部分について、先述した方法により空隙率を求めて、そのばらつきを標準偏差σで算出した。その結果を表2に示す。空隙率のばらつきは2.0%以下を合格とした。
なお、全例について、各区画領域Apの空隙率は60~95%の範囲内であった。また、全例について空隙率の平均値は60~95%の範囲内であったので、作製したチタン系多孔質体の空隙率は60~95%の範囲内であった。
【0066】
(導電率の評価)
発明例1~5の各チタン系多孔質体について、先述した方法により導電率を測定した。その結果を表2に示す。いずれの発明例も良好な導電率を示した。
【0067】
【0068】
(表面酸化)
上記の焼結で得られたチタン系焼結体に対して、各種条件を変更した陽極酸化により酸化処理を施したところ、赤色や黄色、青色、緑色、紫色のチタン系多孔質体が得られた。このように様々な色彩のチタン系多孔質体を作製することができ、それぞれ所定の美観を呈していた。
【0069】
(考察)
発明例1~5のチタン系多孔質体は、高い表面平滑性を有するとともに、空隙率のばらつきが小さかった。
一方、比較例1のチタン系多孔質体は、空隙率のばらつきが大きくなった。また、比較例4のチタン系多孔質体は空隙率のばらつきが大きいだけでなく、表面粗さRzが大きく、表面平滑性に劣るものであった。これは、比較例1及び4では、篩の網目の最長寸法Lmと繊維長さLfの比(Lm/Lf)が大きすぎたことによるものと考えられる。なお、先述したように、チタン系繊維のアスペクト比が大きすぎた比較例2及び、篩の網目の最長寸法Lmと繊維長さLfの比(Lm/Lf)が小さかった比較例3では、篩からチタン系繊維が極端に落下しにくく、チタン系多孔質体を作製できなかった。
【0070】
以上より、この発明のチタン系多孔質体の製造方法によれば、比較的均一な空隙率を有し、比較的高い表面平滑性を備えたチタン系多孔質体が得られることが解かった。