(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122770
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】歩行者用エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/36 20110101AFI20220816BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20220816BHJP
【FI】
B60R21/36 320
B60R21/36 352
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020233
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054CC10
3D054CC11
3D054DD14
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】カウルカバー部により、歩行者を安定して保護可能な歩行者用エアバッグを提供すること
【解決手段】膨張完了時に、車両のフードパネル9の後端9aからカウルにかけての領域の上面側を左右の略全域にわたって覆うカウルカバー部26を、備える構成とされて、カウルカバー部の内部に、歩行者側壁部24bと車体側壁部24aとの離隔距離を規制するテザー部40が、配設される。テザー部が、歩行者側壁部と車体側壁部とを連結するようにして膨張完了時に前後方向に略沿うように配設される縦テザー41と、縦テザーにおける上下の略中間部位において縦テザー間を連結して隣接する縦テザーの離隔を規制するように配設される横テザー43と、を、備えている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張完了時に、車両のフードパネルの後端からカウルにかけての領域の上面側を左右の略全域にわたって覆うカウルカバー部を、備える構成とされて、
前記カウルカバー部が、膨張完了時にボディ側に配置される車体側壁部と、該車体側壁部と対向して配置される歩行者側壁部と、を有するとともに、内部に、前記歩行者側壁部と前記車体側壁部との離隔距離を規制するテザー部を、配設させる構成の歩行者用エアバッグであって、
前記テザー部が、可撓性を有したシート体からなる帯状体として、前記歩行者側壁部と前記車体側壁部とを連結するようにして、膨張完了時に前後方向に略沿うように配設されるとともに、左右方向側で少なくとも4個併設される縦テザーと、
可撓性を有したシート体から形成されるとともに、該縦テザーにおける上下の略中間部位において前記縦テザー間を連結して、隣接する前記縦テザーの離隔を規制するように配設される横テザーと、
を、備えていることを特徴とする歩行者用エアバッグ。
【請求項2】
前記横テザーが、前後方向側の幅寸法を、連結される前記縦テザーの前後方向側の幅寸法と略同一として、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者用エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される歩行者用エアバッグ装置に使用されて、膨張完了時に、車両のフードパネルの後端からカウルにかけての領域の上面側を左右の略全域にわたって覆うカウルカバー部を、備える構成の歩行者用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用エアバッグとしては、膨張完了時に、フードパネルの後端からカウルにかけての領域の上面側を覆うように配置されるカウルカバー部の内部に、厚さ規制用のテザーを配設させている構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。具体的には、従来の歩行者用エアバッグでは、テザーは、エアバッグの膨張完了時に、カウルカバー部の長手方向に略沿うように、左右方向に略沿って配置される帯状として、歩行者側壁部と車体側壁部とを連結し、膨張完了時の歩行者側壁部と車体側壁部との離隔距離を規制する構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の歩行者用エアバッグでは、内部に、歩行者側壁部と車体側壁部とを連結するテザーを配設させることにより、カウルカバー部を所定の厚さ寸法を確保しつつ広いエリアを覆うように膨張させることができるものの、カウルカバー部に対して、歩行者が強い押圧力で下向きに進入する場合に、歩行者を安定して受け止めるためには、高い内圧や大容積が必要であり、装置自体が大型化しやすく、内圧を高めず、かつ、容積の増大を抑えて、簡便な構成で安定して歩行者を保護する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成のカウルカバー部により、歩行者を安定して保護可能な歩行者用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行者用エアバッグは、膨張完了時に、車両のフードパネルの後端からカウルにかけての領域の上面側を左右の略全域にわたって覆うカウルカバー部を、備える構成とされて、
カウルカバー部が、膨張完了時にボディ側に配置される車体側壁部と、車体側壁部と対向して配置される歩行者側壁部と、を有するとともに、内部に、歩行者側壁部と車体側壁部との離隔距離を規制するテザー部を、配設させる構成の歩行者用エアバッグであって、
テザー部が、可撓性を有したシート体からなる帯状体として、歩行者側壁部と車体側壁部とを連結するようにして、膨張完了時に前後方向に略沿うように配設されるとともに、左右方向側で少なくとも4個併設される縦テザーと、
可撓性を有したシート体から形成されるとともに、縦テザーにおける上下の略中間部位において縦テザー間を連結して、隣接する縦テザーの離隔を規制するように配設される横テザーと、
を、備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の歩行者用エアバッグでは、膨張完了時のカウルカバー部に対して、上方から進入してくる歩行者が、縦テザー間の領域に接触すると、歩行者は、歩行者側壁部を車体側壁部に接近させるように下方移動し、その後、歩行者側壁部の下方となる上下の略中間部位において、縦テザー間を連結している横テザーを、下方に向かって押圧するような態様となる。このとき、歩行者の下方移動に伴って、横テザーは、左右両縁側を相互に接近させるように変形することとなり、この変形に伴って、歩行者側壁部を介して変形している横テザー(変形横テザー)の左方と右方とに隣接してる横テザー(隣接横テザー)も、変形横テザー側に引っ張られることとなる。しかしながら、この隣接横テザーは、別の縦テザーに、変形横テザーから離隔した側の端部を連結されていることから、この縦テザーにより、変形横テザー側に大きく引っ張られることを規制され、変形横テザーも、さらなる変形を抑制されることとなる。そのため、歩行者が、接触している横テザー(変形横テザー)をさらに下方に押し下げるような、さらなる下方への移動を規制されることとなり、歩行者が強い押圧力で下向きに進入することとなっても、変形横テザーの抵抗による反力を確保できる。その結果、歩行者側壁部と車体側壁部とを連結する縦テザー間に、縦テザー相互を連結させる横テザーを配設させることにより、容積を増大させることなく、また、簡便な構成として、拘束性能を向上させたカウルカバー部により、歩行者を円滑に受け止めることができる。
【0008】
したがって、本発明の歩行者用エアバッグでは、簡便な構成のカウルカバー部により、歩行者を安定して保護することができる。
【0009】
また、本発明の歩行者用エアバッグにおいて、横テザーの前後方向側の幅寸法を、連結される縦テザーの前後方向側の幅寸法と略同一として、構成すれば、横テザーの幅寸法に対応して縦テザーの全長にわたる前後に広い範囲で、横テザーによる反力を確保できることから、縦テザーの配設される広い範囲で、歩行者を安定して保護することが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグを使用した歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
【
図2】実施形態のエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【
図3】実施形態のエアバッグを平らに展開した状態の底面図である。
【
図4】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の部分拡大断面であり、
図2のIV-IV部位を示す。
【
図5】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の部分拡大断面であり、
図2のV-V部位を示す。
【
図6】実施形態のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
【
図7】実施形態のエアバッグを使用した歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す車両の概略部分拡大斜視図である。
【
図8】実施形態のエアバッグを使用した歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略縦断面図である。
【
図9】実施形態のエアバッグを使用した歩行者用エアバッグ装置において、インフレーター付近の部位の概略拡大縦断面図である。
【
図10】実施形態のエアバッグを使用した歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了時に、カウルカバー部によって歩行者を受け止める状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の歩行者用エアバッグ(以下「エアバッグ」と省略する)は、
図1,8,9に示すような歩行者用エアバッグ装置Mに使用されている。歩行者用エアバッグ装置Mは、フードパネル9の後端9a付近における下方側のエンジンルーム側(カウル6)に搭載されて、エアバッグ23と、エアバッグ23に膨張用ガスを供給するインフレーター15と、折り畳んだエアバッグ23を収納する収納部位としてのケース10と、を備えている。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて、説明する。
【0012】
ケース10は、金属製(板金製)として、車両Vのボディ1側のフードリッジリインホースから延びるフランジ等から構成される取付部2に対し、インフレーター15の取付ブラケット18のボルト19とナット20とを利用して、固定されている(
図8,9参照)。ケース10は、上方に、膨張時のエアバッグ23を突出させるための突出用開口10aを有した略直方体の箱形状とされるもので、車両Vの左右方向に沿って延びた長方形板状の底壁部11と、底壁部11の外周縁から上方に延びる略四角筒形状の周壁部12と、を備えている。なお、ケース10は、フロントウィンドシールド4の下部4a側の下方から前方に延びるカウル6の部位に、搭載されている。カウル6は、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル6aと、カウルパネル6aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ6bと、から構成されている。ケース10は、カウル6の前側であって、カウルパネル6aとカウルルーバ6bとの間に、配設されている。また、カウル6におけるケース10の後側の領域には、
図1に示すように、ワイパ7が、配設されている。ワイパ7は、カウルルーバ6bから上方に突出するように、配設されている(
図8参照)。
【0013】
インフレーター15は、
図1,8,9に示すように、軸方向を車両の左右方向に沿わせるように配置させた円柱状として、先端側に、膨張用ガスを吐出するガス吐出部16を配設させて構成されている。インフレーター15は、実施形態の場合、複数(実施形態の場合3個)の取付ブラケット18に保持され、インナチューブに周囲を包まれた状態でエアバッグ23内に挿入され、取付ブラケット18のボルト19を利用して、ケース10の底壁部11に固定されている(
図3,9参照)。上述したように、取付ブラケット18のボルト19は、底壁部11を貫通して、車両Vのボディ1側の取付部2にナット20止めされて、インフレーター15とともに、ケース10を取付部2に固定している(
図9参照)。また、このインフレーター15は、エアバッグ23内に挿入された状態とされているから、この取付ブラケット18の取付部2への取付時に、エアバッグ23も、ケース10の底壁部11に取付固定されることとなる。
【0014】
なお、実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ3には、歩行者との衝突を検知可能なセンサ3aが、配設されており(
図7参照)、センサ3aからの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ3aからの信号に基づいて車両Vの歩行者Pとの衝突を検知した際に、エアバッグ装置Mのインフレーター15を作動させるように構成されている。
【0015】
エアバッグ23は、
図2~5に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体24と、バッグ本体24の膨張完了時の厚さを規制するテザー部40と、を備えている。
【0016】
バッグ本体24は、膨張完了時の外形形状を、正面側から見て、左右に幅広の略U字形状とされるもので、フロントウィンドシールド4の下部4aに略沿うように左右方向に略沿って配置されるカウルカバー部26と、カウルカバー部26の両端からそれぞれ後方へ延びて左右のフロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側を覆うピラーカバー部36L,36Rと、を備えて構成されている。また、バッグ本体24は、膨張完了時にボディ1側に配置される車体側壁部24aと、車体側壁部24aと対向して配置される歩行者側壁部24bと、を有し、車体側壁部24aと歩行者側壁部24bとの外周縁相互を全周にわたって結合(縫着)させることにより、袋状とされている。
【0017】
カウルカバー部26は、膨張完了時に、フードパネル9の後端9aからカウル6にかけての領域の上面側を覆うもので、詳細には、実施形態の場合、膨張完了時に、フードパネル9の後端9a側の部位から、カウル6を経て、フロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての上面側(前面側)を、車幅方向(左右方向)の略全域にわたって、ワイパ7も含めて覆うように構成されている(
図1の二点鎖線及び
図7,8参照)。また、実施形態のバッグ本体24では、車体側壁部24aにおいて、カウルカバー部26の左右の中央であって、前後の中央よりよりも後側となる位置に、インフレーター15を内部に挿入させるための挿入用開口部30が、形成されている(
図3,4参照)。挿入用開口部30は、インナチューブ50に外周側を包まれた状態のインフレーター15を、バッグ本体24内に挿入させるための挿入用スリット31と、取付ブラケット18のボルト19を挿通させるための挿通孔32と、挿入用スリット31を外周側から塞ぐ蓋パネル33と、を備えている。挿入用スリット31は、左右方向に略沿って形成され、挿通孔32は、挿入用スリット31よりも前側の領域に形成されている(
図3,6参照)。蓋パネル33は、挿入用スリット31の外表面側を覆うもので、後縁側を、挿入用スリット31の後方側の車体側壁部24aに結合させ、前端側に、取付ブラケット18のボルト19を突出させるための取付孔34を、挿通孔32に対応して、配設させている(
図3,6参照)。
【0018】
バッグ本体24内に配設されるテザー部40は、車体側壁部24aと歩行者側壁部24bとの離隔距離を規制して、バッグ本体24の膨張完了時の厚さを規制するもので、カウルカバー部26の内部に、配設されている。具体的には、テザー部40は、カウルカバー部26において、挿入用開口部30の前側(インフレーター15の前側)であって、膨張完了時にフードパネル9の後端9aの上面側を覆うように配置される前側領域26a内に、左右の縁を除いた広い範囲に配設されている。テザー部40は、可撓性を有したシート体から構成されるもので、縦テザー41と、横テザー43と、を備えている。
【0019】
縦テザー41は、可撓性を有したシート体からなる帯状体として、歩行者側壁部24bと車体側壁部24aとを連結するようにして、長手方向を前後方向に略沿わせるように、エアバッグ23の膨張完了時に前後方向に略沿って配設される。実施形態の場合、縦テザー41は、左右方向側で7個並設されるもので、上下方向側の幅寸法を、略同一とし、前後方向側の幅寸法を、左右両端側(ピラーカバー部36L,36R側)に配置される2つを僅かに大きく設定して、残りの5つを略同一とするように、構成されている。そして、各縦テザー41は、前端41a側の位置を左右で略一致させ、相互の離隔距離を略等間隔として、カウルカバー部26の前側領域26aを、左右両縁側を除いて略等間隔で区切るように、配設されている。詳細には、左右両端側に配置される縦テザー41L,41Rは、後端41bを、蓋パネル33の前端と左右方向側で略一致させるように構成され、縦テザー41L,41R間に配置される中央側の5つの縦テザー41Cは、後端41bを蓋パネル33の前側に位置させるように構成されている。実施形態の場合、各縦テザー41は、2枚のテザー用基布57,57の対応する縁部相互を結合させることにより、構成されている(
図4~6参照)。
【0020】
横テザー43は、隣接する縦テザー41の離隔を規制するように配設されるもので、実施形態の場合、可撓性を有したシート体からなる帯状体として、各縦テザー41間を連結するように6箇所に配設されている。各横テザー43は、それぞれ、縦テザー41における上下の中間部位(実施形態の場合、上下の略中央)に、配設されている。実施形態の場合、各横テザー43は、前後方向側の幅寸法を、中央側の縦テザー41Cの前後方向側の幅寸法を略同一として、縦テザー41の前後の略全域にわたって配設されている。また、詳細には、各横テザー43は、縦テザー41に対して略直交するように、左右方向に略沿って配置されるとともに、上下の位置を、一致させるように、配置されている。横テザー43は、左右方向側の幅寸法を、エアバッグ23の膨張完了時に、上下方向に略沿って配置される縦テザー41,41間の離隔距離と同等として、縦テザー41間で緩まず、張った状態で配置される構成である(
図4参照)。実施形態の場合、横テザー43は、左右方向側を前後方向側よりもわずかに幅広とした略長方形状とされている(
図6参照)。実施形態の場合、各横テザー43は、左縁側と右縁側とを、それぞれ、縦テザー41を構成するテザー用基布57の縁部相互の結合時に、共縫いされて、縦テザー41間を連結する構成とされている(
図4参照)。
【0021】
インフレーター15の外周側を覆うインナチューブ50は、
図3の二点鎖線に示すように、取付ブラケット18を取付済みのインフレーター15を挿入させる挿入筒部50cと、ガス吐出部16の配置部位から両側に延びて、先端側に、膨張用ガスを流出させる流出口50a,50bと、を備えた略三又状の筒形状として構成されている。挿入筒部50cには、各取付ブラケット18のボルト19を貫通させる取付孔50dが、形成されている。インナチューブ50は、
図6に示すようなチューブ用基材58から構成されている。
【0022】
実施形態のエアバッグ23は、
図6に示すように、バッグ本体24において車体側壁部24aを構成する車体側基布55及び歩行者側壁部24bを構成する歩行者側基布56と、縦テザー41を構成するテザー用基布57と、横テザー43と、インナチューブ50を構成するチューブ用基材58と、から構成されている。これらの基布(基材)は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布を、所定形状に裁断して、形成されている。
【0023】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をすると、まず、エアバッグ23を、ケース10内に収納可能に折り畳み、取付ブラケット18を組付済みのインフレーター15を、インナチューブ50に挿入させた状態で、挿入用スリット31を利用して、エアバッグ23内に挿入する。そして、インナチューブ50の取付孔50dから突出している各取付ブラケット18のボルト19を、バッグ本体24の挿通孔32から突出させ、次いで、蓋パネル33を、挿入用スリット31を覆うように閉じて、取付孔34にボルト19を挿通させる。その後、エアバッグ23とインフレーター15とをケース10に収納させ、車両Vの所定位置にケース10を配置させて、ケース10から突出しているボルト19を、取付部2にナット20止めし、インフレーター15を、図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0024】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ3に配置されるセンサ3aからの作動信号に基づいて、車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター15が作動されて、エアバッグ23が、内部に膨張用ガスを流入させて、ケース10の突出用開口10aから上方に向かって突出しつつ前後左右に展開膨張することとなる。そして、エアバッグ23は、
図1の二点鎖線及び
図7,8に示すように、フードパネル9の後端9aからカウル6の上面にかけてと、フロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側と、を覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0025】
そして、実施形態のエアバッグ23では、膨張完了時のカウルカバー部26の前側領域26aに対して、上方から進入してくる歩行者Pが、
図10のAに示すように、歩行者側壁部24bにおける縦テザー41,41間の領域に接触すると、歩行者Pは、歩行者側壁部24bを車体側壁部24aに接近させるように下方移動し、その後、歩行者側壁部24bの下方となる上下の略中間部位において、縦テザー41,41間を連結している横テザー43を、下方に向かって押圧するような態様となる。このとき、歩行者Pの下方移動に伴って、横テザー43は、左右両縁側を相互に接近させるように変形することとなり、この変形に伴って、歩行者側壁部24bを介して変形している横テザー43(変形横テザー43A)の左方と右方とに隣接してる横テザー43(隣接横テザー43B,43B)も、変形横テザー43A側に引っ張られることとなる(
図10のB参照)。しかしながら、隣接横テザー43Bは、別の縦テザー41Aに、変形横テザー43Aから離隔した側の端部43aを連結されていることから、この縦テザー41Aにより、変形横テザー43A側に大きく引っ張られることを規制され、変形横テザー43Aも、さらなる変形を抑制されることとなる。そのため、歩行者Pが、接触している横テザー43(変形横テザー43A)をさらに下方に押し下げるような、さらなる下方への移動を規制されることとなり、歩行者Pが強い押圧力で下向きに進入することとなっても、変形横テザー43Aの抵抗による反力を確保できてる。その結果、歩行者側壁部24bと車体側壁部24aとを連結する縦テザー41間に、縦テザー41相互を連結させる横テザー43を配設させることにより、容積を増大させることなく、また、簡便な構成として、拘束性能を向上させたカウルカバー部26(前側領域26a)により歩行者Pを円滑に受け止めることができる。
【0026】
したがって、実施形態のエアバッグでは、簡便な構成のカウルカバー部26により、歩行者Pを安定して保護することができる。
【0027】
なお、本発明の歩行者用エアバッグでは、少なくとも4個並設される縦テザーを並設させる構成として、この4つの縦テザーのうち、中央側の2つの縦テザーに囲まれたエリア(歩行者側壁部)に歩行者が接触した場合に、上述した作用を奏するものである。実施形態のエアバッグ23では、中央側の5つの縦テザー41Cによって囲まれる4つの膨張領域45(
図2参照)に歩行者Pが接触した場合に、歩行者Pを安定して保護することができる。
【0028】
また、実施形態のエアバッグ23では、横テザー43は、前後方向側の幅寸法を、連結される縦テザー41の前後方向側の幅寸法と略同一として構成されていることから、横テザー43の幅寸法に対応して縦テザー41の全長にわたる前後に広い範囲で、横テザー43による反力を確保できて、縦テザー41の配設される広い範囲で、歩行者Pを安定して保護することができる。なお、このような点を考慮しなければ、横テザーを、縦テザーの前後の一部に配置させる構成としてもよい。
【0029】
なお、実施形態のエアバッグ23では、テザー部40を、前後方向に沿った帯状の縦テザー41を、左右方向側で複数個(7個)並設させ、横テザー43を、それぞれ、上下の略中央となる位置において、各縦テザー41間を連結するように、配置させる構成としているが、テザー部の構成は、実施形態に限定されるものではない。例えば、テザー部を、歩行者側壁部若しくは車体側壁部に略沿うように、前後左右に広いシート状の横テザーと、この横テザーと歩行者側壁部若しくは車体側壁部とを連結させるように複数個配置される縦テザーと、を備える構成としてもよい。また、横テザーは、上下方向側での位置を一致させて、全て、縦テザーの上下の略中央を連結させるように配置されなくともよく、上下方向側で段差を設けるようにして、それぞれ、縦テザー間を連結するように配置させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
6…カウル、9…フードパネル、9a…後端、23…エアバッグ(歩行者用エアバッグ)、24a…車体側壁部、24b…歩行者側壁部、26…カウルカバー部、40…テザー部、41…縦テザー、43…横テザー、P…歩行者、V…車両、M…歩行者用エアバッグ装置。