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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122771
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 99/00 20090101AFI20220816BHJP
【FI】
A62B99/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020234
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184KA09
2E184LB05
2E184MA01
2E184MA05
(57)【要約】
【課題】エアバッグが適切な装着位置に配置されて的確に保護対象部位を保護できる着用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】保護対象者の転倒時に、膨張したエアバッグの保護膨張部を保護対象者の保護対象部位に配置可能に、保護対象者に装着されて使用される着用エアバッグ装置10である。装置10は、エアバッグ40と、エアバッグに膨張用ガスを供給するガス発生器30と、保護対象者の転倒を検知可能な転倒検知センサを有し、転倒検知センサからの保護対象者の転倒時の信号を入力して、ガス発生器を作動させるように制御する制御装置50と、エアバッグ、ガス発生器、及び、制御装置を保持し、かつ、保護対象者に装着可能な装着具11と、を備える。また、装置10は、膨張完了時のエアバッグの保護膨張部が保護対象部位を保護可能に、保護対象者に対し、膨張前のエアバッグ40を適正位置に装着させるための適正装着手段54、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象者の転倒時に、膨張したエアバッグの保護膨張部を保護対象者の保護対象部位に配置可能に、保護対象者に装着されて使用される着用エアバッグ装置であり、
前記エアバッグと、作動時に前記エアバッグに膨張用ガスを供給するガス発生器と、保護対象者の転倒を検知可能な転倒検知センサを有し、該転倒検知センサからの保護対象者の転倒時の信号を入力して、前記ガス発生器を作動させるように制御する制御装置と、前記エアバッグ、前記ガス発生器、及び、前記制御装置を保持し、かつ、保護対象者に装着可能な装着具と、を備えるとともに、
膨張完了時の前記エアバッグの前記保護膨張部が保護対象部位を保護可能に、保護対象者に対し、膨張前の前記エアバッグを適正位置に装着させるための適正装着手段、を備えて構成されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記適正装着手段が、
前記装着具を利用して装着した後における膨張前の前記エアバッグの装着位置が適正か非適正かを判定する判定手段と、
前記判定手段による前記エアバッグの装着位置の判定が非適正の場合に、作動され、保護対象者に対して、非適正を報知する報知手段と、
を備え、
前記判定手段が、
保護対象者に対して、予め、前記装着具を利用して、前記エアバッグを適正位置に配置させた際の前記転倒検知センサの非転倒状態の信号値を基準値として、記憶する記憶部と、
前記装着具を利用して装着した後の通常使用時における前記保護対象者の非転倒状態での動作初期時、前記転倒検知センサの初期信号値が、前記基準値とずれて、該ずれの値が、膨張完了時の前記エアバッグの前記保護膨張部が保護対象部位を保護できない不適正装着位置としている状態の値であれば、非適正と判定可能な判定部と、
を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記適正装着手段の前記判定手段と前記報知手段とが、前記装着具における前記ガス発生器の保持位置近傍に、配設されていることを特徴とする請求項2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記装着具が、
保護対象者の腰部に巻き付け、両端側に設けられた結合部を相互に結合させて、腰部に取り付け可能な腰ベルト部と、
該腰ベルト部から上方に延びて、保護対象者の左右の肩部にそれぞれ掛けて、前記腰ベルト部の肩部からの高さを調整可能とする一対の肩ベルトを有してなる吊りベルト部と、
を備え、
前記エアバッグが、膨張完了時に、保護対象者の左右の大腿骨転子部を保護対象部位として膨張する前記保護膨張部を有して、前記腰ベルト部に保持される構成として、
前記適正装着手段が、前記装着具における前記腰ベルト部の高さを調整可能な前記吊りベルト部と、該吊りベルト部により高さ調整された腰ベルト部と、により、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象者に装着させて、保護対象者の転倒時に、膨張させたエアバッグの膨張部位により、保護対象者の保護対象部位を保護する着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用エアバッグ装置としては、着用した保護対象者(例えば、高齢者)の転倒時、加速度センサ等の転倒検知センサにより、転倒を検知して、ガス発生器から吐出した膨張用ガスにより膨張した所定位置の各エアバッグが、それぞれ、保護対象者の保護対象部位である臀部や腰部、あるいは、頭部やその左右の側部、を覆うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ガス発生器からの膨張用ガスを流入させて1つのエアバッグを膨張させて、膨張したエアバッグが、保護対象者の保護対象部位としての腰部の周囲を囲むように、覆うものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/090317号公報
【特許文献2】国際公開第2019/207474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの着用エアバッグ装置では、エアバッグを保持した装着具を、保護対象者に装着させて、エアバッグを保護対象者の所定の装着位置に適切に配置させていなければ、エアバッグの膨張時、的確に、エアバッグの膨張部位である保護膨張部が保護対象部位を覆って保護できなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグが適切な装着位置に配置されて的確に保護対象部位を保護できる着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る着用エアバッグ装置では、保護対象者の転倒時に、膨張したエアバッグの保護膨張部を保護対象者の保護対象部位に配置可能に、保護対象者に装着されて使用される着用エアバッグ装置であり、
前記エアバッグと、作動時に前記エアバッグに膨張用ガスを供給するガス発生器と、保護対象者の転倒を検知可能な転倒検知センサを有し、該転倒検知センサからの保護対象者の転倒時の信号を入力して、前記ガス発生器を作動させるように制御する制御装置と、前記エアバッグ、前記ガス発生器、及び、前記制御装置を保持し、かつ、保護対象者に装着可能な装着具と、を備えるとともに、
膨張完了時の前記エアバッグの前記保護膨張部が保護対象部位を保護可能に、保護対象者に対し、膨張前の前記エアバッグを適正位置に装着させるための適正装着手段、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る着用エアバッグ装置では、装着具を利用して保護対象者に装着する際、適正装着手段により、膨張前のエアバッグを適正位置に装着させることができることから、作動時、ガス発生器から供給されて膨張するエアバッグは、的確に、保護膨張部を、保護対象者の保護対象部位を保護できる位置に、配置させることができる。
【0008】
したがって、本発明に係る着用エアバッグ装置では、エアバッグが適切な装着位置に配置されて的確に保護対象部位を保護できる。
【0009】
そして、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記適正装着手段が、
前記装着具を利用して装着した後における膨張前の前記エアバッグの装着位置が適正か非適正かを判定する判定手段と、
前記判定手段による前記エアバッグの装着位置の判定が非適正の場合に、作動され、保護対象者に対して、非適正を報知する報知手段と、
を備え、
前記判定手段が、
保護対象者に対して、予め、前記装着具を利用して、前記エアバッグを適正位置に配置させた際の前記転倒検知センサの非転倒状態の信号値を基準値として、記憶する記憶部と、
前記装着具を利用して装着した後の通常使用時における前記保護対象者の非転倒状態での動作初期時、前記転倒検知センサの初期信号値が、前記基準値とずれて、該ずれの値が、膨張完了時の前記エアバッグの前記保護膨張部が保護対象部位を保護できない不適正装着位置としている状態の値であれば、非適正と判定可能な判定部と、
を備えて構成されていてもよい。
【0010】
このような構成では、通常使用時の前に、保護対象者に対し、装着具を利用して、適正位置に、着用エアバッグ装置を装着させ、その装着状態で、保護対象者が、転倒状態でない、例えば、通常歩行を行った際の転倒検知センサからの信号値を基準値として、予め、適正装着手段の判定手段の記憶部に、その基準値を記憶させておく。その後、通常使用時、装着具を利用して保護対象者に着用エアバッグ装置を装着させ、その装着状態で、保護対象者が、歩行等の通常動作を行う際の動作初期時、転倒検知センサの初期信号値が、適正装着手段の判定手段における判定部に入力される。その際、通常使用のために装着した着用エアバッグ装置の装着位置が、膨張完了時のエアバッグの保護膨張部が保護対象部位を保護できない不適正装着位置としている状態であれば、転倒検知センサの初期信号値が、基準値とずれることから、そのずれにより、判定部が、非適正と判定し、報知手段が作動されて、保護対象者に、着用エアバッグ装置が不適正位置に装着されていることを報知する。そして、保護対象者は、着用エアバッグ装置を装着し直して、再度、歩行等の通常動作を行い、その際、報知手段が作動されなければ、着用エアバッグ装置の適正装着状態を確認できて、その後、通常動作を続行すればよい。勿論、通常使用のために装着した着用エアバッグ装置の装着位置が、膨張完了時のエアバッグの保護膨張部が保護対象部位を保護できる適正装着位置としていれば、転倒検知センサの初期信号値が、基準値と大きくずれないことから、報知手段が作動されず、以後、保護対象者は、通常動作を続行すればよい。そのため、上記のような構成では、保護対象者は、報知手段により、エアバッグの装着位置が適正位置か否かを確認できて、正しい装着位置に装着し直すことができることから、その後、着用エアバッグ装置のガス発生器が作動して、エアバッグが膨張すれば、膨張したエアバッグの保護膨張部が、的確に、保護対象者の保護対象部位を、保護することができる。
【0011】
上記の場合、前記適正装着手段の前記判定手段と前記報知手段とは、前記装着具における前記ガス発生器の保持位置近傍に、配設されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、適正装着手段の主要な構成部位の判定手段と報知手段とが、剛性を有したガス発生器の近傍に配設されていれば、装着具を利用して、着用エアバッグ装置を保護対象者に装着させた際、保護対象者に対する適正装着手段の干渉が、保護対象者のガス発生器との干渉により、抑制されて、適正装着手段が、保護対象者の通常動作時の邪魔となることを防止できる。
【0013】
そしてまた、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記装着具が、
保護対象者の腰部に巻き付け、両端側に設けられた結合部を相互に結合させて、腰部に取り付け可能な腰ベルト部と、
該腰ベルト部から上方に延びて、保護対象者の左右の肩部にそれぞれ掛けて、前記腰ベルト部の肩部からの高さを調整可能とする一対の肩ベルトを有してなる吊りベルト部と、
を備え、
前記エアバッグが、膨張完了時に、保護対象者の左右の大腿骨転子部を保護対象部位として膨張する前記保護膨張部を有して、前記腰ベルト部に保持される構成として、
前記適正装着手段が、前記装着具における前記腰ベルト部の高さを調整可能な前記吊りベルト部と、該吊りベルト部により高さ調整された腰ベルト部と、により、構成されていてもよい。
【0014】
このような構成では、通常使用前に、予め、装着具を使用して着用エアバッグ装置を適正装着位置に装着する。その際、装着具の吊りベルト部の左右の肩ベルトを、腰ベルト部の高さを調整しつつ、保護対象者の左右の肩部に掛け、そして、腰ベルト部を保護対象者の腰部に巻き付けて、保護対象者に対し、収納されたエアバッグを適正装着位置に配置させておく。そして、適正装着手段の吊りベルト部の調整状態を維持しておく。その後の通常使用時、装着具を利用して、保護対象者に装着すれば、着用エアバッグ装置を保護対象者に装着することができて、その際、装着時のエアバッグは、適正装着手段を構成する吊りベルト部により、既に、高さ調整された腰ベルト部に保持されていることから、適正装着位置に装着される。そのため、適正装着手段兼用の装着具を利用して、着用エアバッグ装置を保護対象者に装着すれば、毎回、簡便に、エアバッグを、適正装着位置に配置することができる。すなわち、このような構成では、腰ベルト部と吊りベルト部との機構的な適正装着手段により、簡便に、保護対象者に対してエアバッグを適正装着位置に配置させることができて、エアバッグが膨張完了すれば、保護膨張部が、保護対象者の保護対象部位である大腿骨転子部を的確に覆って保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図2】第1実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略正面図と概略背面図である。
図3】第1実施形態の着用エアバッグ装置を平らに展開させた状態でのエアバッグの膨張時の概略背面図である。
図4】第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略断面図であり、図3のIV-IV部位に対応する。
図5】第1実施形態の着用エアバッグ装置の作動時におけるエアバッグの概略横断面図である。
図6】第1実施形態の着用エアバッグ装置の構成部品のブロック図である。
図7】第1実施形態の制御装置が行う基準値取得処理のフローチャートである。
図8】第1実施形態の制御装置が行う通常作動処理のフローチャートである。
図9】第2実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図10】第2実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略正面図と概略背面図である。
図11】第2実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の着用エアバッグ装置10は、図1~5に示すように、保護対象者(例えば、高齢者)1の転倒時に、腰部2の側面2aにおける大腿骨転子部3(L,R)を保護対象部位7として保護するように、エアバッグ40の保護膨張部42(L,R)を膨張させるものである。
【0017】
この第1実施形態の着用エアバッグ装置10は、エアバッグ40と、作動時にエアバッグ40に膨張用ガスGを供給するガス発生器30と、保護対象者1の転倒を検知可能な転倒検知センサ52を有し、転倒検知センサ52からの保護対象者1の転倒時の信号を入力して、ガス発生器30を作動させるように制御する制御装置50と、エアバッグ40、ガス発生器30、及び、制御装置50を保持し、かつ、保護対象者1に装着可能な装着具11と、を備えて構成されている。さらに、第1実施形態では、着用エアバッグ装置10は、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を保護可能に、保護対象者1に対し、膨張前のエアバッグ40を適正位置GPに装着させるための適正装着手段54、を備えて構成されている。
【0018】
ガス発生器30は、図4に示すように、内部に圧縮された二酸化炭素等からなる膨張用ガスGを貯留した略円柱状の本体部30aと、本体部30aの先端の小径の略円柱状のガス吐出部30bと、を備えて構成され、ガス吐出部30bには、膨張用ガスGを吐出するガス吐出口30cが配設されている。ガス発生器30は、保護対象者1の転倒を検知した制御装置50の作動制御部51(図6参照)からの作動信号を入力して、作動され、本体部30a内に貯留した膨張用ガスGをガス吐出部30bのガス吐出口30cから吐出する構成としている。ガス発生器30は、エアバッグ40の後述する流入口部46に挿入されて、クランプ33,33を利用して、流入口部46と連結されている。
【0019】
エアバッグ40は、可撓性を有したポリエステル等の織布から袋状に形成されており、膨張完了形状として、左右の略長方形板状の本体膨張部41(L,R)と、左右の本体膨張部41(L,R)の上端側を相互に連通させる帯状(筒状)の連通部45と、を備えた形状としている(図3参照)。左右の本体膨張部41(L,R)は、保護対象者1の腰部2の左右の側面2a(L,R)を覆うように配設され、上縁側を、連通部45と連なる縁側膨張部43(L,R)とし、下部側を、保護対象者1の保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を覆って保護可能な保護膨張部42(L,R)としている。エアバッグ40は、連通部45に膨張用ガスGを流入させる筒状の流入口部46を配設させており、流入口部46は、ガス発生器30のガス吐出部30b側から本体部30aを挿入させて、取付具としてのクランプ33で挟持されて、ガス発生器30と連結される。なお、クランプ33,33は、後述する取付座15に取り付けられる取付板32から延びている。
【0020】
連通部45の部位は、装着具11を利用して、エアバッグ40が保護対象者1に装着される際、保護対象者1の腰部2の後面2b側に配設され、左右の本体膨張部41(L,R)は、腰部2の後面2bから左右の側面2a(L,R)側を覆うように、配設されることとなる。
【0021】
装着具11は、後述するバックル17を除いて、可撓性を有したポリエステル等の織布からなり、腰部2を包むベルトタイプの腰ベルト部12として、構成されている。腰ベルト部12は、折り畳んだエアバッグ40を保持して収納する収納部13と、収納部13の左右両側から突出する帯状の端部12a(L,R)と、を備えて構成されている。
【0022】
両側の帯状端部12a(L,R)には、端部12a(L,R)相互を結合可能なバックル17を配設させている。バックル17は、解除可能に相互に結合されるファスナーとしての係合凸部17aと係合凹部17bとを備えて構成され、帯状端部12aLに係合凸部17aが取り付けられ、帯状端部12aRに係合凹部17bが取り付けられている。これらの係合凸部17aと係合凹部17bとには、帯状端部12a(L,R)の端末12bを折り返して、帯状端部12a(L,R)における収納部13からバックル17の係合凸部17aや係合凹部17bまでの長さを調整可能な長さ調整部18が配設されている。長さ調整部18は、汎用のものであり、帯状端部12a(L,R)の端末12b側を、反転させて挿通させる2つの通し穴18a,18bを備えて構成されており、端末12b側を、通し穴18a,18bを通して反転させて、端末12b側の一部相互を重ねた摩擦抵抗により、抜け止めを図って、帯状端部12a(L,R)の収納部13から突出する長さを調整している。
【0023】
収納部13は、保護対象者1側の内側壁13aと保護対象者1から離れた側の外側壁13bとを備えた袋状として(図4参照)、下縁側に、膨張時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)を突出させる挿通孔14を配設させている。また、収納部13の左右方向の中央付近は、ガス発生器30や制御装置50の取付座15としており、取付座15には、取付ボルト37を挿通させる取付孔15aが配設されている。そして、取付座15には、ガス発生器30と制御装置50とを保持する取付板32が、取付ボルト37、ナット(袋ナット)38、及び、当板35、を利用して取り付けられている。
【0024】
なお、エアバッグ40は、上縁40a側の複数個所を収納部13の内側壁13aに対して、縫合等により結合されている。
【0025】
制御装置50は、第1実施形態の場合、図6に示すように、転倒検知センサ52の信号を入力させて、ガス発生器30の作動を制御する作動制御部51と、着用エアバッグ装置10が適正装着位置に装着されたか否かを、転倒検知センサ52の信号を入力させつつ判定する適正装着手段54を構成する本体制御部55と、を備えて構成されるとともに、ケース75に覆われて(図4参照)、取付座15に取り付けられる取付板32に取り付けられている。また、制御装置50には、各制御部51,55を動作させるための電池等からなる電源部66が配設されるともに、ブザー62を配設させている(図6参照)。
【0026】
なお、制御装置50には、作動制御部51及び本体制御部55のオンオフを制御する作動スイッチ70,72と、LEDからなる点灯部64と、が電気的に接続されている(図1,6参照)。第1実施形態の場合、作動スイッチ70,72は、操作し易いように、保護対象者1の前面側となる装着具11の収納部13の正面13c側に配設され、点灯部64も、目視し易いように、保護対象者1の前面側となる装着具11の収納部13の正面13c側に配設されている。なお、点灯部64は、赤色点灯、緑色点灯、赤色点滅、緑色点滅の4種類の点灯モードで点灯可能に構成されている。
【0027】
制御装置50の各制御部51,55、電源部66、ブザー62等は、装着具11の収納部13における取付座15に取り付けられる取付板32に固定されて、ガス発生器30に隣接して配設されている。
【0028】
作動制御部51に設けられた保護対象者1の転倒を検知する転倒検知センサ52は、上下前後左右の3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、上下前後左右の3軸周りの角速度を検知可能な角速度センサ(ジャイロ)と、を備えて構成されている。作動制御部51は、転倒検知センサ52からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を行っていると検知されると、ガス発生器30を作動させるように構成されている。具体的には、作動制御部51は、図示しない転倒判定部を備え、加速度センサや角速度センサを具備してなる転倒検知センサ52からの信号により、転倒判定部が、それらの信号値と記憶されていた種々の閾値から、保護対象者1が転倒を開始している、と判定して、その転倒判定部の判定結果に基づいて、ガス発生器30を作動させることとなる。
【0029】
適正装着手段54を構成する本体制御部55は、装着具11を利用して装着した後における膨張前のエアバッグ40の装着位置が適正か非適正かを判定する判定手段としての判定制御部57と、判定手段としての判定制御部57によるエアバッグ40の装着位置の判定が非適正の場合に、作動され、保護対象者1に対して、非適正を報知する報知手段としての報知部61と、を備えて構成されている。報知部61は、保護対象者1に警告音を発音可能なブザー62としている。
また、第1実施形態の場合、報知部61は、点灯部64も利用しており、適正の場合、点灯部64を緑色点灯させ、適正でない場合には、適正となるまで、点灯部64を赤色点灯させておく構成としている(図8のステップS201~S208参照)。
【0030】
そして、判定制御部57は、判定部58と記憶部59とを備えて構成されている。記憶部59は、保護対象者1に対して、予め、装着具11を利用して、エアバッグ40を適正位置に配置させた際の転倒検知センサ52の非転倒状態(例えば、僅かに前進歩行する状態)の信号値F0を基準値DNとして、記憶する。
【0031】
すなわち、転倒検知センサ52は、上下前後左右の3軸方向の加速度や上下前後左右の3軸周りの角速度を検出可能であり、それらの3軸方向の加速度や3軸回りの角速度における保護対象者1の前進開始から前進完了後までを検出した値を、基準値DNとして、記憶する。そして、判定部58は、装着具11を利用して装着した後の通常使用時における保護対象者1の非転倒状態での動作初期時(例えば、僅かに前進歩行する初期状態の際)、転倒検知センサ52の初期信号値F1が、基準値DNとずれて、ずれの値(範囲)が、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7を保護できない不適正装着位置としている状態の値であれば、非適正と判定し、初期信号値F1が基準値DNと略同一として、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7を保護できる状態であれば、適正装着状態と判定するものである。
【0032】
なお、初期信号値F1も、基準値DNの算出と同様であり、初期動作時のセンサ52における3軸方向の加速度や3軸回りの角速度における保護対象者1の前進開始から前進完了後までを検出した値を、初期信号値F1として算出している。
【0033】
そして、制御装置50(特に、転倒検知センサ52)が適正位置の配置状態であれば、保護対象者1の前進開始から前進完了後までを検出した値(初期信号値)F1は、基準値DNと略一致する値となる。一方、制御装置50(特に、転倒検知センサ52)が非適正位置の配置状態であれば、転倒検知センサ52の3軸方向の加速度や3軸回りの角速度は、ずれた値を検出することとなって(例えば、腰ベルト部20を腰部2の周方向にずれて配置させていたり、腰ベルト部20を傾斜した斜めに装着させていれば、ずれた値となる)、初期信号値F1が基準値DNとずれ、そのずれの範囲が大きければ、装着時の制御装置50が適正位置からずれ、そのずれに伴ない、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)がずれて、的確に、保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を保護できなくなってしまう(図5の二点鎖線参照)。勿論、初期信号値F1と基準値DNとのずれの範囲が許容範囲内であれば、装着時の制御装置50が適正位置の配置となり、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)もずれずに、的確に、保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を覆って保護できることとなる(図5の実線参照)。ちなみに、エアバッグ40の収納時の装着位置と制御装置50との配置位置は、厳密には一致していないが、エアバッグ40の収納時の装着位置が適正な配置位置GPであれば、制御装置50(転倒検知センサ52)の配置位置も、相対的に、適正配置位置となり、逆に、制御装置50が適正配置位置からずれていれば、エアバッグ40の収納時の装着位置も非適正配置位置となることから、第1実施形態の場合、制御装置50(詳しくは、転倒検知センサ52)の位置を基準として、収納されたエアバッグ40の装着位置の適正若しくは非適正を判定することとしている。
【0034】
そして、判定部58は、適正と判定した場合には、報知部61のブザー62を発音させないが、非適正と判定した場合には、ブザー62を、一定時間(例えば、5秒)発音させる。なお、判定部58は、第1実施形態の場合、適正判定時、ブザー62を作動させずに、報知手段を構成する点灯部64を、赤色点灯から緑色点灯に変更させる。
【0035】
制御装置50の適正装着手段54の本体制御部55と作動制御部51とは、図7,8に示すような処理(基準値取得処理と通常作動処理)を行う。
【0036】
基準値取得処理は、図7に示すように、適正装着手段54の本体制御部55が、基準値DNを判定制御部57の記憶部59に記憶させる処理である。この処理は、まず、保護対象者1に対して、予め、装着具11を利用して、収納部13に折り畳まれて収納されたエアバッグ40を適正位置GPに配置させて、その適正位置での保護対象者1の通常動作としての僅かな前進歩行時の転倒検知センサ52の信号値F0を基準値DNとして、取得するものである。すなわち、基準値取得処理では、装着具11を利用してエアバッグ装置10を保護対象者1の適正位置に装着した後、まず、作動スイッチ72をONする(ステップS101)。すると、本体制御部55と転倒検知センサ52とが作動されるとともに、点灯部64が赤色点滅し(ステップS102)、基準値DNを取得して記憶部59に記憶する(ステップS103)。そして、保護対象者1の通常動作としての僅かな前進歩行時の転倒検知センサ52の信号値F0を基準値DNとして取得できたならば(ステップS104でYES)、点灯部64を緑色点滅で点灯させる(ステップS105)。点灯部64が緑色点滅されたならば、記憶部59に基準値DNが格納されたと確認できることから、作動スイッチ72をOFFし、点灯部64の緑色点滅を消灯させて、本体制御部55と転倒検知センサ52との基準値取得処理を終える。
【0037】
通常作動処理は、図8に示すように、エアバッグ装置10の通常使用時、装着具11を利用して装着したエアバッグ装置10のエアバッグ40が適正位置GPに配置されていなければ、その不適正を報知し、適正位置GPに配置し直させて、その適正配置位置に配置させたエアバッグ装置10を、通常使用時の保護対象者1の転倒時に、作動させる処理である。この処理は、厳密には、適正装着手段54としての本体制御部55の判定制御部57と作動制御部51とが処理する通常作動前処理(ステップS201~S208)と、作動制御部51が処理する通常作動本処理(ステップS209~212)とから構成されている。
【0038】
そして、通常作動処理の通常作動前処理では、歩行動作しようとする保護対象者1に対し、装着具11を使用して、エアバッグ装置10を装着させた後、作動スイッチ70をONする(ステップS201)ととともに、保護対象者1に僅かに前進歩行させる。すると、作動制御部51、本体制御部55、及び、転倒検知センサ52が作動されるとともに、まず、点灯部64が赤色点灯する(ステップS202)。そして、転倒検知センサ52による信号値により、適正装着手段54の本体制御部55における判定制御部57の判定部58が、その保護対象者1の僅かな前進歩行に伴う初期信号値F1を取得し(ステップS203,S204)、そして、初期信号値F1と記憶部59に記憶させていた基準値DNと比較する(ステップS205)。その際、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7を保護できる適正装着位置としていれば、初期信号値F1と基準値DNとのずれが許容範囲となることから(ステップS205でYES)、判定部58は、適正位置と判定して、ブザー61を作動させることなく、点灯部64を赤色点灯から変えて緑色点灯で点灯させ(ステップS208)、作動制御部51の処理に移行する(ステップS209)。一方、初期信号値F1と基準値DNとのずれが許容範囲を越えており、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7を保護できない非適正装着位置としていれば、判定部58は、ステップS205でNOと判定し、本体制御部55における報知部61のブザー62を所定時間(例えば、5秒)作動させる。ブザー62の作動による警告により、保護対象者1は、エアバッグ装置10が非適正配置位置に装着されていることを確認できることから(この時、点灯部64は、赤色点灯のままであることから、この点灯部64の点灯状態からもエアバッグ40の非適正配置状態を検知することができる)、装着具11を装着し直し、そして、初期信号値F1を取得し直す。その際、すでに取得した初期信号値F1はクリアされ(ステップS207)、装着具11を付け直して、保護対象者1が僅かに前進歩行すれば、再度、初期信号値F1が取得され(ステップS203,S204)、その初期信号値F1と基準値DNとのずれが許容範囲内であれば(ステップS205でYES)、判定部58は、ブザー62を作動させずに、点灯部64を赤色点灯から緑色点灯とするように点灯させ(ステップS208)、作動制御部51の処理に移行する(ステップS209)。
【0039】
ステップS209に移行したならば、その際には、保護対象者1は、着用エアバッグ装置10を通常使用して、種々の歩行を含めた動作を行っており、作動制御部51は、転倒検知センサ52の信号値を入力させて、図示しない転倒判定部により、保護対象者1の転倒の有無を判定する。そして、保護対象者1が転倒した場合には、作動制御部51は、図示しない転倒判定部が転倒検知センサ52からの信号から転倒を検知し(ステップS209でYES)、ガス発生器30を作動させる(ステップS210)。すると、エアバッグ40が膨張して、保護膨張部42(L,R)を保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を覆うように、膨張して配置されることから、転倒先から大腿骨転子部3(L,R)が保護される(図2,5参照)。そして、ガス発生器30が作動された後には、作動制御部51は、点灯部64を消灯させて(ステップS212)、処理を終える。
【0040】
一方、保護対象者1が、通常動作を続行しても、転倒しなければ、作動制御部51は、ガス発生器30を作動させず(ステップS209でNO)、点灯部64の緑色点灯が維持される。その後、エアバッグ装置10を取り外す際には、作動スイッチ70をOFFすれば(ステップS211でYES)、作動制御部51は、点灯部64を消灯させて、処理を終えることとなる。
【0041】
以上のように、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、装着具11を利用して保護対象者1に装着する際、適正装着手段54により、膨張前のエアバッグ40を適正位置GPに装着させることができることから、作動時、ガス発生器30から供給されて膨張するエアバッグ40は、的確に、保護膨張部42(L,R)を、保護対象者1の保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を保護できる位置に、配置させることができる。
【0042】
したがって、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、エアバッグ40が適切な装着位置GPに配置されて的確に保護対象部位7を保護できる。
【0043】
そして、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、適正装着手段54が、装着具11を利用して装着した後における膨張前のエアバッグ40の装着位置が適正か非適正かを判定する判定手段としての判定制御部57と、判定手段としての判定制御部57によるエアバッグ40の装着位置の判定が非適正の場合に、作動され、保護対象者1に対して、非適正を報知する報知手段としての報知部61としてのブザー62と、を備えている。そして、判定手段としての判定制御部57は、保護対象者1に対して、予め、装着具11を利用して、エアバッグ40を適正位置に配置させた際の転倒検知センサ52の非転倒状態の信号値F0を基準値DNとして、記憶する記憶部59と、装着具11を利用して装着した後の通常使用時における保護対象者1の非転倒状態での動作初期時、転倒検知センサ52の初期信号値F1が、基準値DNとずれて、ずれの値が、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42が保護対象部位7を保護できない不適正装着位置としている状態の値であれば、非適正と判定可能な判定部58と、を備えて構成されている。
【0044】
このような構成では、通常使用時の前に、保護対象者1に対し、装着具11を利用して、適正位置に、着用エアバッグ装置10を装着させ、その装着状態で、保護対象者1が、転倒状態でない通常歩行を行った際の転倒検知センサ52からの信号値F0を基準値DNとして、予め、適正装着手段54の判定手段としての判定制御部57の記憶部59に、その基準値DNを記憶させておく。その後、通常使用時、装着具11を利用して保護対象者1に着用エアバッグ装置10を装着させ、その装着状態で、保護対象者1が、歩行等の通常動作を行う際の動作初期時、転倒検知センサ52の初期信号値F1が、適正装着手段54の判定制御部57における判定部58に入力される。その際、通常使用のために装着した着用エアバッグ装置10の装着位置が、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7を保護できない不適正装着位置としている状態であれば、転倒検知センサ52の初期信号値F1が、基準値DNとずれることから、そのずれにより、判定部58が、非適正と判定し、報知手段としての報知部61のブザー62が作動されて、保護対象者1に、着用エアバッグ装置10が不適正位置に装着されていることを報知する。そして、保護対象者1は、着用エアバッグ装置10を装着し直して、再度、歩行等の通常動作を行い、その際、報知手段としての報知部61のブザー62が作動されなければ、着用エアバッグ装置10の適正装着状態を確認できて、その後、通常動作を続行すればよい。勿論、通常使用のために装着した着用エアバッグ装置10の装着位置が、膨張完了時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)が保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を保護できる適正装着位置としていれば、転倒検知センサ52の初期信号値F1が、基準値DNと大きくずれないことから、報知手段としての報知部61のブザー62が作動されず、以後、保護対象者1は、通常動作を続行すればよい。そのため、第1実施形態では、保護対象者1は、報知手段としての報知部61により、エアバッグ40の装着位置が適正位置か否かを確認できて、正しい装着位置GPに装着し直すことができることから、その後、着用エアバッグ装置10のガス発生器30が作動して、エアバッグ40が膨張すれば、膨張したエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)が、的確に、保護対象者1の保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を、保護することができる。
【0045】
さらに、第1実施形態では、適正装着手段54の判定手段としての判定制御部57と報知手段としての報知部61とが、装着具11におけるガス発生器30の保持位置近傍に、詳しくは、ガス発生器30を取り付けた取付板32に、ガス発生器30に隣接させて、配設されている。
【0046】
そのため、第1実施形態では、適正装着手段54の主要な構成部位の判定手段としての判定制御部57と報知手段としての報知部61とが、剛性を有したガス発生器30の近傍に配設されていることから、装着具11を利用して、着用エアバッグ装置10を保護対象者1に装着させた際、保護対象者1に対する適正装着手段54の干渉が、保護対象者1のガス発生器30との干渉により、抑制されて、適正装着手段54が、保護対象者1の通常動作時の邪魔となることを防止できる。特に、第1実施形態では、制御装置50におけるガス発生器30の作動を制御する転倒検知センサ52を含めた作動制御部51や電源部66等も、適正装着手段54の本体制御部55とともに、ガス発生器30と隣接して、保護対象者1の腰部2の後面2b側に配設されており、一層、保護対象者1に対する制御装置50の干渉が、保護対象者1のガス発生器30との干渉により、抑制されて、制御装置50が、保護対象者1の通常動作時の邪魔となることを防止できる。
【0047】
また、適正装着手段としては、図9~11に示すように、機構的に構成してもよい。
【0048】
図9~11に示す第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aでは、装着具11A自体が、適正装着手段54Aを構成している。そして、第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aでは、エアバッグ40及びガス発生器30は、第1実施形態と同様としている。また、第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aでも、転倒検知センサ52からの信号によりガス発生器30を作動させる制御装置50Aが、ケース(図符号省略)に覆われるとともに、電源部(図符号省略)を備え、さらに、作動スイッチ70と、作動スイッチ70のON状態を明示する点灯部64と、電気的に接続されている点は、第1実施形態と同様である。但し、第1実施形態の判定制御部57、作動スイッチ72、ブザー62等は、配設されていない。
【0049】
そして、第2実施形態の着用エアバッグ装置10では、装着具11Aが、保護対象者1の腰部2に巻き付け、両端側に設けられた結合部17を相互に結合させて、腰部2に取り付け可能な腰ベルト部12Aと、腰ベルト部12Aから上方に延びて、保護対象者1の左右の肩部5(L,R)にそれぞれ掛けて、腰ベルト部2Aの肩部5(L,R)からの高さHWを調整可能とする一対の肩ベルト21(L,R)を有してなる吊りベルト部20と、を備えて構成されている。
【0050】
腰ベルト部12Aは、第1実施形態の腰ベルト部12と同様であり、折り畳んだエアバッグ40を保持して収納する収納部13と、収納部13の左右両側から突出する帯状の端部12a(L,R)と、を備えて構成され、帯状端部12a(L,R)には、端部12a(L,R)相互を結合可能なバックル17を配設させている。バックル17は、第1実施形態と同様に、解除可能に相互に結合されるファスナーとしての係合凸部17aと係合凹部17bとを備えて構成され、帯状端部12aLに係合凸部17aが取り付けられ、帯状端部12aRに係合凹部17bが取り付けられている。これらの係合凸部17aと係合凹部17bとには、帯状端部12a(L,R)の端末12bを折り返して、帯状端部12a(L,R)における収納部13からバックル17の係合凸部17aや係合凹部17bまでの長さを調整可能な長さ調整部18が配設されている。長さ調整部18は、帯状端部12a(L,R)の端末12b側を、反転させて挿通させる通し穴(図符号省略)を備えて構成されており、端末12b側を、通し穴(図符号省略)を通して反転させて、端末12b側の一部相互を重ねた摩擦抵抗により、抜け止めを図って、帯状端部12a(L,R)の収納部13から突出する長さを調整している。
【0051】
収納部13も、第1実施形態と同様であり、保護対象者1側の内側壁13aと保護対象者1から離れた側の外側壁13bとを備えた袋状として、下縁側に、膨張時のエアバッグ40の保護膨張部42(L,R)を突出させる挿通孔14を配設させ、左右方向の中央付近は、ガス発生器30や制御装置50Aの取付座15としており、取付座15には、ガス発生器30と制御装置50Aとを保持する取付板(図符号省略)が、所定の取付ボルトとナットとを利用して、取り付けられている。
【0052】
吊りベルト部20は、一対の肩ベルト21(L,R)が、それぞれ、帯状の布材やゴム等の弾性体からなるとともに、腰ベルト部12の前後左右の上縁側に固定されて通し環25(FL,FR,BL,BR)に、前後両端を巻き掛けて、腰ベルト部12に連結されている。肩ベルト21(L,R)は、保護対象者1の背面1b側で交差され、各後端部21aを、後方側の左右の通し環25(BL,BR)に巻き掛けて、腰ベルト部12Aの背面側に連結固定され、保護対象者1の正面1aの前端部21b側では、左右の通し環25(FL,FR)に折り返されて上方へ延び、端末21d(前端部21b)が、それぞれ、長さ調整部23の連結杆部23cに巻き掛けて連結固定されている(図11の括弧書き参照)。
【0053】
長さ調整部23は、左右方向に延びる連結杆部23cの上下に、二つの通し穴23a,23bが配設されて構成され、肩ベルト21(L,R)における保護対象者1の背面1b側から正面1a側に延びる一般部21fが、上方の通し穴23aを背面側から前面側に挿通し、連結杆部23cの前面側を通って、下方の通し穴23bを前面側から背面側に挿通し、そして、下方に延びて前方側の左右の通し環25(FL,FR)で折り返し、上方に延びた端末21d(前端部21b)を、連結杆部23cに巻き掛けて連結固定されている。
【0054】
この吊りベルト部20では、長さ調整部23を、肩ベルト21の一般部21fを挿通させつつ上下動させて、通し環25(FL,FR)からの高さを調整すれば、肩ベルト21(L,R)の折返し部21cから端末21dまでの長さが調整され、すなわち、肩ベルト21(L,R)の肩部5(L,R)から腰ベルト部12Aまでの長さ(換言すれば、肩部5(L,R)からの腰ベルト部12Aの高さ寸法HW)を調整することができる。
【0055】
さらに、腰ベルト部12A自体も、バックル17の長さ調整部23からの端末12bの位置を調整できて、保護対象者1の腰部2の腰回り寸法の大小に応じて、保護対象者1の腰部2にフィットさせて装着することができる。
【0056】
また、エアバッグ40自体は、第1実施形態と同様であり、膨張完了時に、保護対象者1の左右の大腿骨転子部3(L,R)を保護対象部位7として膨張する保護膨張部42(L,R)を有して、腰ベルト部12Aの収納部13に保持されている。
【0057】
第2実施形態では、適正装着手段54Aが、装着具11Aにおける腰ベルト部12Aの高さを調整可能な吊りベルト部20と、吊りベルト部20により高さ調整された腰ベルト部12Aと、により、構成されている。
【0058】
この第2実施形態では、通常使用前に、予め、装着具11Aを使用して着用エアバッグ装置10Aを適正装着位置に装着する。その際、装着具11Aの吊りベルト部20の左右の肩ベルト21L,21Rを、長さ調整部23,23の配置高さを調整して、腰ベルト部12Aの高さを調整しつつ、保護対象者1の左右の肩部5L,5Rに掛け、そして、腰ベルト部12Aを保護対象者1の腰部2に巻き付け、長さ調整部18の調整によって端末12b側の長さを調整して、保護対象者1の腰部2の周長に対応させつつ、バックル17の係合凸部17aと係合凹部17bとを結合させ、保護対象者1に対して装着具11Aを装着して、収納されたエアバッグ40を適正装着位置GPに配置させておく。そして、適正装着手段54Aの吊りベルト部20の調整状態を維持して、バックル17の係合凸部17aと係合凹部17bとの結合を解除して、装着具11Aを保護対象者1から外し、着用エアバッグ装置10Aをつぎの通常使用時まで、待機させておく。
【0059】
そして、その後の通常使用時には、装着具11Aの吊りベルト部20の肩ベルト21L,21Rを左右の肩部5L,5Rに当てつつ、腰ベルト部12Aを腰部2に巻き付けて、バックル17の係合凸部17aと係合凹部17bとを結合させれば、着用エアバッグ装置10Aを保護対象者1に装着することができる。
【0060】
この時の装着時のエアバッグ40は、適正装着手段54Aを構成する吊りベルト部20により、既に、高さ調整された腰ベルト部12Aに保持されていることから、適正装着位置GPに装着される(図9の実線参照)。そのため、適正装着手段兼用の装着具11Aを利用して、着用エアバッグ装置10Aを保護対象者1に装着すれば、毎回、簡便に、エアバッグ40を、適正装着位置GPに配置することができる。すなわち、このような構成の第2実施形態では、腰ベルト部12Aと吊りベルト部20との機構的な適正装着手段54Aにより、簡便に、保護対象者1に対してエアバッグ40を適正装着位置GPに配置させることができて、エアバッグ40が膨張完了すれば、保護膨張部42(L,R)が、保護対象者1の保護対象部位7である大腿骨転子部3(L,R)を的確に覆って保護することができる(図10参照)。
【0061】
ちなみに、装着時のエアバッグ40が適正装着位置GPからずれて装着され、例えば、適正装着位置GPから上方にずれていれば、図11の二点鎖線に示すように、膨張したエアバッグ400の保護膨張部420が、保護対象者1の保護対象部位7である大腿骨転子部3を的確に覆うことができなくなってしまう。
【0062】
そして、第2実施形態では、適正装着手段54Aの吊りベルト部20における一対の肩ベルト21L,21Rが、保護対象者1の背面1b側で、交差するように、配設されており、この交差部20aを目印として、吊りベルト部20や腰ベルト部12Aの前後位置も、確認し易いことから、装着具11Aを利用した装着時、一層、迅速に、着用エアバッグ装置10Aのエアバッグ40を適正装着位置GPに配置させることができる。
【0063】
なお、第1実施形態では、転倒検知センサ52の信号値F0,F1を利用して、保護対象者1の保護対象部位7に対して、膨張するエアバッグ40の保護膨張部42を的確に配置させるように、折り畳まれて収納されたエアバッグ40を適正装着位置に配置させるようにしているが、保護対象者1の保護対象部位7が、大腿骨転子部3(L,R)でなく、頭部(後頭部)4を保護対象部位とするようなエアバッグを備えた着用エアバッグ装置でも、同様に、転倒検知センサ52の信号値F0,F1を利用して、収納されたエアバッグを簡便に適正装着位置に配置させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…保護対象者、2…腰部、3(L,R)…大腿骨転子部、5(L,R)…肩部、7…保護対象部位、10,10A…着用エアバッグ装置、11,11A…装着具、12,12A…腰ベルト部、20…吊りベルト部、21(L,R)…肩ベルト、30…ガス発生器、40…エアバッグ、42(L,R)…保護膨張部、
50,50A…制御装置、51…作動制御部、52…転倒検知センサ、
54,54A…適正装着手段、57…(判定手段)判定制御部、58…判定部、59…記憶部、61…(報知手段)報知部、62…(発音部)ブザー、
HW…高さ寸法、G…膨張用ガス。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11