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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122811
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】演算処理装置の冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20220816BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20220816BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L23/46 A
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122753
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2021020130
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA09
5E322AA10
5E322DA01
5E322DA02
5E322DA03
5E322DA04
5E322FA01
5E322FA09
5F136CB01
5F136CB13
5F136CB27
5F136CC35
5F136CC37
5F136FA12
(57)【要約】
【課題】金属を用いることなく放熱性を保つことができる演算処理装置の冷却装置を提供する。
【解決手段】演算処理装置100の表面に接触する冷却部材7を有する演算処理装置100の冷却装置1であって、冷却部材7は、炭素系の多孔質セラミックス素材で板状に形成されており、冷却部材7は、冷媒2によって冷却される。また、演算処理装置100および冷却部材7は、冷媒2に浸漬されており、冷却部材7の内部には、気体を通す冷却部材内通路27を有し、冷却部材内通路27の気体を微細気泡として冷媒2へ放出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算処理装置の表面に接触する冷却部材を有する演算処理装置の冷却装置であって、
前記冷却部材は、炭素系の多孔質セラミックス素材で板状に形成されており、
前記冷却部材は、冷媒によって冷却される
ことを特徴とする演算処理装置の冷却装置。
【請求項2】
前記演算処理装置および前記冷却部材は、前記冷媒に浸漬されており、
前記冷却部材の内部には、気体を通す冷却部材内通路を有し、
前記冷却部材内通路の気体を微細気泡として前記冷媒へ放出する
ことを特徴とする請求項1に記載の演算処理装置の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却部材は、前記冷媒通路と連通する液体流通路を内部に設け、
前記冷却部材は、気体を通す冷却部材内通路を有し、
前記冷却部材内通路の気体を微細気泡として前記液体流通路内の冷媒へ放出する
ことを特徴とする請求項1に記載の演算処理装置の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算処理装置の冷却装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大規模集積回路LSIなどを有し、ごく少数のチップに全機能が集積されたマイクロプロセッサなどで構成される演算処理装置は公知となっている。前記演算処理装置はその高速処理性能を発揮することで半導体素子等の部品が発熱する。また、演算処理装置内で最も発熱するのはCPUだが、他にも高速処理に必要な集積部品も高温となるため演算処理装置全体を効率よく冷却する必要がある。すなわち、演算処理装置の信頼性向上のため、演算処理装置を効率的に冷却する必要がある。
【0003】
一方、電力を制御するためのパワーモジュールなどの演算処理装置の冷却には、パワーモジュール表面に放熱のためにAl等の金属板が接合され、さらに金属層を介してヒートシンクが接合されることで基板を冷却する冷却装置が提案されている。ヒートシンクには、炭素質部材中にアルミニウム又はアルミニウム合金が充填されたアルミニウム複合材料が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-98058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属を有するヒートシンクは、酸化による放熱性劣化の可能性があった。また、フッ素系冷媒を用いた液浸式の冷却装置においては、金属のヒートシンクを用いることができなかった。そこで、金属を用いることなく放熱性を保つことができる演算処理装置の冷却装置が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、金属を用いることなく放熱性を保つことができる演算処理装置の冷却装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明においては、演算処理装置の表面に接触する冷却部材を有する演算処理装置の冷却装置であって、
前記冷却部材は、炭素系の多孔質セラミックス素材で板状に形成されており、
前記冷却部材は、冷媒によって冷却されるものである。
【0009】
また、本発明においては、前記演算処理装置および前記冷却部材は、前記冷媒に浸漬されており、前記冷却部材の内部には、気体を通す冷却部材内通路を有し、
前記冷却部材内通路の気体を微細気泡として前記冷媒へ放出するものであってもよい。
【0010】
また、本発明においては、前記冷却部材は、前記冷媒通路と連通する液体流通路を内部に設け、
前記冷却部材は、気体を通す気泡発生媒体内通路を有し、
前記気泡発生媒体内通路の気体を微細気泡として前記液体流通路内の冷媒へ放出するものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
本発明においては、演算処理装置の表面に接触する冷却部材を炭素系の多孔質セラミックス素材で形成したことにより、冷却部材の放熱性が向上し、演算処理装置の熱冷却効率が向上する。また、冷却部材を炭素系の多孔質セラミックス素材また、冷却部材の内部に液体流通路を設けたことにより、冷却部材を内部から恒常的に冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(図1A)本発明の第一の実施形態に係る演算処理装置と冷却部材を示す概略平面図、(図1B)本発明の第一の実施形態に係る演算処理装置と冷却部材を示す概略正面図。
図2】本発明の第一の実施形態に係る液浸式の冷却装置を示す概略図。
図3】冷却部材を示す拡大図。
図4】本発明の第二の実施形態に係る演算処理装置の冷却装置を示す概略図。
図5】本発明の第三の実施形態に係る演算処理装置の冷却装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかる演算処理装置100の冷却装置1の全体構成について図1および図2を用いて説明する。
【0015】
冷却装置1は、演算処理装置100の表面に接触する冷却部材7を有する演算処理装置100の冷却装置である。演算処理装置100は、小型化および集積化により、発熱量が大きいものが開発されている。例えば、CPUであるマイクロプロセッサ100aを有し、高速演算処理に用いられるブリッジなどの各種集積部品を有する。また、演算処理装置100内で最も発熱するのはマイクロプロセッサ100aだが、他にも高速処理に必要な集積部品も高温となるため演算処理装置100全体を効率よく冷却する必要がある。当該発熱量の大きい半導体素子を有する演算処理装置100を冷却するために放熱効率の良い素材でできた冷却部材7が求められていた。
【0016】
冷却部材7は、炭素系の多孔質セラミックス素材で板状に形成されている。冷却部材7は、半導体素子等で構成された演算処理装置100の一部であるマイクロプロセッサ100aが格納された箱状部材100bの表面に貼設される。マイクロプロセッサ100aは基板100cに搭載されている。マイクロプロセッサ100aから発生した熱は、箱状部材100bの表面から冷却部材7へ伝導され、冷却部材7から空冷式であれば空気中に、冷媒冷却式であれば冷媒2中に放熱される。
【0017】
炭素系の多孔質セラミックス素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。このように構成することにより、炭素系の多孔質素材の空隙に熱が伝導することで、放熱効率の高い素材となる。また、炭素系の多孔質素材は、耐腐食性、耐高温性に優れているため放熱効率の低下を防止することができる。これにより、マイクロプロセッサ100aが想定外の高熱となったときであっても、効率が低下することなく冷却することができる。
【0018】
次に、液浸式の冷却装置1について図2および図3を用いて説明する。
冷却装置1は、演算処理装置100および冷却部材7を冷媒2に浸漬することによって恒常的に冷却する装置であり、冷媒2を貯蔵する冷媒容器3を備える。液浸式の冷却装置1においては、冷媒2が効率的に演算処理装置100の熱を除去するため、ハードウェア密度が高まるという利点がある。また、液浸式の冷却装置1においては、冷媒2の劣化が発生しがたいため、液交換などのメンテナンスが不要であるという利点もある。
【0019】
冷媒2は、例えば、フロン系冷媒で構成され、演算処理装置100のような電子機器に影響を与えない液体で構成される。すなわち、フロン系冷媒は絶縁性が非常に高い性質を有しており、基板100cやマイクロプロセッサ100aの通電を防止することができる。冷媒2は、図示せぬポンプ等により循環されており、チラーなどの冷却器によって冷却される。
【0020】
冷却部材7の内部には、冷却部材内通路27が設けられている。冷却部材内通路27は、気体通路55と連通しており、気体通路55には圧縮装置22が連結されている。圧縮装置22は、酸素を圧送する装置であり、例えば圧縮酸素容器と弁とで構成される。
【0021】
また、冷却部材7は、多孔質素材で構成されており、図3に示すように、直径数μm~数十μmの細かな孔7Aを多数有している。また、冷却部材7は導電体であり、冷却部材7から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である冷却部材7を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0022】
次に、液浸式の冷却装置1の冷却方法について図2および図3を用いて説明する。
冷媒容器3内の冷媒2は、循環しながら常時冷却されている。冷媒2は、冷媒容器3内の冷却部材7を冷却する。圧縮装置22から冷媒2中の冷却部材7内へ酸素を圧送する。圧縮装置22から圧送された酸素は、気体通路55を通って冷却部材内通路27へと送られる。冷却部材内通路27へと送られた酸素は冷却部材7の孔7Aから微細気泡として発生し、冷媒容器3内の冷媒2に微細気泡が溶存する。すなわち、冷却部材内通路27へ供給された酸素は、冷却部材7に設けられた直径数μm~数十μmの細かな孔7Aを通って、微細気泡となり液体中へ放出される。冷媒2中へ放出される微細気泡は、冷却部材7表面に放出された瞬間に、表面から離間される。
【0023】
冷媒2内の微細気泡は、冷媒2の冷却効率を向上させる。すなわち、冷媒2中の微細気泡が冷媒2を攪拌することにより、冷媒2の温度の偏りが解消されて均一な温度となり、冷却効率が向上する。また、微細気泡の圧壊により熱エネルギーが消費されるため、冷媒2の冷却効率が向上する。
【0024】
次に、第二の実施形態にかかる演算処理装置100の冷却装置101の全体構成について図4を用いて説明する。なお、冷却装置101は、冷却部材107内に、液体流通路121と冷却部材内通路127とを設けるものである。なお、第二の実施形態にかかる冷却装置101において、第一の実施形態に係る冷却装置1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0025】
冷却装置101は、演算処理装置100を冷媒2によって冷却する装置であり、冷媒2が循環する冷媒通路103と、サーキュレータ4と、放熱器5と、冷却部材107とで構成される。
【0026】
冷却部材107は、炭素系の多孔質セラミックス素材で板状に形成されている。冷却部材107は、半導体素子等で構成された演算処理装置100の一部であるマイクロプロセッサ100aが格納された箱状部材100bの表面に貼設される。マイクロプロセッサ100aから発生した熱は、箱状部材100bの表面から冷却部材107へ伝導され、冷媒2中に放熱される。
【0027】
冷却部材107の内部には、冷媒通路103と連通する液体流通路121が設けられている。液体流通路121は、冷媒通路103の循環経路の中途部に設けられており、冷媒通路103中の冷媒が液体流通路121内に流入し、冷却部材107の熱を吸入した後、再び冷媒通路103内へ放出される。
【0028】
また、冷却部材107の内部には、冷却部材内通路127が設けられている。冷却部材内通路127は、気体通路55と連通しており、気体通路55には圧縮装置22が連結されている。圧縮装置22は、酸素を圧送する装置であり、例えば圧縮酸素容器と弁とで構成される。
【0029】
また、冷却部材107は、第一の実施形態の冷却部材7と同様に、多孔質素材で構成されており、直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している。また、冷却部材107は導電体であり、冷却部材107から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である冷却部材107を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0030】
次に、第二の実施形態にかかる演算処理装置100の冷却装置101の冷却方法について説明する。
冷媒通路103内の冷媒2は、サーキュレータ4によって循環されている。冷媒2は、冷媒通路103から冷却部材7の液体流通路121に流入し冷却部材107を冷却する。また、圧縮装置22から冷媒2内へ酸素を圧送する。圧縮装置22から圧送された酸素は、気体通路55を通って冷却部材内通路127へと送られる。冷却部材内通路127へと送られた酸素は冷却部材107の孔から微細気泡として発生し、液体流通路21内の冷媒2に微細気泡が溶存する。すなわち、冷却部材内通路127へ供給された酸素は、冷却部材107に設けられた直径数μm~数十μmの細かな孔を通って、微細気泡となり液体中へ放出される。冷媒2中へ放出される微細気泡は、冷却部材107の内表面に放出された瞬間に、周りの冷媒2の流れによって、表面から離間される。
【0031】
冷媒2内の微細気泡は、冷媒2の圧力損失の低減を可能にする。すなわち、圧力損失は冷媒通路103の至る所で発生する冷媒2内部の流体と流体との摩擦による運動エネルギー消散の総和として現れるが、微細気泡を混入することにより、冷媒2内の流体と流体との摩擦を低減させることで圧力損失を低減させることができるのである。
【0032】
また、冷却部材107の液体流通路121に直接微細気泡を発生させることにより、最も圧力損失が発生しやすい液体流通路121内において微細気泡が発生するため、液体流通路121内に到着するまでに微細気泡が圧壊する機会が減る。これにより、冷媒2の圧力損失の低減をより効率的に可能にする。
【0033】
冷却部材107を炭素系の多孔質素材で構成することで、より熱伝導性が高くなり放熱性が向上する。また、冷媒2の圧力損失が少なくなることにより、冷却部材107の冷却が効率よく行える。
【0034】
次に、第三の実施形態にかかる演算処理装置100の冷却装置201の全体構成について図5を用いて説明する。なお、冷却装置201は、冷媒通路103の中途部に微細気泡発生槽231を設けるものである。なお、第三の実施形態にかかる冷却装置201において、第一の実施形態に係る冷却装置1および第二の実施形態に係る冷却装置101と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
冷却装置201は、演算処理装置100を冷媒2によって冷却する装置であり、冷媒2が循環する冷媒通路103と、サーキュレータ4と、放熱器5と、冷却部材207とで構成される。
【0036】
冷却部材207は、炭素系の多孔質セラミックス素材で板状に形成されている。冷却部材207は、半導体素子等で構成された演算処理装置100の一部であるマイクロプロセッサ100aが格納された箱状部材100bの表面に貼設される。マイクロプロセッサ100aから発生した熱は、箱状部材100bの表面から冷却部材207へ伝導され、冷媒2中に放熱される。
【0037】
冷却部材207の内部には、冷媒通路103と連通する液体流通路221が設けられている。液体流通路221は、冷媒通路103の循環経路の中途部に設けられており、冷媒通路103中の冷媒が液体流通路221内に流入し、冷却部材207の熱を吸入した後、再び冷媒通路103内へ放出される。
【0038】
また、冷却部材207は、第一の実施形態の冷却部材7と同様に、多孔質素材で構成されており、直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している。
【0039】
冷媒通路103の中途部には、微細気泡発生槽231が設けられている。微細気泡発生槽231には、気泡発生媒体227が設けられる。気泡発生媒体227は、気体通路55と連通しており、気体通路55には圧縮装置22が連結されている。圧縮装置22は、酸素を圧送する装置であり、例えば圧縮酸素容器と弁とで構成される。
【0040】
また、気泡発生媒体227は導電体であり、第一の実施形態の冷却部材7と同様に、多孔質素材で構成されており、直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している。気泡発生媒体227から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体227を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0041】
次に、第三の実施形態にかかる演算処理装置100の冷却装置201の冷却方法について図5を用いて説明する。
冷媒通路103内の冷媒2は、サーキュレータ4によって循環されている。冷媒2は、冷媒通路103から冷却部材207の液体流通路221に流入し冷却部材207を冷却する。また、冷媒通路103の中途部には、微細気泡発生槽231が設けられており、微細気泡発生槽231には、気泡発生媒体227が設けられている。圧縮装置22から冷媒2内へ酸素を圧送する。圧縮装置22から圧送された酸素は、気体通路55を通って気泡発生媒体227内の通路へと送られる。前記通路へと送られた酸素は気泡発生媒体227の孔から微細気泡として発生し、微細気泡発生槽231の冷媒2に微細気泡が溶存する。すなわち、気泡発生媒体227へ供給された酸素は、気泡発生媒体227に設けられた直径数μm~数十μmの細かな孔を通って、微細気泡となり冷媒2中へ放出される。冷媒2中へ放出される微細気泡は、気泡発生媒体227の表面に放出された瞬間に、周りの冷媒2の流れによって、表面から離間される。
【0042】
冷媒2内の微細気泡は、冷媒2の圧力損失の低減を可能にする。すなわち、圧力損失は冷媒通路103の至る所で発生する冷媒2内部の流体と流体との摩擦による運動エネルギー消散の総和として現れるが、微細気泡を混入することにより、冷媒2内の流体と流体との摩擦を低減させることで圧力損失を低減させることができるのである。
【0043】
また、冷却部材207内部を流れる冷媒2に微細気泡が溶存することにより、冷媒2の圧力損失を効率的に低減して、冷却効率を向上させることができる。また、放熱器5において微細気泡が圧壊することで放熱効率が向上する。
【0044】
冷却部材207を炭素系の多孔質素材で構成することで、することで、より熱伝導性が高くなり放熱性が向上する。また、冷媒2の圧力損失が少なくなることにより、冷却部材207の冷却が効率よく行える。
【0045】
以上のように、演算処理装置100の表面に接触する冷却部材7を有する演算処理装置100の冷却装置1であって、冷却部材7は、炭素系の多孔質セラミックス素材で板状に形成されており、冷却部材7は、冷媒2によって冷却されるものである。
【0046】
このように構成することにより、冷却部材7を炭素系の多孔質セラミックス素材で構成することより熱伝導性が高くなり放熱性が向上する。このため、例えば、CPUであるマイクロプロセッサ100aを有し、高速演算処理に用いられるブリッジなどの各種集積部品を有する演算処理装置100全体を効率よく冷却することができるのである。
【0047】
また、演算処理装置100および冷却部材7は、冷媒2に浸漬されており、冷却部材7の内部には、気体を通す冷却部材内通路27を有し、冷却部材内通路27の気体を微細気泡として冷媒2へ放出するものである。
【0048】
このように構成することにより、冷却部材7から微細気泡が発生するため、冷媒2の冷却効率が向上する。
【0049】
また、冷却部材107は、冷媒通路103と連通する液体流通路121を内部に設け、冷却部材107は、気体を通す冷却部材内通路127を有し、冷却部材内通路127の気体を微細気泡として液体流通路121内の冷媒2へ放出するものであってもよい。
【0050】
このように構成することにより、冷却部材7の液体流通路121に直接微細気泡を発生させることにより、最も圧力損失が発生しやすい液体流通路121内において微細気泡が発生するため、液体流通路121内に到着するまでに微細気泡が圧壊する機会が減る。これにより、冷媒2の圧力損失の低減をより効率的に可能にする。
【0051】
なお、第一~第三の実施形態では、冷媒であるフロン系冷媒に対して、微細気泡として圧縮酸素を溶存させたが、これに限定するものではなく、例えば不活性ガスである窒素やアルゴンを用いることも可能である。
【0052】
また、別の実施形態として、冷媒2は純水で構成されている。純水は通常酸素が溶存している。そこで、本実施形態においては、溶存酸素を除去するために微細気泡として窒素を用いるものである。
【0053】
冷却装置1は、演算処理装置100の表面に接触する冷却部材7を有する演算処理装置100の冷却装置である。演算処理装置100は、小型化および集積化により、発熱量が大きいものが開発されている。例えば、CPUであるマイクロプロセッサ100aを有し、高速演算処理に用いられるブリッジなどの各種集積部品を有する。また、演算処理装置100内で最も発熱するのはマイクロプロセッサ100aだが、他にも高速処理に必要な集積部品も高温となるため演算処理装置100全体を効率よく冷却する必要がある。当該発熱量の大きい半導体素子を有する演算処理装置100を冷却するために放熱効率の良い素材でできた冷却部材7が求められていた。
【0054】
冷却部材7は、炭素系の多孔質セラミックス素材で板状に形成されている。冷却部材7は、半導体素子等で構成された演算処理装置100の一部であるマイクロプロセッサ100aが格納された箱状部材100bの表面に貼設される。マイクロプロセッサ100aは基板100cに搭載されている。マイクロプロセッサ100aから発生した熱は、箱状部材100bの表面から冷却部材7へ伝導され、冷却部材7から空冷式であれば空気中に、冷媒冷却式であれば冷媒2中に放熱される。
【0055】
炭素系の多孔質セラミックス素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。このように構成することにより、炭素系の多孔質素材の空隙に熱が伝導することで、放熱効率の高い素材となる。また、炭素系の多孔質素材は、耐腐食性、耐高温性に優れているため放熱効率の低下を防止することができる。これにより、マイクロプロセッサ100aが想定外の高熱となったときであっても、効率が低下することなく冷却することができる。
【0056】
次に、液浸式の冷却装置1について図2および図3を用いて説明する。
冷却装置1は、演算処理装置100および冷却部材7を冷媒2に浸漬することによって恒常的に冷却する装置であり、冷媒2を貯蔵する冷媒容器3を備える。液浸式の冷却装置1においては、冷媒2が効率的に演算処理装置100の熱を除去するため、ハードウェア密度が高まるという利点がある。また、液浸式の冷却装置1においては、冷媒2の劣化が発生しがたいため、液交換などのメンテナンスが不要であるという利点もある。
純水はコストが低く、蒸発による喪失分を容易に再装填することができる。
【0057】
冷却部材7の内部には、冷却部材内通路27が設けられている。冷却部材内通路27は、気体通路55と連通しており、気体通路55には圧縮装置22が連結されている。圧縮装置22は、不活性ガスである窒素を圧送する装置であり、例えば圧縮窒素容器と弁とで構成される。
【0058】
また、冷却部材7は、多孔質素材で構成されており、図3に示すように、直径数μm~数十μmの細かな孔7Aを多数有している。また、冷却部材7は導電体であり、冷却部材7から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である冷却部材7を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0059】
次に、液浸式の冷却装置1の冷却方法について図2および図3を用いて説明する。
冷媒容器3内の冷媒2は、循環しながら常時冷却されている。冷媒2は、冷媒容器3内の冷却部材7を冷却する。圧縮装置22から冷媒2中の冷却部材7内へ不活性ガスである窒素を圧送する。圧縮装置22から圧送された窒素は、気体通路55を通って冷却部材内通路27へと送られる。冷却部材内通路27へと送られた窒素は冷却部材7の孔7Aから微細気泡として発生し、冷媒容器3内の冷媒2に微細気泡として窒素が溶存する。すなわち、冷却部材内通路27へ供給された窒素は、冷却部材7に設けられた直径数μm~数十μmの細かな孔7Aを通って、微細気泡となり液体中へ放出される。冷媒2内へ放出された窒素は圧力が大きく、分圧が溶存酸素よりも大きくなるため、酸素が不活性ガスである窒素に置換される。脱酸素処理された純水には酸化剤である酸素がなくなるため、マイクロプロセッサ100aやその他の基板100cなどの部品の酸化による劣化を防止することができる。冷媒2は、図示せぬポンプ等により循環されており、チラーなどの冷却器によって冷却される。
【0060】
また、冷媒2内の微細気泡は、冷媒2の冷却効率を向上させる。すなわち、冷媒2中の微細気泡が冷媒2を攪拌することにより、冷媒2の温度の偏りが解消されて均一な温度となり、冷却効率が向上する。また、微細気泡の圧壊により熱エネルギーが消費されるため、冷媒2の冷却効率が向上する。
【符号の説明】
【0061】
1 冷却装置
2 冷媒
3 冷媒容器
4 サーキュレータ
5 放熱器
7 冷却部材
7A 孔
22 圧縮装置
27 冷却部材内通路
55 気体通路
100 演算処理装置
101 冷却装置
107 冷却部材
121 液体流通路
127 冷却部材内通路
図1
図2
図3
図4
図5