(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122813
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】車両のモータ制御システムおよびモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
B60L15/20 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146324
(22)【出願日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0019006
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 鎔 勳
(72)【発明者】
【氏名】朴 成 翼
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA02
5H125EE08
5H125EE09
(57)【要約】
【課題】複数のモータを駆動源とする車両において、効率的なモータトルクの制御を行うモータ制御システムを提供する。
【解決手段】本発明によるモータ制御システムは、複数のモータを駆動源として含む車両のモータ制御システムであって、運転者の要求トルクに対応して複数のモータに求められる要求トルクを決定する要求トルク決定部、複数のモータのそれぞれの現在の回転速度に応じて、複数のモータのそれぞれの最適運転点トルクを決定する最適運転点トルク決定部、および最適運転点トルクに基づいて要求トルクを複数のモータのそれぞれに分配することによって、複数のモータのそれぞれの目標トルクを決定するモータトルク決定部を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータを駆動源として含む車両のモータ制御システムであって、
運転者の要求トルクに対応して前記複数のモータに求められる要求トルクを決定する要求トルク決定部と、
前記複数のモータのそれぞれの現在の回転速度に応じて、前記複数のモータのそれぞれの最適運転点トルクを決定する最適運転点トルク決定部と、
前記最適運転点トルクに基づいて前記要求トルクを前記複数のモータのそれぞれに分配することによって、前記複数のモータのそれぞれの目標トルクを決定するモータトルク決定部と、を含むことを特徴とするモータ制御システム。
【請求項2】
前記モータトルク決定部は、
前記複数のモータの全体の前記最適運転点トルクを合算した値と前記要求トルクとの間の差値を取得し、前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配して前記複数のモータのそれぞれに対するトルク補正値を取得し、前記複数のモータのそれぞれの前記最適運転点トルクに前記トルク補正値を加減して前記目標トルクを決定することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項3】
前記モータトルク決定部は、
前記複数のモータのそれぞれの最大制限トルクに対応して前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配するためのトルク分配比を決定することを特徴とする請求項2に記載のモータ制御システム。
【請求項4】
前記モータトルク決定部は、
前記最大制限トルクが高いモータであるほど前記トルク分配比をさらに高く決定することを特徴とする請求項3に記載のモータ制御システム。
【請求項5】
前記モータトルク決定部は、
前記複数のモータのそれぞれの前記現在の回転速度に応じて前記最大制限トルクを決定することを特徴とする請求項3に記載のモータ制御システム。
【請求項6】
前記モータトルク決定部は、
前記複数のモータの全体の前記最適運転点トルクを合算した値と前記要求トルクとが同じである場合、前記複数のモータのそれぞれの前記最適運転点トルクを前記目標トルクとして決定することを特徴とする請求項2に記載のモータ制御システム。
【請求項7】
前記複数のモータのそれぞれに対して回転速度別に最適運転ライン(optimal operating line)に対応する最適運転点トルクを定義した最適運転ライントルクマップをさらに含み、
前記最適運転点トルク決定部は、前記最適運転ライントルクマップを用いて前記複数のモータのそれぞれの最適運転点トルクを決定することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項8】
前記目標トルクに基づいて前記複数のモータの駆動を制御するモータ制御部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項9】
複数のモータを駆動源として含む車両のモータ制御方法であって、
運転者の要求トルクに対応して前記複数のモータに求められる要求トルクを決定する段階と、
前記複数のモータのそれぞれの現在の回転速度に応じて、前記複数のモータのそれぞれの最適運転点トルクを決定する段階と、
前記最適運転点トルクに基づいて前記要求トルクを前記複数のモータのそれぞれに分配することによって、前記複数のモータのそれぞれの目標トルクを決定する段階と、
前記目標トルクに基づいて前記複数のモータの駆動を制御する段階と、を含むことを特徴とするモータ制御方法。
【請求項10】
前記目標トルクを決定する段階は、
前記複数のモータの全体の前記最適運転点トルクを合算した値と前記要求トルクとの間の差値を取得する段階と、
前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配して前記複数のモータのそれぞれに対するトルク補正値を取得する段階と、
前記複数のモータのそれぞれの前記最適運転点トルクに前記トルク補正値を加減して前記目標トルクを取得する段階と、を含むことを特徴とする請求項9に記載のモータ制御方法。
【請求項11】
前記目標トルクを決定する段階は、
前記複数のモータのそれぞれの最大制限トルクに対応して前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配するためのトルク分配比を決定する段階をさらに含み、
前記トルク補正値を取得する段階は、
前記複数のモータのそれぞれの前記トルク分配比に応じて前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配する段階を含むことを特徴とする請求項10に記載のモータ制御方法。
【請求項12】
前記トルク分配比を決定する段階は、
前記最大制限トルクが高いモータであるほど前記トルク分配比をさらに高く決定する段階を含むことを特徴とする請求項11に記載のモータ制御方法。
【請求項13】
前記目標トルクを決定する段階は、
前記複数のモータのそれぞれの前記現在の回転速度に応じて前記最大制限トルクを決定する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のモータ制御方法。
【請求項14】
前記目標トルクを決定する段階は、
前記複数のモータの全体の前記最適運転点トルクを合算した値と前記要求トルクとが同じである場合、前記複数のモータのそれぞれの前記最適運転点トルクを前記目標トルクとして決定する段階を含むことを特徴とする請求項9に記載のモータ制御方法。
【請求項15】
前記最適運転点トルクは、前記複数のモータのそれぞれの最適運転ラインで前記現在の回転速度に対応するトルク値であることを特徴とする請求項9に記載のモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のモータ制御システムおよびモータ制御方法に関し、より詳細には複数のモータを駆動源として含む車両のモータ制御システムおよびモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境に対する関心が増加するにつれ、環境に優しい車両の普及が活発になっている。環境に優しい車両は排気ガスの排出が少ない車両であり、車両に駆動力を提供する駆動源の一つとしてモータを使用する。このような環境に優しい車両としては純粋電気車両(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車両(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)などがある。
【0003】
単一モータが駆動源として使用される車両の場合、モータに求められるトルクを単一モータで推定しなければならないので、モータのトルク制御時のモータ効率を考慮することが難しい問題がある。しかし、複数のモータが同軸上または特徴ギア比の関係で拘束されて駆動する車両の場合、単一モータを使用する場合に比べて相対的にトルク決定の自由度が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、複数のモータを駆動源として使用する車両において、複数のモータが有するトルク決定の自由度を用いて効率的なモータトルクの制御が実行されるようにする車両のモータ制御システムおよびそのモータ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるモータ制御システムは、複数のモータを駆動源として含む車両のモータ制御システムであって、運転者の要求トルクに対応して前記複数のモータに求められる要求トルクを決定する要求トルク決定部と、前記複数のモータのそれぞれの現在の回転速度に応じて、前記複数のモータのそれぞれの最適運転点トルクを決定する最適運転点トルク決定部と、前記最適運転点トルクに基づいて前記要求トルクを前記複数のモータのそれぞれに分配することによって、前記複数のモータのそれぞれの目標トルクを決定するモータトルク決定部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
前記モータトルク決定部は、前記複数のモータの全体の前記最適運転点トルクを合算した値と前記要求トルクとの間の差値を取得し、前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配して前記複数のモータのそれぞれに対するトルク補正値を取得し、前記複数のモータのそれぞれの前記最適運転点トルクに前記トルク補正値を加減して前記目標トルクを決定し得る。
前記モータトルク決定部は、前記複数のモータのそれぞれの最大制限トルクに対応して前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配するためのトルク分配比を決定し得る。
前記モータトルク決定部は、前記最大制限トルクが高いモータであるほど前記トルク分配比をさらに高く決定し得る。
前記モータトルク決定部は、前記複数のモータのそれぞれの前記現在の回転速度に応じて前記最大制限トルクを決定し得る。
前記モータトルク決定部は、前記複数のモータの全体の前記最適運転点トルクを合算した値と前記要求トルクとが同じである場合、前記複数のモータのそれぞれの前記最適運転点トルクを前記目標トルクとして決定し得る。
【0008】
前記モータ制御システムは、前記複数のモータのそれぞれに対して回転速度別に最適運転ライン(optimal operating line)に対応する最適運転点トルクを定義した最適運転ライントルクマップをさらに含み得る。
前記最適運転点トルク決定部は、前記最適運転ライントルクマップを用いて前記複数のモータのそれぞれの最適運転点トルクを決定し得る。
前記モータ制御システムは、前記目標トルクに基づいて前記複数のモータの駆動を制御するモータ制御部をさらに含み得る。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるモータ制御方法は、複数のモータを駆動源として含む車両のモータ制御方法であって、運転者の要求トルクに対応して前記複数のモータに求められる要求トルクを決定する段階と、前記複数のモータのそれぞれの現在の回転速度に応じて、前記複数のモータのそれぞれの最適運転点トルクを決定する段階と、前記最適運転点トルクに基づいて前記要求トルクを前記複数のモータのそれぞれに分配することによって、前記複数のモータのそれぞれの目標トルクを決定する段階と、前記目標トルクに基づいて前記複数のモータの駆動を制御する段階と、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記目標トルクを決定する段階は、前記複数のモータの全体の前記最適運転点トルクを合算した値と前記要求トルクとの間の差値を取得する段階と、前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配して前記複数のモータのそれぞれに対するトルク補正値を取得する段階と、前記複数のモータのそれぞれの前記最適運転点トルクに前記トルク補正値を加減して前記目標トルクを取得する段階と、を含み得る。
前記目標トルクを決定する段階は、前記複数のモータのそれぞれの最大制限トルクに対応して前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配するためのトルク分配比を決定する段階をさらに含み得る。
前記トルク補正値を取得する段階は、前記複数のモータのそれぞれの前記トルク分配比に応じて前記差値に該当するトルクを前記複数のモータのそれぞれに分配する段階を含み得る。
前記トルク分配比を決定する段階は、前記最大制限トルクが高いモータであるほど前記トルク分配比をさらに高く決定する段階を含み得る。
前記目標トルクを決定する段階は、前記複数のモータのそれぞれの前記現在の回転速度に応じて前記最大制限トルクを決定する段階をさらに含み得る。
【0011】
前記目標トルクを決定する段階は、前記複数のモータの全体の前記最適運転点トルクを合算した値と前記要求トルクとが同じである場合、前記複数のモータのそれぞれの前記最適運転点トルクを前記目標トルクとして決定する段階を含み得る。
前記最適運転点トルクは、前記複数のモータのそれぞれの最適運転ラインで前記現在の回転速度に対応するトルク値であり得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のモータが駆動源として装着された車両において、モータの最大効率を考慮してトルク制御を実行できるため効率的なモータトルクの制御が可能であり、これにより燃比を改善できるので車両の商品性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による車両のモータ制御システムを概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による車両のモータ制御方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明するが、同一または類似の構成要素には同一または類似の図面符号を付与し、これに係る重複する説明は省略する。
【0015】
以下の説明で使用される構成要素に対する接尾辞の「モジュール」および/または「部」は明細書作成の容易さだけを考慮して付与または混用するものであり、それ自体が互いに区別される意味または役割を有するものではない。また、本明細書に記載された実施形態を説明するにあたって関連する公知技術に係る具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を曖昧にすると判断される場合はその詳細な説明を省略する。また、図面は、本明細書に記載された実施形態を容易に理解できるようにするためのものであり、本明細書に開示された技術的思想は図面によって限定されず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含む。
【0016】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために使用されるが、構成要素は上記用語によって限定されない。上記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0017】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる、または「接続されて」いると記載されたときには、その他の構成要素に直接連結されているかまたは接続されているが、中間に他の構成要素が存在し得る。反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いる、または「直接接続されて」いると記載されたときには、中間に他の構成要素が存在しない。
【0018】
本明細書で、「含む」または「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しない。
【0019】
また、本明細書に記載された「~部」、「~器」、「モジュール」などの用語は少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これはハードウェアやソフトウェアまたはハードウェアおよびソフトウェアの結合で具現される。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による車両のモータ制御システムを概略的に示す図であり、変速機の前段に複数のモータが装着されて車両に駆動力を提供する駆動源として作動する場合を示す。
【0021】
図1を参照すると、本実施形態によるモータ制御システム100は、要求トルク決定部110、モータ速度取得部120、最適運転ライン(OOL:optimal operating line)トルクマップ130、最適運転点トルク決定部140、最大制限トルクマップ150、モータトルク決定部160、およびモータ制御部170を含む。
【0022】
要求トルク決定部110は、車両の加速ペダルの操作状態、ブレーキペダルの操作状態などの車両運転情報、ギヤ段、車速、エンジン速度(rpm)、バッテリの充電状態(state of charge、SOC)などの車両状態情報、および道路などの環境変数をリアルタイムで収集し、収集した情報に基づいて運転者の要求トルクを決定する。
【0023】
要求トルク決定部110は、運転者の要求トルクが決定されると、これに基づいてモータ200に求められる要求トルク(以下、「モータ要求トルク」と称する)を決定する。ここで決定されるモータ要求トルクは、複数のモータ200に求められる要求トルクである。運転者の要求トルクからモータ要求トルクを決定する方法には、多様な公知技術が用いられ、本明細書ではこれに関する説明は省略する。
【0024】
モータ速度取得部120は、複数のモータ200のそれぞれに対して現在の回転速度(rpm)を取得する。一例として、モータ200が車輪に付着するインホイールモータである場合、モータ速度取得部120は、エンコーダ、ホールセンサなどの速度センサを含み、これらによって各モータ200の現在の回転速度を検出する。
【0025】
OOLトルクマップ130は、各モータ200に対して回転速度別に最適運転ライン(OOL)に対応するトルク値、すなわち、最適運転点トルクを定義したトルクマップである。OOLトルクマップ130は、各モータ200の特性に対する実験またはシミュレーションによりあらかじめ定義される。OOLトルクマップ130は、テーブル形式でメモリ(図示せず)に保存されて使用される。
【0026】
最適運転点トルク決定部140は、OOLトルクマップ130を用いて各モータ200の最適運転点トルクを決定する。すなわち、最適運転点トルク決定部140は、モータ速度取得部120を介して取得した各モータ200の現在の回転速度をOOLトルクマップ130に入力することによって、OOLトルクマップ130から各モータ200の最適運転点トルクを取得する。
【0027】
モータトルク決定部160は、要求トルク決定部110によりモータ要求トルクが決定されると、各モータ200の最適運転点トルクと最大制限トルクに基づいてモータ要求トルクを分配することによって、各モータ200の目標トルクを決定する。
【0028】
各モータ200の目標トルクを決定するために、モータトルク決定部160はまず、下記の数式1のように複数のモータ200の最適運転点トルク(TOOL)をすべて合算した値とモータ要求トルクとの間の差値(Tdiff)を算出する。
【0029】
【数1】
上記の数式1において、T
Mはモータ要求トルクであり、T
OOL(i)はi番目モータの最適運転点トルクであり、Nはモータの個数を示す。
【0030】
モータトルク決定部160は、上記の数式1により算出された差値(Tdiff)が0である場合、すなわち、複数のモータ200の最適運転点トルク(TOOL)をすべて合算した値とモータ要求トルクとが同じである場合、各モータ200の最適運転点トルクを各モータ200の目標トルクとして決定する。すなわち、モータトルク決定部160は、複数のモータ200の最適運転点トルク(TOOL)をすべて合算した値とモータ要求トルクとが同じである場合、各モータ200が自身の最適運転点トルクだけのモータ要求トルクを担当するように各モータ200の最適運転点トルクを各モータ200の目標トルクとして決定する。
【0031】
これに対し、上記の数式1により算出された差値(Tdiff)が0よりも大きい場合、すなわち、複数のモータ200の最適運転点トルク(TOOL)をすべて合算した値とモータ要求トルクとが相違する場合、モータトルク決定部160は差値(Tdiff)に該当するトルクをモータ200別に分配して各モータ200の目標トルクを決定するための補正値として使用する。すなわち、差値(Tdiff)に該当するトルクが各モータ200に分配されると、モータトルク決定部160は分配されたトルクで各モータ200の最適運転点トルクを補正することによって、各モータ200の目標トルクを取得する。
【0032】
モータトルク決定部160は、差値(Tdiff)に該当するトルク値を各モータ200に分配するとき、各モータ200の最大制限トルクに基づいて分配比を決定する。各モータ200の最大制限トルクは、モータ特性およびモータ200の回転速度に応じてその値が変わる。一例として、モータ200の現在の回転速度が2000rpmであるとき、第1モータの最大制限トルクは170Nmであり、第2モータの最大制限トルクは210Nmである。他の例として、モータ200の現在の回転速度が4000rpmであるとき、第1モータの最大制限トルクは80Nmであり、第2モータの最大制限トルクは125Nmである。
【0033】
モータトルク決定部160は、各モータ200の最大制限トルクを決定するために、最大制限トルクマップ150を用いる。最大制限トルクマップ150は、各モータ200に対して回転速度別に最大制限トルクを定義したトルクマップであり、各モータ200の特性に対する実験またはシミュレーションによりあらかじめ定義される。最大制限トルクマップ150は、テーブル形式でメモリ(図示せず)に保存されて使用される。すなわち、モータトルク決定部160は、モータ速度取得部120を介して取得した各モータ200の現在の回転速度を、最大制限トルクマップ150に入力することによって、最大制限トルクマップ150から各モータ200の最大制限トルクを取得する。
【0034】
モータトルク決定部160は、各モータ200の最大制限トルクを取得すると、下記の数式2のように、各モータ200のトルク分配比(WT(i))を決定する。
【0035】
【数2】
上記の数式2において、W
T(i)はi番目モータのトルク分配比であり、T
L(i)はi番目モータの最大制限トルクを示す。
【0036】
数式2を参照すると、各モータ200のトルク分配比(WT(i))は、全体のモータ200の最大制限トルクを合算した値に対する各モータ200の最大制限トルクの比を用いて決定される。したがって、このように決定されたトルク分配比(WT(i))に応じてトルクが分配される場合、最大制限トルクが大きいモータであるほどより多くのトルクが分配される。
【0037】
モータトルク決定部160は、上述したように、各モータ200のトルク分配比(WT(i))が決定されると、全体のモータ200の最適運転点トルク(TOOL(i))をすべて合算した値とモータ要求トルクとの間の差値(Tdiff)に該当するトルク値を、各モータ200のトルク分配比(WT(i))に合わせて分配する。このように分配されたトルクは、各モータ200の最適運転点トルクを補正して目標トルクを決定するためのトルク補正値として使用される。下記の数式3は各モータ200の最適運転点トルクを補正して各モータ200の目標トルクを決定する方法を示す。
【0038】
【数3】
上記の数式3において、T
T(i)はi番目モータの目標トルクである。
【0039】
上記の数式3を参照すると、モータトルク決定部160は、トルク分配比(WT(i))に合わせて各モータ200に分配されたトルクを、各モータ200の最適運転点トルク(TOOL(i))に加減して各モータ200の目標トルクを決定する。全体のモータ200の最適運転点トルク(TOOL)をすべて合算した値がモータ要求トルク(TM)よりも小さい場合、モータトルク決定部160は各モータ200に分配されたトルクを各モータ200の最適運転点トルク(TOOL(i))に加算して各モータ200の目標トルクを決定する。全体のモータ200の最適運転点トルク(TOOL)をすべて合算した値がモータ要求トルク(TM)よりも大きい場合、モータトルク決定部160は各モータ200に分配されたトルクを各モータ200の最適運転点トルク(TOOL(i))から減算して各モータ200の目標トルクを決定する。
【0040】
モータ制御部170は、モータトルク決定部160により各モータ200の目標トルクが決定されると、各モータ200の出力トルクが目標トルクに収斂するように各モータ200の駆動を制御する。
【0041】
上述したモータ制御システム100において、モータ制御システム100を構成する構成要素、すなわち、要求トルク決定部110、モータ速度取得部120、最適運転点トルク決定部140、モータトルク決定部160、およびモータ制御部170の機能および動作は車両内に装着される一つ以上の制御器(例えば、ハイブリッド制御器(HCU:Hybrid Control Unit)、モータ制御器(MCU:Motor Control Unit))により行われる。また、このような制御器は、一つ以上の中央処理ユニット(central processing unit、CPU)や、その他のチップセット、マイクロプロセッサなどで具現されるプロセッサを含み得る。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態による車両のモータ制御方法を概略的に示す図である。
図2に示す方法は、
図1を参照して説明したモータ制御システム100により行われる。
【0043】
図1を参照すると、本実施形態によるモータ制御システム100は、車両の運転者の要求トルクが決定されると、これに基づいて全体のモータに求められるモータ要求トルクを決定する(S10)。ここで、モータ制御システム100は、車両運転情報(車両の加速ペダルの操作状態、ブレーキペダルの操作状態など)、車両状態情報(ギヤ段、車速、エンジン速度(rpm)、バッテリの充電状態(SOC)など)、環境変数(道路情報など)などに基づいて運転者の要求トルクを決定する。
【0044】
また、モータ制御システム100は、各モータ200の現在の回転速度に対応して各モータ200の最適運転点トルクを決定する(S11)。S11段階で、モータ制御システム100は、メモリ(図示せず)に保存されたOOLトルクマップ130を用いて各モータ200の最適運転点トルクを決定する。OOLトルクマップ130は、各モータ200に対して回転速度別に最適運転ライン(OOL)に対応するトルク値である最適運転点トルクを定義する。したがって、モータ制御システム100は、各モータ200の現在の回転速度をOOLトルクマップ130に入力することによって、OOLトルクマップ130から各モータ200の最適運転点トルクを取得する。
【0045】
各モータ200の最適運転点トルクが決定されると、モータ制御システム100は、これらをすべて合算して全体のモータ200の最適運転点トルク合算値を取得する。また、モータ制御システム100は、このように取得した全体のモータ200の最適運転点トルク合算値をS10段階で決定されたモータ要求トルクと比較し、二つの値が同じであるか否かを判定する(S12)。
【0046】
S12段階で全体のモータ200の最適運転点トルク合算値がモータ要求トルクと同じであると判断されると、モータ制御システム100は各モータ200の最適運転点トルクを各モータ200の目標トルクとして決定する(S13)。
【0047】
これに対し、S12段階で全体のモータ200の最適運転点トルク合算値がモータ要求トルクと相違すると判断されると、モータ制御システム100は二つの値の差値に該当するトルクを各モータ200に分配するためのトルク分配比を、各モータ200の最大制限トルクに応じて決定する(S14)。S14段階で、各モータ200の最大制限トルクは各モータ200の現在の回転速度に応じて決定される。
【0048】
S14段階により各モータ200のトルク分配比が決定されると、モータ制御システム100は各モータ200のトルク分配比に基づいて、全体のモータ200の最適運転点トルク合算値とモータ要求トルクとの間の差値に該当するトルクを、各モータ200に分配する(S15)。
【0049】
また、モータ制御システム100は、トルク分配比に応じて各モータ200に分配されたトルクを各モータ200の最適運転点トルクに加減して各モータ200の目標トルクを決定する(S16)。S16段階で、モータ制御システム100は、全体のモータ200の最適運転点トルク合算値がモータ要求トルクよりも小さい場合、S15段階で各モータ200に分配されたトルクを、各モータ200の最適運転点トルクに加算して各モータ200の目標トルクを決定する。これに対し、全体のモータ200の最適運転点トルク合算値がモータ要求トルクよりも大きい場合、モータ制御システム100はS15段階で各モータ200に分配されたトルクを、各モータ200の最適運転点トルクから減算して各モータ200の目標トルクを決定する。
【0050】
モータ制御システム100は、上述したS13段階またはS16段階により各モータ200の目標トルクが決定されると、各モータ200の目標トルクに応じて各モータ200の駆動を制御する(S17)。
【0051】
上述した実施形態によれば、モータ制御システム100は複数のモータを駆動源として装着した車両において、各モータの最適運転ラインを考慮してモータトルクの制御を行うことによって、モータの効率を上昇させることができ、そのため車両の燃比が向上して車両の商品性を向上させることができる。
【0052】
上述した実施形態による車両のモータ制御方法は、ソフトウェアにより実行される。ソフトウェアにより実行されるとき、本発明の構成手段は必要な作業を実行するコードセグメントである。プログラムまたはコードセグメントは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存されるか、または伝送媒体または通信網で搬送波に結合されたコンピュータデータ信号によって伝送される。
【0053】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータシステムによって読み取られるデータが保存されるすべての種類の記録装置を含む。コンピュータ読み取り可能な記録装置の例としては、ROM、RAM、CD-ROM、DVD_ROM、DVD_RAM、磁気テープ、フロッピーディスク(登録商標)、ハードディスク、光データ保存装置などがある。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ネットワークに接続されたコンピュータ装置に分散して分散方式でコンピュータ読み取り可能なコードが保存されて実行される。
【0054】
以上、参照した図面および記載された発明の詳細な説明は、単に本発明の例示的なものであり、これは単に本発明を説明する目的で使用され、意味限定や本発明の範囲を限定するために使用されたものではない。したがって、本技術分野の通常の知識を有する者は、これに基づいて容易に選択して代替することができる。また、当業者は本明細書で説明された構成要素のうちの一部を性能の劣化なしに省略するか、または性能を改善するために構成要素を追加することができる。のみならず、当業者は工程環境や装備により本明細書で説明した方法段階の順序を変更することもできる。したがって、本発明の範囲は説明された実施形態だけでなく、その均等物によっても決定される。
【符号の説明】
【0055】
100 モータ制御システム
110 要求トルク決定部
120 モータ速度取得部
130 最適運転ライン(OOL)トルクマップ
140 最適運転点トルク決定部
150 最大制限トルクマップ
160 モータトルク決定部
170 モータ制御部
200 モータ