(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122839
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ジカルバゾールを有する光電変換素子用材料、有機薄膜、光電変換素子および撮像素子
(51)【国際特許分類】
H01L 51/42 20060101AFI20220816BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20220816BHJP
C07D 491/147 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01L31/08 T
H01L31/10 A
C07D491/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017115
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021019520
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三枝 優太
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 直朗
(72)【発明者】
【氏名】島 大和
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊二
(72)【発明者】
【氏名】北原 秀良
【テーマコード(参考)】
4C050
5F849
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA08
4C050BB04
4C050CC04
4C050DD07
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH01
4C050HH02
4C050HH04
5F849AA03
5F849AB11
5F849BA05
5F849BB03
5F849XA02
5F849XA13
5F849XA45
5F849XA46
5F849XA47
5F849XA55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】HOMO準位が深く、優れた耐熱性を持つ光電変換素子用材料を利用し、光電変換素子に用いる有機薄膜を提供することにより、その有機薄膜を適用する各種の光電変換素子、特に撮像素子、及びこれを用いる光センサを提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるジカルバゾール環を有する化合物からなる光電変換素子用材料。
(式中、Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジカルバゾール環を有する化合物からなる光電変換素子用材料。
【化1】
(式中、
Xは、酸素原子または硫黄原子を表し、
L1およびL2は、相互に同一でも異なってもよく、単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基の2価基を表し、
Ar1およびAr2は、相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、
R1~R12は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、隣り合う基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
一般式(1)において、Xは酸素原子であり、かつ、Ar1及びAr2は、相互に同一でも異なってもよい、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項3】
一般式(1)において、Ar1およびAr2は、下記一般式(2a)~(2u)からなる群より選択される構造である、請求項1または2に記載の光電変換素子用材料。
【化2】
(式中、
Ar3は、一般式(1)中のAr1およびAr2の定義と同じであり、
R13~R15は、相互に同一でも異なってもよく、一般式(1)中のR1~R12の定義と同じであり、
破線部は、結合部位を示し、
aは、0~5の整数を示し、
bは、0~4の整数を示し、
cは、0~3の整数を示し、
dは、0~2の整数を示す。)
【請求項4】
最高被占分子軌道(HOMO)準位が-5.8eV以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光電変換素子用材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光電変換素子用材料を含む、有機薄膜。
【請求項6】
請求項5に記載の有機薄膜を含む、光電変換素子。
【請求項7】
有機薄膜がブロッキング層である、請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
有機薄膜が光電変換層である、請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の光電変換素子を含む、撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルバゾール環を有する化合物からなる光電変換素子材料、有機薄膜、光電変換素子、撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は太陽電池や光センサ等に広く利用され、その中でも撮像素子であるイメージセンサはテレビカメラやスマートフォン搭載のカメラだけでなく、運転支援システムの画像入力装置にも用いられるため、その用途、市場は拡大している。
【0003】
これまでの撮像素子の材料は、Si膜やSe膜といった無機材料が使用されており、その撮像方法としてはプリズムを用い、入射光を色分離する3板式と、カラーフィルターを用いた単板式の二つが主流であった。しかし、三板式は光の利用率は高いものの、プリズムを使用するため小型化が難しく、単板式は小型化が比較的容易であるが、代わりにカラーフィルターを使用するため、解像度、光の利用率が悪かった(非特許文献1)。
【0004】
有機物は無機物と比較して、吸収波長の選択性が高いため、それぞれの波長に合わせた材料を組み合わせることでプリズムを使用せずとも、三原色に対しそれぞれ光を効率よく利用できる小型の撮像素子を構築することが可能となる。また有機物を用いた光電変換素子では、素子のフレキシブル性や素子作成において塗布プロセスを用いた大面積化といった価値を付加できる可能性がある(非特許文献2)。
【0005】
このような事から、有機物を用いた光電変換素子は次世代の撮像素子への展開が期待されており、いくつかの報告がなされている。例えばキナクリドン、キナゾリン誘導体を光電変換素子に用いた例(特許文献1)、ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を光電変換素子に用いた例(特許文献2)、インドロカルバゾールを光電変換素子に用いた例(特許文献3)などがある。一般的に有機撮像素子は高コントラスト化、省電力化を目的とし、暗電流の低減を目指すことによって性能は向上すると考えられている。暗電流の低減のため、光電変換部と電極部の間に、正孔ブロッキング層、もしくは電子ブロッキング層を挿入する手法が用いられることもある。
【0006】
正孔ブロッキング層、並びに、電子ブロッキング層は、有機エレクトロニクス分野では一般的に使用される手法であり、それぞれデバイスの構成膜中において、電極または導電膜と、それ以外の膜の界面に配置され、正孔もしくは電子の逆移動を制御しながら、必要な電荷は速やかに移動する。特許文献4では電子ブロッキング材料として最高被占軌道(HOMO)準位が-4.7~-5.8eVを持つ化合物が、電極への電荷の受け渡しを効率化するのに有効であることを提案している。
【0007】
光電変換層には高い感度が求められるが、高感度化には以下のような方法がある。
・光電変換はp型半導体とn型半導体の界面で起こるため、活性層をバルクヘテロ構造とし、界面の面積を増やす。
・光吸収で生成した励起子から正孔と電子を効率的に分離するため、アクセプター性の強い化合物を活性層に使用する。
【0008】
電子ブロック層を備えた素子で、活性層をバルクヘテロ構造とした場合、電子ブロック層とn型半導体との界面が生じる。アクセプター性の強い化合物をn型半導体として使用した場合、適切なエネルギー準位の化合物を電子ブロッキング層として使用しないと、特許文献5に示されるように、有機半導体材料の最高被占軌道(HOMO)からアクセプター性の強い化合物(特許文献5ではフラーレン誘導体)の最低空軌道(LUMO)への電子移動が起こり、暗電流特性が悪くなる。特許文献4で提案されているHOMO準位の電子ブロッキング層では、活性層にフラーレン誘導体のようなアクセプター性が強く、LUMO準位が深い材料を使用した場合、電子ブロッキング層のHOMO準位と活性層中のn型半導体のLUMO準位とのエネルギー準位が近くなり、活性層中のn型半導体材料から電子ブロッキング層への電子移動が起こり、暗電流特性が悪くなる。
【0009】
上記電子移動を起こさせないようにするためには、電子ブロッキング層に使用する材料のHOMO準位を深くする必要がある。
【0010】
また加えてブロック層に用いられる材料に求められる特性として熱安定性が挙げられる。特に撮像素子では、カラーフィルター設置、保護膜設置、素子のハンダ付け等、加熱工程を有する製造プロセスへの適用や保存性の向上を考慮するため、有機ELや他の有機エレクトロニクスデバイスよりも高い熱安定性が求められる。特許文献4ではガラス転移温度が140℃以上を有する電子ブロッキング材料を使用することで素子の熱安定性の向上を報告している。しかし、特性としては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本国特許第4945146号公報
【特許文献2】日本国特開2018-170487号公報
【特許文献3】日本国特開2018-085427号公報
【特許文献4】日本国特開2011-187937号公報
【特許文献5】日本国特許第5624987号公報
【特許文献6】日本国特許第6389459号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】映像情報学会メディア協会誌、60,3,291(2006)
【非特許文献2】Adv.Mater.28,4766(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記の現状を鑑みてなされたものであり、HOMO準位が深く、優れた耐熱性を持つ光電変換素子用材料を利用し、光電変換素子に用いる有機薄膜を提供することにより、その有機薄膜を適用する各種の光電変換素子、特に撮像素子、及びこれを用いる光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記の課題を解決するために優れた耐熱性、および電子阻止性を示すジカルバゾール構造を有する化合物を光電変換素子用材料として用い、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、以下にかかるものである。
【0016】
下記一般式(1)で表されるジカルバゾール環を有する化合物からなる光電変換素子用材料。
【0017】
【化1】
(式中、
Xは、酸素原子または硫黄原子を表し、
L1およびL2は、相互に同一でも異なってもよく、単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基の2価基を表し、
Ar1およびAr2は、相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、
R1~R12は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、隣り合う基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【発明の効果】
【0018】
本発明の深いHOMO準位を持つ光電変換素子用材料は、その材料を含む有機薄膜として、各種の光電変換素子に適用できる。それにより、暗電流特性の優れた光電変換素子、特に撮像素子、及びこれを用いる光センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の光電変換素子の一つの構成例である。
【
図2】
図2は、一般式(1)で表される化合物の例として、化合物(1-1)~(1-19)の構造を示す図である。
【
図3】
図3は、一般式(1)で表される化合物の例として、化合物(1-20)~(1-38)の構造を示す図である。
【
図4】
図4は、一般式(1)で表される化合物の例として、化合物(1-39)~(1-59)の構造を示す図である。
【
図5】
図5は、一般式(1)で表される化合物の例として、化合物(1-60)~(1-79)の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本明細書において「ないし」とは、範囲を表す用語であり、例えば「5ないし10」との記載は、「5以上10以下」を意味し、「ないし」の前後に記載される数値自体も含む範囲を表す。
【0022】
<<光電変換素子用材料>>
光電変換素子用材料は、下記一般式(1)で表されるジカルバゾール構造を有する化合物からなる。
【0023】
【化2】
(式中、
Xは、酸素原子または硫黄原子を表し、
L1およびL2は、相互に同一でも異なってもよく、単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基の2価基を表し、
Ar1およびAr2は、相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、
R1~R12は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、隣り合う基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0024】
一般式(1)中の「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」、又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」の2価基としては、特に限定されないが、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、チエニレン基、フラニレン基、フェナントレニレン基、ピリジレン基、ベンゾフラニレン基、ベンゾチエニレン基、などを挙げることができる。さらに、炭素数6ないし30のアリーレン基及び炭素数2ないし30のヘテロアリーレン基から選択することもできる。
【0025】
一般式(1)中の「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」、又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」としては、特に限定されないが、例えば、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基及び、カルボリニル基などを挙げることができる。さらに、炭素数6ないし30のアリール基及び炭素数2ないし30のヘテロアリール基から選択することもできる。
【0026】
一般式(1)中の「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、又は「炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」としては、特に限定されないが、例えば、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基及び、2-ブテニル基などを挙げることができる。
【0027】
一般式(1)中の「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、特に限定されないが、例えば、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基及び、2-アダマンチルオキシ基などを挙げることができる。
【0028】
一般式(1)中の「置換若しくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、特に限定されないが、例えば、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基及び、フェナントレニルオキシ基などの炭素数6ないし30のアリールオキシ基を挙げることができる。
【0029】
一般式(1)中の「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」、「置換縮合多環芳香族基」、「置換メチレン基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」、又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、特に限定されないが、例えば、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基若しくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基のような基を挙げることができ、これらの置換基は、更に前記例示した置換基で置換されていてもよい。
【0030】
一般式(1)において、好ましくは、Xは酸素原子であり、かつ、Ar1及びAr2は、相互に同一でも異なってもよい、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基である。
【0031】
一般式(1)において、Ar1およびAr2は、下記一般式(2a)~(2u)からなる群より選択される構造であってもよい。
【0032】
【化3】
(式中、
Ar3は、一般式(1)中のAr1およびAr2の定義と同じであり、
R13~R15は、相互に同一でも異なってもよく、一般式(1)中のR1~R12の定義と同じであり、
破線部は、結合部位を示し、
aは、0~5の整数を示し、
bは、0~4の整数を示し、
cは、0~3の整数を示し、
dは、0~2の整数を示す。)
【0033】
一般式(1)において、L1およびL2は、相互に同一でも異なってもよく、単結合、
フェニレン基、およびビフェニレン基からなる群より選択される構造であってもよい。
【0034】
一般式(1)で表されるジカルバゾール環を有する化合物の中で、好ましい化合物の具体例を
図2~
図5に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0035】
光電変換素子用材料は、暗電流抑制の観点から、HOMO準位が-5.8eV以下であることが好ましい。
【0036】
上述したジカルバゾール骨格を有する化合物は、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば特許文献6)。
【0037】
一般式(1)で表される化合物の精製は、カラムクロマトグラフィーによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行うことができる。化合物の同定は、NMR分光法によって行うことができる。物性値として、ガラス転移温度とHOMO準位の測定を行うことが好ましい。ガラス転移温度は薄膜状態の安定性の指標となるものであり、HOMO準位は正孔輸送性の指標となるものである。
【0038】
ガラス転移温度は、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって求めることができる。
【0039】
HOMO準位は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって求めることができる。
【0040】
<<有機薄膜>>
光電変換素子用材料は、蒸着法、スピンコート法及びインクジェット法などの公知の方法によって有機薄膜を形成することができる。また、光電変換素子用材料は、単独で成膜してもよいが、複数種を混合して成膜することもできる。更に本発明の効果を損なわない範囲で、他の化合物と混合して成膜することもできる。
【0041】
光電変換素子用材料を含む有機薄膜は、ブロッキング層、光電変換層に用いることができ、光電変換素子、特に撮像素子への使用に適している。
【0042】
<<光電変換素子>>
光電変換素子の構成としては、例えば、順に第1電極(陽極)、ブロッキング層、光電変換層、第2電極(陰極)を有する。ブロッキング層は、正孔ブロッキング層または電子ブロッキング層であり、好ましくは、電子ブロッキング層である。特に好ましくは、電子ブロッキング層が光電変換素子用材料を含む有機薄膜である。このような多層構造においては層を追加することが可能であり、例えば、順に第1電極、電子ブロッキング層、光電変換層、正孔ブロッキング層、第2電極を有する構成とすることもできる。
【0043】
<<光電変換層>>
光電変換層は、有機材料でも無機物でもよく、受光した光量に応じた信号電荷を発生することができればよい。光電変換層が有機材料の場合、その有機半導体膜は、一層であっても複数の層であってもよく、一層の場合はp型有機半導体膜、n型有機半導体膜、又はp型有機半導体及びn型有機半導体の混合膜(バルクヘテロ構造)が用いられる。また、複数の層である場合は、p型有機半導体膜、n型有機半導体膜、又はp型有機半導体及びn型有機半導体混合膜のいずれか2つ以上を積層した構造であり、層間にバッファ層を挿入することも可能である。
【0044】
前記光電変換層に用いられるp型半導体は、ドナー性の有機半導体であり、主に正孔輸送性の有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある化合物である。
p型半導体としては、特に限定されないが、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、キナクリドン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体、ベンゾチオフェン誘導体、ジナフトチエノチオフェン誘導体、ジアントラセノチエノチオフェン誘導体、ベンゾビスベンゾチオフェン誘導体、チエノビスベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾチエノビスベンゾチオフェン誘導体、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体、ジベンゾチエノジチオフェン誘導体、ベンゾジチオフェン誘導体、ナフトジチオフェン誘導体、アントラセノジチオフェン誘導体、テトラセノジチオフェン誘導体、ペンタセノジチオフェン誘導体に代表されるチエノアセン系材料やトリアリールアミン化合物、カルバゾール化合物といったアミン系誘導体、インデノカルバゾール誘導体などを挙げることができる。
【0045】
前記光電変換層に用いられるn型有機半導体は、アクセプター性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン、アントラセン、フラーレン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、フルオランテン、又はこれらの誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
【0046】
また前記光電変換層の膜厚は、100~1000nmであることが好ましく、更に好ましくは100~500nmである事が望ましい。
【0047】
<<導電性薄膜>>
導電性薄膜は、陽極、陰極の電極であり、これらは導電材料により構成される。透明導電性薄膜であってもよい。陽極、陰極としては、一般に電極として用いられている導電材料であれば特に制限はなく、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化モリブデン(MoO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、酸化窒化チタン(TiNxOx)、窒化チタン(TiN)等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。
【0048】
<<正孔ブロッキング層>>
正孔ブロッキング層が第2電極(陰極)と光電変換層との間に挿入されても良いが、これに用いられる材料としては電子輸送能を保有する材料が好ましい。例えば、ピリジン、キノリン、アクリジン、インドール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、フェナントロリンのような含窒素複素環を含む有機分子及び有機金属錯体で、更に可視光領域の吸収が少ない材料が好ましい。また、5nmから30nm程度の薄膜で形成する場合には可視光領域に吸収を有するフラーレン及びフラーレン誘導体などを用いることもできる。
【0049】
<<撮像素子>>
撮像素子は、前記光電変換素子を含むことで構成される。
【実施例0050】
以下、実施の形態を実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
窒素置換した反応容器に、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン:10.4g、THF:40mlを加えて冷却し、溶液温度を0℃以下に維持しながら、n―ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6mol/L)を滴下した。さらに、0℃で30分撹拌した後、室温で30分撹拌した。続いて、THF:25ml、ジベンゾフラン:5.0gを加えて加熱し、60℃で2時間撹拌した。次いで、-60℃以下に冷却しながら、1,2-ジヨードエタン:16.8gを加えた後、室温で一晩撹拌した。水、ジクロロメタンを加えた後、分液操作によって有機層を採取した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。この粗製物にヘプタンを加え、撹拌した後、析出物をろ過によって採取し、4,6-ジヨードジベンゾフランの薄黄色紛体2.7g(収率22%)を得た。
上記で得られた4,6-ジヨードジベンゾフラン:2.7g、2-ブロモアニリン:2.2g、tert-ブトキシナトリウム:1.5g、トルエン:27mlを窒素置換した反応容器に加え、1時間窒素ガスを通気した。この後、該反応容器に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.2g、ジフェニルホスフィノフェロセン:0.3gを加えて加熱し、100℃で4時間撹拌した。室温まで冷却し、不溶物をろ過によって除去した後、ろ液を減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。この粗製物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/n-ヘキサン)によって精製し、N4,N6-ビス(2-ブロモフェニル)-ジベンゾフラン‐4,6―ジアミンの薄褐色紛体2.4g(収率73%)を得た。
得られた5,7-ジヒドロ-フロ[2,3-a:5,4-a’]ジカルバゾール:7.5g、2-ヨード-9,9-ジメチルフルオレン:17.3g、ヨウ化銅:0.2g、リン酸三カリウム:13.8g、1,2-シクロヘキサンジアミン:7.4g、1,4-ジオキサン:60mlを窒素置換した反応容器に加えて加熱し、95℃で45時間撹拌した。室温まで冷却し、水:60ml、トルエン:60mlを加えた後、トルエンを用いた抽出操作を行うことによって有機層を採取した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。この粗製物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/n-ヘプタン)によって精製し、5,7-ジヒドロ-5,7-ビス(9,9-ジメチルフルオレン‐2-イル)-フロ[2,3-a:5,4-a’]ジカルバゾール(化合物1-3)の白色紛体13.8g(収率87%)を得た。