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特開2022-122851中継弁装置およびこのような中継弁装置を備えた車両用の制動装置
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  • 特開-中継弁装置およびこのような中継弁装置を備えた車両用の制動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122851
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】中継弁装置およびこのような中継弁装置を備えた車両用の制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 15/18 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
B60T15/18 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022018824
(22)【出願日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】10 2021 103 053.6
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルクス デーク
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ジャンヌッツィ
(72)【発明者】
【氏名】フリートベルト レーター
【テーマコード(参考)】
3D049
【Fターム(参考)】
3D049CC03
3D049HH16
3D049KK16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中間エレメントとケーシングとの間の少なくとも1つの密閉を付加的なシールエレメントなしに行う。
【解決手段】中継ピストン30が、ピストンプレート31から長手方向Lに延びるピストンピン32を有し、長手方向でピストンプレートガイド11内で運動可能であり、ケーシング10の内部空間を、ピストンピン側の容積80と、ピストンピンとは反対側の容積70とに分割する、中継ピストンと、ピストンピン側の容積を、ピストンプレート側の容積81と、ピストンプレートとは反対側の容積80とに分割し、貫通開口51を介して、ピストンプレート31への流体の通流量を制限する、中間エレメント50とを有し、中間エレメントストッパ14が、ピストンプレートの方向への中間エレメントの運動を制限し、かつ中間エレメントストッパに、中間エレメントが流体圧を介してシールするように当付け可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に商用車用の中継弁装置(1)であって、
ケーシング(10)内に配置された中継ピストン(30)であって、該中継ピストン(30)が、ピストンプレート(31)から長手方向(L)に延びるピストンピン(32)を有し、前記長手方向(L)にピストンプレートガイド(11)内で運動可能であり、前記ピストンプレート(31)が、前記ケーシング(10)の内部空間を、ピストンピン側の容積(80)と、ピストンピンとは反対側の容積(70)とに分割する、中継ピストン(30)と、
弁装置(40)であって、貯蔵圧リザーバからの流体を前記ピストンピン側の容積(80)内に導入することができるように、前記ピストンピン(32)により操作可能である、弁装置(40)と、
前記ピストンピン(32)の周囲に配置され、前記長手方向(L)に中間エレメントガイド(12)内で該中間エレメントガイド(12)に対して相対的に運動可能な中間エレメント(50)であって、該中間エレメント(50)が、前記ピストンピン側の容積(80)を、さらにピストンプレート側の容積(81)と、ピストンプレートとは反対側の容積(82)とに分割し、少なくとも1つの貫通開口(51)を介して、前記ピストンプレート(31)への前記流体の通流量を制限する、中間エレメント(50)と
を有しており、
前記中継弁装置(1)が、中間エレメントストッパ(14)を有しており、該中間エレメントストッパ(14)が、前記ピストンプレート(31)の方向への前記中間エレメント(50)の運動を制限し、かつ前記中間エレメントストッパ(14)に、前記中間エレメント(50)が流体圧を介して密閉するように当付け可能である、中継弁装置(1)。
【請求項2】
前記中間エレメント(50)が、前記中間エレメントストッパ(14)における当付けのための領域において、面平行に、または斜めに形成されている、請求項1記載の中継弁装置(1)。
【請求項3】
前記中継弁装置(1)が、シールエレメント(53)を有しており、該シールエレメント(53)は、前記中間エレメント(50)が前記シールエレメント(53)を介して前記ピストンピン(32)に対して密閉可能であるように、規定されている、請求項1または2記載の中継弁装置(1)。
【請求項4】
前記中間エレメントストッパ(14)が、前記ケーシング(10)により形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の中継弁装置(1)。
【請求項5】
前記中間エレメントガイド(12)が、前記中間エレメントストッパ(14)を形成するために、前記ピストンプレートガイド(11)に対して、前記長手方向(L)に関して、前記ピストンピン(32)から離れる方向に向いた半径方向でセットバックされており、これにより、前記ピストンプレートガイド(11)と前記中間エレメントガイド(12)との間の移行部が、前記中間エレメントストッパ(14)としての段部を形成する、請求項4記載の中継弁装置(1)。
【請求項6】
前記中継弁装置(1)が、中間エレメント座(60)を有しており、該中間エレメント座(60)が、前記長手方向(L)に中間エレメント座ガイド(13)内で運動可能であり、かつ前記弁装置(40)と前記中間エレメント(50)との間に配置されており、前記中間エレメント座(60)は、該中間エレメント座(60)が少なくとも部分的に前記中間エレメント(50)に当付け可能であるように、かつ前記中間エレメント座(60)が前記流体圧を介して前記中間エレメント(50)を前記中間エレメントストッパ(14)に密閉式に当て付けることができるように、構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の中継弁装置(1)。
【請求項7】
前記中継ピストン(30)の、前記弁装置(40)が操作されていない位置において、前記中間エレメント座(60)が前記弁装置(40)に密閉するように載着している、請求項6記載の中継弁装置(1)。
【請求項8】
前記中継弁装置(1)が、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ(15)を有しており、該中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ(15)が、前記中間エレメント(50)の方向への前記中間エレメント座(60)の運動を制限し、前記中間エレメント座ストッパ(15)に、前記中間エレメント座(60)が前記流体圧を介して当付け可能である、請求項6または7記載の中継弁装置(1)。
【請求項9】
前記中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ(15)が、前記ケーシング(10)により形成されている、請求項8記載の中継弁装置(1)。
【請求項10】
前記中間エレメント座ガイド(13)が、前記中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ(15)を形成するために、前記中間エレメントガイド(12)に対して、前記長手方向(L)に関して、前記ピストンピン(32)から離れる方向に向いた半径方向でセットバックされており、これにより、前記中間エレメントガイド(12)と前記中間エレメント座ガイド(13)との間の移行部が、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ(15)としての段部を形成する、請求項9記載の中継弁装置(1)。
【請求項11】
前記長手方向(L)で、前記中間エレメントストッパ(14)に対する前記中間エレメント(50)の最大の間隔が、前記中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ(15)に対する前記中間エレメント座(60)の最大の間隔以下である、請求項8から10までのいずれか1項記載の中継弁装置(1)。
【請求項12】
前記中継弁装置(1)が、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパ(20)を有しており、該中間エレメント座ストッパ(20)が、前記中間エレメント(50)から離れる方向への前記中間エレメント座(60)の運動を制限する、請求項6から11までのいずれか1項記載の中継弁装置(1)。
【請求項13】
前記中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパ(20)が、少なくとも1つのストッパピンにより形成されている、請求項12記載の中継弁装置(1)。
【請求項14】
前記中間エレメント座(60)と前記中間エレメント(50)とが、互いに対峙する側に、それぞれ少なくとも1つの輪郭区分(52,61)を有しており、該輪郭区分(52,61)は、前記長手方向(L)に関する回動防止部を形成するために、互いに形状結合式に当付け可能であるように、構成されている、請求項6から13までのいずれか1項記載の中継弁装置(1)。
【請求項15】
車両、特に商用車用の制動装置であって、前記制動装置が、請求項1から14までのいずれか1項記載の少なくとも1つの中継弁装置(1)を有している、制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に商用車用の中継弁装置と、このような中継弁装置を備えた車両、特に商用車用の制動装置とに関する。
【0002】
たとえば比例・中継弁のような中継弁装置は、特に車両において、圧縮空気を、制動装置またはエアサスペンション装置のような消費器に調量して送るために使用される。商用車では、中継弁装置は、たとえばこれに関連して、電子制御ブレーキシステム(EBS)のためにも使用され、これによりブレーキシリンダのためのブレーキ圧を対応する制御に応じて設定することができる。
【0003】
たとえば欧州特許出願公開第1391363号明細書は、電子制御ブレーキシステム(EBS)のホイールおよびアクスル変調器のための比例・中継弁の構成を開示している。この比例弁では、流入弁を、制御圧を介して運動可能な中継ピストンにより開放することができ、これにより、貯蔵圧を中継作業チャンバに導入することができる。中継ピストンのピストンプレートと中継作業チャンバとの間には、オリフィスを備えた中間エレメントが設けられており、これにより貯蔵圧と制御圧との間の圧力均衡を時間的に遅延させることができる。時間的な遅延を、専らオリフィスを介して制御し、渦流を阻止するために、中間エレメントは、中継ピストンのピストンピンに対して、かつケーシング壁に対してそれぞれ1つのシールエレメントによりシールされている。シールエレメントは、変化する圧力比、ひいてはこれに伴う中継運動または少なくとも力作用に基づいて、摩耗に曝されており、この摩耗は、密閉性に影響を与えてしまう。
【0004】
したがって、上述の構成を鑑みて、本発明の課題は、中継弁装置ならびにこのような中継弁装置を備えた制動装置を改良して、中間エレメントとケーシングとの間の少なくとも1つの密閉を付加的なシールエレメントなしに行うことができるようにすることである。
【0005】
この課題は、独立請求項に記載の形式の中継弁装置およびこのような中継弁装置を備えた、車両用の制動装置によって解決される。本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明によれば、特に商用車用の中継弁装置は、
-ケーシング内に配置された中継ピストンであって、中継ピストンが、ピストンプレートから長手方向に延びるピストンピンを有し、長手方向にピストンプレートガイド内で運動可能であり、ピストンプレートが、ケーシングの内部空間を、ピストンピン側の容積と、ピストンピンとは反対側の容積とに分割する、中継ピストンと、
-弁装置であって、貯蔵圧リザーバからの流体をピストンピン側の容積に導入することができるように、ピストンピンにより操作可能である、弁装置と、
-ピストンピンの周囲に配置され、長手方向に中間エレメントガイド内でこの中間エレメントガイドに対して相対的に運動可能な中間エレメントであって、中間エレメントが、ピストンピン側の容積を、さらにピストンプレート側の容積と、ピストンプレートとは反対側の容積とに分割し、少なくとも1つの貫通開口を介して、ピストンプレートへの流体の通流量を制限する、中間エレメントと
を有しており、
中継弁装置が、中間エレメントストッパを有しており、中間エレメントストッパが、ピストンプレートの方向への中間エレメントの運動を制限し、かつ中間エレメントストッパに、中間エレメントが流体圧を介して密閉するように当付け可能である。
【0007】
中継ピストンは、たとえば、ピストンピンとは反対側の容積内でピストンプレートに加えられる制御圧を介して、ピストンプレートガイド内で長手方向に、ピストンピンとは反対側の容積とは反対の方向に運動させられる。たとえば、ピストンピンの、ピストンプレートとは反対側の端部区分と、弁装置の、ピストンピンの反対側の端部区分に面した面との当付けを介した弁装置との当付けにおいて、かつ中継弁の対応する上述の運動もしくは引き続きの運動により、弁装置は、貯蔵圧リザーバからピストンピン側の容積への流体接続部を開放することができる。ピストンピン側の容積の、ピストンプレートとは反対側の容積は、消費器接続部を有していてよく、この消費器接続部を介して、貯蔵圧を、ブレーキシリンダのような消費器に伝達可能である。ピストンピンとは反対側の容積内にかかっている制御圧と、ピストンピン側の容積内にかかっている貯蔵圧との間の圧力均衡のために、中間エレメントは、少なくとも1つの貫通開口を有している。中間エレメントの、この少なくとも1つの貫通開口の構成により、貯蔵圧リザーバから導入される流体の通流量を、圧力均衡を予め規定された時間だけ遅延させる通流量に調整することができる。振動と、この振動に伴う騒音発生および/または材料負荷を阻止するために、中継弁装置は、中間エレメントを、貯蔵圧リザーバから導入される流体の流体圧を介して中間エレメントストッパに押し付けることができ、これにより中間エレメントストッパに密閉式に当て付けることができるように、構成されている。このような密閉は、完全に流体密に構成される必要はなく、残っている流体通流性が、振動励起と、振動に関連する騒音発生および/または材料負荷に、予め規定された許容範囲に関して大きく寄与しない程度にのみ密閉するようになっていればよい。ピストンプレートとは反対側の容積内で中間エレメントにかかっている流体圧を介した、中間エレメントと中間エレメントストッパとの間のこのような密閉を介して、この箇所における密閉のためのシールエレメントを省略することができる。
【0008】
1つの構成では、中間エレメントは、中間エレメントストッパにおける当付けのための領域において、面平行に、または斜めに形成されている。
【0009】
面平行な構成は、密閉のためにできるだけ大きな接触面を形成するための、中間エレメントストッパのストッパ面に対する、中間エレメントのストッパ面の平行な構成である。中間エレメントのストッパ領域の斜めの構成では、中間エレメントストッパのストッパ領域の構成に実質的に左右されずに、密閉のために少なくとも1つのストッパ点が生じ得る。
【0010】
1つの改良形によれば、中継弁装置が、シールエレメントを有しており、シールエレメントは、中間エレメントがシールエレメントを介してピストンピンに対して密閉可能であるように、規定されている。
【0011】
シールエレメントを介した、ピストンピンの周囲に配置された中間エレメントと、ピストンピンとの間の密閉は、中間エレメントストッパと同様に、導入のために設けられた少なくとも1つの貫通開口以外での、貯蔵圧リザーバからピストンプレート側の容積内への流体の大幅な導入を阻止する。この密閉は、この場合に完全に流体密である必要はなく、上述の構成に準じて必要に応じた密閉に制限されていてよい。
【0012】
シールエレメントを介した密閉は、特に、ピストンピンが、長手方向で、中間エレメントに対して相対的に運動可能であるように構成され、これによりシールエレメントを介した中間エレメントとピストンピンとの間の密閉は、中間エレメントストッパにおける中間エレメントの当付けに依存していない。
【0013】
特に、中間エレメントストッパが、ケーシングにより形成されている。
【0014】
基本的に、ピストンプレート側の容積内への流体の導入を実質的に少なくとも1つの貫通開口に制限するために、中間エレメントは、特に長手方向に関して半径方向内方に向かってピストンピンに対して密閉され、かつ半径方向外側領域において中間エレメントガイドに対して密閉されなければならない。好適には、中間エレメントストッパは、少なくとも半径方向外側の領域に向かって、中間エレメントガイドに対する密閉のために設けられている。なぜならばこの密閉は、中継ピストンの運動に左右されないからである。
【0015】
中間エレメントストッパをケーシングにより形成することにより、中間エレメントガイドのための半径方向外側の領域を簡単に形成することができる。密閉は、長手方向に関してそれぞれの半径方向の面を介して行われるのではなく、中間エレメントストッパを形成するケーシングおよび中間エレメントの、長手方向で互いに隣接もしくは対向する面を介して行われる。ケーシングによって形成される中間エレメントストッパに対して代替的または付加的には、中間エレメントストッパまたは少なくとも1つの中間エレメントストッパ区分を、たとえば、ピストンピン側の容積に面したピストンプレート面にばね弾性的に支承されている1つの中間エレメントストッパエレメントによって形成することもできる。
【0016】
1つの改良形によれば、中間エレメントガイドが、中間エレメントストッパを形成するために、ピストンプレートガイドに対して、長手方向に関して、ピストンピンから離れる方向に向いた半径方向でセットバックされており、これにより、ピストンプレートガイドと中間エレメントガイドとの間の移行部が、中間エレメントストッパとしての段部を形成する。
【0017】
ケーシングは、中間エレメントガイドとピストンプレートガイドとを直接または間接的に形成する。したがって、長手方向に関して、ピストンピンから離れる方向に向いた半径方向で、ピストンプレートガイドに対して中間エレメントガイドがセットバックされていることにより、中間エレメントストッパが段部として生じ、この段部は、長手方向でピストンプレートの方向への中間エレメントの運動を制限し、ピストンプレートの方向に対応して圧力が加えられた場合に、中間エレメントを密閉式に中間エレメントストッパに当て付ける。代替的には、ケーシングは、中間エレメントストッパを、別方向で半径方向内方に向かってピストンピンの方向に向かう突起を介して形成することもできる。
【0018】
1つの構成では、中継弁装置は、中間エレメント座を有しており、中間エレメント座が、長手方向に中間エレメント座ガイド内で運動可能であり、かつ弁装置と中間エレメントとの間に配置されている。中間エレメント座は、少なくとも部分的に中間エレメントに当付け可能であるように、かつ中間エレメント座が流体圧を介して中間エレメントを中間エレメントストッパに密閉式に当て付けることができるように、構成されている。
【0019】
したがって、中間エレメントストッパにおける中間エレメントの当付けは、中間エレメント座の、中間エレメントとは長手方向で反対の側に作用する、貯蔵圧リザーバからの流体の流体圧と、長手方向で中間エレメントの方向への中間エレメント座のこれに伴う運動とによって支援される。換言すれば、中間エレメントは、中間エレメント座を介して、中間エレメントストッパに押し当てられる。
【0020】
中間エレメントにおける中間エレメント座の単に部分的な当付けは、ピストンピン側の容積の複数の領域が中間エレメントにおける中間エレメント座の当付けによって互いに密閉されることを可能にする。したがって、たとえば、貯蔵圧リザーバからの流体を、弁装置が開いている場合に、当て付けられていない区分に通すことができ、これにより、たとえば消費器接続部および/または中間エレメントの少なくとも1つの貫通開口に到達させることができる。代替的または補足的には、対応する通流部が、中間エレメントおよび/または中間エレメント座に設けられた少なくとも1つの貫通開口を介して設けられてよい。
【0021】
1つの構成では、中間エレメント座は、中間エレメントと一体的に構成されてよい。したがって、この構成では、中間エレメント座と中間エレメントとを一緒に運動させることができる。換言すると、中間エレメントは、ピストンプレートとは反対の側で、中間エレメント座に対応する端部区分を有しているように構成されていてよく、たとえば、後述の弁装置との密閉を可能にする。
【0022】
特に、中継ピストンの、弁装置が操作されていない位置において、中間エレメント座が弁装置に密閉式に載着しているように、中継弁装置が構成されている。
【0023】
したがって、中間エレメント座は、中間エレメントストッパに当て付けられるように中間エレメントを移行するために働くだけではなく、さらにピストンピン側の容積を貯蔵圧リザーバに対して密閉することができる。
【0024】
1つの改良形によれば、中継弁装置が、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパを有しており、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパが、中間エレメントの方向への中間エレメント座の運動を制限し、中間エレメント座ストッパに、中間エレメント座が流体圧を介して当付け可能である。
【0025】
中間エレメント側の中間エレメント座ストッパに伴う、長手方向で中間エレメントの方向への中間エレメント座の運動制限により、中間エレメントに作用し得る力は一様に制限される。したがって、中間エレメントを、中間エレメント座を介して、予め規定された最大力のみで中間エレメントストッパに押し付けることができる。これにより、中間エレメントおよび/または中間エレメントストッパにおける摩耗発生および/または破損を防止することができる。換言すると、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパは、中間エレメントおよび/または中間エレメントストッパのための過負荷保護部として使用することができる。
【0026】
特に、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパは、ケーシングにより形成されている。
【0027】
中間エレメントストッパの構成と同様に、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパも、簡単な形式でケーシングにより形成されていてよい。
【0028】
好適には、中間エレメント座ガイドが、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパを形成するために、中間エレメントガイドに対して、長手方向に関して、ピストンピンから離れる方向に向いた半径方向でセットバックされており、これにより、中間エレメントガイドと中間エレメント座ガイドとの間の移行部が、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパとしての段部を形成する。
【0029】
また、ケーシングは、中間エレメントストッパと同様に、直接的または間接的に中間エレメント座ガイドおよび中間エレメントガイドを形成する。したがって、長手方向に関して、ピストンピンから離れる方向に向いた半径方向での、中間エレメントガイドに対する中間エレメント座ガイドのセットバックによって、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパは、長手方向で中間エレメントの方向への中間エレメント座の運動を制限する段部として生じ、中間エレメントの方向に対応して圧力が加えられた場合に、中間エレメント座を中間エレメント側の中間エレメント座ストッパに当て付ける。代替的には、ケーシングは、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパを、別の方向で半径方向内方に向かってピストンピンの方向に向かう突起を介しても形成することができる。
【0030】
1つの改良形によれば、長手方向で、中間エレメントストッパに対する中間エレメントの最大の間隔は、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパに対する中間エレメント座の最大の間隔以下である。
【0031】
したがって、中間エレメントも中間エレメントストッパに当付け可能である場合に、中間エレメント座を、まず中間エレメント側の中間エレメント座ストッパに当て付けることができる。換言すると、中間エレメント座の、中間エレメントの方向への運動は、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパによって、早くとも中間エレメントが中間エレメント座によって中間エレメントストッパに当て付けられた場合に、制限される。
【0032】
好適には、中間エレメントストッパに対する中間エレメントの最大の間隔は、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパに対する中間エレメント座の最大の間隔よりも小さい。これにより、中間エレメントが、中間エレメント座を介して中間エレメントストッパに当付け可能であるだけでなく、中間エレメント座のさらに進行する運動を介して、中間エレメントストッパにおける中間エレメントの当付けに圧力を加えることができ、これにより密閉を改善することができる。
【0033】
1つの構成によれば、中継弁装置は、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパを有しており、中間エレメント座ストッパは、中間エレメント座の、中間エレメントから離れる方向への運動を制限する。
【0034】
したがって、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパは、中間エレメント側の中間エレメントストッパから離れる方向への中間エレメント座の運動を制限する。中間エレメント側の中間エレメント座ストッパに対する中間エレメント座の上述の最大の間隔に関して、この最大の間隔は、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパにより定義することができる。
【0035】
中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパは、特に、中間エレメントを中間エレメントストッパに当て付けるために必要となる中間エレメント座の運動を、圧力条件に関係なく制限するために使用することができる。これにより調節された移動距離にわたって、中間エレメントを、中間エレメント座を介して所定の期間、中間エレメントストッパに当て付けることができる。
【0036】
代替的または付加的には、中継弁装置は、中間エレメント座が、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパに当て付けられている場合に、弁装置が操作されていない中継ピストンの位置において、弁装置に密閉式に載着するように構成されていてよい。今、中継ピストンが、弁装置を長手方向でピストンピンとは反対側の容積とは逆方向に運動した場合に、中間エレメント座を、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパに基づいて一緒に運動させることはできない。これにより形成された、中間エレメント座と弁装置との間の間隔により、流体を貯蔵圧リザーバからピストンピン側の容積内に導入することができる。したがって、中間エレメント座は、貯蔵圧リザーバから流体を導入し、導入工程を終了させるために弁装置と協働することができる。
【0037】
特に、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパが、少なくとも1つのストッパピンにより形成されている。
【0038】
少なくとも1つのストッパピンとしての構成により、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパが比較的小さな空間しか占めないので、貯蔵圧リザーバ側の容積は実質的に影響を受けないままである。このようなストッパピンが、ケーシングと一体的に形成されていない限り、このストッパピンは容易に交換することもできる。ストッパピンの長さを必要に応じて調節できるようにするために、ストッパピンは、少なくとも部分的に、中間エレメント座とは反対側の端部にねじ山を有していてよく、このねじ山は、たとえば、ケーシング壁のようなストッパピン収容部内に種々異なる深さでねじ込み可能である。
【0039】
1つの改良形によれば、中間エレメント座および中間エレメントは、互いに対峙する側に、それぞれ少なくとも1つの輪郭区分を有しており、輪郭区分は、長手方向に関する回動防止部を形成するために、互いに形状結合式に当付け可能であるように、構成されている。
【0040】
貯蔵圧リザーバからピストンピン側の容積内への流体の導入により、渦流が発生することがあり、この渦流により、中間エレメントおよび/または中間エレメント座が長手方向に関して互いに対して回転してしまう。このことは、少なくとも貯蔵圧リザーバからの流体による圧力負荷時に係合可能である中間エレメントと中間エレメント座との、それぞれ互いに対応する輪郭区分を介して、これに伴う回動防止部により阻止することができる。対応する輪郭区分は、たとえば、歯列対またはピン-ピン収容部対として形成されていてよい。中間エレメントおよび/または中間エレメント座の側の全面的な輪郭形成時に、中間エレメントと中間エレメント座とは必ずしも予め互いに対する相対的な係合位置に運動させられる必要はなく、もしくはより多くの配向可能性が生じる。さらに、輪郭区分は、形状結合の他に、中間エレメントと中間エレメント座との間の流体伝達のための少なくとも1つの開口も形成されるように形成されていてもよい。
【0041】
本発明の別の態様は、車両、特に商用車用の制動装置に関し、制動装置は、上述の構成による少なくとも1つの中継弁装置を有している。
【0042】
制動装置のための中継弁装置の使用は、上記の利点と同様の利点を生じさせる。
【0043】
以下に、本発明を添付の図を参照してより詳細に説明する。図はその詳細を示している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の例示的な1つの実施形態による中継弁装置の概略的な断面図である。
【0045】
図1は、本発明の例示的な1つの実施形態による本発明に係る中継弁装置1の、長手方向Lでの概略的な断面図を示している。中継弁装置1は、ケーシング10を有している。ケーシング10内には、中継ピストン30が長手方向Lで運動可能に配置されている。中継ピストン30は、ピストンプレート31を有している。このピストンプレート31を介して中継ピストン30は、ケーシング10により形成されたピストンプレートガイド11内で長手方向Lでの運動のためにガイドされる。ピストンプレート31を起点として、ピストンピン32が長手方向Lで弁装置40の方向に延びている。中継ピストン30は、ピストンピン32を介して、長手方向への中継ピストン30の運動時に、長手方向Lに関して半径方向内側に位置する側でピストンピンガイド16によりガイドされる。ピストンプレート31は、シールを介してピストンプレートガイド11に対して密閉することができ、ケーシング容積を、ピストンピンとは反対側の容積70と、ピストンピン側の容積80とに分割する。
【0046】
弁装置40を操作するためには、ピストンピンとは反対側の容積70内に圧縮空気、たとえば制動のための中継弁における制御圧を導入することができる。圧縮空気は、ピストンプレート31に作用し、これにより、中継ピストン30は、長手方向Lで弁装置40の方向に運動させられる。ピストンピン32の、ピストンプレート31とは反対側の端部が、弁装置40に到達し、さらに運動させられると、弁装置は、中継ピストン30の運動方向で一緒に運動する。これにより、弁装置40と、後で詳細に説明する中間エレメント座60との間の流体接続部が、ピストンピン側の容積80に向かって開く。この流体接続部を介して、たとえば、貯蔵圧を、ピストンピン側の容積80内に導入することができる。この貯蔵圧は、図示しない接続部を介して、たとえば制動装置のような消費器に引渡し可能である。
【0047】
振動と、振動に伴う損傷および/または騒音発生とを阻止するための、ピストンピンとは反対側の容積70とピストンピン側の容積80との間の圧力均衡の時間的な遅延のために、中間エレメント50が使用される。中間エレメント50は、ピストンピン32の周囲に環状に配置されており、ピストンピン側の容積80を、ピストンプレート側の容積81と、ピストンプレートとは反対側の容積82とに分割する。中間エレメント50に形成された貫通開口51を介して、ピストンプレート側の容積81とピストンプレートとは反対側の容積82とが流体接続している。中間エレメント50が、長手方向Lに関して半径方向でピストンピン32に向かってシールエレメント53を介して密閉されており、中間エレメントガイド12内で長手方向Lに、かつしたがって中間エレメントストッパ14に向かって運動可能であるので、中間エレメント50は、絞りまたはオリフィスとして圧力均衡の時間的な遅延のために作用する。換言すれば、圧力均衡の時間的な遅延は、貫通開口51の構成によって決定的に予め規定することができる。ピストンプレートガイド11と中間エレメントガイド12との間でケーシング10により形成された中間エレメントストッパ14により、中間エレメント50はケーシングに向かって十分に密閉されているので、この領域における別のシールエレメントを省略することができる。
【0048】
長手方向Lでの中間エレメント50の運動は、ピストンプレート31に向かう方向では中間エレメントストッパ14により制限され、かつピストンプレート31とは反対の方向では中間エレメント座60により制限されている。中間エレメント座60は、本実施形態では環状に形成されており、長手方向Lで、ケーシング10により形成された中間エレメント座ガイド13内で運動可能にガイドされている。長手方向Lでの中間エレメント座60の運動は、中間エレメント50に向かう方向では中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ15により制限され、かつ中間エレメント50から離れる方向では、本実施形態ではストッパピンにより形成される、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパ20により制限される。中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパ20により、ピストンピン側の容積への貯蔵圧のための流体接続部が開くことができないほど、中間エレメント座60が長手方向Lで弁装置40と一緒に運動することが阻止される。中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ15は、中間エレメント座60により中間エレメント50に伝達可能である押圧力を制限し、これにより、中間エレメント50および/または中間エレメント座60の生じ得る損傷を回避することができる。十分な密閉性のために、長手方向Lで、中間エレメントストッパ14に対する中間エレメント50の最大の間隔は、中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ15に対する中間エレメント座60の最大の間隔以下である。
【0049】
さらに、中間エレメント座60は、中間エレメント50に面した側に輪郭区分61を有している。中間エレメント座60の輪郭区分61は、中間エレメント50の対応する輪郭区分52に当付け可能である。対応する、当付けにおいて互いに係合する輪郭区分により、中間エレメント50と中間エレメント座60とを、長手方向Lに関して互いに対して回動防止して保持することができる。輪郭区分52,61は、本実施形態では、歯列対として形成されている。中間エレメント座60は、たとえば均等に環状に延びる一貫した歯列構造を輪郭区分61として有している。中間エレメント50の、中間エレメント座60に面した輪郭区分52は、この輪郭区分61に対応する歯列を有している。しかしこれらの歯列は、一貫して環状に延びているのではなく、中間エレメント50における中間エレメント座60の当付け時に輪郭区分61の歯列構造が自由なままであるように、互いに離間している。したがって、弁装置40を介して導入可能である貯蔵圧のための、ピストンピン側の容積80への流体接続を達成することができる。
【0050】
本発明は、説明した実施形態に制限されない。上述の実施形態において1つの貫通開口しか示されていない場合でも、たとえば複数の貫通開口が設けられていてよい。中間エレメントストッパ14も、長手方向Lに関して半径方向の環状ギャップを介して形成することもできる。さらに、たとえばシールエレメント53も省略することができるか、または密閉を比較的狭いギャップシールで代替することができる。代替的または補足的には、中間エレメントストッパは、ピストンピン32を介して、つまり中間エレメント50の、長手方向Lに関して半径方向内側に位置する側に形成することができる。このためには、ピストンピン32は、長手方向Lに関して半径方向内方に向かってセットバックされた区分または半径方向外方に向いた突起を有していてよい。中継弁装置1が、上述の実施形態において、中間エレメント50と、この中間エレメント50とは別個の中間エレメント座60を有している場合でも、中間エレメント50と中間エレメント座60とは、別の構成特徴を考慮することなしにさらに一体的に形成されていてもよい。たとえば、図1に示した中間エレメント50と中間エレメント座60とから成る一体的な組み合わせは、一緒に長手方向Lで、中間エレメントストッパ14により規定される、ピストンプレート31に面した端部位置と、中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパ20により規定される、ピストンプレート31とは反対側の端部位置との間で運動することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 中継弁装置
10 ケーシング
11 ピストンプレートガイド
12 中間エレメントガイド
13 中間エレメント座ガイド
14 中間エレメントストッパ
15 中間エレメント側の中間エレメント座ストッパ
16 ピストンピンガイド
20 中間エレメントとは反対側の中間エレメント座ストッパ(ストッパピン)
30 中継ピストン
31 ピストンプレート
32 ピストンピン
40 弁装置
50 中間エレメント
51 貫通開口
52 輪郭区分(中間エレメント)
53 シールエレメント
60 中間エレメント座
61 輪郭区分(中間エレメント座)
70 ピストンピンとは反対側の容積
80 ピストンピン側の容積
81 ピストンプレート側の容積
82 ピストンプレートとは反対側の容積
L 長手方向
図1
【外国語明細書】