(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122852
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】糸形成要素
(51)【国際特許分類】
D01H 1/115 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
D01H1/115 A
D01H1/115 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022018835
(22)【出願日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】21156375
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ドレーセン
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA19
4L056BD12
4L056BD14
4L056FA04
4L056FB01
4L056FB12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廉価に製造可能であり、特にいっそう簡単に構成された糸形成要素を提供する。
【解決手段】空気精紡ノズル用の糸形成要素1であって、入口開口5を有する第1の端面側4を形成する円錐体先端部3を有する精紡円錐体2と、出口開口8を有する第2の端面側7を形成する通路形成体6であって、通路形成体と精紡円錐体とは互いに結合され、通路形成体と、入口開口を出口開口に接続するために通路形成体と精紡円錐体とを通過する貫通路9とを備え、精紡円錐体は、円錐台形の部分セグメント10を有し、この円錐台形の部分セグメントは、その内側の表面側11と、貫通路を半径方向で画定する通路形成体の外側の表面側12との間隔を第2の端面側の方向に向かって増加させることで中間室13を形成するように延在している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気精紡ノズル用の糸形成要素(1)であって、
入口開口(5)を有する第1の端面側(4)を形成する円錐体先端部(3)を有する精紡円錐体(2)と、
出口開口(8)を有する第2の端面側(7)を形成する通路形成体(6)であって、該通路形成体(6)と前記精紡円錐体(2)とは互いに結合されている、通路形成体(6)と、
前記入口開口(5)を前記出口開口(8)に接続するために前記通路形成体(6)と前記精紡円錐体(2)とを通過する貫通路(9)と
を備える、糸形成要素(1)において、
前記精紡円錐体(2)は、円錐台形の部分セグメント(10)を有し、該円錐台形の部分セグメント(10)は、その内側の表面側(11)と、前記貫通路(9)を半径方向で画定する前記通路形成体(6)の外側の表面側(12)との間隔を前記第2の端面側(7)の方向に向かって増加させることで中間室(13)を形成するように延在していることを特徴とする、糸形成要素(1)。
【請求項2】
前記精紡円錐体(2)は、前記円錐台形の部分セグメント(10)が、前記円錐体先端部(3)と反対の側において移行している円筒形の部分セグメント(14)を有し、該円筒形の部分セグメント(14)の内側の表面側(15)は、前記通路形成体(6)の前記外側の表面側(12)に対して、形成された前記中間室(13)を延長しつつ離間させられていることを特徴とする、請求項1記載の糸形成要素(1)。
【請求項3】
前記中間室(13)は、前記出口開口(8)から前記入口開口(5)へ延びる方向からアクセスが可能であるように形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の糸形成要素(1)。
【請求項4】
前記通路形成体(6)は、前記精紡円錐体(2)を越えて前記第2の端面側(7)の方向に張り出していることを特徴とする、請求項1から3までの少なくとも1項記載の糸形成要素(1)。
【請求項5】
前記円筒形の部分セグメント(14)は、第1の部分セグメント(16)と第2の部分セグメント(17)とを有し、前記第1の部分セグメント(16)の外径は、前記第2の部分セグメント(17)の外径と異なっていることを特徴とする、請求項1から4までの少なくとも1項記載の糸形成要素(1)。
【請求項6】
前記第1の部分セグメント(16)は、前記通路形成体(6)に沿って前記円錐体先端部(3)に前記第2の部分セグメント(17)よりも近接して配置されており、該第2の部分セグメント(17)の前記外径は、前記第1の部分セグメント(16)の前記外径よりも大きいことを特徴とする、請求項5記載の糸形成要素(1)。
【請求項7】
前記円筒形の部分セグメント(14)は、第1の部分セグメント(16)と第2の部分セグメント(17)とを有し、前記第1の部分セグメント(16)の内径は、前記第2の部分セグメント(17)の内径に等しいことを特徴とする、請求項1から6までの少なくとも1項記載の糸形成要素(1)。
【請求項8】
前記貫通路(9)は、それぞれ互いに異なる内径を有する少なくとも3つのセグメント(18,19,20)を有し、それぞれ2つの連続するセグメント(18,19,20)は、移行領域(21,22)を介在させて互いに継ぎ目なしに移行し合っていることを特徴とする、請求項1から7までの少なくとも1項記載の糸形成要素(1)。
【請求項9】
前記糸形成要素(1)は、少なくとも繊維案内用の全ての表面区分にセラミックコーティングを有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の糸形成要素(1)。
【請求項10】
前記糸形成要素(1)は、1つの部材から一体形に、特にセラミック材料から形成されていることを特徴とする、請求項1から9までの少なくとも1項記載の糸形成要素(1)。
【請求項11】
前記糸形成要素(1)は、前記貫通路(9)の中心長手方向軸線(M)に対して回転対称的にかつ/または鏡像対称的に形成されていることを特徴とする、請求項1から10までの少なくとも1項記載の糸形成要素(1)。
【請求項12】
空気精紡機の空気精紡装置用の空気精紡ノズルにおいて、
請求項1から11までの少なくとも1項記載の糸形成要素(1)を備えることを特徴とする、空気精紡ノズル。
【請求項13】
糸形成要素(1)を製造するための方法において、
前記糸形成要素(1)は、請求項1から11までのいずれか1項記載の糸形成要素(1)であり、該糸形成要素(1)を、一体形にセラミックスから、特に焼結プロセスまたはステレオリソグラフィ法によって形成することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸形成要素と、このような糸形成要素を備える空気精紡ノズルと、このような糸形成要素を製造するための方法とに関する。
【0002】
精紡装置用、特に空気精紡装置用の糸形成要素は、種々様々な構成で先行技術に基づき公知である。糸形成要素は、ドラフト装置から到来して、糸形成要素を備えた精紡ノズル内にコントロールされて供給されたスライバから、精紡ノズル内に供給された精紡圧縮空気により渦空気流を発生させて空気精紡糸を形成するために使用される。この空気精紡糸は、糸形成要素を介して精紡ノズルから導出される。
【0003】
糸形成要素は、例えば欧州特許出願公開第3293294号明細書、国際公開第2010/034416号および欧州特許出願公開第2573218号明細書に基づき公知である。この公知の糸形成要素は、複数の組み立てられた構成要素から形成されている。この場合には、精紡のために使用される流体流に基づき、一方ではスライバを精紡圧縮空気により精紡して糸を形成するため、他方では空気精紡糸を導出するために、個々の構成要素の間で特に正確かつ密な結合が行われなければならず、これによって、極めて少ない公差と共に、特に手間のかかる高価な製造が必要となってしまう。
【0004】
構成要素同士が特に密に結合されなければならない問題のほかに、先行技術の糸形成要素は、繊維が個々の構成要素の分離箇所もしくは継ぎ目に必然的に引っ掛かり、その際に糸から剥離され、これによって、糸の強度が損なわれてしまうことに加えて、剥離された繊維が分離箇所に堆積し、この堆積によって精紡結果も損なわれてしまう欠点も有している。
【0005】
したがって、本発明の根底にある課題は、少なくとも廉価に製造可能であり、特にいっそう簡単に構成された糸形成要素を提供することである。さらに好適には、本発明により提案された糸形成要素によって、精度および効率が改善された精紡工程が可能となり、その際、剥離された繊維による汚染を精紡運転中および精紡開始プロセス時に特に減じることができることが望ましい。
【0006】
この課題は、請求項1記載の糸形成要素と、請求項12記載の空気精紡ノズルと、請求項13記載の方法とによって解決される。本発明の有利な改良形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
空気精紡ノズル用の本発明による糸形成要素は、糸を受け取るための入口開口を有する第1の端面側を形成する円錐体先端部を有する精紡円錐体を備えている。さらに、糸を糸形成要素から導出するための出口開口を有する第2の端面側を有する通路形成体が設けられている。この通路形成体と精紡円錐体とは互いに結合されている。通路形成体と精紡円錐体とは、糸を導通させる目的で入口開口を出口開口に接続するために、1つの貫通路によって通過される。したがって、入口開口により受け取られた糸は、貫通路を介して出口開口にまで案内することができ、この出口開口を介して糸形成要素から導出することができる。
【0008】
糸形成要素は、精紡円錐体が、円錐台形の部分セグメントを有し、この円錐台形の部分セグメントが、その内側の表面側と、貫通路を半径方向で画定する通路形成体の外側の表面側との間隔を第2の端面側の方向に向かって増加させることで中間室を形成するように延在していることを特徴としている。これによって、糸形成要素を、少なくとも材料をより節約して、ひいては、より廉価に形成することができる。円錐台形の部分セグメントは、好適には、円錐体先端部を形成する部分セグメントに直接、または少なくとも1つの介在する別の部分セグメントを介して、隣接して配置されていてよい。これによって、精紡円錐体の円錐形の領域を、例えば、短繊維であれ、中間繊維であれ、長繊維であれ、精紡すべき繊維長さを考慮して、入口開口から出口開口に向けられた方向で要求に即して形成することが可能となる。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、精紡円錐体は、円錐台形の部分セグメントが、円錐体先端部と反対の側において移行している円筒形の部分セグメントを有し、この円筒形の部分セグメントの内側の表面側は、通路形成体の外側の表面側に対して、形成された中間室を延長しつつ離間させられている。これによって、糸形成要素が、同じく材料を節約して、水平な外側の当接面を備えることができ、この当接面を介して、糸形成要素を精紡ノズルの内部で、この精紡ノズルの、スライバを糸形成要素に供給するスライバ供給部に対して適切にかつ極めて正確に位置決めすることができる。
【0010】
好適には、中間室は、出口開口から入口開口へ延びる方向からアクセスが可能であるようにまたは開放して形成されている。言い換えると、精紡円錐体の、第2の端面側に向けられた端部が、通路形成体の外側の表面側に対して離間させられていて、精紡円錐体により取り囲まれた外側の中間室が、精紡円錐体の周辺に連通することができるようになっている。これによって、糸形成要素の位置を安定させるために適した安定化要素を中間室内に係合することができる。
【0011】
本発明の別の好適な実施形態によれば、通路形成体は、精紡円錐体を越えて第2の端面側の方向に張り出している。したがって、通路形成体は、第2の端面側もしくは出口開口が、この第2の端面側もしくは出口開口に向けられた精紡円錐体の端部に対して所定の間隔を形成して突出しているような延在長さを貫通路に沿って有している。これによって、糸を精紡ノズルから確実に導出するため、この精紡ノズルを端部側で画定しかつ密に閉鎖するカバー要素によって、出口開口を有する通路形成体の終端セグメントを収容することが可能となる。通路形成体はその延在長さに関して、カバー要素の外側の表面側に整合して形成されていてもよいし、要求に即して、カバー要素の外側の表面側に対して離間させられて形成されていてもよい。
【0012】
好ましくは、円筒形の部分セグメントは、第1の部分セグメントと第2の部分セグメントとを有し、第1の部分セグメントの外径は、第2の部分セグメントの外径と異なっている。さらに好適には、第1の部分セグメントと第2の部分セグメントとは、両者の外径の段状の増加を介して互いに結合されている。言い換えると、第1および第2の部分セグメントの外側の表面側は、互いに段状に移行し合っている。これによって、糸形成要素の外側に作用する取付け要素に対する、貫通路に沿って作用するストッパを提供することができ、これによって、糸形成要素を精紡ノズルの内部に確実に貫通方向で位置決めすることができる。
【0013】
特に好適には、第1の部分セグメントは、通路形成体に沿って円錐体先端部に第2の部分セグメントよりも近接して配置されており、この第2の部分セグメントの外径は、第1の部分セグメントの外径よりも大きい。これによって、第2の部分セグメントの、第1の部分セグメントを半径方向で越えて張り出した区分が、第2の部分セグメントの、入口開口に向けられた側における前述したようなストッパと、第2の部分セグメントの、出口開口に向けられた側における別のストッパとを提供し、これら両方のストッパを介して、第2の部分セグメントひいては糸形成要素を精紡ノズルの緊締手段もしくは取付け手段を用いて位置緊締もしくは位置固定することができる。これによって、精紡ノズルの内部への糸形成要素の簡単かつ確実な組付けが可能となる。
【0014】
本発明の別の好適な実施形態によれば、円筒形の部分セグメントは、第1の部分セグメントと第2の部分セグメントとを有し、第1の部分セグメントの内径は、第2の部分セグメントの内径に等しい。円筒形の部分セグメントの内側の表面側は、通路形成体に沿って延びる延在長さにわたって、通路形成体の外側の表面側に対して等間隔を保って形成されている。これによって、精紡ノズルの係合要素に対するより深い係合を提供することができ、これによって、精紡ノズルの内部への糸形成要素のより安定した位置決めを達成することができる。
【0015】
本発明の別の好適な実施形態によれば、糸形成要素は、3つに区分された貫通路を有している。好ましくは、この貫通路は、それぞれ互いに異なる内径を有する少なくとも3つのセグメントを有し、それぞれ2つの連続するセグメントは、移行領域を介在させて互いに継ぎ目なしに移行し合っている。したがって、移行領域は、貫通路に沿って続くセグメントの直径と異なる直径を有する貫通路のセグメントを接続している。このような移行領域は、貫通路の内部での流体流れを促進させる。特に好適には、入口開口に続く第1の貫通セグメントが、最小の内径を有しており、出口開口へと続く第3の貫通セグメントが、最大の内径を有している。介在する第2の貫通セグメントは、第1の貫通セグメントの内径よりは大きいものの、第3の貫通セグメントの内径よりは小さい内径を有している。したがって、貫通路は、入口開口から出口開口へと拡径されている。これによって、とりわけ、精紡開始のために、好適には出口開口を介して糸が糸形成要素内に導入されなければならない精紡開始プロセスに目を向けると、糸を確実に導入することができ、入口開口まで、またこの入口開口を介して精紡ノズルの渦動室内まで、糸を導出することができる。
【0016】
糸形成要素は任意の材料から成っていてよいが、好適な実施形態によれば、糸形成要素は、1つの部材から一体形に形成されている。これによって、繊維もしくは糸の特に良好な案内部と、特に分離・接続箇所なしのもしくは継ぎ目なしの表面とを簡単に形成することができる。例えば、糸形成要素は付加製造法によって形成されていてよい。これによって、分離・接続箇所を確実に回避することができる。可能な付加製造法は、例えば3D印刷、レーザ積層造形(SLM)、電子ビーム積層造形(EBM)、結合剤噴射(BJ)および/または熱溶解積層(FDM)であってよい。付加的には、引き続きまたは代替的には、特に糸形成要素を完全にセラミック材料から形成したい場合には、工作物の焼結が行われてもよい。糸形成要素をセラミック材料から形成するために、代替的または付加的には、ステレオリソグラフィ法(SLA)が使用されてもよい。
【0017】
さらに好適には、特に平滑で安定した、耐久性をも有する表面を提供するために、糸形成要素は、少なくとも繊維案内用の全ての表面区分にセラミックコーティングを有してよい。特に好適には、少なくとも精紡円錐体の外側の表面側および/または貫通路の内側の表面側が、セラミックコーティングを有している。
【0018】
別の好適な実施形態によれば、糸形成要素は、貫通路の中心長手方向軸線に対して回転対称的にかつ/または鏡像対称的に形成されている。後者の構成は、特に通路形成体を回転対称的に形成することができない場合に好適である。糸形成要素の対称的な構成は、いずれにせよ、糸形成要素の製造を促進させる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、上述したような糸形成要素を有する空気精紡ノズルが提案される。
【0020】
本発明の更なる特徴および利点は、本発明にとって重要な詳細を示した図および図面に基づく以下の好適な実施例の説明ならびに特許請求の範囲から明らかである。個々の特徴は、本発明の1つの好適な実施形態において、自体それぞれ個々に実現することもできるし、複数を任意に組み合わせて実現することもできる。
【0021】
以下に、本発明を、図面に示した実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施例による糸形成要素の概略的な側面図である。
【
図2】
図1に示した切断線A-Aに沿った糸形成要素の概略的な断面図である。
【0023】
セラミック材料から一体形に形成された本発明の一実施例による糸形成要素1が、
図1には概略的な側面図で示してあり、
図2には概略的な断面図で示してある。
【0024】
糸形成要素1は、円錐体先端部3を有する精紡円錐体2を備えている。この精紡円錐体2は、糸形成要素1用の入口開口5を有する第1の端面側4を形成している。糸形成要素1は、さらに、通路形成体6を備えている。この通路形成体6は、糸形成要素1用の出口開口8を有する第2の端面側7を形成している。通路形成体6は、1つの部材から糸形成要素1が成形されていることに基づき、精紡円錐体2に継ぎ目なしに移行している。
【0025】
通路形成体6と精紡円錐体2とは、糸を導通させるために入口開口5と出口開口8と互いに連通接続する貫通路9によって通過される。この貫通路9は、それぞれ互いに異なる内径を有する3つのセグメント18,19,20に分割されている。それぞれ2つの連続するセグメント18,19,20は、移行領域21,22を介在させて互いに継ぎ目なしにまたは分離・接続箇所なしに移行し合っている。入口開口5に続く第1の貫通セグメント18は、最小の内径を有しており、出口開口8へと続く第3の貫通セグメント20は、最大の内径を有している。第1の貫通セグメント18と第3の貫通セグメント20とを接続する、第1の移行領域21と第2の移行領域22とにより挟まれて介在する第2の貫通セグメント19は、第1の貫通セグメント18の内径よりは大きいものの、第3の貫通セグメント20の内径よりは小さい内径を有している。したがって、貫通路9は、入口開口5から出口開口8へと拡径されている。
【0026】
精紡円錐体2は、円錐台形の部分セグメント10を有している。この円錐台形の部分セグメント10は、その内側の表面側11と、貫通路9を半径方向で画定する通路形成体6の外側の表面側12との間隔を第2の端面側7の方向に向かって増加させることで中間室13を形成するように延在している。円錐台形の部分セグメント10には、精紡円錐体2に割り当てられた円筒形の部分セグメント14が続いている。この円筒形の部分セグメント14には、円錐台形の部分セグメント10の、円錐体先端部3と反対の側が、1つの部材から糸形成要素1が成形されていることに基づき、継ぎ目なしに、つまり、分離・接続箇所なしに移行している。円筒形の部分セグメント14は、第1の部分セグメント16と第2の部分セグメント17とを備えている。第1の部分セグメント16の内径は、第2の部分セグメント17の内径に等しい。これに対して、第1の部分セグメント16の外径は、第2の部分セグメント17の外径よりも小さい。したがって、第2の部分セグメント17は、第1の部分セグメント16よりも大きな材料厚さで形成されている。第1の部分セグメント16と第2の部分セグメント17とは、外側で互いに段状に移行し合っている。これによって、入口開口5の方向に向けられたストッパと、出口開口8の方向に向けられたストッパとが形成されている。
【0027】
円錐台形の部分セグメント10と円筒形の部分セグメント14とにより外側で画定された中間室13には、出口開口8から入口開口5へ延びる方向からアクセスが可能である。通路形成体6は、精紡円錐体2を越えて第2の端面側7もしくは出口開口8の方向に張り出している。
【0028】
糸形成要素1は、貫通路9の中心長手方向軸線Mを基準として回転対称的に形成されている。
【0029】
糸形成要素1は、空気精紡糸を形成することができる空気精紡ノズルに適している。この空気精紡ノズルは、糸形成要素1を収容するために、相応の取付け手段を有しており、これによって、糸形成要素1を、円錐体先端部3を備えたスライバ供給部と反対側で正確にかつ要求に即して位置決めすることができる。このためには、図示していない実施例による空気精紡ノズルが、係合要素を備えていてよい。この係合要素は、第1の部分セグメント16の半径方向外側の表面側と、ストッパと、第2の部分セグメント17の、出口開口8に向けられた表面側とに当て付けられる。これによって、空気精紡ノズルの内部への糸形成要素1の確実で安定した位置決めを行うことができる。さらに、この位置決めによって、糸形成要素1を容易に交換することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 糸形成要素
2 精紡円錐体
3 円錐体先端部
4 第1の端面側
5 入口開口
6 通路形成体
7 第2の端面側
8 出口開口
9 貫通路
10 円錐台形の部分セグメント
11 円錐台形の部分セグメントの内側の表面側
12 通路形成体の外側の表面側
13 中間室
14 円筒形の部分セグメント
15 円筒形の部分セグメントの内側の表面側
16 第1の部分セグメント
17 第2の部分セグメント
18 第1のセグメント
19 第2のセグメント
20 第3のセグメント
21 第1の移行領域
22 第2の移行領域
M 貫通路の中心長手方向軸線
【外国語明細書】