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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012287
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】延伸ベルトコンベヤ
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
E21D9/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114020
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】布村 進
(72)【発明者】
【氏名】添田 良介
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054DA02
(57)【要約】
【課題】初期全長を抑制することが可能な延伸ベルトコンベヤを提供する。
【解決手段】この延伸ベルトコンベヤ100は、掘進方向後側に配置されたヘッドプーリー装置40と、掘進方向前側において移動可能に配置され、ヘッドプーリー装置40との間でコンベヤベルト5が架け渡されたテールピース台車20と、ヘッドプーリー装置40とテールピース台車20との間に配置され、コンベヤベルト5の余長部を操出可能に貯蔵するベルトストレージ30と、を備える。テールピース台車20は、後側の端部にコンベヤベルト5を支持するベルト支持部20aと、ベルト支持部20aの下側に設けられた収納領域20bとを含み、ベルトストレージ30の前側の少なくとも一部が、収納領域20bに収納可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削時の掘削ズリを搬送するための搬送距離を延長可能な延伸ベルトコンベヤであって、
掘進方向後側に配置されたヘッドプーリー装置と、
掘進方向前側において移動可能に配置され、前記ヘッドプーリー装置との間でコンベヤベルトが架け渡されたテールピース台車と、
前記ヘッドプーリー装置と前記テールピース台車との間に配置され、前記コンベヤベルトの余長部を操出可能に貯蔵するベルトストレージと、を備え、
前記テールピース台車は、後側の端部に前記コンベヤベルトを支持するベルト支持部と、前記ベルト支持部の下側に設けられた収納領域とを含み、
前記ベルトストレージの前側の少なくとも一部が、前記収納領域に収納可能に構成されている、延伸ベルトコンベヤ。
【請求項2】
前記ベルトストレージは、掘進方向後側に配置された固定式プーリーバケットと、掘進方向前側に配置された移動式プーリーバケットとを含み、前記固定式プーリーバケットと前記移動式プーリーバケットとの間に架け渡された前記余長部を貯蔵し、
少なくとも最大量の前記余長部が貯蔵された状態で、前記移動式プーリーバケットが前記収納領域に配置されている、請求項1に記載の延伸ベルトコンベヤ。
【請求項3】
前記ベルトストレージは、前記移動式プーリーバケットを掘進方向前側へ牽引することにより前記固定式プーリーバケットと前記移動式プーリーバケットとの間の前記コンベヤベルトの前記余長部に張力を付与する張力付与機構をさらに含み、
前記移動式プーリーバケットに加えて、前記張力付与機構が前記収納領域に配置されている、請求項2に記載の延伸ベルトコンベヤ。
【請求項4】
前記張力付与機構は、前記固定式プーリーバケットに対して後側に配置されたワイヤ巻取機と、前記移動式プーリーバケットに対して前側に配置された滑車と、前記移動式プーリーバケットから前記滑車を介して前記ワイヤ巻取機に接続されたワイヤ部材と、を有する、請求項3に記載の延伸ベルトコンベヤ。
【請求項5】
前記移動式プーリーバケットをトンネル掘進方向に沿って移動可能に支持するレール部と、前記ベルトストレージの上方を通過する前記コンベヤベルトを支持するコンベヤフレームを支持する支持架台部と、が設けられた支持体をさらに備え、
複数の前記支持体が、トンネル掘進に伴って順次連結されるように構成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載の延伸ベルトコンベヤ。
【請求項6】
前記固定式プーリーバケットは、前記コンベヤベルトの前記余長部が巻き掛けられる複数のプーリーが設けられた本体部と、前記本体部に設けられ、前記コンベヤベルトを循環駆動するベルト駆動部と、を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の延伸ベルトコンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸ベルトコンベヤに関し、特に、トンネル掘削時の掘削ズリを搬送するための延伸ベルトコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削時の掘削ズリ(地山から掘削された岩塊、土砂など)を搬送するための延伸ベルトコンベヤが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、切羽側から坑口側へ向けて、クラッシャー車、テールピース台車、ストレージカセット、メインドライブが、間隔を隔てて配列された連続ベルトコンベヤ装置(延伸ベルトコンベヤ)が開示されている。掘削ズリは、クラッシャー車に投入され小さく破砕された後、テールピース台車へ投入される。テールピース台車に設けられたコンベヤベルトがメインドライブによって送られることにより、掘削ズリがコンベヤベルトの送りとともに搬送される。切羽位置が前進すると、テールピース台車が前進される。このとき、ストレージカセットから新しいベルトが繰り出され、延長される。
【0004】
なお、上記特許文献1には明示されていないが、通常、トンネルの坑口側にヘッドプーリー装置が設けられて、コンベヤベルトがテールピース台車とヘッドプーリー装置との間で循環する。ヘッドプーリー装置まで送られた掘削ズリが、その後連続ベルトコンベヤ装置外部へ搬出されていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6426813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には記載されていないが、従来の延伸ベルトコンベヤは、設備の全長がたとえば約130m程度となる長大なものであり、トンネル初期掘進時には、延伸ベルトコンベヤ(特に、テールピース台車、ストレージカセット、メインドライブ、ヘッドプーリー装置までの設備群)を設置できない。そのため、最初に一定程度(通常200m程度)を掘進して坑内に設置スペースを確保した後に、一旦トンネル施工を中断して、延伸ベルトコンベヤの据付工事が行われる。据付工事に要する工事期間は、たとえば1か月程度である。
【0007】
このようにトンネル施工を中断してコンベヤの据付工事を行うため、トンネル施工工程にロスが発生し、経済性の低下にもつながる。また、初期掘進の間は、延伸ベルトコンベヤを用いた掘削ズリの搬送が行えないため、搬送作業効率が低下する。そのため、延伸ベルトコンベヤの初期全長を抑制することが望まれている。より短い初期掘進距離で延伸ベルトコンベヤを設置できれば、搬送作業効率の低下が抑制できる。また、掘進開始前に確保可能なスペースに延伸ベルトコンベヤを設置できれば、初期掘進およびトンネル施工を中断しての据付工事が不要となるので、施工工程の短縮、および掘進開始時点から高い搬送作業効率を実現することが期待できる。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、初期全長を抑制することが可能な延伸ベルトコンベヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明による延伸ベルトコンベヤは、トンネル掘削時の掘削ズリを搬送するための搬送距離を延長可能な延伸ベルトコンベヤであって、掘進方向後側に配置されたヘッドプーリー装置と、掘進方向前側において移動可能に配置され、ヘッドプーリー装置との間でコンベヤベルトが架け渡されたテールピース台車と、ヘッドプーリー装置とテールピース台車との間に配置され、コンベヤベルトの余長部を操出可能に貯蔵するベルトストレージと、を備え、テールピース台車は、後側の端部にコンベヤベルトを支持するベルト支持部と、ベルト支持部の下側に設けられた収納領域とを含み、ベルトストレージの前側の少なくとも一部が、収納領域に収納可能に構成されている。
【0010】
この発明による延伸ベルトコンベヤでは、上記のように構成することによって、コンベヤベルトの余長部を操出可能に貯蔵するベルトストレージを、前側に配置されたテールピース台車のベルト支持部の下側に設けられた収納領域に収納することができる。つまり、トンネル掘進方向におけるテールピース台車の設置範囲とベルトストレージの設置範囲とを収納領域の部分で重複させることができるので、設置範囲が重複する分だけ初期全長を抑制することができる。これにより、初期全長を抑制することが可能な延伸ベルトコンベヤを提供することができる。なお、テールピース台車は、トンネル掘進に伴って前進移動する(延伸する)ので、ベルトストレージは、据付直後において収納領域に配置されていればよく、掘進中の任意の期間において収納領域に配置されている必要はない。
【0011】
この発明による延伸ベルトコンベヤにおいて、好ましくは、ベルトストレージは、掘進方向後側に配置された固定式プーリーバケットと、掘進方向前側に配置された移動式プーリーバケットとを含み、固定式プーリーバケットと移動式プーリーバケットとの間に架け渡された余長部を貯蔵し、少なくとも最大量の余長部が貯蔵された状態で、移動式プーリーバケットが収納領域に配置されている。このように構成すれば、移動式プーリーバケットをテールピース台車の収納領域に配置できるので、ベルトストレージの設置スペースを効果的に削減できる。そのため、延伸ベルトコンベヤの初期全長を効果的に抑制できる。
【0012】
この場合において、好ましくは、ベルトストレージは、移動式プーリーバケットを前側へ牽引することにより固定式プーリーバケットと移動式プーリーバケットとの間のコンベヤベルトの余長部に張力を付与する張力付与機構をさらに含み、移動式プーリーバケットに加えて、張力付与機構が収納領域に配置されている。このように構成すれば、移動式プーリーバケットに加えて、張力付与機構もテールピース台車の収納領域に配置できるので、ベルトストレージの設置スペースをさらに効果的に削減できる。
【0013】
上記張力付与機構がテールピース台車の収納領域に配置される構成において、好ましくは、張力付与機構は、固定式プーリーバケットに対して後側に配置されたワイヤ巻取機と、移動式プーリーバケットに対して前側に配置された滑車と、移動式プーリーバケットから滑車を介してワイヤ巻取機に接続されたワイヤ部材と、を有する。このように構成すれば、前側の滑車をテールピース台車の収納領域に配置しておいて、牽引によりコンベヤベルトに張力を付与するワイヤ巻取機は後側に配置できる。滑車は、ワイヤ巻取機と比較して小型にできるので、収納領域内で張力付与機構(滑車)が占有するスペースを低減できる。また、トンネル掘進の過程でベルトストレージの貯蔵量を増大させるために滑車を据付し直す場合などでも、ワイヤ巻取機は移動させる必要がないので、作業工程の短縮を図ることができる。
【0014】
上記ベルトストレージが掘進方向後側の固定式プーリーバケットと、掘進方向前側の移動式プーリーバケットとを含む構成において、好ましくは、移動式プーリーバケットをトンネル掘進方向に沿って移動可能に支持するレール部と、ベルトストレージの上方を通過するコンベヤベルトを支持するコンベヤフレームを支持する支持架台部と、が設けられた支持体をさらに備え、複数の支持体が、トンネル掘進に伴って順次連結されるように構成されている。このように構成すれば、移動式プーリーバケットのレール部と、コンベヤフレームを支持する支持架台部とを設けた支持体を単位構造として、追加設置していくことができる。これにより、レール部の長さを延長できるので、延伸ベルトコンベヤの据付直後はベルトストレージの貯蔵量を少なくして極力コンパクト化を図り、掘進によりスペースが十分確保されたときに、延長されたレール部を利用してベルトストレージの貯蔵量を増大させることができる。さらに、コンベヤフレームの支持架台部を支持体に設けることによって、レール部の延長作業とコンベヤフレームを支持するための支持架台部の設置作業とをまとめて行えるので、作業効率を向上させることができる。
【0015】
上記ベルトストレージが掘進方向後側の固定式プーリーバケットと、掘進方向前側の移動式プーリーバケットとを含む構成において、好ましくは、固定式プーリーバケットは、コンベヤベルトの余長部が巻き掛けられる複数のプーリーが設けられた本体部と、本体部に設けられ、コンベヤベルトを循環駆動するベルト駆動部と、を含む。このように構成すれば、ベルトストレージ(固定式プーリーバケット)に、コンベヤベルトを循環駆動するベルト駆動部を組み込むことができる。これにより、たとえば上記特許文献1のようにベルトストレージとベルト駆動部(メインドライブ)とを別々に設ける構成と比較して、延伸ベルトコンベヤの初期全長を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、初期全長を抑制することが可能な延伸ベルトコンベヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態による延伸ベルトコンベヤの全体構成を示した図である。
図2図1のテールピース台車およびベルトストレージの掘進方向前側部分を示した拡大図である。
図3図1のベルトストレージの掘進方向後側部分およびヘッドプーリー装置を示した拡大図である。
図4図2の400-400線に沿った模式的な断面図である。
図5】延伸ベルトコンベヤの初期状態(A)、初回の延伸限(B)、ベルトストレージへのベルト貯蔵時(C)、およびその後の掘進中の状態(D)を示した模式図である。
図6】第2実施形態による延伸ベルトコンベヤの全体構成を示した図である。
図7図6の破砕機一体型のテールピース台車を示した拡大図である。
図8図6の450-450線に沿った模式的な断面図である。
図9】延伸ベルトコンベヤの初期状態(A)、初回の延伸限(B)、ベルトストレージへのベルト貯蔵時(C)、およびその後の掘進中の状態(D)を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1図5を参照して、第1実施形態による延伸ベルトコンベヤ100の構成について説明する。延伸ベルトコンベヤ100は、トンネル掘削時の掘削ズリEMを搬送するための搬送距離を延長可能なコンベヤ装置である。掘削ズリEMは、トンネルの掘削時に地山から掘削された岩塊、土砂などである。
【0020】
(延伸ベルトコンベヤの概要)
第1実施形態による延伸ベルトコンベヤ100は、初期全長を抑制することにより、延伸ベルトコンベヤ100の設置スペースを低減したものである。図1では、例示的に、トンネルの掘進開始前に、トンネルの外部に延伸ベルトコンベヤ100が設置(据付)される例を示している。延伸ベルトコンベヤ100は、据付前に初期掘進を行って形成された空間を利用して設置されてもよい。この場合でも、以下に説明するように、初期全長を抑制することにより、初期掘進距離を低減でき、早期に延伸ベルトコンベヤ100を設置できる。
【0021】
図1に示すように、延伸ベルトコンベヤ100は、移動式破砕機10と、テールピース台車20と、ベルトストレージ30と、ヘッドプーリー装置40を備える。
【0022】
延伸ベルトコンベヤ100は、掘進方向前側(図1ではトンネル掘削面1側)に配置されるテールピース台車20と、掘進方向後側に配置されるヘッドプーリー装置40との間で、掘削ズリEMの運搬用のコンベヤベルト5を巻回した運搬システムである。ヘッドプーリー装置40が固定設置されるのに対して、テールピース台車20が移動可能に設けられ、切羽の前進に伴って移動する。コンベヤベルト5は、環状の無端ベルトである。コンベヤベルト5は、延伸ベルトコンベヤ100の設置初期における搬送長さ(テールピース台車20のテールピース24からヘッドプーリー装置40のヘッドプーリー41までの経路長)よりも長く形成されており、本明細書では、コンベヤベルト5の余りの長さ部分を余長部と呼ぶ。後述するように、余長部がベルトストレージ30に操出可能に貯蔵されている。
【0023】
なお、以下の説明では、上下方向(鉛直方向)をZ方向とし、トンネルの掘進方向に沿った前後方向をX方向とし、Z方向およびX方向に直交する方向(トンネルの幅方向)をY方向とする。X方向のうち、掘進方向前側をX1方向とし、掘進方向後側をX2方向とする。
【0024】
図1において、トンネル掘削面1に対して掘進方向後側に向けて、移動式破砕機10、テールピース台車20、ベルトストレージ30およびヘッドプーリー装置40がこの順で並んで配置されている。
【0025】
(移動式破砕機)
移動式破砕機10は、掘削ズリEMを受け容れて破砕し、細かくして後方の延伸ベルトコンベヤ100へ供給する。移動式破砕機10は、移動用のクローラ(無限軌道)11に車体フレーム12が搭載され、車体フレーム12上にホッパ・フィーダ13とその後方の破砕機14とが配置された構造を有する。また、移動式破砕機10は、破砕機14の下部から後方に向けて延びる排出コンベヤ15を有する。ホッパ・フィーダ13がズリを受け入れ、破砕機14へ供給すると、破砕機14がズリを破砕し、破砕されたズリが排出コンベヤ15により後方へ排出される。
【0026】
(テールピース台車)
テールピース台車20は、移動式破砕機10の後方に配置されている。テールピース台車20は、延伸ベルトコンベヤ100の掘進方向前側において移動可能に配置され、ヘッドプーリー装置40との間でコンベヤベルト5が架け渡されている。図2に示すように、テールピース台車20は、移動用のクローラ(無限軌道)21、およびクローラ21に搭載された車体フレーム22を含む。車体フレーム22には、ホッパ23、テールピース24、テールピース傾斜部25および作業台26が設けられている。
【0027】
テールピース24は、コンベヤベルト5の掘進方向前側端部を規定し、コンベヤベルト5が巻き掛けられたテールプーリーを有している。テールピース傾斜部25は、テールピース24から後方斜め上方へ延びるように設けられ、コンベヤベルト5を支持するとともに案内するように構成されている。
【0028】
テールピース傾斜部25の後端部に作業台26が配置されている。作業台26は、テールピース傾斜部25の後端部に対応した高さ位置で、車体フレーム22の後方へ張り出すように設けられている。作業台26には、コンベヤベルト5を支持するコンベヤフレーム62が設けられている。作業台26は、テールピース台車20がトンネル進行とともに延伸する際に、増設するコンベヤフレーム62を組み立てる組立作業領域を提供する。コンベヤベルト5は、テールピース24から、テールピース傾斜部25と、作業台26から後方に延びるコンベヤフレーム62とによってヘッドプーリー装置40まで支持されている。
【0029】
ホッパ23は、移動式破砕機10の排出コンベヤ15(図1参照)から排出された掘削ズリEMを受け容れ、テールピース傾斜部25へ供給する。テールピース傾斜部25のコンベヤベルト5上に投入された掘削ズリEMが、テールピース傾斜部25、作業台26を通って掘進方向後側のヘッドプーリー装置40(図1参照)まで搬送される。
【0030】
第1実施形態では、テールピース台車20は、掘進方向後側の端部にコンベヤベルト5を支持するベルト支持部20aと、ベルト支持部20aの下側に設けられた収納領域20bとを含む。図2の例では、ベルト支持部20aは、作業台26によって構成されている。収納領域20bは、作業台26の下側のスペースである。テールピース傾斜部25によってコンベヤベルト5の支持位置がベルトストレージ30よりも上方に配置され、作業台26がコンベヤベルト5の支持位置に対応した高さ位置で後方に張り出すように設けられることによって、収納領域20bが確保されている。第1実施形態では、後述するように、ベルトストレージ30の前側の少なくとも一部が、収納領域20bに収納可能に構成されている。
【0031】
(ベルトストレージ)
図1に戻り、ベルトストレージ30は、ヘッドプーリー装置40とテールピース台車20との間に配置され、コンベヤベルト5の余長部を操出可能に貯蔵する。ベルトストレージ30は、掘進方向後側に配置された固定式プーリーバケット31と、掘進方向前側に配置された移動式プーリーバケット32とを含み、固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との間に架け渡された余長部を貯蔵するように構成されている。
【0032】
固定式プーリーバケット31(図3参照)と移動式プーリーバケット32(図2参照)とには、それぞれ多段のプーリーが設置されている。多段のプーリーの間をコンベヤベルト5がたすき掛けに掛けられることにより、余長部が貯蔵される。ベルト貯蔵量(繰り出し可能なベルトの長さ)は、固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との間隔D(図1参照)によって変化する。移動式プーリーバケット32が固定式プーリーバケット31に近付くことにより、余長部が繰り出される。第1実施形態では、少なくとも最大量の余長部が貯蔵された状態で、移動式プーリーバケット32が収納領域20b(図2参照)に配置されている。
【0033】
具体的には、図4に示すように、作業台26は、移動式プーリーバケット32やレール部51を門型に跨ぐ構造で格納している。移動式プーリーバケット32の両側方には、作業台26を支持する車体フレーム22の一部が後方(図2参照)に張り出している。これにより、移動式プーリーバケット32が作業台26の下方の収納領域20bに配置されている。
【0034】
図2に示すように、移動式プーリーバケット32は、コンベヤベルト5の余長部が巻き掛けられる複数(多段)のプーリーが設けられた本体部32aを有する。移動式プーリーバケット32は、レール部51上に設置され、レール部51に沿って前後方向(X方向)に移動可能に構成されている。
【0035】
ベルトストレージ30は、移動式プーリーバケット32を掘進方向前側へ牽引することにより固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との間のコンベヤベルト5の余長部に張力を付与する張力付与機構33を含む。第1実施形態では、移動式プーリーバケット32に加えて、張力付与機構33が収納領域20bに配置されている。
【0036】
具体的には、張力付与機構33は、図3に示す固定式プーリーバケット31に対して後側(X2方向側)に配置されたワイヤ巻取機33aと、図2に示す移動式プーリーバケット32に対して前側(X1方向側)に配置された滑車33bと、移動式プーリーバケット32から滑車33bを介してワイヤ巻取機33aに接続されたワイヤ部材(ワイヤロープ)33cと、を有する。図2および図3では、便宜的に、ワイヤ部材33cを破線で示し、コンベヤベルト5を二点鎖線で示している。ワイヤ部材33cは、図2に示すように、移動式プーリーバケット32から滑車33bによって180度方向転換して、後側(X2方向側)に設置されたワイヤ巻取機33a(図3参照)により牽引される。滑車33bが、移動式プーリーバケット32とテールピース台車20との間で、収納領域20b内に収納されている。図3に示すワイヤ巻取機33aは、ヘッドプーリー装置40よりもさらに掘進方向後方の位置(搬送コンベヤ70の下方)に配置されている。このため、テールピース台車20とヘッドプーリー装置40との間で張力付与機構33が占有するスペースが低減されている。
【0037】
なお、固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との間隔Dが大きくなると、張力付与機構33のみでは、貯蔵されたコンベヤベルト5が重力によりたるむ場合がある。そのため、固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との中間部に、貯蔵されたコンベヤベルト5を支持するベルトサポート34(図3参照)が設けられている。これにより、ベルト同士の接触が防止される。
【0038】
第1実施形態では、図3に示すように、固定式プーリーバケット31は、コンベヤベルト5の余長部が巻き掛けられる複数(多段)のプーリーが設けられた本体部31aと、本体部31aに設けられ、コンベヤベルト5を循環駆動するベルト駆動部31bと、を含む。
【0039】
ベルト駆動部31bは、テールピース台車20(テールピース24)、ヘッドプーリー装置40(ヘッドプーリー41)、ベルトストレージ30の各プーリーにそれぞれ巻回された1本のコンベヤベルト5を駆動するように構成されている。ベルト駆動部31bが、延伸ベルトコンベヤ100のコンベヤベルト5を循環駆動するための主駆動源である。ベルト駆動部31bは、たとえば、電動機と減速機とを組み合わせて、コンベヤベルト5が巻回されたドライブプーリ31cを回転駆動することにより、コンベヤベルト5を循環させるように構成されている。
【0040】
なお、第1実施形態では、延伸ベルトコンベヤ100は、移動式プーリーバケット32をトンネル掘進方向に沿って移動可能に支持するレール部51と、ベルトストレージ30の上方を通過するコンベヤベルト5を支持するコンベヤフレーム62を支持する支持架台部52と、が設けられた支持体50を備える。したがって、ベルトストレージ30の設置範囲では、レール部51と支持架台部52とが支持体50の一部としてまとめて構築される。そして、複数の支持体50が、トンネル掘進に伴って順次連結されるように構成されている。支持体50の連結により、コンベヤフレーム62の延長と、移動式プーリーバケット32の移動範囲の拡張とができる。
【0041】
上記の通り、ベルトストレージ30のベルト貯蔵量は、間隔D(図1参照)によって決まる。そして、第1実施形態のベルトストレージ30は、図1に示す延伸ベルトコンベヤ100の据付直後では、間隔Dが標準値よりも小さい第1間隔D1とされる。そして、掘進が進むと、支持体50(図2および図3参照)が順次連結されレール部51が延長されることにより、間隔Dが標準値である第2間隔D2(図5(C)参照)まで拡張される。これにより、掘進初期ではベルトストレージ30の設置長さ(間隔D)を短縮し、設置スペースが十分確保された段階では、ベルトストレージ30の設置長さを拡大してベルト貯蔵量を増大させることが可能である。
【0042】
(ヘッドプーリー装置)
図3に示すように、ヘッドプーリー装置40は、ヘッドプーリー41を含む。ヘッドプーリー41が、コンベヤベルト5の掘進方向後側端部を規定する。ヘッドプーリー41の後方に、固定長(非延伸)の搬送コンベヤ70が設けられており、搬送された掘削ズリEMは、搬送コンベヤ70に乗り継ぐ。
【0043】
ヘッドプーリー装置40は、さらに、ベルト洗浄装置42、ベルト接合架台43、および架台フレーム44を含む。ベルト洗浄装置42は、ヘッドプーリー41でUターンした搬送後のベルトの洗浄を行う。ベルト接合架台43は、ベルトストレージ30のベルト継ぎ足し時のベルト切断及び接合作業を行う作業領域を提供する。ヘッドプーリー装置40は、架台フレーム44によって上下2段構造になっており、上段にヘッドプーリー41およびベルト洗浄装置42が配置され、下段にベルト接合架台43が配置されている。
【0044】
なお、以上の構成において、コンベヤベルト5は、図1図3に示した以下の経路で循環する。テールピース24、テールピース傾斜部25、作業台26、ヘッドプーリー41、ベルト洗浄装置42、ベルト駆動部31b、ベルト接合架台43、ベルトストレージ30(固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との間を多数回往復)、作業台26、テールピース傾斜部25、テールピース24。テールピース24からヘッドプーリー41までが坑口へ向かう掘削ズリEMの搬送経路である。ヘッドプーリー41からベルトストレージ30を経てテールピース24へ戻る経路が掘進方向前側へ向かうリターン経路である。
【0045】
(延伸ベルトコンベヤの延伸動作)
図5(A)~(D)は、トンネル掘進の各段階における延伸ベルトコンベヤ100の状態を示している。図5(A)は、図1と同じ状態であり、据付時の状態を示す。
【0046】
延伸ベルトコンベヤ100の据付時は、ベルトストレージ30の移動式プーリーバケット32(図2参照)、ワイヤ部材33cおよび滑車33b(図2参照)が、テールピース台車20の後部の作業台26の下方の収納領域20b内に格納される。また、ベルトストレージ30の固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との間隔Dが、標準値よりも小さい第1間隔D1とされる。つまり、間隔Dが第1間隔D1となるように、固定式プーリーバケット31に対する移動式プーリーバケット32の初期位置が設定される。これにより、図5(A)に示すように、延伸ベルトコンベヤ100の初期全長がL1となる。
【0047】
図5(B)はトンネル掘進を開始した後の状態を示している。掘進に伴って、移動式破砕機10およびテールピース台車20が掘進方向に前進する。一方、ベルトストレージ30では、テールピース台車20の移動距離に応じて、コンベヤベルト5の余長部を繰り出している。つまり、移動式プーリーバケット32が図5(A)の初期状態と比べて固定式プーリーバケット31に向けて移動し、間隔Dが第1間隔D1よりも小さくなる。この間隔Dの減少分だけ、コンベヤベルト5が繰り出されている。図5(B)では、移動式破砕機10およびテールピース台車20の前進に応じて、ベルトストレージ30の移動式プーリーバケット32が移動式破砕機10およびテールピース台車20の移動距離の1/2だけ固定式プーリーバケット31側に移動している状態を示している。テールピース台車20の前進によって、移動式プーリーバケット32および張力付与機構33(滑車33b)が収納領域20bの外部へ離脱し、単独状態になっている。
【0048】
なお、余長部の操り出しに伴って移動式プーリーバケット32が固定式プーリーバケット31側に移動する(間隔Dが小さくなる)が、張力付与機構33(ワイヤ巻取機33a)がワイヤ部材33cを介して移動式プーリーバケット32を牽引することより、コンベヤベルト5には、常に適正なベルト張力が付与される。
【0049】
また、移動式破砕機10およびテールピース台車20が前進すると、図4に示したように、コンベヤベルト5を支える複数のローラ61およびコンベヤフレーム62から構成された中間部材60が追加設置される。なお、ローラ61は、コンベヤベルト5のうち、掘削ズリEMを後側(X2方向)に搬送する部分を支持する上側のキャリアローラと、掘削ズリEMの搬送後、前側(X1方向)へ戻される部分を支持する下側のリターンローラと、を含み、それぞれコンベヤフレーム62に回転可能に取り付けられている。中間部材60は、テールピース台車20の後部の作業台26において組み立てられ、既設の中間部材60の先端に順次接続される。
【0050】
ここで、図5(B)に示すように、初期掘進時のベルトストレージ30の間隔Dが標準値である第2間隔D2(図5(C)参照)になっていない初期段階では、支持体50に設けた支持架台部52により中間部材60(コンベヤフレーム62)が支持される。つまり、作業台26では中間部材60が組み立てられ、作業台26の下方に追加設置された支持体50の支持架台部52に支持される。このように、支持体50および中間部材60が、掘進に伴い順次構築されて延長されていく。支持体50は、ベルトストレージ30の間隔Dを第2間隔D2に拡張できるようになるまでの間、追加設置される。
【0051】
トンネル掘進に伴って移動式破砕機10およびテールピース台車20が前進を継続し、ベルトストレージ30の第1間隔D1に応じたベルト貯蔵量が無くなると、移動式破砕機10およびテールピース台車20はそれ以上延伸できなくなる。図5(B)は初期の延伸限度を示し、ベルトストレージ30の移動式プーリーバケット32は移動限に達している。
【0052】
第1実施形態では、初期設置時のベルトストレージ30のベルト貯蔵量(第1間隔D1)が、ベルトストレージ30の間隔Dを標準値である第2間隔D2(図5(C)参照)まで拡張可能となる延伸長さに設定されている。そのため、図5(B)の延伸限度に到達したタイミングで、レール部51は、固定式プーリーバケット31から第2間隔D2だけ離れた位置まで移動式プーリーバケット32を移設可能な長さに延長されている。
【0053】
そこで、ベルトストレージ30にコンベヤベルト5を再貯蔵させる作業が行われる。まず、滑車33bがレール部51の前側端部(図5(C)参照)へ移設される。そして、ヘッドプーリー装置40のベルト接合架台43において、コンベヤベルト5が切断され、新たに用意されたベルトロール(図示せず)の一端と切断部の切羽側端部とが接合される。そして、ベルトストレージ30の移動式プーリーバケット32が切羽方向へ移動されることにより、ベルトロール(図示せず)のベルトがベルトストレージ30へ移し替えられ貯蔵(補充)される。このとき、移動式プーリーバケット32は、固定式プーリーバケット31から第2間隔D2(図5(C)参照)となる位置まで前方へ移動される。最後に、ベルト接合架台43において、ベルトロール(図示せず)の他方のベルト端と、切断部の坑口側端部とが接合される。これにより、コンベヤベルト5の再貯蔵(補充)および無端化が終了する。
【0054】
図5(C)は、ベルトストレージ30へコンベヤベルト5を再貯蔵した状態を示している。この状態の延伸ベルトコンベヤ100の全長L2が、正規機長である。
【0055】
図5(D)は、延伸ベルトコンベヤ100を正規機長にしてから、掘進を進めた本掘進状態を示している。延伸ベルトコンベヤ100が正規機長まで延伸された後は、移動式破砕機10およびテールピース台車20だけがトンネル掘進と共に前進する。レール部51を増設する必要がなくなるため、掘進に伴って追加設置される中間部材60は、坑壁に設置されたニーブレス65(図5(D)参照)と呼ばれる支持材により支持固定されるようになり、支持体50の追加設置はされない。すなわち、テールピース台車20とベルトストレージ30との間は、ニーブレス65に取り付けられた中間部材60によりコンベヤベルト5が支持および循環される。
【0056】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
第1実施形態では、上記のように、テールピース台車20は、掘進方向後側の端部にコンベヤベルト5を支持するベルト支持部20aと、ベルト支持部20aの下側に設けられた収納領域20bとを含み、ベルトストレージ30の前側の少なくとも一部が、収納領域20bに収納可能に構成されている。これにより、コンベヤベルト5の余長部を操出可能に貯蔵するベルトストレージ30を、前側に配置されたテールピース台車20のベルト支持部20aの下側に設けられた収納領域20bに収納することができる。つまり、トンネル掘進方向におけるテールピース台車20の設置範囲とベルトストレージ30の設置範囲とを収納領域20bの部分で重複させることができるので、設置範囲が重複する分だけ初期全長L1を抑制することができる。これにより、初期全長L1を抑制することが可能な延伸ベルトコンベヤ100を提供することができる。
【0058】
上記の例では、図5(A)および図5(C)から、仮に、延伸ベルトコンベヤ100を正規機長(全長L2)のまま据え付ける場合、図5(C)の位置までトンネルの初期掘削が必要であることが分かる。これに対して、第1実施形態では、延伸ベルトコンベヤ100の初期全長L1が短縮されたことにより、初期掘削を不要としている。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、ベルトストレージ30は、掘進方向後側に配置された固定式プーリーバケット31と、掘進方向前側に配置された移動式プーリーバケット32とを含み、固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との間に架け渡された余長部を貯蔵し、少なくとも最大量の余長部が貯蔵された状態で、移動式プーリーバケット32が収納領域20bに配置されている。これにより、移動式プーリーバケット32をテールピース台車20の収納領域20bに配置できるので、ベルトストレージ30の設置スペースを効果的に削減できる。そのため、延伸ベルトコンベヤ100の初期全長L1を効果的に抑制できる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、ベルトストレージ30は、移動式プーリーバケット32を前側へ牽引することにより固定式プーリーバケット31と移動式プーリーバケット32との間のコンベヤベルト5の余長部に張力を付与する張力付与機構33をさらに含み、移動式プーリーバケット32に加えて、張力付与機構33が収納領域20bに配置されている。これにより、移動式プーリーバケット32に加えて、張力付与機構33もテールピース台車20の収納領域20bに配置できるので、ベルトストレージ30の設置スペースをさらに効果的に削減できる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、張力付与機構33は、固定式プーリーバケット31に対して後側に配置されたワイヤ巻取機33aと、移動式プーリーバケット32に対して前側に配置された滑車33bと、移動式プーリーバケット32から滑車33bを介してワイヤ巻取機33aに接続されたワイヤ部材33cと、を有する。これにより、前側の滑車33bをテールピース台車20の収納領域20bに配置しておいて、牽引によりコンベヤベルト5に張力を付与するワイヤ巻取機33aは後側に配置できる。滑車33bは、ワイヤ巻取機33aと比較して小型にできるので、収納領域20b内で張力付与機構33(滑車33b)が占有するスペースを低減できる。また、トンネル掘進の過程でベルトストレージ30の貯蔵量を増大させるために滑車33bを据付し直す場合などでも、ワイヤ巻取機33aは移動させる必要がないので、作業工程の短縮を図ることができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、移動式プーリーバケット32をトンネル掘進方向に沿って移動可能に支持するレール部51と、ベルトストレージ30の上方を通過するコンベヤベルト5を支持するコンベヤフレーム62を支持する支持架台部52と、が設けられた支持体50をさらに備える。そして、複数の支持体50が、トンネル掘進に伴って順次連結されるように構成されている。これにより、移動式プーリーバケット32のレール部51と、コンベヤフレーム62を支持する支持架台部52とを設けた支持体50を単位構造として、追加設置していくことができる。これにより、レール部51の長さを延長できるので、延伸ベルトコンベヤ100の据付直後はベルトストレージ30の貯蔵量を少なくして極力コンパクト化を図り、掘進によりスペースが十分確保されたときに、延長されたレール部51を利用してベルトストレージ30の貯蔵量を増大させることができる。さらに、コンベヤフレーム62の支持架台部52を支持体50に設けることによって、レール部51の延長作業と支持架台部52の設置作業とをまとめて行えるので、作業効率を向上させることができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、固定式プーリーバケット31は、コンベヤベルト5の余長部が巻き掛けられる複数のプーリーが設けられた本体部31aと、本体部31aに設けられ、コンベヤベルト5を循環駆動するベルト駆動部31bと、を含む。これにより、ベルトストレージ30(固定式プーリーバケット31)に、コンベヤベルト5を循環駆動するベルト駆動部31bを組み込むことができる。そのため、たとえばベルトストレージとベルト駆動部(メインドライブ)とを別々に設ける構成と比較して、延伸ベルトコンベヤ100の初期全長を効果的に抑制できる。
【0064】
[第2実施形態]
次に、図6図9を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、移動式破砕機10とテールピース台車20とが別個に設けられた上記第1実施形態とは異なり、テールピース台車120に破砕機を設けた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに、説明を省略する。
【0065】
図6に示すように、第2実施形態の延伸ベルトコンベヤ200は、トンネル掘削面1の後方に、破砕機一体型のテールピース台車120、ベルトストレージ30およびヘッドプーリー装置40をこの順で備えている。つまり、第2実施形態の延伸ベルトコンベヤ200では、移動式破砕機10が設けられておらず、第1実施形態のテールピース台車20に代えて、破砕機一体型のテールピース台車120が設けられている。
【0066】
図7に示すように、テールピース台車120は、移動用のクローラ(無限軌道)121、およびクローラ121に搭載された車体フレーム122を含む。車体フレーム122には、ホッパ・フィーダ123、破砕機124および排出コンベヤ125が設けられている。ホッパ・フィーダ123が、掘削ズリEMを受け入れ、破砕機124へ供給する。破砕機124は、ホッパ・フィーダ123の後方に配置され、供給された掘削ズリEMを細かく破砕する。排出コンベヤ125は、破砕機124により破砕されたズリを後方のホッパ126へ送り出す。
【0067】
車体フレーム122には、さらに、ホッパ126、テールピース127およびテールピース傾斜部128が設けられている。ホッパ126は、排出コンベヤ125から送り出されたズリを受け容れ、下側に配置されたテールピース傾斜部128へ供給する。テールピース127が、延伸ベルトコンベヤ200の掘進方向前側端部であり、コンベヤベルト5が巻き掛けられたテールプーリーを有している。テールピース傾斜部128は、テールピース127から後方斜め上方へ延びるように設けられ、コンベヤベルト5を支持するとともに案内するように構成されている。
【0068】
テールピース傾斜部128の後方には、テールピース台車120がトンネル掘進に伴って前進する際に、追加設置されるコンベヤフレーム62を組み立てる作業台129が設けられている。第2実施形態では、作業台129がテールピース台車120から離れた位置でテールピース台車120と一体的に移動するようにテールピース台車120に連結されている。
【0069】
図8に示すように、作業台129は、底部にそり129bが設けられており、牽引ビーム129cを介してテールピース台車120(車体フレーム122)に連結されている。これにより、作業台129は、テールピース台車120に牽引される方式でテールピース台車120とともに移動する。作業台129がテールピース傾斜部128の後端に位置するように、牽引ビーム129cの長さが設定されている。作業台129は、牽引ビーム129cに代えて車体フレーム122に一体的に固定される固定方式で牽引されてもよいし、そり129bに代えて車輪等を備えていてもよい。なお、図7では、便宜的に、図6に示したベルトストレージ30の図示を省略している。その一方、図8では、作業台129の下方に配置されるベルトストレージ30(移動式プーリーバケット32)も図示している。
【0070】
テールピース台車120は、掘進方向後側の端部にコンベヤベルト5を支持するベルト支持部120aと、ベルト支持部120aの下側に設けられた収納領域120bとを含む。第2実施形態では、ベルト支持部120aは、作業台129およびテールピース傾斜部128によって構成されている。収納領域120bは、作業台129およびテールピース傾斜部128の下側のスペースである。
【0071】
テールピース傾斜部128は、車体フレーム122から後ろ斜め上方へ延びることにより、テールピース傾斜部128の下部に収納領域120bが形成されている。作業台129は、図8に示すように、そり129bが設けられた一対の脚部を有する門型のフレーム129aを含み、フレーム129aの上面上に中間部材60が設置されている。フレーム129aは、ベルトストレージ30を門型に跨ぐ形状に形成されている。この門型のフレーム129aの内側に、移動式プーリーバケット32、レール部51、滑車33bを収納する収納領域120bが形成されている。図示は省略するが、テールピース傾斜部128を支持する車体フレーム122の後部部分についても、ベルトストレージ30を門型に跨ぐように形成される。これにより、ベルトストレージ30の掘進方向前側の少なくとも一部が、収納領域120bに収納可能となっている。
【0072】
ベルトストレージ30およびヘッドプーリー装置40の構成は、上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
(延伸ベルトコンベヤの延伸動作)
図9(A)に示すように、第2実施形態の延伸ベルトコンベヤ200の据付時は、ベルトストレージ30の移動式プーリーバケット32、ワイヤ部材33cおよび滑車33bは、テールピース台車120の後部の作業台129およびテールピース傾斜部128の下部に設けられた収納領域120bに格納されている。第2実施形態では、収納領域120bの内部に、移動式プーリーバケット32の全体が格納されている。また、図9(A)の初期設置状態では、ベルトストレージ30の間隔Dが第1間隔D1となるように、固定式プーリーバケット31に対する移動式プーリーバケット32の初期位置が設定される。これにより、延伸ベルトコンベヤ200の初期全長L3が短縮されている。
【0074】
図9(B)に示すように、掘進に伴いテールピース台車120および作業台129が前進すると、移動式プーリーバケット32、ワイヤ部材33cおよび滑車33bは、収納領域20bの外部へ離脱する。
【0075】
その後の構成は、上記第1実施形態と同様であるので、概要のみを説明する。
【0076】
図9(B)は初期の延伸限度を示す。ベルトストレージ30の移動式プーリーバケット32は移動限に達している。図9(A)から図9(B)までの間に追加設置された支持体50により、レール部51は、ベルトストレージ30を第2間隔D2まで拡張できる延伸長に達している。そのため、ベルトストレージ30にコンベヤベルト5を再貯蔵させる作業が行われる際、移動式プーリーバケット32は、固定式プーリーバケット31から第2間隔D2となる位置に移動される。そして、新たに用意されたベルトロール(図示せず)のベルトがベルトストレージ30に移し替えられることにより、初期貯蔵量よりも大きい標準の貯蔵量で、ベルトストレージ30にコンベヤベルト5が再貯蔵される。
【0077】
図9(C)は、ベルトストレージ30へコンベヤベルト5を再貯蔵した状態を示している。この状態の延伸ベルトコンベヤ100の全長L4が、正規機長である。
【0078】
図9(D)は、延伸ベルトコンベヤ100を正規機長にしてから、掘進を進めた本掘進状態を示している。ベルトストレージ30を残してテールピース台車120および作業台129だけがトンネル掘進と共に前進する。テールピース台車120(作業台129)とベルトストレージ30との間では、延伸に伴い追加設置される中間部材60が、坑壁に設置されたニーブレス65により支持され、これによりコンベヤベルト5が支持および循環される。
【0079】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0080】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、テールピース台車120が、掘進方向後側の端部にベルト支持部120aと、ベルト支持部120aの下側に設けられた収納領域120bとを含み、ベルトストレージ30の掘進方向前側の少なくとも一部が、収納領域120bに収納可能に構成されていることによって、初期全長L3を抑制することが可能な延伸ベルトコンベヤ100を提供することができる。
【0081】
また、第2実施形態では、上記のように、テールピース台車120が破砕機124を備えているので、上記第1実施形態のようにテールピース台車20と移動式破砕機10とを別々に設けて並べる構成と比較して、延伸ベルトコンベヤ200の設置に必要な初期全長L3をさらに短縮できる。
【0082】
また、第2実施形態では、上記のように、収納領域120bに、移動式プーリーバケット32の全体が格納されるので、ベルトストレージ30とテールピース台車120との設置領域の重複部分(格納される部分の長さ)を、より大きくすることができる。設置領域の重複部分が大きくなる分だけ、延伸ベルトコンベヤ200の初期全長L3をより効果的に短縮できる。
【0083】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0085】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、固定式プーリーバケット31に、コンベヤベルト5を循環駆動するベルト駆動部31bを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定式プーリーバケット31とベルト駆動部31bとを分離させて別々に設けてもよい。
【0086】
また、上記第1および第2実施形態では、ヘッドプーリー装置40に、ベルト接合架台43を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ヘッドプーリー装置40とベルト接合架台43とを分離させて別々に設けてもよい。
【0087】
また、上記第1および第2実施形態では、テールピース台車20(120)の収納領域20b(120b)に、張力付与機構33が配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、張力付与機構33が収納領域20b(120b)の外部に配置されてもよい。
【0088】
また、上記第1および第2実施形態では、張力付与機構33が、ワイヤ巻取機33a、滑車33bおよびワイヤ部材33cにより構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、滑車33bの代わりにワイヤ巻取機33aを配置して、ワイヤ巻取機33aが滑車33bを介さずに移動式プーリーバケット32を牽引する構成でもよい。この場合、ワイヤ巻取機33aが収納領域20b(120b)に配置されてもよい。この他、張力付与機構33は、たとえば油圧ジャッキ機構などによりコンベヤベルト5の余長部に張力を付与する構成でもよい。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、延伸ベルトコンベヤ100が標準長さに延長されるまで、レール部51と支持架台部52とが設けられた支持体50を、トンネル掘進に伴って順次連結する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、支持体50を用いることなく、レール部51と支持架台部52とが別々に構築されてもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、テールピース傾斜部25(128)によりコンベヤベルト5を収納領域20b(120b)の上方まで案内および支持する例を示したが、本発明はこれに限られない。テールピース傾斜部の代わりに、収納領域よりも上方となる位置にテールピースを配置して、コンベヤベルト5を水平方向後方に案内および支持するように構成してもよい。このとき、テールピース台車には、投入された掘削ズリEMを収納領域よりも上方のテールピースの設置位置まで上方向に搬送する上昇コンベヤを設けてもよいし、掘削ズリEMの投入位置(ホッパの設置位置)自体を、収納領域よりも上方位置に設定してもよい。
【符号の説明】
【0091】
5 コンベヤベルト
20、120 テールピース台車
20a、120a ベルト支持部
20b、120b 収納領域
30 ベルトストレージ
31 固定式プーリーバケット
31a 本体部
31b ベルト駆動部
32 移動式プーリーバケット
32a 本体部
33 張力付与機構
33a ワイヤ巻取機
33b 滑車
33c ワイヤ部材
40 ヘッドプーリー装置
50 支持体
51 レール部
52 支持架台部
62 コンベヤフレーム
100、200 延伸ベルトコンベヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9