(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122903
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス材料およびそれを含む有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20220816BHJP
C07F 15/00 20060101ALI20220816BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220816BHJP
C07D 221/18 20060101ALI20220816BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C09K11/06 660
C09K11/06 690
C07F15/00 E CSP
H05B33/14 B
C07D221/18
C07D487/04 137
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082985
(22)【出願日】2022-05-20
(62)【分割の表示】P 2019513883の分割
【原出願日】2017-09-20
(31)【優先権主張番号】10-2016-0126226
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0130817
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビトナリ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒュン・リー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも良好な色純度を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】特定のキノリン環構造を有する配位子を含むイリジウム錯体化合物、および下記式(2)で表される化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス材料とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式3で表される少なくとも1種の化合物であって、
【化1】
式中、
Yは、CR
13R
14、O、またはSを表し、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、置換もしくは非置換の(C2-C10)アルケニル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表すか、または隣接する置換基に結合されて、炭素原子(複数可)が窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る、置換もしくは非置換の、単環式もしくは多環式、(C3-C30)脂環式環もしくは芳香環、またはそれらの組み合わせを形成することができ、
R
4は、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、
R
5~R
7は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、
R
8、R
13およびR
14は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、
R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキルを表し、
bは、1~4の整数を表し、bが2以上の整数である場合、R
2はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、及び、
cは、1~4の整数を表し、cが2以上の整数である場合、R
8はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい、少なくとも1種の化合物と、
下記式2で表される少なくとも1種の化合物であって、
【化2】
式中、
A環およびB環は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のベンゼン環、または置換もしくは非置換のナフタレン環を表し、ただし、A環およびB環のうちの少なくとも1つは、置換または非置換のナフタレン環であり、
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、または置換もしくは非置換の窒素含有(8~30員)ヘテロアリールを表し、
L
1およびL
2は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリーレン、または置換もしくは非置換の(3~30員)ヘテロアリーレンを表し、前記ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)は、B、N、O、S、Si、およびPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する、少なくとも1種の化合物と、を含む有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項2】
式2が下記式7で表され、
【化3】
式中、
A環およびB環のうちのいずれか1つは、置換または非置換のナフタレン環を表し、他方は、置換または非置換のベンゼン環を表し、
X
1~X
3は、それぞれ独立して、CR
15またはNを表し、ただし、X
1~X
3のうちの少なくとも1つは、Nを表し、
R
15は、水素、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、
Ar
3は、水素、置換もしくは非置換の(C1-C30)アルキル、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、または置換もしくは非置換の(3~30員)ヘテロアリールを表し、
eは、1~4の整数を表し、eが2以上の整数である場合、Ar
3はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、
Ar
1、L
1、およびL
2は、請求項1に定義する通りである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項3】
R2~R10、R13及びR14、Ar1、Ar2、L1、L2、A環、およびB環における、前記置換アルキル、前記置換アルケニル、前記置換アリール(アリーレン)、前記置換ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)、前記置換ベンゼン環、前記置換ナフタレン環、および前記置換単環式もしくは多環式、脂環式環もしくは芳香環、またはそれらの組み合わせの置換基が、それぞれ独立して、重水素、ハロゲン、シアノ、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、(C1-C30)アルキル、ハロ(C1-C30)アルキル、(C2-C30)アルケニル、(C2-C30)アルキニル、(C1-C30)アルコキシ、(C1-C30)アルキルチオ、(C3-C30)シクロアルキル、(C3-C30)シクロアルケニル、(3~7員)ヘテロシクロアルキル、(C6-C30)アリールオキシ、(C6-C30)アリールチオ、(C6-C30)アリール、(5~30員)ヘテロアリール、トリ(C1-C30)アルキルシリル、トリ(C6-C30)アリールシリル、ジ(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールシリル、(C1-C30)アルキルジ(C6-C30)アリールシリル、アミノ、モノ-またはジ-(C1-C30)アルキルアミノ、モノ-またはジ-(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C30)アルキルカルボニル、(C1-C30)アルコキシカルボニル、(C6-C30)アリールカルボニル、ジ(C6-C30)アリールボロニル、ジ(C1-C30)アルキルボロニル、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールボロニル、(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル、および(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項4】
式3で表される前記化合物が、
【化4】
からなる群から選択される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項5】
式2で表される前記化合物が、
【化5】
からなる群から選択される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項6】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、ドーパントとして前記式1で表される前記化合物、およびホストとして前記式2で表される前記化合物を含む、請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも2種類の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス材料、およびそれを含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)は、より広い視野角、より大きなコントラスト比、およびより速い応答時間を提供するという点で利点を有する自発光ディスプレイ素子である。最初の有機EL素子は、1987年にイーストマンコダックによって、発光層を形成するための材料として芳香族ジアミン小分子およびアルミニウム錯体を用いて開発された(Appl.Phys.Lett.51,913,1987を参照されたい)。
【0003】
有機EL素子(OLED)とは、有機エレクトロルミネッセンス材料に通電することによって電気エネルギーを光に変換するものであり、通常、アノード、カソード、および2つの電極間に形成された有機層を含む。有機EL素子の有機層は、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子阻止層、発光層(ホストおよびドーパント材料を含有する)、電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層などを含むことができる。有機層に用いられる材料は、それらの機能に応じて、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料などに分類することができる。有機EL素子において、アノードからの正孔およびカソードからの電子が電圧の印加によって発光層に注入され、高エネルギーを有する励起子が正孔と電子の再結合によって生成される。有機発光化合物は、そのエネルギーによって励起状態になり、有機発光化合物が励起状態から基底状態に戻る際に、エネルギーによって発光する。
【0004】
有機EL素子の発光効率を決定する最も重要な要素は発光材料である。発光材料は、以下の特徴、高い量子効率、電子および正孔の高い移動度、ならびに形成された発光材料層の均一性および安定性を有することが必要である。発光材料は、発光色によって青色、緑色、および赤色の発光材料に分類され、さらに黄色またはオレンジ色の発光材料を含む。その上、発光材料は、機能面でホスト材料およびドーパント材料に分類される。
【0005】
一般的に、優れたEL特性を有する素子は、ホストにドーパントをドーピングすることによって作製される発光層を含む構成を有する。発光材料として1つの材料のみが用いられる場合、最大発光波長が長波長側に移動し、分子間力により色純度が低下するという問題が発生する。
【0006】
赤色、緑色、および青色の発光材料としてそれぞれ、ビス(2-(2’-ベンゾチエニル)-ピリジナト-N,C-3’)イリジウム(アセチルアセトネート)[(acac)Ir(btp)2、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム[Ir(ppy)3]、およびビス(4,6-ジフルオロフェニルピリジナト-N,C2)ピコリナトイリジウム(Firpic)を含むイリジウム(III)錯体が、燐光性発光材料として広く知られている。
【0007】
また、4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)が、燐光性材料用の最も広く知られているホスト材料であった。近年、パイオニア(日本)などが、正孔阻止材料として知られていたホスト材料として、バソクプロイン(BCP)およびアルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリネート)(4-フェニルフェノレート)(BAlq)などを用いて、高性能有機エレクトロルミネッセンス素子を開発した。
【0008】
しかしながら、これらの従来の燐光性ホスト材料は、良好な発光特性を提供するが、それらは、ガラス転移温度が低く、熱安定性が低いために、真空下で高温蒸着プロセスが行われる場合、材料が変化するという欠点を有する。このように、素子の色純度は依然として不十分であった。
【0009】
近年、多くの電子パネル会社は、青色、緑色、および赤色の3色を用いる有機エレクトロルミネセンス素子を作製しており、これら3色は、組み合わされて、現在使用中であるディスプレイの様々な色を実現している。ディスプレイ上に実行することができる色は、青色、緑色、および赤色の3つの頂点で互いに組み合せることができる色のみを表すことができる。したがって、より色彩に富んだ実行には、これらの3色の頂点は可能な限りそれぞれの色の波長に到達する必要がある。
【0010】
韓国特許第1082144号は、インドロカルバゾール誘導体、またはジベンゾインドロカルバゾールとナフチリジニルが組み合わされる化合物を、ホストとして含む有機エレクトロルミネッセンス素子を開示している。また、韓国特許出願公開第2016/0039561号は、インドロカルバゾール誘導体をホストとして含む有機エレクトロルミネッセンス素子を開示している。しかしながら、上記文献は、ベンゾインドロカルバゾールをホストとして含む素子を具体的に開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の目的は、従来の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも良好な色純度を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を製造するための有機エレクトロルミネッセンス材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記技術課題を解決するために鋭意検討した結果、赤色発光において波長帯域を最長波長に近づけることによって、色再現範囲が拡大され得ることを見出した。ホストのドーパント材料、およびドーパント材料の特性は、波長帯域に、より影響を与えるが、ドーパント材料に好適なホスト材料を用いることによって、発光特性をさらに最適化することが可能である。赤色発光の場合、波長が長いためにドーパント材料のエネルギーバンドギャップが狭いことが予想され得る。本開示において使用されるホスト材料は、狭いエネルギーバンドギャップを有し、それは長波長を有するドーパント材料には好適である。したがって、この組み合わせは、ホストからドーパントへエネルギーを移動させる目的に好適であると考えられる。具体的には、上記目的は、下記式1で表される化合物および下記式2で表される化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス材料によって達成することができる。式1で表される化合物は、ドーパントとして構成されてもよく、式2で表される化合物は、ホストとして構成されてもよい。
【0013】
【0014】
式中、
R1~R3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、置換もしくは非置換の(C2-C10)アルケニル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表すか、または隣接する置換基に結合されて、その炭素原子(複数可)が窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る、置換もしくは非置換の、単環式もしくは多環式、(C3-C30)脂環式環もしくは芳香環、またはそれらの組み合わせを形成することができ、
R4は、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、
R5~R7は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C1
0)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、
aおよびbは、それぞれ独立して、1~4の整数を表し、aおよびbがそれぞれ独立して2以上の整数である場合、R1およびR2はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
【0016】
式中、
A環およびB環は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のベンゼン環、または置換もしくは非置換のナフタレン環を表し、ただし、A環およびB環のうちの少なくとも1つは、置換または非置換のナフタレン環であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、または置換もしくは非置換の窒素含有(8~30員)ヘテロアリールを表し、
L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリーレン、または置換もしくは非置換の(3~30員)ヘテロアリーレンを表し、
ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)は、B、N、O、S、Si、およびPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、色純度に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】CIE 1931色度図として、本開示の表1のNTSC色空間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示について詳細に説明する。しかしながら、以下の説明は、本開示を説明することが意図され、決して本開示の範囲を限定することを意味しない。
【0020】
本開示において、「有機エレクトロルミネセンス材料」という用語は、有機エレクトロルミネセンス素子に使用することができ、少なくとも1つの化合物を含み得る材料を意味する。必要に応じて、有機エレクトロルミネッセンス材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する任意の層に含まれ得る。例えば、有機エレクトロルミネッセンス材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料などであってもよい。
【0021】
本開示の有機エレクトロルミネッセンス材料は、少なくとも1つの式1で表される化合物、および少なくとも1つの式2で表される化合物を含むことができる。それらに限定されないが、化学式1の化合物および化学式2の化合物は、発光層に含まれ得る。この場合、式1で表される化合物は、ドーパントとして含まれてもよく、式2で表される化合物は、ホストとして含まれてもよい。
【0022】
式1中、R1~R3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、置換もしくは非置換の(C2-C10)アルケニル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表すか、または隣接する置換基に結合されて、その炭素原子(複数可)が窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る、置換もしくは非置換の、単環式もしくは多環式、(C3-C30)脂環式環もしくは芳香環、またはそれらの組み合わせを形成することができ、一実施形態として、水素、置換もしくは非置換の(C1-C8)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C25)アリールを表すか、または隣接する置換基に結合されて、その炭素原子(複数可)が窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る、置換もしくは非置換の、単環式もしくは多環式、(C5-C25)脂環式環もしくは芳香環、またはそれらの組み合わせを形成することができ、別の実施形態として、水素、置換もしくは非置換の(C1-C4)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C18)アリールを表すか、または隣接する置換基に結合されて、置換もしくは非置換の、単環式もしくは多環式、(C5-C18)脂環式環もしくは芳香環、またはそれらの組み合わせを形成することができる。例えば、R1は、水素、非置換メチル、非置換もしくはメチル(複数可)で置換されたフェニル、または非置換ビフェニルを表すことができるか、または隣接する置換基に結合されて、メチル(複数可)で置換されたインデン環を形成することができ、R2は、水素、または非置換メチルを表すことができ、R3は、水素を表すことができる。
【0023】
式1中、R4は、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、一実施形態として、置換もしくは非置換の(C1-C8)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C25)アリール、別の実施形態として、置換もしくは非置換の(C1-C4)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C18)アリール、例えば、非置換メチル、非置換イソ-ブチル、非置換またはメチル(複数可)、イソ-ブチル(複数可)、および/もしくはtert-ブチル(複数可)で置換されたフェニルを表す。
【0024】
式1中、R5~R7は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、一実施形態として、水素、置換もしくは非置換の(C1-C8)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C25)アリールを表す。別の実施形態として、R5およびR7は、それぞれ独立して、非置換(C1-C5)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C18)アリールを表し、R6は、水素、非置換(C1-C5)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C18)アリールを表す。例えば、R5およびR7は、それぞれ独立して、非置換メチル、非置換ブチル、非置換tert-ブチル、非置換イソ-ブチル、非置換ペンチル、または非置換フェニルを表すことができ、R6は、水素、非置換メチル、または非置換フェニルを表すことができる。
【0025】
式1中、aおよびbは、それぞれ独立して、1~4の整数を表し、一実施形態として、1または2を表すことができ、aおよびbがそれぞれ独立して2以上の整数である場合、R1およびR2はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
式2中、A環およびB環は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のベンゼン環、または置換もしくは非置換のナフタレン環を表し、ただし、A環およびB環のうちの少なくとも1つは、置換または非置換のナフタレン環である。一実施形態として、A環およびB環のうちのいずれか1つは、置換または非置換のベンゼン環を表すことができ、他方は、置換または非置換のナフタレン環を表すことができる。A環およびB環は、それぞれ独立して、非置換ベンゼン環、または非置換もしくはフェニル(複数可)で置換されたナフタレン環を表すことができる。
【0027】
式2中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、または置換もしくは非置換の窒素含有(8~30員)ヘテロアリールを表す。Ar1およびAr2のうちのいずれか1つは、置換または非置換の(C6-C30)アリールを表すことができ、他方は、置換または非置換の窒素含有(8~30員)ヘテロアリールを表すことができる。一実施形態として、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の(C6-C25)アリール、または置換もしくは非置換の窒素含有(8~25員)ヘテロアリールを表し、別の実施形態として、置換もしくは非置換の(C6-C18)アリール、または置換もしくは非置換の窒素含有(8~18員)ヘテロアリールを表す。例えば、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、非置換フェニル、非置換ナフチル、フェニル(複数可)で置換されたキナゾリニル、または非置換またはフェニル(複数可)、ビフェニル(複数可)、ナフチル(複数可)、および/もしくはナフチルフェニル(複数可)で置換されたキノキサリニルを表す。
【0028】
式2中、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリーレン、または置換もしくは非置換の(3~30員)ヘテロアリーレン、一実施形態として、単結合、置換もしくは非置換の(C6-C25)アリーレン、または置換もしくは非置換の(5~25員)ヘテロアリーレン、別の実施形態として、単結合、置換もしくは非置換の(C6-C18)アリーレン、または置換もしくは非置換の(5~18員)ヘテロアリーレン、例えば、単結合、非置換フェニレン、または非置換ピリジニレンを表す。
【0029】
式1および式2中、ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)は、B、N、O、S、Si、およびPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、一実施形態として、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有することができ、別の実施形態として、窒素(複数可)を含有することができる。
【0030】
本開示の一実施形態によれば、式1は、以下の式3~6のうちのいずれか1つによって表すことができる。
【化3】
【0031】
式3中、Yは、CR13R14、O、またはSを表し、一実施形態として、CR13R14を表すことができる。
【0032】
式3中、R8、R13、およびR14は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、一実施形態として、水素、置換もしくは非置換の(C1-C8)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C18)アリール、別の実施形態として、水素、または置換もしくは非置換の(C1-C4)アルキルを表す。別の実施形態として、R8は、水素を表すことができ、R13およびR14は、それぞれ独立して、非置換(C1-C4)アルキルを表すことができる。例えば、R8は、水素を表すことができ、R13およびR14は、それぞれ独立して、非置換メチルを表すことができる。
【0033】
式4中、R12は、水素、重水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、一実施形態として、水素、置換もしくは非置換の(C1-C8)アルキル、または置換もしくは非置換の(C6-C25)アリール、別の実施形態として、水素、非置換(C1-C4)アルキル、または非置換
(C6-C18)アリール、例えば、水素、非置換メチル、または非置換フェニルを表す。
【0034】
式3~6中、R9~R11は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキルを表し、一実施形態として、水素、または置換もしくは非置換の(C1-C8)アルキルを表すことができ、別の実施形態として、水素、または置換もしくは非置換の(C1-C4)アルキルを表すことができ、例えば、水素を表すことができる。
【0035】
式3および4中、cは、1~4の整数を表し、dは、1~5の整数を表し、cおよびdがそれぞれ独立して2以上の整数である場合、R8およびR12はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態として、cおよびdは、それぞれ独立して、1または2を表すことができる。別の実施形態として、cおよびdは、それぞれ独立して、1を表すことができる。
【0036】
式3~6中、R2~R7、およびbは、式1に定義する通りである。
【0037】
本開示の一実施形態によれば、式2は、以下の式7によって表すことができる。
【0038】
【0039】
式7中、A環およびB環のうちのいずれか1つは、置換または非置換のナフタレン環を表し、他方は、置換または非置換のベンゼン環を表す。一実施形態として、A環およびB環のうちのいずれか1つは、非置換またはフェニル(複数可)で置換されたナフタレン環を表し、他方は非置換ベンゼン環を表す。
【0040】
式7中、X1~X3は、それぞれ独立して、CR15またはNを表し、ただし、X1~X3のうちの少なくとも1つは、Nを表し、一実施形態として、X1~X3のうちの少なくとも2つは、Nを表すことができ、別の実施形態として、X1~X3のうちの2つは、Nを表すことができる。例えば、X1は、Nを表すことができ、X2およびX3のうちのいずれか1つは、Nを表すことができ、X2およびX3のうちの他方は、CR15を表すことができる。
【0041】
本明細書では、R15は、水素、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリールを表し、一実施形態として、置換または非置換の(C6-C25)アリールを表すことができ、別の実施形態として、置換または非置換の(C6-C18)アリールを表すことができ、例えば、非置換フェニル、非置換ナフチル、非置換ビフェニル、または非置換ナフチルフェニルを表すことができる。
【0042】
式7中、Ar3は、水素、置換もしくは非置換の(C1-C30)アルキル、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール、または置換もしくは非置換の(3~30員)ヘテロアリール、一実施形態として、水素、置換もしくは非置換の(C1-C20)アルキル、置換もしくは非置換の(C6-C25)アリール、または置換もしくは非置換の(3~25員)ヘテロアリール、別の実施形態として、水素、置換もしくは非置換の(C1-C10)アルキル、置換もしくは非置換の(C6-C18)アリール、または置換もしくは非置換の(5~18員)ヘテロアリール、例えば、水素を表す。
【0043】
式7中、eは、1~4の整数を表し、一実施形態として、1または2を表すことができ、別の実施形態として、1を表すことができる。eが2以上の整数である場合、Ar3はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
式7中、Ar1、L1、およびL2は、式2に定義する通りである。
【0045】
本明細書では、「(C1-C30)アルキル」という用語は、鎖を構成する1~30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキルであることを意味し、炭素原子数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましい。上記アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどを挙げることができる。「(C3-C30)シクロアルキル」という用語は、3~30個の環骨格炭素原子を有する単環式または多環式炭化水素であり、炭素原子数は、3~20が好ましく、3~7がより好ましい。上記シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを挙げることができる。「(3~7員)ヘテロシクロアルキル」という用語は、3~7個、好ましくは5~7個の環骨格原子を有し、B、N、O、S、Si、およびPからなる群、好ましくはO、S、およびNからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むシクロアルキルである。上記ヘテロシクロアルキルとしては、テトラヒドロフラン、ピロリジン、チオラン、テトラヒドロピランなどを挙げることができる。「(C6-C30)アリール(アリーレン)」という用語は、6~30個の環骨格炭素原子を有する芳香族炭化水素から誘導される単環式基または縮合環基であり、環骨格炭素原子数は、6~25が好ましく、6~18がより好ましい。上記アリール(アリーレン)は、部分的に飽和していてもよく、スピロ構造を含むことができる。上記アリールとしては、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、ビナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、フルオレニル、フェニルフルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニル、スピロビフルオレニルなどを挙げることができる。「(3~30員)ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)」という用語は、3~30個の環骨格原子を有し、B、N、O、S、Si、およびPからなる群から選択される少なくとも1つの、好ましくは1~4個のヘテロ原子を含むアリールである。上記ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)は、単環式環であっても、少なくとも1つのベンゼン環と縮合された縮合環であってもよく、部分的に飽和していてもよく、単結合(複数可)を介してヘテロアリール基に少なくとも1つのヘテロアリールまたはアリール基を結合することによって形成されるものであってもよく、スピロ構造を含むことができる。上記ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、およびピリダジニルなどの単環式環状ヘテロアリール、ならびにベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾキサゾリル、イソインドリル、インドリル、ベンゾインドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾカルバゾリル、ジベンゾカルバゾリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリル、およびジヒドロアクリジニルなどの縮合環状ヘテロアリールを挙げることができる。その上、「ハロゲン」としては、F、Cl、Br、およびIが挙げられる。
【0046】
本明細書では、「置換または非置換」という表現における「置換」は、ある官能基中の水素原子が別の原子または別の官能基、すなわち置換基で置換されていることを意味する。式1~7のR1~R15、Ar1、Ar2、Ar3、L1、L2、A環、およびB環における、置換アルキル、置換アルケニル、置換アリール(アリーレン)、置換ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)、置換ベンゼン環、置換ナフタレン環、および置換単環式もしくは多環式、脂環式環もしくは芳香環、またはそれらの組み合わせの置換基は、それぞれ独立して、重水素、ハロゲン、シアノ、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、(C1-C30)アルキル、ハロ(C1-C30)アルキル、(C2-C30)アルケニル、(C2-C30)アルキニル、(C1-C30)アルコキシ、(C1-C30)アルキルチオ、(C3-C30)シクロアルキル、(C3-C30)シクロアルケニル、(3~7員)ヘテロシクロアルキル、(C6-C30)アリールオキシ、(C6-C30)アリールチオ、(C6-C30)アリール、(5~30員)ヘテロアリール、トリ(C1-C30)アルキルシリル、トリ(C6-C30)アリールシリル、ジ(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールシリル、(C1-C30)アルキルジ(C6-C30)アリールシリル、アミノ、モノ-またはジ-(C1-C30)アルキルアミノ、モノ-またはジ-(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C30)アルキルカルボニル、(C1-C30)アルコキシカルボニル、(C6-C30)アリールカルボニル、ジ(C6-C30)アリールボロニル、ジ(C1-C30)アルキルボロニル、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールボロニル、(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル、および(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つであり、一実施形態として、(C1-C20)アルキルおよび(C6-C25)アリールのうちの少なくとも1つであり、別の実施形態として、(C1-C10)アルキルおよび(C6-C18)アリールのうちの少なくとも1つであり、例えば、メチル、tert-ブチル、イソ-ブチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびナフチルフェニルのうちの少なくとも1つである。
【0047】
式1で表される化合物としては、下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
【0049】
【0050】
式2で表される化合物としては、下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
【0052】
本開示の式1および2で表される有機エレクトロルミネッセンス化合物は、当業者にとって既知の合成方法によって生成することができ、例えば、下記方法を参照することができるが、これらに限定されない。
【0053】
式1の具体例として、式3で表される化合物は、下記反応スキーム1に示されるように合成することができる。
【0054】
【0055】
反応スキーム1中、Y、R2~R10、b、およびcは、式3に定義する通りである。
【0056】
式1の具体例として、式4で表される化合物は、韓国特許第1636310号に開示されている方法によって合成することができる。
【0057】
式2で表される化合物は、下記反応スキーム2または3に示されるように合成することができる。
【0058】
【0059】
【0060】
反応スキーム2および3中、Ar1、Ar2、L1、およびL2は、式2に定義する通りである。
【0061】
本開示の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極、第2電極、および第1電極と第2電極との間の少なくとも1つの有機層を含むことができる。有機層は、発光層を含むことができる。発光層は、少なくとも1つの式1で表される化合物、および少なくとも1つの式2で表される化合物を含むことができ、式1で表される化合物は、ドーパント化合物として含まれ得、式2で表される化合物は、ホスト化合物として含まれ得る。
【0062】
第1および第2電極のうちの1つは、アノードであってもよく、他方は、カソードであってもよい。有機層は、発光層を含むことができ、さらに正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子輸送層、電子緩衝層、電子注入層、中間層、正孔阻止層、および電子阻止層から選択される少なくとも1つの層を含むことができる。
【0063】
正孔補助層または発光補助層は、正孔輸送層と発光層との間に配置することができ、正孔輸送速度を制御することができる。正孔補助層または発光補助層は、有機エレクトロルミネッセンス素子の効率および/または寿命を向上させる効果を有し得る。
【0064】
発光層は、光が発せられる層であり、単層であっても2層以上が積層される多層であってもよい。発光層において、ホスト化合物を基準としてドーパント化合物のドーピング濃度は、20重量%未満であることが好ましい。
【0065】
本開示の別の態様によれば、ドーパントとホストとの組み合わせは、式1で表される少なくとも1つのドーパント化合物と式2で表される少なくとも1つのホスト化合物との組み合わせとして提供することができる。また、ドーパントとホストとの組み合わせを含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供され得る。
【0066】
本開示の別の態様によれば、式1で表される少なくとも1つのドーパント化合物と式2で表される少なくとも1つのホスト化合物との組み合わせを含む有機エレクトロルミネセンス材料、およびその材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供され得る。材料は、式1の化合物と式2の化合物との組み合わせのみからなってもよく、有機エレクトロルミネセンス材料に含まれる従来の材料をさらに含むことができる。
【0067】
本開示の別の態様によれば、式1で表される少なくとも1つのドーパント化合物と式2で表される少なくとも1つのホスト化合物との組み合わせを含む有機層が提供され得る。有機層は、複数の層を含むことができ、ドーパント化合物およびホスト化合物はそれぞれ、同じ層に含まれても異なる層に含まれてもよい。また、本開示において、有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供され得る。
【0068】
本開示の有機エレクトロルミネッセンス素子は、式1および2の化合物を含むことができ、さらにアリールアミン系化合物およびスチリルアリールアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むことができる。
【0069】
また、本開示の有機エレクトロルミネッセンス素子において、有機層は、式1および2の化合物に加えて、さらに第1族の金属、第2族の金属、第4周期の遷移金属、第5周期の遷移金属、ランタニド、および周期律表のd-遷移元素の有機金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属、または上記金属を含む少なくとも1つの錯体化合物を含むことができる。さらに、有機層は、発光層および電荷発生層をさらに含むことができる。
【0070】
加えて、本開示の有機エレクトロルミネッセンス素子は、当該技術分野において既知である青色、赤色、または緑色の発光化合物を含有する少なくとも1つの発光層をさらに含むことによって、白色光を発光することができる。さらに、必要に応じて、黄色またはオレンジ色の発光層をさらに含むことができる。
【0071】
本開示の有機エレクトロルミネッセンス素子において、カルコゲナイド層、金属ハロゲン化物層、および金属酸化物層から選択される少なくとも1つの層(以下、「表面層」)は、片方または両方の電極の内側表面(複数可)に配置され得るのが好ましい。具体的には、シリコンまたはアルミニウムのカルコゲナイド(酸化物を含む)層がエレクトロルミネッセンス媒体層のアノード表面に配置されるのが好ましく、金属ハロゲン化物層または金属酸化物層がエレクトロルミネセンス媒体層のカソード表面に配置されるのが好ましい。そのような表面層は、有機エレクトロルミネッセンス素子に動作安定性を提供することができる。カルコゲナイドとしては、好ましくは、SiOX(1≦X≦2)、AlOX(1≦X≦1.5)、SiON、SiAlONなどが挙げられ、金属ハロゲン化物としては、LiF、MgF2、CaF2、希土類金属フッ化物などが挙げられ、金属酸化物としては、Cs2O、Li2O、MgO、SrO、BaO、CaOなどが挙げられる。
【0072】
本開示の有機エレクトロルミネッセンス素子において、一対の電極の少なくとも1つの表面に、電子輸送化合物と還元性ドーパントとの混合領域、または正孔輸送化合物と酸化性ドーパントとの混合領域が配置されるのが好ましい。この場合、電子輸送化合物は、陰イオンに還元されるので、混合領域からエレクトロルミネッセンス媒体への電子の注入および輸送がより容易になる。さらに、正孔輸送化合物は、陽イオンに酸化されるので、混合領域からエレクトロルミネッセンス媒体への正孔の注入および輸送がより容易になる。好ましくは、酸化性ドーパントとしては、様々なルイス酸およびアクセプター化合物が挙げられ、還元性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属、およびそれらの混合物が挙げられる。還元性ドーパント層は、電荷発生層として用いられて、2つ以上の発光層を有し、白色光を発する有機エレクトロルミネッセンス素子を調製することができる。
【0073】
本開示の有機エレクトロルミネッセンス素子の各層を形成するために、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、およびイオンプレーティング方法などの乾式成膜方法、またはインクジェット印刷、ノズル印刷、スロットコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、およびフローコーティング方法などの湿式製膜方法が使用され得る。本開示のドーパントおよびホスト化合物は、共蒸発または混合蒸発されてもよい。
【0074】
湿式製膜方法を用いる場合、各層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの任意の好適な溶媒に溶解または拡散させることによって薄膜を形成することができる。溶媒は、各層を形成する材料が溶解または拡散され得て、膜形成能力に問題がない、任意の溶媒であってもよい。
【0075】
共蒸発は、2つ以上の異性体材料がそれぞれ個々のるつぼ源に配置され、材料を蒸発させるために同時に両方のセルに電流が印加される混合蒸着方法である。混合蒸発は、それらを蒸発させる前に、2つ以上の異性体材料が1つのるつぼ源で混合され、材料を蒸発させるためにセルに電流が印加される混合蒸着方法である。
【0076】
ディスプレイシステムまたは照明システムは、本開示の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いることによって、製造することができる。
【0077】
以下、本発明のドーパント化合物およびホスト化合物を含む有機発光ダイオード(OLED)素子の発光特性が、従来のOLED素子と比較して詳細に説明される。しかしながら、本開示は、以下の実施例によって限定されない。
【0078】
素子実施例1:本開示の有機エレクトロルミネッセンス化合物を含むOLED素子の製造
本開示による有機エレクトロルミネッセンス化合物を用いてOLED素子を製造した。OLED素子用のガラス基板(ジオマテック社、日本)上の透明電極インジウムスズ酸化物(ITO)薄膜(10Ω/sq)をアセトン、エタノール、および蒸留水で順次超音波洗浄し、次いで、イソプロパノール中に保管した。次いで、ITO基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着した。化合物HI-1を真空蒸着装置のセルに導入した、次いで、装置のチャンバー内の圧力を10-6トールに制御した。その後、セルに電流を印加して上記導入材料を蒸発させ、それによってITO基板上に厚さ80nmを有する第1正孔注入層を形成した。次に、化合物HI-2を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を印加することによって蒸発させ、それによって第1正孔注入層上に厚さ5nmを有する第2正孔注入層を形成した。次いで、化合物HT-1を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を印加することによって蒸発させ、それによって第2正孔注入層上に厚さ10nmを有する第1正孔輸送層を形成した。次いで、化合物HT-2を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を印加することによって蒸発させ、それによって第1正孔輸送層上に厚さ60nmを有する第2正孔輸送層を形成した。正孔注入層および正孔輸送層を形成した後、以下のようにその上に発光層を形成した。化合物H-2をホストとして真空蒸着装置の1つのセルに導入し、化合物D-11をドーパントとして別のセルに導入した。ドーパントを、ホストとドーパントの総量を基準として3重量%のドーピング量で蒸着させ、第2正孔輸送層上に厚さ40nmを有する発光層を形成した。次いで、化合物ET-1および化合物EI-1を他の2つのセルに導入し、1:1の割合で蒸発させて、発光層上に厚さ30nmを有する電子輸送層を形成した。電子輸送層上に厚さ2nmを有する電子注入層として化合物EI-1を蒸着させた後、別の真空蒸着装置によって、厚さ80nmを有するAIカソードを電子注入層上に蒸着させた。このように、OLED素子を製造した。
【0079】
【0080】
素子実施例2:本開示の有機エレクトロルミネッセンス化合物を含むOLED素子の製造
ドーパントとして化合物D-1を用いた以外は、素子実施例1と同じ様式でOLED素子を製造した。
【0081】
比較例1:従来の有機エレクトロルミネッセンス化合物を含むOLED素子の製造
ドーパントとして、以下の化合物Xを用いた以外は、素子実施例1と同じ様式でOLED素子を製造した。
【0082】
【0083】
色再現範囲の比較
色再現範囲は、National Television System Committee(NTSC)によって作製された色空間の規格に基づいて計算され、これは、国際照明委員会(CIE)によって定義された色座標系に基づく。
図1を参照して、NTSCによって定義される赤色(0.67、0.33)、緑色(0.21、0.71)、および青色(0.14、0.08)の3点によって形成される三角形の面積(以下、「NTSC面積」)を計算する。また、青色および緑色のNTSC定義値、ならびに製造された素子での赤色の測定値を用いて三角形の面積を計算し、次いで、三角形の面積対NTSC面積の比を計算する。
【0084】
比較例および素子実施例の面積対NTSC面積、すなわちNTSC色空間、のパーセンテージを、下記の表1に示されるように計算する。
【0085】
【0086】
表1において、R(x)は、赤色発光のCIE X座標を表し、R(y)は、赤色発光のCIE Y座標を表し、G(x)は、緑色発光のCIE X座標を表し、G(y)は、緑色発光のCIE Y座標を表し、B(x)は、青色発光のCIE X座標を表し、B(y)は、青色発光のCIE Y座標を表す。
【0087】
素子実施例1および2ならびに比較例1の有機エレクトロルミネッセンス素子のCIE色座標、ならびにこの面積対NTSC面積のパーセンテージを下記の表2に示す。
【0088】
【0089】
上記の表2より、本開示の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子(素子実施例1および2)は、従来の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子(比較例1)より色再現範囲(色域)が優れていることを確認することができる。