(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122917
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】医療用キャップおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20220816BHJP
B65D 51/20 20060101ALI20220816BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20220816BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220816BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220816BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61J1/05 315C
B65D51/20
B29C45/16
B29C45/14
B29C45/26
B29C33/14
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084761
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2016145238の分割
【原出願日】2016-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 稔
(57)【要約】
【課題】密閉性を高く確保しつつ移注針の刺し込みがより小さい力にて行なえるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体が位置ずれしてしまうことが防止できる医療用キャップを提供する。
【解決手段】医療用キャップ1Aは、弾性栓体40と、外枠体10と、弾性栓体40を外枠体10に固定する樹脂製の固定部50とを備える。弾性栓体40は、第1主面40a、第2主面40bおよび周面40cを有し、第1主面40aの周縁には、段差面が設けられる。外枠体10は、第1主面40aに対向する天板部21と、周面40cに距離をもって対向する側壁部22とを有し、第1主面40aの周縁に対応する位置の天板部21には、上記段差面に当接する環状突部21aが設けられる。弾性栓体40と外枠体10との間の空間のうち、環状突部21aが位置する部分よりも弾性栓体40の径方向外側に位置する空間は、固定部50によって埋め込まれる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱状の弾性栓体と、
前記弾性栓体が内部に配置された外枠体と、
前記弾性栓体および前記外枠体の双方に固着することで前記弾性栓体を前記外枠体に固定する樹脂製の固定部とを備え、
前記弾性栓体は、相対して位置する第1主面および第2主面と、前記第1主面および前記第2主面の双方に接続する周面とを有し、
前記第1主面の周縁には、段差面が設けられ、
前記外枠体は、前記第1主面に対向する天板部と、前記周面に距離をもって対向する筒状の側壁部とを有し、
前記第1主面の周縁に対応する位置の前記天板部には、前記段差面に当接する環状突部が設けられ、
前記弾性栓体と前記外枠体との間の空間のうち、前記環状突部が位置する部分よりも前記弾性栓体の径方向外側に位置する空間が、前記固定部によって埋め込まれている、医療用キャップ。
【請求項2】
前記側壁部の内側面には、その突出方向に位置する先端面が前記周面に非接合の状態で当接する突出部が周方向に沿って複数設けられ、
前記弾性栓体と前記側壁部との間の空間のうち、前記突出部が位置する部分を除く空間が、前記固定部によって埋め込まれている、請求項1に記載の医療用キャップ。
【請求項3】
前記周面には、その突出方向に位置する先端面が前記側壁部の内側面に非接合の状態で当接する突出部が周方向に沿って複数設けられ、
前記弾性栓体と前記側壁部との間の空間のうち、前記突出部が位置する部分を除く空間が、前記固定部によって埋め込まれている、請求項1に記載の医療用キャップ。
【請求項4】
相対して位置する第1主面および第2主面と、前記第1主面および前記第2主面の双方に接続する周面とを有し、前記第1主面の周縁に段差面が設けられてなる略円柱状の弾性栓体が準備される工程と、
天板部および筒状の側壁部を有し、前記天板部に環状突部が設けられてなる外枠体が準備される工程と、
前記第1主面が前記天板部に対向しかつ前記周面が前記側壁部に距離をもって対向するとともに、前記環状突部が前記段差面に当接するように、前記弾性栓体が前記外枠体の内部に配置される工程と、
前記弾性栓体が前記外枠体の内部に配置された状態において、溶融した第1樹脂材料を前記弾性栓体と前記側壁部との間の空間に流し込み、その後、前記第1樹脂材料を硬化させることで前記弾性栓体および前記外枠体の双方に固着する樹脂製の固定部を形成することにより、前記弾性栓体が前記外枠体に固定される工程とを備え、
前記弾性栓体が前記外枠体に固定される工程において、前記環状突部が前記段差面に当接していることで前記第1樹脂材料が堰き止められることにより、前記弾性栓体と前記外枠体との間の空間のうち、前記環状突部が位置する部分よりも前記弾性栓体の径方向外側に位置する空間が、前記固定部によって埋め込まれる、医療用キャップの製造方法。
【請求項5】
前記側壁部の内側面に予め突出部が周方向に沿って複数設けられていることにより、前記弾性栓体が前記外枠体の内部に配置される工程において、前記突出部がその突出方向に位置する先端面が前記周面に当接することで前記弾性栓体が前記外枠体の内部において位置決めして配置されるとともに、前記弾性栓体が前記外枠体に固定される工程において、前記弾性栓体と前記側壁部との間の空間のうち、前記突出部が位置する部分を除く空間が、前記固定部によって埋め込まれる、請求項4に記載の医療用キャップの製造方法。
【請求項6】
前記周面に予め突出部が周方向に沿って複数設けられていることにより、前記弾性栓体が前記外枠体の内部に配置される工程において、前記突出部がその突出方向に位置する先端面が前記側壁部の内側面に当接することで前記弾性栓体が前記外枠体の内部において位置決めして配置されるとともに、前記弾性栓体が前記外枠体に固定される工程において、前記弾性栓体と前記側壁部との間の空間のうち、前記突出部が位置する部分を除く空間が、前記固定部によって埋め込まれる、請求項4に記載の医療用キャップの製造方法。
【請求項7】
前記外枠体が準備される工程は、前記外枠体の外面を成形するための第1成形面を有する第1金型と、前記側壁部の内側面を含む前記外枠体の内面を成形するための第2成形面を有する第2金型とを使用して、溶融した第2樹脂材料を前記第1金型と前記第2金型とによって規定される第1キャビティに流し込み、その後、前記第2樹脂材料を硬化させることで前記外枠体を製作する工程と、前記外枠体の製作後において、前記外枠体が前記第1金型によって保持された状態を維持しつつ、前記外枠体を前記第2金型のみから離型する工程とを含み、
前記弾性栓体が前記外枠体の内部に配置される工程は、前記外枠体が前記第1金型によって保持された状態のままで行なわれ、
前記弾性栓体が前記外枠体に固定される工程は、前記外枠体が前記第1金型によって保持された状態のままで、前記固定部を成形するための第3成形面を有する第3金型を使用して、当該第3金型の一部を前記第2主面の少なくとも一部に当接させることにより、前記第1樹脂材料を前記外枠体と前記弾性栓体と前記第3金型とによって規定される第2キャビティに流し込んで、その後、前記第1樹脂材料を硬化させることで行なわれる、請求項4から6のいずれかに記載の医療用キャップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用キャップおよびその製造方法に関し、特に、薬液容器や輸液容器に用いられる医療用キャップおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療分野において用いられる薬液容器や輸液容器の口部には、内部に収容された液体を衛生的に取り出し可能にするために、移注針を刺し込むことできる弾性栓体を含んだ医療用キャップが取付けられる。この種の医療用キャップが開示された文献としては、たとえば特開2010-220758号公報(特許文献1)がある。
【0003】
上記特許文献1に開示された医療用キャップは、略円柱状の弾性栓体と、弾性栓体の上面の外縁部に当接するとともに弾性栓体の周面を取り囲む略円筒状の上側枠体と、弾性栓体の下面の外縁部に当接するとともに上側枠体に組付けられた下側枠体とを備えている。
【0004】
当該医療用キャップは、上側枠体の内部に弾性栓体が配置された状態において下側枠体が樹脂材料を用いた射出成形によって形成されることにより、下側枠体が上側枠体および弾性栓体の双方に固着するように製造されたものである。このように構成することにより、弾性栓体を簡便に上側枠体および下側枠体に対して固定することが可能になり、安価に医療用キャップを製造することができる。
【0005】
ここで、上記特許文献1に開示された医療用キャップにおいては、下側枠体によって弾性栓体が押圧されることで上方に向けて撓んだ状態(すなわち、弾性栓体の中央部が周縁部よりも上方に突出した状態)に保持されるように構成されている。なお、このような構成は、下側枠体の射出成形時において弾性栓体の外縁部が局所的に下側枠体から圧縮応力を受けるようにすることで実現できる。
【0006】
当該構成を採用することにより、上側枠体および下側枠体と弾性栓体との密着性が高まることになり、密閉性を高く確保することができるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体が位置ずれしてしまうことが防止できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記構成を採用した場合には、弾性栓体の下面の中央部近傍が常に圧縮された状態となるため、移注針の刺し込みの際に、これが移注針の刺し込みに対する大きな抵抗となってしまう。そのため、より大きい力をもって移注針を刺し込むことが必要になる問題が生じるばかりでなく、場合によってはコアリングが発生してしまう原因ともなる。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、密閉性を高く確保しつつ移注針の刺し込みがより小さい力にて行なえるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体が位置ずれしてしまうことが防止できる医療用キャップおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づく医療用キャップは、略円柱状の弾性栓体と、上記弾性栓体が内部に配置された外枠体と、上記弾性栓体および上記外枠体の双方に固着することで上記弾性栓体を上記外枠体に固定する樹脂製の固定部とを備えている。上記弾性栓体は、相対して位置する第1主面および第2主面と、上記第1主面および上記第2主面の双方に接続する周面とを有しており、上記第1主面の周縁には、段差面が設けられている。上記外枠体は、上記第1主面に対向する天板部と、上記周面に距離をもって対向する筒状の側壁部とを有しており、上記第1主面の周縁に対応する位置の上記天板部には、上記段差面に当接する環状突部が設けられている。上記弾性栓体と上記外枠体との間の空間のうち、上記環状突部が位置する部分よりも上記弾性栓体の径方向外側に位置する空間は、上記固定部によって埋め込まれている。
【0011】
上記本発明に基づく医療用キャップにあっては、その突出方向に位置する先端面が上記周面に非接合の状態で当接する複数の突出部が、上記側壁部の内側面に周方向に沿って設けられていてもよく、その場合には、上記弾性栓体と上記側壁部との間の空間のうち、上記突出部が位置する部分を除く空間が、上記固定部によって埋め込まれていることが好ましい。
【0012】
上記本発明に基づく医療用キャップにあっては、その突出方向に位置する先端面が上記側壁部の内側面に非接合の状態で当接する複数の突出部が、上記周面に周方向に沿って設けられていてもよく、その場合には、上記弾性栓体と上記側壁部との間の空間のうち、上記突出部が位置する部分を除く空間が、上記固定部によって埋め込まれていることが好ましい。
【0013】
本発明に基づく医療用キャップの製造方法は、相対して位置する第1主面および第2主面と、上記第1主面および上記第2主面の双方に接続する周面とを有し、上記第1主面の周縁に段差面が設けられてなる略円柱状の弾性栓体が準備される工程と、天板部および筒状の側壁部を有し、上記天板部に環状突部が設けられてなる外枠体が準備される工程と、上記第1主面が上記天板部に対向しかつ上記周面が上記側壁部に距離をもって対向するとともに、上記環状突部が上記段差面に当接するように、上記弾性栓体が上記外枠体の内部に配置される工程と、上記弾性栓体が上記外枠体の内部に配置された状態において、上記弾性栓体と上記側壁部との間の空間に溶融した第1樹脂材料を流し込んでこれを硬化させることで上記弾性栓体および上記外枠体の双方に固着する樹脂製の固定部を形成することにより、上記弾性栓体が上記外枠体に固定される工程とを備えている。上記本発明に基づく医療用キャップの製造方法にあっては、上記弾性栓体が上記外枠体に固定される工程において、上記環状突部が上記段差面に当接していることで上記第1樹脂材料が堰き止められることにより、上記弾性栓体と上記外枠体との間の空間のうち、上記環状突部が位置する部分よりも上記弾性栓体の径方向外側に位置する空間が、上記固定部によって埋め込まれる。
【0014】
上記本発明に基づく医療用キャップの製造方法にあっては、上記側壁部の内側面に予め突出部が周方向に沿って複数設けられていることにより、上記弾性栓体が上記外枠体の内部に配置される工程において、上記突出部がその突出方向に位置する先端面が上記周面に当接することで上記弾性栓体が上記外枠体の内部において位置決めして配置されるとともに、上記弾性栓体が上記外枠体に固定される工程において、上記弾性栓体と上記側壁部との間の空間のうち、上記突出部が位置する部分を除く空間が、上記固定部によって埋め込まれることが好ましい。
【0015】
上記本発明に基づく医療用キャップの製造方法にあっては、上記周面に予め突出部が周方向に沿って複数設けられていることにより、上記弾性栓体が上記外枠体の内部に配置される工程において、上記突出部がその突出方向に位置する先端面が上記側壁部の内側面に当接することで上記弾性栓体が上記外枠体の内部において位置決めして配置されるとともに、上記弾性栓体が上記外枠体に固定される工程において、上記弾性栓体と上記側壁部との間の空間のうち、上記突出部が位置する部分を除く空間が、上記固定部によって埋め込まれることが好ましい。
【0016】
上記本発明に基づく医療用キャップの製造方法にあっては、上記外枠体が準備される工程が、上記外枠体の外面を成形するための第1成形面を有する第1金型と、上記側壁部の内側面を含む上記外枠体の内面を成形するための第2成形面を有する第2金型とを使用して、上記第1金型と上記第2金型とによって規定される第1キャビティに溶融した第2樹脂材料を流し込んでこれを硬化させることで上記外枠体を射出成形によって製作する工程と、上記外枠体の製作後において、上記外枠体が上記第1金型によって保持された状態を維持しつつ、上記外枠体を上記第2金型のみから離型する工程とを含んでいることが好ましい。その場合には、上記弾性栓体が上記外枠体の内部に配置される工程が、上記外枠体が上記第1金型によって保持された状態のままで行なわれることが好ましく、さらにその場合には、上記弾性栓体が上記外枠体に固定される工程が、上記外枠体が上記第1金型によって保持された状態のままで、上記固定部を成形するための第3成形面を有する第3金型を使用して、上記第3金型の一部を上記第2主面に当接させることで上記外枠体と上記弾性栓体と上記第3金型とによって規定される第2キャビティに溶融した上記第1樹脂材料を流し込んでこれを硬化させることで行なわれることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、密閉性を高く確保しつつ移注針の刺し込みがより小さい力にて行なえるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体が位置ずれしてしまうことが防止できる医療用キャップおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態1における医療用キャップを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2中に示すIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図2中に示すIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】
図3中に示すV-V線に沿った断面図である。
【
図6】
図1ないし
図5に示す外枠体を斜め下方から見た斜視図である。
【
図7】
図1ないし
図5に示す弾性栓体を斜め上方および斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】
図3中に示す領域VIIIA,VIIIBの拡大図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における医療用キャップの製造方法を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1における医療用キャップの製造方法を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態1における医療用キャップの製造方法を示す断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態1における医療用キャップの製造方法を示す断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態1における医療用キャップの製造方法を示す断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態1における医療用キャップの製造方法を示す断面図である。
【
図15】本発明の実施の形態1における医療用キャップの製造方法を示す断面図である。
【
図16】本発明の実施の形態2における医療用キャップの平面図である。
【
図17】
図16中に示すXVII-XVII線に沿った断面図である。
【
図18】
図16中に示すXVIII-XVIII線に沿った断面図である。
【
図19】
図17中に示すXIX-XIX線に沿った断面図である。
【
図21】
図17中に示す領域XXIA,XXIBの拡大図である。
【
図22】本発明の実施の形態3における医療用キャップの平面図である。
【
図23】
図22中に示すXXIII-XXIII線に沿った断面図である。
【
図24】
図22中に示すXXIV-XXIV線に沿った断面図である。
【
図25】
図23中に示すXXV-XXV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1および
図2は、それぞれ本発明の実施の形態1における医療用キャップを斜め上方から見た斜視図および平面図である。
図3および
図4は、それぞれ
図2中に示すIII-III線およびIV-IV線に沿った断面図であり、
図5は、
図3中に示すV-V線に沿った断面図である。
図6は、
図1ないし
図5に示す外枠体を斜め下方から見た斜視図であり、
図7(A)および
図7(B)は、それぞれ
図1ないし
図5に示す弾性栓体を斜め上方および斜め下方から見た斜視図である。また、
図8(A)および
図8(B)は、それぞれ
図3中に示す領域VIIIA,VIIIBの拡大図である。まず、これら
図1ないし
図8を参照して、本実施の形態における医療用キャップ1Aについて説明する。
【0021】
図1ないし
図5に示すように、医療用キャップ1Aは、外枠体10と、弾性栓体40と、固定部50とを備えている。外枠体10は、カップ状の枠部20と、プルトップ構造を有する蓋部30とを含んでいる。
【0022】
図1ないし
図6に示すように、外枠体10は、上述した枠部20と蓋部30とが一体に形成されてなるたとえば樹脂製の部材からなる。枠部20は、略円環板状の天板部21と、天板部21の外縁から立設された略円筒状の側壁部22とを有しており、その下端に開口部を有している。蓋部30は、略円環板状の天板部21の内縁から連続して設けられたカバー部32と、カバー部32の所定位置から上方に向けて引き出されたプルトップ31とを有している。
【0023】
外枠体10を構成する材料としては、医療用途において一般的に安全性が確立している合成樹脂を使用することができる。具体的には、上記合成樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂や、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマが使用できる。特に、上記合成樹脂として、オレフィン系熱可塑性エラストマを使用することが好ましい。なお、外枠体10は、後述するように、たとえば金型を用いた射出成形によって形成することができる。
【0024】
図3ないし
図5、
図7(A)および
図7(B)に示すように、弾性栓体40は、偏平な略円柱状の形状を有しており、外枠体10の内部に配置されている。弾性栓体40は、相対して位置する第1主面40aおよび第2主面40bと、これら第1主面40aおよび第2主面40bの双方に接続する周面40cとを有しており、このうちの第1主面40aが上面(針刺面とも称される)を構成しており、第2主面40bが下面(接液面とも称される)を構成している。
【0025】
弾性栓体40を構成する材料としては、医療用途において一般的に安全性が確立しているゴムまたは熱可塑性エラストマを使用することができる。具体的には、上記ゴムとして、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム等を使用することができ、熱可塑性エラストマとして、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマが使用できる。なお、弾性栓体40は、たとえば金型を用いた射出成形によって形成することができる。
【0026】
図1ないし
図5に示すように、固定部50は、略円筒状の筒状部51と、筒状部51の下端から外側に向けて延設された略円環板状の鍔部52とを有している。固定部50は、弾性栓体40および外枠体10の双方に固着することで弾性栓体40を外枠体10に固定するためのものであり、樹脂製の部材にて構成されている。固定部50は、その筒状部51が外枠体10の内部において外枠体10と弾性栓体40との間に介在するように設けられている。
【0027】
固定部50を構成する材料としては、医療用途において一般的に安全性が確立している合成樹脂を使用することができ、具体的には、外枠体10と同様の合成樹脂を使用することができる。特に、上記合成樹脂として、オレフィン系熱可塑性エラストマを使用することが好ましい。なお、固定部50は、後述するように、金型を用いた射出成形によって形成される。
【0028】
図3ないし
図5に示すように、弾性栓体40の第1主面40aは、外枠体10の天板部21に対向しており、弾性栓体40の周面40cは、外枠体10の側壁部22に対向している。一方、固定部50の筒状部51の上端側の部分は、弾性栓体40の周面40cと外枠体10の側壁部22との間に位置しており、固定部50の筒状部51の下端側の部分は、外枠体10の側壁部22に沿って位置している。また、固定部50の鍔部52は、外枠体10の下端に設けられた開口部を介して外部に引き出されている。
【0029】
固定部50の筒状部51の上端側の部分は、弾性栓体40の周面40cと第1主面40aの外縁部と第2主面40bの外縁部とを覆っており、当該部分において弾性栓体40に固着している。また、固定部50の筒状部51は、外枠体10の側壁部22の内側面を覆っており、当該部分において外枠体10に固着している。これにより、弾性栓体40が固定部50によって保持されるとともに、弾性栓体40を保持する固定部50が外枠体10に接合されることになり、弾性栓体40が固定部50を介して外枠体10に固定されている。
【0030】
このように構成された医療用キャップ1Aは、医療分野において用いられる薬液容器や輸液容器にそれらの口部を覆うように取付けられる。そして、プルトップ31を指等によって引き上げることでプルトップ31およびカバー部32を含む蓋部30が枠部20から離脱されることにより、弾性栓体40の針刺面である第1主面40aが外部に対して露出することになり、これによって弾性栓体40に対して移注針を刺し込むことが可能になる。
【0031】
ここで、本実施の形態における医療用キャップ1Aは、外枠体10に対して固定部50を介して固定された弾性栓体40が、当該弾性栓体40の軸方向および径方向のいずれにも実質的に撓んだり圧縮したりすることがないように、無負荷に近い状態で保持されてなるものである。このように構成することにより、移注針の刺し込みの際により小さい力でその刺し込みが可能になることになり、取扱いが容易になるとともにコアリングの発生が抑制できることになる。
【0032】
このように、弾性栓体40が無負荷に近い状態で外枠体10に対して固定されるようにするためには、固定部50を形成するための射出成形の際に、実質的に弾性栓体40が全体的にも局所的にも圧縮されないようにすることが必要である。そのためには、硬化することで固定部50となる後述する溶融した第1樹脂材料のキャビティへの射出時において、金型によって弾性栓体40が実質的に圧縮されることがないようにするとともに、第1樹脂材料の射出圧を相当程度に低く設定することが必要になるが、これのみでは十分とはならない場合がある。
【0033】
すなわち、射出圧を相当程度に低く設定した場合には、外枠体10と弾性栓体40とに対する固定部50の接合力が低下するおそれがあるため、当該接合力の低下を防止する観点から、固定部50と弾性栓体40との接合面積ならびに固定部50と外枠体10との接合面積をより大きく確保することが必要になる場合がある。
【0034】
そのため、本実施の形態における医療用キャップ1Aにおいては、上述したように、弾性栓体40の周面40cと外枠体10の側壁部22との間の空間が固定部50によって埋め込まれるようにするとともに、弾性栓体40の第1主面40aの外縁部および第2主面40bの外縁部がそれぞれ固定部50によって覆われるようにすることにより、上述した接合面積を大きく確保している。
【0035】
一方で、第1樹脂材料の射出時において、弾性栓体40が実質的に圧縮されることがないように金型を弾性栓体40に比較的弱い力で当接させるのみとした場合には、金型と弾性栓体40との接触部を介して第1樹脂材料がキャビティの外部に食み出すおそれがあり、この第1樹脂材料の食み出しを防止するための工夫が必要になる場合がある。
【0036】
また、第1樹脂材料の射出時において、弾性栓体40が実質的に圧縮されることがないように金型を弾性栓体40に比較的弱い力で当接させるのみとした場合には、弾性栓体40の外枠体10に対する位置決めがままならず、第1樹脂材料の射出圧によって弾性栓体40が位置ずれを起こすおそれがあり、この位置ずれを防止するための工夫が必要になる場合がある。
【0037】
これら第1樹脂材料の食み出しや弾性栓体40の位置ずれを防止する観点から、本実施の形態における医療用キャップ1Aは、特に以下のような特徴的な構成を有している。
【0038】
図3、
図4、
図6および
図8(A)に示すように、外枠体10の天板部21の所定位置には、外枠体10の内側に向かって突出する環状形状の環状壁部21aが設けられている。より詳細には、環状壁部21aは、天板部21の外縁から所定距離だけ内側に入り込んだ位置に設けられている。
【0039】
環状壁部21aは、固定部50の射出成形の際に、溶融した第1樹脂材料を堰き止めるための部位であり、環状壁部21aの突出方向に位置する先端部は、弾性栓体40の第1主面40aに当接しているとともに、環状壁部21aの内周面は、弾性栓体40の第1主面40aに設けられた段差面に当接している。
【0040】
これにより、固定部50の射出成形時において、弾性栓体40の第1主面40a側の部分において、第1樹脂材料がキャビティの外部に食み出すことが防止できることになる。したがって、固定部50は、当該環状壁部21aよりも径方向外側であってかつ弾性栓体40と外枠体10との間に位置する空間を埋め込むことになり、弾性栓体40の針刺面である第1主面40aが、固定部50によって覆われてしまうことが防止できることになる。
【0041】
図3、
図4、
図7(B)および
図8(B)に示すように、弾性栓体40の第2主面40bの所定位置には、第1主面40aとは反対側に向かって突出する環状突部42が設けられており、固定部50の筒状部51の所定位置には、筒状部51の内側に向かって突出する略円環板状の支持部51aが設けられている。より詳細には、環状突部42は、弾性栓体40の周面40cから所定距離だけ内側に入り込んだ位置の第2主面40bに設けられており、支持部51aは、弾性栓体40の第2主面40bの外縁部を覆うように設けられている。
【0042】
環状突部42は、固定部50の射出成形の際に、弾性栓体40の第2主面40bに当接するように配置される金型(本実施の形態においては、後述する第3金型300(
図13から
図15参照)がこれに該当する)と協働することで、溶融した第1樹脂材料を堰き止めるために主として設けられた部位である。より詳細には、環状突部42は、固定部50の射出成形時において、当該環状突部42の突出方向に位置する先端部が上記金型に当接するように設けられている。
【0043】
これにより、固定部50の射出成形時において、弾性栓体40の第2主面40b側の部分において、第1樹脂材料がキャビティの外部に食み出すことが防止できることになる。したがって、固定部50の支持部51aは、環状突部42よりも径方向外側の位置に形成されることになり、弾性栓体40の接液面である第2主面40bが、固定部50によって覆われてしまうことが防止できることになる。
【0044】
ここで、本実施の形態においては、環状突部42が、弾性栓体40の中心軸を含む断面において山なりの形状を有しており、固定部50のうちの弾性栓体40の第2主面40b上に位置する部分である支持部51aの内側端部が、当該山なり形状の環状突部42の頂点近傍に位置しているが、当該支持部51aの内側端部は、環状突部42の内側端部よりも外側の位置(すなわち、
図8(B)中において矢印Aにて示す領域)に配置されていればよく、さらには、環状突部42よりも外側に配置されていてもよい。
【0045】
このように構成することにより、環状突部42を設けなかった場合に比べ、射出成形時において第1樹脂材料が充填される空間であるキャビティ(本実施の形態においては、後述する第2キャビティC2(
図14参照)がこれに該当する)の内側端部と弾性栓体40の針刺しが予定されている部分との間の、弾性栓体40の第2主面40b上における距離が長く確保できることになり、当該針刺しが予定されている部分にまで第1樹脂材料が食み出してしまうことが効果的に防止できることになる。
【0046】
すなわち、環状突部42は、上述した金型と協働することで溶融した第1樹脂材料を堰き止める機能を発揮するばかりでなく、万が一第1樹脂材料がキャビティから食み出した場合にも、これが針刺しが予定されている部分にまで達しないようにするための機能も有している。
【0047】
図3、
図4および
図7(B)に示すように、弾性栓体40の第2主面40bのうちの環状突部42が設けられた位置よりも内側の位置には、なだらかな斜面を有する略円錐形状の凹部41が設けられている。この凹部41は、弾性栓体40の中央部の厚みを薄くすることで、移注針の刺し込みの際の抵抗を下げるためのものであるとともに、固定部50の射出成形の際に、上述した金型によって弾性栓体40に必要以上の圧縮力が働かないようにするためのものであり、さらには、上述したキャビティの内側端部と弾性栓体40の針刺しが予定されている部分との間の、弾性栓体40の第2主面40b上における距離をさらに長く確保するためのものでもある。
【0048】
図2ないし
図6に示すように、外枠体10の側壁部22の内側面には、外枠体10の軸方向(すなわち、略円筒状の側壁部22の軸方向)に沿って延在する複数の突条部22aが設けられている。複数の突条部22aは、互いに並行して位置するように側壁部22の周方向に沿って均等に配置されている。本実施の形態においては、複数の突条部22aが、互いに間隔を隔てて90°ごとに4つ設けられている。なお、
図2においては、当該複数の突条部22aが設けられた側壁部22の内側面を破線にて示している。
【0049】
これら複数の突条部22aは、弾性栓体40の周面40cに当接する突出部を構成するものであり、固定部50の射出成形時において、弾性栓体40を外枠体10に対して位置決めする際の位置決め部として機能するものである。より詳細には、複数の突条部22aの各々は、その突出方向に位置する先端面が弾性栓体40の周面40cに当接しており、これにより弾性栓体40の中心軸と外枠体10の中心軸とが合致するように構成されている。
【0050】
このように、外枠体10の側壁部22の内側面に複数の突条部22aが設けられることにより、弾性栓体40の周面40cと外枠体10の側壁部22の内側面との間の略円筒状の空間のうち、複数の突条部22aが位置する部分を除く空間が、上述した固定部50の筒状部51によって埋め込まれることになる。その結果、外枠体10と固定部50との接合面積も増加することになり、この点においても外枠体10に対する固定部50の接合力の向上が図られることになる。
【0051】
なお、複数の突条部22aは、必ずしも側壁部22の周方向に沿って均等に設けられている必要はなく、これを不均等に設けることとしてもよい。また、複数の突条部22aの数は、4つに限定されるものではなく、2つ以上であれば幾つであってもよい。さらには、弾性栓体40の周面40cに当接する突出部を必ずしも上述した如くの複数の突条部22aにて構成する必要はなく、たとえば複数のスポット状の突起部にてこれを構成することとしてもよいし、側壁部22の周方向に断続的に設けられた複数の突条部にてこれを構成してもよいし、側壁部22の内側面に螺旋状に設けられた単一のまたは複数の突条部にてこれを構成してもよい。
【0052】
また、
図4および
図6に示すように、複数の突条部22aの各々の突出方向に位置する先端面の所定位置に、突出形状の保持部22a1が設けられている。この保持部22a1は、弾性栓体40の第2主面40bの外縁部に当接することで弾性栓体40を保持するための部位であるが、その保持機能は、主として固定部50の射出成形時において発揮される。
【0053】
すなわち、上述した保持部22a1を設けなかった場合には、固定部50が形成される前の状態において、弾性栓体40が、外枠体10の側壁部22に設けられた複数の突条部22aによって軽保持された状態のみとなるが、当該保持部22a1を設けた場合には、弾性栓体40の外枠体10に対する軸方向における位置決めが容易になるとともに、その脱落を防止することが可能になる。なお、保持部22a1は、必ずしも必須の構成ではなく、必要に応じて設けられればよい。
【0054】
以上において説明したように、本実施の形態における医療用キャップ1Aにおいては、弾性栓体40の第2主面40bに環状突部42が設けられるとともに、固定部50のうちの上記第2主面40b上に位置する内側端部が、環状突部42の表面の最も内側の部分よりも外側に位置するように構成されており、これにより、固定部50を形成するための第1樹脂材料の射出成形時において、当該第1樹脂材料の食み出しが防止されている。
【0055】
また、本実施の形態における医療用キャップ1Aにおいては、外枠体10の側壁部22の内側面に弾性栓体40の周面40cに当接する複数の突条部22aが設けられるとともに、弾性栓体40と上記側壁部22との間の空間のうち、複数の突条部22aが位置する部分を除く空間が、固定部50によって埋め込まれるように構成されており、これにより、固定部50を形成するための第1樹脂材料の射出成形時において、弾性栓体40の位置ずれが発生することが防止されている。
【0056】
そのため、上記構成を採用することにより、上述したように弾性栓体40を無負荷に近い状態で外枠体10に対して固定することが可能になる。それゆえ、移注針の刺し込みの際により小さい力でその刺し込みが行なえることになり、取扱いが容易になるばかりでなく、コアリングの発生を抑制することもできる。
【0057】
さらには、上記構成を採用することにより、弾性栓体40の周面40cと外枠体10の側壁部22との間の空間が固定部50によって埋め込まれることになるため、密閉性を高く確保することが可能になるとともに、接合力を高めることが可能になる。それゆえ、移注針の刺し込みの際に弾性栓体40が位置ずれしてしまうことを防止することもできる。
【0058】
したがって、本実施の形態における医療用キャップ1Aとすることにより、密閉性を高く確保しつつ移注針の刺し込みがより小さい力にて行なえるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体40が位置ずれしてしまうことが防止できる医療用キャップとすることができる。
【0059】
なお、上述した第1樹脂材料の食み出しを防止するための構成と、固定部50の射出成形時における弾性栓体40の位置ずれを防止するための構成とを、必ずしも同時に採用する必要はなく、これらのいずれか一方のみを採用した場合にも、密閉性を高く確保しつつ移注針の刺し込みがより小さい力にて行なえるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体40が位置ずれしてしまうことが防止できる医療用キャップとすることができる。
【0060】
図9ないし
図15は、上述した本実施の形態における医療用キャップの製造方法を説明するための断面図である。次に、これら
図9ないし
図15を参照して、本実施の形態における医療用キャップ1Aの製造方法について具体的に説明する。なお、本実施の形態において示す医療用キャップの製造方法は、いわゆる二色成形を利用するものであるが、必ずしも二色成形を利用する必要はなく、少なくとも固定部50が射出成形によって形成されればよい。
【0061】
図9に示すように、まず、所定形状の第1金型100に対向するように所定形状の第2金型200が配置され、図中に示す矢印方向に沿って第2金型200が第1金型100に向けて移動させられる。ここで、第1金型100は、外枠体10の外面を成形するための第1成形面101を有するものであり、第2金型200は、外枠体10の上述した側壁部22の内側面を含む内面を成形するための第2成形面201を有するものである。
【0062】
図10に示すように、第1金型100に第2金型200が嵌め合わされることにより、これら第1金型100と第2金型200との間には、第1キャビティC1が形成されることになる。当該第1キャビティC1は、外枠体10の形状に応じたものであり、上述した第1成形面101と第2成形面201とによって規定される。
【0063】
次に、
図11に示すように、外枠体10となる溶融した第2樹脂材料が図示しないゲートを介して第1キャビティC1内に流し込まれ、当該第2樹脂材料が硬化されることにより、外枠体10が形成される。その際、上述した枠部20と蓋部30とが一体的に設けられることにより、外枠体10が単一の部材として形成される。また、その際、外枠体10の側壁部22の内側面には、各々が保持部22a1を有する複数の突条部22aが形成される。
【0064】
次に、
図12に示すように、図中に示す矢印方向に沿って第2金型200が第1金型100から遠ざかるように移動させられ、これにより外枠体10が第2金型200から離型される。その際、外枠体10が第1金型100から離型されないようにすることにより、外枠体10は、第1金型100によって保持された状態が維持される。
【0065】
次に、
図13に示すように、第1金型100によって保持された外枠体10の内部に弾性栓体40が配置される。
【0066】
ここで、弾性栓体40は、その周面40cが外枠体10の側壁部22に設けられた複数の突条部22aの先端部に当接するように配置される。これにより、弾性栓体40の中心軸と外枠体10の中心軸とが合致させられ、弾性栓体40の軸方向と直交する方向における弾性栓体40の位置決めが行なわれることになる。
【0067】
また、弾性栓体40は、その第1主面40aが外枠体10の天板部21に設けられた環状壁部21aの先端部に当接するように配置されるとともに、その第2主面40bの外縁部が外枠体10の複数の突条部22aに設けられた保持部22a1によって保持されるように配置される。これにより、弾性栓体40の軸方向における位置決めが行なわれることになる。
【0068】
次に、
図13に示すように、弾性栓体40が内部に配置された外枠体10を保持した第1金型100に対向するように所定形状の第3金型300が配置され、図中に示す矢印方向に沿って第3金型300が第1金型100に向けて移動させられる。ここで、第3金型300は、固定部50を形成するための第3成形面301を有するものであり、当該第3成形面301の所定位置には、上述した固定部50の支持部51aを成形するための段差部302が設けられている。
【0069】
図14に示すように、弾性栓体40が内部に配置された外枠体10を保持した第1金型100に第3金型300が嵌め合わされることにより、これら外枠体10と弾性栓体40と第1金型100と第3金型300との間には、第2キャビティC2が形成されることになる。当該第2キャビティC2は、固定部50の形状に応じたものであり、上述した外枠体10と弾性栓体40と第3成形面301とによって主として規定される。
【0070】
次に、
図15に示すように、固定部50となる溶融した第1樹脂材料が図示しないゲートを介して第2キャビティC2内に流し込まれ、当該第1樹脂材料が硬化されることにより、固定部50が形成される。これにより、外枠体10の内部に配置された弾性栓体40が固定部50を介して外枠体10に固定されることになる。
【0071】
その際、第2キャビティC2のうちの、外枠体10の天板部21と弾性栓体40の第1主面40aとによって規定される部分に流れ込んだ第1樹脂材料は、天板部21に設けられた環状壁部21aとこれに当接する部分の弾性栓体40とによって堰き止められることになる。これにより、固定部50は、環状壁部21aよりも径方向外側であってかつ弾性栓体40と外枠体10との間に位置する空間を埋め込むことになり、弾性栓体40の針刺面である第1主面40aが、固定部50によって覆われることはない(
図8(A)等参照)。
【0072】
また、その際、第2キャビティC2のうちの、上述した第3成形面301に設けられた段差部302および弾性栓体40によって規定される部分に流れ込んだ第1樹脂材料は、弾性栓体40の第2主面40bに設けられた環状突部42とこれに当接する部分の第3金型300とによって堰き止められることになる。これにより、弾性栓体40の第2主面40b上に位置する固定部50の内側端部(すなわち、支持部51aの先端部)は、当該環状突部42の最も内側の部分よりも外側に位置することになり、弾性栓体40の接液面である第2主面40bが、固定部50によって覆われることはない(
図8(B)等参照)。
【0073】
さらに、その際、第2キャビティC2のうちの、弾性栓体40と外枠体10との間の空間であって外枠体10の側壁部22に設けられた複数の突条部22aが位置する部分を除く空間が、第1樹脂材料によって充填されることになり、当該空間に固定部50が形成されることになる(
図3および
図5等参照)。
【0074】
次に、弾性栓体40が固定部50を介して外枠体10に固定されてなる医療用キャップ1Aから、第1金型100および第3金型300が離型されることにより、医療用キャップ1Aが取り出される。以上により、医療用キャップ1Aの製造が完了する。
【0075】
このような製造方法を用いて医療用キャップを製造することにより、密閉性を高く確保しつつ移注針の刺し込みがより小さい力にて行なえるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体40が位置ずれしてしまうことが防止できる医療用キャップ1Aを容易に製造することが可能になる。
【0076】
(実施の形態2)
図16は、本発明の実施の形態2における医療用キャップの平面図である。
図17および
図18は、それぞれ
図16中に示すXVII-XVII線およびXVIII-XVIII線に沿った断面図であり、
図19は、
図17中に示すXIX-XIX線に沿った断面図である。
図20は、
図16ないし
図19に示す外枠体を斜め下方から見た斜視図であり、
図21(A)および
図21(B)は、それぞれ
図17中に示す領域XXIA,XXIBの拡大図である。以下、これら
図16ないし
図21を参照して、本実施の形態における医療用キャップ1Bについて説明する。
【0077】
図16ないし
図19に示すように、本実施の形態における医療用キャップ1Bは、上述した実施の形態1における医療用キャップ1Aと比較した場合に、偏平で略円柱状の形状を有する弾性栓体40の直径が幾分小さくなっており、これに伴って外枠体10の側壁部22の内側面に設けられた複数の突条部22aの突出高さがその分だけ大きく構成されている点と、外枠体10の天板部21に上述した環状壁部21aに代えて環状突起21bが設けられている点とにおいて、主としてその構成が相違している。
【0078】
具体的には、
図16ないし
図20に示すように、外枠体10の側壁部22の内側面には、外枠体10の軸方向に沿って延在する複数の突条部22aが設けられており、本実施の形態においては、複数の突条部22aが、互いに間隔を隔てて90°ごとに4つ設けられている。なお、
図16においては、当該複数の突条部22aが設けられた側壁部22の内側面を破線にて示している。
【0079】
ここで、
図18および
図19に示すように、複数の突条部22aは、上述した実施の形態1の場合と同様に、各々の突出方向に位置する先端面が弾性栓体40の周面40cに当接しており、これにより弾性栓体40の中心軸と外枠体10の中心軸とが合致するように構成されている。そのため、
図17および
図19に示すように、弾性栓体40の周面40cと外枠体10の側壁部22の内側面との間の略円筒状の空間のうち、複数の突条部22aが位置する部分を除く空間は、固定部50の筒状部51によって埋め込まれている。
【0080】
図17、
図18、
図20および
図21(A)に示すように、外枠体10の天板部21の所定位置には、外枠体10の内側に向かって突出する環状形状の環状突起21bが設けられている。より詳細には、環状突起21bは、天板部21の外縁から所定距離だけ内側に入り込んだ位置に設けられており、上述した環状壁部21a(
図8(A)等参照)とは異なり、その先端部が尖った断面視三角形状のより小さい外形の突起からなる。
【0081】
環状突起21bが設けられた部分近傍の天板部21は、弾性栓体40の第1主面40aの外縁部に密着しており、これにより環状突起21bは、弾性栓体40に食い込んでいる。当該環状突起21bは、固定部50の射出成形の際に、溶融した第1樹脂材料を堰き止めるための部位である。
【0082】
これにより、固定部50の射出成形時において、弾性栓体40の第1主面40a側の部分において、第1樹脂材料がキャビティの外部に食み出すことが防止できることになる。したがって、固定部50は、弾性栓体40の周面40cと外枠体10との間に位置する空間を埋め込むことになり、弾性栓体40の針刺面である第1主面40aが、固定部50によって覆われてしまうことが防止できることになる。
【0083】
一方、
図17、
図18および
図21(B)に示すように、弾性栓体40の第2主面40bの所定位置には、第1主面40aとは反対側に向かって突出する環状突部42が設けられており、固定部50の筒状部51の所定位置には、筒状部51の内側に向かって突出する略円環板状の支持部51aが設けられている。これら環状突部42および支持部51aの構成は、上述した実施の形態1におけるそれと同様である。
【0084】
これにより、上述した実施の形態1の場合と同様に、固定部50の射出成形時において、弾性栓体40の第2主面40b側の部分において、第1樹脂材料がキャビティの外部に食み出すことが防止できることになる。したがって、固定部50の支持部51aは、環状突部42よりも径方向外側の位置に形成されることになり、弾性栓体40の接液面である第2主面40bが、固定部50によって覆われてしまうことが防止できることになる。
【0085】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、弾性栓体40を無負荷に近い状態で外枠体10に対して固定することが可能になる。したがって、当該構成を採用することにより、密閉性を高く確保しつつ移注針の刺し込みがより小さい力にて行なえるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体40が位置ずれしてしまうことが防止できる医療用キャップとすることができる。
【0086】
なお、本実施の形態における医療用キャップ1Bは、ここではその説明を省略するが、上述した実施の形態1において説明した医療用キャップ1Aの製造方法に準じた製造方法によってその製造が可能である。
【0087】
(実施の形態3)
図22は、本発明の実施の形態3における医療用キャップの平面図である。
図23および
図24は、それぞれ
図22中に示すXXIII-XXIII線およびXXIV-XXIV線に沿った断面図であり、
図25は、
図23中に示すXXV-XXV線に沿った断面図である。
図26は、
図22ないし
図25に示す外枠体を斜め下方から見た斜視図であり、
図27(A)および
図27(B)は、それぞれ
図22ないし
図25に示す弾性栓体を斜め上方および斜め下方から見た斜視図である。以下、これら
図22ないし
図27を参照して、本実施の形態における医療用キャップ1Cについて説明する。
【0088】
図22ないし
図27に示すように、本実施の形態における医療用キャップ1Cは、上述した実施の形態1における医療用キャップ1Aと比較した場合に、外枠体10の側壁部22に複数の突条部22aが設けられておらず、これに代えて弾性栓体40の周面40cに複数の凸部43が設けられている点において、主としてその構成が相違している。
【0089】
具体的には、
図22ないし
図25、
図27(A)および
図27(B)に示すように、弾性栓体40の周面40cには、当該周面40cから外側に向けて突出する複数の凸部43が設けられており、本実施の形態においては、複数の凸部43が、互いに間隔を隔てて90°ごとに4つ設けられている。なお、
図22においては、当該複数の凸部43が設けられた弾性栓体40の周面40cを破線にて示している。
【0090】
一方、
図23ないし
図26に示すように、外枠体10の側壁部22の内側面には、上述した複数の突条部22a(
図6等参照)は設けられておらず、当該内側面は、概ね円周面にて構成されている。
【0091】
上述した複数の凸部43は、外枠体10の側壁部22の内側面に当接する突出部を構成するものであり、固定部50の射出成形時において、弾性栓体40を外枠体10に対して位置決めする際の位置決め部として機能するものである。より詳細には、複数の凸部43の各々は、その突出方向に位置する先端面が側壁部22の内側面に当接しており、これにより弾性栓体40の中心軸と外枠体10の中心軸とが合致するように構成されている。
【0092】
このように、弾性栓体40の周面40cに複数の凸部43が設けられることにより、弾性栓体40の周面40cと外枠体10の側壁部22の内側面との間の略円筒状の空間のうち、複数の凸部43が位置する部分を除く空間が、固定部50の筒状部51によって埋め込まれることになる。その結果、外枠体10と固定部50との接合面積も増加することになる。
【0093】
なお、複数の凸部43は、必ずしも弾性栓体40の周面40cの周方向に沿って均等に設けられている必要はなく、これを不均等に設けることとしてもよい。また、複数の凸部43の数は、4つに限定されるものではなく、2つ以上であれば幾つであってもよい。さらには、外枠体10の側壁部22の内側面に当接する突出部を必ずしも上述した如くの複数の凸部43にて構成する必要はなく、たとえば複数のスポット状の突起部にてこれを構成することとしてもよいし、弾性栓体40の周方向に断続的に設けられた複数の突条部にてこれを構成してもよいし、弾性栓体40の周面40cに螺旋状に設けられた単一のまたは複数の突条部にてこれを構成してもよい。
【0094】
図23および
図24に示すように、外枠体10の天板部21の所定位置には、外枠体10の内側に向かって突出する環状形状の環状壁部21aが設けられている。この環状壁部21aの構成は、上述した実施の形態1におけるそれと同様である。
【0095】
これにより、上述した実施の形態1の場合と同様に、固定部50の射出成形時において、弾性栓体40の第1主面40a側の部分において、第1樹脂材料がキャビティの外部に食み出すことが防止できることになる。したがって、固定部50は、当該環状壁部21aよりも径方向外側であってかつ弾性栓体40と外枠体10との間に位置する空間を埋め込むことになり、弾性栓体40の針刺面である第1主面40aが、固定部50によって覆われてしまうことが防止できることになる。
【0096】
一方、
図23および
図24に示すように、弾性栓体40の第2主面40bの所定位置には、第1主面40aとは反対側に向かって突出する環状突部42が設けられており、固定部50の筒状部51の所定位置には、筒状部51の内側に向かって突出する略円環板状の支持部51aが設けられている。これら環状突部42および支持部51aの構成は、上述した実施の形態1におけるそれと同様である。
【0097】
これにより、上述した実施の形態1の場合と同様に、固定部50の射出成形時において、弾性栓体40の第2主面40b側の部分において、第1樹脂材料がキャビティの外部に食み出すことが防止できることになる。したがって、固定部50の支持部51aは、環状突部42よりも径方向外側の位置に形成されることになり、弾性栓体40の接液面である第2主面40bが、固定部50によって覆われてしまうことが防止できることになる。
【0098】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、弾性栓体40を無負荷に近い状態で外枠体10に対して固定することが可能になる。したがって、当該構成を採用することにより、密閉性を高く確保しつつ移注針の刺し込みがより小さい力にて行なえるとともに、移注針の刺し込みの際に弾性栓体40が位置ずれしてしまうことが防止できる医療用キャップとすることができる。
【0099】
なお、本実施の形態における医療用キャップ1Cは、ここではその説明を省略するが、上述した実施の形態1において説明した医療用キャップ1Aの製造方法に準じた製造方法によってその製造が可能である。
【0100】
上述した本発明の実施の形態1ないし3においては、二色成形によって医療用キャップを製造する場合を例示して説明を行なったが、上述したようにこれを二色成形によらずに製造することも当然に可能である。たとえば、外枠体および固定部の射出成形を共通の第1金型を用いずにこれを別々の金型を用いて行なうこととしてもよい。
【0101】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし3において開示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて当然に相互に組み合わせることができる。
【0102】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0103】
1A~1C 医療用キャップ、10 外枠体、20 枠部、21 天板部、21a 環状壁部、21b 環状突起、22 側壁部、22a 突条部、22a1 保持部、30 蓋部、31 プルトップ、32 カバー部、40 弾性栓体、40a 第1主面、40b 第2主面、40c 周面、41 凹部、42 環状突部、43 凸部、50 固定部、51 筒状部、51a 支持部、52 鍔部、100 第1金型、101 第1成形面、200 第2金型、201 第2成形面、300 第3金型、301 第3成形面、302 段差部、C1 第1キャビティ、C2 第2キャビティ。