(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122953
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】手術器具、ロボットアーム、およびロボットアーム用の制御システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20220816BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20220816BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20220816BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B18/14
A61B34/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022088190
(22)【出願日】2022-05-31
(62)【分割の表示】P 2019514869の分割
【原出願日】2017-05-23
(31)【優先権主張番号】1608997.1
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1609030.0
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1609002.9
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518416159
【氏名又は名称】アイピーツーアイピーオー イノヴェーションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ガン-ゾン
(72)【発明者】
【氏名】ウィサヌヴェイ, ピヤマテ
(72)【発明者】
【氏名】レイブラント, コンラッド マレク ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】セネーチ, カルロ アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シャン, ジャンゾン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ジンドン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】経肛門ロボット内視鏡マイクロサージェリーに伴う課題を打破できる手術器具を提供する。
【解決手段】剛性シャフトと、前記剛性シャフトにヒンジ連結された少なくとも1つの肘関節部と、前記少なくとも1つの肘関節部に連結された手首関節部とを備える手術器具であって、前記手首関節部は、第1動作自由度と、第2動作自由度とを提供するように構成され、前記第2動作自由度は、前記第1動作自由度に対して実質的に垂直である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性シャフトと、前記剛性シャフトにヒンジ連結された少なくとも1つの肘関節部と、前記少なくとも1つの肘関節部に連結された手首関節部とを備える手術器具であって、前記手首関節部は、第1動作自由度と、第2動作自由度とを提供するように構成され、前記第2動作自由度は、前記第1動作自由度に対して実質的に垂直である、手術器具。
【請求項2】
前記少なくとも1つの肘関節部は、0~60度の運動範囲内で可動である、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記第1動作自由度は、前記少なくとも1つの肘関節部に対して、180度の角度範囲で前記手首関節部を枢動可能とするように構成された第1ヒンジ関節部を提供する、請求項1または2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記第2動作自由度は、前記少なくとも1つの肘関節部に対して、0~60度の角度範囲で、前記第1ヒンジ関節部に対して垂直に前記手首関節部を枢動可能とするように構成された第2ヒンジ関節部を提供する、請求項1~3のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項5】
前記少なくとも1つの肘関節部は、少なくとも2つの肘関節部を備え、前記少なくとも2つの肘関節部のそれぞれは、他の肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、前記少なくとも2つの肘関節部のそれぞれが、互いに独立して可動である、請求項1~4のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項6】
前記少なくとも1つの肘関節部は、少なくとも3つの肘関節部を含み、前記少なくとも3つの肘関節部のうちの2つは、同一の方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、第3肘関節部は、他の肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、前記少なくとも3つの肘関節部のそれぞれが、互いに独立して可動である、請求項1~5のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項7】
前記少なくとも1つの肘関節部は、4つの肘関節部を含み、第1肘関節部および第2肘関節部は、同一方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、第3肘関節部は、前記第1肘関節部および前記第2肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、各肘関節部が互いに独立して可動である、請求項1~6のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項8】
前記第3肘関節部と実質的に同一の方向のヒンジ運動を提供するように、第4肘関節部が設けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項9】
複数の肘関節部を備え、少なくとも2つの隣接した肘関節部が、互いにロックされている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項10】
いずれの他の肘関節部とも独立して可動な少なくとも1つのさらなる肘関節部をさらに備える、請求項9に記載の手術器具。
【請求項11】
前記少なくとも1つの肘関節部および前記手首関節部は、腱駆動手段により、独立して可動である、請求項1~10のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項12】
単極エンドエフェクタをさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項13】
双極エンドエフェクタをさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項14】
前記エンドエフェクタは、腱駆動手段により、前記手首関節部に対して可動である、請求項12または13に記載の手術器具。
【請求項15】
前記腱駆動手段は、ボーデンケーブルで被覆されている、請求項14に記載の手術器具。
【請求項16】
剛性シャフトと、前記剛性シャフトにヒンジ連結された少なくとも1つの肘関節部とを備える手術器具であって、エンドエフェクタが前記少なくとも1つの肘関節部に連結され、前記剛性シャフトおよび前記少なくとも1つの肘関節部が、その内部に、連続したルーメンを画定し、前記連続したルーメンは、副エンドエフェクタを収容するか、または洗浄もしくは吸引機能を提供する、手術器具。
【請求項17】
主エンドエフェクタは、切断用具、把持用具、または焼灼用具である、請求項16に記載の手術器具。
【請求項18】
前記副エンドエフェクタは、ファイバー式レーザー、撮像プローブ、または焼灼用具であるか、あるいは吸引または洗浄機能を提供する、請求項16または17に記載の手術器具。
【請求項19】
前記副エンドエフェクタは、可撓性チューブに連結されている、請求項16または17に記載の手術器具。
【請求項20】
第1動作自由度と、第2動作自由度とを提供するように構成された手首関節部をさらに備え、前記第2動作自由度は、前記第1動作自由度に対して実質的に垂直であり、前記エンドエフェクタは、前記手首関節部の一部である、請求項16~19のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項21】
剛性シャフトと、前記剛性シャフトに連結される少なくとも1つの肘関節部とを備える手術器具であって、エンドエフェクタが前記少なくとも1つの肘関節部に連結され、前記エンドエフェクタは、前記少なくとも1つの肘関節部に対して前記エンドエフェクタの動作を容易にするように、ボーデンケーブルで被覆された腱により動作可能である、手術器具。
【請求項22】
第1動作自由度と、第2動作自由度とを提供するように構成された手首関節部をさらに備え、前記第2動作自由度は、前記第1動作自由度に対して実質的に垂直であり、前記エンドエフェクタは、前記手首関節部の一部である、請求項21に記載の手術器具。
【請求項23】
前記少なくとも1つの肘関節部の前記ルーメン内に位置付けられた多ルーメンインサートをさらに備え、前記多ルーメンインサートは、複数のルーメンを備え、前記複数のルーメンのうちの1つ以上が、各腱を収容するように構成されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項24】
剛性シャフトと、前記剛性シャフトに取付構造により連結される少なくとも2つの肘関節部とを備える手術器具であって、前記取付構造は、略円形の外形を有する、前記少なくとも2つの肘関節部のうちの第1肘関節部上の第1の部位と、前記第1の部位の略円形の外形を収容する略三角形状の溝を備える、前記少なくとも2つの肘関節部のうちの第2肘関節部上の第2の部位とを備える、手術器具。
【請求項25】
前記取付構造の前記第1の部位は、面取りをした肘形状により画定された平面状頂部の一部である、請求項24に記載の手術器具。
【請求項26】
前記取付構造の前記第2の部位は、面取りをした肘形状により画定された溝付き頂部の一部である、請求項24または25に記載の手術器具。
【請求項27】
前記取付構造の前記第1の部位および前記取付構造の前記第2の部位は、前記少なくとも2つの肘関節部のうちの第1肘関節部と、前記少なくとも2つの肘関節部のうちの第2肘関節部との間の、60~100度の動作角度範囲での相対動作を提供するように、協働可能である、請求項26に記載の手術器具。
【請求項28】
腹腔鏡手術用の装置であって、
ロボットアームであって、前記ロボットアームを表面に取り付けるための手段と、ポートを取り付けるためのエンドエフェクタとを備え、前記エンドエフェクタは、複数の選択的動作可能な関節により前記ロボットアームを表面に取り付けるための前記手段に対して可動であるロボットアームと、
前記ロボットアームの前記エンドエフェクタ上に取り付けるためのポートであって、各手術器具を収容するための複数のルーメンを備えるポートと、
前記ポートのルーメンに挿入される手術器具であって、剛性シャフトと、前記剛性シャフトに連結される少なくとも1つの肘関節部と、前記少なくとも1つの肘関節部に連結されるエンドエフェクタとを備える手術器具と、を備える装置。
【請求項29】
前記手術器具を動作させるためのモーターパックをさらに備え、前記モーターパックは、手術器具取付取着具と協働可能な複数の取付取着具を備える、請求項28に記載の腹腔鏡手術用の装置。
【請求項30】
前記モーターパックの取付取着具のそれぞれが、複数の窪みまたは突起を有する回転可能な駆動アセンブリを備え、前記手術器具取着具のそれぞれが、複数の窪みまたは突起を有する回転可能な駆動アセンブリを備え、前記モーターパックの取付取着具の前記窪みまたは突起は、前記手術器具取付パック取着具の前記窪みまたは突起と協働可能である、請求項29に記載の腹腔鏡手術用の装置。
【請求項31】
前記モーターパック取付取着具のそれぞれ、および/または前記手術器具取付パック取着具のそれぞれが、ばね負荷式である、請求項30に記載の腹腔鏡手術用の装置。
【請求項32】
手術器具用の保護スリーブであって、前記保護スリーブは、第1の端および第2の端を有する細長可撓性シースを備え、前記第1の端は前記保護スリーブを手術器具に取着するための取着手段を備え、前記第2の端は閉鎖手段を備える、手術器具用の保護スリーブ。
【請求項33】
前記取着手段は、前記保護スリーブの前記第1の端に配置された第1の部位と、ロボット手術システムの一部を形成する第2の部位とを有するロック手段を備える、請求項32に記載の手術器具用の保護スリーブ。
【請求項34】
前記取着手段は、前記保護スリーブの前記第1の端に配置された第1の部位と、ロボット手術システムの一部を形成する第2の部位とを有する磁気手段を備える、請求項33に記載の手術器具用の保護スリーブ。
【請求項35】
前記可撓性シースは、圧縮可能である、請求項32~34のいずれか一項に記載の手術器具用の保護スリーブ。
【請求項36】
前記閉鎖手段はバルブである、請求項32~35のいずれか一項に記載の手術器具用の保護スリーブ。
【請求項37】
前記バルブは、磁気取着手段により、前記細長シースの前記第2の端に取着される、請求項36に記載の手術器具用の保護スリーブ。
【請求項38】
i)一方の顎の他方に対する枢動運動を可能にするように枢支連結された一対の対向する顎であって、前記対向する顎のうちの少なくとも1つが、選択的にセンサを収容するための凹部を備える、顎と、ii)前記凹部内に固定されるように構成されたセンサと、を備えるエンドエフェクタ。
【請求項39】
前記センサは、力センサ、温度センサ、またはフィードバックセンサを含む、請求項38に記載のエンドエフェクタ。
【請求項40】
i)選択的にセンサを収容するための凹部を有する細長部材と、ii)前記凹部内に固定されるように構成されたセンサと、を備えるエンドエフェクタ。
【請求項41】
前記センサは、力センサ、温度センサ、またはフィードバックセンサを含む、請求項40に記載の単極エンドエフェクタ。
【請求項42】
本体と、開位置および閉位置の間で可動な一対の対向する顎とを備える持針器であって、前記一対の対向する顎は、ばねによって前記開位置に付勢され、前記腱が引張されたときに前記ばねの力を上回る腱の使用を通じて閉じることができる、持針器。
【請求項43】
前記一対の対向する顎はそれぞれ、それぞれの顎を通って前記本体に収容される各ピンにより、前記本体に対して枢動可能に取り付けられ、前記各ピンのそれぞれが横方向に離間する、請求項42に記載の持針器。
【請求項44】
前記各ピンのそれぞれが、前記本体の縁に隣接して位置付けられている、請求項43に記載の持針器。
【請求項45】
第1動作スイッチと、第2動作スイッチと、を備えるロボットアーム用の安全装置であって、前記ロボットアームの動作は、前記第1動作スイッチおよび前記第2動作スイッチの両方を作動させることのみにより実行される、安全装置。
【請求項46】
前記第1動作スイッチおよび前記第2動作スイッチは、前記ロボットアームを操作するためのハンドルに設けられている、請求項45に記載のロボットアーム用の安全装置。
【請求項47】
前記第1動作スイッチおよび前記第2動作スイッチは、同じ手により操作されるように構成されている、請求項45または46に記載のロボットアーム用の安全装置。
【請求項48】
画定された作業空間内の手術器具の位置を判定するための位置検出手段を備えるロボットアーム用の安全装置であって、前記位置検出手段は、停止手段に動作可能に連結され、前記手術用ツールの動きが、前記画定された作業空間外で検出されると、前記停止手段は前記手術用ツールのさらなる移動を防止する、ロボットアーム用の安全装置。
【請求項49】
前記位置検出手段は、前記ロボットアームの基準点に対する前記位置を監視し、関連データを記録する、請求項48に記載のロボットアーム用の安全装置。
【請求項50】
前記位置検出手段により記録されるデータは、前記ロボットアームを停止点から、前記位置検出手段により記録された動きと逆の動きを使用して、前記基準点または他の選択位置に戻る動作を容易にするために使用される、請求項49に記載のロボットアーム用の安全装置。
【請求項51】
複数の電磁ブレーキ式関節部と、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれに関連付けられた位置センサとを備えるロボットアームであって、前記位置センサそれぞれは、プロセッサに動作可能に接続され、前記プロセッサは、予め定められた空間的閾値に対する、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれの位置を監視し、前記電磁ブレーキ式関節部の内の1つ以上が空間的閾値に近づいていることを特定する、1つ以上の位置センサからの信号を前記プロセッサが検出すると、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれをロックする、ロボットアーム。
【請求項52】
手術用ツールが取り付けられるエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタに関連付けられ、前記プロセッサに動作可能に接続されたさらなる位置センサとをさらに備え、前記プロセッサは、前記予め定められた空間的閾値に対する、前記エンドエフェクタの位置を監視し、前記エンドエフェクタが前記空間的閾値に近づいていることを特定する、前記さらなる位置センサからの信号を前記プロセッサが検出すると、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれをロックする、請求項51に記載のロボットアーム。
【請求項53】
前記電磁ブレーキ式関節部それぞれに関連付けられた力検出手段をさらに備え、前記力検出手段は、前記空間的閾値に対する力方向を判定し、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれ、および/または前記エンドエフェクタが前記空間的閾値から離れるように移動することが判定されると、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれを可動とし、1つ以上の前記電磁ブレーキ式関節部および/または前記エンドエフェクタが前記空間的閾値に向かって移動している、または前記空間的閾値を横切ったことが判定されると、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれおよび/または前記エンドエフェクタの動作を抑制する、請求項51または52に記載のロボットアーム。
【請求項54】
複数のモーターコントローラーと、安全監視モジュールと、マザーボードとを備えるロボット手術システム用の制御システムであって、前記安全監視および複数のモーターコントローラーは、前記マザーボードに動作可能に接続され、前記安全監視モジュールは、前記ロボット手術システムの少なくとも1つのパラメータを監視し、前記安全監視モジュールが、1つまたは複数のパラメータが所定の範囲から逸脱したか、所定の閾値を越えたことを検出することに応答して、前記モーターコントローラーからの電力を遮断するように構成されている、制御システム。
【請求項55】
前記安全監視モジュールおよび複数のモーターコントローラーモジュールは、前記マザーボードのモジュール部材であって、前記マザーボードの他モジュール部材を取り外すことなく、選択的に取り外したり、交換したりできる、請求項54に記載のロボット手術システム用の制御システム。
【請求項56】
前記複数のモーターコントローラーは、最大で4つのモーターコントローラーを備える、請求項54または55に記載のロボット手術システム用の制御システム。
【請求項57】
前記複数のモーターコントローラーそれぞれは、最大で2つの独立して制御されるモーターに選択的に接続可能に構成されている、請求項54~56のいずれか一項に記載のロボット手術システム用の制御システム。
【請求項58】
各モーターコントローラーモジュールは、固有識別子を有する、請求項54~57のいずれか一項に記載のロボット手術システム用制御システム。
【請求項59】
前記マザーボードは、1つ以上の切替手段の動作により変更可能な関連アドレスを有する、請求項54~58のいずれか一項に記載のロボット手術システム用の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具、ロボットアーム、およびロボットアーム用の制御システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
従来の腹腔鏡手動器具は一例として、ハンドル、剛性シャフト、および機能的エンドエフェクタ(把持具、ハサミ、または吸引チャネルなど)で構成される。通常、腹腔鏡器具は、外科医によって2つ同時に使用される。腹腔鏡器具は、単一、または複数のポート内に設けられてもよい。これらの器具全ての共通特性として、剛性シャフトと器具が挿入されるポートとの間で、てこの原理を利用して、ハンドルの動作がエンドエフェクタへ伝達することが挙げられる。一般に、腹腔鏡手術で使用される器具の自由度は4である。例えば、経肛門内視鏡外科手術の場合、外科医に利用可能な作業空間は非常に限られているため、先行技術の器具のハンドルを操作しててこの原理を実現することは、非常に困難であり、機能的エンドエフェクタと、ハンドルとの両方において、器具の衝突が生じることも珍しくない。
【0003】
手動関節式腹腔鏡手術用ツールは、かさばるのが常であり、外科医が限られた作業空間において当該器具を使用するには、安全面で困難がつきまとう。
【0004】
多くの異なる医療用途で使用するためのロボット手術用ツールについて、数多くの研究がなされている。以下にその例を挙げる。
【0005】
CN104434318は、4自由度のロボット手術器具の例を記載している。
【0006】
KR100778387は、ヒンジ式肘機能および回転可能な手首機能を備える腹腔鏡手術用の手術ロボットを記載している。
【0007】
US5,624,398には、屈曲可能肩関節部、回転可能上腕関節部、屈曲可能肘関節部、および回転可能手首関節部を備えたロボット内視鏡手術用ツールが記載されている。
【0008】
US8603135は、一連のリンクを備えることで、手術器具の蛇行運動を可能である、関節手術器具の例を記載している。
【0009】
先行技術のロボット関節手術用ツールは、空間的に限定された腹腔鏡処置における使用には適していない。先行技術のロボット関節手術用ツールはまた、器具先端で十分な自由度がなく、多くの腹腔鏡処置で使用される、適切なサイズの器具先端も有さない。
【0010】
手術中の外科医は、タイトに画定された作業空間内で作業することを余儀なくされる。当該画定された作業空間から手術器具がはみ出ないようにすることが、外科医にとって重要である。さもなければ、患者に損傷または外傷を与えてしまう。したがって、画定された作業空間から手術器具がはみ出さないようにするための方策が必要となる。
【0011】
US2005/0166413に記載のロボットアームによると、アームを事前に決定された座標群に沿って移動することで、使用前に境界を画定できる。使用中、境界を越えてしまうことがあっても、アームは境界外でそれ以上は移動不能となる。
【0012】
US2010/174410は、単一の動作スイッチを押すことで、操作されるロボットアームを記載している。
【0013】
ロボット手術は通常、ロボットアーム上に取り付けられたポートデバイスの使用を伴う。ポートデバイスは、それぞれ手術用ツールを収容する、限られた数のルーメンを備える。多くの場合、外科医はポートデバイスの全てのポートを使用した上で、追加で器具を必要とする。当然、当該追加器具はポートデバイスとは独立して使用される必要がある。
【0014】
本発明は、経肛門ロボット内視鏡マイクロサージェリーに伴う課題を打破することを目的とする。
【発明の概要】
【0015】
本発明の態様は、手術器具を提供する。手術器具は、剛性シャフトと、剛性シャフトにヒンジ連結された少なくとも1つの肘関節部と、少なくとも1つの肘関節部に連結された手首関節部とを備え、手首関節部は、第1動作自由度と、第2動作自由度とを提供するように構成され、第2動作自由度は、第1動作自由度に対して実質的に垂直である。
【0016】
肘関節部および手首関節部の両方を備える手術器具を提供することは、この構成により、外科医に、少なくとも5自由度の動作が提供されるため、有利である。剛性シャフトは直線並進および軸回転を伝達する。少なくとも1つの肘関節部は、剛性シャフトに接続され、少なくとも1つの肘関節部と手首関節部との間のヒンジ運動を提供する。手首関節部は、ヒンジおよび枢動運動の両方を提供する。かかる手術器具は、外科医に、限られた作業空間において、先行技術で可能な範囲よりも広い運動範囲を提供し、腹腔鏡手術のための従来の手作業ツールキットにおいて外科医によって使用されているツール全てを有するロボット制御ツールボックスを提供する。
【0017】
一実施形態において、少なくとも1つの肘関節部は、2つの肘関節部を備え、肘関節部のそれぞれは、他の肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、肘関節部のそれぞれが、互いに独立して可動である。
【0018】
別の実施形態において、少なくとも1つの肘関節部は、3つの肘関節部を含み、該肘関節部のうちの2つは、同一の方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、第3肘関節部は、他の肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、肘関節部のそれぞれが、互いに独立して可動である。
【0019】
別の実施形態において、少なくとも1つの肘関節部は、4つの肘関節部を含み、第1肘関節部および第2肘関節部は、第1の方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、第3肘関節部および第4肘関節部は、第1肘関節部および第2肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、各肘関節部が互いに独立して可動である。
【0020】
互いに異なる方向のヒンジ運動を提供する2つ、3つ、または4つの肘関節部を提供することは、これにより、手術器具のさらなる動作自由度が実現されるため、有利である。各肘関節部が別の肘関節部に対して独立可動な手術器具を構成することで、各肘関節部が完全に非連結状態であることが確実にされる。したがって、手術器具の制御が簡略化され、手術器具の滑らかな動作が提供される。少なくとも6配置度を提供することは、可能な限り人間の解剖学的構造を模すことになる。したがって、外科医の知覚体験が可能な限り自然となるので、有利である。
【0021】
別の実施形態において、少なくとも1つの肘関節部は複数の肘関節部を備え、少なくとも2つの隣接した肘関節部が、互いにロックされている。
【0022】
手術器具はさらに、いずれの他の肘関節部とも独立して可動な1つ以上の追加の肘関節部を備えてもよい。
【0023】
別の実施形態において、手術器具は、双極または単極エンドエフェクタをさらに備える。
【0024】
双極エンドエフェクタを提供することは、手術器具のさらなる動作自由度が実現される。
【0025】
本発明の別の態様は、手術器具を提供する。手術器具は、剛性シャフトと、剛性シャフトにヒンジ連結された少なくとも1つの肘関節部とを備え、主エンドエフェクタが少なくとも1つの肘関節部に接続され、剛性シャフトおよび少なくとも1つの肘関節部が、その内部に、連続したルーメンを画定し、ルーメンは、副エンドエフェクタを収容するか、または洗浄もしくは吸引機能を提供する。
【0026】
補助ツール、あるいは吸引および/または洗浄機能と、切断ツールまたは焼灼ツールとを組み合わせて単一の器具にすることは有利である。これにより、手術中に必要なツールの数が低減でき、結果、該当するツールの持ち替えが必要となる回数が低減される。このようなツールおよび/または機能の組み合わせによりさらに、腹腔鏡外科用装置のポートが空くことになる。
【0027】
一実施形態において、主エンドエフェクタは、電気焼灼メスを備える。
【0028】
単極電気焼灼メスを吸引および/または洗浄機能と組み合わせることで、外科医は、1つの手術器具で、患者の組織を切断または焼灼し、術部位を洗浄し、流体を除去できる。手術中に患者が出血した場合、1つの手術器具を使用して、術部位から効率的に流体および煙を除去できる。これにより、外科医はツールを交換する必要なく明確な視界を確保でき、したがって、手術時間および患者のリスクを低減できる。
【0029】
本発明の別の態様は、手術器具を提供する。手術器具は、剛性シャフトと、剛性シャフトに連結される少なくとも1つの肘関節部とを備え、エンドエフェクタが該少なくとも1つの肘関節部に連結され、該エンドエフェクタは、少なくとも1つの肘関節部に対して該エンドエフェクタの動作を容易にするように、少なくとも1つの肘関節部とエンドエフェクタとの間に設けられたボーデンケーブルで被覆された腱により動作可能である。
【0030】
手術器具のエンドエフェクタまたはエンドエフェクタの操作にボーデンケーブルを使用することで、エンドエフェクタを制御する各腱同士が、少なくとも1つの肘関節部に対するエンドエフェクタの配向に関わらず、ほぼ等しい長さを有するようにできる。
【0031】
本発明の別の態様は、手術器具を提供する。手術器具は、剛性シャフトと、剛性シャフトに取付構造により連結される少なくとも1つの肘関節部とを備え、取付構造は、剛性シャフトまたは略円形の外形を有する肘関節部のうちの一方上の第1の部位と、剛性シャフトまたは第一部の略円形の外形を収容する略三角形状の溝を備える肘関節部のうちの他方上の第2の部位とを備える。
【0032】
三角溝内に収容される円形突起を備える取付構造を使用することは非常に有利である。この構造の場合、単線接触によって、取付構造の2つの部位間の摩擦が低減されるのである。
【0033】
本発明の別の態様は、手術器具用の保護スリーブを提供し、保護スリーブは、第1の端および第2の端を有する細長可撓性シースを備え、第1の端は保護スリーブを手術器具に取着するための取着手段を備え、第2の端は閉鎖手段を備える。
【0034】
保護スリーブを使用することで、未使用状態の手術器具が汚れるのを防ぎ、使用後には、バイオハザード物がスリーブ内に収められる。
【0035】
一実施形態において、閉鎖手段はバルブまたはフラップである。
【0036】
バルブまたはフラップの使用は、手術器具が、手術の際に露出されるよう、そのフラップまたはバルブを通過できる。術後に手術器具が患者から取り出されると、バルブまたはフラップが閉じて、手術器具がスリーブ内に衛生的に収容される。
【0037】
本発明の別の態様は、双極エンドエフェクタを提供し、双極エンドエフェクタは、i)一方の顎の他方に対する枢動運動を可能にするように枢支連結された一対の対向する顎であって、該対向する顎のうちの少なくとも1つが、選択的にセンサを収容するための凹部を備える、顎と、ii)該凹部内に固定されるように構成されたセンサと、を備える。
【0038】
本発明の別の態様は、単極エンドエフェクタを提供し、単極エンドエフェクタは、i)選択的にセンサを収容するための凹部を有する細長部材と、ii)該凹部内に固定されるように構成されたセンサと、を備える。
【0039】
本発明の別の態様は、i)選択的にセンサを収容するための凹部を有する細長部材と、ii)該凹部内に固定されるように構成されたセンサと、を備える。
【0040】
センサを選択的に、顎の一体部分を形成する凹部内に収容可能であれば、エンドエフェクタの使用毎にセンサを交換できる。
【0041】
一実施形態において、センサは、力センサ、温度センサ、触覚センサ、または位置センサである。
【0042】
本発明の別の態様は、持針器を提供し、持針器は、本体と、開位置および閉位置の間で可動な一対の対向する顎とを備える持針器であって、一対の対向する顎は、ばねによって開位置に付勢され、該腱が引張されたときにばねの力を上回る腱の使用を通じて閉じることができる。
【0043】
一実施形態において、該一対の対向する顎はそれぞれ、顎を通って本体に収容される各ピンにより、本体に対して枢動可能に取り付けられ、該ピンはそれぞれ横方向に離間する。
【0044】
横方向にピンを離間させることで、両ピンが直線的な先行技術のエンドエフェクタと比して把持力が向上する。
【0045】
一実施形態において、該各ピンは、本体の縁に隣接して位置付けられる。
【0046】
一実施形態において、持針器の顎は、互い違いの列に配置された三角形状の歯を備える。
【0047】
かかる構成により、針の部位を幾何学的にロックし、その運動を防止する。これは、針挿入のために横方向の力が必要な、可撓性器具を使用した手術では基本的な特徴である。しかし、可撓性構造により、器具の強靭さが不十分となる場合も多い。さらなる情報については、添付の書類を参考されたい。
【0048】
一実施形態において、持針器顎の遠位端は、突起部を備える。
【0049】
突起部は、球体端を備えてもよい。
【0050】
持針器の顎の基端は、器具軸の直径よりも大きな外径を有するディスク部を備えてもよい。
【0051】
突起部により、縫合糸が糸結び中に保持されるので、有利である。ディスク部は、縫合糸が器具軸に巻き付くことを防止する。
【0052】
別の実施形態では、器具はエンドエフェクタに近接した、軸回転関節部を備える。
【0053】
この関節部は、人間の手首同様、約270度の回転を可能とする。器具構造は変化する。器具の肘部はそのままで、器具の先端が回転関節部となるのである。
【0054】
別の実施形態では、器具は四角状作動機構により動作可能で、戻しばねにより閉位置に付勢される一対の顎を備える。
【0055】
本発明の別の態様は、ロボットアーム用の安全装置を提供し、ロボットアーム用の安全装置は、第1動作スイッチと、第2動作スイッチと、を備え、ロボットアームの動作は、第1動作スイッチおよび第2スイッチの両方を作動させることのみにより実行される。
【0056】
腹腔鏡手術は非常に複雑であり、手術用ツールの制御された正確な動きが求められる。手術用ツールの不慮の動きは、患者に損傷を与えうる。本発明のこの態様は、外科医に、ロボットアームを作動するために、同時に注意深く2つの動作ボタンを操作することを求めることによって、手術用ツールの不慮の動きを避けることを目的とする。
【0057】
一実施形態において、第1および第2動作スイッチは、外科医が片手で操作できるように配置される。
【0058】
本発明の別の態様は、ロボットアームを提供し、ロボットアームは、複数の電磁ブレーキ式関節部と、複数の電磁ブレーキ式関節部にそれぞれに関連付けられた位置センサとを備え、位置センサそれぞれは、プロセッサに動作可能に接続され、該プロセッサは、予め定められた空間的閾値に対する、該電磁ブレーキ式関節部それぞれの位置を監視し、該電磁ブレーキ式関節部の内の1つ以上が空間的閾値に近づいていることを特定する、1つ以上の位置センサからの信号をプロセッサが検出すると、電磁ブレーキ式関節部をそれぞれロックする。
【0059】
腹腔鏡手術中の外科医は、タイトに画定された作業空間内で作業することを余儀なくされる。手術用ツールが画定された作業空間外に位置決めされることは、好ましくなく、患者への損傷につながる可能性がある。手術用ツールの好ましくない位置決めを防止するため、ロボットアームにはロックアウト機構が設けられる。これは、近接センサにより手術用ツールが画定された作業空間から出たことを検出すると、ロボットアームのさらなる移動を防止するものである。
【0060】
一実施形態において、ロボットアームは、画定された作業空間に対する手術用ツールの位置を特定するための回転エンコーダをさらに備える。
【0061】
別の実施形態では、ロックアウト機構により、ロックアウト状態から手術用ツールが逆に動くことが可能となる。即ち、回転エンコーダを使用して、手術用ツールが手術開始前の元位置に戻るまで、手術用ツールの動きを逆に倣うのである。
【0062】
ロボットアームの動きがロックされた後に、画定された作業領域外での手術用ツールのさらなる動きを防止しながら、外科医が手術用ツールを画定された作業領域内に戻す手順を踏むことができることが重要である。回転エンコーダを使用することで、手術中のロボットアームのあらゆる動きの詳細全てが提供される。したがって、回転エンコーダにより収集されたデータを使用し、ロボットアームを逆に動かして、手術用ツールを画定された作業領域内に戻すことができる。
【0063】
本発明の別の態様は、力特性を判定する方法を提供し、該方法は、i)それぞれ駆動手段、回転エンコーダ、エンドエフェクタにより駆動される、複数の電磁ブレーキ式関節部を備えるロボットアームを提供することと、ii)各電磁ブレーキ関節部が作動した際の、基準力特性を確立することと、iii)回転エンコーダを使用して、エンドエフェクタの回転を測定することと、各駆動手段の剛性特性を判定することと、iv)各電磁関節部に印加されたトルクから、エンドエフェクタの力特性を判定することと、を含む。
【0064】
本発明の別の態様は、電気磁気ブレーキ式関節部およびバックラッシュなしの差動ドライブを備えるロボットアームのための関節部を提供する。
【0065】
電磁ブレーキと、バックラッシュのない差動ドライブとの組み合わせにより、従来手段よりも小さな設置面積、大きな出力トルクが実現できる。この従来手法とは、1.モーターと差動ドライブの組み合わせであるが、同じサイズのブレーキと比して、モーターの保持トルクがかなり小さい、2.差動ドライブを使用せず、ブレーキのみ使用して、本発明者らの手段よりも出力トルクが小さく、設置面積が大きくなる、ものを指す。
【0066】
本発明の別の態様は、ロボット手術システム用の制御システムを提供し、ロボット手術システム用の制御システムは、複数のモーターコントローラーと、安全監視モジュールと、マザーボードとを備え、安全監視と、複数のモーターコントローラーとは、マザーボードに動作可能に接続され、安全監視モジュールは、ロボット手術システムの少なくとも1つのパラメータを監視し、安全監視モジュールが、1つまたは複数のパラメータが所定の範囲から逸脱したか、所定の閾値を越えたことを検出すると、モーターコントローラーからの電力を遮断するように構成されている。
【0067】
安全監視の提供により、ロボット手術器具の誤動作のリスクを抑え、患者への損傷または外傷を与える危険性を最小限に抑える。
【0068】
一実施形態において、安全監視モジュールおよび複数のモーターコントローラーモジュールは、マザーボードのモジュール部材であって、マザーボードから、その他モジュール部材を取り外すことなく、選択的に取り外したり、交換したりできる。
【0069】
モジュール部材の使用により、先行技術と比してロボット制御システムの接地面積が低減される。さらに、ロボット制御システムの修理、更新しやすさが略向上、ひいては最適化される。
【0070】
一実施形態において、複数のモーターコントローラーモジュールは、4つのモーターコントローラーモジュールを備え、各モーターコントローラーモジュールは、最大2つのモーターに動作可能に連結されるように構成される。
【0071】
一実施形態において、各モーターコントローラーモジュールは、固有識別子を有する。
【0072】
一実施形態において、マザーボードは、1つ以上の切替手段の動作により変更可能な関連アドレスを有する。
【0073】
マザーボードのアドレスを変更可能とすることで、ロボット制御システム全体のアドレスの変更が可能となる。したがって、複数のロボット制御システムがコンピュータシステムに動作可能に連結可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
以下の図を参照にして、本発明を説明する。
【0075】
【
図2】
図1の手術器具の、第1および第2の部位を示す。
【
図5】本発明の実施形態で使用される、PTFEカテーテルを示す。
【
図6】主エンドエフェクタ(両極)と、吸引および/または洗浄機能とを組み合わせた手術器具の例を示す。
【
図7a】手術器具をロボットアームアセンブリに連結させる、器具基部を示す。
【
図7b】手術器具をロボットアームアセンブリに連結させる、器具基部を示す。
【
図7c】手術器具をロボットアームアセンブリに連結させる、器具基部を示す。
【
図7d】手術器具をロボットアームアセンブリに連結させる、器具基部を示す。
【
図9】ロボットシステムの制御システムの概略を示す。
【
図10】本発明の実施形態で使用される、保護スリーブを示す。
【
図12】内部にセンサを収容するように構成されたエンドエフェクタを示す。
【
図16】エンドエフェクタに軸回転が伝わった状態の、エンドエフェクタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明の各態様に係る手術器具の概要を、
図1に示す。手術器具(10)は、剛性シャフト(24)に接続された複数の部位(12、14、16、18、20、22)を備える。剛性シャフト(24)は、器具基部(
図1では不図示)に接続される。本明細書においてエンドエフェクタとも称する器具先端(26)は、剛性シャフト(24)から最も離間した部位(22)に接続される。
【0077】
図2に示す第1の部位(12)は、スプライン接続部(12a)により、剛性シャフト(24)に固定接続される。第1の部位(12)は、一端にスプライン接続部(12a)を備え、他端に取付特徴部(12c)を備える、略円筒形状の本体(12b)を備える。スプライン接続部(12a)は長さ4mmで、中心ルーメン(12e)から放射状に延在する8つの突起(12d)を備える。各8つの突起(12d)は、第1の部位(12)の中心軸から測定すると長さ1.7mmで、互いに均等に離間して、8つの突起(12d)の互いに隣接する各対の間に谷部(12f)が画定される。各谷部(12f)は、腱(
図2aおよび2bでは不図示)を収容し、各腱は、中心ルーメン(12e)周りに配置された各孔(12g)を通じて、第1の部位(12)の略円筒形本体(12b)に挿通される。スプライン接続部(12a)はさらに、第1の部位(12)の剛性シャフト(24)に対する回転を制限または防止するロック構造(12h)を備える。
【0078】
中心ルーメン(12e)は円筒形状、および1.5mm~3mmの内径を有する。
【0079】
取付特徴部(12c)は、互いに対向し、略円筒形本体(12b)から長手方向で離間するように延在する、一対の略半円形タブ(12i)を備える。略半円形タブ(12i)はそれぞれ、半径0.5m、厚さが0.5mm~1.5mmである。略半円形タブ(12i)は、本体(12b)の最外端に設けられ、その間に平坦頂部(12j)が画定される。頂部から、第1の部位(12)の端から離間する両方向に、略円筒形本体(12b)が面取りされる。これにより、隣接部位(14)が相対移動可能となる。各方向への面取り角度は、94度であり、これにより隣接部位(14)が、第1の部位(12)に対して80度ヒンジ回動可能となる。
【0080】
図1に示す剛性シャフト(24)は、外径5mm、内径4mmの中空管を備える。剛性シャフト(24)はステンレス鋼製であり、長さは200mmと300mmの間である。剛性シャフト(24)の第1の端(24a)は、第1の部位(12)のスプライン接続部(12a)を収容し、その内部の第1の部位(12)のスプライン接続部(12a)の回転を制限するように構成される。剛性シャフト(24)は、その第2の端(12b)が器具基部(
図1、
図2では不図示)に接続されている。剛性シャフト(24)は、器具基部からの直線並進および軸回転運動を、エンドエフェクタ(26)に伝達するために使用される。剛性シャフト(24)に挿通されて、手術器具部位(12、14、16、18、20、22)に至る腱を使用して、その他全ての自由度が制御される。
【0081】
剛性シャフト(24)は、さらに補助ロック構造(24c)を備える。この構造は、第1の部位(12)のロック構造(12h)と協働して、剛性シャフト(24)に対する第1の部位(12)の回転を防止するものである。
【0082】
図2に示す第2の部位(14)は、第1の部位(12)にヒンジ接続される。第2の部位(14)は、第1の端(14b)と、第2の端(14c)とを有する略円筒形本体(14a)を備える。第2の部位(14)の第1の端(14b)は、第1の部位(12)の取付構造(12c)の略半円形タブ(12i)を収容する、三角断面溝(14d)を備える。第2の部位(14)の円筒形本体(14a)の外形は、三角溝(14d)の側から第2の端(14c)への両方向に面取りされている。各方向への面取り角度は94度で、これにより第1の部位(12)と、第2の部位(14)との相対的ヒンジ動作が可能となる。第2の部位(14)はさらに、第1の部位(12)の内部ルーメン(12e)と実質的に同様の内部ルーメン(14e)を備える。
【0083】
第2の部位(14)の第2の端(14c)は、第1の部位(12)の取付特徴部(12c)と実質的に同じ取付特徴部(14f)を備える。各腱を収容する複数の孔(14g)が、ルーメン(14e)を囲んで、円筒形本体(14a)を長手方向に貫通して形成される。
【0084】
第3および第4の部位(16、18)は、第2の部位(14)と実質的に同じで、蛇状構造となるように互いに接続される。手術器具(10)の意図された使用方法に応じて、必要なあらゆる方向へのヒンジ動作を可能とするように、部位(12、14、16、18)が設けられてもよい。
図2に示す第2の部位(14)では、取付構造(14e)と、三角溝(14d)とが整列している。
図1に示すような別の実施形態では、取付構造(16a)と、三角溝(16b)とは、互いに90度となるように配向される。特定の用途に必要な運動範囲に基づいて、取付構造(16a)と、三角溝(16b)との配向が選択できることが理解されよう。
【0085】
いくつかの実施形態において、最大限詳細な動作が実現できるよう、第2、第3、第4の部位(14、16、18)はそれぞれ、互いに独立して動作可能である。求められる動作の詳細さがより低い別の実施形態では、2つ以上の隣接部位が同一の動作をするように互いにロックされてもよい。
【0086】
図3は、本発明の態様に係る手術器具(10)の動作自由度を示す。図示の各矢印は、手術器具(10)の各構成要素の動作方向を概略的に示す。
【0087】
一実施形態では、剛性シャフト(24)は、手術器具(10)に並進動作と、軸回転を伝える。いずれの部位(12、14、16、18、20、22)も、エンドエフェクタ(26)も、独自で並進したり、手術器具(10)の軸に対して回転したりすることはできない。第1の部位(12)は、剛性シャフト(24)に対して位置が固定されている。第2の部位(14)は、第1の部位(12)とともに肘関節部を画定し、80度の動作角度範囲で第1の部位(12)に対してヒンジ可動である。第3の部位(16)は、第2の部位(14)とともに肘関節部を画定し、80度の動作角度範囲で第2の部位(14)に対してヒンジ可動である第4の部位(18)は、第3の部位(16)とともに肘関節部を画定し、最大80度の動作角度範囲で第3の部位(16)に対してヒンジ可動であるいくつかの実施形態では、動作角度範囲は60度となる。
【0088】
別の実施形態では、
図16に示すような軸回転関節(29)により、エンドエフェクタ(26)に軸回転が伝わる。軸回転関節(29)により、エンドエフェクタ(26)は270度の軸回転が可能となる。軸回転は、一対の腱(不図示)により伝わる。
【0089】
図16に示すように、エンドエフェクタ(26)と隣接する、または一体的に設けられる軸回転関節(29)を備える器具は、顎(33、35)を開閉するための四角状作動機構(31)をさらに備える。四角状機構は、第1および第2のアーム(31a、31b)と、第3および第4のアーム(31d、31e)とを備える。第1および第2のアーム(31a、31b)は、共通枢着部(31c)により各顎(33、35)に接続される。第3および第4のアーム(31d,31e)は、第1および第2のアーム(31a、31b)とそれぞれ枢動可能に接続されて、駆動腱(31g)のアンカーポイントとなる共通枢着部(31f)で互いに接続されている駆動腱(31g)は、戻しばね(不図示)に動作可能に接続される。即ち、戻しばねにより顎(33、35)が閉じ状態となるように付勢される。
【0090】
第5の部位(20)は、第6の部位とともに、手術器具(10)の手首関節部の一部を画定する。第5の部位(20)は、第4の部位(18)とともに肘を画定し、第4の部位(18)に対してヒンジ可動である。第5の部位(20)はさらに、第6の部位(22)とともに、独立した滑節(21)を画定する。第6の部位(22)は、第5の部位(20)に対してヒンジ可動である。第6の部位(22)は、エンドエフェクタ(26)とともに、第5の部位(20)と、第6の部位(22)との間のヒンジ接続部に直交するように設けられたヒンジ接続部(27)を画定する。第6の部位(22)およびエンドエフェクタ(26)の間のヒンジ接続部(27)、並びに第5の部位(20)および第6の部位(22)の間のヒンジ接続部(21)により、手首関節部により実現される全ての自由度が画定される。
【0091】
いくつかの実施形態では、部位(14、16、18、20、22)はそれぞれ、隣接する部位(14、16、18、20、22)に対して独立して可動である。この構成により、手術器具(10)は蛇行状に操作でき、手術中の外科医に最適な運動経路を実現可能とする。別の実施形態では、部位(14、16、18、20)が、隣接した部位(12、14、16、18、20)に連結して、1つ以上の隣接した部位(14、16、18、20)がともに動くようにしてもよい。
【0092】
図4に示すように、剛性シャフト(24)内のルーメンと、各部位(12、14、16、18、20、22)の各孔に挿通された腱(28)を使用して、各部位(12、14、16、18、20、22)それぞれの、さらにエンドエフェクタ(26)の独立制御が実現される。各部位(12、14、16、18、20、22)と、エンドエフェクタ(26)は、それぞれ反対に作用する一対の腱(28)に関連付けられる。反対に作用するとは、反対に作用する一対の腱の一方を引張すると、部位(12、14、16、18、20、22)またはエンドエフェクタ(26)が一方向に動き、反対に作用する一対の腱の他方を引張すると、部位(12、14、16、18、20、22)またはエンドエフェクタ(26)が逆方向に動くことを指す。
【0093】
反対に作用する一対の腱(28)はそれぞれ、部位(14、16、18、20、22)またはエンドエフェクタ(26)で終端される。腱(28)を終端するということは、関連する部位(12、14、16、18、20、22)またはエンドエフェクタ(26)に設けられた腱孔(第1の部位の場合は12g)を潰して、その(14、16、18、20、22)またはエンドエフェクタ(26)に関連する腱(28)をその先に行くことができなくすることで実現されるものである。
【0094】
エンドエフェクタ(26)に近い側に設けられた部位(18,20,22)の制御に関連する腱(28)は、隣接する部位の屈曲平面の、中立軸を通る。これにより、隣接する部位の運動が連動してしまうことが抑制される。
【0095】
いくつかの実施形態では、独立して制御される必要があるのが、選ばれた数の部位のみとなる。かかる実施形態において、反対に作用する一対の腱(28)と関連付けられていない部位に対して、腱(28)は受動的制御を実現する。かかる実施形態は、手作業の高度な詳細さが求められないような、組織の切断に使用される手術器具で利用され得る。手作業の高度な詳細さが求められるのは、組織を高度に処置したり、針および糸を使用したりするような手術器具の場合である。
【0096】
いくつかの実施形態において、各部位のルーメン(例えば12e、14e)には、
図5に示すように多ルーメンポリテトラフルオロエチレン(PTFE)カテーテル(30)が嵌合される。PTFEカテーテル(30)は、中心ルーメン(30c)と、それを囲う複数のルーメン(30b)が貫通する、略円筒形棒部材(30a)を備える。複数のルーメン(30b)はそれぞれ、エンドエフェクタ(26)の独立的制御のための腱を収容するように構成される。
【0097】
PTFEカテーテル(30)は、エンドエフェクタ制御用の腱を、手術器具(10)の曲げ軸になるべく近接しながらエンドエフェクタ内に挿通された状態に維持することに寄与する。これにより、手術器具(10)の、隣接してヒンジ接続された構成要素の相互結合効果が防止される。PTFEカテーテル(30)はさらに、隣接する腱(28)間、さらに腱(28)と肘関節部との摩擦軽減にも寄与する。
【0098】
エンドエフェクタ(26)用の腱は、ボーデンケーブル(28a)で被覆される。ボーデンケーブル(28a)は、内部のケーブルの運動による機械的な力またはエネルギーを、外部の中空ケーブルハウジングに送るために使用される可撓性ケーブルである。PTFEカテーテル(30)が必要となるのは、エンドエフェクタ(26)が、把持用具またはハサミのような、さらなる配置自由度を実現する関節式ツールを備える場合のみである。
【0099】
図6に示すように、各肘関節部を貫通するルーメン(たとえば12e,14e)は、PTFEカテーテル(30)の代わりに、可撓性吸引および/または洗浄用チューブ(32)を収容してもよい。可撓性チューブ(32)は、単極メスまたは双極鉗子とともに使用されることが意図される。これら両種のツールは、エンドエフェクタ(26)の先端への電気供給を必要とする。単極ツールの場合、電気はエンドエフェクタ(26)の金属構造を介して、エンドエフェクタ(26)の先端に運ばれる。双極鉗子の場合、電気はエンドエフェクタ(26)の金属構造により、鉗子の片側に運ばれる。電線により、帯電した鉗子の片側から、電気が鉗子の別側に運ばれる。この別側は、これ以外の状況では片側から電気的に分離している。
【0100】
図7aから7dに示す器具基部(34)は、6つのモーター連結部(36)を備える。各連結部は、各腱(28)が巻き付けられた、各キャプスタン(38)に関連付けられる。器具基部(34)上の各モーター連結部(36)は、モーターパック(46)上の対応するモーターカップリング(44)上の複数の対応するピン(42)に係合するための複数の孔(40)を備える。モーターパック(46)上の各モーター連結部(44)は、各独立駆動モーターに関連付けられる。器具基部(34)上のモーター連結部(36)は、医療用ポリエーテルエーテルケトン製である。
【0101】
モーターパック(46)に器具基部(34)を取着する際、器具基部(34)上のモーター連結部(36)がそれぞれ、モーターパック(46)上の対応する各モーター連結部(44)に連結される。これは、器具基部(34)またはモーターパック(44)上のモーター連結部(36,44)を回転して、モーター連結部(46)上のモーター連結部(44)上のピン(42)を、器具基部(34)上のモーター連結部(36)上の孔(40)に係合することで実現される。器具基部(34)および/またはモーターパック(46)上のモーター連結部(36,44)の一方または両方は、ばね負荷式である。これにより、モーター連結部(46)上のモーター連結部(44)上のピン(42)の、器具基部(34)上のモーター連結部(36)上の孔(40)への確動係合が実現される。ロックピン(48)を、モーターパック(46)のロック特徴部(50)を通じて、器具基部(34)上の対応するロック特徴部(52)に挿入することで、器具基部(34)がモーターパック(46)に固定される。
【0102】
器具基部(34)上の各モーター連結部(36)は、部位(12,14,16,18,20,22)またはエンドエフェクタ(26)を動作させるよう、腱(28)を巻くために、キャプスタン(38)を駆動することに関連付けられる。2つのキャプスタンの間に、アイドルギア(55)(
図7bに示す)が位置付けられる。2つのキャプスタン間のギヤ比は、2:1となっている。これは、単一のモーターで、部位(12,14,16)間の2つの平行関節の所期の作動を実現するように、2つのキャプスタンを駆動可能とするための、2つの平行関節間の腱の移動距離を反映したものである。部位(16,18,20)間の関節も、器具基部(34)の別側におけるアイドルギアにより、同様にして結合される。
【0103】
並進用ギア(54)は、モーター出力軸に直接取着される。このギア(54)は、直線並進用のラック(不図示)に沿って動く器具とモーターパックとを駆動する。
【0104】
エンドエフェクタ(26)は、例えば把持具、持針器、またはハサミであってもよく、エンドエフェクタ(22)により、手術器具(10)の最終部位(20)に連結される。エンドエフェクタ(26)は、ヒンジ構成により、手術器具(10)の最終部位(22)に連結される。このヒンジ構成は、第4の部位(18)と、最終部位(22)との間のヒンジ連結に対して垂直に配向される。最終部位(22)と、エンドエフェクタ(26)との間のヒンジ連結は、第5の部位(20)と、第6の部位(22)との間のヒンジ連結に対しても垂直である。
【0105】
本発明の実施形態で説明されるエンドエフェクタ(26)の例としては、以下が挙げられる。i)手首付把持具:直線形状または湾曲形状であってもよく、組織の処置に使用される把持具顎付きの、7自由度のツール、ii)手首付ハサミ:湾曲形状、または直線形状の刃により、組織を切断するために使用されるハサミ刃付きの、7自由度のツール、iii)無手首ハサミ:湾曲形状、または直線形状の刃により、組織を切断するために使用されるハサミ刃付きの、6自由度のツール、iv)手首付持針器:外科用針をとらえる菱形ローレットを有する直線状で短い顎付きの、7自由度の用具、v)無手首持針器:外科用針をとらえる菱形ローレットを有する直線状で短い顎付きの、6自由度の用具、vi)吸引/洗浄機能付き単極メス:手首関節や顎がなく、組織再切開、組織焼灼、液体/煙吸引、および洗浄に使用される、4自由度の多機能用具、vii)吸引/洗浄機能付き両極鉗子:可動顎を1つ有し、組織切除、組織焼灼、液体/煙吸引、および洗浄に使用される、5自由度の無手首多機能用具、viii)無手首把持用具。
【0106】
メスのような単極ツールであれば、電気焼灼(組織の切断および焼灼)、並びに吸引および洗浄を実現できる。かかるツールは多機能であり、外科医に組織の切除および焼灼を実行しつつ、吸引機能により、煙を除去可能とする。洗浄は、創傷部を洗うためのもので、ここでも吸引により、血液や生理食塩水のような流体を創傷部から除去するように使用できる。
【0107】
エンドエフェクタ(26)の具体例としては、一対の対向する顎を有する、顎型把持具(400)が挙げられる。エンドエフェクタ(26)の各顎(400a)は、一体構造で形成され、細長部材(400c)の内面により画定される把持面(400b)を備える。細長部材(400c)はさらに、把持面(400b)の反対側に凹部(400d)を備える。凹部(400d)は、細長部材(400c)に沿って長手方向に延在し、細長部材(400c)全体の外形に対応する形状のセンサ(402)を収容するように構成される。細長部材(400c)は、間に間隙を開けた2つの離間したプレート(400f,400g)により画定された取付ボス(400e)に接合される。取付穴(400h)は、枢動部(不図示)を収容するため、取付ボス(400e)を貫通する。
【0108】
センサ(402)は、顎(400a)の細長部材(400c)の第1の収容部(400i)と、第2の収容部(400j)それぞれと協働可能である、第1の挿入部(402a)と、第2の挿入部(402b)とを有する。センサ(402)は、例えば力センサ、温度センサ、触覚センサであってもよい。
【0109】
エンドエフェクタ(26)の別の例として、
図13および14に示すような持針器(500)が挙げられる。持針器(500)は、スプライン接続部(20a)により、手術器具(10)の最終部位(20)に固定連結される。持針器(500)は、一対の対向する把持顎(506、508)それぞれと協働可能な取付構造(504)を有する本体(502)を備える。取付構造(504)は、各顎(506、508)それぞれの取付部を枢動運動しやすくするものである。これにより、顎(506、508)は、各顎(506、508)と本体(502)に挿通されるピン(510)により、開閉可能となる。
図13に示すように、各顎(506、508)に1つずつ、即ち2つのピン(510)が、横方向に離間して、本体(502)の端に隣接して位置決めされ、本体(502)の両側それぞれの溝(512)内で終端される。
【0110】
図15に明確に示される歯(512)は、三角形状で、互い違いの2列に配置される。これにより、顎(506、508)が閉じると歯(512)が噛み合う。各歯(512)は、0.25mmの底辺と、0.5mmの高さと、0.35mmの幅を有する。歯は、0.47mm離間した列に配置される。各歯列には、5つの歯が設けられる。歯が互い違いに配置されることで、第1の顎(506)の歯が、第2の顎(508)の隣接する歯(512)の間の空間内に嵌ることが保証される。さらに、持針器(500)の先端には突起部(514)がついている。この部位は、縫合糸(518)を糸結び中に保持して、顎(506、508)から外れないようにするものである。突起部(514)は、各顎(506、508)の先端に、球体端を備える。顎(506、508)の基端には、器具軸の直径よりも大きな外径を有するディスク部(516)が設けられる。このディスク部(516)により、縫合糸が器具軸に巻き付くことが防止される。いくつかの実施形態では、顎(506、508)の外形は丸みを帯びている。
【0111】
顎(506,508)の動きは、腱(514)と、バネ(516)とにより制御される。バネ(516)により、顎(506、508)は開位置に付勢される。腱(514)の引張により、バネ(514)の張力を上回ると、顎(506、508)が閉じる。
【0112】
モーターパック(46)は、詳細に後述するロボットアーム(100)またはポートに選択的に取付可能である。
【0113】
図8に示すロボットアーム(100)は、6つの電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)を備える。電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)はそれぞれ、電磁ブレーキと、絶対角度関節エンコーダを装備した、バックラッシュのない差動ドライブとを備える。電磁ブレーキは、ON位置に付勢されており、ハンドル(118)上に位置する2つの動作スイッチ(114、116)を押すことで、開放される。ロボットアーム(100)に連結された取付構造(120)により、ロボットアーム(100)は病院のベッドに取付可能である。
【0114】
取付構造(120)はアンカー(122)に連結される。アンカー(122)は、第1の電磁ブレーキ式関節(102)により肩部(124)に連結される。アンカー(122)により、肩部(124)に対する水平回転が実現される。肩部(124)は、第2の電磁ブレーキ式関節(104)により、水平軸(126)に連結される。肩部(124)により、水平軸(126)の長手軸の方向に、水平軸(126)に対する枢動回転を実現する。水平軸(126)は、第3の電磁ブレーキ式関節(106)を通じて延在する。水平軸(126)により、肩部(124)に対する回転位置決めが実現される。水平軸(126)の反対端は、第4の電磁ブレーキ式関節(108)に連結される。第4の電磁ブレーキ式関節(108)は、垂直軸(128)に連結される。垂直軸(128)により、水平軸(126)に対する回転位置決めが実現される。垂直軸(128)は、第5の電磁ブレーキ式関節(110)の他端に連結される。第5の電磁ブレーキ式関節(110)は肘部(130)に連結される。肘部(130)により、水平軸(126)の水平軸線に平行な水平軸線を中心とした、回転位置決めが実現される。肘部(130)は、他端が第6の電磁ブレーキ式関節(112)に連結される。第6の電磁ブレーキ式関節(112)はハンドル(118)に連結される。ハンドルは、垂直軸線を中心に回転可能であり、これにより、ハンドル(118)に連結されたアダプタ(132)の位置決めがなされる。
【0115】
アダプタ(132)により、モーターパック(46)、ひいては手術器具(10)がロボットアーム(100)に取り付けられる。
【0116】
使用の際、ロボットアーム(100)は標準的な手術台に取り付けられる。具体的には、取付構造(120)により、ロボットアーム(100)が標準的な手術台のサイドレールに挟みつけられる。ロボットアーム(100)と、手術器具(10)とはいずれも、AC/DC電力アダプタを介して、電源供給用コンセントから受電する。電源供給により、各電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)が制御される。その際、ハンドル(118)の動作スイッチ(114,116)が押されない限り、各関節に関連する電磁石は定位置に固定されている。ハンドル(118)上の動作スイッチ(114、116)が両方押されると、全ての電磁石が解放され、全6個の電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)を介して、操作者がロボットアーム(100)を操作可能となる。ロボットアーム(100)が所期の位置に配置された後に、操作者がハンドル(118)の動作スイッチ(114、116)を離すと、電磁石が全て作動して、6個の電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)が全てロックされる。ハンドル(118)の動作スイッチ(114、116)を両方押した場合にのみ、電磁石が解放される。動作スイッチ(114、116)の片方のみが押されても、いずれの電磁石も開放されず、操作者は電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)のいずれかを介してロボットアーム(100)を操作することができない。これは、ロボットアーム(100)の不意の動作を防ぐための安全機能である。
【0117】
アーム全体がロックされている際に、エンドエフェクタのアームに力がかかると、差動ドライバの出力軸は、作動駆動部の本体に対してわずかに回転する。かかる回転は、関節角度エンコーダにより測定可能である。したがって、エンドエフェクタにかかった力による、差動ドライブへのトルクは、差動ドライブの剛性を考慮して計算できる。全関節に対するトルクを考慮して、エンドエフェクタにかかる力の大きさと方向が計算できる。電磁ブレーキと、バックラッシュのない差動ドライブとの組み合わせにより、従来手段よりも小さな設置面積、大きな出力トルクが実現できる。この従来手法とは、1.モーターと差動ドライブの組み合わせであるが、同じサイズのブレーキと比して、モーターの保持トルクがかなり小さい、2.差動ドライブを使用せず、ブレーキのみ使用して、本発明者らの手段よりも出力トルクが小さく、設置面積が大きくなる、ものを指す。
【0118】
アダプタ(132)にモーターパック(46)が取り付けられ、モーターパック(46)に手術器具(10)が連結されると、電源により、モーターパックに電力が送られる。モーターパック(46)は、
図9に示すロボット制御システム(200)により制御される。
【0119】
ロボット制御システム(200)は、個別の電源(202)により電力供給され、複数(
図9では4つ)のモーターコントローラーモジュール(204)と、安全監視モジュール(206)とを備える。安全監視部(206)が、電源(202)と、複数のモーターコントローラーモジュール(204)との間に接続される。ロボット制御システム(200)は、ロボット手術器具(100)と、コンピュータシステム(208)との間に接続される。ロボット制御システム(200)にはさらに、ロボット制御システム(200)、すなわち手術器具(10)への全電力を遮断するための緊急停止ボタン(210)が設けられる。主操作部(212)がコンピュータシステム(208)に接続される。コンピュータシステム(208)は、主操作部(212)の動きを解釈し、手術器具(10)の所期の動作を判定し、適切な指示を、RS-485バスを介してロボット制御システム(200)に送り、複数のモーターコントローラー(204)を駆動する。
【0120】
安全監視モジュール(206)は、例えば温度やモーター電流のような、ロボット制御システム(200)および/または手術器具(10)の多数のパラメータを監視する。安全監視モジュール(206)が、パラメータが所定の範囲から逸脱した、または所定の閾値を越えたと判定すると、安全監視モジュール(206)はモーターコントローラーモジュール(204)への電力を遮断して、誤動作、および/または患者の損傷/外傷を防ぐ。安全監視モジュール(206)はさらに、コンピュータシステム(208)と、ロボット制御システム(200)との間、およびロボット制御システム(200)と、手術器具(10)との間の通信を傍受する。受信した動作パラメータから外れた指示が検出されると、安全監視モジュール(206)は、ロボット制御システム(200)への全電力を遮断して、誤動作、および/または患者の損傷/外傷を防ぐ。
【0121】
安全監視モジュール(206)は、マザーボード(214)にプラグインされるモジュール要素である。各モーターコントローラーモジュール(204)も、マザーボード(214)にプラグインされるモジュール要素である。各モーターコントローラーモジュール(204)は、最大2つのモーターを制御でき、マザーボード(214)は最大4つのモーターコントローラーモジュール(204)を搭載できる。したがって、ロボット手術器具(100)を駆動するために、最大8つのモーターを接続できる。本開示は限定的に解されるべきではなく、別の実施形態では、さらなるモーター制御モジュールが搭載可能でよく、各モーター制御モジュールは、1つ、2つ、またはそれ以上のモーターを制御可能であってもよい。
【0122】
アダプタ(132)は、ロボットアーム(100)の内部配線を介して電力供給、信号制御可能な電気コネクタ(134)を備える。モーターパック(46)は、電気コネクタ(134)または独立したケーブルを介して、電力供給、制御可能である。
【0123】
手術器具(10)が、予め定義された境界内でのみ可動であることを保証するために、手術開始前に、三次元境界空間または空間的閾値が画定される。ロボットアーム(100)を一連の空間点を通じて動かして、各空間点を境界点として記録することで、三次元境界空間が画定される。手術中、ロボットアームは三次元境界内でのみ可動となり、三次元境界に接触する、または場合によっては近づくだけで、自動的にロックされる。
【0124】
ロボットアーム(100)の動きがロックされた後に、多様な方法でロック解除して手術を再開できる。ここで、その2つの例を以下に説明する。
【0125】
第1の例として、ロボットアーム(100)は、各電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、112)と、手術器具エンドエフェクタ(22)とのあらゆる動作を監視する回転エンコーダを備える。各動作は、各原点に対するデータ点として記録される。回転エンコーダは、電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)、ひいては手術器具エンドエフェクタ(22)を、各データ点を通じて逆に可動とする。各データ点が、各原点に対して等しいと判定されると、電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)は全て完全に開放される。
【0126】
第2の例として、力検出手段が、各電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)に関連付けられる。プロセッサは、外科医が主操作部(212)に対してかけた力を方向に対応付け、電磁ブレーキ式関節(102、104。106、108、110、112)の全てと、手術器具エンドエフェクタ(22)が三次元境界から離れるように動くと判定された場合に、電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)をロック解除する。電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)のうちの1つ以上、および/またはエンドエフェクタ(22)が3次元境界に向かって移動する、または交差すると判定されると、各電磁ブレーキ式関節(102、104、106、108、110、112)はロックされたままとなり、動きが規制される。
【0127】
図10および11に、本発明の実施形態の手術器具(10)とともに使用する保護スリーブ(300)を示す。保護スリーブ(300)は、第1の端(302a)と、第2の端(302b)とを有する細長シース(302)を備える。細長シースは、薄いプラスチック材料で形成され、可撓かつ、圧縮可能である。細長シース(302)の第1の端(302a)は、取着インターフェース(304)により、手術器具に取着可能である。取着インターフェースは、捻じれロック機構またはスナップ式インターフェース等のロック手段を備えてもよいし、磁気式であってもよい。細長シース(302)の第2の端(302b)は、ダックビル弁またはその他適切な種類のバルブのような、端部閉鎖部(306)取着用のインターフェースを画定する。端部閉鎖部(306)は、細長シース(302)の第2の端(302b)に、例えばロック手段または磁気式取着具により取着されてもよい。
【0128】
使用の際、手術器具(10)のエンドエフェクタは、殺菌後に保護スリーブ(300)内に挿入される。保護スリーブ(300)は、取着インターフェース(304)により手術器具(10)に取着される。手術器具(10)は、手術開始直前に、ポートのルーメン内に挿入される。閉鎖手段(306)を、保護スリーブ(300)の第2の端(302b)に磁石を利用して取着する実施形態では、磁石は、手術器具(10)をポートのルーメンに対して整列するように使用される。閉鎖手段(306)は、ポートのルーメン内を延在できるように適切な大きさに設計される。手術器具(10)が前進すると、手術器具(10)がバルブ(306)を通過し、保護スリーブ(300)がポート内で圧縮されて、手術器具(10)が露出する。
【0129】
手術が終わると、手術器具(100)は患者から取り出されて、ポートを介して保護スリーブ(300)内に収容される。手術器具は、バルブを逆に通過し、手術器具が再び保護スリーブ(300)に完全に収められると、バルブは閉じる。再使用する前に、手術器具はオートクレーブ、ガス、または放射線による処置で殺菌され、新たな保護スリーブ(300)が手術器具(100)に装着される。使用済み保護スリーブ(300)は、手術後には有害廃棄物として廃棄される。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0129
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0129】
手術が終わると、手術器具(100)は患者から取り出されて、ポートを介して保護スリーブ(300)内に収容される。手術器具は、バルブを逆に通過し、手術器具が再び保護スリーブ(300)に完全に収められると、バルブは閉じる。再使用する前に、手術器具はオートクレーブ、ガス、または放射線による処置で殺菌され、新たな保護スリーブ(300)が手術器具(100)に装着される。使用済み保護スリーブ(300)は、手術後には有害廃棄物として廃棄される。
<本発明の更なる実施態様>
[実施態様1]
剛性シャフトと、前記剛性シャフトにヒンジ連結された少なくとも1つの肘関節部と、前記少なくとも1つの肘関節部に連結された手首関節部とを備える手術器具であって、前記手首関節部は、第1動作自由度と、第2動作自由度とを提供するように構成され、前記第2動作自由度は、前記第1動作自由度に対して実質的に垂直である、手術器具。
[実施態様2]
前記少なくとも1つの肘関節部は、0~60度の運動範囲内で可動である、実施態様1に記載の手術器具。
[実施態様3]
前記第1動作自由度は、前記少なくとも1つの肘関節部に対して、180度の角度範囲で前記手首関節部を枢動可能とするように構成された第1ヒンジ関節部を提供する、実施態様1または2に記載の手術器具。
[実施態様4]
前記第2動作自由度は、前記少なくとも1つの肘関節部に対して、0~60度の角度範囲で、前記第1ヒンジ関節部に対して垂直に前記手首関節部を枢動可能とするように構成された第2ヒンジ関節部を提供する、実施態様1~3のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様5]
前記少なくとも1つの肘関節部は、少なくとも2つの肘関節部を備え、前記少なくとも2つの肘関節部のそれぞれは、他の肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、前記少なくとも2つの肘関節部のそれぞれが、互いに独立して可動である、実施態様1~4のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様6]
前記少なくとも1つの肘関節部は、少なくとも3つの肘関節部を含み、前記少なくとも3つの肘関節部のうちの2つは、同一の方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、第3肘関節部は、他の肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、前記少なくとも3つの肘関節部のそれぞれが、互いに独立して可動である、実施態様1~5のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様7]
前記少なくとも1つの肘関節部は、4つの肘関節部を含み、第1肘関節部および第2肘関節部は、同一方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、第3肘関節部は、前記第1肘関節部および前記第2肘関節部とは異なる方向のヒンジ運動を提供するように設けられ、各肘関節部が互いに独立して可動である、実施態様1~6のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様8]
前記第3肘関節部と実質的に同一の方向のヒンジ運動を提供するように、第4肘関節部が設けられている、実施態様1~7のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様9]
複数の肘関節部を備え、少なくとも2つの隣接した肘関節部が、互いにロックされている、実施態様1に記載の手術器具。
[実施態様10]
いずれの他の肘関節部とも独立して可動な少なくとも1つのさらなる肘関節部をさらに備える、実施態様9に記載の手術器具。
[実施態様11]
前記少なくとも1つの肘関節部および前記手首関節部は、腱駆動手段により、独立して可動である、実施態様1~10のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様12]
単極エンドエフェクタをさらに備える、実施態様1~11のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様13]
双極エンドエフェクタをさらに備える、実施態様1~11のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様14]
前記エンドエフェクタは、腱駆動手段により、前記手首関節部に対して可動である、実施態様12または13に記載の手術器具。
[実施態様15]
前記腱駆動手段は、ボーデンケーブルで被覆されている、実施態様14に記載の手術器具。
[実施態様16]
剛性シャフトと、前記剛性シャフトにヒンジ連結された少なくとも1つの肘関節部とを備える手術器具であって、エンドエフェクタが前記少なくとも1つの肘関節部に連結され、前記剛性シャフトおよび前記少なくとも1つの肘関節部が、その内部に、連続したルーメンを画定し、前記連続したルーメンは、副エンドエフェクタを収容するか、または洗浄もしくは吸引機能を提供する、手術器具。
[実施態様17]
主エンドエフェクタは、切断用具、把持用具、または焼灼用具である、実施態様16に記載の手術器具。
[実施態様18]
前記副エンドエフェクタは、ファイバー式レーザー、撮像プローブ、または焼灼用具であるか、あるいは吸引または洗浄機能を提供する、実施態様16または17に記載の手術器具。
[実施態様19]
前記副エンドエフェクタは、可撓性チューブに連結されている、実施態様16または17に記載の手術器具。
[実施態様20]
第1動作自由度と、第2動作自由度とを提供するように構成された手首関節部をさらに備え、前記第2動作自由度は、前記第1動作自由度に対して実質的に垂直であり、前記エンドエフェクタは、前記手首関節部の一部である、実施態様16~19のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様21]
剛性シャフトと、前記剛性シャフトに連結される少なくとも1つの肘関節部とを備える手術器具であって、エンドエフェクタが前記少なくとも1つの肘関節部に連結され、前記エンドエフェクタは、前記少なくとも1つの肘関節部に対して前記エンドエフェクタの動作を容易にするように、ボーデンケーブルで被覆された腱により動作可能である、手術器具。
[実施態様22]
第1動作自由度と、第2動作自由度とを提供するように構成された手首関節部をさらに備え、前記第2動作自由度は、前記第1動作自由度に対して実質的に垂直であり、前記エンドエフェクタは、前記手首関節部の一部である、実施態様21に記載の手術器具。
[実施態様23]
前記少なくとも1つの肘関節部の前記ルーメン内に位置付けられた多ルーメンインサートをさらに備え、前記多ルーメンインサートは、複数のルーメンを備え、前記複数のルーメンのうちの1つ以上が、各腱を収容するように構成されている、実施態様1~22のいずれか一項に記載の手術器具。
[実施態様24]
剛性シャフトと、前記剛性シャフトに取付構造により連結される少なくとも2つの肘関節部とを備える手術器具であって、前記取付構造は、略円形の外形を有する、前記少なくとも2つの肘関節部のうちの第1肘関節部上の第1の部位と、前記第1の部位の略円形の外形を収容する略三角形状の溝を備える、前記少なくとも2つの肘関節部のうちの第2肘関節部上の第2の部位とを備える、手術器具。
[実施態様25]
前記取付構造の前記第1の部位は、面取りをした肘形状により画定された平面状頂部の一部である、実施態様24に記載の手術器具。
[実施態様26]
前記取付構造の前記第2の部位は、面取りをした肘形状により画定された溝付き頂部の一部である、実施態様24または25に記載の手術器具。
[実施態様27]
前記取付構造の前記第1の部位および前記取付構造の前記第2の部位は、前記少なくとも2つの肘関節部のうちの第1肘関節部と、前記少なくとも2つの肘関節部のうちの第2肘関節部との間の、60~100度の動作角度範囲での相対動作を提供するように、協働可能である、実施態様26に記載の手術器具。
[実施態様28]
腹腔鏡手術用の装置であって、
ロボットアームであって、前記ロボットアームを表面に取り付けるための手段と、ポートを取り付けるためのエンドエフェクタとを備え、前記エンドエフェクタは、複数の選択的動作可能な関節により前記ロボットアームを表面に取り付けるための前記手段に対して可動であるロボットアームと、
前記ロボットアームの前記エンドエフェクタ上に取り付けるためのポートであって、各手術器具を収容するための複数のルーメンを備えるポートと、
前記ポートのルーメンに挿入される手術器具であって、剛性シャフトと、前記剛性シャフトに連結される少なくとも1つの肘関節部と、前記少なくとも1つの肘関節部に連結されるエンドエフェクタとを備える手術器具と、を備える装置。
[実施態様29]
前記手術器具を動作させるためのモーターパックをさらに備え、前記モーターパックは、手術器具取付取着具と協働可能な複数の取付取着具を備える、実施態様28に記載の腹腔鏡手術用の装置。
[実施態様30]
前記モーターパックの取付取着具のそれぞれが、複数の窪みまたは突起を有する回転可能な駆動アセンブリを備え、前記手術器具取着具のそれぞれが、複数の窪みまたは突起を有する回転可能な駆動アセンブリを備え、前記モーターパックの取付取着具の前記窪みまたは突起は、前記手術器具取付パック取着具の前記窪みまたは突起と協働可能である、実施態様29に記載の腹腔鏡手術用の装置。
[実施態様31]
前記モーターパック取付取着具のそれぞれ、および/または前記手術器具取付パック取着具のそれぞれが、ばね負荷式である、実施態様30に記載の腹腔鏡手術用の装置。
[実施態様32]
手術器具用の保護スリーブであって、前記保護スリーブは、第1の端および第2の端を有する細長可撓性シースを備え、前記第1の端は前記保護スリーブを手術器具に取着するための取着手段を備え、前記第2の端は閉鎖手段を備える、手術器具用の保護スリーブ。
[実施態様33]
前記取着手段は、前記保護スリーブの前記第1の端に配置された第1の部位と、ロボット手術システムの一部を形成する第2の部位とを有するロック手段を備える、実施態様32に記載の手術器具用の保護スリーブ。
[実施態様34]
前記取着手段は、前記保護スリーブの前記第1の端に配置された第1の部位と、ロボット手術システムの一部を形成する第2の部位とを有する磁気手段を備える、実施態様33に記載の手術器具用の保護スリーブ。
[実施態様35]
前記可撓性シースは、圧縮可能である、実施態様32~34のいずれか一項に記載の手術器具用の保護スリーブ。
[実施態様36]
前記閉鎖手段はバルブである、実施態様32~35のいずれか一項に記載の手術器具用の保護スリーブ。
[実施態様37]
前記バルブは、磁気取着手段により、前記細長シースの前記第2の端に取着される、実施態様36に記載の手術器具用の保護スリーブ。
[実施態様38]
i)一方の顎の他方に対する枢動運動を可能にするように枢支連結された一対の対向する顎であって、前記対向する顎のうちの少なくとも1つが、選択的にセンサを収容するための凹部を備える、顎と、ii)前記凹部内に固定されるように構成されたセンサと、を備えるエンドエフェクタ。
[実施態様39]
前記センサは、力センサ、温度センサ、またはフィードバックセンサを含む、実施態様38に記載のエンドエフェクタ。
[実施態様40]
i)選択的にセンサを収容するための凹部を有する細長部材と、ii)前記凹部内に固定されるように構成されたセンサと、を備えるエンドエフェクタ。
[実施態様41]
前記センサは、力センサ、温度センサ、またはフィードバックセンサを含む、実施態様40に記載の単極エンドエフェクタ。
[実施態様42]
本体と、開位置および閉位置の間で可動な一対の対向する顎とを備える持針器であって、前記一対の対向する顎は、ばねによって前記開位置に付勢され、前記腱が引張されたときに前記ばねの力を上回る腱の使用を通じて閉じることができる、持針器。
[実施態様43]
前記一対の対向する顎はそれぞれ、それぞれの顎を通って前記本体に収容される各ピンにより、前記本体に対して枢動可能に取り付けられ、前記各ピンのそれぞれが横方向に離間する、実施態様42に記載の持針器。
[実施態様44]
前記各ピンのそれぞれが、前記本体の縁に隣接して位置付けられている、実施態様43に記載の持針器。
[実施態様45]
第1動作スイッチと、第2動作スイッチと、を備えるロボットアーム用の安全装置であって、前記ロボットアームの動作は、前記第1動作スイッチおよび前記第2動作スイッチの両方を作動させることのみにより実行される、安全装置。
[実施態様46]
前記第1動作スイッチおよび前記第2動作スイッチは、前記ロボットアームを操作するためのハンドルに設けられている、実施態様45に記載のロボットアーム用の安全装置。
[実施態様47]
前記第1動作スイッチおよび前記第2動作スイッチは、同じ手により操作されるように構成されている、実施態様45または46に記載のロボットアーム用の安全装置。
[実施態様48]
画定された作業空間内の手術器具の位置を判定するための位置検出手段を備えるロボットアーム用の安全装置であって、前記位置検出手段は、停止手段に動作可能に連結され、前記手術用ツールの動きが、前記画定された作業空間外で検出されると、前記停止手段は前記手術用ツールのさらなる移動を防止する、ロボットアーム用の安全装置。
[実施態様49]
前記位置検出手段は、前記ロボットアームの基準点に対する前記位置を監視し、関連データを記録する、実施態様48に記載のロボットアーム用の安全装置。
[実施態様50]
前記位置検出手段により記録されるデータは、前記ロボットアームを停止点から、前記位置検出手段により記録された動きと逆の動きを使用して、前記基準点または他の選択位置に戻る動作を容易にするために使用される、実施態様49に記載のロボットアーム用の安全装置。
[実施態様51]
複数の電磁ブレーキ式関節部と、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれに関連付けられた位置センサとを備えるロボットアームであって、前記位置センサそれぞれは、プロセッサに動作可能に接続され、前記プロセッサは、予め定められた空間的閾値に対する、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれの位置を監視し、前記電磁ブレーキ式関節部の内の1つ以上が空間的閾値に近づいていることを特定する、1つ以上の位置センサからの信号を前記プロセッサが検出すると、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれをロックする、ロボットアーム。
[実施態様52]
手術用ツールが取り付けられるエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタに関連付けられ、前記プロセッサに動作可能に接続されたさらなる位置センサとをさらに備え、前記プロセッサは、前記予め定められた空間的閾値に対する、前記エンドエフェクタの位置を監視し、前記エンドエフェクタが前記空間的閾値に近づいていることを特定する、前記さらなる位置センサからの信号を前記プロセッサが検出すると、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれをロックする、実施態様51に記載のロボットアーム。
[実施態様53]
前記電磁ブレーキ式関節部それぞれに関連付けられた力検出手段をさらに備え、前記力検出手段は、前記空間的閾値に対する力方向を判定し、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれ、および/または前記エンドエフェクタが前記空間的閾値から離れるように移動することが判定されると、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれを可動とし、1つ以上の前記電磁ブレーキ式関節部および/または前記エンドエフェクタが前記空間的閾値に向かって移動している、または前記空間的閾値を横切ったことが判定されると、前記電磁ブレーキ式関節部それぞれおよび/または前記エンドエフェクタの動作を抑制する、実施態様51または52に記載のロボットアーム。
[実施態様54]
複数のモーターコントローラーと、安全監視モジュールと、マザーボードとを備えるロボット手術システム用の制御システムであって、前記安全監視および複数のモーターコントローラーは、前記マザーボードに動作可能に接続され、前記安全監視モジュールは、前記ロボット手術システムの少なくとも1つのパラメータを監視し、前記安全監視モジュールが、1つまたは複数のパラメータが所定の範囲から逸脱したか、所定の閾値を越えたことを検出することに応答して、前記モーターコントローラーからの電力を遮断するように構成されている、制御システム。
[実施態様55]
前記安全監視モジュールおよび複数のモーターコントローラーモジュールは、前記マザーボードのモジュール部材であって、前記マザーボードの他モジュール部材を取り外すことなく、選択的に取り外したり、交換したりできる、実施態様54に記載のロボット手術システム用の制御システム。
[実施態様56]
前記複数のモーターコントローラーは、最大で4つのモーターコントローラーを備える、実施態様54または55に記載のロボット手術システム用の制御システム。
[実施態様57]
前記複数のモーターコントローラーそれぞれは、最大で2つの独立して制御されるモーターに選択的に接続可能に構成されている、実施態様54~56のいずれか一項に記載のロボット手術システム用の制御システム。
[実施態様58]
各モーターコントローラーモジュールは、固有識別子を有する、実施態様54~57のいずれか一項に記載のロボット手術システム用制御システム。
[実施態様59]
前記マザーボードは、1つ以上の切替手段の動作により変更可能な関連アドレスを有する、実施態様54~58のいずれか一項に記載のロボット手術システム用の制御システム。
【外国語明細書】