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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122980
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220816BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220816BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220816BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20220816BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/027 512
C08F2/44 Z
C08G59/17
C08F299/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091720
(22)【出願日】2022-06-06
(62)【分割の表示】P 2020196933の分割
【原出願日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0156099
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515127979
【氏名又は名称】ドク サン ネオルクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ペ,チュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,チャン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チュン キ
(72)【発明者】
【氏名】リム,チェ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ソン ユン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】感光性樹脂組成物及び表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の実施例は、異なる2種以上のカルド系バインダーを含むことによって、現像時における残渣を改善し、メルティングフローを改善でき、高いテーパー角度を有するパターン層を形成できる感光性樹脂組成物及びその重合反応物を含むパターン層を備えた表示装置を提供する。また、前述した感光性樹脂組成物の重合反応物を含むパターン層を備えることによって、高い解像度を有する表示装置を提供する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記化学式1で表示される反復単位を含み、相互に分子量が異なる2種以上のカルド系バインダーと、(B)反応性不飽和化合物と、(C)顔料と、(D)開始剤と、(E)溶媒と、を含む感光性樹脂組成物:
【化1】

1)”*”は、反復単位で結合が連結される部分を表し、
2)R及びRは、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン基;C~C60のアリール基;O、N、S、Si及びPの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C60のヘテロ環基;C~C60の脂肪族環とC~C60の芳香族環の融合環基;C~C60のアルキル基;C~C60のアルケニル基;C~C60のアルキニル基;C~C60のアルコキシ基;及びC~C30のアリールオキシ基;からなる群から選択され、
3)R~Rは、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;C~C60のアリール基;O、N、S、Si及びPの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C60のヘテロ環基;C~C60の脂肪族環とC~C60の芳香族環の融合環基;C~C60のアルキル基;C~C60のアルケニル基;C~C60のアルキニル基;C~C60のアルコキシ基;及びC~C30のアリールオキシ基;からなる群から選択され、
4)Rは、水素;重水素;C~C60のアルキル基;C~C60のアルケニル基;アクリル基;及びメタクリル基からなる群から選択され、
5)m及びnは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、mが2以上の場合、隣接したRは相互に結合して単一環又は多環の環を形成可能であり、nが2以上の場合、Rは相互に結合して単一環又は多環の環を形成可能であり、
6)Xは、酸無水物残基又は酸二無水物残基であり、
7)Xは、下記化学式2で表示され、
8)Y及びYは、それぞれ独立して、水素;重水素;下記化学式3;及び下記化学式4からなる群から選ばれる:
【化2】

9)R及びRは、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン基;C~C60のアリール基;O、N、S、Si及びPの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C60のヘテロ環基;C~C60の脂肪族環とC~C60の芳香族環の融合環基;C~C60のアルキル基;C~C60のアルケニル基;C~C60のアルキニル基;C~C60のアルコキシ基;及びC~C60のアルケニル基からなる群から選択され、
10)o及びpは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、oが2以上の場合、隣接したRは相互に結合して単一環又は多環の環を形成可能であり、pが2以上の場合、隣接したRは相互に結合して単一環又は多環の環を形成可能である:
【化3】

【化4】

11)L~Lは、それぞれ独立して、単一結合;C~C60のアルキレン基;及びC~C60のアリーレン基からなる群から選択され、
12)R10~R12は、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;C~C60のアリール基;O、N、S、Si及びPの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C60のヘテロ環基;C~C60の脂肪族環とC~C60の芳香族環の融合環基;C~C60のアルキル基;及びC~C60のアルコキシ基;からなる群から選択され、
13)Zは、S又はOであり、
14)q及びrは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q+r=3である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、感光性樹脂組成物及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
着色遮光層、特に、黒色遮光層は、液晶表示装置において赤色、緑色、青色カラーフィルター間の色干渉を防止して映像品質を高めるために用いられており、近年、有機発光表示装置においても液晶表示装置と同じ目的で、隣接したピクセル同士の混色防止及び映像視認性を高めるための低反射率の実現のために研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
着色遮光層の製造時に着色剤及び種々の樹脂が用いられるが、現像時の解像度、耐熱性及び密着性を改善する必要がある。
【0004】
その上、黒色遮光層では、高い含有量のブラック顔料が添加されるが、ブラック顔料によって感度及び密着性が大きく低下することがある。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態は、2種以上のカルド系バインダー(Cardo Binder)を含むことによって、現像時にパターン周囲及び現像部の残渣が改善でき、メルティングフロー(melting flow)が低減でき、画素定義層として用いられる場合、高いテーパー角度(taper angle)を実現できる感光性樹脂組成物を提供する。
【0006】
また、本発明の一実施形態は、前述した感光性樹脂組成物の重合反応物を含むパターン層を備えることによって、高い解像度を有し、高いテーパー角度を有する画素定義層を備えた表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、下記化学式1で表示される反復単位を含み、相互に分子量が異なる2種以上のカルド系バインダー(A)と、反応性不飽和化合物(B)と、顔料(C)と、開始剤(D)と、溶媒(E)と、を含む感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0008】
【化1】
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、化学式1で表示され、異なる2種以上のカルド系バイン
ダーを含むことによって、現像時における残渣を改善し、メルティングフローを改善でき、高いテーパー角度を有するパターン層を形成できる感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0010】
また、本発明の一実施形態によれば、前述した感光性樹脂組成物の重合反応物を含むパターン層を備えることによって、高い解像度を有する表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一部の実施形態を例示的な図面を参照して詳細に説明する。各図における構成要素の参照符号に関しては、同じ構成要素は、たとえ異なる図面上に表示されていても、可能な限り同じ符号を有することができる。また、本発明の説明において、関連する公知構成又は機能についての具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にさせると判断される場合には、その詳細な説明は省略してもよい。本明細書において“含む”、“有する”、“からなる”などが使われる場合、“~だけ”が使われない以上、他の部分が追加されてもよい。構成要素を単数で表現した場合、別に断りのない限り、複数を含む場合も含むことができる。
【0012】
また、本発明の構成要素を説明するとき、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。これらの用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのもので、その用語によって当該構成要素の本質、順番、順序又は個数などが限定されるものではない。
【0013】
構成要素の位置関係に対する説明において、2つ以上の構成要素が“連結”、“結合”又は“接続”されるなどとした場合、2つ以上の構成要素が直接に“連結”、“結合”又は“接続”されてもよいが、2つ以上の構成要素の間に他の構成要素が“介在”されて“連結”、“結合”又は“接続”されてもよいと理解すべきである。ここで、他の構成要素は、互いに“連結”、“結合”又は“接続”される2つ以上の構成要素の少なくとも一つに含まれてもよい。
【0014】
構成要素、動作方法又は作製方法などに関連した時間的な流れ関係に関する説明において、例えば、“~後に”、“~に続いて”、“~次に”、“~前に”などのように時間的先後関係又は流れ上の先後関係が説明される場合、“直ちに”又は“直接”が使われない限り、連続的でない場合を含むこともできる。
【0015】
一方、構成要素に対する数値又はその対応情報が言及された場合、特に明示的な記載がなくても、数値又はその対応情報は、各種要因(例えば、工程上の要因、内部又は外部衝撃、ノイズなど)によって発生し得る誤差範囲を含むものと解釈できる。
【0016】
本出願で使われる用語“ハロ”又は“ハロゲン”は、特に説明がない限り、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)などを含む。
【0017】
本出願で使われる用語“アルキル”又は“アルキルグループ”は、特に説明がない限り、単一結合で連結された1~60の炭素を有し、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環族)基、アルキル-置換されたシクロアルキル基、シクロアルキル-置換されたアルキル基をはじめとする飽和脂肪族官能基のラジカルを意味できる。
【0018】
本出願で使われる用語“ハロアルキル基”又は“ハロゲンアルキル基”は、特に説明がない限り、ハロゲンが置換されたアルキル基を意味できる。
【0019】
本出願で使われる用語“アルケニル”又は“アルキニル”は、特に説明がない限り、それぞれ二重結合又は三重結合を有し、直鎖型又は側鎖型の鎖基を含み、2~60の炭素数を有することができる。
【0020】
本出願で使われる用語“シクロアルキル”は、特に説明がない限り、3~60の炭素数を有する環を形成するアルキルを意味できる。
【0021】
本出願で使われる用語“アルコキシ基”又は“アルキルオキシ基”は、酸素ラジカルが結合したアルキル基を意味し、特に説明がない限り、1~60の炭素数を有することができる。
【0022】
本出願で使われる用語“アルケンオキシル基”、“アルケンオキシ基”、“アルケニルオキシル基”、又は“アルケニルオキシ基”は、酸素ラジカルが付着したアルケニル基を意味し、特に説明がない限り、2~60の炭素数を有することができる。
【0023】
本出願で使われる用語“アリール基”及び”アリーレン基”は、特に説明がない限り、それぞれ6~60の炭素数を有するが、これに制限されるものではない。本出願においてアリール基又はアリーレン基は、単一鎖状、環集合体、接合された多環系、化合物などを含むことができる。例えば、アリール基は、フェニル基、ビフェニルの1価官能基、ナフタレンの1価官能基、フルオレニル基、又は置換されたフルオレニル基などを指すことができる。
【0024】
本出願において、用語“フルオレニル基”又は“フルオレニレン基”は、特に説明がない限り、それぞれ、フルオレンの1価又は2価官能基を意味できる。“置換されたフルオレニル基”又は“置換されたフルオレニレン基”は、置換されたフルオレンの1価又は2価官能基を意味できる。“置換されたフルオレン”は、下記の置換基R、R’、R”及びR’”の少なくとも一つが水素以外の官能基であることを意味できる。RとR’が互いに結合し、これらが結合した炭素と共にスピロ化合物を形成した場合を含むことができる。
【0025】
【化2】

また、前記R、R’、R”及びR’”はそれぞれ独立して、1~20の炭素数を有するアルキル基、1~20の炭素数を有するアルケニル基、6~30の炭素数を有するアリール基、3~30の炭素数を有するヘテロ環基であり得、例えば、前記アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンであり得、前記ヘテロ環基は、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、キナゾリン又はキノキサリンであり得る。例えば、前記置換されたフルオレニル基及びフルオレニレン基はそれぞれ、9,9-ジメチルフルオロN、9,9-ジフェニルフルオロN及び9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]の1価官能基又は2価官能基であり得る。
【0026】
本出願で使われる用語“環集合体(ring assemblies)”は、2つ又はそれ以上の環系(単一環又は接合された環系)が単一結合又は二重結合で互いに直接連結されており、このような環間の直接連結の数が、この化合物に入っている環系の総数よりも1個少ないことを意味する。環集合体は、同一の又は異なる環系が単一結合又は二重結合で互いに直接連結され得る。
【0027】
本出願においてアリール基は環集合体を含むので、アリール基は、単一芳香族環であるベンゼン環が単一結合によって連結されたビフェニル、テルフェニルを含む。また、アリール基は、芳香族単一環と接合された芳香族環系が単一結合によって連結された化合物も含むので、例えば、芳香族単一環であるベンゼン環と接合された芳香族環系であるフルオレンが単一結合によって連結された化合物も含むことができる。
【0028】
本出願で使われる用語“接合された多環系”は、少なくとも2つの原子を共有する接合された(fused)環の形態を意味し、2つ以上の炭化水素類の環系が接合された形態及び少なくとも1つのヘテロ原子を含むヘテロ環系が少なくとも一つ接合された形態などを含む。このような接合された多環系は、芳香族環、ヘテロ芳香族環、脂肪族環又はこれらの環の組合せであり得る。
【0029】
本出願で使われる用語“スピロ化合物”は‘スピロ連結(spiro union)’を有し、スピロ連結は、2個の環が単に1個の原子を共有することによってなる連結を意味する。このとき、2つの環に共有された原子を‘スピロ原子’といい、1つの化合物に入っているスピロ原子の数によってそれらをそれぞれ、‘モノスピロ-’、‘ジスピロ-’、‘トリスピロ-’化合物と呼ぶことができる。
【0030】
本出願で使われる用語“ヘテロ環基”は、“ヘテロアリール基”又は“ヘテロアリーレン基”のような芳香族環だけでなく、非芳香族環も含み、特に説明がない限り、それぞれ一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60の環を意味するが、ここに制限されるものではない。本出願で使われる用語“ヘテロ原子”は、特に説明がない限り、N、O、S、P又はSiを示し、ヘテロ環基は、ヘテロ原子を含む単一鎖状、環集合体、接合された多環系、スピロ化合物などを意味できる。
【0031】
また、“ヘテロ環基”は、環を形成する炭素に代えて、SOを含む環も含むことができる。例えば、“ヘテロ環基”は次の化合物を含むことができる。
【0032】
【化3】

本出願で使われる用語“環”は、単一環及び多環を含み、炭化水素環はもとより、少なくとも一つのヘテロ原子を含むヘテロ環を含み、芳香族及び非芳香族環を含むことができる。
【0033】
本出願で使われる用語“多環”は、ビフェニル、テルフェニルなどのような環集合体(ring assemblies)、接合された(fused)多環系及びスピロ化合物を含み、芳香族の他に非芳香族も含み、炭化水素環はもとより、少なくとも一つのヘテロ原子を含むヘテロ環を含むことができる。
【0034】
また、接頭辞が連続して命名される場合、記載順に置換基が羅列されることを意味できる。例えば、アリールアルコキシ基は、アリール基に置換されたアルコキシ基を意味し、アルコキシカルボニル基は合、アルコキシ基に置換されたカルボニル基を意味し、また、アリールカルボニルアルケニル基は、アリールカルボニル基に置換されたアルケニル基を意味できる。ここで、アリールカルボニル基は、アリール基に置換されたカルボニル基であり得る。
【0035】
また、明示的な説明がない限り、本出願で使われる用語“置換又は非置換された”において“置換”は、重水素、ハロゲン、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C~C20のアルキル基、C~C20のアルコキシ基、C~C20のアルキルアミン基、C~C20のアルキルチオフェン基、C~C20のアリールチオフェン基、C~C20のアルケニル基、C~C20のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、重水素に置換されたC~C20のアリール基、C~C20のアリールアルケニル基、シラン基、ホウ素基、ゲルマニウム基、及びO、N、S、Si及びPからなる群から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C20のヘテロ環基からなる群から選ばれる1個以上の置換基に置換されることを意味でき、これらの置換基に制限されるものではない。
【0036】
本出願において各記号及びその置換基の例として挙げられるアリール基、アリーレン基、ヘテロ環基などに該当する‘官能基名’は、‘価数を反映した官能基の名’を記載してもよいが、‘母体化合物名’で記載してもよい。例えば、アリール基の一種である‘フェナントレン’の場合、1価の‘基’は‘フェナントリル(基)’と、2価の基は‘フェナントリレン(基)’などのように価数を区分して基の名を記載してもよいが、価数に関係なく、母体化合物名である‘フェナントレン’と記載してもよい。同様に、ピリミジンにおいても、価数に関係なく‘ピリミジン’と記載するか、1価の場合にはピリミジニル(基)、2価の場合にはピリミジニレン(基)などのように当該価数の‘基の名’で記載してもよい。したがって、本出願において置換基の種類を母体化合物名で記載する場合、母体化合物の炭素原子及び/又はヘテロ原子と結合している水素原子が脱離して形成されるn価の‘基’を意味できる。
【0037】
また、明示的な説明がない限り、本出願で使われる化学式は、下記化学式の指数定義による置換基定義と同一に適用され得る。
【化4】

ここで、aが0である場合、置換基Rは不存在し、aが1である場合、一つの置換基Rは、ベンゼン環を形成する炭素のいずれか一つの炭素に結合し、aが2又は3である場合、それぞれ、次のように結合し、この時、Rは相互に同一でも異なってもよく、aが4~6の整数である場合、これと類似の方式でベンゼン環の炭素に結合し、一方、ベンゼン環を形成する炭素に結合した水素の表示は省略できる。
【化5】
【0038】
本出願において、置換基同士が結合して環を形成するということは、互いに結合した複数の置換基が任意の原子、例えば、炭素原子、ヘテロ原子であるO、N、S、Si及びPの少なくとも一つの原子を共有して飽和又は不飽和環を形成することを意味する。例えば、ナフタレンの場合、いずれか一つのベンゼン環に置換された隣接したメチル基とブタジエニル基が一つの炭素を共有して不飽和環を形成するものであるか、ビニル基とプロピレニル基が一つの炭素を共有して不飽和環を形成したものと見なすことができる。また、フルオレンはそれ自体を炭素数13個のアリール基と見なすこともできるが、ビフェニル基に置換された2つのメチル基が1つの炭素を共有するように互いに結合して環を形成したものと見なすこともできる。
【0039】
本出願において、有機電気素子は、陽極と陰極間の構成物を意味するか、陽極と陰極、及びその間に位置する構成物を含む有機発光ダイオードを意味することができる。
【0040】
また、場合によって、本出願における有機電気素子は、有機発光ダイオードとこれを含むパネルを意味するか、パネルと回路を含む電子装置を意味することができる。ここで、例えば、電子装置は、表示装置、照明装置、太陽電池、携帯又はモバイル端末(例えば、スマートフォン、タブレット、PDA、電子辞典、PMPなど)、ナビゲーション端末、ゲーム機、各種TV、各種コンピュータモニターなどをいずれも含むが、これに制限されず、前記構成物を含むものであればいかなる形態の装置であってもよい。
【0041】
本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物は、相互に分子量が異なる2種以上のカルド系バインダー(A)と、反応性不飽和化合物(B)と、顔料(C)と、開始剤(D)と、溶媒(E)と、を含む。
【0042】
前記2種以上のカルド系バインダー(A)は、下記化学式1で表示される反復単位を含む。
【化6】
【0043】
以下、前記化学式1について説明する。
【0044】
“*”は、反復単位で結合が連結される部分を表す。したがって、前記化学式1で表示される反復単位は、大括弧で表示した部分が相互に連結され得る。
【0045】
及びRは、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン基;C~C60のアリール基;O、N、S、Si及びPの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C60のヘテロ環基;C~C60の脂肪族環とC~C60の芳香族環の融合環基;C~C60のアルキル基;C~C60のアルケニル基;C~C60のアルキニル基;C~C60のアルコキシ基;及びC~C30のアリールオキシ基;からなる群から選ばれる。
【0046】
及びRは、それぞれ独立して、C~C40のアルキル基又はC~C20のアルキル基であり得る。
【0047】
~Rは、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;C~C60のアリール基;O、N、S、Si及びPの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C60のヘテロ環基;C~C60の脂肪族環とC~C60の芳香族環の融合環基;C~C60のアルキル基;C~C60のアルケニル基;C~C60のアルキニル基;C~C60のアルコキシ基;及びC~C30のアリールオキシ基;からなる群から選ばれる。
【0048】
~Rは、それぞれ独立して、C~C40のアルキル基又はC~C20のアルキル基であり得る。
【0049】
は、水素;重水素;C~C60のアルキル基;C~C60のアルケニル基;アクリル基;及びメタクリル基からなる群から選ばれる。
【0050】
は、C~C40のアルキル基又はC~C20のアルキル基であり得る。
【0051】
は、C~C40のアルケニル基又は、C~C20のアルケニル基であり得る。
【0052】
m及びnは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0053】
mが2以上の場合、隣接したRは相互に結合して単一環又は多環の環を形成できる。
【0054】
nが2以上の場合、Rは相互に結合して単一環又は多環の環を形成できる。
【0055】
は、酸無水物残基又は酸二無水物残基である。
【0056】
は、下記化学式2で表示される。化学式2については後述する。
【0057】
及びYは、それぞれ独立して、水素;重水素;下記化学式3;及び下記化学式4からなる群から選ばれる。化学式3及び化学式4については後述する。
【0058】
以下、前記化学式2について説明する。
【化7】
【0059】
*は、化学式1においてXが2個のベンゼン環と連結される部分を意味する。
【0060】
及びRは、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン基;C~C60のアリール基;O、N、S、Si及びPの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C60のヘテロ環基;C~C60の脂肪族環とC~C60の芳香族環の融合環基;C~C60のアルキル基;C~C60のアルケニル基;C~C60のアルキニル基;C~C60のアルコキシ基;及びC~C60のアルケニル基からなる群から選ばれる。
【0061】
及びRは、それぞれ独立して、C~C40のアルキル基又はC~C20のアルキル基であり得る。
【0062】
及びRは、それぞれ独立して、C~C40のアルケニル基又はC~C20のアルケニル基であり得る。
【0063】
及びRは、それぞれ独立して、C~C40のアルコキシ基又はC~C20のアルコキシ基であり得る。
【0064】
o及びpは、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0065】
oが2以上の場合、隣接したRは相互に結合して単一環又は多環の環を形成できる。
【0066】
pが2以上の場合、隣接したRは相互に結合して単一環又は多環の環を形成できる。
【0067】
以下、前記化学式3及び前記化学式4について説明する。
【化8】
【0068】
【化9】
【0069】
波状の表示で切られた結合部分は、化学式1においてY及びYが酸素と結合する部分を表す。
【0070】
~Lは、それぞれ独立して、単一結合;C~C60のアルキレン基;及びC~C60のアリーレン基からなる群から選ばれる。
【0071】
~Lは、それぞれ独立して、C~C40のアルキレン基又はC~C20のアルキレン基であり得る。
【0072】
~Lは、それぞれ独立して、C~C40のアリーレン基又はC~C20のアリーレン基であり得る。
【0073】
10~R12は、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;C~C60のアリール基;O、N、S、Si及びPの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC~C60のヘテロ環基;C~C60の脂肪族環とC~C60の芳香族環の融合環基;C~C60のアルキル基;及びC~C60のアルコキシ基;からなる群から選ばれる。
【0074】
10~R12は、それぞれ独立して、C~C40のアルキル基又はC~C20のアルキル基であり得る。
【0075】
10~R12は、それぞれ独立して、C~C40のアルコキシ基又はC~C20のアルコキシ基であり得る。
【0076】
は、S又はOである。
【0077】
q及びrは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q+r=3である。
【0078】
前記化学式1で表示される反復単位を含む2種以上のカルド系バインダーの少なくとも1種は、Y及びYの少なくとも一つが前記化学式3であり得る。
【0079】
前記化学式1で表示される反復単位を含む2種以上のカルド系バインダーの少なくとも1種は、Y及びYの少なくとも一つが前記化学式4であり、重量平均分子量が5000~7000であり得る。
【0080】
本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物は、前述した化学式1で表示される2種以上のカルド系バインダーを含むことによって、残渣無しにパターン層を形成でき、密着性に優れる。
【0081】
2種以上のカルド系バインダーは、低分子量カルド系バインダー及び高分子量カルド系バインダーを含むことができる。
【0082】
低分子量カルド系バインダーは、上述の化学式1で表示される反復単位を含み、重量平均分子量が3,000~5,000又は3,000~4,800であり得る。
【0083】
高分子量カルド系バインダーは、上述の化学式1で表示される反復単位を含み、重量平均分子量が7,000~9,000、7,000~8,800又は7,000~8,000であり得る。
【0084】
低分子量カルド系バインダー及び高分子量カルド系バインダーを含む本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物は、低分子量カルド系バインダーを高分子量カルド系バインダーよりも高比率で含むことができる。
【0085】
例えば、感光性樹脂組成物は、低分子量カルド系バインダーの質量と高分子量カルド系バインダーの質量との和に対して、低分子量カルド系バインダーを50重量%~90重量%、51重量%~90重量%、60重量%~85重量%、又は70重量%~80重量%で含むことができる。低分子量カルド系バインダーの含有量が前記範囲に含まれる場合、感光性樹脂組成物でパターン層を製造するとき、残渣無しにパターンが形成され、現像時に膜厚の損失を予防することができる。
【0086】
本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物は、前記2種以上のカルド系バインダーの他に、アクリルバインダー及びポリイミドバインダーの少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0087】
前記アクリルバインダーは、第1エチレン性不飽和単量体及びこれと共重合可能な第2エチレン性不飽和単量体の共重合体であり、一つ以上のアクリル系反復単位を含む樹脂である。
【0088】
前記ポリイミドバインダーは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のアルカリ水溶液に対する過溶解特性を防止するために、ポリマーの主構造であるポリイミドを共重合して溶解性を調節し、パターン工程時に露光部と非露光部間の適切な溶解度差が得られ、これによって、耐熱性及びパターン形成性に優れたブラック画素隔壁層(いわゆるブラックマトリクス)が実現できる。
【0089】
例えば、前記ポリアミド酸-ポリイミド共重合体は、ポリアミド酸反復単位及びポリイミド反復単位を含み、前記ポリアミド酸反復単位及びポリイミド反復単位は、5:5~9:1のモル比、例えば2:8~8:2のモル比で含まれ得る。前記ポリアミド酸反復単位及びポリイミド反復単位が前記範囲のモル比で含まれる場合、組成物に使用される溶媒に対する溶解性を確保することができ、パターニング工程において適宜の現像性を示すことができる。使用可能なポリイミド-ポリアミド酸共重合体は、下記の化学式5のような構造を有する。
【0090】
【化10】
【0091】
以下、前記化学式5について説明する。
【0092】
~Xは、それぞれ独立して、置換又は非置換された4価の脂環族有機基;及び置換又は非置換された4価の芳香族有機基;からなる群から選ばれる、
【0093】
~Lは、それぞれ独立して、単一結合;置換又は非置換されたC~C10アルキレン基;置換又は非置換されたC~C10シクロアルキレン基;及び置換又は非置換されたC~C20アリーレン基;からなる群から選ばれる。
【0094】
15及びR16は、それぞれ独立して、水素;及び置換又は非置換されたノルボルネン基;からなる群から選ばれる。
【0095】
o及びpは、それぞれ独立して、1~10,000の整数である。
【0096】
本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物は、反応性不飽和化合物(B)を含む。
【0097】
前記反応性不飽和化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する(メト)アクリル酸であり、且つ一官能性又は多官能性であるエステルが1種以上使用され得る。前記反応性不飽和化合物は、モノマー又はオリゴマーであり得る。本明細書において、“(メト)アクリル酸”とは、メタクリル酸、アクリル酸、又はメタクリル酸とアクリル酸との混合物を意味できる。
【0098】
前記反応性不飽和化合物は、光重合性化合物であり得る。前記反応性不飽和化合物が光重合性化合物であるので、パターン形成工程において感光性樹脂組成物が露光時に十分の重合を起こし、耐熱性、耐光性及び耐化学性に優れたパターンを形成できる。
【0099】
前記反応性不飽和化合物は、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAエポキシアクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリスアクリロイルエチルホスフェートから選択された一つ以上であるが、これに制限されるものではない。
【0100】
前記光重合性モノマーの市販製品を挙げると、次の通りである。前記(メト)アクリル酸の一官能性エステルの例には、東亞合成化学工業(株)製のアロニックスM-101、M-111、M-114、日本化薬(株)製のKAYARAD TC-110S(登録商標)、TC-120S、大阪有機化学工業(株)製のV-158、V-2311などを挙げることができる。前記(メト)アクリル酸の二官能エステルの例には、東亞合成化学工業(株)製のアロニックスM-210、M-240、M-6200など、日本化薬(株)製のKAYARAD HDDA、HX-220、R-604など、及び大阪有機化学工業(株)製のV-260、V-312、V-335HPなどを挙げることができる。前記(メト)アクリル酸の三官能エステルの例には、東亞合成化学工業(株)製のアロニックスM-309、M-400、M-405、M-450、M-7100、M-8030、M-8060、日本化薬(株)製のKAYARAD TMPTA、DPCA-20、DPCA-60、DPCA-120など、及び大阪有機化学工業(株)製のV-295、V-300、V-360などを挙げることができる。前記製品を単独使用又は2種以上併用使用できる。
【0101】
前記反応性不飽和化合物は、より優れた現像性を与えるために酸無水物で処理して使用してもよい。
【0102】
前記反応性不飽和化合物は、前記感光性樹脂組成物全量に対して1重量%~40重量%、又は1重量%~20重量%で含むことができる。前記反応性不飽和化合物が前記範囲に含まれる場合、パターン形成工程において露光時に硬化が十分に起こるため、信頼性に優れ、パターンの耐熱性、耐光性及び耐化学性に優れ、解像度及び密着性にも優れる。
【0103】
本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物は、顔料を含む。
【0104】
前記顔料は、有機顔料及び無機顔料の少なくとも一つであり得る。
【0105】
前記顔料には、赤色顔料、緑色顔料、青色顔料、黄色顔料、黒色顔料などを用いることができる。
【0106】
前記赤色顔料の例には、C.I.赤色顔料254、C.I.赤色顔料255、C.I.赤色顔料264、C.I.赤色顔料270、C.I.赤色顔料272、C.I.赤色顔料177、C.I.赤色顔料89などを挙げることができる。
【0107】
前記緑色顔料の例には、C.I.緑色顔料36、C.I.緑色顔料7などのようなハロゲンが置換された銅フタロシアニン顔料を挙げることができる。
【0108】
前記青色顔料の例には、C.I.青色顔料15:6、C.I.青色顔料15、C.I.青色顔料15:1、C.I.青色顔料15:2、C.I.青色顔料15:3、C.I.青色顔料15:4、C.I.青色顔料15:5、C.I.青色顔料16などのような銅フタロシアニン顔料を挙げることができる。
【0109】
前記黄色顔料の例には、C.I.黄色顔料139などのようなイソインドリン系顔料、C.I.黄色顔料138などのようなキノフタロン系顔料、C.I.黄色顔料150などのようなニッケル複合顔料などを挙げることができる。
【0110】
前記黒色顔料の例には、ラクタムブラック、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタニウムブラック、カーボンブラックなどを挙げることができる。
【0111】
前記顔料はそれらを単独で又は2つ以上混合して使用することができ、これらの例に限定されるものではない。
【0112】
感光性樹脂組成物で形成するパターン層に高い遮光性が要求される場合、光遮断を効率的に行うために前記黒色顔料を使用することができる。前記黒色顔料を使用する場合、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料などの色補正剤と共に使用することができる。
【0113】
前記感光性樹脂組成物に前記顔料を分散させるために分散剤を共に使用することができる。前記顔料を分散剤であらかじめ表面処理して使用したり、或いは前記感光性樹脂組成物の製造に当たって前記顔料と共に分散剤を添加して使用することができる。
【0114】
前記分散剤には、非イオン性分散剤、陰イオン性分散剤、陽イオン性分散剤などを用いることができる。前記分散剤の具体的な例には、ポリアルキレングリコール及びそのエステル、ポリオキシアルキレン、多価アルコールエステルアルキレンオキシド付加物、アルコールアルキレンオキシド付加物、スルホン酸エステル、スルホン酸塩、カルボキシル酸エステル、カルボキシル酸塩、アルキルアミドアルキレンオキシド付加物、アルキルアミンなどを挙げることができ、これらを単独で又は2つ以上混合して使用することができる。
【0115】
前記分散剤の市販製品を挙げると、BYK社製のDISPERBYK-101、DISPERBYK-130、DISPERBYK-140、DISPERBYK-160、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-165、DISPERBYK-166、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-182、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001など、BASF社製のEFKA-47、EFKA-47EA、EFKA-48、EFKA-49、EFKA-100、EFKA-400、EFKA-450、及びZeneka社製のSolsperse 5000、Solsperse 12000、Solsperse 13240、Solsperse 13940、Solsperse 17000、Solsperse 20000、Solsperse 24000GR、Solsperse 27000、Solsperse 28000など、又はAjinomoto社製のPB711、PB821などがある。
【0116】
前記分散剤は、前記感光性樹脂組成物全量に対して0.1~15重量%で含むことができる。前記分散剤が前記範囲に含まれる場合、前記感光性樹脂組成物が分散性に優れることにより、遮光層製造時に安定性、現像性及びパターン性に優れる。
【0117】
前記顔料は、水溶性無機塩及び湿潤剤を用いて前処理して使用してもよい。前記顔料を前記前処理して使用する場合、顔料の1次粒度を微細化できる。前記前処理は、前記顔料を水溶性無機塩及び湿潤剤と共に混練(kneading)する段階、そして前記混練段階で得られた顔料を濾過及び水洗する段階によって行うことができる。前記混練は、40℃~100℃の温度で行うことができ、前記濾過及び水洗は、水などを使用して無機塩を水洗した後、濾過して行うことができる。前記水溶性無機塩の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0118】
前記湿潤剤は、前記顔料及び前記水溶性無機塩が均一に混ざり合って顔料が粉砕し易くなる媒介体の役割を担い、その例には、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのようなアルキレングリコールモノアルキルエーテル;エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンポリエチレングリコールなどのようなアルコールなどを挙げることができ、これらを単独又は2つ以上混合して使用することができる。
【0119】
前記混練段階を経た顔料は、20nm~110nmの平均粒径を有することができる。顔料の平均粒径が前記範囲に含まれる場合、耐熱性及び耐光性に優れながらも微細なパターンを効果的に形成できる。
【0120】
前記顔料は、前記感光性樹脂組成物全量に対して1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、又は2重量%~30重量%で含むことができる。前記顔料が前記範囲に含まれる場合、感光性樹脂組成物が色再現率に優れ、硬化性及び密着性に優れたパターン層を形成できる。
【0121】
前記感光性樹脂組成物は、開始剤(D)を含む。
【0122】
前記開始剤は、光重合開始剤、ラジカル重合開始剤、又はそれらの組合せを使用することができる。
【0123】
前記光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、オキシムエステル系化合物及びトリアジン系化合物のうちの1種以上を使用することができる。
【0124】
前記アセトフェノン系の化合物の例には、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンなどを挙げることができる。前記ベンゾフェノン系化合物の例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0125】
前記チオキサントン系化合物の例には、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどを挙げることができる。
【0126】
前記ベンゾイン系化合物の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタルなど挙げることができる。前記トリアジン系化合物の例には、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ビフェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフト1-イル)-4,6-ス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-4-トリクロロメチル(ピぺロニル)-6-トリアジン、2-4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジンなどを挙げることができる。
【0127】
前記光重合開始剤は、前記化合物の他にも、カルバゾール系化合物、ジケトン類化合物、スルホニウムボーレート系化合物、ジアゾ系化合物、イミダゾール系化合物、非イミダゾール系化合物などを使用することができる。前記ラジカル重合開始剤は、過酸化物系化合物、アゾビス系化合物などを使用することができる。
【0128】
前記過酸化物系化合物の例には、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類;イソブチリルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、o-メチルベンゾイルペルオキシド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,4,4,-トリメチルペンチル-2-ヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルペルオキシバレル酸n-ブチルエステルなどのジアルキルペルオキシド類;2,4,4-トリメチルペンチルペルオキシフェノキシアセテート、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシトリメチルアジペートなどのアルキルペルエステル類;ジ-3-メトキシブチルペルオキシジカーボネ-ト、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネ-ト、ビス-4-t-ブチルシクロヘキシルペルオキシジカーボネ-ト、ジイソプロピルペルオキシジカーボネ-ト、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、t-ブチルペルオキシアリールカーボネートなどのペルカーボネート類などを挙げることができる。
【0129】
前記アゾビス系化合物の例には、1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2,-アゾビス(メチルイソブチレート)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、α,α’-アゾビス(イソブチルニトリル)及び4,4’-アゾビス(4-シアノバレイン酸)などを挙げることができる。前記開始剤は、光を吸収して浮いた状態になった後、そのエネルギーを伝達することによって化学反応を起こす光増減剤と共に使用され得る。前記光増減剤の例には、テトラエチレングリコールビス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート、ジペンタエリトリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネートなどを挙げることができる。
【0130】
前記開始剤は、前記感光性樹脂組成物全量に対して0.01~10重量%、又は0.1~5重量%で含むことができる。前記開始剤が前記範囲に含まれる場合、感光性樹脂組成物を用いたパターン形成工程において露光時に硬化が十分に起こり、優れた信頼性を得ることができ、パターンの耐熱性、耐光性及び耐化学性に優れ、解像度及び密着性にも優れ、未反応開始剤による透過率の低下を防ぐことができる。
【0131】
本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物は、溶媒を含む。
【0132】
前記溶媒には、前記カルド系バインダー、前記反応性不飽和化合物、前記顔料及び前記開始剤との相溶性を有するが、反応はしない物質を用いることができる。
【0133】
前記溶媒の例には、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロエチルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボキシル酸アルキルエステル類;乳酸メチル、乳酸エチルなどの乳酸エステル類;オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチルなどのオキシ酢酸アルキルエステル類;メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなどのアルコキシ酢酸アルキルエステル類;3-オキシプロピオン酸メチル、3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチルなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピルなどの2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸メチルなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなどの2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エステル類、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなどの2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキル類のモノオキシモノカルボキシル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチルなどのエステル類;ピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類などがあり、また、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどの高沸点溶媒を挙げることができる。
【0134】
前記溶媒のうち、相溶性及び反応性を考慮して、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類が使用され得る。前記溶媒は、前記感光性樹脂組成物全量に対して残部量で含むことができ、具体的には、50~90重量%で含むことができる。前記溶媒が前記範囲に含まれる場合、前記感光性樹脂組成物が適度の粘度を有するので、遮光層製造時に工程性に優れる。
【0135】
本発明の他の実施例は、表示装置を提供できる。
【0136】
本発明の実施例に係る表示装置は、感光性樹脂組成物の重合反応物を含むパターン層を含む。
【0137】
本発明の実施例に係る表示装置において、前記感光性樹脂組成物に関する事項は、前述した本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物のそれと同一であり、説明を省く。
【0138】
前記感光性樹脂組成物の重合反応物は、例えば、感光性樹脂組成物をTFT基板上に塗布し、塗布した感光性樹脂組成物を硬化する工程によって形成され得る。
【0139】
前記パターン層は、前記感光性樹脂組成物の重合反応物を含むことによって、優れた解像度を有することができ、高いテーパー角度を有することができる。
【0140】
前記表示装置は、複数のサブピクセルを含み、前記パターン層は、前記複数のサブピクセルを区分する画素定義層であり得る。
【0141】
例えば、前記表示装置のサブピクセルには発光素子が位置し、前記発光素子は、有機発光素子であり得る。前記有機発光素子は、例えば、第1電極、有機層及び第2電極が順次に積層されていてもよい。このような例示において、前記パターン層は第1電極上に位置し、前記パターン層は前記第1電極上で開口部を有することができる。前記開口部内及び前記第1電極上には前記有機層が位置し、前記有機層上には第2電極が位置し得る。このようなパターン層の開口領域によってサブピクセルの発光領域が決定されるので、上述したパターン層は画素定義層であり得る。また、前記パターン層は、光を遮光する遮光層であり得る。
【0142】
本発明の実施例に係るパターン層は、高いテーパー角度を有することができる。例えば、本発明の実施例に係るパターン層は、傾斜角が20°~40°であり得る。前記傾斜角は、傾斜が始まる地点で表示面と平行な方向に対する傾斜角であり得る。
【0143】
上述した画素定義層であるパターン層は開口部を有するが、開口部と非開口部を連結する傾斜部は傾斜角を有する。本発明の実施例に係るパターン層は、前述した感光性樹脂組成物の重合反応物を含むが、前述した感光性樹脂組成物は残渣無しにパターン層を形成でき、パターン形成過程においてメルティングフロー(melting flow)が抑えられているので、高い傾斜角を実現できる。したがって、前記パターン層は、上述したような高い傾斜角を有することにより傾斜部の長さを減らすことができ、開口部間の距離を縮めることができ、よって、サブピクセルを稠密に配置でき、表示装置の高い解像度を実現することができる。
【0144】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。また、本発明に開示される実施例は、本発明の技術思想を限定するものではなく説明するためのものであるので、それらの実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されない。本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲によって解釈すべきであり、それと同等な範囲内における技術思想はいずれも本発明の権利範囲に含まれるものといえよう。
【0145】
以下、本発明に係る合成例及び実施例を具体的に記載するが、本発明の合成例及び実施例がこれに限定されるものではない。
【0146】
合成例1
(化学式6の9,9-Bis[4-(glycidyloxy)phenyl]fluorineの製造)
9,9’-ビスフェノールフルオレン20g(Sigma aldrich社)、グリシジルクロリド(Sigma aldrich社)8.67g、無水炭酸カリウム30gをジメチルホルムアミド100mlと蒸留管が備えられている300ml三口丸底フラスコに入れ、80℃に昇温して4時間反応後に温度を25℃に下げて反応液を濾過後、濾過液を1000ml水に撹拌して滴加後に、析出された粉末を濾過して水で洗浄して40℃で減圧乾燥させ、化学式6の9,9-ビス[4-(グリシジロキシ)フェニル]フルオリンを25g得た。得られた粉末は、HPLCで純度分析の結果、98%の純度を示した。
【化11】
【0147】
合成例2:低分子量カルド系バインダー樹脂の製造(ポリマーA-1)
(下記化学式7の低分子量カルド系バインダー樹脂の製造:A-1)
合成例1で得た化合物1 25g(54mmol)、アクリル酸8g(大井化金社)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.2g(大井化金社)、ヒドロキノン0.2g(大井化金社)をプロピレングリコールメチルエーテルアセテート52g(Sigma
aldrich社)と蒸留管が備えられている300ml三口丸底フラスコに入れて110℃で6時間撹拌した。反応終了後、ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物8g(Mitsubishi Gas社)、テトラヒドロフタル酸1.8g(Sigma aldrich社)を追加後、さらに110℃で6時間撹拌した。反応終了後、反応液を回収して分析した結果、分子量4,500の化学式7のような構造の固形分45%であるカルド系バインダー樹脂が得られた。
【化12】
【0148】
合成例3:高分子量カルド系バインダー樹脂の製造(ポリマーA-2)
前記合成例1と同一に実験して得た化合物1 25g(54mmol)、アクリル酸8g(大井化金社)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.2g(大井化金社)、ヒドロキノン0.2g(大井化金社)をプロピレングリコールメチルエーテルアセテート52g(Sigma aldrich社)と蒸留管が備えられている300ml三口丸底フラスコに入れて110℃で6時間撹拌した。反応終了後、ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物10g(Mitsubishi Gas社)、テトラヒドロフタル酸0.8g(Sigma aldrich社)を追加後、さらに110℃で6時間撹拌した。反応終了後、反応液を回収して分析した結果、分子量8,500の上記化学式7のような構造の固形分44%であるカルド系バインダー樹脂が得られた。
【0149】
合成例4~合成例9:シラン誘導体合成
合成例4(化合物1-1’:6-(Trimethoxysilyl)-1-hexanethiolの製造)
【化13】
【0150】
冷却水が連結された蒸留管が備えられている三口丸底フラスコに、トリクロロシラン(Gelest社)20g(0.147mol)と6-クロロ-1-へキセン(Aldrich社)17.51g(0.147mol)を酢酸エチル200mlに溶解させ、プラチニウム(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン複合溶液(キシレン中2wt%/Aldrich社)を0.02g投入し、窒素を投入しながら75℃に昇温して5時間反応後、溶液を0.1μmテフロン(登録商標)材質のメンブレンにフィルターしてプラチナ触媒を除去する。その後、メタノール15.6g(0.487mol)を常温で30分間滴加し、さらに50℃に昇温して2時間追加反応後、反応液を減圧蒸留して溶媒を除去する。このようにして得られた6-クロロヘキシルトリメトキシ
シラン24g(0.1mol)とナトリウムメトキシド(Aldrich社)8g(0.15mol)、硫化水素THF溶液(0.8M濃度)187ml(0.15mol)、メタノール100mlをオートクレーブに入れて100℃で2時間反応を行った。反応液を冷却後、常温でメタノール中の塩化水素(1.25M濃度)100mlを30分間滴加し、生成された塩を濾過して除去後に減圧蒸留し、6-(トリメトキシシリル)-1-ヘキサンチオールが23g得られた。
【0151】
合成例5(化合物1-2’:9-(Trimethoxysilyl)-1-nonanethiolの製造)
【化14】
【0152】
合成例4において6-クロロ-1-へキセンの代りに9-クロロ-1-ノネン(AK Scientific社)23.7(0.147mol)を使用した以外は同一にして行った。
【0153】
合成例6(化合物1-3’:12-(Trimethoxysilyl)-1-dodecanethiolの製造)
【化15】
【0154】
合成例4において6-クロロ-1-へキセンの代わりに12-クロロ-1-ドデセン(Atomax Chemicals社)30g(0.147mol)を使用した以外は同一にして行った。
【0155】
合成例7(化合物1-4’:6-(Triethoxysilyl)-1-hexanethiolの製造)
【化16】
【0156】
合成例4においてプラチナ除去後に投入したメタノールの代わりにエタノール(Aldrich社)22.4g(0.487mol)を使用した以外は同一にして行った。
【0157】
合成例8(化合物1-5’:6-(Tributhoxysilyl)-1-hexanethiolの製造)
【化17】
【0158】
合成例4においてプラチナ除去後に投入したメタノールの代わりに1-ブタノール(Aldrich社)36g(0.487mol)を使用した以外は同一にして行った。
【0159】
合成例9(化合物1-6’:6-(Dimethoxymethylsilyl)-1-hexanethiolの製造)
【化18】
【0160】
合成例4においてトリクロロシランの代わりにジクロロメチルシラン18g(0.147mol)を使用した以外は同一にして行った。
【0161】
合成例10(ポリマーB-1のシラン誘導体を含むカルド系バインダー樹脂の製造)
合成例10-1:カルド系バインダー樹脂の製造(ポリマーB)
前記合成例1と同一に実験して得た化合物1 25g(54mmol)、アクリル酸8g(大井化金社)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.2g(大井化金社)、ヒドロキノン0.2g(大井化金社)をプロピレングリコールメチルエーテルアセテート52g(Sigma aldrich社)と蒸留管が備えられている300ml三口丸底フラスコに入れて110℃で6時間撹拌した。反応終了後、ビフェニルテトラカルボキシル酸二無水物8.5g(Mitsubishi Gas社)、テトラヒドロフタル酸1.55g(Sigma aldrich社)を追加後、さらに110℃で6時間撹拌した。反応終了後、反応液を回収して分析した結果、分子量5,500の上記化学式7のような構造の固形分40%であるカルド系バインダー樹脂が得られた。
【0162】
合成例10-2:合成例10-1で得たカルド系バインダー溶液に次のcompound 1-7’のようなKBM 803(3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンチオール)6.36g(34mmol)(Shinetsu社)を入れて60℃に昇温して4時間撹拌し、化学式8のようなシラン基が置換されたカルド系バインダー樹脂B-1が得られた。
【化19】

【化20】
【0163】
合成例11(ポリマーB-2のカルド系バインダー樹脂の製造)
合成例10-1で得たカルド系バインダー溶液に6-(トリメトキシシリル)-1-ヘキサンチオール(Compound 1-1’)を8.1g(34mmol)入れて60℃に昇温後に4時間撹拌し、化学式9のようなシランが置換されたカルド系バインダー樹脂B-2が得られた。
【化21】
【0164】
合成例12(ポリマーB-3のカルド系バインダー樹脂の製造)
合成例10-1で得たカルド系バインダー溶液に6-(トリエトキシシリル)-1-ヘキサンチオール(Compound 1-4’)を9.53g(34mmol)入れて60℃に昇温後に4時間撹拌し、化学式10のようなシランが置換されたカルド系バインダー樹脂B-3が得られた。
【化22】
【0165】
感光性樹脂組成物の製造評価1
【表1】
【0166】
前記表1で、ポリマーC及びポリマーDは、下の通りである。
ポリマーC(ポリイミド/Mw:3,200)
【化23】
【0167】
ポリマーD(アクリレートポリマー/Mw:12,000)
【化24】
【0168】
上の組成液を用いた遮光層の製造方法は、次の通りである。
(1)塗布及び塗膜形成段階
前述した黒色感光性樹脂組成物を、洗浄した10cm*10cmガラス基板に、スピンコーターを用いて1.5μm厚に塗布した後、100℃の温度で1分間加熱して溶剤を除去することによって、塗膜を形成する。
(2)露光段階
前記得られた塗膜に必要なパターン形成のために所定形態のマスクを介在した後、190nm~500nmの活性線を照射する。露光機はMA-6(SUSS社)、露光量は100mJ/cmにして照射した。
(3)現像段階
前記露光段階に続いて、AZEM社AX 300 MIF現像液に25℃で1分間浸漬方法で現像後、水で洗浄して非露光部分を溶解、除去して露光部分だけを残存させることで、画像パターンを形成する。
(4)後処理段階
前記現像によって得られた画像パターンを、耐熱性、耐光性、密着性、耐クラック性、耐化学性、高強度、保持安定性などの面に優れたパターンを得るために、230℃で30分間ポストベークする。
以上のような段階を経て得られたパターンに対して、光学顕微鏡(Nicon)を用いてパターンイメージを図示し、SEM(Hitachi)を用いてパターンのテーパー角度を比較した。
【0169】
【表2】
【0170】
【表3】
【0171】
前記表1の組成で作製された遮光層のパターンイメージを分析した表2及び表3の結果を参照すると、ポリマーA-1、ポリマーA-2、ポリマーB-1、ポリマーC、ポリマーDをそれぞれ単独で使用した場合、低分子量を有するカルド系バインダーと高分子量を有するカルド系バインダーの混合組成物を含む本発明である実施例1~3に比べて、作製されたパターンに残渣が非常に多いか、又はパターンのサイズが小さくなること(密着性低下)が確認できた。
【0172】
上の結果をより詳細に確認すると、ポリマーA-1(低分子量を有するカルド系バインダー)を単独で使用した場合、現像後にイメージから黒色顔料が完全に洗わず、残渣が多く残っていることが分かり、パターン縁部の直線性に非常に優れていることが確認できた。
【0173】
ポリマーA-2(高分子量を有するカルド系バインダー)を単独で使用した場合、ポリマーA-1に比べて、現像時間が2倍程度減少して現像がよくできず、同一時間において相対的に少なく現像されたため、ホールパターン(hole pattern)のサイズが小さくなることが確認できた。しかし、前記ポリマーA-1に比べてはパターン中央部の残渣は改善されることが確認された。(A-1の破壊点(breaking point)は10~15秒であり、A-2の破壊点は50秒以上であるため、現像がよくできない)
【0174】
ポリマーB-1(シランを含むカルド系バインダー)を単独で使用した場合、前記ポリマーA-1、A-2の中間程度のパターン形成特性を有することが確認され、縁部の残渣が多く残っていることも確認できた(ポリマーB-1の破壊点は10秒未満)。
【0175】
ポリマーC(polyimide)を単独で使用した場合、ポリマーA-2に比べて破壊点がさらに遅く、非常に現像し難い材料と確認され、比較例1~5の化合物の中で最も現像されない材料と確認された(パターンの縁部及び中央部の残渣が非常に多い)。
【0176】
ポリマーD(アクリル誘導体)単独で使用した場合、現像時間がポリマーA-1、ポリマーBの中間程度の12秒程度であり、密着性がカルドバインダー(ポリマーA-1、A-2、B-1)に比べて低く、縁部の残渣も多かった。
【0177】
本発明であるポリマーA-1及びA-2を混合した実施例1とポリマーA-1、A-2をそれぞれ単独で使用した比較例1、比較例2のパターンイメージを比較すると、本発明である実施例1のパターンが、現像性に優れ、特に縁部及び中央部の残渣無しにきれいにパターンが得られたことが確認できる。
【0178】
また、本発明である実施例2(実施例1+ポリマーB-1混合)では、パターンのサイズはわずかな差異を示すが、現像性及びパターンの残渣がないことが確認でき、密着性に非常に優れることが確認できた。
【0179】
本発明である実施例3(実施例1+ポリマーD)では、実施例1と実施例2に比べてパターンのサイズは小さくなったが、現像性及び残渣の問題無しで非常に良好なパターンが得られた。
【0180】
実施例1~実施例3に対してSEMイメージを用いてテーパー角度を比較した結果を、下記表4に示す。
【0181】
【表4】
【0182】
表4は、実施例1~実施例3のパターンイメージと実施例1~実施例3の現像後(after developing)及び硬化後(after curing)のSEM断面イメージである。
【0183】
表4で、テーパー角度(taper angle)は、下のような方式で測定した。


【0184】
表1~表4の結果から分かるように、樹脂(バインダー)によって異なる性能(パターン現像性、残渣問題、低いテーパー角度)を示す主な理由は、オーバーフロー(over
flow)とテーパー角度の差が発生するためと見られる。
【0185】
アルカリ水溶液に現像してパターンを形成後にポストベーク(熱硬化)工程を行うと、250℃で熱によってパターンが流れることになる。この時、パターンの端部分が流れる現像をメルティングフロー(melting flow)という。
【0186】
オーバーフローは、前記メルティングフローにおいてパターンが過度に流れる現象をいい、熱硬化後にオーバーフローされる場合、ホールパターン(hole pattern)ではパターンが多く崩れ、パターンの開口部が小さくなるため、サブピクセルの開口領域が小さくなることが確認できた。
【0187】
また、テーパー角度はメルティングフローが小さいほど増加し、逆に、メルティングフローが大きいほど(over flow)減少することが確認された。テーパー角度が低すぎる場合、パターンの開口部が小さくなってサブピクセルの開口領域が小さくなる。
【0188】
前記実施例及び比較例で形成した微細パターンのイメージを、下記表5に示す。
【0189】
【表5】
【0190】
前記表5から、ポリマーA-1、ポリマーA-2を単独使用した比較例1、比較例2に比べて、前記2種類を混合して使用した本発明の実施例1、実施例2の方が、密着性に優れ、微細パターンを形成したことが確認できる。
【0191】
密着性は、四角形及びラインパターンが1μmから11μmまでどれくらい微細に現像されるかを確認する尺度であり、ポリマーA-1、ポリマーA-2を単独で使用した場合は、約8μmレベルの解像度までパターンが形成され、A-1とA-2を混合した場合には5~6μm、ポリマーBを含めて3つのカルドバインダーを混合した場合には1μmレベルまでパターンが形成された。
【0192】
感光性樹脂組成物の製造評価2
実施例4~実施例6:ポリマーA-1(低分子)とA-2(高分子)の比率による性能(テーパー角度)評価
【0193】
【表6】
【0194】
【表7】
【0195】
前記表6及び表7を参照すると、ポリマーA-1とポリマーA-2の混合比率によるパターンの現像性、残渣、及びテーパー角度を比較確認した(実施例4~実施例6)。
【0196】
実施例4~実施例6は、低分子量(MW:4,500)カルド系バインダーであるA-1と高分子量(MW:8,500)カルド系バインダーであるA-2をそれぞれ7:3、5:5、3:7で用いている。
【0197】
実施例4~実施例6において、パターンのサイズは、ポリマーA-1を最も多く使用した実施例4が17.5μmと最大であり、残渣無しにテーパー角度も33°と優れていることが確認できた(解像度:5μm、破壊点:17秒)。
【0198】
ポリマーA-1とA-2を同比率で使用した実施例5では、パターンのサイズは16.9μmであり、パターンの中心部には残渣がなかったが、パターンの縁部には残渣があることが確認できた(実施例4に比べてA-2量が増加しながら破壊点が21秒に増加する)。
【0199】
実施例6では、パターンのサイズは14.7μmと最小であり、パターンの中心部も縁部も残渣が多いことが確認できた。これは、A-2がA-1よりも多く使用されることにより破壊点が40秒以上と最も遅く、これによって残渣が多く発生し、ホールパターンのサイズが小さくなったものと確認される。
【0200】
したがって、本発明の化合物は、低分子量のカルド系バインダーであるポリマーA-1が高分子量のカルド系バインダーであるポリマーA-2よりも多く含まれる感光性樹脂組成物が、パターンの現像性、密着性に非常に優れることが確認できた。