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特開2022-123019外科用ステープリングに使用するシール材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123019
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】外科用ステープリングに使用するシール材料
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094988
(22)【出願日】2022-06-13
(62)【分割の表示】P 2020200197の分割
【原出願日】2014-10-28
(31)【優先権主張番号】14/074,884
(32)【優先日】2013-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517076008
【氏名又は名称】エシコン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ethicon LLC
【住所又は居所原語表記】#475 Street C, Suite 401, Los Frailes Industrial Park, Guaynabo, Puerto Rico 00969, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
(72)【発明者】
【氏名】ワイデンハウス・タマラ・エス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処置領域の自然特性を実質的に維持する一方で、漏出と炎症を最小にするように、組織、血管、導管、シャント、又は他の対象物や身体部位のステープリングのための、改良された装置と方法を提供する。
【解決手段】外科用ステープリング装置のようなエンドエフェクタと共に使用する植え込み可能な材料である。組織補強材料1601が、ステープルの配備の際に組織へ送達されるために、外科用ステープラのエンドエフェクタの一部の上に解放可能に保持される。組織補強材料は、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する複数の繊維1603を含む。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脚部を有するステープルの配備の際に組織へ送達されるための、外科用ステープラのエンドエフェクタの一部の上に解放可能に保持された組織補強材料であって、前記組織補強材料を貫通して挿入された前記ステープルの前記複数の脚部の周囲を圧縮してシールするように構成され、
前記組織補強材料が前記エンドエフェクタを構成しているカートリッジ本体およびアンビル間に挟み込まれた際に前記アンビルの複数のポケットに嵌まり込む複数の突出部が、前記組織補強材料の上面に形成されており、前記ステープルの前記複数の脚部が前記組織補強材料を貫通して挿入されている際に、前記アンビルの前記複数のポケットにより屈曲させられた前記ステープルの前記複数の脚部の先端部が、前記組織補強材料を貫通して組織に達することが防止されている、組織補強材料。
【請求項2】
前記組織補強材料がコラーゲン母材を含む、請求項1に記載の組織補強材料。
【請求項3】
前記組織補強材料の前記複数の突出部が、前記アンビルの前記複数のポケットに対応する形状を有する、請求項1または2に記載の組織補強材料。
【請求項4】
前記組織補強材料が前記カートリッジ本体および前記アンビル間に挟み込まれた際に、前記複数の突出部を含む前記組織補強材料が圧縮されて、前記アンビルの前記複数のポケットの内部が前記複数の突出部により満たされる、請求項1~3の何れか1つに記載の組織補強材料。
【請求項5】
外科用ステープラと共に使用するステープルカートリッジアセンブリであって、
複数の脚部を有するステープルを中に収納するように構成された複数のステープルキャビティを有するカートリッジ本体と、
前記ステープルの前記複数の脚部を屈曲させるための複数のポケットを有するアンビルと、
組織補強材料であって、前記カートリッジ本体上に解放可能に保持され、前記カートリッジ本体内の前記ステープルの配備によって組織に送達されるように構成され、前記組織補強材料を貫通して挿入された前記ステープルの前記複数の脚部の周囲を圧縮してシールするように構成された、組織補強材料と、を含み、
前記組織補強材料が前記カートリッジ本体および前記アンビル間に挟み込まれた際に前記アンビルの前記複数のポケットに嵌まり込む複数の突出部が、前記組織補強材料の上面に形成されており、前記ステープルの前記複数の脚部が前記組織補強材料を貫通して挿入されている際に、前記アンビルの前記複数のポケットにより屈曲させられた前記ステープルの前記複数の脚部の先端部が、前記組織補強材料を貫通して組織に達することが防止されている、ステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項6】
前記組織補強材料がコラーゲン母材を含む、請求項5に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項7】
前記組織補強材料の前記複数の突出部が、前記アンビルの前記複数のポケットに対応する形状を有する、請求項5または6に記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【請求項8】
前記組織補強材料が前記カートリッジ本体および前記アンビル間に挟み込まれた際に、前記複数の突出部を含む前記組織補強材料が圧縮されて、前記アンビルの前記複数のポケットの内部が前記複数の突出部により満たされる、請求項5~7の何れか1つに記載のステープルカートリッジアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外科用器具に関し、具体的には組織の切開とステープリングの方法、装置、及び装置の構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用ステープラは、外科的処置において、組織、血管、導管、シャント、若しくは特定の処置に含まれる他の対象物又は身体部位の開口の閉鎖に使用される。開口は、血管内又は胃のような内臓内の通路として自然に発生するものもあり、あるいは組織又は血管穿刺でバイパス又は吻合を形成することによって、又はステープリング処置中の組織切開によって、などの外科的処置中に外科医によって形成されることがある。
【0003】
ほとんどのステープラは、細長いシャフトを伴うハンドルを有し、シャフトはその端部に、その間でステープルを保持して成形するために形成される一対の移動可能な対向するジョーを有する。ステープルは典型的にはステープルカートリッジに収められ、そのステープルカートリッジは、ステープルの複数の列を収納することができ、2つのジョーのうちの1つに、手術部位へのステープルの放出のために配置されることが多い。使用中、ジョーは、ステープルされるべき対象物がジョーの間となるように位置決めされ、ジョーが閉じて装置が始動されると、ステープルが放出されて成形される。いくつかのステープラは、ステープルカートリッジ内のステープルの間を移動し、ステープルされた列の間で、ステープルされた組織を長手方向に切開及び/又は開口するように構成されたナイフを含む。
【0004】
外科用ステープラは何年にもわたって改良されてきたが、それ自体にはいまだに多くの問題が存在する。1つの共通問題は、ステープルが、それが配置される組織又は他の対象物を貫通すると、孔を形成するステープルによって漏出が起こり得ることである。血液、空気、消化管液、及び他の液体が、ステープルが完全に成形された後でも、ステープルによって形成された開口を通してしみ出ることがある。処置される組織は、ステープリングによる外傷のために炎症を起こすこともある。更に、ステープリングのような処置と共に植え込みされ得るステープルや他の対象物及び材料は、一般に、それらがその中に植え込みされる組織のいくつかの特性を欠いている。例えば、ステープルや他の対処物及び材料は、それらがその中に植え込みされる組織の自然の柔軟性を欠くことがある。当業者は、組織が、その中にステープルが配置された後に、多くの場合、できる限りその組織の自然の特性を維持することが組織にとって望ましいことを認識するであろう。
【0005】
いくつかの場合には、生体材料が組織ステープリングと共に使用されていた。しかしながら、生体材料の使用は多くの問題を提示することがある。例えば、生体材料は、それを貫通して挿入されるファスナー構成要素(例えば外科用ステープル)の周囲をシールする能力などの所望の機械的特性を欠くことがある。生体材料は、手術部位での組織の十分な補強の、及び/又は手術部位での出血又は液体の処置の、能力に欠けることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、処置領域の自然特性を実質的に維持する一方で、漏出と炎症を最小にするように、組織、血管、導管、シャント、又は他の対象物や身体部位のステープリングのための、改良された装置と方法に対する要求が存続する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
種々の態様及び実施形態において、本開示は、外科用ステープリング装置のようなエンドエフェクタと共に使用する植え込み可能な材料、及びそのようなエンドエフェクタの操作に関する方法を提供する。
【0008】
1つの態様では、本開示は、ステープルの配備の際に組織へ送達されるための、外科用ステープラのエンドエフェクタの一部の上に解放可能に保持された組織補強材料を提供する。組織補強材料は、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する複数の繊維を含む。
【0009】
別の態様では、本開示は、外科用ステープラと共に使用されるステープルカートリッジアセンブリを提供する。アセンブリは、ステープルを中に収容するように構成された複数のステープルキャビティを有するカートリッジ本体を含む。アセンブリは、カートリッジ本体上に解放可能に保持され、カートリッジ本体内のステープルの配備によって組織に送達されるように構成された組織補強材料をも含む。組織補強材料は、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する複数の繊維を含む。
【0010】
別の態様では、本開示は組織補強材料を植え込む方法を提供する。方法は、手術部位において、外科用ステープラのカートリッジアセンブリとアンビルとの間に、組織を係合させることを含む。カートリッジアセンブリ及びアンビルのうちの少なくとも1つは、解放可能にその上に保持された組織補強材料を有する。材料は、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように適合された配列を有する複数の繊維を含む。方法は、外科用ステープラを始動させて、ステープルをカートリッジアセンブリから組織内に放出させることであって、ファスナー構成要素が組織補強材料を貫通して延在し、材料を手術部位に維持してファスナー構成要素の周囲にシールを形成すること、をも含む。
【0011】
種々の実施形態において、本開示は、上述した態様と、以下の特徴のうちいずれか1つ又は2つ以上との全ての機能的組み合わせを企図する(本明細書で説明する他の態様及び実施形態に加えて)。
【0012】
種々の実施形態において、外科用ステープラのエンドエフェクタの一部は、ステープルカートリッジ及びアンビルのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
種々の実施形態において、配列は織組織及びループ構造である。
【0014】
種々の実施形態において、配列は、ファスナー構成要素による貫通に反応して、材料が伸びて元に戻ることを許容するように、更に構成されている。
【0015】
種々の実施形態において、複数の繊維は弾性である。
【0016】
種々の実施形態において、材料は生体材料を含む。
【0017】
種々の実施形態において、複数の繊維は生体材料を含む。種々の実施形態において、複数の繊維は合成材料を含む。いくつかの実施形態において、複数の繊維は生体材料と合成材料を含む。
【0018】
種々の実施形態において、材料は、複数の繊維を含む単一の層を有する。
【0019】
種々の実施形態において、材料は、生体材料と複数の繊維とを含む単一の層を有する。
【0020】
種々の実施形態において、材料は、生体材料を含む第1の層と、複数の繊維を含む第2の層と、を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、材料は、生体材料と合成材料を含む複合補助材である。
【0022】
種々の実施形態において、材料は、ファスナー構成要素がそれを貫通して挿入されると、ファスナー構成要素の周囲で膨張し、ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する。種々の実施形態において、材料は、第2の材料が湿潤すると、ファスナー構成要素の周囲で膨張し、ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する。いくつかの実施形態では、材料は、ファスナー構成要素がそれを貫通して挿入され、そして材料が湿潤すると、ファスナー構成要素の周囲で膨張し、ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する。
【0023】
種々の実施形態において、材料は、ファスナー構成要素がそれを貫通して挿入されると、ファスナー構成要素に係合し、ファスナー構成要素に隣接する材料及び組織の、ファスナー構成要素に対する動きを静める。
【0024】
種々の実施形態において、ファスナー構成要素はステープルレッグを含む。
【0025】
種々の実施形態において、材料は、それに取り付けられたステープルカートリッジを更に含む。
【0026】
種々の実施形態において、材料は、生体植え込み可能及び生体吸収可能である。
【0027】
種々の実施形態において、アセンブリは、材料をカートリッジ本体に結合するように構成された少なくとも1つの保持部材を含む。少なくとも1つの保持部材は、カートリッジ本体の外縁、並びに生体組織膜及び合成基材層のうちの少なくとも1つの外縁、に結合されてもよい。少なくとも1つの保持部材は、縫合糸を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて考慮することで、より完全に理解されるであろう。
図1】その遠位端に取り付けられた取り付け部を有する外科用器具の1つの例示的実施形態の斜視図である。
図2】器具のシャフトから取り外された取り付け部を伴う、図1の外科用器具の斜視図である。
図3】少なくとも1つの補助材を含む図2の取り付け部の斜視図である。
図4】補助材を取り除いた、図3のエンドエフェクタの分解斜視図である。
図5図4のエンドエフェクタと共に使用するステープルカートリッジの遠位端の詳細斜視図である。
図6図5に示す断面線に沿った側面断面図である。
図7図5のステープルカートリッジの底面斜視図である。
図8図4の外科用器具の始動スレッド、プッシャー、及びファスナーの詳細斜視図である。
図9】外科用器具に使用する取り付け部の別の例示的実施形態の斜視図である。
図10図9の取り付け部のエンドエフェクタの分解斜視図である。
図11図4のエンドエフェクタと共に使用する駆動アセンブリの分解図である。
図12図3のエンドエフェクタの下部ジョーの斜視図である。
図13図3のエンドエフェクタの上部ジョーの斜視図であり、上部ジョーはそれに接続された補助材を有する。
図14】補助材を解放可能に保持するように構成された保持部材を含む図2のエンドエフェクタの一部の斜視図である。
図15図10のエンドエフェクタの下部ジョーの斜視図である。
図16】ループ構造配列内の複数の繊維を伴う組織補強材料を有するエンドエフェクタを示す図である。
図16A図16の組織補強材料の一部の詳細図である。
図16B図16の組織補強材料の形成に使用される繊維の撚糸の一部の概略図である。
図16C図16Bの繊維の撚糸の断面AAにおける断面図である。
図17A】ファスナー構成要素の周囲の圧縮及びシールを示すループ構造配列内の複数の繊維を有する例示的組織補強材料の分解図である。
図17B】ファスナー構成要素の周囲の圧縮及びシールを示すループ構造配列内の複数の繊維を有する例示的組織補強材料の分解図である。
図18】垂直方向及び半径方向のバネ性を有する組織補強材料の別の例示的実施形態の図である。
図19】ファスナー構成要素の周囲をシールすることができるコラーゲン母材を伴う代替えの例示的組織補強材料を有するエンドエフェクタの斜視図である。
図20】組織と図19の組織補強材料とを貫通して挿入された例示的ファスナーの分解断面図である。
図21】組織と図19の組織補強材料とを貫通して挿入された例示的ファスナーの分解断面図である。
図22】ステープルされたセクションと、組織に配備された後の例示的複合補助組織補強材料を伴うセクションと、を有する組織の一部を示す図である。
図23】ファスナー構成要素の周囲をシールする外科用接着剤を含む代替えの例示的組織補強材料の等角図である。
図23A】ファスナー構成要素の周囲をシールする外科用接着剤を含む代替えの例示的組織補強材料の等角図である。
図23B】外科用ステープルによる貫通前の図23Aの組織補強材料の側面図である。
図23C】外科用ステープルによる貫通後の図23Bの組織補強材料の等角図である。
図24A】別の代替えの例示的組織補強材料を有するエンドエフェクタの対向するジョーの断面図である。
図24B図24Aのエンドエフェクタのジョーの上の組織補強材料の一部の詳細図である。
図24C図24A及び図24Bに示す組織補強材料の2つの層の斜視図である。
図25A】組織補強材料を植え込む例示的方法を示す図である。
図25B】組織補強材料を植え込む例示的方法を示す図である。
図25C】組織補強材料を植え込む例示的方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、本明細書に開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び用途の原理を総合的に理解するために、特定の例示的実施形態について記載する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に示されている。本明細書で具体的に説明し、添付の図面に示す装置及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることは、当業者は理解するであろう。1つの例示的な実施形態との関連において図示又は記載される機構は、他の実施形態の機構と組み合わせられる場合がある。かかる修正及び変形を本発明の範囲内に含むことが意図される。更に、本開示では、種々の実施形態の同じ参照番号の構成要素は、それらの構成要素が同じ性質及び/又は同じ目的を果たす場合には、概して同じ特徴を有する。
【0030】
本明細書の全体を通じて、「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、又は「実施形態」などと言う場合、その実施形態との関連において説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通じた各所で、「様々な実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「一実施形態において」、又は「ある実施形態において」などの語句が出現するが、これらは必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。更に、特定の機構、構造、又は特性が、1つ又は2つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされてもよい。故に、一実施形態に関して図示又は説明される特定の機構、構造、又は特性は、1つ又は2つ以上の他の実施形態の機構、構造、又は特徴と、全体として又は部分的に、制限なしに組み合わせることができる。かかる修正及び変形を本発明の範囲内に含むことが意図される。
【0031】
「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書において、手術器具のハンドル部分を操作する医師を基準にして用いられる。「近位」という用語は、医師に最も近い部分を指し、「遠位」という用語は、医師から離れた位置にある部分を指す。便宜上及び明確性のために、「垂直」、「水平」、「上」、「下」など空間的用語は、本明細書において図面に対して使用される場合があることは更に理解されるであろう。しかしながら、外科用器具は、多くの方向及び位置で使用されるものであり、これらの用語は、限定的及び/又は絶対的であることを意図するものではない。
【0032】
腹腔鏡下及び低侵襲性の外科的処置を行うための、様々な例示的なデバイス及び方法が提供される。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される様々な方法及び装置が、多数の外科的処置及び用途で用いられ得ることを容易に理解するであろう。本明細書で開示される様々な器具が、例えば、自然開口部を通して、組織に形成された切開又は穿刺孔を通して、又はトロカールカニューレなどのアクセスデバイスを使用してなどの、何らかの方法で体内へ挿入され得ることを当業者は更に認識するであろう。例えば、これらの器具の作動部分、すなわちエンドエフェクタ部分は、患者の体内に直接に挿入できる、又は、外科用器具のエンドエフェクタ及び細長いシャフトを通過させることが可能な作業用チャンネルを有するアクセス装置を介して挿入され得る。
【0033】
1つ又は2つ以上の本明細書で集合的に「補助材」と呼ぶ生体材料及び/又は合成材料を、外科用器具と共に使用して、外科的処置の改善を支援することは望ましいことであり得る。当業者はこれらのタイプの材料を補助材とも補強材とも呼ぶことがある。種々の異なるエンドエフェクタが補助材の使用によって利益を得ることがあり、いくつかの例示的実施形態では、エンドエフェクタは外科用ステープラであり得る。外科用ステープラと共に使用されるときには、補助材は、ステープラのジョーの間及び/又はその上に配置されても、ジョーに配置されたステープルカートリッジに組み込まれても、又はそうでなければ、ステープルの近位に置かれてもよい。ステープルが配備されると、補助材はステープルと共に処置部に残ってもよく、その結果、多くの利益を提供することができる。いくつかの場合には、材料が、組織、血管、及び種々の他の対象物や身体部位に植え込みされるときに、ステープルによって形成される孔のシールの支援に使用されてもよい。更に、材料は処置部における組織補強の提供に使用されてもよい。また更に、材料は、炎症の減少、細胞成長の促進、又は回復の改善を支援することができる。
【0034】
補助材のいくつかの構成は、合成及び生体材料の両方を含む。両方の材料のタイプの組み合わせは、複合補助材の構造をもたらすことができる。複合補助材は、適切に設計及び/又は選択されれば、合成材料の有利な特徴と、生体材料の有利な特徴とを単一の複合材内で組み合わせることができる。したがって、その他の点では望ましい生体材料が、望ましい機械的(又はその他の)特性を欠くことがあるが、生体材料を、その機械的(又はその他の)特性を提供する合成材料と組み合わせることによって、望ましい両方の特性を有する合成複合材料を提供することが可能である。例えば、複合補助材は、生体材料の利点(手術部位の改良された回復と組織成長など)と、合成材料の望ましい機械的特性(ファスナー構成要素周囲での圧縮性及びシール形成性など)とを組み合わせて設計することができる。
【0035】
外科用ステープリング器具
種々の外科用器具が本明細書で開示される補助材と共に使用され得るが、図1及び図2に、1つ又は2つ以上の補助材との使用に適した外科用ステープラ10の1つの非限定的な例示的実施形態を示す。図示されるように、器具10は、ハンドルアセンブリ12、ハンドルアセンブリ12の遠位端12dから遠位に延在するシャフト14、及びシャフト14の遠位端14dに取り外し可能に結合された取り付け部16、を含む。説明される実施形態は外科用ステープラであるので、取り付け部16の遠位端16dは、ジョー52、54を有するエンドエフェクタ50を含むが、他のタイプのエンドエフェクタを、シャフト14、ハンドルアセンブリ12、及びそれらに付随する構成要素と共に使用してもよい。図示するように、外科用ステープラは、対向する第1の及び第2のジョー52、54を含み、第1の下部ジョー52は、ステープルカートリッジ100を支持するように構成された細長いチャネル56(図4)を含み、第2の上部ジョー54は、下部ジョー52に対向し、アンビルとして作動してステープルカートリッジのステープルの配備を支援するように構成された内面58(図3図4及び図6)を有する。ジョー52、54は、互いに関して移動してそれらの間に置かれた組織又は他の対称物をクランプするように構成され、軸方向駆動アセンブリ80(図11)は、エンドエフェクタ50の少なくとも一部を通って通過し、クランプされた組織にステープルを放出させるように構成されてもよい。種々の実施形態において、ナイフブレード81が軸方向駆動アセンブリ80に接続され、ステープリング処置中に組織を切開してもよい。
【0036】
エンドエフェクタ50と駆動アセンブリ80の作動は、ハンドルアセンブリ12での医師からの入力によって開始されてもよい。ハンドルアセンブリ12は、それに連結されるエンドエフェクタを扱って操作するように設計された多くの異なる構成を有してもよい。図示された実施形態では、ハンドルアセンブリ12は、その中に配置される種々の機械構成要素を伴うピストルタイプのハウジング18を有し、器具の多様な機能を操作する。例えば、ハンドルアセンブリ12は、トリガー20によって始動された発射システムの一部としての機械的構成要素を含んでもよい。トリガー20は、静止ハンドル22に対して、例えば捩りバネによって開放位置に付勢されてもよく、静止ハンドル22に向かうトリガー20の動きが発射システムを始動させ、それによって軸方向駆動アセンブリ80を、エンドエフェクタ50の少なくとも一部を通って通過させ、ステープルカートリッジからその中に配置されたステープルを放出させてもよい。当業者は、ステープルの放出及び/又は組織の切開に使用され得る、機械的又はその他の発射システムの構成要素の種々の構成を認識することになり、したがってその詳細な説明は不要である。
【0037】
ハンドルアセンブリ22に組み込むことが可能な、またそれに接続されたエンドエフェクタの扱いと操作に影響する機能のその他の非限定例として、回転可能ノブ24、関節接合レバー26、及び引込みノブ28がある。図示するように、回転可能ノブ24は、ハンドルアセンブリ12のバレル部30の先端上に装着され、シャフト14(又は取り付け部16)の、ハンドルアセンブリ12に関するシャフト14の長手方向軸L周りの回転を容易にしてもよい。始動レバー26もまた、バレル部30の先端上に、回転可能ノブ24にほぼ隣接して装着されてもよい。レバー26は、バレル30の表面に沿って横から横へと扱われ、エンドエフェクタ50の交互の関節接合を容易にしてもよい。1つ又は2つ以上の引込みノブ28が、バレル部30に沿って移動可能に置かれ、例えば発射システムが発射ストロークを完了した後に、駆動アセンブリ80を引込み位置に戻してもよい。図示するように、引込みノブ28は、バレル部30の後端に向かって近位に移動し、駆動アセンブリ80を含む発射システムの構成要素を引込む。
【0038】
ハンドルアセンブリ22に組み込むことが可能な、それに連結されたエンドエフェクタの扱いと操作に影響する更なるその他の機能の非限定例として、発射ロックアセンブリ、アンチリバースクラッチ機構、及び非常戻りボタンがある。発射ロックアセンブリは、エンドエフェクタが器具に完全に結合されていない場合などの、望まれない時に発射システムが始動されないように構成されてもよい。アンチリバースクラッチ機構は、発射ストロークが部分的に完了しただけで一時的に止まったときなどの、後方に向かう移動が望まれない時に、発射システムの構成要素の後方に向かう移動を妨げるような構成であってもよい。非常戻りボタンは、例えば発射ストロークを完了させると組織の望まれない切開が起こりそうな場合に、発射ストロークが完了する前に、発射システムの構成要素が引込まれることを許容するように構成されてもよい。発射ロックアセンブリ、アンチリバースクラッチ機構、及び非常戻りボタンなどの機構は器具10には明確に示されていないが、当業者は、本開示の趣旨から逸脱することなく、外科用ステープラのハンドルアセンブリ及び/又は他の部分に組み込まれ得るそれぞれの機構のための種々の構成を認識するであろう。更に、ハンドルアセンブリ12に組み込まれ得る機構のいくつかの例示的実施形態は、本出願の他の個所で参照により組み込まれる特許及び特許出願にて提供される。
【0039】
シャフト14は、シャフト14の近位端14pにおいて、ハンドルアセンブリ12の遠位端12dに取り外し可能に結合されてもよく、シャフト14の遠位端14dは、取り付け部16を受容するように構成されてもよい。図示するように、シャフト14は概して円筒形で細長いが、共に使用される他の器具の構成要素の構成、及びその器具がその中で使用される処置のタイプに少なくとも部分的に応じて、任意の数の形状と構成がシャフトに使われてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、1つのシャフトの遠位端が、エンドエフェクタのあるタイプを受容するために特定の構成を有してもよく、一方別のシャフトの遠位端が、エンドエフェクタのある別のタイプを受容するために異なる構成を有してもよい。制御ロッド32(図2)などの発射システムの構成要素は、構成要素がエンドエフェクタ50及び駆動アセンブリ80に到達してその始動を提供できるように、シャフト14内に配置されてもよい。例えば、トリガー20が発射システムを操作すると、制御ロッド32が、シャフト14の少なくとも一部を通過して遠位方向に前進することができ、ジョー52、54を互いに向かって折り畳み、及び/又は駆動アセンブリ80を、エンドエフェクタ50の少なくとも一部を通過させて遠位方向に駆動することができる。
【0040】
シャフト14は、1つ又は2つ以上のセンサ(図示せず)、及びセンサ(図示せず)の操作と使用を支援する電子構成要素などの関連構成要素をも含んでもよい。センサ及び関連する構成要素は、他のパラメータの中から、シャフト14の遠位端14dに接続されたエンドエフェクタのタイプを、医師に伝達するように構成されてもよい。同様に、ハンドルアセンブリ12は、エンドエフェクタのタイプを、及び/又はハンドルアセンブリ12の遠位端12dに接続されたシャフトのタイプを、医師に伝達するように構成された1つ又は2つ以上のセンサ及び関連する構成要素を含んでもよい。したがって、種々のシャフトがハンドルアセンブリ12と交換可能に結合されることがあっても、また異なる構成を有する種々のエンドエフェクタが交換可能に種々のシャフトに結合されることがあっても、センサが、医師に、どのシャフトとエンドエフェクタが使われているかを認知させることを支援できる。更に、センサからの情報は、器具に付随するモニタリング又は制御システムが、ハンドルアセンブリに結合されたシャフトとエンドエフェクタのタイプに基づいて、医師に、どの操作及び測定パラメータが関連するかを認知させることを支援できる。例えば、エンドエフェクタがステープラであれば、駆動アセンブリ80が発射される回数についての情報が関連する場合があり、エンドエフェクタが切開デバイスなどの別のタイプのエンドエフェクタであれば、切開部が移動した距離が関連する場合がある。システムは、検出されたエンドエフェクタに基づく適切な情報を医師に伝えることができる。
【0041】
当業者は、モニタリング及び制御システムの種々の構成が、本明細書で提供される外科用器具と共に使用され得ることを認識するであろう。例えば、エンドエフェクタ50、取り付け部16、シャフト14、及びハンドルアセンブリ12のいずれかに接続されたセンサが、別のシステムパラメータをモニタするように構成されてもよく、モニタリング又は制御システムが、ハンドルアセンブリに接続されたシャフト又は取り付け部のタイプに基づく関連する適切な別のパラメータを、医師に伝達してもよい。センサ及び関連する構成要素、及びモニタリングと制御システムに関する更なる詳細は、本出願の他の個所で参照により組み込まれる特許及び特許出願に見出すことができる。
【0042】
図3に示すように、取り付け部16は、その近位端16pに近位のハウジング部34を、またその遠位端16dにエンドエフェクタ又は工具50を含んでもよい。図示された実施形態では、近位のハウジング部34は、その近位端34p上に、シャフト14を解放可能に係合するための係合突起36を含む。突起36は、軸14の遠位端14dと差し込み式結合を形成する。突起36の他に、任意の数の別の補足的なはめ込み機構が使用されて、取り付け部16のシャフト14との取り外し可能の結合を許容してもよい。
【0043】
近位のハウジング部34の遠位端34dは、それに枢動可能に固定された装着アセンブリ40を含んでもよい。図4に示すように、装着アセンブリ40は、ハウジング部34の長手方向軸に対して垂直な軸周りの、装着アセンブリ40の枢動運動が、エンドエフェクタ50の枢動部材又はピン42の周りの関節接合をもたらすように、エンドエフェクタ50の近位端50pを受容するように構成されてもよい。この枢動運動は、ハンドルアセンブリ28の始動レバー26と、レバー26と装着アセンブリ40との間に配置された構成要素とによって制御されてもよく、レバー26が装着アセンブリ40を、及びそれによってエンドエフェクタ50を、関節接合する動きを可能とする。器具10の発射システムと同じく、当業者は関節接合をもたらす構成要素の種々の構成を、機械的なもの又は他のものであっても認識することになり、したがってその詳細な説明は必要としない。本開示と共に使用されるのに適切な関節接合のための構成要素のいくつかの例示的実施形態は、本出願の他の個所で参照により組み込まれる特許及び特許出願にて提供される。
【0044】
説明される実施形態のエンドエフェクタ50は、カートリッジアセンブリ又はキャリアとして貢献する第1の下部ジョー52と、対向するアンビルとして貢献する第2の上部ジョー54と、を有する外科用ステープリング工具である。図6に示すように、よくアンビル部と呼ばれる第2のジョー54の内面58は、複数のステープル成形キャビティ60と、ジョー54の上面59に固定されて、その間にキャビティ64を画定するカバープレート62と、を含んでもよい。カバープレート62は、外科用ステープラのクランプ中及び発射中、組織の挟み込み回避を支援することができる。キャビティ64は、軸方向駆動アセンブリ80の遠位端80dを受容するような寸法であってもよい。長手方向スロット66は、アンビル部58を貫通して延在し、軸方向駆動アセンブリ80の保持フランジ82の、アンビルキャビティ64内への通過を容易にしてもよい。アンビル部58に形成されたカム表面57を、軸方向駆動アセンブリ80と係合するように配置し、組織99のクランプを容易としてもよい。アンビル部分54上に形成された一対の枢動部材53を、キャリア52内に形成されたスロット51内に配置して、開放位置とクランプ位置との間にアンビル部を誘導してもよい。カム表面57が変形すると、一対の安定化部材が、キャリア52上に形成されたそれぞれの肩部55と係合し、アンビル部54がステープルカートリッジ100に対して軸方向に摺動しないようにしてもよい。別の実施形態では、アンビル部54が実質的に静止のままの、キャリア52とステープルカートリッジ100が開放位置とクランプ位置との間で枢動してもよい。
【0045】
第1のジョー52の細長い支持チャネル56は、図4図5及び図7に示すように、ステープルカートリッジ100を受容する寸法と構成であってもよい。それぞれステープルカートリッジ100及び細長い支持チャネル56に沿って形成された、対応するタブ102及びスロット68は、支持チャネル56内にステープルカートリッジ100を保持するために機能する。ステープルカートリッジ100上に形成された一対の支持柱103を設置してキャリア52の側壁上に置き、ステープルカートリッジ100を支持チャネル56内で更に安定させてもよい。ステープルカートリッジ100は、複数のファスナー106及びプッシャー108を受容するための保持スロット105をも含んでもよい。複数の離間した長手方向スロット107は、ステープルカートリッジ100を貫通して延在し、発射システムの始動スレッド72の直立型カムウェッジ70を収容してもよい(図4及び図8)。中央長手方向スロット109は、ステープルカートリッジ100の長さに沿って延在し、軸方向駆動アセンブリ80に接続されたナイフブレード81の通過を容易にしてもよい。外科用ステープラの操作中、始動スレッド72は、ステープルカートリッジ100の長手方向スロット107を通過して移動し、カムウェッジ70を進行させてプッシャー108と連続的に接触させ、それによってプッシャー108を保持スロット105内で垂直に移動させ、ファスナー106をスロット105からアンビル部54のステープル成形キャビティ60内に付勢する。
【0046】
取り付け部16’の1つの別の実施形態を図9及び図10に示す。取り付け部16’は、その近位端16p’に近位のハウジング部34’を、またその遠位端16d’にエンドエフェクタ又は工具50’を含んでもよい。突起36’が配置され、外科用器具のシャフトに取り付け部16’を取り外し可能に結合してもよく、また装着アセンブリ40’が配置され、エンドエフェクタ又は工具50’を近位のハウジング部34’に取り外し可能及び/又は枢動可能に結合してもよい。エンドエフェクタ50’は、カートリッジアセンブリとして貢献する第1の下部ジョー52’と、アンビル部として貢献する第2の上部ジョー54’と、を含んでもよい。第1のジョー52’は、図3図4及び図6の第1のジョー52と同様の機能の多くを有してもよく、したがって、ステープルカートリッジ100’を収容するような寸法と構成の細長い支持チャネル56’と、ステープルカートリッジ100’のタブ102’に対応するように構成され、チャネル56’内にカートリッジ100’を保持するスロット68’と、を含んでもよい。同様に、カートリッジ100’は、ジョー52’の側壁上に置かれた支持柱103’と、複数のファスナー106’及びプッシャー108’を受容する保持スロット105’と、発射システムの始動スレッド72’の縦型カムウェッジ70’を収容する複数の離間した長手方向スロット107’と、軸方向駆動アセンブリ80’と接続されたナイフブレード81’の通過を容易にする中央長手方向スロット109’と、を含んでもよい。
【0047】
図3図4及び図6の第2のジョー54と同様に、第2のジョー54’は、ジョーの上面に固定されてその間にキャビティを画定するカバープレート62’を含んでもよい。アンビルプレート58’は、ジョー54’の内面として貢献してもよく、軸方向駆動アセンブリ80’の遠位端を収容する長手方向スロット66’と、カートリッジ100’から放出されるステープルを形成する複数のステープル成形ポケット又はキャビティ(図示しない)と、を含んでもよい。しかしながらこの実施形態では、カートリッジ100’を含む下部ジョー52’は、上部ジョー54’に向かって枢動するように構成され、一方上部ジョー54’は、ハンドルアセンブリと関連構成要素による始動が生じても、実質的に静止のままである。
【0048】
エンドエフェクタと、その中に配置されたステープルカートリッジとは、軸方向駆動アセンブリを受容するように構成されている。軸方向駆動アセンブリ80の1つの非限定的な例示的実施形態が、図11に図示されている。図示されるように、駆動ビーム84の遠位端は、ナイフブレード81を支持する垂直の支持柱86、及びステープリング工程中、始動スレッド72の中央部と係合するように構成された当接面88によって画定される。当接面88の基部の底面85は、ステープルカートリッジ100の底に沿って、摺動可能に配置された支持部材87を受容するように構成されてもよい(図4及び図6)。ナイフブレード81は、ステープルカートリッジ100内の中央長手方向スロット109を貫通して始動スレッド72のわずかに背後を移動するように配置され、ステープルされる体内組織の列間に切開を形成してもよい。保持フランジ82は、垂直支持柱86から遠位方向に突出してもよく、その遠位端で円筒カムローラ89を支持してもよい。カムローラ89は、アンビル部58上でカム表面57と係合するような寸法及び構成とされ、アンビル部58を体内組織に対してクランプしてもよい。当業者は、外科用ステープラ又は別の外科用器具と共に使用される駆動アセンブリが、図11に示すものと異なる多くの構成を有することを認識することとなり、それらのいくつかは、本出願の他の個所で参照により組み込まれる特許及び特許出願に記載されている。非限定例として、駆動アセンブリ80は、単一の駆動ビームを、又は任意の別の数の駆動ビームを含んでもよく、駆動ビームの遠位端は、駆動アセンブリがそれを貫通して移動するように構成されたエンドエフェクタ内で使用されるように構成された、任意の数の形状を有してもよい。
【0049】
使用中、外科用ステープラは、カニューレ又は孔に配置され、そして手術部位に配置されてもよい。切開されてステープルされる組織は、外科用ステープラ10のジョー52、54の間に置かれてもよい。回転ノブ24と始動レバー26などのステープラ10の機構が医師によって望みどおりに操作され、ジョー52、54に関する手術部位と組織においてジョー52、54の所望の位置を達成してもよい。適切な位置決めを達成した後に、トリガー20を静止ハンドル22に向けて引いて、発射システムを始動させてもよい。トリガー20は、制御ロッド32が、シャフト14の少なくとも一部を通過して遠位方向に前進し、ジョー52、54のうちの少なくとも1つを他方に向かって折り畳み、その間に配置された組織をクランプし、及び/又は駆動アセンブリ80を、エンドエフェクタ50の少なくとも一部を通過して遠位方向に駆動するように、発射システムの構成要素を作動させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、トリガー20の最初の発射でジョー52、54が組織をクランプすることができ、トリガー20の続く発射で駆動アセンブリ80を、エンドエフェクタ50の少なくとも一部を通過させて遠位に前進させることができる。単一の続く発射が、駆動アセンブリ80を、ステープルカートリッジ100を通過して完全に前進させ、列内のステープルを放出させることができ、又は代替えとして、ハンドルアセンブリ12の構成要素を、駆動アセンブリ80をステープルカートリッジ100を通過して完全に前進させて列内のステープルを放出させるために複数の続く発射が必要であるように構成することができる。任意の数の続く発射が要求されてもよいが、いくつかの例示的実施形態では、2~5回程度の発射で駆動アセンブリ80を、ステープルカートリッジ100を通過して完全に前進させることができる。駆動アセンブリ80がステープルされる組織を切開するナイフ81を含む実施形態では、ナイフ81が組織を切開し、駆動アセンブリがエンドエフェクタ50を、したがってその中に配置されたステープルカートリッジ100を通過して遠位に前進する。別の例示的実施形態では、ハンドルアセンブリ12内に配置され、発射トリガーに接続されたモータが、発射トリガーの起動に反応して自動的に駆動アセンブリ80を始動させることができる。
【0051】
駆動アセンブリ80が、ステープルカートリッジ100を通過して遠位に前進した後には、引込みノブ28を近位に進行させて駆動アセンブリ80を後の元の位置に向けて引き戻してもよい。いくつかの構成では、引込みノブ28は、駆動アセンブリ80が、カートリッジ100を通過して完全に前進する前に、駆動アセンブリ80を引き戻すために使用されてもよい。別の実施形態では、駆動アセンブリ80の引き戻しは、所定の動作の後に自動で行われてもよい。例えば、ひとたび駆動アセンブリ80が遠位に前進してその所望の位置に来たら、それに続くトリガー80の付勢された開放位置への戻りが、駆動アセンブリ80を自動的に引き戻すこともできる。引込みノブ28と関連構成要素に代わって、モータと関連要素が、駆動アセンブリ80を引き戻すために使用されてもよい。更に、既に説明したように、外科用ステープラ10の稼働中には、発射ロック機構、アンチリバースクラッチ機構、及び非常戻りボタンなどの他の機能に依存できることが当業者に理解されることになる。
【0052】
外科用ステープリング器具10の説明された実施形態は、多くの異なる構成及び関連する使用方法のうちの1つを提供し、それは本明細書で提案する開示と共に使用され得る。本開示にしたがって使用することができる外科用ステープラ、その構成要素、及びその関連する使用方法の追加の例示的実施形態は、米国特許出願公開第2012/0083835号明細書、及び米国特許出願公開第2013/0161374号明細書にて提供されるそれらの装置、構成要素、及び方法を含み、それぞれの出願の全文を参照により本明細書に組み込むものとする。
【0053】
植え込み可能な材料
外科用器具の構成に関わらず、本開示は、器具操作とともに植え込み可能な材料の使用を提供し、それらは例えば生体材料及び/又は合成材料、集合的に「補助材」である。図12及び図13に示すように、エンドエフェクタ50は、第1及び第2のジョー部材52、54の中間に位置する少なくとも1つの補助材200、200’を含んでもよく、そしてその補助材は支持チャネル56及び/又はアンビル部58のうちの1つに解放可能に保持されてもよい。図示した実施形態では、解放可能な保持は、保持部材202、202’によって提供され、その保持部材について以下に詳細を説明する。少なくとも1つの実施形態では、組織が第1と第2のジョー部材52、54の間にクランプされると、補助材200、200’の表面が組織と接触するように構成されてもよい。このような実施形態では、補助材が使用され、組織にわたって圧縮クランプ力を分散させ、組織から余分な水分を除去し、及び/又はステープルの取得を向上させることが可能である。種々の実施形態において、1つ又は2つ以上の補助材を、エンドエフェクタ50内に配置してもよい。少なくとも1つの実施形態では、1つの補助材200をステープルカートリッジ100に取り付けることができ(図12)、1つの補助材200’をアンビル部58(図13)に取り付けることができる。少なくとも1つの別の実施形態では、2つの補助材200を支持チャネル56に配置することができ、1つの補強材200’を、例えばアンビル部58に配置できる。任意の数の補助材をエンドエフェクタ50内に置いてもよい。
【0054】
本明細書で提供される開示と共に使用される補助材は、任意の数の構成と特性を有してもよい。概して補助材は、補助材が回復過程の間に吸収、分解、及び/又は破壊されるように、例えば、生体吸収性材料、生体分解性材料、及び/又は、その他の方法で破壊され得る材料から形成されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、補助材は、例えば、時間と共に放出され、組織の治療を補助するように構成され得る治療薬を含んでもよい。更なる種々の実施形態において、補助材は、例えば、非吸収性、及び/又は破壊され得ない材料を含んでもよい。同様に、接続又は保持部材は、体内で接続又は保持部材が吸収、分解、及び/又は破壊され得るように、少なくとも、生体吸収性材料、生体分解性材料、及び破壊され得る材料のうちの1つから、少なくとも部分的に形成されてもよい。様々な実施形態において、接続又は保持部材は、例えば、時間と共に放出され、組織の治療を補助するように構成され得る治療薬を含んでもよい。更なる種々の実施形態において、接続又は保持部材は、例えばプラスチックなどの、非吸収性、及び/又は破壊され得ない材料を含んでもよい。
【0055】
より具体的には、本明細書で提供される開示と共に使用され得る合成材料のいくつかの例示的非限定例としては、商標PDS(登録商標)のもとに販売されるポリジオキサノンフィルム又はポリグリセリンセバシン酸(PGS)フィルムなどの生分解性合成吸収性ポリマー、若しくは、PGA(商標Vicrylのもとに販売されるポリグリコール酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、PLA又はPLLA(ポリ乳酸)、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、PGCL(商標Monocrylのもとに販売されるポリグレカプロン25)、PANACRYL(Ethicon、Inc.、Somerville、N.J.)、ポリグラクチン910、ポリグリコネート、PGA/TMC(商標Biosynのもとに販売されるポリグリコール酸-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、又はPGA、PCL、PLA、PDSモノマーの共重合の混合、から形成される他の生分解性フィルム、が挙げられる。使用中、合成材料のポリマーの連鎖を水分が攻撃するので、合成材料は水にさらされることで破壊され得る。結果として、機械的強度は消滅する可能性があり、材料の構造は柔らかい又は壊れた足場のように破壊され得る。材料が炭水化物と酸成分へと破壊されるように、更なる破壊が起こると、患者の体が破壊された材料を代謝して排出することができる。
【0056】
本明細書で提供される開示と共に使用され得る生体由来材料のいくつかの例示的非限定例としては、乏血小板血漿(PPP)、多血小板血漿(PRP)、でんぷん、キトサン、アルギン酸、フィブリン、トロンビン、ポリサッカライド、セルロース、コラーゲン、ウシコラーゲン、ウシ心膜、ゼラチンーレゾルシンーホルマリン接着剤、酸化セルロース、ムラサキ貝系接着剤、ポリ(アミノ酸)、アガロース、ポリエーテルエーテルケトン、アミロース、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、ホエータンパク質、セルロースガム、スターチ、ゼラチン、絹、又は生体材料との混合に適した、及び傷又は欠陥部に用いられるのに適した他の材料であって、材料の組み合わせ、あるいは、本明細書で提供される開示を考えると当業者には明白である任意の材料を含むもの、が挙げられる。生体材料は多くの原料から得られ、その原料には、生体材料が植え込みされる患者からのもの、生体材料が植え込みされる患者ではないヒトからのもの、及び他の動物からのもの、が含まれる。
【0057】
本明細書で提供される開示と共に使用され得る合成又はポリマー材料、及び生体材料に付属する追加の開示は、米国特許出願公開第2012/0080335号明細書、米国特許出願公開第2012/0083835号明細書、「低圧環境を画定するカプセルを含む組織厚補正体Tissue Thickness Compensator Comprising Capsules Defining Low Pressure Environment」の名称を有し、2012年3月28日出願の米国特許出願第13/433,115号明細書、「複数の材料からなる組織厚補正体Tissue Thickness Compensator Comprised of Plurality of Materials」の名称を有し、2012年3月28日出願の米国特許出願第13/433,118号明細書、「改良された可視性を有する組織厚補正体Tissue thickness Compensator Having Improved Visibility」の名称を有し、2012年6月26日出願の米国特許出願第13/532,825号明細書、「組織付加機能を伴う電気外科用エンドエフェクタElectrosurgical End Effector with Tissue Tacking Feature」の名称を有し、2012年12月11日出願の米国特許出願第13/710,931号明細書、「外科用ステープリング装置の複数厚植え込み可能層Multiple Thickness Implantable Layers for Surgical Stapling Devices」の名称を有し、2013年2月8日出願の米国特許出願第13/763,192号明細書、に見出すことができ、これらのそれぞれの全文を参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0058】
使用中、補助材は装置及び/又はステープルカートリッジ上にあらかじめ積載されていてもよく、一方別の例では、補助材は別に包装されてもよい。補助材が装置及び/又はステープルカートリッジ上にあらかじめ積載されている場合には、ステープル工程は当業者に知られているように実行されてもよい。例えば、いくつかの例では、装置の発射が補助材を装置及び/又はステープルカートリッジから分離するのに十分であり得て、それによって医師による更なる行為は不要である。別の場合では、補助材を装置及び/又はステープルカートリッジと連携するいかなる残留する接続又は保持部材も、手術部位から装置を取り除く前に、取り除くことができ、それによって補助材が手術部位に残る。補助材が別に包装されている場合には、材料は、装置の発射前にエンドエフェクタの構成要素及びステープルカートリッジのうちの少なくとも1つと解放可能に結合されてもよい。補助材は冷蔵されてもよく、したがって冷蔵庫及び関連する包装から取り出され、次に、本明細書に記述するように、又は当業者に知られているように、接続又は保持部材を使用して装置と結合される。次に当業者に知られているようにステープリング工程が実施されてもよく、必要により上述したように補助材が装置から分離されてもよい。
【0059】
保持部材
接続又は保持部材は、1つ又は2つ以上の補助材を、少なくとも一時的にエンドエフェクタ及び/又はステープルカートリッジに固定するために使われてもよい。これらの保持部材は、1つ又は2つ以上の縫合糸、接着材、ステープル、ブラケット、スナップオン、若しくは他の結合又ははめ込み要素などの種々の形状及び構成であってもよい。例えば、保持部材は、補助材の1つ又は2つ以上の側部及び/又は端部に近接して配置されてもよく、それによって、エンドエフェクタがトロカールを通過して挿入されるとき、又は組織と係合されるとき、補助材のステープルカートリッジ及び/又はアンビル面からの剥がれ落ち防止を支援することができる。更に別の実施形態では、保持部材は、シアノアクリレートなどの、補助材をエンドエフェクタに解放可能に保持するのに適した接着剤と共に、又はその接着剤の形態で、使用されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、接着剤は、保持部材が補助材、ステープルカートリッジ及び/又はアンビル部に係合される前に、保持部材に塗布されてもよい。一般に、ひとたび発射が完了すると、保持部材は補助材及び/又はエンドエフェクタから切り離されるので、その結果、エンドエフェクタが取り除かれると、補助材が手術部位に残ることができる。保持部材のいくつかの例示的非限定的実施形態が本明細書で図12図15に関して説明される。
【0060】
図12は、補助材200に接続された接続又は保持部材202の1つの例示的実施形態を示し、この接続又は保持部材は、材料200をエンドエフェクタ50の下部ジョー52に関しての一時的な位置に固定する。図示するように、補助材200は下部ジョー52の細長いチャネル56内に位置するステープルカートリッジ100を覆って配置され、保持部材202は、補助材を貫通して延在する。この実施形態では、保持部材202は、補助材200の複数の位置を貫通して縫われた単一の縫合糸の形態であり、又は保持部材は補助材200上の1つ又は2つ以上の位置に配置された複数の縫合糸であってもよい。図示するように、縫合糸は、補助材200の周辺部周囲の位置に配置され、また補助材200に形成された中央長手方向チャネル201に隣接する位置にも配置される。チャネル201は、ナイフが補助材200を通して通過するのを容易にし、材料200を1つ又は2つ以上の離れたストリップへと切断する。いくつかの実施形態では、例えば保持部材202が、補助材200の複数の位置に通された単一の縫合糸である場合には、下部ジョー52を貫通して通過するナイフが、保持部材202を1つ又は2つ以上の位置で切断することができ、それによって、保持部材202が補助材200から離れて手術部位から取り除かれることを許容し、一方補助材200は、カートリッジ100から放出された1つ又は2つ以上のステープルによって手術部位に保持されたままとなる。
【0061】
図13は、接続又は保持部材202’が補助材200’に接続され、材料200’をエンドエフェクタ50の一時的な位置に固定する別の実施形態を示す。保持部材202’は、図12の保持部材202と同様の構成を有するが、この実施形態では、材料をアンビルに固定するのに使用される。
【0062】
図14は、補助材200’’を、上部ジョー54及び下部ジョー52のうちの少なくとも1つに、解放可能に保持するために使用される接続又は保持部材202’’の別の非限定的実施形態を示す。この実施形態では、保持部材202’’は、補助材200’’の遠位端200d’’を貫通して延在する単一縫合糸であり、上部ジョー54の近位端54pに結合されている。保持部材202’’の終端202t’’は、保持部材202’’をジョー52、54に関して移動させるために使用されてもよい。図14に示す伸びた位置では、エンドエフェクタ50が手術部位に挿入されると、保持部材202’’は、補助材200’’を所定の場所に保持することができる。その後、エンドエフェクタ50のジョー52、54は、例えば、組織上に閉じることができ、ステープルカートリッジ100からのステープルは、補助材200’’を貫通して、組織内に配備されることが可能である。保持部材202’’を補助材200’’から操作可能に係合離脱させることができるように、保持部材202’’を収縮位置に移動させることができる。あるいは、保持部材202’’は、ステープルが配備される前に収縮させることができる。いずれの場合にも、上記の結果として、エンドエフェクタ50を開き、補助材200’’及び組織を残して手術部位から引き出すことができる。
【0063】
図15は、補助材200’’の位置をエンドエフェクタに固定する接続又は保持部材202’’の更に別の非限定的実施形態を示す。具体的には、補助材200’’及び保持部材202’’は、図9及び図10のエンドエフェクタ50’と共に使用される。この実施形態では、保持部材202’’は、第1の下部ジョー52’の近位及び遠位端52p’、52d’で、補助材200’’を第1の下部ジョー52’に結びつけるのに使われる縫合糸の形態である。同様に、図9及び図10に示すように、補助材200’’は、第2の上部ジョー54’の近位端及び遠位端54p’、54d’で、第2の上部ジョー54’に固定されてもよい。必要に応じて、凹部が、ジョー52’、54’の一方又は両方に、並びに、補助材200’’’の一方又は両方に形成されてもよく、その凹部は、保持部材202’’’が外部の物体によって意図せずに切断されるのを防止することができる。使用中、駆動アセンブリ80’上のナイフブレード81’は、エンドエフェクタ50’を貫通して通過して保持部材202’’’を切開し、補助材200’’’を放出することができる。
【0064】
当業者は、補助材が、エンドエフェクタに関して一時的に、それによって保持され得る種々の別の方法を認識するであろう。種々の実施形態において、接続又は保持部材は、エンドエフェクタから解放され、1つの補助材と共に配備され得るように構成されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、保持部材のヘッド部は、本体部分が依然としてエンドエフェクタに取り付けられた状態で、ヘッド部を補助材と共に配備し得るように、保持部材の本体部分から分離されるように構成されてもよい。別の種々の実施形態では、補助材をエンドエフェクタから切り離すとき、保持部材の全体は、エンドエフェクタに係合されたままとすることができる。
【0065】
シーリング特性を伴う組織補強材料
本明細書で説明される組織補強材料は、補助材を含む種々の異なる材料において具体化され得る。多くの場合、補助材は合成材料又は生体材料のどちらかであってもよいが、一方種々の実施形態では、補助材は、合成材料と生体材料の両方を含む(すなわちそれは複合補助材である)。組み合わせの結果は、単一の複合材料中に両タイプの材料からの有益な機能を有利に示すことができる。例えば、複合補助材は、生体材料の利点(改良された回復と組織成長など)と、合成材料の望ましい機械的特性(弾性又は圧縮提供性など)とを組み合わせて設計することができる。種々の実施形態において、合成材料は生体材料に構造と支持を提供することもでき(例えば、繊維性生体材料に強度及び/又はせん断抵抗を付与する)、その一方で、生体材料が、なおも手術部位に接触することを許容し、そして回復を支援及び/又は促進する。更に、複合補助材は、炎症の減少、細胞成長の促進、及び/又はその他の方法での回復の改善、を支援するように構成され得る。種々の実施形態において、補助材は、生体植え込み可能及び/又は生体吸収可能であってもよい。
【0066】
図16図16Cは、ループ構造配列中の複数の繊維を有する例示的組織補強材料のいくつかの図面を示す。
【0067】
図16及び図16Aは、本開示に従った1つの例示的組織補強材料1601を示す。ここでは、組織補強材料1601が、ステープルの配備の際に組織へ送達されるために、アンビル又は上部ジョー1602によって一部が示される外科用ステープラエンドエフェクタ(例えば、図1及び図10参照)の一部の上に解放可能に保持されている。組織補強材料1601は、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素(例えば外科用ステープル)の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する複数の繊維1603を含む。当業者は、このような圧縮及びシール特性が、それらがステープルレッグ周囲からの液体(例えば血液)の漏出を防ぐことを可能とするために有用であり得ると理解するであろう。この例では、配列は、拡大した繊維1603’に更に詳細に示される繊維のループ構造である。繊維1603、1603’は、繊維1603、1603’の編み込みによるループ構造を形成している。
【0068】
図16Bは、ループ構造中の繊維1604の単一の撚糸を示す。この例では、繊維1604は、液体又はゲルに接触されて乾燥され、繊維1604の周囲と繊維1604中のループ間に延在する膜1605を形成した。図16Cは、図16Bの平面AAに沿った断面AAを示し、そこでは繊維1604は膜1605に埋め込まれている。繊維1604は、別の繊維又は同じ繊維1604の別の部分と相互に絡み合い、又は織り込まれて所望のシール特性を達成してもよい。
【0069】
図16及び図16Aは、繊維1603、1603’の特定のループ構造を示し、図16B及び図16Cは、特定の単一の撚糸を示すが、当業者は、複数の繊維が、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する多くの代替えの構造として配列可能である(そしてそれは、組織補強材料の別の特徴又は構成要素の機能でもあり得る)ことを理解するであろう。代替えの構造としては、織組織、スムース編み及びインターコネクト編みパターン、並びに異なるループ構造がある。例示的パターンは、2つ以上のループ又は織組織を含んでもよい。同様に、パターンは2つ以上の繊維のタイプを含んでもよい。配列は、ファスナー構成要素の貫通に反応して、材料が伸びて元に戻ることを許容するように構成されてもよい。同様に、複数の繊維は弾性であってもよい。種々の実施形態において、配列は、合成材料の望ましい機械的特性を伴う生体材料(例えば織り生体材料)を有利に提供してもよい。
【0070】
図17A及び図17Bは、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素(例えば外科用ステープル)の周囲を圧縮してシールするように構成された例示的繊維配列を示す。これらの例では、織り材料1700、1700’は、相互に絡み合ったループ構造配列を有する複数の繊維1701、1701’を含む。破線の円1702、1702’は、ファスナー構成要素(例えば外科用ステープル)がそれを貫通して挿入されることになる織り材料1700、1700’の領域を表す。当業者は、織り材料1700、1700’が実質的に均一の配列を有するが、異なるパターン(例えば、それを貫通してファスナー構成要素が挿入されることになる領域のより密な織り)を有する代替えの材料は、本開示によって包含されることを認識するであろう。図示されるように、ステープルレッグ1703、1703’などのファスナー構成要素が、織り材料1700、1700’を貫通して挿入されると、ステープルレグ1703、1703’に隣接する領域1704、1704’の織組織は、例えば締め付け及び/又は膨張によってたわみ、それによってステープルレッグ1703、1703’の周囲をシールする。
【0071】
図17A及び図17Bは、異なるタイプの繊維が(例えば、異なるタイプの配列に加えて)、所望の機械的特性を達成するために使用されてもよいことも示す。例えば、図17Aは、より太い織り込んだ繊維1701’を示す図17Bと比べてより細い糸条の繊維1701を示す。その結果、図17Bのステープルレッグ1703’に隣接する領域1704’は、図17Aのステープルレッグ1703に隣接する領域1704より大きな締め付け及び/又は膨張を示している。
【0072】
当業者は、図17A及び図17Bに示される繊維配列は非限定例であること、及び異なる繊維タイプと組み合わせを有する代替えの材料も本開示によって包含されること、を認識するであろう。種々の実施形態において、複数の繊維は生体材料を含む。更に、種々の実施形態において、複数の繊維は合成材料を含む。いくつかの実施形態では、複数の繊維は生体材料と合成材料の両方を含む。繊維は織繊維、紡糸繊維、キャスト繊維、又は押出し繊維であってもよい。
【0073】
図18は、垂直方向及び半径方向のバネ性を有する組織補強材料1801の別の例示的実施形態1800を示し、その組織補強材料は、材料1801及び組織1803(例えば、手術部位の生体組織)を貫通して挿入されたファスナー1802の周囲をシールしている。図18に示すように、組織補強材料1801は、外科用ステープラ(図示せず)からのステープル1802の配備によって、外科用ステープラのエンドエフェクタ(図示せず)の一部から解放されて組織1803に送達されている。図示するように、組織補強材料1801は、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素1802の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する複数の繊維1804を含む。
【0074】
ファスナー構成要素周囲のループ構造の変形、締め付け及び/又は膨張によって、ファスナー構成要素の周囲を大きくシールする図16A~C及び図17A~Bに示した繊維1603、1603’、1604、1701、1701’のループ構造とは反対に、図18に示す複数の繊維1804は、垂直方向バネ性1805及び半径方向バネ性1806を有する3次元ネットワークパターンを有し、ファスナー構成要素1802上に繊維1804によって及ぼされる弾性力及び/又はバネ力によってファスナー構成要素1802の周囲を大きくシールする。複数の繊維1804の垂直方向バネ性1805及び半径方向バネ性1806は、繊維の配列、繊維材料、又はそれらの組み合わせの結果であり得る。当業者は、ファスナー構成要素上に弾性力及び/又はバネ力を及ぼすことができる繊維の別の配列が可能であり、図18の例示的実施形態に限定されないことを理解するであろう。異なる材料及び/又は配列の繊維が使用されてバネ性を提供してもよい。例えば、バネ性は、ポリグラクチン(polygractin)910(Ethicon、Inc.製造のVICRYL(商標)として入手可)のような比較的固い又は弾力のある材料から作られる垂直立ち上がりループを使用して組織補強材料中で達成することができ、また組織補強材料の残余は、生体又はポリグレカプローネ(poliglecaprone)25(Ethicon、Inc.製造のMONOCRYL(商標)として入手可)のような比較的軟らかい材料から作られてもよい。それぞれの立ち上がりループのベースを、編み込み基材に結び付け、アンカーと、したがってより大きな縦方向力又はバネ性を提供してもよい。1つの実施形態では、立ち上がり繊維は、返しパターンに編み込んでもよく、そこでは1つおきの繊維が反対の角である(例えば、垂直からプラス及びマイナス30度)。このようなパターンでは、交互の繊維が互いのオフ角をキャンセルし、それが繊維を横たえることを許容し、したがって上部編み込み構造を、垂直方向のバネ性を提供するトラス構成の下構造から支持してもよい。
【0075】
繊維は、その他の物理特性に基づいて選択されてもよい。例えば、種々の実施形態において、材料は、ファスナー構成要素がそれを貫通して挿入されると、ファスナー構成要素の周囲で膨張し、ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する。種々の実施形態において、材料は、第2の材料が湿潤すると、ファスナー構成要素の周囲で膨張し、ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する。いくつかの実施形態では、材料は、ファスナー構成要素がそれを貫通して挿入され、そして材料が湿潤すると、ファスナー構成要素の周囲で膨張し、ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する。更に、種々の実施形態において、材料は、ファスナー構成要素がそれを貫通して挿入されると、ファスナー構成要素に係合し、ファスナー構成要素に隣接する材料及び組織の、ファスナー構成要素に対する動きを静める。繊維とその配列は、柔軟性、伸び及び回復性、及び/又は1つ又は2つ以上の生物学的活性薬剤(例えば薬物)の解放性又は溶離性などの他の特性を伴う組織補強材料をも提供することができる。繊維は、生体繊維でもよく、又は生体繊維を含んでもよい。当業者は、材料の特性(例えばシールに関する)が、繊維に加えて材料の成分によって影響され得ることを認識するであろう。
【0076】
種々の実施形態において、組織補強材料は生体材料を含む。同様に、組織補強材料は、合成材料を含んでもよい。種々の実施形態において、組織補強材料は単一の層内に形成されてもよい。例えば、図16に示す実施形態のように、材料は複数の繊維を含む単一の層を有してもよい。単一の層は、生体材料と複数の繊維を含んでもよい。種々の実施形態において、組織補強材料は、例えば図23図23C及び図24A図24Cに示すような2つ以上の層内に形成されてもよい。例えば、材料は、生体材料を含む第1の層と、複数の繊維を含む第2の層と、を有してもよい。種々の実施形態において、材料は、生体材料と合成材料を含む複合補助材であってもよい。生体材料は、もし存在するなら、繊維の形態、又は膜のような別の形態、であってもよいことが理解される。
【0077】
組織補強材料は、基本的に、所望の機械的(例えばシール)及び生物学的(例えば、生体植え込み性及び生体吸収性)特性を有する任意の生体及び/又は合成材料から作られてもよい。代表的な例は、上述した「植え込み可能材料」セクションにて説明されている。当業者は、組織補強材料(及び/又はその層)の形状が、説明した例に示される平行6面体又は菱面体のような形状に限定されないことを理解するであろう。種々の実施形態において、複合補助材(及びその層)は、必ずしも図16及び図18に示すような対称でなくてもよく、例えば厚みが変動しても、又は不規則形状部を有してもよい。
【0078】
既に説明したように、図16は、ステープルカートリッジアセンブリ1600に関連し、外科用ステープラと共に使用される組織補強材料1601を示し、その組織補強材料は、本開示によって包含される別の実施形態である。アセンブリ1600は、組織補強材料1601、及びステープルを中に収容するように構成された複数のステープルキャビティを有するカートリッジ本体を含む(例えば図4及び図10参照)。上述したように、組織補強材料1601は、この例ではアンビル又は上部ジョー1602によって一部が示される外科用ステープラエンドエフェクタ(例えば図1及び図10参照)の一部の上に、ステープルの配備の際に組織へ送達されるために、解放可能に保持されている。組織補強材料1601は、それを貫通して挿入されるファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列(この例ではループ構造)を有する複数の繊維1603を含む。
【0079】
ここでは、カートリッジ本体及びステープルは、外科用器具のエンドエフェクタの下部ジョーによってケースに収納されている(例えば図1及び図10参照)。組織補強材料1601は、アンビル又は上部ジョー1602上に解放可能に保持され、カートリッジ本体からのステープルの配備によって組織に送達されるように構成されている(以下に説明される)。当業者に理解されるように、図16の例以外の多数の構成が可能である。例えば、組織補強材料は、ステープルカートリッジ上、ステープルカートリッジ及びエンドエフェクタの上部ジョーの両方の上に、エンドエフェクタの下部ジョーの上に、又はエンドエフェクタの上部及び下部ジョーの両方の上に(例えば図24A~C参照)、解放可能に保持されてもよい。
【0080】
組織補強材料は、保持部材によって外科用ステープラの一部の上に解放可能に保持されてもよく、その保持部材は、1つ又は2つ以上の縫合糸、接着材、ステープル、ブラケット、スナップオン、若しくは他の結合又ははめ込み要素、及び類似物などの種々の形態と構成とされてもよい。保持部材は上記「保持部材」セクションにて更なる詳細が説明されている。種々の実施形態において、アセンブリは、材料をカートリッジ本体に結合するように構成された少なくとも1つの保持部材を含む。縫合糸を含み得る少なくとも1つの保持部材は、カートリッジ本体の外縁に、並びに生体組織膜及び合成基材層のうちの少なくとも1つの外縁に、結合されてもよい。
【0081】
別の態様と実施形態では、本開示は、外科用ステープラエンドエフェクタの一部の上に解放可能に保持され、ステープルの配備に伴って組織に送達される組織補強材料をももたらし、そこでは組織補強材料が、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列(繊維のループ構造とは異なる)を有する。図19は、そのような1つの代替えのエンドエフェクタ要素1900の斜視図を示し、その中では、組織補強材料1901は、コラーゲン母材を含む。図16の実施形態のように、図19の組織補強材料1901は、エンドエフェクタの上部ジョー1902上に解放可能に保持される。しかしながら、当業者には理解されるように、図19の例以外の多数の構成が可能である。例えば、組織補強材料は、ステープルカートリッジ上、ステープルカートリッジ及びエンドエフェクタの上部ジョーの両方の上に、エンドエフェクタの下部ジョーの上に、又はエンドエフェクタの上部及び下部ジョーの両方の上に(例えば図24A~C参照)、解放可能に保持されてもよい。
【0082】
図19に示すように、組織補強材料1901は、水成コラーゲンを成形し、次に凝固することで形成されるコラーゲン母材を含む。例えば、コラーゲンの精製と純化工程が、水成状態のコラーゲンを浮遊させることができる。この状態で、脂肪及びその他の不純物が取り除かれ、水成コラーゲンが成形型に注がれてもよい。図19及び図20の詳細断面図に示すように、成形型(図示せず)は、母材の面1905上の基本的アンビルポケット形状1903を有する固体コラーゲン母材1901の形成を可能にする逆ポケットを有し、そのアンビルポケット形状が、エンドエフェクタの上部ジョー1902上の対応するポケット1904にはまり込む。成形型の温度と表面条件を、これらの逆ポケット形状1903周囲の密度変動を生成するように調整してもよく、いったん凝固すると、逆ポケット形状1903が、ステープルカートリッジのアンビル又は上部ジョー1902上の対応するポケット1904内に閉じ込められてもよい。代替えとして、類似の方法が、薄いフィルム内で準接着剤として作用し得る65/35PGA/PCLの薄いフィルムから組織補強材料を形成するために使われてもよい。発射の後にコラーゲン上に残るPGA/PCLの量は最小となり得る。
【0083】
組織補強材料1901又は類似の材料が、クランピング中に(すなわち、エンドエフェクタの上部ジョー1902と下部ジョー1908との間にあって)組織1906に向けて圧縮されると、主要コラーゲン本体1901及びポケット1903が押しつぶされてもよく、ステープル1907(例えばステープルカートリッジ1909からの)によって容易に貫通され得るが、ステープル形成領域(例えばポケット1903)から組織1906を除外し得る層を生成し、それによって、組織(例えば血管)1906に対するステープルダメージと、それゆえにステープル後の出血を最小化することができる。
【0084】
図21は、組織補強材料が配備されたセクション2100を示し、そこでは、図16図20に示した材料と方法を、液体の存在によって膨張する物質(例えば、ヒドロゲル、酸化再生セルロース(ORC)、アルギン酸、及び類似物)の含有によって変更し得る。膨張は、組織2102と組織補強材料2103とを貫通して挿入されたステープルレッグ2101周囲にシールと、組織ダメージの最小化とを支援することが可能である。当業者は、このような膨張材料が、本明細書で開示されて説明された他の機能と特性を含んでも、若しくはそれらと組み合わされてもよいことを理解するであろう。
【0085】
図22は、手術部位2200に植え込みされた例示的複合補助組織補強材料2201を示す。材料2201などの複合補助材は、生体材料と合成材料の利点を有利に組み合わせることができる。例えば、生体補助材は炎症反応の生成をより少なくすることができ(すなわち合成母材に比べて)、一方では、回復を容易にする生体成長因子、化合物質、及び/又はホルモンを保持している。しかしながらミクロのレベルでは、生体母材は、湿潤状態でも乾燥状態でも、十分な機械的シールを提供することができない繊維構造であり得る(例えば、大血管切断などへの適用の要求に対して)。材料2201などの複合補助材は、例えば漏出又は出血(例えば切り離された又はステープルされた血管の)を減少させることができ、その理由は、複合補助材がポケットステープル形成領域の外に組織を保つ機械的強度を有することができ(例えば、図20に関しての説明のように)、またステープルレッグ周囲を締め付けて、ステープルレッグによって作られた孔を通してステープルレッグを上る出血を制限できるために、例えば漏出又は出血を減少させることができるためである。
【0086】
複合補助材2201の機械的特性を説明するために、組織補強材料を欠く第1のステープル領域2202と、複合補助材2201を有する第2のステープル領域2203と、を伴う手術部位2200を示す。第1のステープル領域2202では、第1のステープル2204が、組織2205を貫通して挿入され、したがって組織2205を貫通して孔2206を生成している。その結果、ステープル2204のレッグを通して、及びステープル2204のレッグによって作られた孔2206を通して出血2207が起こり得る。
【0087】
反対に、第2のステープル領域2203では、第2のステープル2208が、組織2205と複合補助材2201を貫通して挿入されている。図示するように、複合補助材2201は、純粋な生体繊維性母材より薄く、弾力があり、より弾性であり得る生体外側組織接触層2209を含む。複合補助材2201は、必ずしも強度、スプリングバック性、又は他の全般的機械的理由のためではなく、むしろミクロなステープル境界面の理由のために選択される合成の第2の層2210も含む。生体層2209の利点を維持するために、薄い合成層2210は、組織2205と生体層2209との間の接触のその境界面を最小化するメッシュ、又は変動厚み層を含む。合成層2210は、第2のステープル2208のレッグ周囲にシールを形成し、そして血液2211が、第2のステープル2208のレッグによって作られた孔2212を通過して第2のステープル2208のレッグを上って漏出することを防止又は軽減する。種々の実施形態において、複合補助材のシール特性は、ループ構造の織り、バネ又は圧縮力、膨張、又は類似のもの、による結果であり得る。当業者は、代替えの複合材料及び複合補助材もまた、本開示にしたがって使用され得ることを理解するであろう。例えば、合成層2210は、組織補強材料に所望の機械的特性を提供することによって、生体材料の代用になる可能性がある。
【0088】
図23A~Cは、代替えの例示的組織補強材料2300の異なる斜視図である。既に説明して例示した組織補強材料のように、組織補強材料2300は、ステープルの配備の際に組織へ送達されるために、外科用ステープラのエンドエフェクタの一部の上に解放可能に保持されてもよく、またそれを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲をシールしてもよい。同様に、組織補強材料2300は、ステープルカートリッジアセンブリの一部であってもよい。
【0089】
図23Aを参照すると、組織補強材料2300は、上層2301、底層2302、及び外科用接着剤をその中に有する1つ又は2つ以上の補強材2303を含む。補強材2303は、例えば、ステープルを中に収容するように構成された複数のステープルキャビティを有するカートリッジ本体を補完する配列パターンであってもよい。すなわち、補強材2303は、ステープルキャビティと一列に並べられてもよく、その結果、ステープルは補強材を貫通して孔を開けて配備され、そして外科用接着剤がステープルと孔の周囲をシールする。補強材は図23の実施形態で使用されるが、別の配列を外科用接着剤の提供のために使用してもよい。例えば、外科用接着剤は、上層と底層との間に、又は層内に均一に挟まれてもよく、若しくは、上層又は底層の表面上のカプセル(例えば、図24A~Cと類似して)に配置されてもよい。図23に示す例示的材料は外科用接着剤を使用するが、適切な特性を有する種々の別の材料/液体/ゲルを追加で、又は代替えとして使用してもよいことが理解される。
【0090】
図23Bは、補強材の上層2304、補強材の底層2305、及びその間に配置された外科用接着剤2306を含む組織補強材料2300の、補強材2303での側面図を示す。図23Bは、外科用ステープルのレッグ2307を示し、それは配備されるべく、及び補強材2303を穿孔すべく配置されている。外科用接着剤の液体/ゲル特性は、補強材の上層2304と補強材の底層2305との間にシールされても保存され得る。同様に、上層及び底層2304、2305は、ステープリングの後に、外科用接着剤が流動して所望のシール効果を達成することを許容することができる。図23Cは、補強材2303を穿刺するステープル2308の配備後の組織補強材料2300の等角図である。図示するように、外科用接着剤2306は、ステープル2308の周囲と補強材の孔をシールする。
【0091】
上層2301及び底層2302は、本明細書で開示された又は説明された、生体及び合成層、吸収性ポリマー/ポリマー混合物、ゼラチン、膜、及び母材のうちいずれかを、また補助材及び複合補助材を、本質的に含んでもよい。種々の実施形態において、外科用接着剤は、ファスナー構成要素(例えばステープルレッグ)の周囲をシールする機械的構造としての作用を提供し、また手術部位での漏出(例えば、血液、空気、消化管液、及び類似物の)を防止する。更に、組織補強材料2300は、手術部位の組織に補強及び/又は追加の強度を提供してもよい。
【0092】
上層及び/又は底層のための適切な材料の例として、非限定的に、PLLA、PLGA、PCL、PGA、TMC、及び関連する共重合がある。適切な材料/液体/ゲル又は外科用接着剤の例として、非限定的に、生物学的活性体(例えば、フリーズドライフィブリン/トロンビンパウダー、短繊維ビクリル単繊維上のフリーズドライフィブリン/トロンビン、及び/又はORC母材)、不活性活性体(例えば、PCL/PGA液中のORC繊維)、粘性吸収性体(例えば、65/35PCL/PGA、50/50PCL/PGA、50/50PLLA/PCL、及び類似物)、粘性ウレタンゲル、及びゼラチン状吸収体(例えば、共重合体又は異性体の混合物)がある。適切なフィルム材料の例としては、非限定的に、PLLA、PLGA、PCL、PGA、TMC、関連する共重合、及び類似物がある。
【0093】
図24A~Cは、ファスナー構成要素の周囲をシールする外科用接着剤を含む別の代替えの例示的組織補強材を示す。
【0094】
図24Aを参照すると、第1の組織補強材料2401は、ステープルの配備の際に組織へ送達されるために、外科用ステープラのエンドエフェクタ2400のアンビル2402部上に解放可能に保持され、それを貫通して挿入されるファスナー構成要素の周囲をシールする。第1の組織補強材料2401は、第1の上層2403、第1の底層2404、及びそれらの間に配置された第1の外科用接着剤2405を含む。アンビル2402は複数のポケット2406を画定し、そのポケットは、第1の組織補強材料2401によって画定され、第1の外科用接着剤2405をカプセル封入する第1の複数のはめ込みポケット形状機構2407に対応する。種々の実施形態において、複数のポケット2406及び対応する複数のはめ込みポケット形状機構2407は、アンビル2402上での材料2401の解放可能な保持を、少なくともある程度もたらす。
【0095】
第2の組織補強材料2411は、ステープルの配備に伴って組織へ送達され、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲をシールするために、外科用ステープラのエンドエフェクタ2400のステープルカートリッジ2412部上に解放可能に保持されている。第2の組織補強材料2411は、第2の上層2413、第2の底層2414、及びそれらの間に配置された第2の外科用接着剤2415を含む。ステープルカートリッジ2412は複数のポケット2416を画定し、そのポケットは、第2の組織補強材料2411によって画定され、第2の外科用接着剤2415をカプセル封入する複数のはめ込みポケット形状機構2417に対応する。種々の実施形態において、複数のポケット2416及び対応する第2の複数のはめ込みポケット形状機構2417は、ステープルカートリッジ2412上での材料2411の解放可能な保持を、少なくともある程度もたらす。ステープルカートリッジ2412は、ステープル2419を中に収容するように構成された複数のステープルキャビティ2418を有する。
【0096】
図24Bは、アンビル2402アセンブリとステープルカートリッジ2412の一部の分解図を示し、その図は、外科用ステープラのエンドエフェクタ2400の一部の上の種々の機構、特にポケット2406、2416、対応する複数のはめ込みポケット形状機構2407、2417、及びステープル2419に対するそれらの相対位置の、追加の詳細を提供する。
【0097】
図24Cは、図24A及び図24Bについて上に説明した第1の組織補強材料2401と第2の組織補強材料2411の等角図を示す。この図は、第1及び第2の上層2401、2413の、すなわち第1及び第2の複数のはめ込みポケット形状機構2407、2417の機構に焦点を当てている。図24Cでは、第2の組織補強材料2411は、第2の複数のはめ込みポケット形状機構2417の相対位置を説明するために、一部が切り取られて表示されている。
【0098】
当業者は、本開示に従った種々の追加の実施形態が、図24A~Cに示した種々の構成要素の、数、位置、構成要素、寸法、形状などを変更して提供されてもよいことを理解するであろう。図24A~Cの実施形態と共に使用され得る多くの代表的な構成要素及び機構は、上の「発明を実施するための形態」及び例示的実施形態にて説明される。
【0099】
図24A~Cは、粘性及び/又は体液と反応性であり、ステープル2419の周囲をゴムガスケット中の針のようにシールし得る、取り込まれた材料2405、2415(例えば外科用接着剤)を伴う2つのフィルム層2403、2404及び2413、2414を示す。粘性流体は、ステープル2419のレッグによって生成されるフィルム層2403、2404、2413、2414の欠陥及び/又は破れを満たすことができる。材料2405、2415は、フィブリン、トロンビン、アルギン酸カルシウム、又はセルロース(例えば、ORC、又はその固体未反応形態では繊維の酸化再生セルロース)などの生体材料であってもよい。材料2405、2415は、50/50PCL/PGA、又は70/30PCL/PGAのような吸収性合成材料であってもよく、これらは体温では粘性流体又は準固体のままである。
【0100】
別の態様では、本開示は組織補強材料を植え込む方法を提供する。
【0101】
別の態様では、本開示は組織補強材料を植え込む方法(複数)を提供する。図25A~Cは、そのような1つの方法の例を示す。しかしながら、本発明によって提供されるこの方法又は別の方法は、本発明に従った基本的に任意のシーリング組織補強材料の使用に適用可能であることが理解される。
【0102】
図25Aは、手術部位での外科用ステープラの下部ジョー2501と、アンビル又は上部ジョー2502との間の組織2500の係合を示す。下部ジョー2501及び上部ジョー2502のうちの少なくとも1つは、解放可能にその上に保持された組織補強材料2503を有する。この例では、下部ジョー2501が(例えば、カートリッジアセンブリ2504を通して)、解放可能にその上に保持された組織補強材料2503を有する。材料2503は、それを貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように適合された配列を有する複数の繊維を含む(例えば、図16図18及び図19図24の代替えの実施形態参照)。ここでは、組織2503は、アンビル又は上部ジョー2502と、中に配置されたステープル2505を有するカートリッジアセンブリ2504をケース内に収納する下部ジョー2501と、の間に係合されている。
【0103】
図25Bは、カートリッジ本体2504から生体組織2500内にステープル2505を放出させた、始動した外科用ステープラを示す。ステープル2505は、組織補強材料2503を貫通して延在し、材料2503を手術部位に維持する。この例では、外科用ステープラの始動が、図25Bに示すように、ステープル2505の間の手術部位で組織2503の切開も行う。更なる実施形態及びこのような切開の実施形態は、上に説明されている。しかしながら、本開示は、組織が必ずしも切開されない実施形態、又は外科用ステープラの始動と同時に組織が必ずしも切開されない実施形態をも企図する。
【0104】
図25Cは、ステープル2505と組織補強材料2503の配備後の組織2500を示す。図示するように、ステープル2505は、組織補強材料2503及び組織2500を貫通して延在し、材料2503を手術部位に維持する。この図では、ステープル2505を含む組織2500は、材料2503によってシール及び補強され、したがって、引き裂き、液体(例えば血液)又は手術部位への他の望まれない損傷を防止又は緩和する。種々の実施形態において、材料がファスナー構成要素(例えばステープルレッグ)の周囲にシールを形成することのみが要求される。望まれない損傷の防止は、手術回復時間を短縮し、及び手術合併症の緩和を可能とする。更に、補強は、材料2503中の生体母材及び/又はその中の生物学的活性化合物。の作用を通して回復を促進さることができる。同様に、補強は、合成材料からの刺激と炎症を防止又は緩和することを可能とし、これは、どのようなかかる合成物も生体組織膜又は母材の内側とされることができ、及び/又は、合成物が基本的に組織2500に接触しないためである。代替えの実施形態では、基本的に全ての合成材料が、生体材料によってカプセルに内包され、合成材料からの刺激及び炎症を防止又は軽減することができる。
【0105】
本明細書に開示した装置は、一回の使用後に廃棄されるように設計され得、又は複数回使用されるように設計され得る。しかしながら、いずれの場合も、装置は少なくとも一回の使用後に再使用のために再調整することができる。こうした再調整には、装置の分解工程、それに続く洗浄工程又は特定の部品の交換工程、及びその後の再組み立て工程の任意の組み合わせを含むことができる。具体的には、装置は分解されてもよく、装置の任意の数の特定の部品又は部分が、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り除かれてもよく、これらは例えば、電極、電池又は他の電源、外部ウェアラブルセンサ、及び/又はそのハウジングなどである。特定の部分のクリーニング及び/又は交換を行ったら、装置は、再調整工場において、若しくは外科チームによって、外科的処置の直前に次の使用のために再組み立てされてもよい。当業者は、装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組み立ての様々な技術を利用できることを認識するであろう。かかる技術、及び結果として得られる再調整された装置の使用は、全て本発明の範囲内にある。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の装置は、手術前に処理され得る。最初に、新しい又は使用済みの器具が得られ、必要に応じて洗浄される。次いで器具を滅菌してもよい。1つの滅菌技術では、器具は、プラスチックバッグ又はTYVEKバッグなど、閉鎖され封止された容器に入れられる。次に、容器及び器具は、γ線、X線、及び高エネルギー電子線など、容器を透過することができる放射線照射施設に入れられる。放射線は、器具上又は容器内のバクテリアを死滅させる。次に、滅菌された器具を滅菌容器に格納することができる。封止された容器は、医療設備において開封されるまで器具を滅菌状態に保つ。
【0107】
追加の例示的構造と構成要素は、米国特許出願番号___[100873-640/END7353USNP]の名称「外科用ステープリングに使用する複合補助材Hybrid Adjunct Materials For Use In Surgical Stapling」、米国特許出願番号___[100873-641/END7353USNP]の名称「正帯電した植え込み可能材料及びその形成方法Positively Charged Implantable Materials and Methods of Forming the Same」、米国特許出願番号___[100873-642/END7355USNP]の名称「組織内殖材料及びその使用方法Tissue Ingrowth Materials And Method OF Using The Same」、米国特許出願番号___[100873-643/END7356USNP]の名称「外科用ステープリングに使用する複合補助材Hybrid Adjunct Materials For Use In Surgical Stapling」、の各出願に記載され、これらは本出願と同一日付の出願であり、それらの全文を参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0108】
当業者は、上述の実施形態に基づいた本発明の更なる特徴及び利点を認識するであろう。したがって、本発明は、添付の「特許請求の範囲」によって指定する場合を除いて、具体的に図示し説明してきた内容によって限定されるものではない。本明細書に引用されるすべての刊行物及び文献は、その全体が参照により本明細書に明示的に援用される。
【0109】
〔実施の態様〕
(1) ステープルの配備の際に組織へ送達されるための、外科用ステープラのエンドエフェクタの一部の上に解放可能に保持された組織補強材料であって、前記組織補強材料を貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する複数の繊維を含む、組織補強材料。
(2) 前記外科用ステープラのエンドエフェクタの前記一部が、ステープルカートリッジ及びアンビルのうちの少なくとも1つを備える、実施態様1に記載の組織補強材料。
(3) 前記配列が、織組織及びループ構造からなる群から選択される、実施態様1に記載の組織補強材料。
(4) 前記配列は、前記材料がファスナー構成要素による貫通に反応して、伸びて元に戻ることを許容するように更に構成されている、実施態様1に記載の組織補強材料。
(5) 前記複数の繊維が弾性である、実施態様1に記載の組織補強材料。
【0110】
(6) 前記材料が生体材料を更に含む、実施態様1に記載の組織補強材料。
(7) 前記複数の繊維が、生体材料及び合成材料のうちの少なくとも1つを含む、実施態様1に記載の組織補強材料。
(8) 前記材料が、前記複数の繊維を含む単一の層を含む、実施態様1に記載の組織補強材料。
(9) 前記材料が、生体材料と前記複数の繊維とを含む単一の層を含む、実施態様1に記載の組織補強材料。
(10) 前記材料が、生体材料を含む第1の層と、前記複数の繊維を含む第2の層と、を含む、実施態様1に記載の組織補強材料。
【0111】
(11) 前記材料が、生体材料及び合成材料を含む複合補助材である、実施態様1に記載の組織補強材料。
(12) 前記材料は、前記ファスナー構成要素が前記材料を貫通して挿入されると、前記ファスナー構成要素の周囲で膨張するように構成され、前記ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する、実施態様1に記載の組織補強材料。
(13) 前記材料は、第2の材料及び前記ファスナー構成要素のうちの少なくとも1つが湿潤すると、前記ファスナー構成要素の周囲で膨張するように構成され、前記ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する、実施態様1に記載の組織補強材料。
(14) 前記材料は、前記ファスナー構成要素が前記材料を貫通して挿入されると、前記ファスナー構成要素に係合して、前記ファスナー構成要素に隣接する前記材料及び組織の、前記ファスナー構成要素に対する動きを静める、実施態様1に記載の組織補強材料。
(15) 前記ファスナー構成要素がステープルレッグを備える、実施態様1に記載の組織補強材料。
【0112】
(16) 前記材料が、前記材料に取り付けられたステープルカートリッジを更に備える、実施態様1に記載の組織補強材料。
(17) 外科用ステープラと共に使用するステープルカートリッジアセンブリであって、
ステープルを中に収納するように構成された複数のステープルキャビティを有するカートリッジ本体と、
組織補強材料であって、前記カートリッジ本体上に解放可能に保持され、前記カートリッジ本体内の前記ステープルの配備によって組織に送達されるように構成され、前記組織補強材料を貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する複数の繊維を含む、組織補強材料と、を含む、ステープルカートリッジアセンブリ。
(18) 組織補強材料を植え込む方法であって、
手術部位において外科用ステープラのカートリッジアセンブリとアンビルとの間に組織を係合させることであって、前記カートリッジアセンブリとアンビルのうちの少なくとも1つが、解放可能にそこに保持された組織補強材料を有し、前記材料が、前記材料を貫通して挿入されたファスナー構成要素の周囲を圧縮してシールするように構成された配列を有する複数の繊維を含む、ことと、
前記外科用ステープラを始動させて、ステープルを前記カートリッジアセンブリから前記組織内に放出させることであって、前記ファスナー構成要素が前記組織補強材料を貫通して延在し、前記材料を前記手術部位に維持して前記ファスナー構成要素の周囲にシールを形成する、ことと、を含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図24C
図25A
図25B
図25C