(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012313
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ドップラーセンサユニット及びドップラーセンサシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/52 20060101AFI20220107BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01S13/52
G01S7/02 216
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114085
(22)【出願日】2020-07-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】594066648
【氏名又は名称】有限会社フィット
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100189946
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 誠
(72)【発明者】
【氏名】長岡 暢
(72)【発明者】
【氏名】間宮 高弘
(72)【発明者】
【氏名】代田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】神谷 幸宏
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC08
5J070AC15
5J070AC20
5J070AD01
5J070AD05
5J070AD10
5J070AE09
5J070AF01
5J070AG09
5J070AH19
5J070AH25
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK01
5J070AK13
5J070BA01
(57)【要約】
【課題】移動物体の計測距離及び計測可能な角度をより拡大することができるドップラーセンサユニットを提供すること。
【解決手段】ドップラーセンサユニット1は、移動物体に向けて送信信号を発信し、移動物体からの反射波である受信信号を受信する、複数のドップラーセンサモジュール11と、複数のドップラーセンサモジュール11で受信した、それぞれの前記受信信号の位相が同一となるように補正する位相整合補正装置20と、位相整合補正装置20で位相が補正された複数の前記受信信号を合成する加算器30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体に向けて送信信号を発信し、移動物体からの反射波である受信信号を受信する、複数のドップラーセンサモジュールと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールで受信した、それぞれの前記受信信号の位相が同一となるように補正する位相整合補正装置と、
前記位相整合補正装置で位相が補正された複数の前記受信信号を合成する加算器と、
を備えるドップラーセンサユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のドップラーセンサユニットにおいて、
前記位相整合補正装置は、
複数の前記ドップラーセンサモジュールのうち、基準となる前記ドップラーセンサモジュールから出力される第1受信信号と、他の前記ドップラーセンサモジュールから出力される第n(n≧2)受信信号とを複素乗算して位相差を算出し、前記位相差の複素共役信号と前記第n受信信号とを複素乗算することにより、前記第n受信信号の位相が前記第1受信信号の位相と同一となるように補正するドップラーセンサユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドップラーセンサユニットにおいて、
入力される離散時間信号から、予め割り当てられた、それぞれ時間長が異なる基本周期候補区間に含まれる連続した離散点を抽出してパラレルに出力する複数の信号出力部と、
複数の前記信号出力部の各出力ポートから出力される信号の値を、同一ポートごとに足し合わせて、前記基本周期候補区間ごとの累積値を算出する加算部と、
前記基本周期候補区間ごとの前記累積値の絶対値を比較し、最も大きな前記累積値の絶対値を出力した前記加算部に値を出力した前記信号出力部を特定し、前記信号出力部に設定された区間の長さにより決定される距離を基本周期として抽出する演算部と、
を含む周波数解析装置を備えるドップラーセンサユニット。
【請求項4】
請求項1~3までのいずれか一項に記載のドップラーセンサユニットと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を機械的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【請求項5】
請求項1~3までのいずれか一項に記載のドップラーセンサユニットと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を電子的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【請求項6】
請求項1~3までのいずれか一項に記載のドップラーセンサユニットを複数備え、
複数の前記ドップラーセンサユニットは、移動物体の正面方向にセンサ面が向くように少なくとも1台、移動物体の左右方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台、移動物体の上下方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台が配置されるドップラーセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドップラーセンサユニット及びドップラーセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動物体の動きを計測するためのセンサの1つとして、ドップラーセンサが用いられている。ドップラーセンサは、移動物体に向けて送信信号を照射し、移動物体からの反射波である受信信号を受信することにより、移動物体までの距離、移動物体の接近や離反を計測するセンサである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ドップラーセンサは、送信出力が法律により制限されているため、移動物体までの計測距離が短く、計測可能な角度もセンサ正面の狭い角度に限られている。
【0005】
本発明の目的は、移動物体の計測距離及び計測可能な角度をより拡大することができるドップラーセンサユニット及びドップラーセンサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。
(1)移動物体に向けて送信信号を発信し、移動物体からの反射波である受信信号を受信する、複数のドップラーセンサモジュールと、複数の前記ドップラーセンサモジュールで受信した、それぞれの前記受信信号の位相が同一となるように補正する位相整合補正装置と、前記位相整合補正装置で位相が補正された複数の前記受信信号を合成する加算器と、を備えるドップラーセンサユニット。
【0007】
(2) (1)に記載のドップラーセンサユニットにおいて、前記位相整合補正装置は、複数の前記ドップラーセンサモジュールのうち、基準となる前記ドップラーセンサモジュールから出力される第1受信信号と、他の前記ドップラーセンサモジュールから出力される第n(n≧2)受信信号とを複素乗算して位相差を算出し、前記位相差の複素共役信号と前記第n受信信号とを複素乗算することにより、前記第n受信信号の位相が前記第1受信信号の位相と同一となるように補正する。
【0008】
(3) (1)又は(2)に記載のドップラーセンサユニットおいて、入力される離散時間信号から、予め割り当てられた、それぞれ時間長が異なる基本周期候補区間に含まれる連続した離散点を抽出してパラレルに出力する複数の信号出力部と、複数の前記信号出力部の各出力ポートから出力される信号の値を、同一ポートごとに足し合わせて、前記基本周期候補区間ごとの累積値を算出する加算部と、前記基本周期候補区間ごとの前記累積値の絶対値を比較し、最も大きな前記累積値の絶対値を出力した前記加算部に値を出力した前記信号出力部を特定し、前記信号出力部に設定された区間の長さにより決定される距離を基本周期として抽出する演算部と、を含む周波数解析装置を備える。
【0009】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載のドップラーセンサユニットと、複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を機械的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【0010】
(5) (1)~(3)のいずれかに記載のドップラーセンサユニットと、複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を電子的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【0011】
(6) (1)~(3)のいずれかに記載のドップラーセンサユニットを複数備え、複数の前記ドップラーセンサユニットは、移動物体の正面方向にセンサ面が向くように少なくとも1台、移動物体の左右方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台、移動物体の上下方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台が配置されるドップラーセンサシステム。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るドップラーセンサユニット及びドップラーセンサシステムによれば、移動物体の計測距離及び計測可能な角度をより拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態におけるドップラーセンサユニット1の構成を説明する図である。
【
図2】周波数解析装置40の構成を説明する図である。
【
図3】信号出力部40aにおける処理の一例を説明する図である。
【
図4】信号出力部40aにおける処理の一例を説明する図である。
【
図5】ドップラーセンサシステム2の構成及び機能を説明する図である。
【
図6】(A)~(C)は、ドップラーセンサシステム2Aの構成及び機能を説明する図である。
【
図7】(A)~(C)は、ドップラーセンサシステム2Bの構成及び機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るドップラーセンサユニット及びドップラーセンサシステムの実施形態について説明する。具体的には、本発明に係るドップラーセンサユニットを第1実施形態で説明し、本発明に係るドップラーセンサシステムを第2~第4実施形態で説明する。
なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるドップラーセンサユニットの構成を説明する図である。
図1に示すように、第1実施形態のドップラーセンサユニット(以下、「DSユニット」ともいう)1は、ドップラーセンサ部10、位相整合補正装置20、加算器30、周波数解析装置40及び生体情報解析装置50を備えている。第1実施形態のDSユニット1は、例えば、生体等の移動物体計測装置として機能する。
なお、DSユニット1は、上記各部が1つの筐体内に収納されていてもよいし、各部が個別に配置されていてもよい。例えば、DSユニット1として、ドップラーセンサ部10、位相整合補正装置20及び加算器30が1つの筐体内に収納され、周波数解析装置40及び生体情報解析装置50が外部装置として接続されていてもよい。
【0016】
<ドップラーセンサ部10>
ドップラーセンサ部10は、ドップラーセンサモジュール11a、11b、11c及び11dにより構成されている。以下、ドップラーセンサモジュール11a~11dを総称して「DSモジュール」又は「DSモジュール11」ともいう。
なお、
図1では、複数のDSモジュール11が隣接して等間隔に配置されている様子を示しているが、実際には、各DSモジュール11は、それぞれ異なる場所に配置されている。
【0017】
DSモジュール11は、DSモジュール本体12及びアンテナ13を備えている。DSモジュール本体12は、送受信用のアンテナ13から移動物体(不図示)に向けて送信波となる送信信号を照射し、移動物体からの反射波となる受信信号をアンテナ13で受信することにより、移動物体までの距離、移動物体の接近や離反を計測する装置である。各DSモジュール本体12から出力される受信信号x
1(t)~x
4(t)は、位相整合補正装置20(後述)に送られる。なお、
図1では、ドップラーセンサ部10を4個のDSモジュール11a~11dで構成する例について示しているが、DSモジュール11は、少なくとも2個あればよく、5個以上設けてもよい。
【0018】
<位相整合補正装置20>
図1に示すように、DSモジュール11a~11dと加算器30との間は、それぞれ信号線L1~L4により接続されている。位相整合補正装置20は、信号線L1~L4に、後述する複素共役回路201~204及び複素乗算回路211~218がそれぞれ接続されている。以下、各DSモジュール11a~11dに対応する位相整合補正装置20の構成及び機能について説明する。
【0019】
DSモジュール11aに接続された信号線L1には、接続点J1、J2及び複素乗算回路212が設けられている。信号線L1は、接続点J1において信号線L11と接続されている。信号線L11は、接続点J1と複素乗算回路212(後述)との間に設けられた信号線である。信号線L11には、複素共役回路201及び複素乗算回路211が設けられている。複素共役回路201は、入力された受信信号の複素共役信号を生成する回路である。例えば、複素共役回路201は、受信信号x1(t)が入力すると、複素共役信号としてx1
*(t)を出力する。「*」は、複素共役(共役複素数)であることを示している。なお、複素共役回路201の機能は、複素共役回路202~204に共通する。
【0020】
複素共役回路201で生成された複素共役信号は、信号線L11を介して複素乗算回路211に入力する。また、複素共役回路201で生成された複素共役信号x1
*(t)は、信号線L11に設けられた接続点J3、J4及びJ5から信号線L22、L32及びL42を介して複素乗算回路213、215及び217(後述)にそれぞれ入力する。
【0021】
複素乗算回路211は、入力した2つの信号を乗算して出力する回路である。複素乗算回路211には、複素共役回路201で生成された複素共役信号が入力する。複素乗算回路211には、信号線L1の接続点J2に接続された信号線(符号略)を介して、DSモジュール11aからの受信信号x
1(t)が入力する。複素乗算回路211において、受信信号x
1(t)と複素共役信号x
1
*(t)とを乗算して得られた信号は、重み係数w
1として複素乗算回路212に入力する。一方、複素乗算回路212には、信号線L1を介して受信信号x
1(t)が入力する。複素乗算回路212において、重み係数w
1と受信信号x
1(t)とを乗算して得られた信号は、位相差が補正された受信信号x
1(t)として加算器30に入力する。なお、後述する重み係数w
2~w
4は、複素数の虚数部を含むため、実際には、例えばw
2
*と表現すべきであるが、
図1及び明細書においては、「*」を省略した形式で表記する。
【0022】
DSモジュール11bに接続された信号線L2には、接続点J6及び複素乗算回路214が設けられている。複素乗算回路214には、信号線L2を介して受信信号x2(t)が入力する。また、前述のように、信号線L11の接続点J3には、信号線L22が接続されている。信号線L22は、接続点J3と複素乗算回路214との間に設けられた信号線であり、複素乗算回路213及び複素共役回路202が設けられている。複素乗算回路213には、信号線L22を介して、複素共役回路201で生成された複素共役信号x1
*(t)が入力する。一方、複素乗算回路213には、信号線L2の接続点J6に接続された信号線L21を介して、DSモジュール11bからの受信信号x2(t)が入力する。複素乗算回路213において、受信信号x2(t)と複素共役信号x1
*(t)とを乗算して得られた信号は、複素共役回路202に入力する。複素共役回路202では、受信信号x2(t)と複素共役信号x1
*(t)とを乗算して得られた信号の複素共役信号が生成される。この複素共役信号は、重み係数w2として複素乗算回路214に入力する。複素乗算回路214において、重み係数w2と受信信号x2(t)とを乗算して得られた信号は、位相差が補正された受信信号x2(t)として加算器30に入力する。
【0023】
DSモジュール11cに接続された信号線L3には、接続点J7及び複素乗算回路216が設けられている。複素乗算回路216には、信号線L3を介して受信信号x3(t)が入力する。また、前述のように、信号線L11の接続点J4には、信号線L32が接続されている。信号線L32は、接続点J4と複素乗算回路216との間に設けられた信号線であり、複素乗算回路215及び複素共役回路203が設けられている。複素乗算回路215には、信号線L32を介して、複素共役回路201で生成された複素共役信号x1
*(t)が入力する。一方、複素乗算回路215には、信号線L3の接続点J7に接続された信号線L31を介して、DSモジュール11cからの受信信号x3(t)が入力する。複素乗算回路215において、受信信号x3(t)と複素共役信号x1
*(t)とを乗算して得られた信号は、複素共役回路203に入力する。複素共役回路203では、受信信号x3(t)と複素共役信号x1
*(t)とを乗算して得られた信号の複素共役信号が生成される。この複素共役信号は、重み係数w3として複素乗算回路216に入力する。複素乗算回路216において、重み係数w3と受信信号x2(t)とを乗算して得られた信号は、位相差が補正された受信信号x3(t)として加算器30に入力する。
【0024】
DSモジュール11dに接続された信号線L4には、接続点J8及び複素乗算回路218が設けられている。複素乗算回路218には、信号線L4を介して受信信号x4(t)が入力する。また、前述のように、信号線L11の接続点J5には、信号線L42が接続されている。信号線L42は、接続点J5と複素乗算回路218との間に設けられた信号線であり、複素乗算回路217及び複素共役回路204が設けられている。複素乗算回路217には、信号線L42を介して、複素共役回路201で生成された複素共役信号x1
*(t)が入力する。一方、複素乗算回路217には、信号線L4の接続点J8に接続された信号線L41を介して、DSモジュール11dからの受信信号x4(t)が入力する。複素乗算回路217において、受信信号x4(t)と複素共役信号x1
*(t)とを乗算して得られた信号は、複素共役回路204に入力する。複素共役回路204では、受信信号x4(t)と複素共役信号x1
*(t)とを乗算して得られた信号の複素共役信号が生成される。この複素共役信号は、重み係数w4として複素乗算回路218に入力する。複素乗算回路218において、重み係数w4と受信信号x4(t)とを乗算して得られた信号は、位相差が補正された受信信号x4(t)として加算器30に入力する。
【0025】
上記のように構成された位相整合補正装置20において、N(本例では4)個のDSモジュール11のうち、n(n=1,…,N)番目のDSモジュール11から出力される受信信号は、下記の式(1)及び(2)で表される。
【0026】
【0027】
【0028】
但し、各記号の意味は、以下の通りである。
j:虚数単位
φn(t):DSモジュールの位置の違いにより生じる位相成分
ηn(t):雑音の成分
sn(t):移動物体(生体)から計測される信号成分
An(t):振幅
Φ(t):計測する移動物体に由来する位相成分
【0029】
次に、位相整合補正装置20において、DSモジュール11a~11dから出力される受信信号x
n(t)の位相成分φ
n(t)を補正する動作を、
図1を参照しながら説明する。
DSモジュール11aから出力された受信信号x
1(t)は、信号線L1の接続点J1から複素共役回路201に入力する。複素共役回路201では、受信信号x
1(t)の複素共役信号x
1
*(t)が生成され、複素乗算回路211に入力する。一方、信号線L1に送信された受信信号x
1(t)は、複素乗算回路212に入力すると共に、接続点J2から複素乗算回路211に入力する。複素乗算回路211において、受信信号x
1(t)と複素共役信号x
1
*(t)とが乗算されると、虚数部が消えて、複素乗算回路211から出力される重み係数w
1は「1」となる。そのため、複素乗算回路212の出力は、DSモジュール11aから出力された受信信号x
1(t)と実質的に同じとなる。
なお、重み係数w
nは、下記の式(3)により求められる。
【0030】
【数3】
ここで、E[ ]は、ノイズ除去のためにアンサンブル平均を算出することを示している。アンサンブル平均は、下記の式(4)で求めることができる。
【0031】
【数4】
なお、ノイズ除去を行わない場合は、式(3)からE[ ]を除いた下記の式(5)により重み係数w
nを求めることができる。
【0032】
【0033】
DSモジュール11bから出力された受信信号x2(t)は、信号線L2の接続点J6から複素乗算回路213に入力する。複素乗算回路213では、DSモジュール11a側の複素共役回路201で生成された複素共役信号x1
*(t)と受信信号x2(t)とが乗算される。複素乗算回路213で乗算された信号は、複素共役回路202に入力する。複素共役回路202では、受信信号x2(t)と複素共役信号x1
*(t)とが乗算された信号の複素共役信号が生成される。複素共役回路202で生成された複素共役信号は、DSモジュール11aから出力された受信信号x1(t)と、DSモジュール11bから出力される、補正前の受信信号x2(t)との位相差の成分を含む重み係数w2として複素乗算回路214へ入力される。複素乗算回路214においては、重み係数w2と受信信号x2(t)とが乗算され、DSモジュール11aとDSモジュール11bとの位相差が補正された受信信号x2(t)が出力される。
【0034】
DSモジュール11cから出力された受信信号x3(t)は、信号線L3の接続点J7から複素乗算回路215に入力する。複素乗算回路215では、DSモジュール11a側の複素共役回路201で生成された複素共役信号x1
*(t)と受信信号x3(t)とが乗算される。複素乗算回路215で乗算された信号は、複素共役回路203に入力する。複素共役回路203では、受信信号x3(t)と複素共役信号x1
*(t)とが乗算された信号の複素共役信号が生成される。複素共役回路203で生成された複素共役信号は、DSモジュール11aから出力された受信信号x1(t)と、DSモジュール11cから出力される、補正前の受信信号x3(t)との位相差の成分を含む重み係数w3として複素乗算回路216へ入力する。複素乗算回路216においては、重み係数w3と受信信号x3(t)とが乗算され、DSモジュール11aとDSモジュール11cとの位相差が補正された受信信号x3(t)が出力される。
【0035】
DSモジュール11dから出力された受信信号x4(t)は、信号線L4の接続点J8から複素乗算回路217に入力する。複素乗算回路217では、DSモジュール11a側の複素共役回路201で生成された複素共役信号x1
*(t)と受信信号x4(t)とが乗算される。複素乗算回路217で乗算された信号は、複素共役回路204に入力する。複素共役回路204では、受信信号x4(t)と複素共役信号x1
*(t)とが乗算された信号の複素共役信号が生成される。複素共役回路204で生成される複素共役信号は、DSモジュール11aから出力された受信信号x1(t)と、DSモジュール11dから出力される、補正前の受信信号x4(t)との位相差の成分を含む重み係数w4として複素乗算回路218へ入力される。複素乗算回路218においては、重み係数w4と受信信号x4(t)とが乗算され、DSモジュール11aとDSモジュール11dとの位相差が補正された受信信号x4(t)が出力される。
なお、DSモジュール11の出力として、I信号とQ信号(2つの信号の位相差は90°)がある場合、I信号を実数部、Q信号を虚数部に割り当てることにより、受信した信号を複素数で表すことができる。この複素数で表される情報に基づいて、上述した位相整合補正装置20の複素共役回路、複素乗算回路の演算を行うようにしてもよい。
【0036】
<加算器30>
加算器30は、位相整合補正装置20で位相が補正された受信信号x1(t)~x4(t)を、下記の式(6)に基づいて合成して、加算信号x(t)を出力する回路である。加算器30で合成された加算信号x(t)は、周波数解析装置40に出力される。
【0037】
【0038】
<周波数解析装置40>
周波数解析装置40は、加算器30から出力された加算信号x(t)から、各DSモジュール11で計測された移動物体に関する周期スペクトルを抽出する装置である。具体的には、周波数解析装置40は、基本周期の違いによって重なった波形を分離して、周期スペクトルを出力する回路である。周波数解析装置40は、入力される波の基本周期に関する事前情報がなくても、波を分離することができる。
なお、周波数解析装置40は、FPGA(Field-Programmble gate array)等により専用回路を構成してもよいし、DSP(Digital Signal Processer)で実現することもできる。
【0039】
図2は、周波数解析装置40の構成を説明する図である。
図2に示すように、本実施形態の周波数解析装置40は、k(k=1・・・V)個の信号出力部40a1、40a2、・・・、40aVと、これに対応するv(v=1、2、・・・、V)個の積算器として機能する加算器40b1、40b2、・・・、40bVと、最大値検出部45を備えている。
【0040】
信号出力部40a1、40a2、・・・、40aV(以下、「信号出力部40a」ともいう)は、入力される信号x(t)を標本化してパラレルに出力する標本化回路である。より具体的には、信号出力部40a1、40a2、・・・、40aVは、入力される信号x(t)から、予め割り当てられた、それぞれ時間長が異なる区間(基本周期候補区間)に含まれる連続した離散点を抽出してパラレルに出力する。すなわち、基本周波数区間において、抽出する離散点の数(サンプル数)は、信号出力部40a1、40a2、・・・、40aVのそれぞれで異なる。より具体的には、信号出力部40a1、40a2、・・・、40aVは、予め割り当てられた周期の範囲に応じて抽出された、異なるサンプル数を出力ポートから繰り返し出力する。なお、信号出力部40a1、40a2、・・・、40aVに入力される信号x(t)は、離散時間信号である。
【0041】
例えば、入力する信号x(t)が144サンプルであり、信号出力部40a1に設定された、予想される周期の範囲が3サンプルである場合、信号出力部40a1は、連続する3サンプルを48回繰り返し出力する。また、信号出力部40a2に設定された、予想される周期の範囲が4サンプルである場合、信号出力部40a2は、連続する4サンプルを36回繰り返し出力する。なお、繰り返し出力する回数を、信号出力部40a1、40a2、・・・、40aVにおいて一律にしてもよい。本実施形態では、信号出力部40a1、40a2、・・・、40aVのうち、信号出力部40a1のサンプル数が最も少なく、信号出力部40a2から順にサンプル数を増やした例を示している。
【0042】
加算器(加算部)40b1、40b2、40bv、40bVは、信号出力部40a1、40a2、・・・、40aVの出力ポートからそれぞれ入力される各サンプルの値を、同一ポートごとに足し合わせて、基本周期候補区間ごとの累積値を算出する回路である。加算器40b1、40b2、・・・、40bVdは、それぞれに保存している値と、新たに入力される値とを加算し、その加算結果を更新する。
【0043】
最大値検出部(演算部)45は、加算器40b1、40b2、・・・、40bVdの加算結果(累積値)の絶対値を比較し、最も大きな加算結果の絶対値を出力した加算器にサンプル値を出力した信号出力部を特定し、その信号出力部に設定された区間(標本化される最初の離散点と最後の離散点との間)の長さにより決定される距離を基本周期として抽出する。
なお、最大値検出部45において、加算結果の絶対値の比較方法は、上記に限定されない。例えば、加算器40b1、40b2、・・・、40bVdでの加算結果について、加算の回数で除算して得た平均値の絶対値を比較するようにしてもよい。また、例えば、加算器42a~42dのすべての演算結果を正規化して比較するようにしてもよい。
【0044】
図3及び
図4は、信号出力部40aにおける処理の一例を説明する図である。以下の説明において、信号出力部40aX、40aYは、例えば、40a1、40a2、・・・、40aVのいずれかである。
図3は、予想される周期の範囲が8サンプルである場合の例を示している。
図3において、信号出力部40aXの出力ポート数は「8」である。このとき、パラメータg(予想される周期を1区間の長さとして入力波形を分割した場合、入力波形の初めから数えた該当区間の順番)=0、1、2、3の場合の各出力ポートそれぞれの値(出力値)はほぼ等しく、同じ波形が出現している。このため、同一の出力ポートごとに出力される信号の値をそれぞれ足し合わせることで、振幅の値が大きな波形となる。したがって、8サンプルが1周期であると判断することができる。
【0045】
図4は、予想される周期の範囲が7サンプルである場合の例を示している。
図4において、信号出力部40aYの出力ポート数は「7」である。このとき、パラメータg=0、1、2、3の場合の各出力ポートそれぞれの値(出力値)は異なり、バラバラの値となる。このため、同一の出力ポートごとに値を足し合わせると互いに打ち消し合い、振幅の値が小さな波形となる。
【0046】
このように、周期が一致している波の離散値を足していくと、段々と絶対値が大きくなる。一方、周期が一致していない波の離散値を足しも互いに打ち消し合うため絶対値は大きくならない。したがって、絶対値が最も大きくなる加算器に対応する信号出力部の抽出区間の長さを検出することにより、基本周期を容易に発見することができる。
また、最大値検出部45は、最も大きな積算結果を1となるようにすべての積算結果の絶対値を正規化し、正規化された積層結果の絶対値と、0以上1以下の閾値とを比較して、入力される離散時間信号に含まれる信号の数と、それぞれの周期と、を判定することができる。
なお、上述した周波数解析装置40は、特願2020-006128の明細書及び図面に記載された周期フィルタ(5)を適用したものである。
【0047】
<生体情報解析装置50>
生体情報解析装置50は、周波数解析装置40から出力された周期スペクトルを解析して、移動物体(生体)の有無、移動方向(接近/離反)、移動速度、呼吸数、心拍等の生体情報を検出する装置である。
生体情報解析装置50による解析結果は、例えば、通信回線(不図示)を介して、管理者の操作するパーソナルコンピュータ(以下、「管理者側PC」ともいう)に出力される。
【0048】
上述した第1実施形態のDSユニット1によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
第1実施形態のDSユニット1は、位相整合補正装置20において、各DSモジュール11からの受信信号x
1(t)~x
4(t)の位相が同一となるように補正されるため、それらの信号を加算器30で加算することにより、信号数の分だけ出力を大きくすることができる。したがって、第1実施形態のDSユニット1においては、移動物体の計測距離及び計測可能な角度をより拡大することができる。なお、複数の受信信号を単純に加算すると、信号同士が打ち消し合い、出力が小さくなることがある。しかし、第1実施形態DSユニット1によれば、各DSモジュール11からの受信信号の位相が同一なるように補正されることにより、信号同士の打ち消し合いを生じることがない。そのため、各ドップラーセンサ部10(
図1参照)がどのように配置されていても、より大きな出力を得ることができる。また、計測中の移動物体(計測対象物)の位置が変化すると、受信信号の位相関係も変化してしまうが、本実施形態のDSユニット1によれば、方向が変化する信号に対して自動的に補正、合成が行われるため、移動物体を自動追尾することも可能となる。
【0049】
上述した第1実施形態のDSユニット1は、DSモジュール11から発信される送信信号(送信波)を異なる方向に順次走査することにより、不特定多数の人の生体計測が可能となる。以下、送信信号及び受信信号の走査機構を備えたドップラーセンサシステム2(第2実施形態)及び2A(第3実施形態)の構成について説明する。ドップラーセンサシステム2及び2Aは、少なくとも1つのDSユニット1と、送信信号及び受信信号の走査機構を備えることにより構成されるシステムである。
【0050】
(第2実施形態)
図5は、ドップラーセンサシステム2の構成及び機能を説明する図である。第2実施形態のドップラーセンサシステム(以下、「DSシステム」ともいう)2は、第1実施形態のDSユニット1と、このDSユニット1を機械的に走査する機構(後述)を備えている。第2実施形態のDSシステム2は、例えば、生体計測の対象となる複数の被験者(移動物体)Pが存在している室内に設置される。
図5に示すように、第2実施形態のDSシステム2は、DSユニット1を機械的に走査する機構として、DSモジュール走査装置60を備えている。第2実施形態のDSシステム2において、DSユニット1の基本的な構成は第1実施形態と同じであるため、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0051】
DSモジュール走査装置60は、センサ保持部61、センサ駆動部62及び駆動制御部63により構成されている。
センサ保持部61は、DSユニット1を保持する部分である。本形態におけるDSユニット1は、例えば、ドップラーセンサ部10、位相整合補正装置20及び加算器30が1つの筐体内に収納され、周波数解析装置40及び生体情報解析装置50が外部装置として接続されている。
図5では、上記各部を収納した1つの筐体としてのDSユニット1を示しており、周波数解析装置40、生体情報解析装置50の図示を省略している。
センサ保持部61は、回転軸a1でセンサ駆動部62と連結されている。
図5において、回転軸a1を通り、DSユニット1のセンサ面と直交する線がセンサ軸a2となる。
【0052】
センサ駆動部62は、回転軸a1を中心としてセンサ保持部61を矢印方向A1に沿って回動させる機能と、回転軸a3を中心としてセンサ保持部61を図中の矢印方向A2に沿って回動させる機能を有する。回転軸a3は、鉛直方向と一致する。
駆動制御部63は、センサ保持部61が所定の方向に回動するようにセンサ駆動部62の動作を制御する。駆動制御部63は、管理者の操作するPCに接続されている。管理者は、自らの操作するPCを介して、センサ保持部61(DSユニット1)の回動方向、回動量等を制御することができる。
【0053】
DSシステム2においては、例えば、以下に示すような(1)~(3)の動作が実行される。
(1)DSユニット1のセンサ軸a2が空間内の方向D1へ向くようにセンサ保持部61を回動させて生体計測を開始し、生体情報解析装置50の解析結果を管理者側PCに出力する。
(2)DSユニット1のセンサ軸a2が空間内の方向D2へ向くようにセンサ保持部61を回動させて生体計測を開始し、生体情報解析装置50の解析結果を管理者側PCに出力する。
(3)DSユニット1のセンサ軸a2が空間内の方向D3へ向くようにセンサ保持部61を回動させて生体計測を開始し、生体情報解析装置50の解析結果を管理者側PCに出力する。
【0054】
第2実施形態のドップラーセンサシステム2において、上記(1)~(3)の動作を繰り返し実行することにより、不特定多数の被験者Pの生体情報を検出することができる。また、個々の被験者Pに関する情報と、空間内に存在する方向及び位置関係を結び付けることもできる。
【0055】
(第3実施形態)
図6(A)~(C)は、ドップラーセンサシステム2Aの構成及び機能を説明する図である。第3実施形態のDS(ドップラーセンサ)システム2Aは、第1実施形態のDSユニット1と、このDSユニット1(ドップラーセンサ部10)から送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を電子的に走査する機構(後述)を備えている。第3実施形態のDSシステム2Aは、例えば、生体計測の対象となる複数の被験者P(
図5参照)が存在している室内に設置される。なお、
図6では、第3実施形態のDSシステム2Aにおいて、アンテナモジュール130のみを図示すると共に、被験者P(以下、単に「被験者」ともいう)等の図示を省略している。
【0056】
第3実施形態において、1つのアンテナモジュール130は、例えば、
図1に示すドップラーセンサ部10における1つのアンテナ13とその周辺回路に相当する。
図6に示すように、アンテナモジュール130は、4つの送受信用のアンテナ131と、それぞれのアンテナ131に接続された4つのアンプ132により構成されている。本実施形態において、アンテナモジュール130は、送受信用のアンテナモジュールとして構成されている。各アンテナ131からは、送信信号の反射波として受信信号AT
1(t)、AT
2(t)、AT
3(t)及びAT
4(t)が出力される。各アンテナ131から出力された受信信号AT
1(t)~AT
4(t)は、それぞれアンプ132で増幅された後、位相調整装置133に入力する。アンプ132による信号の増幅は、受信信号と送信信号の両方に対して行ってもよいし、受信信号に対してのみ行ってもよい。なお、アンテナ131とアンプ132の組み合わせは、少なくとも2つあればよく、5以上あってもよい。
【0057】
位相調整装置133は、接続された各アンテナ131において、送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を電子的に調整する回路である。具体的には、位相調整装置133において、各アンテナ131に与える位相をそれぞれ早めたり、遅くしたりすることにより、送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を電子的に調整することができる。
【0058】
図6(A)は、各アンテナ131に与える位相をそれぞれθ分だけ早くした例を示している。各アンテナ131に与える位相をそれぞれθ分だけ早くすることにより、各アンテナ131において、送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を、例えば、図の左側に向けることができる。
【0059】
図6(B)は、各アンテナ131に与える位相のずれをそれぞれゼロとした例を示している。各アンテナ131に与える位相のずれをそれぞれゼロとすることにより、各アンテナ131において、送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を図中の正面側に向けることができる。
【0060】
図6(C)は、各アンテナ131に与える位相をそれぞれθ分だけ遅くした例を示している。各アンテナ131に与える位相をそれぞれθ分だけ遅くすることにより、各アンテナ131において、送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を、例えば、図の右側に向けることができる。
【0061】
第3実施形態のドップラーセンサシステム2Aにおいて、上記
図6(A)~
図6(C)の動作を繰り返し実行することにより、不特定多数の被験者の生体情報を計測することができる。また、個々の被験者に関する情報と、空間内に存在する方向及び位置関係を結び付けることもできる。
なお、第3実施形態のドップラーセンサシステム2Aにおいて、送信用のアンテナモジュールと受信用アンテナモジュールとを別々に設けた構成としてもよい。
【0062】
(第4実施形態)
図7(A)~(C)は、ドップラーセンサシステム2Bの構成及び機能を説明する図である。
図7(A)~(C)では、DSシステム2Bを構成するDSユニット1a~1eのうち、DSユニット1aを、送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向が略水平となるように設置した状態において、DSユニット1a~1eを正面から見たときの左右方向をX(X1-X2)方向、上下方向をY(Y1-Y2)方向、前後方向をZ(Z1-Z2)方向とする。
【0063】
第4実施形態のDSシステム2Bは、DSユニット1を複数方向に向けて複数台設置している点が第2及び第3実施形態のDSシステムと相違する。第4実施形態のDSシステム2Bは、例えば、生体計測の対象となる複数の被験者P(
図5参照)が存在している室内において、被験者Pの側方に向くように設置される。なお、
図7(A)~(C)では、第4実施形態のDSシステム2Bにおいて、DSユニット1a~1eの筐体のみを図示すると共に、被験者Pの図示を省略している。
【0064】
図7(A)に示すように、第4実施形態のドップラーセンサシステム2Bは、DSユニット1a、1b、1c、1d及び1eを備えている。このうち、DSユニット1aは、
図7(A)に示すように、被験者の正面方向(Z1方向)にセンサ面Sが向くように設置されている。
図7(A)に示すように、DSユニット1aの左右方向(X方向)には、DSユニット1b及び1cが設置されている。DSユニット1b及び1cは、
図7(B)に示すように、被験者の左右方向(X1-X2方向)にセンサ面Sが向くようにそれぞれ設置されている。
【0065】
図7(A)に示すように、DSユニット1aの上下方向(Y方向)には、DSユニット1d及び1eが設置されている。DSユニット1d及び1eは、
図7(C)に示すように、被験者の上下方向(Y1-Y2方向)にセンサ面Sが向くようにそれぞれ設置されている。
DSユニット1a~1eは、それぞれ所定の場所に設置された状態で送信信号の送信及び受信信号の受信を行う。なお、DSユニット1a~1eにおける送信信号及び受信信号の送受信は、すべて同時に実施してもよいし、所定の順番で1台ずつ又は複数台ずつ実施してもよい。なお、
図7(A)~(C)では、センサ面Sを概念的に示しており、実際のセンサ面とは異なる。
【0066】
第4実施形態のDSシステム2Bは、DSユニット1a~1eから送信信号の送信及び受信信号の受信を行うことにより、不特定多数の被験者の生体情報を計測することができる。また、個々の被験者に関する情報と、空間内に存在する方向及び位置関係を結び付けることもできる。また、第4実施形態のDSシステム2Bによれば、DSユニット1a~1eから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を走査する必要がないので、計測のレスポンスを向上させることができる。更に、第4実施形態のDSシステム2Bは、DSユニット1a~1eのそれぞれの位置が固定されているため、例えば、健康状態に異常のある被験者の位置を特定することもできる。
【0067】
(変形形態)
第1実施形態のDSユニット1において、前述した位相整合補正装置20の機能は、
図1に示すようなデジタル回路で実現する例に限らず、ソフトウェアで実現するようにしてもよい。例えば、CPU等の演算処理装置、位相補正処理を実行するためのアプリケーションソフトウェア、OS等を格納したROM、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM等を備えたコンピュータシステムを用いて、演算処理装置がROMからアプリケーションソフトウェアやOSを読み込み、これらアプリケーションソフトウェアやOSをRAMに展開させながら演算処理を行うことにより、位相整合補正装置20の機能を実現することができる。
【0068】
第2実施形態のDSシステム2において、DSユニット1を保持したDSモジュール走査装置60を、複数設置してもよい。
第3実施形態のDSシステム2Aにおいて、DSユニット1を機械的に走査する機構(第2実施形態)を適用してもよい。
【0069】
第4実施形態のDSシステム2Bにおいて、DSユニット1a~1eを設置する間隔、被験者に対する角度等は適宜に設定可能であり、上記の例に限定されない。また、XYZの各方向に配置するDSユニット1の個数は、使用目的等に応じて適宜に設定可能であり、上記の例に限定されない。例えば、被験者の正面方向(Z1方向)にセンサ面Sが向くように、複数のDSユニット1を設置してもよい。更に、第4実施形態のDSシステム2Bにおいて、DSユニット1a~1eを機械的に走査する機構(第2実施形態)を適用してもよいし、電子的に走査する機構(第3実施形態)を適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,1a~1e:ドップラーセンサユニット(DSユニット)
2,2A,2B:ドップラーセンサシステム(DSシステム)
10:ドップラーセンサ部
11,11a~11d:ドップラーセンサモジュール(DSモジュール)
20:位相整合補正装置
30:加算器
40:周波数解析装置
50:生体情報解析装置
60:モジュール走査装置
130:アンテナモジュール
131:アンテナ
132:アンプ
133:位相調整装置
【手続補正書】
【提出日】2021-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが独立したアンテナを備えたドップラーセンサモジュールであって、前記アンテナから移動物体に向けて送信信号を発信し、移動物体からの反射波である受信信号を前記アンテナで受信する、複数のドップラーセンサモジュールと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールで受信した、それぞれの前記受信信号の位相が同一となるように補正する位相整合補正装置と、
前記位相整合補正装置で位相が補正された複数の前記受信信号を合成する加算器と、
を備えるドップラーセンサユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のドップラーセンサユニットにおいて、
前記位相整合補正装置は、
複数の前記ドップラーセンサモジュールのうち、基準となる前記ドップラーセンサモジュールから出力される第1受信信号と、他の前記ドップラーセンサモジュールから出力される第n(n≧2)受信信号とを複素乗算して位相差を算出し、前記位相差の複素共役信号と前記第n受信信号とを複素乗算することにより、前記第n受信信号の位相が前記第1受信信号の位相と同一となるように補正するドップラーセンサユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドップラーセンサユニットにおいて、
入力される離散時間信号から、予め割り当てられた、それぞれ時間長が異なる基本周期候補区間に含まれる連続した離散点を抽出してパラレルに出力する複数の信号出力部と、
複数の前記信号出力部の各出力ポートから出力される信号の値を、同一ポートごとに足し合わせて、前記基本周期候補区間ごとの累積値を算出する加算部と、
前記基本周期候補区間ごとの前記累積値の絶対値を比較し、最も大きな前記累積値の絶対値を出力した前記加算部に値を出力した前記信号出力部を特定し、前記信号出力部に設定された区間の長さにより決定される距離を基本周期として抽出する演算部と、
を含む周波数解析装置を備えるドップラーセンサユニット。
【請求項4】
請求項1~3までのいずれか一項に記載のドップラーセンサユニットと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を機械的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【請求項5】
請求項1~3までのいずれか一項に記載のドップラーセンサユニットと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を電子的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【請求項6】
請求項1~3までのいずれか一項に記載のドップラーセンサユニットを複数備え、
複数の前記ドップラーセンサユニットは、移動物体の正面方向にセンサ面が向くように少なくとも1台、移動物体の左右方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台、移動物体の上下方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台が配置されるドップラーセンサシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。
(1)それぞれが独立したアンテナを備えたドップラーセンサモジュールであって、前記アンテナから移動物体に向けて送信信号を発信し、移動物体からの反射波である受信信号を前記アンテナで受信する、複数のドップラーセンサモジュールと、複数の前記ドップラーセンサモジュールで受信した、それぞれの前記受信信号の位相が同一となるように補正する位相整合補正装置と、前記位相整合補正装置で位相が補正された複数の前記受信信号を合成する加算器と、を備えるドップラーセンサユニット。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが独立したアンテナを備えたドップラーセンサモジュールであって、前記アンテナから移動物体に向けて送信信号を発信し、移動物体からの反射波である受信信号を前記アンテナで受信する、複数のドップラーセンサモジュールと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールで受信した、それぞれの前記受信信号の位相が同一となるように補正する位相整合補正装置と、
前記位相整合補正装置で位相が補正された複数の前記受信信号を合成し、離散時間信号として出力する加算器と、
前記加算器から入力される離散時間信号から、複数の前記ドップラーセンサモジュールで計測された前記移動物体に関する基本周期を抽出する周波数解析装置と、
を備え、
前記周波数解析装置は、
前記加算器から入力される離散時間信号から、予め割り当てられた、それぞれ時間長が異なる基本周期候補区間に含まれる連続した離散点を抽出してパラレルに出力する複数の信号出力部と、
複数の前記信号出力部の各出力ポートから出力される信号の値を、同一ポートごとに足し合わせて、前記基本周期候補区間ごとの累積値を算出する加算部と、
前記基本周期候補区間ごとの前記累積値の絶対値を比較し、最も大きな前記累積値の絶対値を出力した前記加算部に値を出力した前記信号出力部を特定し、前記信号出力部に設定された区間の長さにより決定される距離を前記基本周期として抽出する演算部と、
を含むドップラーセンサユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のドップラーセンサユニットにおいて、
前記位相整合補正装置は、
複数の前記ドップラーセンサモジュールのうち、基準となる前記ドップラーセンサモジュールから出力される第1受信信号と、他の前記ドップラーセンサモジュールから出力される第n(n≧2)受信信号とを複素乗算して位相差を算出し、前記位相差の複素共役信号と前記第n受信信号とを複素乗算することにより、前記第n受信信号の位相が前記第1受信信号の位相と同一となるように補正するドップラーセンサユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドップラーセンサユニットと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を機械的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のドップラーセンサユニットと、
複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を電子的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のドップラーセンサユニットを複数備え、
複数の前記ドップラーセンサユニットは、移動物体の正面方向にセンサ面が向くように少なくとも1台、移動物体の左右方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台、移動物体の上下方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台が配置されるドップラーセンサシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。
(1)それぞれが独立したアンテナを備えたドップラーセンサモジュールであって、前記アンテナから移動物体に向けて送信信号を発信し、移動物体からの反射波である受信信号を前記アンテナで受信する、複数のドップラーセンサモジュールと、複数の前記ドップラーセンサモジュールで受信した、それぞれの前記受信信号の位相が同一となるように補正する位相整合補正装置と、前記位相整合補正装置で位相が補正された複数の前記受信信号を合成し、離散時間信号として出力する加算器と、前記加算器から入力される離散時間信号から、複数の前記ドップラーセンサモジュールで計測された前記移動物体に関する基本周期を抽出する周波数解析装置と、を備え、前記周波数解析装置は、前記加算器から入力される離散時間信号から、予め割り当てられた、それぞれ時間長が異なる基本周期候補区間に含まれる連続した離散点を抽出してパラレルに出力する複数の信号出力部と、複数の前記信号出力部の各出力ポートから出力される信号の値を、同一ポートごとに足し合わせて、前記基本周期候補区間ごとの累積値を算出する加算部と、前記基本周期候補区間ごとの前記累積値の絶対値を比較し、最も大きな前記累積値の絶対値を出力した前記加算部に値を出力した前記信号出力部を特定し、前記信号出力部に設定された区間の長さにより決定される距離を前記基本周期として抽出する演算部と、を含むドップラーセンサユニット。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
(3) (1)又は(2)に記載のドップラーセンサユニットと、複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を機械的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
(4) (1)又は(2)に記載のドップラーセンサユニットと、複数の前記ドップラーセンサモジュールから送信信号を送信する方向及び受信信号を受信する方向を電子的に走査可能な機構を備えるドップラーセンサシステム。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
(5) (1)又は(2)に記載のドップラーセンサユニットを複数備え、複数の前記ドップラーセンサユニットは、移動物体の正面方向にセンサ面が向くように少なくとも1台、移動物体の左右方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台、移動物体の上下方向にセンサ面が向くようにそれぞれ少なくとも1台が配置されるドップラーセンサシステム。