(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123164
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20220817BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020289
(22)【出願日】2021-02-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平岩 光
【テーマコード(参考)】
3D344
5H181
【Fターム(参考)】
3D344AA26
3D344AA30
3D344AB01
3D344AD01
5H181AA05
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の速度及び傾きを合わせた有益な情報を運転者に提供することで、運転者のライディングスキル向上に役立てる。
【解決手段】表示システムにおいて、表示装置は、表示部と、制御部と、を備える。制御部は、地図情報に基づき算出された二輪車の走行予定地点における二輪車の最適速度情報及び最適傾き情報を取得しS40、二輪車が走行予定地点に到達する前の表示タイミングになったか否かを判定しS45、表示タイミングになったと判定したことを契機に、走行予定地点における最適速度情報及び最適傾き情報を表示部に表示するS46。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる表示装置であって、
表示部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
地図情報に基づき算出された前記車両の走行予定地点における前記車両の最適速度情報及び最適傾き情報を取得する最適情報取得処理と、
前記車両が前記走行予定地点に到達する前の所定タイミングになったか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理で前記所定タイミングになったと判定されたことを契機に、前記走行予定地点における前記最適速度情報及び前記最適傾き情報を前記表示部に表示する情報表示処理と、
を実行することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、
前記車両の現在走行位置における実速度情報を取得する実速度情報取得処理を実行し、
前記判定処理において、前記現在走行位置から前記走行予定地点までの距離と前記実速度情報とに応じて定まる前記所定タイミングになったか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記走行予定地点は、
前記車両の進行経路に沿って前記車両の現在走行位置よりも前方側に位置するカーブ地点である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記情報表示処理において、
前記最適速度情報及び前記最適傾き情報のうち少なくとも一方を前記表示部にグラフィカル表示する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に対して所望の表示を行う表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の運転支援装置が知られている。この運転支援装置では、自車両のカーブへの進入が予測された場合に、運転者に対し、カーブに快適に進入・通過するためのアドバイス通知が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車両が二輪車である場合には、カーブを走行するうえで、速度と車体の傾きとが密接に関連する。特にカーブの曲率の大小に応じて、どのような速度及びどのような傾きで走行するかが、最適な運転を実現するためのライディングスキルとして重要である。
しかしながら、上記従来の装置では、速度と車体の傾きとを組み合わせた情報を提供することができず、運転者にとって有益な情報となっていなかったという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両の速度及び傾きを合わせた有益な情報を運転者に提供することで、運転者のライディングスキル向上に役立つ表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表示部130と、制御部100と、を備え、前記制御部100は、地図情報に基づき算出された前記車両1の走行予定地点における前記車両1の最適速度情報及び最適傾き情報を取得する最適情報取得処理S40と、前記車両1が前記走行予定地点に到達する前の所定タイミングになったか否かを判定する判定処理S45と、前記判定処理S45で前記所定タイミングになったと判定されたことを契機に、前記走行予定地点における前記最適速度情報及び前記最適傾き情報を前記表示部130に表示する情報表示処理S46と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の速度及び傾きを合わせた有益な情報を運転者に提供することで、運転者のライディングスキル向上に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態による表示装置を有する表示システムの全体構成を表す機能ブロック図。
【
図2】二輪車走行時の姿勢をX,Y,Z座標軸とともに表す正面図。
【
図4】転倒の恐れのない最適な運転をするための、車速及びバンク角の組合せの例を表す表。
【
図5】転倒の恐れのない最適な運転をするための、車速及びバンク角の組合せの具体的な計算例を表す表。
【
図6】転倒の恐れのない最適な運転をするための、車速及びバンク角の組合せの具体的な別の計算例を表す表。
【
図7】表示部で表示された最適速度情報及び最適傾き情報の一例を表す説明図。
【
図8】表示システムの各部が実行する制御手順を表すフローチャート。
【
図9】グラフィカル表示を行う変形例において表示部で表示された最適速度情報及び最適傾き情報の一例を表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<システム全体構成>
本実施形態の表示装置を有する表示システムの全体構成を表す機能ブロック図を
図1に示す。
図1において、この表示システムSは、例えば車両としての二輪車1(後述の
図2、
図3参照)に搭載される表示装置10と、例えばスマートフォン等の情報端末からなる操作端末20と、例えばクラウドサーバ等からなる適宜のサーバ30と、から構成されている。
【0011】
<表示装置>
表示装置10は、制御部100と、車両通信部110と、モータ駆動部120と、表示部130と、記憶部140と、IMU(Inertial Measurement Unit)センサ150と、BLE(Bluetooth Low Energy)160と、を有している。
【0012】
制御部100は、例えばマイコンにより構成され、入出カインターフェース(図示せず)と、CPU100Aと、ROM100Bと、RAM100Cと、等を有する。制御部100は、ROM100Bに記憶された所定のプログラムをCPU100Aが実行することにより、上記した車両通信部110、モータ駆動部120、表示部130、記憶部140、IMUセンサ150、BLE160の動作を制御する。
【0013】
車両通信部110は、二輪車1に備えられた各種機器を制御するコントロールユニット(ECU)と通信を行うためのインターフェースである(例えば、CAN(Controller Area Network))。車両通信部110はまた、制御部100の制御に基づき、対応する複数のECUを介し上記各種機器を通信してそれぞれから各種車両情報を取得する取得手段あるいは入力手段でもある。この車両情報には、二輪車1の走行速度(車速)や、二輪車1のエンジンの回転数等が含まれる。なお、二輪車1に備えられた各種機器から各種車両情報を取得する手段は、通信でなく、ハードワイヤーを通じた電気接続であってもよい。
制御部100は、この車両通信部110を介し、二輪車1の速度情報を随時取得する。これにより、制御部100は、二輪車1が走行したときの実際のカーブ進入時の速度情報(実速度情報)を入手することができる。
【0014】
IMUセンサ150は、制御部100の制御に基づき、二輪車1の加速度及び角速度(ジャイロ)を定期的に(例えば10ms周期で)検出する検出手段である。そして、IMUセンサ150は、それら加速度及び角速度に基づき二輪車1のロール角 (deg) とピッチ角 (deg) とを算出する。なお、これらロール角及びピッチ角が、傾き情報に相当している。またここではIMUセンサ150は、二輪車1の加速度及び角速度(ジャイロ)を検出し、そして、加速度及び角速度に基づき二輪車1のロール角 (deg) とピッチ角 (deg) とを算出するが、加速度及び角速度(ジャイロ)の検出だけを担い、ロール角 (deg) とピッチ角 (deg) との算出は制御部100又はアプリ170が実施してもよい。さらにIMUセンサ150に代えて加速度センサと角速度センサを別々に設けてもよい。
制御部100は、このIMUセンサ150の算出結果に基づき、二輪車1が走行したときの実際の二輪車1の傾き情報(実傾き情報)を入手することができる。なお、車両として二輪車1が適用される場合は、傾き情報としてロール角が使用される。
【0015】
表示部130は、例えばTFT液晶を備える。表示部130は、制御部100の制御に基づき、上記車両情報や、表示部130に備えられたケースのデザインに合う意匠等を表示する 。特に本実施形態では、上記の二輪車1の実速度情報や、操作端末20から送信される最適速度情報及び最適傾き情報(後述)を表示することができる(詳細は後述)。
【0016】
記憶部140は、例えば、FlashROMにより構成される。記憶部140は、表示部130に出力するための画像・フォント等に関する各種表示用データや、適宜の描画用プログラムを格納している。特に本実施形態では、記憶部140は、前述した最適速度情報及び最適傾き情報(後述)を記憶する機能を有する(詳細は後述)。
制御部100は、記憶部140から上記の各種表示用データの読み出しや、最適速度情報及び最適傾き情報の読出しを行うことができる。
【0017】
モータ駆動部120は、制御部100の制御に基づき、二輪車1に備えられたメータのゲージ(例えばTACHOゲージ)を駆動するモータ(図示省略)に対し、モータ駆動用パルスを出力する。
【0018】
BLE160は、制御部100の制御に基づき、操作端末20のBLE190(後述)と無線通信を行い、各種データや情報の送受信を行う。
【0019】
<サーバ>
サーバ30は、適宜の記憶装置200を備えており、その記憶装置に地図情報を記憶している。またサーバ30は、常に最新の地図情報をデータ通信により操作端末20へと送信する。
【0020】
<操作端末>
操作端末20は、アプリケーションプログラム(以下適宜、単に「アプリ」等と称する)170と、GPSセンサ180と、BLE190と、を有している。
【0021】
GPSセンサ180は、衛星通信に基づき、現在の自車位置情報を取得する。
BLE190は、表示装置10のBLE160と無線通信を行い、各種データや情報の送受信を行う。
【0022】
アプリ170は、ナビゲーション部170Aと、最適速度演算部170Bと、最適傾き角度演算部170Cと、を機能的に有している。
【0023】
ナビゲーション部170Aは、操作端末20に備えられた表示画面(図示省略)又は表示装置10の表示部130に地図情報を表示する。その際、ナビゲーション部170Aは、サーバ30から前述の最新の地図情報を受信することで、表示する地図情報を随時最新のものに更新する。そして、ナビゲーション部170Aは、その地図情報上に、GPSセンサ180が取得した現在の二輪車1の位置情報(現在走行位置)に対応する当該二輪車1の位置を表示するとともに、現在の二輪車1の位置から、事前に運転者により指定された行先(目的地)までの走行経路(進行経路)を表示する機能を有する。
【0024】
最適速度演算部170B及び最適傾き角度演算部170Cの少なくとも一方は、前述の二輪車1の現在の位置情報とサーバ30から取得された地図情報とに基づき、上記走行経路に沿って現在地から進む際に次に曲がることとなるカーブ(走行予定地点の一例)の曲率の大きさを取得する。そして最適速度演算部170Bは、そのカーブの曲率の大きさに合わせた最適な二輪車1のカーブ進入速度を適宜の公知の手法(後述)により算出し、対応する最適速度情報を、BLE190を介して表示装置10へと送信する。同様に、最適傾き角度演算部170Cは、上記カーブの曲率の大きさに合わせた最適な二輪車1の傾き角度を適宜の公知の手法(後述)により算出し、対応する最適傾き情報を、BLE190を介し表示装置10へと送信する。なお、上記走行予定地点はカーブには限られず、道路の直線部分であってもよい。あるいは、交差点や、隧道・橋梁等の道路付帯施設への進入部分や、別の道への分岐部分・合流部分等であってもよい。若しくは、道路の幅員が変わる(狭くなる・広くなる)部分、勾配が変わる(急になる・緩くなる)部分、路面が荒れている部分等、道路環境により速度を変える(減速する・加速する)が好ましい部分であってもよい。さらには、道路環境によらず、人通りの多い箇所や学校・教育施設・介護施設等の近所で子供・高齢者等の不用意な飛び出しが予想される箇所等、道路の周囲環境により減速・徐行が好ましい部分等であってもよい。
【0025】
<実施形態の特徴>
以上の基本構成において、本実施形態の特徴は、二輪車1の走行情報及び傾き情報の両方を合わせて表示部130で表示する、詳細には上述の最適速度情報及び最適傾き情報を表示することにある。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0026】
<二輪車のコーナリング>
まず、本実施形態の手法の技術背景を
図2及び
図3を用いて説明する。
一般に、二輪車1の走行時(特にカーブのコーナリング走行時)には、速度と車体の傾きとが密接に関連する。特にカーブの曲率の大小に応じて、どのような速度及びどのような傾きで走行するかが重要である。
【0027】
例えば
図2に示すように、二輪車1のコーナリング走行時には、車体の重量と運転者(ライダー)の体重との合計とで決まる重力Mgが重心Xに作用している。なおここでgは重力加速度である。
【0028】
ここで、
図2及び
図3に示すように二輪車1の走行速度(定速走行時)をVとし、カーブの半径をRとすると、重心Xには重力Mgが鉛直方向に、車速V及び半径R等で決まる遠心力Y=MV^2/Rがカーブの半径方向外向きに作用している。これに対向するために、通常は、運転者が
図2に示すように二輪車1の車体を内側(図示左側)に傾斜角θだけ傾けて向心力Zを発生させることで、遠心力Yの相殺を図っている。
【0029】
このとき、車速V、半径R、及び傾斜角θの間にはtanθ=V^2/gRが成立しているため、カーブの曲率に対して車速Vが早すぎたり、傾斜角θが大きすぎたりすると、このバランスがくずれ、二輪車1が転倒するおそれがある。したがって、転倒の恐れのない最適な運転をするためには、運転者は、走行時において、これから走行するであろう先のカーブの曲率の大きさに合わせた適切な車速Vと傾斜角θとを常に把握しておくことが必要である。
【0030】
<実施形態の手法>
そこで、本実施形態では、二輪車1の実際の走行時に、操作端末2に備えられた最適速度演算部170B及び最適傾き角度演算部170Cが、次に走行することとなるカーブにおいて転倒の恐れのない最適な運転をするための情報として、上記最適速度情報及び最適傾き情報を生成する。
【0031】
<最適車速及び最適角度の算出(1次算出)>
例えば、前述のように操作端末20のナビゲーション部170Aにおいて取得された地図情報において、次に走行することとなるカーブの半径が50[m](いわゆる50Rのカーブ)であったとする。この場合に、最適速度演算部170B及び最適傾き角度演算部170Cにより算出される、上記最適な運転となる車速V[km/h]及び角度(バンク角)[°]の一例を
図4に示す。この
図4は、各車速Vの値ごとに必要な傾斜角θをtanθ=V^2/gRの式にあてはめて傾斜角θを導出し、その傾斜角θを角度(バンク角)に変換したものである。
【0032】
なお、上記の算出の際に、バンク角の範囲は、各車種ごとに予め異なる範囲が定められており、定められた範囲内で選択される。また本実施形態では、実際には、最適速度演算部170B及び最適傾き角度演算部170Cは、上記のg=標準重力加速度9.8として計算を行っている。そのときの具体的な最適な車速V[km/h]及びバンク角[°]の計算例を、上記同様、50Rの場合を例にとって
図5に示す。また、別の計算例として、カーブの半径が100[m](いわゆる100Rのカーブ)である場合の最適な車速V[km/h]及びバンク角[°]の計算例を
図6に示す。
【0033】
なお、上記の算出の際に、バンク角の範囲は、各車種ごとに予め異なる範囲が定められており、定められた範囲内で選択される。
【0034】
<最終的な最適車速及び最適角度の算出(2次算出)>
上記のようにして、次に走行することとなるカーブについて最適な運転となる車速V[km/h]及び角度(バンク角)[°]が最適速度演算部170B及び最適傾き角度演算部170Cにより1次的に算出された後、最適速度演算部170Bは、ナビゲーション部170Aが地図情報とともにサーバ30から取得した経路中の制限速度情報に基づき、現在走行している区間の法定速度情報を取得する。そして、最適速度演算部170Bは、上記1次的に角度(バンク角)[°]と対応付けて算出された車速V[km/h]の中から、上記取得した法定速度範囲内の複数の速度に絞り込みを行う。最適速度演算部170Bは、上記絞り込んだ複数の速度を、さらに現在の車速情報(表示装置10の車両通信部110が取得した値をBLE190を介して取得)と比較し、法定速度を上限に複数段階(例えば3段階)の推奨速度を所定間隔(例えば5km/h刻み)で抽出する。この結果、最終的にその3つの推奨速度が、次に走行することとなるカーブに対する最適速度情報として最適速度演算部170BからBLE190を介し表示装置10へと送信される。またその際、その複数の推奨速度に対応する角度(バンク角)が、次に走行することとなるカーブに対する最適傾き情報として最適傾き角度演算部170CからBLE190を介し表示装置10へと送信される。
【0035】
なお、運転者があらかじめ例えば操作端末20において自身のライダースキルを「初級」「中級」「上級」・・等の複数段階から選択しておくことで、上記のように抽出される複数段階の推奨車速のうち高速度側から低速度側に向かって順に「上級」「中級」「初級」・・等のように対応させてもよい。この場合、運転者のライディングスキルに合わせた車速とバンク角を表示装置10へ送信し、後述の表示の候補とすることができる。
なお、上記選択としては、段階ではなく、運転者の走行に関する意向に応じ、厳しくコーナーを攻めたい場合の「アグレッシブ」、安全運転重視の「セイフティ」、その中間の「ノーマル」、等の区分けにしてもよい。この場合、上記のように抽出される複数段階の推奨車速のうち高速度側から低速度側に向かって順に「アグレッシブ」「ノーマル」「セイフティ」・・等のように対応させてもよい。
【0036】
<最適速度情報及び最適傾き情報の受信>
表示装置10の制御部100は、上記送信された最適速度情報及び最適傾き情報を、対応する地図情報中の位置情報とともに受信し、記憶部140に一旦記憶する。こうして二輪車1の走行する進行経路に沿って現在走行位置よりも前方側に位置する走行地点、詳細には次に走行することとなるカーブ(以下適宜、単に「次のカーブ」と略称する)について、最適速度情報及び最適傾き情報が記憶部140内に記憶される。
【0037】
<最適情報及び最適傾き情報の表示>
その後、前述のように最適速度情報及び最適傾き情報が算出され記憶部140に記憶済みである次のカーブに対し、ある程度二輪車1が近接した所定タイミングになると、当該次のカーブに係わる上記記憶部140内の最適速度情報及び最適傾き情報が読み出され、表示部130において表示される。このときの表示部130での表示例を
図7に示す。なお、以下に示す表示部130での表示例は、同様の表示を操作端末20側において行ってもよい。
【0038】
図7に示すように、この例の表示では、表示部130の左側において、現在の(現在走行位置を走行中の)実速度情報が「50km/h」として時速表記で表されている。
【0039】
一方、表示部130の右側においては、次のカーブにおける最適速度情報及び最適傾き情報の表示であることを表す「次のカーブ最適値」の表記が上段においてなされている。そして中段には、当該次のカーブにおける最適速度情報が「スピード:20km/h」と表記されている。また下段には、当該次のカーブにおける最適傾き情報が「バンク角:10°」が表記されている。
【0040】
この表示された内容を見て、運転者は、現在の自らの二輪車1の車速が50km/hであることと、次にさしかかるカーブにおいて、理想の走行方法としては、スピード20km/hまで減速しかつバンク角10°の傾きとして進入すればよいことがわかる。
【0041】
<制御手順>
以上説明した本実施形態の上記手法を実現するために、表示システムSの各部が実行する制御手順を、
図8のフローチャートにより説明する。
図8に示すフローは、例えば、運転者の適宜の操作により操作端末20のナビゲーション部170Aが目的地までの走行経路を表示した(=ナビゲーションを実行開始した)状態で二輪車1の走行がスタートしたときに、開始される。
【0042】
まずS5で、制御部100の車両通信部110により、対応するECUを介し、走行している二輪車1の現在の車速、すなわち現在走行位置における上記実速度情報の検出(取得)が開始される。すなわちこれ以降、二輪車1が走行したときの実速度情報が車両通信部110を介して随時取得される。なお、制御部100により実行されるこのS5の処理が、実速度情報取得処理の一例に相当する。
【0043】
その後、S10で、IMUセンサ150により、二輪車1の加速度及び角速度が検出されかつそれらに基づきロール角が算出(取得)される。すなわちこれ以降、二輪車1が走行したときのロール角が車両通信部110を介して随時取得される。
【0044】
そして、S15で、表示装置10の制御部100により、運転者(ライダー)が、二輪車1の適宜の箇所に備えられた操作部(例えばメーターパネルに備えられたタッチパネル若しくは別途のスイッチ・ボタン等)を介しティーチングモードを選択したか否かが判定される。すなわち、本実施形態においては、制御部100の制御モードとして、前述した手法を実行する「ティーチングモード」と、それ以外の「通常モード」とが備えられている。操作部を介しティーチングモードが選択されていなければ(=通常モードのままであれば)No判定され、S5に戻って上記同様の手順が繰り返される。
一方、S15において操作部を介しティーチングモードが選択されたらYes判定され、S20へ移行して制御部100によるティーチングモードが開始され、S30へ移行する。
【0045】
S30では、操作端末20のGPSセンサ180により、この時点(現在)における二輪車1の自車位置(すなわち現在走行位置)が取得される。
【0046】
そして、S35で、操作端末20のアプリ170の最適速度演算部170B又は最適傾き角度演算部170Cにより、S30で取得された現在の二輪車1の位置情報と、ナビゲーション部170Aがサーバ30から取得している地図情報とに基づき、走行経路に沿って現在地から進む際に次のカーブの位置と曲率の大きさとが取得される。
【0047】
その後、S40で、S35で取得された次のカーブの曲率の大きさに基づき、操作端末20のアプリ170の最適速度演算部170B及び最適傾き角度演算部170Cにより、上記次のカーブを走行するための最適速度情報及び最適傾き情報が前述した手法でそれぞれ算出され、表示装置10へと送信される。送信された最適速度情報及び最適傾き情報は表示装置10の制御部100により受信されて取得される。このときに制御部100により実行されるこの処理が最適情報取得処理の一例に相当する。取得された最適速度情報及び最適傾き情報は、記憶部140に記憶される。
【0048】
そして、S42で、操作端末20のアプリ170の最適速度演算部170Bにより、S5で取得された実速度情報(車速)と、ナビゲーション部170Aが取得している地図情報における現在走行位置から次のカーブまでの距離とに応じて、現在走行位置から当該カーブまでの到達時間(所要時間)が計算される。具体的には、上記現在走行位置から次のカーブまでの距離を上記実速度情報(車速)で除算することにより上記到達時間が算出され、その到達時間は表示装置10へと送信される。送信された上記到達時間は表示装置10の制御部100により受信されて取得される。
【0049】
その後、S45で、表示装置10の制御部100により、上記S42で受信された現在走行位置から次のカーブまでの到達時間に基づき、次のカーブに対し二輪車1が近接し、上記最適速度情報及び最適傾き情報を表示すべき所定のタイミング(表示タイミング)になったか否かが判定される。このときに制御部100により実行されるこの処理が判定処理の一例に相当する。
この表示タイミングは、例えば、次のカーブに対し二輪車1が到達するであろう時間の所定時分だけ前(例えば5秒前)のタイミング、のように時間基準で定めることができる。あるいは、次のカーブまでの距離が所定の長さ(例えば50メートル)になったタイミング、のように距離基準で定めることもできる。このような表示タイミングになるまではS45がNo判定されループ待機する。表示タイミングになったらS45がYes判定され、S46へ移行する。
【0050】
S46では、制御部100により、上記S40において記憶部140に記憶され格納されている、次のカーブの最適速度情報及び最適傾き情報が、この時点で車両通信部110により取得されている二輪車1の現在の車速とともに、表示部130において前述したように表示される(前述の
図7参照)。なお、制御部100によるこの処理が情報表示処理の一例に相当する。
【0051】
このとき、S46での表示部130における上記表示に係わる全情報が例えばBLE160,190を介して操作端末20側でも共有され、S46で、操作端末20に備えられた適宜の表示部においてもS46と同様の実速度情報、最適速度情報、最適傾き情報の表示が行われるようにしてもよい。さらには、操作端末20と同様の機能を備えた別の操作端末、例えば運転者とともに二輪車1に同乗した同乗者のスマートフォン等の情報端末において、上記同様の実速度情報、最適速度情報、最適傾き情報の表示が行われるようにしてもよい。
【0052】
その後、S50において、表示装置10の制御部100により、運転者(ライダー)が運転終了あるいは運転中断の停止時等において前述の操作部を介しティーチングモードの解除操作を行ったか否かが判定される。ティーチングモードの解除操作が行われていなければ(=ティーチングモードのままであれば)No判定され、S30に戻って上記同様の手順が繰り返される。操作部を介しティーチングモードが選択されたらYes判定され、S55へ移行して制御部100によるティーチングモードが終了され、このフローを終了する。
【0053】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の表示装置10は、表示部130と、制御部100と、を備える。二輪車1が実際に走行する際、地図情報に基づき、現在走行位置より先の二輪車1の走行予定地点(上記の例では次のカーブ。以下同様)において二輪車1が走行するのに最適な速度である速度情報(最適速度情報)及び最適な傾きである傾き情報(最適傾き情報)が適宜に決定されている。それら最適速度情報及び最適傾き情報は、S40において制御部100により取得される。その後、S45において、制御部100により上記走行予定地点に到達する前の表示タイミングになったか否かが判定される。当該表示タイミングになりYes判定されたら、その後のS46において、最適速度情報及び最適傾き情報が表示部130において表示される(
図7参照)。これにより、運転者は、二輪車1が上記走行予定地点に差し掛かる際、当該地点について地図情報に基づき決定された最適速度情報及び最適傾き情報を視認することで、理想の走行方法を確認することができる。この結果、ライディングスキルを向上することができる。
以上のように、本実施形態によれば、二輪車1の速度情報及び傾き情報を含む有益な情報を運転者に提供できるので、ライディングスキルの向上に役立てることができる。
【0054】
また、本実施形態においては特に、二輪車1に備えられた各種機器から取得される上記車両情報に、現在の(言い換えれば現在走行位置における)二輪車1の実速度情報が含まれ、この実速度情報が、制御部100により随時取得されている(S5)。制御部100は、地図情報に基づき取得された現在走行位置から上記走行予定地点までの距離を、上記のように取得された実速度情報の速度値で除算することで、現在走行位置から走行予定地点までの所要時間を算出することができる。そして、その所要時間に基づき前述の表示タイミング(前述の例では走行予定地点に到達する5秒前)を高精度に定めることができる。これにより、上記S45において、制御部100は、上記のように現在走行位置から走行予定地点までの距離と実速度情報とに応じて定められる表示タイミングに基づき、二輪車1が実質的に走行予定地点に近接したか否かを精度よく判定することができる。
【0055】
また、四輪の自動車と異なり、二輪車1は横転しうるものであるため、走行するうえで速度と車体の傾きとが密接に関連する。前述したように、特にカーブ走行の際に、その曲率の大小に応じて、どのような速度及びどのような傾きで走行するかが重要である。本実施形態においては特に、二輪車1の進行経路に沿って前方側のカーブ地点を走行予定地点とし、そのカーブ地点へ差し掛かる際に、最適速度情報及び最適傾き情報の表示が行われる(S45,S46)。これにより、運転者は、当該カーブ地点を走行するための理想の走行方法を確認できるので、ライディングスキルの向上に特に効果的である。
【0056】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0057】
(1)グラフィカル表示とする場合
すなわち、
図7に示した例では、上記最適速度情報と上記最適傾き情報とを、それぞれ文字表記により「スピード:20km/h」「バンク角:10°」のように表したが、これに代えて、最適速度情報及び最適傾き情報のうち少なくとも一方を、グラフィカルに(非テキストでかつ絵画的・図柄的に)表示するようにしてもよい。
【0058】
表示部130において最適傾き情報をグラフィカル表示とした変形例を
図9に示す。この
図9において、表示部130には、その左側に、
図7と同様、現在の実速度情報が「50km/h」として時速表記で表されている。
【0059】
そして、表示部130の右側のうち、上段には、
図7と同様の「次のカーブ最適値」の表記がなされている。そしてその下に、グラフィカル表示部130Gが設けられている。このグラフィカル表示部130Gでは、傾き情報であるバンク角の数値指標を、鉛直方向を「0°」として左右両側に扇状に並べて配置した背景図柄BG上に、上記最適傾き情報の値(この例ではバンク角10°)に対応させて傾けた二輪車の画像BKが配置されている。運転者は、この二輪車の画像BKを見るだけで、次のカーブを安全に走行するために二輪車1をどれくらい傾けるべきなのかを直感的に知ることができる。上記グラフィカル表示部130Gの下部には、次のカーブに係わる最適速度情報が
図7と同様に「スピード:20km/h」と文字にてテキスト表示されている。
【0060】
なお、上記グラフィカル表示部130Gにおいて、現在の実傾き情報に対応した二輪車1の画像(図示省略)を、上記画像BKと併せて表示する(二輪車1の画像を2つ表示する)ようにしてもよい。この場合、運転者は、次のカーブを安全に走行するために二輪車1をどれくらい傾けるべきなのか、及び、現在二輪車1が実際にどれくらい傾いており、当該カーブへ進入するまでの間に傾き度合いをどの程度増減させるべきか、を直感的に知ることができる。なお、実傾き情報についてはグラフィカル表示ではなくテキストや数字のみで表示してもよい。
【0061】
また、上記のように最適傾き情報をグラフィカル表示し最適速度情報をテキスト表示するのに代えて、逆に最適速度情報をグラフィカル表示し最適傾き情報をテキスト表示してもよいし、最適傾き情報及び最適速度情報の両方をグラフィカル表示するようにしてもよい。
【0062】
本変形例においては、最適速度情報、若しくは最適傾き情報、若しくは最適速度情報及び最適傾き情報の両方が、表示部130においてグラフィカルに表示される。これにより、前述の
図7のようにそれらをテキストや数字のみで表示する場合に比べ、運転者に対し、より直感的に分かりやすく認識させることができる。
【0063】
(2)その他
以上においては、表示装置10における表示部130での表示、及び、操作端末20頭における表示により運転者への報知を行ったが、これに限られない。すなわち、それら表示による視覚的な報知に加え、適宜に設けた音声報知手段によって運転者に対して上記表示と同様の内容の音声により報知を行ってもよい。この場合の音声報知手段としては、二輪車1のメーターパネルに設けたスピーカーや、運転者のヘルメット内のヘッドセットに設けたスピーカー、等が用いられる。
【0064】
また、以上において、表示システムSでは、サーバ30と、操作端末20と、表示装置10とが設けられ、それぞれにおいて機能が分担されていたが、これに限られない。すなわち、操作端末20における上述の各種機能を実行する構成が、表示装置10側において設けられていてもよい。その場合、さらにサーバ30内から取得する地図情報が表示装置10内に記憶され、かつ、最新の情報に随時更新されるようにしてもよい。
【0065】
また、
図8に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0066】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0067】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 二輪車(車両)
10 表示装置
20 操作端末
30 サーバ
100 制御部
100A CPU
100B ROM
100C RAM
110 車両通信部
120 モータ駆動部
130 表示部
130G グラフィカル表示部
140 記憶部
150 IMUセンサ
160 BLE
170 アプリケーションプログラム
170A ナビゲーション部
170B 最適速度演算部
170C 最適傾き角度演算部
180 GPSセンサ
190 BLE
200 記憶装置
BG 背景図柄
BK 二輪車の画像
Mg 重力
MP 地図表示画面
R 半径
S 表示システム
V 走行速度(車速)
X 重心
Y 遠心力
θ 傾斜角