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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012319
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】艶消し樹脂フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220107BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20220107BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20220107BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J3/22
C08L23/06
C08K3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114098
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】390000387
【氏名又は名称】福助工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】大河内 泰貴
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AC22
4F070AC27
4F070AC47
4F070AE01
4F070AE09
4F070FB03
4F071AA18
4F071AA19X
4F071AB26
4F071AB30
4F071AC12
4F071AE11
4F071AE17
4F071AF15
4F071AF20
4F071AF21
4F071AF28
4F071AF30
4F071AF32Y
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB09
4F071BC01
4F071BC12
4J002BB031
4J002DJ046
4J002FD016
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】艶消し印刷を施す必要がなく、良好な艶消し性を備え、安定して量産可能な艶消し樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂と、無機系フィラーとを含有する樹脂層を備えた樹脂フィルムであって、前記ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、前記樹脂層中の前記無機系フィラーの含有率が5質量%~30質量%である。前記ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンをベース樹脂として低密度ポリエチレンを含有するのが好ましく、前記無機系フィラーはタルクであるのが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂と、無機系フィラーとを含有する樹脂層を備えた樹脂フィルムであって、前記ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、前記樹脂層中の前記無機系フィラーの含有率が5質量%~30質量%である艶消し樹脂フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンをベース樹脂として低密度ポリエチレンを含有してなる請求項1に記載の艶消し樹脂フィルム。
【請求項3】
前記無機系フィラーがタルクである請求項1又は2に記載の艶消し樹脂フィルム。
【請求項4】
前記無機系フィラーを含有する樹脂層の光沢度が50%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の艶消し樹脂フィルム。
【請求項5】
前記無機系フィラーを含有する樹脂層と、無機系フィラーを含有しないポリオレフィンからなる樹脂層とを積層してなる請求項1~4のいずれか1項に記載の艶消し樹脂フィルム。
【請求項6】
低密度ポリエチレンと無機系フィラーとを混合してマスターバッチを作製し、前記マスターバッチと、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンのうち少なくとも直鎖状低密度ポリエチレンを混合して得られた樹脂組成物をインフレーション成形する艶消し樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂と無機系フィラーとを含有する樹脂層を備えた艶消し樹脂フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、オムツや生理用品等の包装材料として樹脂フィルムが使用されている。しかし、樹脂フィルムは光沢があり高級感に欠けることから樹脂フィルムに艶消し印刷を施した艶消し包装材料が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-129756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記包装材料ではフィルム基材に艶消し印刷を施す必要があり、製造コストがかかるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明においては、艶消し印刷を施す必要がなく、良好な艶消し性を備え、安定して量産可能な艶消し樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様としての艶消し樹脂フィルムは、ポリエチレン系樹脂と、無機系フィラーとを含有する樹脂層を備え、前記ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、前記樹脂層中の前記無機系フィラーの含有率が5質量%~30質量%である。
【0007】
前記ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンをベース樹脂として低密度ポリエチレンを含有してもよい。
【0008】
前記無機系フィラーを含有する樹脂層の光沢度が50%以下としてもよい。
【0009】
前記無機系フィラーがタルクであってもよい。
【0010】
また、艶消し樹脂フィルムは、前記無機系フィラーを含有する樹脂層と、無機系フィラーを含有しないポリオレフィンからなる樹脂層とを積層した積層構造としてもよい。
【0011】
艶消し樹脂フィルムの製造方法として、低密度ポリエチレンと無機系フィラーとを混合してマスターバッチを作製し、前記マスターバッチと、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンのうち少なくとも直鎖状低密度ポリエチレンを混合して得られた樹脂組成物をインフレーション成形するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、直鎖状低密度ポリエチレンを含有するポリエチレン系樹脂と無機系フィラーと混合した樹脂組成物は成形性に優れているため、艶消し印刷を施すことなく、良好な艶消し性を備え、安定して量産可能な艶消し樹脂フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る艶消し樹脂フィルムは、ポリエチレン系樹脂と、無機系フィラーとを含有する樹脂層(以下、フィラー含有樹脂層という)とを備え、前記ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、前記樹脂層中の前記無機系フィラーの含有率が5質量%~30質量%である。
【0014】
ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有する。ポリエチレン系樹脂としてはLLDPEを単独で使用してもよいが、LLDPEをベース樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)を含有したものであるのが好ましく、ポリエチレン系樹脂中のLLDPEの含有率が75質量%~95質量%であり、ポリエチレン系樹脂中のLDPEの含有率が5質量%~25質量%であることがより好ましい。
【0015】
LLDPEにLDPEを配合することで樹脂組成物に適度な粘性を付与することが可能で、押出成形性が向上するという効果を奏する。特に、樹脂組成物をインフレーション成形する場合に膜厚が均一でムラのない艶消し樹脂フィルムを得ることができる。なお、ポリエチレン系樹脂としては、LLDPE及びLDPEのほかに、成形性を損なわない範囲で高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等を配合することも可能である。
【0016】
無機系フィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪藻土などを単独で又は2種以上併用することができる。この中でもタルクは少ない充填量で樹脂に剛性や耐熱性を付与できることから好ましい
【0017】
ポリエチレン系樹脂に無機系フィラーを混合することによって樹脂フィルムの光沢度が低下し、艶消し性を発揮する。ここで光沢度とはJIS K7105に準じて測定した値を意味する。良好な艶消し性を得るためには、光沢度80%以下であればよく、光沢度50%以下であるのが好ましい。
【0018】
本発明の艶消し樹脂フィルムは、前記フィラー含有樹脂層と、無機系フィラーを含有しないポリオレフィンからなる樹脂層(以下、ポリオレフィン樹脂層という)とを積層した積層構造とすることもできる。この場合、フィラー含有樹脂層を最外層とすればよい。ポリオレフィンとしては、フィラー含有樹脂層と同等の押出成形性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ポリエチレン系樹脂と同様にLLDPE及びLDPEのうち少なくともLLDPEを使用することができる。艶消し樹脂フィルムを積層構造とする場合、フィラー含有樹脂層以外に1層以上のポリオレフィン樹脂層を積層することができる。
【0019】
フィラー含有樹脂層を構成する樹脂組成物(以下、フィラー含有樹脂組成物という)およびポリオレフィン樹脂層を構成する樹脂組成物(以下、ポリオレフィン樹脂組成物という)には、本発明の目的を損なわない範囲で、一般的に用いられている帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤などの安定剤、染料、顔料などの着色剤、スリップ剤およびアンチブロッキング剤(AB剤)などの添加剤を配合することができる。
【0020】
本発明の艶消しフィルムの製造方法について説明すると、先ず、無機系フィラーにポリエチレン系樹脂の一部を混合してマスターバッチ(MB)を作製する。得られたMBにポリエチレン系樹脂の残量(LLDPE及びLDPEのうち少なくともLLDPE)を加えて混合してフィラー含有樹脂組成物を調製し、押出成形機から押出して成膜する。
【0021】
溶融樹脂を成膜する方法としては、Tダイから押し出した溶融樹脂を冷却ロールにて圧延する方法、溶融樹脂を環状ダイから押し出してインフレーション法によって延伸する方法等を用いることができる。中でもインフレーション成形方法は膜厚が薄いフィルムを得ることができる点で好ましい。
【0022】
なお、MBに用いるポリエチレン系樹脂としては、LLDPEでもよいが、LDPEを用いるのが好ましい。LDPEは加熱時に適度な粘性を有することから、無機系フィラーの分散性に優れたMBを得ることができる。特に、インフレーション成形において、表面外観(艶消し性、表面凹凸等)の均質性に優れた樹脂フィルムを得ることができる。
【0023】
フィラー含有樹脂層を構成する樹脂組成物は、無機系フィラーを含有することでフィルム化したときの表面凹凸により滑り性が低下する可能性が生じる。上記添加剤のうちスリップ剤を樹脂組成物に添加することで良好な滑り性を維持することができる。スリップ剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等の炭化水素系スリップ剤;ステアリン酸やステアリルアルコール等の脂肪酸系スリップ剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪族アミド系スリップ剤等が挙げられる。
【0024】
上記スリップ剤の中でも押出成形時、特にインフレーション成形時における成形性が良好である点でエルカ酸アミドを使用するのが好ましい。フィラー含有樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層との積層構造の艶消し樹脂フィルムを製造する場合、フィラー含有樹脂層表面とポリオレフィン樹脂層表面とで滑り性が異なり、艶消し樹脂フィルムの取り扱い性が低下する可能性がある。
【0025】
このような場合は、ポリオレフィン樹脂組成物中のスリップ剤含有量に対してフィラー含有樹脂組成物中のスリップ剤含有量を高くするのが好ましい。具体的には前者に対する後者のスリップ剤質量比が1.2~2.0となるように調整するのが好ましく、スリップ剤質量比を1.5~2.0に調整するのがより好ましい。
【0026】
本発明に係る艶消し樹脂フィルムは、光沢度が低く、艶消し性に優れており、高級感を備えていることから、たとえば、オムツ包装袋、ナプキン包装袋、トイレットペーパー包装袋、ティシュー包装袋、キッチンペーパー包装袋、タオルペーパー包装袋、尿漏れパット包装袋、ペットシーツ包装袋などの構成材料として使用することができる。
【実施例0027】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
[艶消し樹脂フィルムの作製]
本実施例では、無機系フィラーとしてタルクを使用し、LDPEを混合してMBを作製した。作製したMBに残量のポリエチレン系樹脂として所定量のLLDPE及びLDPEを混合し、そこへ所定量のアンチブロッキング剤及びスリップ剤を添加してフィラー含有樹脂組成物を調製した(表1参照)。
【0029】
得られたフィラー含有樹脂組成物は、押出機で押出し、インフレーション成形法によって成膜し、厚みが50μmの艶消し樹脂フィルムを得た。実施例で使用した原料を以下に記す。
・ポリエチレン系樹脂:LLDPE+LDPE
・無機系フィラー:タルクフィラー
・スリップ剤:エルカ酸アミド(ポリエチレン系樹脂を用いた4%MBを使用)
・AB剤:合成ゼオライト(ポリエチレン系樹脂を用いた10%MBを使用)
【0030】
【表1】
【0031】
[艶消し樹脂フィルムの評価]
(1)引張強力、引張伸度
作製したNo.1~8の艶消し樹脂フィルムについて、JIS K7127に準拠して引張強力及び引張伸度を測定した。
【0032】
(2)弾性率
作製したNo.1~8の艶消し樹脂フィルムについて、JIS K7127に準拠して引張弾性率を測定した。これをMD方向、TD方向、それぞれについて算出した。
【0033】
(3)動摩擦係数
No.1~8の艶消し樹脂フィルムについて、JIS K7125に準拠して動摩擦係数を測定した。
【0034】
(4)HAZE値
No.1~8の艶消し樹脂フィルムについて、JIS K7136に準拠してHAZE値を測定した。
【0035】
(5)光沢度
No.1~8の艶消し樹脂フィルムについて、JIS K7105に準拠して光沢度を測定した。
【0036】
[評価結果]
表1より、無機系フィラー(タルク)の含有率0質量%(No.1)に比べて、無機系フィラーを5質量%以上添加したNo.2~8では光沢度が50%以下に大幅に減少しており、良好な艶消し性を備えることがわかる。また、無機系フィラーの添加量が増加するにつれてHAZE(透明性)の値が大きくなり、不透明な外観となる。
【0037】
艶消し樹脂フィルム表面を光学顕微鏡により観察すると、無機系フィラー含有率0質量%(No.1)では表面に凹凸はほとんど無く平滑な状態であるのに対し、無機系フィラー含有率が増加するにしたがい(No.2~8)、2μm~20μm程度の凸部の増加が確認される。それにより、光沢度の低下や透明性の低下といった外観の変化を与える結果となっている。
【0038】
引張弾性率及び動摩擦係数は無機系フィラー含有率0質量%(No.1)に比べて無機系フィラー含有率が増加するにしたがい(No.2~8)測定値が大きくなっている。特に、無機系フィラー含有率40質量%(No.7)では引張弾性率が1000MPa以上となり、フィルムとしての柔軟性が低下する。
【0039】
また、引張強力及び引張伸度については、無機系フィラー含有率40質量%以上で大きく低下している(No.7及び8)。以上の結果より、艶消し性を発揮するには無機系フィラーの含有率を5質量%以上とする必要があり、強度低下の観点から無機系フィラー30質量%であれば樹脂フィルムとして好適に使用可能である。
【0040】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。