(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123242
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】グリッパ
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020422
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】安田 大介
(72)【発明者】
【氏名】八幡 宗夫
(72)【発明者】
【氏名】松尾 來輝
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CY32
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES10
3C707ET08
3C707EV11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高いグリッパを提供する
【解決手段】グリッパは、開閉可能に設けられた爪部材11と、グリップ部材12とを有する。グリップ部材12は、把持層121と突出体131と支持体130とを含む。把持層121は平板状に形成され、把持対象物と接触するように設けられる。突出体131は弾性変形可能な樹脂製である。把持方向に沿って延在する柱状に形成された複数の突出体131が、把持方向に沿って見て散在するように並べられる。突出体の一端131aは把持層121に当接する。支持体130は樹脂製で、突出体131よりも硬度が低い。支持体130はブロック状に形成され、複数の穴130Hが設けられている。突出体131が横倒れになることが抑制されるように、突出体131が当該穴130Hに挿入されている。突出体131は、前記一端131aの側で支持体130から突出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、
把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、
前記グリップ部材は、把持層と、突出体と、支持体とを含み、
前記把持層は平板状に形成され、把持対象物と接触するように設けられ、
前記突出体は、弾性変形可能な樹脂製であり、
把持方向に沿って延在する柱状に形成された複数の突出体が、把持方向に沿って見て散在するように並んで設けられており、
前記突出体の一端は把持層に当接しており、
前記支持体は、前記突出体を構成する樹脂よりも硬度が低い樹脂製であり、
前記支持体は、ブロック状に形成されるとともに、複数の穴が設けられており、
前記突出体が横倒れになることが抑制されるように、前記突出体が当該穴に挿入されており、かつ、
前記突出体は、前記一端の側で、支持体から突出している、
グリッパ。
【請求項2】
把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、
把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、
前記グリップ部材は、把持層と、突出体と、支持体とを含み、
前記把持層は平板状に形成され、把持対象物と接触するように設けられ、
前記突出体は、弾性変形可能な樹脂製であり、
把持方向に沿って延在する板状に形成された複数の突出体が、把持方向に沿って見て間隔を隔てて並ぶように設けられており、
前記突出体の一端は把持層に当接しており、
前記支持体は、前記突出体を構成する樹脂よりも硬度が低い樹脂製であり、
前記支持体は、板状もしくは直方体状に形成されるとともに、複数設けられており、
前記突出体が横倒れになることが抑制されるように、把持方向と略直交する方向に突出体と支持体が交互に積層されており、かつ、
前記突出体は、前記一端の側で、支持体から突出している、
グリッパ。
【請求項3】
前記支持体が発泡樹脂製である、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【請求項4】
前記突出体が、把持層に対し、接着、粘着、溶着もしくは一体成型されている、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【請求項5】
前記突出体が、支持体に対し、接着、粘着、溶着もしくは一体成型されている、
請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットなどに使用されるグリッパ、特に、開閉動作により作業対象物を把持するグリッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用ロボットが部材の搬送や組立等、多彩な用途に使用されている。産業用ロボットによって、作業対象物を搬送する、いわゆるマテリアルハンドリングのための産業用ロボットも実用化されている。産業用ロボットにより、作業対象物の搬送を行う場合には、産業用ロボットのアームに、グリッパ(エンドエフェクタと呼ばれる場合もある)が取り付けられて、グリッパにより作業対象物が操作される。作業対象物の性質や形状により、グリッパが使い分けられるが、グリッパには、磁力や真空引きなどの吸引力を利用するものや、開閉動作により作業対象物を把持するものなどがある。
【0003】
開閉動作により作業対象物を把持するグリッパとしては、例えば、特許文献1に開示されるものが知られている。特許文献1のグリッパは、板バネとクッション材がアクチュエータにより開閉される。当該グリッパによれば、脆弱な機械的特性を持つ物の把持や搬送ができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のグリッパは、グリッパが把持対象物(搬送作業の対象物)を把持する部分にクッション材を用いているため、把持の際の衝撃力が緩和されるが、その反面、把持する際の保持力が、単純にクッション材と把持対象物の間の摩擦力に依存することになる。そのため、
図10に示すように、把持方向と交差する方向には保持力が弱く、把持対象物が落下したり、把持された把持対象物の位置や姿勢等が変化したりしやすいという課題を有している。
【0006】
本発明の目的は、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高いグリッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、グリッパに設けられて把持対象物と接触するグリップ部材を把持層と突出体と支持体とを含むように構成し、把持層の背後に柱状や板状の突出体を複数並べ、突出体が横倒れしないように柔軟な支持体で突出体を支えながら、突出体が把持層に向かって支持体から突出するようにグリップ部材を構成すると、把持対象物を柔軟に把持しながら保持力が高められることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、前記グリップ部材は、把持層と、突出体と、支持体とを含み、前記把持層は平板状に形成され、把持対象物と接触するように設けられ、前記突出体は、弾性変形可能な樹脂製であり、把持方向に沿って延在する柱状に形成された複数の突出体が、把持方向に沿って見て散在するように並んで設けられており、前記突出体の一端は把持層に当接しており、前記支持体は、前記突出体を構成する樹脂よりも硬度が低い樹脂製であり、前記支持体は、ブロック状に形成されるとともに、複数の穴が設けられており、前記突出体が横倒れになることが抑制されるように、前記突出体が当該穴に挿入されており、かつ、前記突出体は、前記一端の側で、支持体から突出している、グリッパである(第1発明)。
【0009】
また、本発明は、把持対象物を把持するよう開閉可能に設けられた爪部材と、把持対象物を把持する際に把持対象物と接触するように爪部材に取り付けられたグリップ部材とを有するグリッパであって、前記グリップ部材は、把持層と、突出体と、支持体とを含み、前記把持層は平板状に形成され、把持対象物と接触するように設けられ、前記突出体は、弾性変形可能な樹脂製であり、把持方向に沿って延在する板状に形成された複数の突出体が、把持方向に沿って見て間隔を隔てて並ぶように設けられており、前記突出体の一端は把持層に当接しており、前記支持体は、前記突出体を構成する樹脂よりも硬度が低い樹脂製であり、前記支持体は、板状もしくは直方体状に形成されるとともに、複数設けられており、前記突出体が横倒れになることが抑制されるように、把持方向と略直交する方向に突出体と支持体が交互に積層されており、かつ、前記突出体は、前記一端の側で、支持体から突出している、グリッパである(第2発明)。
【0010】
第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記支持体が発泡樹脂製である(第3発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記突出体が、把持層に対し、接着、粘着、溶着もしくは一体成型されている(第4発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、前記突出体が、支持体に対し、接着、粘着、溶着もしくは一体成型されている(第5発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグリッパ(第1発明、第2発明)によれば、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高められるとの効果が得られる。さらに、第3発明によれば、より柔軟性が高められる。また、第4発明もしくは第5発明によれば、より保持力が高められ、突出体を効果的にグリップ部材に一体化できるとの効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のグリッパを取り付けた産業用ロボットの模式図である。
【
図3】本発明第1実施形態のグリッパの爪部材とグリップ部材の構造を示す断面図である。
【
図4】本発明第1実施形態のグリッパのグリップ部材の突出体と支持体の構造を示す斜視図である。
【
図5】本発明第1実施形態のグリッパにより把持対象物を把持した際の、グリップ部材の変形形態を示す断面図である。
【
図6】突出体の形状および配置の他の例を示す図である。
【
図7】突出体および支持体の他の例を示す斜視図である。
【
図8】突出体および支持体のさらに他の例を示す図である。
【
図9】他の実施形態のグリッパの爪部材やグリップ部材の構造を示す断面図である。
【
図10】従来のグリッパにより把持対象物を把持した際の、クッション部材の変形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、産業用ロボットに取り付けられるグリッパを例として、発明の実施形態について説明する。なお、発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。例えば、本発明のグリッパは、産業用ロボットだけでなく、家庭内や病院等で用いられるロボットにも使用できる。
【0014】
図1は、本発明第1実施形態のグリッパ10を取り付けた産業用ロボットの模式図である。グリッパ10は、ロボットのアームAの先端部に取り付けられて使用される。ロボットのアームの具体的形式や形態は特に限定されない。アームAは多関節式であってもよいし、平行移動式のアームであってもよい。
【0015】
図2は、本発明のグリッパ10の構成を示す図である。本発明のグリッパは、開閉動作によって、把持対象物99(作業対象物とも記載する)を把持することができ、本発明のグリッパを備える産業用ロボットは把持対象物を把持して搬送することができる。
【0016】
グリッパ10は、駆動部19と爪基部18,18を有する。駆動部19に備えられた動力装置(例えばモータや圧力シリンダー等)と機構(例えば減速機構や、リンク、カム等)により爪基部18,18が開閉運動し、後述する爪部材11,11やグリップ部材12,12を開閉する。例えば、本実施形態では、電動モータとボールねじを組み合わせて、爪基部18,18が平行に開閉するよう、駆動部19が構成されている。なお、駆動部19や爪基部18の具体的構成や機構は、特に限定されず、爪部材やグリップ部材を平行に開閉させるものであってもよく、コンパス状に開閉させるものであってもよい。また、爪基部18,18は必須ではなく、駆動部19により後述する爪部材11,11が直接開閉駆動されてもよい。爪基部18,18があれば、グリッパ10において爪部材11やグリップ部材12を交換しやすくなって便利である。
【0017】
グリッパ10は、爪部材11,11とグリップ部材12,12とを有する。爪部材11は、グリッパ10が把持対象物99を把持するよう、開閉可能に設けられている。本実施形態では、爪部材11は爪基部18にネジ等によって取り付けられて、開閉可能とされている。グリップ部材12は、爪部材11に取り付けられており、爪部材とともに開閉動作する。また、グリップ部材12は、把持対象物99を把持する際に、把持対象物99と直接接触するように設けられる。
【0018】
グリッパ10の把持動作に伴い、爪部材11およびグリップ部材12が移動する方向を以下、「把持方向」という。
図2において、把持方向は、図の左右方向である。
また、本実施形態では、爪部材11とグリップ部材12とが、それぞれ、対をなすように2つ設けられている。これにより、グリップ部材12,12の間に置かれた把持対象物が、爪部材11,11の間隔が狭まることにより、グリップ部材12,12の間に把持される。爪部材11とグリップ部材12の数は、2つに限定されず、1つ、もしくは3つ以上であってもよい。
【0019】
爪部材11やグリップ部材12の構成について、以下、より詳細に説明する。
図3は、第1実施形態のグリッパ10における爪部材11とグリップ部材12の構造を示す断面図である。
図3の左上の図が、
図2における左側の爪部材11とグリップ部材12に対応した視点での断面図となっている。
図3の左上の図および、
図3左下の図(X-X断面図)において、把持方向は図の左右方向となっており、
図3右上の図(Y-Y断面図)において、把持方向は紙面奥行き方向となっている。
【0020】
爪部材11は、駆動部19により与えられる爪基部18の開閉運動が、グリップ部材12に良く伝わるように、金属やプラスチック等、グリップ部材12に比べ硬質な材料で形成されている。必須ではないが、グリッパ10による把持が行われる際に、爪部材11と把持対象物99の間にグリップ部材12が挟まれるようになって、爪部材11が、グリップ部材12を介して把持対象物99を押すように、爪部材11が構成されていることが好ましい。
【0021】
グリップ部材12は、爪部材11に比べ柔軟であり、グリッパ10が把持対象物99を把持する際には、グリップ部材12が変形しながら、把持対象物99が把持される。
グリップ部材12は、把持層121と、突出体131と、支持体130とを含む。グリップ部材12は、これら層121や部材131,130が把持対象物(99)の側から並ぶ構造に構成されている。
【0022】
把持層121とは、把持対象物と接触するように設けられた層のことである。また、把持層121の外表面を、以後、把持面12Sと呼ぶ。
把持層121は、平板状に形成された層である。好ましくは、把持層121は、JIS-K6253に準拠するデュロA硬度で30~80HDAの樹脂により構成される。把持層121が樹脂により構成される場合には、把持層121を構成する樹脂は、シリコーンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴムや、ウレタンゴム等のゴムや熱硬化性樹脂であってもよく、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーであってもよく、軟質塩化ビニル樹脂や酢酸ビニル樹脂(EVA樹脂)などの熱可塑性樹脂であってもよい。これら樹脂には、必要に応じ、各種添加剤やフィラー等が配合されていてもよい。
【0023】
把持層121を構成する材料は樹脂に限定されない。また、把持層121を構成する材料にやや硬質な材料が含まれていても、把持層121の厚みtを薄く、例えば0.3~1mmとすれば、把持層121を把持方向に柔軟に変形可能にできる。把持層を構成する他の材料や素材の例としては、例えば布材に樹脂を塗布もしくは含浸させた材料(例えば、人工皮革素材やターポリン材等)や、布(織布や不織布)や紙や樹脂シート等を積層した積層材料などが例示できる。もちろん、把持層121は単層で構成されていてもよい。
【0024】
突出体131は、把持対象物99を把持した際に弾性変形可能な可撓性を有するよう、樹脂により形成されている。突出体131を構成する樹脂は、ゴムや熱可塑性エラストマーや、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などであってもよい。必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、突出体131を構成する樹脂の硬度が、把持層121を構成する樹脂の硬度よりも高くされる。限定はされないが、突出体131を構成する樹脂の硬度は、典型的にはデュロA硬度で60度~85度程度である。
【0025】
突出体131は、把持層121の背後に、すなわち、把持層121に対し把持対象物99とは反対側に、把持方向に沿って延在するように、複数設けられる。本実施形態では、柱状の突出体131,131が、把持方向に沿って見て散在するように並んで設けられている。好ましくは、把持方向に沿って見た突出体131,131の間隔(G1,G2)が、把持層121の厚みtよりも大きくされる。
【0026】
突出体131,131の一端131aは、把持層121に当接するように設けられる。必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、突出体131が、把持層121に対し、接着されている。突出体131が、把持層121に対し、粘着、溶着もしくは一体成型されていることも好ましい。
【0027】
突出体131,131が把持層121の背後に、把持層121に当接しつつ散在して配置されることにより、突出体131と把持層121が接触する部位と、突出体131と把持層121が接触しない部位とが、把持方向に沿って見て海島状に分布することになる。把持層121は把持方向に柔軟に変形しうるが、突出体131と接触する部位では、把持層121は突出体131により支持されて、把持方向の変形が制限される。
【0028】
突出体131は把持方向に沿って延在するが、把持方向と突出体131の延在方向は厳密に一致している必要はなく、例えば、柱状の突出体131の延在方向と把持方向が30度程度の角度をなしていてもよい。また、突出体は後述する実施形態のように、板状であってもよい。
【0029】
支持体130は樹脂製であり、支持体130は、把持対象物が把持される際に、支持体が把持方向に柔軟に変形しうる程度の柔軟性を有している。また、支持体130を構成する樹脂の硬度は、前記突出体131を構成する樹脂の硬度よりも低い。
【0030】
本実施形態では、支持体130は、ブロック状に形成されるとともに、複数の穴130H,130Hが設けられている。穴は、突出体の延在方向と一致する方向に開けられる。そして、突出体131,131が横倒れになることが抑制されるように、突出体131,131が当該穴に挿入されている。すなわち、柱状の突出体131が穴130Hに挿入されることにより、支持体130が突出体131を横方向から支えることになって、突出体が横倒れしにくくなる。好ましくは、突出体131が穴130Hに挿入される部分で、突出体131の外周面と穴130Hの内周面が密着している。また、ブロックの形状は特に限定されず、例えば、直方体状や円柱状であってもよい。
【0031】
必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、突出体131が、支持体130に対し、接着されている。突出体131が、支持体130に対し、粘着、溶着もしくは一体成型されていることも好ましい。
【0032】
そして、突出体131,131は、前記一端(131a)の側、すなわち、把持層121に当接する側で、支持体130から突出している。なお、必須ではないが、把持層121の厚みtよりも、突出体131が支持体130から突出する突出量T1が大きいことが好ましい。
【0033】
支持体130を構成する樹脂は、ゴムや熱可塑性エラストマー、軟質な熱可塑性樹脂や、柔軟なゲル材料等であってもよい。支持体130を構成する樹脂は、特に発泡樹脂であることが好ましい。
支持体130を構成する発泡樹脂は、連続気泡構造を有する発泡樹脂であってもよく、独立気泡構造を有する発泡樹脂であってもよい。グリップ部材12の柔軟性を高める観点からは、連続気泡構造を有する発泡樹脂により支持体130が構成されることが好ましい。
【0034】
支持体130を構成する発泡樹脂の硬さは、JIS-K6254もしくはJIS-K6400-2に準拠して測定した25%圧縮時の荷重(加圧力)が5~200kPaとなる硬さであることが好ましい。なお、発泡樹脂がウレタンスポンジの場合には、JIS-K6400-2に準拠して測定し、発泡樹脂がエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)やクロロプレンゴム(CR)などのゴムスポンジの場合には、JIS-K6254に準拠して測定するものとする。
【0035】
連続気泡構造を有する発泡樹脂は、例えば、発泡ウレタン樹脂や、発泡させた後破泡させた発泡ゴム等であってもよい。発泡樹脂が連続気泡構造を有していることにより、グリップ部材12の柔軟な変形が促される。なお、連続気泡構造を有する発泡樹脂は、独立気泡構造の気泡を一部含んでいてもよい。
【0036】
また、必須ではないが、支持体130がより柔軟な変形を許容するよう、支持体130には、把持方向と直交する方向、例えば爪部材の延在方向に延在する1つもしくは複数の穴が開けられていてもよい。また、支持体130は、中空の風船状に形成されたものであってもよい。
【0037】
必須ではないが、例えば本実施形態では、突出体131と支持体130は、
図4に示すような形態で設けられる。
図4には、支持体130と突出体131のみを抜き出して斜視図で示している。本実施形態の突出体131,131は、把持方向と一致する方向に延在する四角柱状である。この実施形態では、把持方向に沿って見た際に互いに隣接する突出体131,131の間に隙間G1,G2を生ずるように、直交する仮想的な格子の頂点に位置して、突出体131,131が配置されている。突出体の具体的構成はこれに限定されず、後述する他の実施形態のように、他の構成であってもよい。
【0038】
また、必須ではないが、好ましくは、本実施形態のように、グリップ部材12は、外皮部材120を含むように構成される。外皮部材120は、その一部が把持層121となるように構成された中空構造の部材である。そして、支持体130と突出体131,131とが、外皮部材120の内側(中空構造の中空部)に配置されることが好ましい。
【0039】
また、必須ではないが、好ましくは本実施形態のように、グリップ部材12には、把持対象物99を把持した際に外皮部材120内部の空気が外皮部材の外に抜ける通気口124が設けられている。通気口124が設けられることにより、把持対象物を把持する際のグリップ部材12の柔軟な変形が促される。
本実施形態においては、中空箱状に形成された外皮部材120の一側面が取り除かれたようになっており、その部分が通気口124となっている。通気口の具体的形態は他の形態であってもよい。例えば、後述する実施形態のように、通気口は爪部材に設けられていてもよく、爪部材とグリップ部材の接続部に設けられていてもよい。
【0040】
必須ではないが、本実施形態におけるグリップ部材12の外皮部材120は、以下の形態を有する。外皮部材120は、把持層121となる平板状の壁(以下「把持壁」とも記載する)と、側壁122,123を有するような、箱状の中空形状に一体成型されている。
ここで、側壁122,123とは、把持動作の開閉方向(把持方向)に沿って延在する壁部のことであり、かつ、側壁122,123は、把持壁(121)に対し把持対象物99と反対方向に延在している。把持方向に沿って延在する側壁122,123は、好ましくは、平板状もしくは円筒状に設けられる。
【0041】
平板状の把持層121は、完全な平板である必要はなく、後述する他の実施形態における把持層のように、やや膨らんだりへこんだりした湾曲面や球面の把持層であっても、おおむね平らであれば、平板状の把持層に含まれる。
また、把持層121が把持対象物99と接触する把持面12Sには、摩擦力や表面の粘着性を調節するために、突起、穴、凸条や凹溝、チェッカリング、ドットパターンや、梨地、しわ、シボ、などの地模様が設けられていてもよい。把持層121の把持面12S側が樹脂により構成される場合には、樹脂にシリカ粒やゴム粒などの粒状体を練りこんで、当該粒状体が把持面12Sに露出するようにしてもよい。あるいは、把持面12Sには、シリコーンゴムやEVA樹脂、不織布、樹脂フィルム(ポリイミドフィルム、PETフィルム等)などの、把持壁とは異なる材料で構成される表面層が設けられていてもよい。
【0042】
グリップ部材12と爪部材11の一体化(取り付け)は、特に限定されない。本実施形態では、外皮部材120に、袋状の穴を設けた取り付け部125を設けておき、取り付け部125の穴に爪部材11を挿入して、グリップ部材12と爪部材11の一体化が行われる。脱落防止等の必要に応じて、外皮部材120と爪部材11の間をねじ止めしたり、両者を接着剤や粘着剤、粘着テープなどで固定したりしてもよい。あるいは、爪部材11に、支持体130、突出体131、把持層121を、接着剤等により順次一体化して、グリップ部材12を構成しつつ爪部材11に一体化してもよい。
【0043】
上記グリッパ10を構成するための部材等の製造方法について説明する。
駆動部19や爪基部18、爪部材11等については、従来公知の産業用ロボットの部材と同様に製造できる。
グリップ部材12の把持層121(外皮部材120)については、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料の射出成型や注型成形等により製造することができる。また、グリップ部材12の支持体130については、公知の発泡ウレタンスポンジをカット、穴抜き加工するなどして製造できる。また、グリップ部材12の突出体131については、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料などで形成されたシート材を、所定の形状にカットして個別の突出体131,131を製造できる。形成した突出体131,131を支持体130の穴130Hに挿入して接着固定すればよい。
得られた支持体130や突出体131,131を外皮部材120の内側に押し込んでこれらを互いに一体化すれば、上記グリップ部材12が得られる。
【0044】
上記第1実施形態のグリッパ10の作用効果について説明する。
上記グリッパ10によれば、把持対象物99を把持する際に、グリップ部材12が特定の形態に変形しながら把持対象物99を把持するので、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高められる。そして、把持対象物を柔軟に把持できれば、多様な形状の把持対象物を多様な姿勢で把持できるようになり、把持操作のロバスト性が高められる。
【0045】
ここで、把持対象物99を把持する際の保持力とは、把持方向に対し直交する方向(例えば
図2における上下方向)に把持対象物を動かそうとする際に、それに抗しうる力の大きさのことである。保持力が小さいと、
図1や
図2のようなグリッパの姿勢で把持対象物99を鉛直方向上方に持ち上げようとしても、把持対象物が落ちやすい。
【0046】
特許文献1にあるような従来のクッション材(例えばウレタンスポンジ)82,82を爪部材81,81の先端に備えるグリッパを
図10に示すが、こうした従来技術では、保持力がもっぱら、クッション材82と把持対象物の間の摩擦力に依存していたため、クッション材82が柔軟であるとクッション材が把持方向と直交する方向に変形して保持力が低下しやすく、把持対象物99が滑って、簡単に抜け落ちやすい。すなわち、従来公知のクッション材では、クッション材の柔軟さとグリッパの保持力を共に向上させることはできなかった。
【0047】
上記第1実施形態のグリッパ10においては、グリップ部材12は、把持層121と、突出体131と、支持体130とを含み、把持層121は平板状に形成され、把持対象物99と接触するように設けられ、前記突出体131は、弾性変形可能な樹脂製であり、把持方向に沿って延在する柱状に形成された複数の突出体131,131が、把持方向に沿って見て散在するように並んで設けられており、突出体131の一端131aは把持層121に当接している。さらに支持体130は、突出体を構成する樹脂よりも硬度が低い樹脂製であり、支持体130は、ブロック状に形成されるとともに、複数の穴130H,130Hが設けられており、突出体131,131が横倒れになることが抑制されるように、突出体131,131が当該穴130H,130Hに挿入されており、かつ、突出体131,131は、前記一端131aの側で、支持体130から突出している。
【0048】
突出体131,131が、支持体130から突出しているため、把持層121と支持体130の間には、突出体131が存在する部分と、突出体が存在しない部分とが海島状に存在することになる。すなわち、突出体131が支持体から突出する部分に隣接して、空隙133が生じている。
そのため、把持層121は突出体131と当接する部分では突出体に支持されるとともに、他の部分では把持層121は把持方向に柔軟に変形可能となる。また、支持体130が突出体131の横倒れを抑制するように設けられているので、把持方向に力を受けても突出体が座屈、屈曲しにくく、しっかりと把持層121を支持できる。このようなグリップ部材12の把持層121が把持対象物99に押し付けられると、
図5のようにグリップ部材12が変形することになる。
【0049】
図5は、グリップ部材12に把持対象物99が押し付けられた際の変形状態を示す断面図であり、
図5の上の断面図が
図3左上の断面図と対応し、
図5の下の断面図が
図3左下の断面図と対応している。
【0050】
上記第1実施形態のグリッパ10により、把持対象物99が把持されると、柔軟な平板状の把持層121のうち、特に把持対象物99と接触する部分が爪部材11に向かって押し込まれる。
【0051】
この時、グリップ部材12では、突出体131と把持層121が互いに当接する部分と、突出体が存在せず当接しない部分が、把持方向に沿って見て海島状に分布するようなっており、突出体131と把持層121が互いに当接する部分では、相対的に把持層121が把持方向に変形しにくく、突出体131と把持層121が互いに当接しない部分では、相対的に把持層121が把持方向に変形しやすい。本実施形態では、柱状の突出体131を把持方向に沿って見て散在させたように構成されており、突出体131の部分が海島構造の島に相当する。
【0052】
そのため、グリップ部材12に把持対象物99が押し付けられると、把持層121は、把持方向に変形しやすい部分(突出体が存在しない部分)では、把持層121が把持対象物に追従して柔軟に変形し、グリップ部材12に把持対象物99が食い込むようになる。一方で、把持層121が把持方向に変形しにくい部分(突出体131,131に対応する部分)では、把持対象物99を支持する力がより大きくなる。
好ましくは上記実施形態のグリッパ10のように、把持層121の厚みtよりも大きな幅G1,G2の間隔を有するように突出体131、131が設けられていると、特に、このような把持層の変形が生じやすい。
【0053】
把持方向と直交する方向に把持対象物99を移動させようとすると、把持方向に変形しにくい部分(突出体131、131に対応する部分)で、把持対象物99が引っかかるようになって、把持層121と把持対象物99が相対的に滑ってしまうことが抑制され、保持力が高められる。したがって、この作用により、上記実施形態のグリッパによれば、把持対象物99を柔軟に把持しながら、かつ、保持力が高められる。
【0054】
保持力をより高める観点からは、把持層121は、JIS-K6253に準拠するデュロA硬度で30~80HDAの樹脂製であり、かつ、突出体が樹脂製であり、突出体を構成する樹脂の硬度が、把持層を構成する樹脂の硬度および支持体を構成する樹脂の硬度よりも高いことが好ましい。このようにされていると、グリップ部材12がより柔軟なものとなるとともに、突出体131が当接する部分が把持層121を裏側からしっかりと支えることになり、把持層121がより把持対象物99に引っかかりやすくなって、より保持力が高められるからである。
【0055】
グリップ部材12をより柔軟にする観点からは、支持体130が発泡樹脂製であることが好ましく、特に連続気泡構造を有する発泡樹脂であることが好ましい。
【0056】
保持力をより高める観点からは、突出体131が、把持層121に対し、接着、粘着、溶着もしくは一体成型されていることが好ましい。このようにされていると、把持層121に対し、突出体131,131が横滑りしなくなるため、把持層121と突出体131が当接する部分が移動せず、把持層121がより把持対象物99に引っかかりやすくなるからである。また、突出体131が、把持層121に対し、接着、粘着、溶着もしくは一体成型されていれば、突出体131を効果的にグリップ部材12に一体化できるとの効果も得られる。
【0057】
保持力をより高める観点からは、突出体131が、支持体130に対し、接着、粘着、溶着もしくは一体成型されていることが好ましい。このようにされていると、把持層121に対し、突出体131,131が離間したりずれたりしにくくなるため、突出体131が横倒れしにくくなり、突出体131が把持方向に沿って延在配置される形態がくずれにくく、突出体131がよりしっかりと把持層121を支持できて、把持層121がより把持対象物99に引っかかりやすくなるからである。また、突出体131が、支持体130に対し、接着、粘着、溶着もしくは一体成型されていれば、突出体131を効果的にグリップ部材12に一体化できるとの効果も得られる。
【0058】
また、支持体130を把持層121と簡単に一体化させるとの観点からは、グリップ部材12は、外皮部材120を含むように構成され、外皮部材120の一部が前記把持層121となるように、外皮部材120は中空構造に構成され、支持体130と突出体131,131が、外皮部材120の内側(中空部)に配置されていることが好ましい。
【0059】
また、保持力をより高める観点からは、把持層121の厚みtよりも、突出体131が支持体130から突出する高さT1が、大きいことが好ましい。このようにされていると、把持層121が突出体131,131の間の空間(空隙)133の部分で支持体130に底づきしにくくなってより柔軟に変形でき、突出体131,131と当接する部分の把持層121によって把持対象物99をよりしっかりと保持できるからである。
【0060】
また、保持力をより高める観点からは、さらに、把持動作の開閉方向に沿って見て、少なくとも、把持対象物99が把持層121に接触する領域Qを挟むように、突出体131,131が対をなして設けられることが好ましい。このように突出体131,131が対をなして設けられると、把持層121が把持対象物99を包み込むように変形しながら、突出体131,131と当接する部分で把持層121が把持対象物99を両側から挟み込むように支持するようになるため、特に保持力が高められる。
【0061】
また、保持力をより高める観点からは、さらに、把持動作の開閉方向に沿って見て、少なくとも、把持対象物99が把持層121に接触する領域Qに対し、突出体131が爪部材11の先端(11t)側に設けられることが好ましい。このようにされていると、爪の先端側に位置する突出体131と当接する部分の把持層121が、把持対象物99を爪の先端側で押圧するように支持するので、爪部材11の先端側から把持対象物99が抜け落ちにくくなり、特に保持力が高められる。
【0062】
かかる作用により、上記第1実施形態のグリッパ10は、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、把持方向に直交する方向の保持力が高められる。
【0063】
上記第1実施形態のグリッパ10にかかる発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号を付して説明し、その詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0064】
上記実施形態における柱状の突出体131の具体的構成は変更可能である。上記第1実施形態の説明では、四角柱状の突出体131,131が、格子の交点上に配置されるような形態を例示したが、突出体の形状は、例えば、円柱状や角柱状であってもよい。また、突出体の形状は、錐状、台状であってもよく、例えば、角錐状や円錘状であってもよい。また、把持方向に沿って見てこれら突出体131,131が配置される平面パターンは、三角形や六角形を仮想的に敷き詰めた際の各頂点に突出体131,131が位置するような平面パターンであってもよい。
図6に、突出体の変形例として、把持方向に沿って見た際の突出体131,131の変形例と配置の平面パターンを例示する。
図6(a)では、円柱状の突出体131,131が、正三角形を敷き詰めたような平面パターンで配置された例を示す。また、
図6(b)では、三角柱状の突出体131,131が、正六角形を敷き詰めたような平面パターンで配置された例を示す。
【0065】
突出体131は、把持方向に沿う方向に延在するよう設けられるが、突出体131の延在方向が、把持方向や把持面12Sの法線に対し傾くように設けられていてもよい。突出体131が傾いて設けられる場合には、爪部材11から把持層121に向かうにしたがって爪部材11の先端部11tから爪部材の根元部分に向かうような方向に傾いて設けられることが好ましい。
【0066】
また、上記第1実施形態の説明では、柱状の突出体131,131が、ブロック状に形成された支持体130に散在するように設けられた穴130H,130Hに挿入されることによって、突出体131,131が横倒れになることが抑制される構成を例示したが、
突出体と支持体の具体的関係は、かかる構成に限定されず、突出体131が支持体130から突出しつつ、突出体の横倒れが支持体により抑制される限りにおいて、他の構成であってもよい。
【0067】
図7には、突出体と支持体の他の変形例を示す。
図7では、
図4と同様に、突出体431,431と支持体430,430のみをグリップ部材から抜き出して、斜視図で示している。図の上下方向が把持方向である。
図7の実施形態のように、突出体431,431は、把持方向に沿って延在する板状に形成されたものであってもよく、支持体430,430は板状に形成されたものであってもよい。そして、複数の突出体431,431が、把持方向に沿って見て間隔を隔てて並ぶように設けられており、支持体430,430は複数枚設けられていて、突出体431,431が横倒れになることが抑制されるように、把持方向と略直交する方向に突出体431,431と支持体430,430が交互に積層されていてもよい。
【0068】
このような構成であっても、突出体431の一端を把持層(121)に当接させ、支持体430を、突出体431を構成する樹脂よりも硬度が低い樹脂製として、かつ、突出体431が、前記一端の側(把持層に当接する側)で、支持体430から突出しているようにすれば、
図3,4に示した実施形態と同様に、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、把持方向に直交する方向の保持力を高めることができる。
【0069】
図8には、突出体と支持体の他の変形例を示す。変形例の突出体232は、複数の板材が組み合わされた、障子の桟のような構造をしている。すなわち、突出体232は、層の厚み方向に延在する複数本の縦板と横板が互いに交差するように一体化された構造を有する。この構造は、所定の厚みの板材に、多数の矩形状の貫通穴を所定の平面パターンで連接した構造とみることもできる。
【0070】
そして、所定の間隔を隔てるように配置された複数の平板状の突出体232,232に挟まれるように、直方体状の支持体233,233が配置されている。すなわち、把持方向と略直交する方向に突出体232,232と支持体233,233が交互に積層されている。このように、突出体と交互に積層される支持体233は、直方体状であってもよい。さらに、突出体232,232は、把持層(121)と当接する側で、支持体233,233よりも突出している。すなわち、
図8の実施形態では、把持方向に沿って見て、突出体232,232が存在する部分が海島構造の海に相当し、突出体232,232が存在しない部分が海島構造の島に相当するような海島構造に構成されている。
【0071】
本実施形態の突出体232,232や支持体233,233であっても、同様に、突出体が存在しない部分で把持層(121)が柔軟に変形しつつ、突出体232,232の部分が接触する部分で把持層(121)がしっかりと把持対象物を保持し、保持力が高められる。このように、突出体232,232は、把持方向に沿って延在する板状の部材が所定の間隔を隔てて連設された構造を有していてもよく、支持体233,233は、突出体と突出体の間の空間を埋めるように設けられていてもよい。また、突出体は、同様の海島構造を構成するような、いわゆるハチの巣状の構造であってもよい。
【0072】
また、突出体は、
図9に示す実施形態のように、突出体331,331とその間の空間333,333が、交互に、同心円状に設けられたものであってもよい。本実施形態では、突出体は円筒状を呈する板状である。本実施形態では、支持体330,330は、突出体331,331と交互に、円筒の半径方向に積層されるように設けられている。このような形態であっても。突出体331が把持層321と当接する側で、突出体331が支持体330よりも突出するようにされていれば、同様に、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、把持方向に直交する方向の保持力を高めることができる。
【0073】
また、本実施形態では、突出体331と把持層321とが、同じ樹脂材料により一体成型されている。このような構成であっても、把持対象物を柔軟に把持しながら、かつ、把持方向に直交する方向の保持力を高めることができる。突出体331と把持層321とが一体成型されていると、グリップ部材の組み立てにあたり、突出体がバラバラにならず、支持体などと一体に組み立てやすいというメリットが得られる。
【0074】
また、
図9の実施形態では、把持層321が、把持対象物に向かってやや凸形状となるような平板状に形成されている。また、本実施形態のように、把持層321を含む外皮部材320を中空のカップ状に形成し、外皮部材320の内側に突出体331を設け、支持体(例えば発泡ウレタンスポンジ製)330を挿入し、外皮部材320の開口縁の部分を、爪部材31に接着して、爪部材31に把持層321、突出体331、支持体330を一体化してもよい。
【0075】
また、爪部材に対するグリップ部材(把持層、突出体、支持体)の取り付けは、爪部材に対し、支持体、突出体、把持層を、接着剤や粘着剤、粘着テープなどによって、順次、相互に一体化する取り付けであってもよい。
【0076】
上記実施形態の説明では、主に爪部材が硬質な部材である形態を中心に説明したが、把持の際に、爪部材と把持対象物の間に柔軟なグリップ部材を介して、把持する力を把持対象物に伝えられるものである限りにおいて、爪部材は特に限定されない。例えば、爪部材は金属製や硬質プラスチック製などの剛性の高い部材であってもよいが、爪部材はゴム製や軟質プラスチック製であってもよい。また、爪部材を中空として、内部に気体や液体を入れて爪部材の剛性を可変にしてもよい。また、爪部材は、可動部を有し、屈曲等の能動的な変形が可能となるように構成されたものであってもよい。
【0077】
グリッパにより把持されるべき把持対象物の形状や性質は、把持操作が可能なものであれば、特に限定されない。上記実施形態のグリッパは柔軟性に富んでいるため、直方体状や円筒、多角錘、多面体、球体、楕円体など、多彩な形状の把持対象物を、多様な姿勢で把持することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
グリッパはロボットアームの先端に取り付けられて、例えば搬送作業に使用でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0079】
A ロボットアーム
10 グリッパ
11 爪部材
12 グリップ部材
120 外皮部材
121 把持層
122、123 側壁
124 通気口
130 支持体
131 突出体
133 空隙
99 把持対象物