(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123257
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】インバータ装置、モータおよび車両
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220817BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020456
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】日本電産エレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】奈良 朋信
(72)【発明者】
【氏名】岩上 直記
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770JA11W
5H770PA12
5H770PA17
5H770PA26
5H770PA28
5H770PA43
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA12
5H770QA22
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】コンデンサの効率的な冷却が可能なインバータ装置、モータおよび車両を提供すること。
【解決手段】インバータ装置20は、コンデンサ141を有するコンデンサモジュール14と、コンデンサモジュール14に隣り合って配置され、コンデンサモジュール14を冷却する冷媒Qが通過可能な流路21を有する流路形成体2と、コンデンサモジュール14および流路形成体2を収納する筐体3とを備える。コンデンサモジュール14は、互いに対向する2つの主面S141、S142と、2つの主面S141、S142を繋ぐ側面S143、S144とを有する。流路形成体2は、主面S141に接する第1接触面S21と、側面S143に接する第2接触面S22と、側面S144に接する第2接触面S23とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電圧を平滑するコンデンサを有するコンデンサモジュールと、
前記コンデンサモジュールに隣り合って配置され、該コンデンサモジュールを冷却する冷媒が通過可能な流路を有する流路形成体と、
前記コンデンサモジュールおよび前記流路形成体を収納する筐体とを備え、
前記コンデンサモジュールは、互いに対向する2つの主面と、該2つの主面を繋ぐ側面とを有し、
前記流路形成体は、一方の前記主面に接する第1接触面と、前記側面に接する第2接触面とを有することを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記コンデンサモジュールと前記流路形成体とは、ネジ止めにより組み立てられた組立体となっており、
前記流路形成体は、ネジを介して前記筐体と締結される筐体締結部を有する請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記流路形成体は、前記一方の主面の全体に接し、前記側面の前記一方の主面側の一部に接する請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記一方の主面は、平面であり、
前記筐体締結部は、少なくとも4つ設けられ、前記一方の主面の法線方向に沿って前記ネジが貫通する貫通孔を備える請求項2または3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
さらに、前記流路形成体の前記コンデンサモジュールと反対側に隣り合って配置され、モータに駆動電流を供給するパワーモジュールユニットを備え、
前記流路形成体は、ネジを介して前記コンデンサモジュールと締結される少なくとも4つのコンデンサ締結部と、ネジを介して前記パワーモジュールユニットと締結される少なくとも4つのパワーモジュール締結部とを有する請求項2~4のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記コンデンサモジュールは、前記2つの主面と前記側面とで囲まれる1つの開口を備え、該開口を介して前記コンデンサを収納するコンデンサケースと、
該コンデンサケース内に充填され、前記コンデンサを封止するとともに、前記開口から露出する樹脂封止材とを有する請求項1~5のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記コンデンサケースは、前記2つの主面と前記側面とが直交した矩形をなす請求項6に記載のインバータ装置。
【請求項8】
前記筐体は、さらに、前記流路形成体の前記流路の上流側に接続され、該流路に前記冷媒が流入する流入部と、前記流路形成体の前記流路の下流側に接続され、該流路から前記冷媒が流出する流出部とを有し、
前記流入部および前記流出部も、前記コンデンサモジュールの前記側面に接する請求項1~7のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項9】
前記インバータ装置は、モータに搭載して用いられ、
さらに、前記流入部に接続され、該流入部を介して前記流路に前記冷媒を流入させる第1配管と、
前記流出部に接続され、該流出部を介して前記流路から前記冷媒を流出させる第2配管とを備え、
前記第1配管および前記第2配管は、前記モータを収納するモータハウジング側に延びる請求項8に記載のインバータ装置。
【請求項10】
さらに、前記モータに駆動電流を供給するパワーモジュールユニットに駆動信号を出力する駆動回路と、前記駆動回路に制御信号を出力する制御回路とが搭載された単一の回路基板を備える請求項9に記載のインバータ装置。
【請求項11】
さらに、モータに駆動電流を供給するパワーモジュールユニットを備え、
前記流路形成体は、前記冷媒が前記流路を通過した際、前記冷媒が前記パワーモジュールユニットに接して、該パワーモジュールユニットを冷却する請求項1~10のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項12】
さらに、前記筐体に固定される蓋部材とを備え、
該蓋部材は、貫通して設けられた窓部を有する蓋本体と、
前記窓部に着脱自在に装着される小蓋部材とを備える請求項1~11のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項13】
さらに、モータに駆動電流を供給するパワーモジュールユニットと、
前記パワーモジュールユニットに駆動信号を出力する駆動回路と、前記駆動回路に制御信号を出力する制御回路とが搭載された単一の回路基板と、
外部電源から前記パワーモジュールユニットに電力を供給する電力供給部とを備え、
前記回路基板、前記パワーモジュールユニット、前記流路形成体、前記コンデンサモジュールがこの順に配置され、
前記電力供給部は、前記回路基板と同一平面上に配置される請求項1~12のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項14】
前記コンデンサモジュールは、前記コンデンサを4つ有し、
前記4つのコンデンサは、前記回路基板、前記パワーモジュールユニット、前記流路形成体、前記コンデンサモジュールの配置方向に2つ、該配置方向と直交する方向に2つ配置される請求項13に記載のインバータ装置。
【請求項15】
さらに、前記パワーモジュールユニットと前記コンデンサとを接続する正極バスバーおよび負極バスバーを備え、
前記正極バスバーと前記負極バスバーとは、前記側面の法線方向から見たとき、それらの一部が互いに重なって配置される請求項13または14に記載のインバータ装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のインバータ装置を搭載したことを特徴とするモータ。
【請求項17】
請求項16に記載のモータを搭載したことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置、モータおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のインバータ装置には、例えば、電気自動車(EV)に搭載されるインバータ装置や、ハイブリッド車に搭載されるインバータ装置等がある。電気自動車に搭載されたインバータ装置の場合、通電時の大電流によってインバータ装置が発熱する。また、ハイブリッド車に搭載されたインバータ装置の場合、エンジンで生じた熱が伝達されて、インバータ装置が加熱される。そして、いずれの場合も、インバータ装置、特にインバータ装置に内蔵されているコンデンサの冷却が求められる。
例えば、特許文献1に記載の装置では、冷却媒体が通過する流路形成体12と、充填材に覆われたコンデンサの上面とを近接させた状態として、冷却媒体によってコンデンサを冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンデンサの1つの面のみを冷却媒体または流路形成体に接触させる構成では、冷却媒体によるコンデンサの冷却が不十分となる可能性があった。
本発明の目的は、コンデンサの効率的な冷却が可能なインバータ装置、かかるインバータ装置を搭載したモータ、および、かかるモータを搭載した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の例示的な発明は、電源からの電圧を平滑するコンデンサを有するコンデンサモジュールと、前記コンデンサモジュールに隣り合って配置され、該コンデンサモジュールを冷却する冷媒が通過可能な流路を有する流路形成体と、前記コンデンサモジュールおよび前記流路形成体を収納する筐体とを備え、前記コンデンサモジュールは、互いに対向する2つの主面と、該2つの主面を繋ぐ側面とを有し、前記流路形成体は、一方の前記主面に接する第1接触面と、前記側面に接する第2接触面とを有することを特徴とするインバータ装置である。
また、本願の他の例示的な発明は、上記インバータ装置を搭載したことを特徴とするモータである。
また、本願の他の例示的な発明は、上記モータを搭載したことを特徴とする車両である。
【発明の効果】
【0006】
本願の例示的な発明によれば、コンデンサの効率的な冷却が可能なインバータ装置、かかるインバータ装置を搭載したモータ、および、かかるモータを搭載した車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明のインバータ装置(モータ)を搭載した車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すインバータ装置の垂直断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すインバータ装置の組立途中を示す垂直断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すインバータ装置の小蓋部材を取り外した状態を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のインバータ装置、モータおよび車両を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を設定する。一例として、X軸とY軸を含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。また、
図2~
図5中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言うことがある。また、本明細書中において、上下方向(鉛直方向)、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0009】
図1においてモータ(電動モータ)15は、例えば、三相交流モータであり、車両100の駆動力源である。モータ15の回転軸は、減速機60とディファレンシャルギア70とに連結されている。これにより、モータ15の駆動力(トルク)は、これらの減速機60、ディファレンシャルギア70、ドライブシャフト(駆動軸)80を介して一対の車輪50a、50bに伝達される。
【0010】
インバータ制御装置10のインバータ装置(インバータ部)20は、モータ15に搭載して用いられる。このインバータ装置20は、モータ15に駆動電力を供給するパワーモジュールユニット13と、パワーモジュールユニット13にモータ15を駆動させる駆動信号を出力するパワーモジュール駆動回路(駆動回路)12と、パワーモジュール制回路基板12に制御信号を出力するインバータ制御回路(制御回路)11と、バッテリ(外部電源)BTからの電圧を平滑するコンデンサモジュール14とを備えている。
【0011】
インバータ装置20は、車両100全体の制御を司る制御部30からの制御信号により制御され、モータ15を駆動する。すなわち、インバータ装置20は、バッテリBTからの電力を変換(直流から交流に変換)してモータ15に供給することができる。制御部30は、例えば、車両制御ユニット(Vehicle Control Unit:VCU)である。
また、インバータ装置20は、モータ15の回転によって発生した逆起電力を変換(交流から直流に変換)してバッテリBTに供給することもできる。
なお、インバータ装置20は、例えば、ハイブリッド車、電気自動車等のモータ15を備える車両100であれば、いかなる車両に搭載可能である。
【0012】
パワーモジュールユニット13は、パワースイッチング素子をU相、V相、W相毎に2個(上アームのパワースイッチング素子と下アームのパワースイッチング素子)、計6個のパワースイッチング素子を接続してなるブリッジ回路(電力変換回路)を有している。
なお、パワースイッチング素子としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、SiC(Silicon Carbide)半導体等が挙げられる。
【0013】
パワーモジュールユニット13は、パワーモジュール駆動回路12からの駆動信号(PWM制御信号)により、パワースイッチング素子のオン/オフを切り替える。これにより、パワーモジュールユニット13は、バッテリBTからコンデンサモジュール14を介して供給された直流電力を交流電力(三相交流電力)に変換して、モータ15に供給し、モータ15を駆動する。
【0014】
バッテリBTは、車両100の動力源である電気エネルギーの供給元であり、例えば、複数の二次電池で構成されている。
インバータ装置20には、バッテリBTとの接続部にコンデンサモジュール14が配置されている。コンデンサモジュール14は、高電位ライン(正極電位B+)と低電位ライン(負極電位B-(GND))との間に接続されている。このコンデンサモジュール14は、バッテリBTからの入力電圧を平滑する機能を有し、大容量のコンデンサ141を備えている。
【0015】
ここで、インバータ装置20の構成について、
図2~
図5を参照しつつ、詳細に説明する。
図2~
図4に示すように、インバータ装置20は、上側から順に配置された回路基板17と、パワーモジュールユニット13と、流路形成体2と、コンデンサモジュール14とを備える。従って、本実施形態では、回路基板17、パワーモジュールユニット13、流路形成体2、コンデンサモジュール14の配置方向は、Z軸方向と同じ方向となる。これにより、例えば回路基板17、パワーモジュールユニット13、流路形成体2、コンデンサモジュール14の配置方向をX軸方向とした場合に比べて、インバータ装置20のX軸方向の全長を抑えることができ、インバータ装置20の小型化に寄与する。
また、インバータ装置20は、回路基板17、パワーモジュールユニット13、流路形成体およびコンデンサモジュール14を一括して収納する筐体3と、筐体3に固定される蓋部材5とを備える。
さらに、
図5に示すように、インバータ装置20は、バッテリBT(不図示)からパワーモジュールユニット13に電力を供給する電力供給部40と、パワーモジュールユニット13とコンデンサ141とを接続する正極バスバー90Aおよび負極バスバー90Bとを備える。
【0016】
コンデンサモジュール14は、コンデンサ141と、コンデンサ141を収納するコンデンサケース4と、コンデンサケース4内に充填された樹脂封止材142とを有する。
コンデンサケース4は、箱状の部材で構成される。コンデンサケース4は、Y軸方向から見たとき、外側の面に、Z軸方向に互いに対向する主面S141、主面S142と、X軸方向に互いに対向する側面S143、側面S144とを有する。側面S143は、主面S141と主面S142とを繋いでおり、側面S144は、側面S143と反対側で、主面S141と主面S142とを繋いでいる。
【0017】
主面S141および主面S142は、それぞれ、XY平面と平行な平面であり、側面S143および側面S144は、それぞれ、YZ平面と平行な平面である。これにより、コンデンサケース4は、主面S141と、側面S143および側面S144とが直交し、主面S142と、側面S143および側面S144とが直交した矩形をなす。よって、コンデンサケース4の外形形状を、例えば成形が容易な簡単な形状にすることができる。また、この成形により、主面S141、主面S142、側面S143、側面S144を平滑な平面に容易に形成することができる。
【0018】
図5に示すように、コンデンサケース4は、Y軸方向に開口する1つの開口41を備える。開口41は、主面S141と主面S142と側面S143と側S144とで囲まれる。そして、開口41を介して、コンデンサ141をコンデンサケース4に収納することができる。なお、コンデンサケース4の開口41と反対側は、側面(底面)によって閉塞している。
コンデンサ141は、バッテリBTからの電圧を平滑するフィルムコンデンサである。
図2に示すように、本実施形態では、4つのコンデンサ141がコンデンサケース4に収納される。4つのコンデンサ141は、Z軸方向に2つ、X軸方向に2つ配置される(以下この配置を「2×2配置」という)。
【0019】
2×2配置は、例えば4つコンデンサ141をX軸方向に一列に配置した場合に比べて、Z軸方向から見たときのインバータ装置20の小型化が容易となるとともに、コンデンサモジュール14が、後述する流路形成体2に囲まれる領域を広く確保することができる。また、流路形成体2に囲まれる領域が広く確保されることにより、流路形成体2によるコンデンサ141の迅速な冷却が可能となる。
なお、コンデンサ141の配置数は、本実施形態では4つであるが、これに限定されず、例えば、1つ、2つ、3つまたは5つ以上であってもよい。
また、4つコンデンサ141の配置は、2×2配置に限定されない。
【0020】
コンデンサケース4内には、樹脂封止材142が充填される。樹脂封止材142は、例えばエポキシ樹脂であり、コンデンサ141を固定および封止している。これにより、コンデンサケース4内での各コンデンサ141の位置が規制されるとともに、コンデンサ141に水分(水蒸気)が侵入するのを防止することができる。
また、
図5に示すように、樹脂封止材142は、開口41から露出する。開口41には、正極バスバー90Aおよび負極バスバー90Bを通過させることができる。そして、この正極バスバー90Aおよび負極バスバー90を樹脂封止材142で固定することができる。これにより、正極バスバー90Aおよび負極バスバー90を介したパワーモジュールユニット13とコンデンサ141との接続状態が安定する。
【0021】
図2に示すように、コンデンサモジュール14の上側には、流路形成体2が隣り合って配置される。流路形成体2は、屈曲した長尺な板状の部材で構成される。流路形成体2は、長手方向に沿って形成された流路21を有する。流路21は、コンデンサモジュール14を冷却する冷媒Qが通過することができる。
流路21は、上流側から順に、第1部分211と、第2部分212と、第3部分213を有する。第1部分211は、Z軸方向に延びる貫通孔で構成される。第2部分212は、X軸方向に延びる溝で構成される。第3部分213は、Z軸方向に延びる貫通孔で構成される。また、第1部分211と第3部分213とは、第2部分212を介して繋がる。
冷媒Qとしては、例えば、エチレングリコール水溶液等のようなLLC(Long Life Coolant)が好ましいが、これ限定されない。
【0022】
流路形成体2は、下側(裏側)の面に、コンデンサモジュール14(コンデンサケース4)の主面S141の全体に接する第1接触面S21と、側面S143の主面S141側の一部に接する第2接触面S22と、側面S144の主面S141側の一部に接する第2接触面S23とを有する。
また、流路形成体2では、第1接触面S21と第2部分212とが、互いに平行に、できる限り接近している。同様に、第2接触面S22と第1部分211も、互いに平行に、できる限り接近している。また、第2接触面S23と第3部分213も、互いに平行に、できる限り接近している。
【0023】
以上のように、インバータ装置20では、流路形成体2とコンデンサモジュール14とは、複数(本実施形態では3つ)の面で互いに接する。これにより、冷媒Qが流路形成体2の流路21を通過した際、当該冷媒Qで各コンデンサ141の熱を迅速に一括して奪う(吸熱する)ことができる。これにより、インバータ装置20は、各コンデンサ141に対する効率的な冷却が可能となり、冷却性能に優れる。
また、前述したように、モータ15は、インバータ装置20が搭載されている。従って、モータ15は、冷却性能に優れたインバータ装置20を搭載しているので、大電流供給時の高耐久性や長寿命化を図ることができる。
また、車両100は、大電流時の高耐久性や長寿命化が図られたモータ15を搭載しているので、長期にわたって円滑かつ迅速な走行と停止とが可能となる。
【0024】
コンデンサモジュール14では、成形体であるコンデンサケース4の方が樹脂封止材142よりも平滑な面を形成し易い。これにより、コンデンサケース4の主面S141、側面S143および側面S144を平滑な面として、流路形成体2に密着させることができる。そして、密着の程度を高めることにより、コンデンサモジュール14に対する冷却効率が向上する。さらに、流路形成体2とコンデンサケース4との間に、放熱グリス、コンパウンドを付与(塗布)することにより、それらの密着の程度をより高めるようにしてもよい。
流路形成体2の上側(コンデンサモジュール14と反対側)には、モータ15に駆動電流を供給するパワーモジュールユニット13が隣り合って配置される。
パワーモジュールユニット13は、流路21の第2部分21を覆う。これにより、冷媒Qが第2部分21(流路21)を通過した際、冷媒Qがパワーモジュールユニット13に接して、パワーモジュールユニット13を直接的に冷却することができる。これにより、パワーモジュールユニット13に対する迅速な冷却が可能となる。
【0025】
また、流路形成体2を通過する冷媒Qにより、コンデンサモジュール14とパワーモジュールユニット13とを一括して冷却することができる。これにより、コンデンサモジュール14を冷却するため構成を、流路形成体2とは別に設けるのを省略することができ、よって、インバータ装置20の部品点数を抑えることができる。
また、パワーモジュールユニット13と流路形成体2との間には、パッキン16が配置される。これにより、パワーモジュールユニット13と流路形成体2との間から冷媒Qが漏出するのを防止することができる。
【0026】
図2に示すように、流路形成体2は、ネジ91を介してコンデンサモジュール14と締結されるコンデンサ締結部23と、ネジ92を介してパワーモジュールユニット13と締結されるパワーモジュール締結部24とを有する。コンデンサ締結部23およびパワーモジュール締結部24は、それぞれ、雌ネジで構成される。
流路形成体2にコンデンサモジュール14を締結する際には、流路形成体2の下側(裏側)にコンデンサモジュール14を配置した状態として、コンデンサモジュール14側からネジ91をコンデンサ締結部23にねじ込む。また、このとき、ネジ91は、コンデンサモジュール14のコンデンサケース4に設けられた貫通孔42を貫通する。これにより、流路形成体2にコンデンサモジュール1が締結される。
【0027】
流路形成体2にパワーモジュールユニット13を締結する際には、流路形成体2の上側(表側)にパワーモジュールユニット13を配置した状態として、パワーモジュールユニット13側からネジ92をコンデンサ締結部23にねじ込む。また、このとき、ネジ92は、パワーモジュールユニット13に設けられた貫通孔131を貫通する。これにより、流路形成体2にパワーモジュールユニット13が締結される。
以上のような締結より、流路形成体2、コンデンサモジュール14、パワーモジュールユニット13は、筐体3に収納される以前に、予めネジ止めにより組み立てられた組立体1となる。
そして、
図3に示すように、組立体1のまま筐体3に収納することができる。これにより、例えば、コンデンサモジュール14、流路形成体2、パワーモジュールユニット13をこの順に筐体3に収納する場合に比べて、筐体3への収納作業を迅速に行うことができる。これにより、インバータ装置20の組立作業性が向上する。
【0028】
なお、コンデンサ締結部23の設置数は、本実施形態では4つである。コンデンサ締結部23の設置数が4つの場合、コンデンサ締結部23は、X軸方向に2つ、Y軸方向に2つ配置される。これにより、流路形成体2にコンデンサモジュール14が安定して強固に締結される。
また、パワーモジュール締結部24の設置数も、本実施形態では4つである。パワーモジュール締結部24の設置数が4つの場合、パワーモジュール締結部24は、X軸方向に2つ、Y軸方向に2つ配置される。これにより、流路形成体2にパワーモジュールユニット13が安定して強固に締結される。
ただし、コンデンサ締結部23およびパワーモジュール締結部24の設置数は、それぞれ4つに限定されず、安定的な固定が可能であればいくつでも構わない。
【0029】
パワーモジュールユニット13の上側には、回路基板17が配置、固定される。回路基板17は、インバータ制御回路11と、パワーモジュール駆動回路12とが搭載された単一の基板である。インバータ制御回路11は、パワーモジュール駆動回路12に制御信号を出力する回路である。パワーモジュール駆動回路12は、モータ15に駆動電流を供給するパワーモジュールユニット13に駆動信号を出力する回路である。
インバータ制御回路11とパワーモジュール駆動回路12とが1枚の基板に集約されていることにより、インバータ装置20を構成する部品点数を抑えることができる。これにより、例えば、インバータ装置20の組立時間の短縮と、インバータ装置20の小型化とが可能となる。
なお、回路基板17は、パワーモジュールユニット13に固定されるため、組立体1に含まれる。
【0030】
前述したように、組立体1は、筐体3に収納される。
図2に示すように、筐体3は、底部33と側壁部34とを有する箱状の部材で構成される。
また、筐体3は、流路形成体2の流路21の第1部分211(上流側)に接続される流入部31と、流路形成体2の流路21の第3部分213(下流側)に接続される流出部32とを有する。流入部31と流出部32とは、底部33上で同じ高さをもったブロック状に設けられ、流路形成体2(組立体1)を支持する支持台としても機能する。
【0031】
流入部31は、側壁部34から流路形成体2の流路21の第1部分211まで延びる流路311を有する。流路311は、貫通孔で構成され、冷媒Qが通過することができる。これにより、流路21に冷媒Qを流入させることができる。
流出部32は、流路形成体2の流路21の第3部分213から底部33まで延びる流路321を有する。流路321は、貫通孔で構成され、冷媒Qが通過することができる。これにより、流路21から冷媒Qを流出させることできる。
また、流入部31と流出部32との間には、コンデンサモジュール14が配置される。そして、流入部31は、コンデンサモジュール14の側面S143に接し、流出部32は、コンデンサモジュール14の側面S144に接する。これにより、コンデンサモジュール14は、流路形成体2の他に、冷媒Qが通過する部材との接触箇所(接触面積)が増加する。これにより、コンデンサモジュール14に対する冷却効率がさらに向上する。
【0032】
インバータ装置20は、流入部31に接続される第1配管18と、流出部32に接続される第2配管19とを備える。
第1配管18は、流入部31を介して流路21に冷媒Qを流入させる管状の部材であり、例えば、直線状をなす部分や、屈曲または湾曲した部分を有する。
第2配管19は、流出部32を介して流路21から冷媒Qを流出させる管状の部材であり、第1配管18と同様に、例えば、直線状をなす部分や、屈曲または湾曲した部分を有する。
このような形状の第1配管18および第2配管19は、それぞれ、モータ15を収納するモータハウジング151(
図1参照)側に延びる。これにより、第1配管18および第2配管19の配管経路を短くすることができ、迅速なコンデンサモジュール14の冷却に寄与する。
【0033】
また、流路形成体2は、ネジ93を介して筐体3の流入部31および流出部32とそれぞれ締結される筐体締結部22を有する。筐体締結部22は、Z軸方向(主面S141の法線方向)に沿ってネジ93が貫通する貫通孔221を備える。
一方、流入部31および流出部32には、それぞれ、雌ネジ35が設けられる。
流路形成体2を筐体3に締結する際には、流路形成体2を流入部31および流出部32上に載置した状態として、上側からネジ93を雌ネジ35にねじ込む。また、このとき、ネジ93は、筐体締結部22の貫通孔221を貫通する。これにより、流路形成体2が筐体3に締結される。
なお、筐体締結部22の設置数は、少なくとも4つが好ましい。筐体締結部22の設置数が4つの場合、筐体締結部22は、X軸方向に2つ、Y軸方向に2つ配置される。これにより、流路形成体2が筐体3に安定して強固に締結される。
また、4つ筐体締結部22は、貫通孔221を貫通するネジ93の方向が揃う(同じとなる)。これにより、流路形成体2と筐体3とのネジ締結時の作業性が向上する。
【0034】
筐体3には、蓋部材5が複数のネジ94を介して固定される。これにより、筐体3の上側の開口36を塞ぐことができ、例えば、筐体3内の組立体1を保護することができる。
なお、ネジ94による固定箇所は、少なくとも4つが好ましい。固定箇所が4つの場合、ネジ94は、X軸方向に2つ、Y軸方向に2つ配置される。
蓋部材5は、板状の蓋本体51と、板状の小蓋部材52とを有する。
蓋本体51は、貫通して設けられた窓部511を有する。
小蓋部材52は、ネジ95を介して、蓋本体51の窓部511に着脱自在に装着される。これにより、窓部511は、小蓋部材52に覆われた閉状態(
図2、
図3参照)と、小蓋部材52から開放された開状態(
図4参照)とを取り得る。これにより、蓋部材5(蓋本体51)を筐体3に固定した状態でも、小蓋部材52を蓋本体51から取り外せば、例えば、筐体3内のコンデンサモジュール14に対する接続作業や、端子台6に対するケーブルの接続交換等を行うことができ、作業効率が向上する。端子台6は、バッテリBTからの電力をインバータ装置20の部材(例えば、パワーモジュールユニット13)に供給するバスバー(電力供給部40を有する屈曲した長尺な板部材)を支持する。
【0035】
前述したように、インバータ装置20は、電力供給部40と、正極バスバー90Aおよび負極バスバー90Bとを備える。
電力供給部40は、バッテリBTからパワーモジュールユニット13に電力を供給する部分であり、例えば、屈曲した長尺な板部材の上端部(端部)で構成される。
正極バスバー90Aおよび負極バスバー90Bは、それぞれ、パワーモジュールユニット13とコンデンサ141とを接続するバスバーであり、例えば、屈曲した長尺な板部材で構成される。
【0036】
図5に示すように、電力供給部40は、回路基板17に隣り合い、回路基板17と同一平面上に配置される。これにより、例えば電力供給部40が回路基板17よりも上側に位置した場合に比べて、インバータ装置20の高さを抑えることができ、インバータ装置20の小型化に寄与する。
正極バスバー90Aと負極バスバー90Bとは、パワーモジュールユニット13とコンデンサ141との間を跨いで配置される。また、正極バスバー90Aと負極バスバー90Bとは、X軸方向(側面S143、S144の法線方向)から見たとき、それらの一部が互いに重なって配置される。これにより、等価直列インダクタンス(ESL)を低減することができる。
【0037】
以上、本発明のインバータ装置、モータおよび車両を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、インバータ装置、モータおよび車両を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 組立体
2 流路形成体
21 流路
211 第1部分
212 第2部分
213 第3部分
22 筐体締結部
221 貫通孔
23 コンデンサ締結部
24 パワーモジュール締結部
3 筐体
31 流入部
311 流路
32 流出部
321 流路
33 底部
34 側壁部
35 雌ネジ
36 開口
4 コンデンサケース
41 開口
42 貫通孔
5 蓋部材
51 蓋本体
511 窓部
52 小蓋部材
6 端子台
91 ネジ
92 ネジ
93 ネジ
94 ネジ
95 ネジ
10 インバータ制御装置
11 インバータ制御回路(制御回路)
12 パワーモジュール駆動回路(駆動回路)
13 パワーモジュールユニット
131 貫通孔
14 コンデンサモジュール
141 コンデンサ
142 樹脂封止材
15 モータ(電動モータ)
151 モータハウジング
16 パッキン
17 回路基板
18 第1配管
19 第2配管
20 インバータ装置(インバータ部)
30 制御部
40 電力供給部
50a、50b 車輪
60 減速機
70 ディファレンシャルギア
80 ドライブシャフト(駆動軸)
90A 正極バスバー
90B 負極バスバー
100 車両
BT バッテリ(外部電源)
S141、S142 主面
S143、S144 側面
S21 第1接触面
S22、S23 第2接触面
Q 冷媒