(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123258
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】手術支援システム、患者側装置および手術支援システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20220817BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020457
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】東條 剛史
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS13
3C707BS26
3C707CS08
3C707CY29
3C707ES03
3C707ET02
3C707HS27
3C707JU12
3C707MS05
3C707MS14
3C707MS15
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム同士の干渉を回避する手術支援システムを提供する。
【解決手段】この外科手術システム100(手術支援システム)では、制御部31は、アーム60cに取り付けられた医療器具4に対して接近してはいけない接近禁止範囲Aを設定し、医療器具4が延びる方向に直交し、かつ、連結リンク部74に接する第1基準線L1を設定し、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、第1基準線L1が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム60bをアーム60cに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に医療器具が取り付けられる第1および第2のアームを含む患者側装置と、
前記医療器具に対する操作を受け付ける操作部を含む操作者側装置と、
受け付けられた前記操作に基づいて前記医療器具を動作させる制御を行う制御部と、を備え、
前記第1および第2のアームは、それぞれ前記医療器具が取り付けられる第1リンク部と、前記第1リンク部に接続される第2リンク部とを含み、
前記制御部は、
前記第1のアームに取り付けられた前記医療器具に対して接近してはいけない接近禁止範囲を設定し、
前記医療器具が延びる方向に直交し、かつ、前記第2リンク部を通過する基準線を設定し、
前記第2のアームが前記第1のアームの前記接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、前記基準線が、前記接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、前記第2のアームを前記第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う、手術支援システム。
【請求項2】
前記接近禁止範囲は、前記第2のアームが前記第1のアームに衝突しないように設定された前記医療器具が延びる方向を軸とする略円柱形状を有する空間であり、
前記制御部は、前記第2のアームに取り付けられた前記医療器具が、前記第1のアームの前記接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、前記基準線が、前記略円柱形状の接近禁止範囲の外周面の接線方向に沿って移動するように、前記アーム干渉回避制御を行う、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項3】
前記第2のアームに取り付けられた前記医療器具は、シャフトを含み、
前記医療器具が延びる方向は前記シャフトが延びる方向であり、
前記基準線は、前記シャフトが延びる方向に直交し、かつ、前記第2リンク部のうちの前記シャフトの先端側の端部に接する第1基準線を含み、
前記制御部は、前記第1基準線が、前記接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、前記アーム干渉回避制御を行う、請求項1または2に記載の手術支援システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記アーム干渉回避制御を行う際の前記第2のアームの回転量が、受け付けられた前記操作に応じて前記第2のアームを移動させるように制御する際の前記第2のアームの回転量よりも大きい場合、前記アーム干渉回避制御を行う、請求項3に記載の手術支援システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1のアームに取り付けられた前記医療器具に設定された第1ピボット位置と前記第2のアームに取り付けられた前記医療器具に設定された第2ピボット位置とを結ぶ直線と、前記第1のアームに取り付けられた前記医療器具が延びる方向の直線とを含む平面に対して、前記第1のアームに対する前記医療器具の第1取付位置と、前記第2のアームに対する前記医療器具の第2取付位置とが反対側に位置している場合に、前記アーム干渉回避制御を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の手術支援システム。
【請求項6】
前記第2のアームに取り付けられた前記医療器具は、シャフトを含み、
前記医療器具が延びる方向は、前記シャフトが延びる方向であり、
前記基準線は、前記シャフトが延びる方向に直交し、かつ、前記第2リンク部を回動させる回動軸の回動中心を通る第2基準線を含み、
前記制御部は、前記第2基準線が、前記接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、前記アーム干渉回避制御を行う、請求項1または2に記載の手術支援システム。
【請求項7】
前記第1のアームは、基端側の軸である基端軸を含む複数の関節軸を有し、
前記制御部は、
予め、前記第1のアームに取り付けられた前記医療器具を移動させる際の支点となる位置であるピボット位置に対して前記医療器具を放射状に動かすための参照点を前記基端軸に沿った直線上に設定しており、
前記第2のアームが前記第1のアームの前記接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、前記第2基準線が前記接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように前記参照点を移動させることにより、前記アーム干渉回避制御を行う、請求項6に記載の手術支援システム。
【請求項8】
前記制御部は、受け付けた操作に基づく前記参照点の移動量よりも、前記アーム干渉回避制御により移動される前記参照点の移動量が大きい場合に、前記アーム干渉回避制御を行う、請求項7に記載の手術支援システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1のアームが移動されることにより、前記第2のアームが前記第1のアームの前記接近禁止範囲の範囲内に近づく状態が解除された場合、前記第2のアームを、受け付けられた前記操作に基づく位置に徐々に移動するように制御する、請求項1~8のいずれか1項に記載の手術支援システム。
【請求項10】
前記患者側装置は、前記第1および第2のアームが取り付けられるアームベースを有し、
前記第1のアームと前記第2のアームとは、前記アームベースにおいて隣り合うように配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の手術支援システム。
【請求項11】
前記第1のアームと前記第2のアームとのうちの少なくとも一方の関節軸は、7軸以上設けられている、請求項1~10のいずれか1項に記載の手術支援システム。
【請求項12】
先端側に医療器具が取り付けられる第1および第2のアームを含む患者側装置と、
前記医療器具に対する操作を受け付ける操作部を含む操作者側装置と、
受け付けられた前記操作に基づいて前記医療器具を動作させる制御を行う制御部と、を備え、
前記第1および第2のアームは、それぞれ前記医療器具が取り付けられる第1リンク部と、前記第1リンク部に接続される第2リンク部とを含み、
前記制御部は、
前記第1のアームに取り付けられた前記医療器具に対して接近してはいけない接近禁止範囲を設定し、
前記医療器具が延びる方向に直交し、かつ、前記第2リンク部を通過する基準線を設定し、
前記第2のアームが前記第1のアームの前記接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、前記基準線と前記医療器具が延びる方向とを含む平面が、前記接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、前記第2のアームを前記第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行い、
前記平面は、前記医療器具が延びる方向について前記基準線よりも前記医療器具の基端側の平面である、手術支援システム。
【請求項13】
前記接近禁止範囲は、前記第2のアームが前記第1のアームに衝突しないように設定された前記医療器具が延びる方向を軸とする略円柱形状を有する空間であり、
前記制御部は、前記第2のアームに取り付けられた前記医療器具が、前記第1のアームの前記接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、前記平面が、前記略円柱形状の接近禁止範囲の外周面の接線方向に沿って移動するように、前記アーム干渉回避制御を行う、請求項12に記載の手術支援システム。
【請求項14】
先端側に医療器具が取り付けられる第1および第2のアームと、
前記医療器具に対する操作を受け付ける操作部により受け付けられた前記操作に基づいて前記医療器具を動作させる制御を行う制御部と、を備え、
前記第1および第2のアームは、それぞれ前記医療器具が取り付けられる第1リンク部と、前記第1リンク部に接続される第2リンク部とを含み、
前記制御部は、
前記第1のアームに取り付けられた前記医療器具に対して接近してはいけない接近禁止範囲を設定し、
前記医療器具が延びる方向に直交し、かつ、前記第2リンク部を通過する基準線を設定し、
前記第2のアームが前記第1のアームの前記接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、前記基準線が、前記接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、前記第2のアームを前記第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う、患者側装置。
【請求項15】
第1および第2のアームの先端側に取り付けられる医療器具に対する操作を受け付けるステップと、
受け付けられた前記操作に基づいて前記医療器具を動作させる制御を行うステップとを備え、
前記医療器具を動作させる制御を行うステップは、
前記第1のアームに取り付けられた前記医療器具に対して接近してはいけない接近禁止範囲を設定するステップと、
前記医療器具が延びる方向に直交し、かつ、前記アームのうちの前記医療器具が取り付けられる第1リンク部に接続される第2リンク部を通過する基準線を設定するステップと、
前記第2のアームが前記第1のアームの前記接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、前記基準線が、前記接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、前記第2のアームを前記第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行うステップとを含む、手術支援システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手術支援システム、患者側装置および手術支援システムの制御方法に関し、特に、アーム同士の干渉を回避する手術支援システム、患者側装置および手術支援システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメント(医療装置の一部)同士の干渉を回避する医療装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数の可動式アームと、可動式アームに取り付けられるエンドエフェクタとを備える医療装置が開示されている。上記特許文献1の医療装置は、セグメント(医療装置の一部)同士の干渉を回避するように構成されている。具体的には、一のセグメントが占有する体積である仮想的な第1の衝突対象物(第1のVOC)が決定される。同様に、他のセグメントが占有する体積である仮想的な第2の衝突対象物(第2のVOC)が決定される。第1のVOCおよび第2のVOCは、球や円柱などの形状を有する。また、第1のVOCおよび第2のVOCは、弾性力を有する変形可能な対象物としてモデル化される。これにより、第1のVOCおよび第2のVOCのうちの一方のVOCが他方のVOCに対して仮想変位力(反発力)を与える。
【0004】
そして、上記特許文献1では、一のセグメントの運動計画が決定される。そして、一のセグメントの第1のVOCと他のセグメントの第2のVOCとが重複するか否かが判定される。そして、上記特許文献1では、第1のVOCと第2のVOCとが重複する場合に、第1のVOCと第2のVOCとの間の仮想変位力がゼロになるように、一のセグメントの運動計画が調整される。これにより、第1のVOCと第2のVOCとの衝突(干渉)が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、セグメント(医療装置の一部)同士の干渉を回避するために、一のセグメントと他のセグメントとの両方に仮想的な衝突対象物(VOC)を設定するとともにVOC同士の間の仮想変位力を算出する必要がある。このため、セグメント(医療装置の一部)同士の干渉を回避するための制御が比較的複雑になるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム同士の干渉を回避する手術支援システム、患者側装置および手術支援システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による手術支援システムは、先端側に医療器具が取り付けられる第1および第2のアームを含む患者側装置と、医療器具に対する操作を受け付ける操作部を含む操作者側装置と、受け付けられた操作に基づいて医療器具を動作させる制御を行う制御部と、を備え、第1および第2のアームは、それぞれ医療器具が取り付けられる第1リンク部と、第1リンク部に接続される第2リンク部とを含み、制御部は、第1のアームに取り付けられた医療器具に対して接近してはいけない接近禁止範囲を設定し、医療器具が延びる方向に直交し、かつ、第2リンク部を通過する基準線を設定し、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、第2のアームを第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。なお、「第2リンク部を通過する」とは、「第2リンク部を貫通する」という意味と、「第2リンク部に接する」という意味とを含む概念である。
【0009】
この発明の第1の局面による手術支援システムでは、上記のように、制御部は、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、第2のアームを第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。これにより、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動されることにより、第2のアームが第1のアームに対して回り込むように移動する。この結果、第2のアームが第1のアームに対して近づくのが抑制されるので、アーム同士の干渉を回避することができる。また、第2のアームに対して設定された基準線を、第1のアームの接近禁止範囲の外縁に沿って移動させるだけでアーム同士の干渉を回避することができるので、第1のアームおよび第2のアームの両方に接近禁止範囲を設定するとともに接近禁止範囲同士の仮想変位力を算出する場合と比べて、干渉を回避するための制御を容易化することができる。この結果、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム同士の干渉を回避することができる。
【0010】
この発明の第2の局面による手術支援システムは、先端側に医療器具が取り付けられる第1および第2のアームを含む患者側装置と、医療器具に対する操作を受け付ける操作部を含む操作者側装置と、受け付けられた操作に基づいて医療器具を動作させる制御を行う制御部と、を備え、第1および第2のアームは、それぞれ医療器具が取り付けられる第1リンク部と、第1リンク部に接続される第2リンク部とを含み、制御部は、第1のアームに取り付けられた医療器具に対して接近してはいけない接近禁止範囲を設定し、医療器具が延びる方向に直交し、かつ、第2リンク部を通過する基準線を設定し、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線と医療器具が延びる方向とを含む平面が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、第2のアームを第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行い、平面は、医療器具が延びる方向について基準線よりも医療器具の基端側の平面である。なお、「基端側」とは、医療器具の先端側とは反対側を意味する。
【0011】
この発明の第2の局面による手術支援システムでは、上記のように、制御部は、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線と医療器具が延びる方向とを含む平面が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、第2のアームを第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行い、平面は、医療器具が延びる方向について基準線よりも医療器具の基端側の平面である。これにより、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、平面が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動されることにより、第2のアームが第1のアームに対して回り込むように移動する。この結果、第2のアームが第1のアームに対して近づくのが抑制されるので、アーム同士の干渉を回避することができる。また、第2のアームに対して設定された平面を、第1のアームの接近禁止範囲の外縁に沿って移動させるだけでアーム同士の干渉を回避することができるので、第1のアームおよび第2のアームの両方に接近禁止範囲を設定するとともに接近禁止範囲同士の仮想変位力を算出する場合と比べて、干渉を回避するための制御を容易化することができる。この結果、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム同士の干渉を回避することができる。
【0012】
この発明の第3の局面による患者側装置は、先端側に医療器具が取り付けられる第1および第2のアームと、医療器具に対する操作を受け付ける操作部により受け付けられた操作に基づいて医療器具を動作させる制御を行う制御部と、を備え、第1および第2のアームは、それぞれ医療器具が取り付けられる第1リンク部と、第1リンク部に接続される第2リンク部とを含み、制御部は、第1のアームに取り付けられた医療器具に対して接近してはいけない接近禁止範囲を設定し、医療器具が延びる方向に直交し、かつ、第2リンク部を通過する基準線を設定し、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、第2のアームを第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。
【0013】
この発明の第3の局面による患者側装置では、上記のように、制御部は、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、第2のアームを第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。これにより、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動されることにより、第2のアームが第1のアームに対して回り込むように移動する。この結果、第2のアームが第1のアームに対して近づくのが抑制されるので、アーム同士の干渉を回避することができる。また、第2のアームに対して設定された基準線を、第1のアームの接近禁止範囲の外縁に沿って移動させるだけでアーム同士の干渉を回避することができるので、第1のアームおよび第2のアームの両方に接近禁止範囲を設定するとともに接近禁止範囲同士の仮想変位力を算出する場合と比べて、干渉を回避するための制御を容易化することができる。この結果、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム同士の干渉を回避することが可能な患者側装置を提供することができる。
【0014】
この発明の第4の局面による手術支援システムの制御方法は、第1および第2のアームの先端側に取り付けられる医療器具に対する操作を受け付けるステップと、受け付けられた操作に基づいて医療器具を動作させる制御を行うステップとを備え、医療器具を動作させる制御を行うステップは、第1のアームに取り付けられた医療器具に対して接近してはいけない接近禁止範囲を設定するステップと、医療器具が延びる方向に直交し、かつ、アームのうちの医療器具が取り付けられる第1リンク部に接続される第2リンク部を通過する基準線を設定するステップと、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、第2のアームを第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行うステップとを含む。
【0015】
この発明の第4の局面による手術支援システムの制御方法は、上記のように、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動するように、第2のアームを第1のアームに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行うステップとを含む。これにより、第2のアームが第1のアームの接近禁止範囲の範囲内に近づく場合に、基準線が、接近禁止範囲の外縁に沿って移動されることにより、第2のアームが第1のアームに対して回り込むように移動する。この結果、第2のアームが第1のアームに対して近づくのが抑制されるので、アーム同士の干渉を回避することができる。また、第2のアームに対して設定された基準線を、第1のアームの接近禁止範囲の外縁に沿って移動させるだけでアーム同士の干渉を回避することができるので、第1のアームおよび第2のアームの両方に接近禁止範囲を設定するとともに接近禁止範囲同士の仮想変位力を算出する場合と比べて、干渉を回避するための制御を容易化することができる。この結果、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム同士の干渉を回避することが可能な手術支援システムの制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム同士の干渉を回避するができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態による外科手術システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による医療用マニピュレータの構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による医療用マニピュレータのアームの構成を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による医療用マニピュレータの操作部の構成を示す斜視図である。
【
図8】アームの並進移動を説明するための図である。
【
図9】アームの回転移動を説明するための図である。
【
図10】本発明の第1実施形態による医療用マニピュレータの制御部の構成を示すブロック図(1)である。
【
図11】アームの回転軸(直動軸)を示す図である。
【
図12】並進移動機構部および医療器具の回転軸(直動軸)を示す図である。
【
図13】本発明の第1実施形態による医療用マニピュレータの制御部の構成を示すブロック図(2)である。
【
図14】本発明の第1実施形態による接近禁止範囲と第1基準線とを説明するための図である。
【
図15】接近禁止範囲の接線方向に沿って移動する第1基準線を説明するための図である。
【
図16】接近禁止範囲の接線方向に沿って移動する第1基準線が、操作に基づく位置に徐々に移動する状態を説明するための図である。
【
図17】本発明の第1実施形態による外科手術システムの制御方法を説明するためのフロー図である。
【
図18】本発明の第2実施形態による接近禁止範囲と第2基準線とを説明するための図である。
【
図19】本発明の第2実施形態による第2基準線と参照点とを説明するための図である。
【
図20】本発明の第2実施形態による外科手術システムの制御方法を説明するためのフロー図である。
【
図21】接近禁止範囲の接線方向に沿って移動する第2基準線を説明するための図である。
【
図22】変形例による接近禁止範囲と、接近禁止範囲の接線方向沿って移動する平面とを説明するための図である。
【
図23】変形例によるアーム干渉回避制御のための平面を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1~
図17を参照して、第1実施形態による外科手術システム100の構成について説明する。外科手術システム100は、患者P側装置である医療用マニピュレータ1と、医療用マニピュレータ1を操作するための操作者側装置である遠隔操作装置2とを備えている。医療用マニピュレータ1は医療用台車3を備えており、移動可能に構成されている。遠隔操作装置2は、医療用マニピュレータ1から離間した位置に配置されており、医療用マニピュレータ1は、遠隔操作装置2により遠隔操作されるように構成されている。術者は、医療用マニピュレータ1に所望の動作を行わせるための指令を遠隔操作装置2に入力する。遠隔操作装置2は、入力された指令を医療用マニピュレータ1に送信する。医療用マニピュレータ1は、受信した指令に基づいて動作する。また、医療用マニピュレータ1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。なお、外科手術システム100は、特許請求の範囲の「手術支援システム」の一例である。
【0020】
遠隔操作装置2は、たとえば、手術室の中または手術室の外に配置されている。遠隔操作装置2は、操作用マニピュレータアーム21と、操作ペダル22と、タッチパネル23と、モニタ24と、支持アーム25と、支持バー26とを含む。操作用マニピュレータアーム21は、術者が指令を入力するための操作用のハンドルを構成する。操作用マニピュレータアーム21は、医療器具4に対する操作量を受け付ける。モニタ24は、内視鏡6により撮影された画像を表示するスコープ型表示装置である。支持アーム25は、モニタ24の高さを術者の顔の高さに合わせるようにモニタ24を支持する。タッチパネル23は、支持バー26に配置されている。モニタ24近傍に設けられた図示しないセンサにより術者の頭部を検知することにより医療用マニピュレータ1は遠隔操作装置2による操作が可能になる。術者は、モニタ24により患部を視認しながら、操作用マニピュレータアーム21および操作ペダル22を操作する。これにより、遠隔操作装置2に指令が入力される。遠隔操作装置2に入力された指令は、医療用マニピュレータ1に送信される。なお、操作用マニピュレータアーム21は、特許請求の範囲の「操作部」の一例である。
【0021】
医療用台車3には、医療用マニピュレータ1の動作を制御する制御部31と、医療用マニピュレータ1の動作を制御するためのプログラムなどが記憶される記憶部32とが設けられている。そして、遠隔操作装置2に入力された指令に基づいて、医療用台車3の制御部31は、医療用マニピュレータ1の動作を制御する。
【0022】
また、医療用台車3には、入力装置33が設けられている。入力装置33は、主に施術前に手術の準備を行うために、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のアーム60の移動や姿勢の変更の操作を受け付けるように構成されている。
【0023】
図1および
図2に示す医療用マニピュレータ1は、手術室内に配置されている。医療用マニピュレータ1は、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、複数のアーム60とを備えている。アームベース50は、ポジショナ40の先端に取り付けられている。アームベース50は、比較的長い棒形状(長尺形状)を有する。また、複数のアーム60は、各々のアーム60の基端部が、アームベース50に取り付けられている。複数のアーム60は、折り畳まれた姿勢(収納姿勢)をとることが可能に構成されている。アームベース50と、複数のアーム60とは、図示しない滅菌ドレープにより覆われて使用される。
【0024】
ポジショナ40は、たとえば、7軸多関節ロボットにより構成されている。また、ポジショナ40は、医療用台車3上に配置されている。ポジショナ40は、アームベース50を移動させる。具体的には、ポジショナ40は、アームベース50の位置を3次元に移動させるように構成されている。
【0025】
また、ポジショナ40は、ベース部41と、ベース部41に連結された複数のリンク部42とを含む。複数のリンク部42同士は、関節部43により連結されている。
【0026】
図1に示すように、複数のアーム60の各々の先端には、医療器具4が取り付けられている。医療器具4は、たとえば、取り換え可能なインストゥルメント、内視鏡6(
図6参照)などを含む。
【0027】
図3に示すように、インストゥルメントには、アーム60のホルダ71に設けられたサーボモータM2によって駆動される被駆動ユニット4aが設けられている。また、インストゥルメントの先端には、エンドエフェクタとして鉗子4bが設けられている。なお、鉗子4bは、2つのエンドエフェクタ部材4b′および4b″を有している。
【0028】
また、
図4に示すように、インストゥルメントは、エンドエフェクタ部材4b′および4b″の基端側を先端側でJ11軸周りに回転可能に支持する第1支持体4eと、第1支持体4eの基端側を先端側でJ10軸周りに回転可能に支持する第2支持体4fと、第2支持体4fの基端側に接続されるシャフト4cとを含む。被駆動ユニット4aと、シャフト4cと、第2支持体4fと、第1支持体4eと、鉗子4bとは、Za方向に沿って配置されている。J11軸は、シャフト4cが延びる方向(Za方向)に対して直交(z11方向、
図12参照)する。また、J10軸は、シャフト4cが延びる方向においてJ11軸と離間しかつシャフト4cが延びる方向およびJ11軸に対して直交(z10方向、
図12参照)する。
【0029】
第1支持体4eには、J11軸の回転軸線R1周りに回転するように鉗子4bが取り付けられている。また、第2支持体4fは、第1支持体4eをJ10軸について回転可能に支持している。つまり、第2支持体4fには、J10軸の回転軸線R2周りに回転するように第1支持体4eが取り付けられている。また、第1支持体4eの先端側(Za1方向側)の部分は、U字形状を有している。第1支持体4eのU字形状の先端側の部分の回転軸線R1方向における中央部にツールセンタポイント(TCP1、クレビス)が設定されている。
【0030】
また、
図6に示すように、内視鏡6のTCP2は、内視鏡6の先端に設定されている。
【0031】
次に、アーム60の構成について詳細に説明する。
【0032】
図3に示すように、アーム60は、アーム部61(ベース部62、リンク部63、関節部64)と、アーム部61の先端に設けられる並進移動機構部70とを含む。アーム60は、アーム60の基端側(アームベース50)に対して先端側を3次元に移動させるように構成されている。なお、複数のアーム60は、互いに同様の構成を有する。
【0033】
並進移動機構部70は、アーム部61の先端側に設けられるとともに医療器具4が取り付けられている。また、並進移動機構部70は、医療器具4を患者Pに挿入する方向に並進移動させる。また、並進移動機構部70は、医療器具4をアーム部61に対して相対的に並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70には、医療器具4を保持するホルダ71が設けられている。ホルダ71には、サーボモータM2(
図10参照)が収容されている。サーボモータM2は、医療器具4の被駆動ユニット4aに設けられた回転体を回転させるように構成されている。被駆動ユニット4aの回転体が回転されることにより、鉗子4bが動作される。
【0034】
アーム部61は、7軸多関節ロボットアームから構成されている。また、アーム部61は、アーム部61をアームベース50に取り付けるためのベース部62と、ベース部62に連結された複数のリンク部63とを含む。複数のリンク部63同士は、関節部64により連結されている。
【0035】
並進移動機構部70は、ホルダ71をZa方向に沿って並進移動させることにより、ホルダ71に取り付けられた医療器具4をZa方向(シャフト4cが延びる方向)に沿って並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70は、アーム部61の先端に接続される基端側リンク部72と、先端側リンク部73と、基端側リンク部72と先端側リンク部73との間に設けられる連結リンク部74とを含む。また、ホルダ71は、先端側リンク部73に設けられている。なお、先端側リンク部73および連結リンク部74は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1リンク部」および「第2リンク部」の一例である。
【0036】
そして、並進移動機構部70の連結リンク部74は、基端側リンク部72に対して、先端側リンク部73を、Za方向に沿って相対的に移動させる倍速機構として構成されている。また、基端側リンク部72に対して先端側リンク部73がZa方向に沿って相対的に移動されることにより、ホルダ71に設けられた医療器具4が、Za方向に沿って並進移動するように構成されている。また、アーム部61の先端は、基端側リンク部72を、Za方向に直交するX方向を軸として回動させるように基端側リンク部72に接続されている。
【0037】
また、
図5に示すように、医療用マニピュレータ1は、アーム60に取り付けられ、アーム60を操作する操作部80を備えている。操作部80は、イネーブルスイッチ81と、ジョイスティック82とスイッチ部83とを含む。イネーブルスイッチ81は、ジョイスティック82およびスイッチ部83によるアーム60の移動を許可または不許可とする。また、イネーブルスイッチ81は、操作者(看護師、助手など)が操作部80を把持して押下されることによりアーム60による医療器具4の移動を許可する状態となる。また、イネーブルスイッチ81は、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている。
【0038】
また、スイッチ部83は、医療器具4の長手方向に沿った医療器具4を患者Pに挿入する方向側に医療器具4を移動させるスイッチ部83aと、医療器具4を患者Pに挿入する方向と反対側に医療器具4を移動させるスイッチ部83bとを含む。スイッチ部83aとスイッチ部83bとは、共に、押しボタンスイッチから構成されている。スイッチ部83は、操作部80の外周面80aの両側に設けられている。具体的には、スイッチ部83(スイッチ部83aおよびスイッチ部83b)は、操作部80の両側面に一対設けられている。
【0039】
また、
図5に示すように、操作部80は、アーム60に取り付けられた医療器具4の移動の支点(
図9参照)となるピボット位置PPを教示するピボットボタン85を含む。ピボットボタン85は、操作部80の面80bに、イネーブルスイッチ81に隣り合うように設けられている。そして、内視鏡6(
図6参照)またはピボット位置教示器具7(
図7)の先端が、患者Pの体表面Sに挿入されたトロカールTの挿入位置に対応する位置まで移動された状態で、ピボットボタン85が押下されることによりピボット位置PPが教示され、記憶部32に記憶される。なお、ピボット位置PPの教示において、ピボット位置PPは、1つの点(座標)として設定され、ピボット位置PPの教示は、医療器具4の方向を設定するものではない。ピボットボタン85は、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている。
【0040】
また、
図1に示すように、複数のアーム60のうちの一つのアーム60(たとえば、アーム60c)には内視鏡6が取り付けられ、残りのアーム60(たとえば、アーム60a、60bおよび60d)には、内視鏡6以外の医療器具4が取り付けられる。具体的には、手術において、4つのアーム60のうちの1つのアーム60に内視鏡6が取り付けられ、3つのアーム60に内視鏡6以外の医療器具4(鉗子4bなど)が取り付けられる。そして、内視鏡6が取り付けられているアーム60に対して、内視鏡6が取り付けられた状態でピボット位置PP1が教示される。また、内視鏡6以外の医療器具4が取り付けられるアーム60に対して、ピボット位置教示器具7が取り付けられた状態でピボット位置PP2が教示される。なお、内視鏡6は、互いに隣り合うように配置されている4つのアーム60のうちの、中央に配置される2つのアーム60(アーム60bおよび60c)のうちのいずれかに取り付けられる。すなわち、ピボット位置PPは、複数のアーム60毎に個別に設定される。なお、アーム60bは、特許請求の範囲の「第2のアーム」の一例である。また、アーム60cは、特許請求の範囲の「第1のアーム」の一例である。
【0041】
また、
図5に示すように、操作部80の面80bには、アーム60の位置を最適化するためのアジャストメントボタン86が設けられている。内視鏡6が取り付けられたアーム60に対するピボット位置PPの教示後、アジャストメントボタン86が押下さえることにより、他のアーム60(アームベース50)の位置が最適化される。アジャストメントボタン86は、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている。
【0042】
また、
図5に示すように、操作部80は、アーム60に取り付けられた医療器具4(または内視鏡6)を並進移動(
図8参照)させるモードと、回転移動(
図9参照)させるモードとを切り替えるモード切替ボタン84を含む。また、モード切替ボタン84の近傍には、モードインジケータ84aが設けられている。モードインジケータ84aは、切り替えられたモードを表示する。具体的には、モードインジケータ84aが点灯(回転移動モード)または消灯(並進移動モード)されることにより、現在のモード(並進移動モードまたは回転移動モード)が表示される。
【0043】
また、モードインジケータ84aは、ピボット位置PPが教示されたことを表示するピボット位置インジケータを兼ねている。
【0044】
図8に示すように、アーム60を並進移動させるモードでは、医療器具4の先端4dが、X-Y平面上において移動するように、アーム60が移動される。また、
図9に示すように、アーム60を回転移動させるモードでは、ピボット位置PPが教示されていない時は、鉗子4bを中心に回転移動し、ピボット位置PPが教示されている時は、ピボット位置PPを支点として医療器具4が回転移動するように、アーム60が移動される。なお、医療器具4のシャフト4cがトロカールTに挿入された状態で、医療器具4が回転移動される。
【0045】
また、
図10に示すように、アーム60には、アーム部61の複数の関節部64に対応するように、複数のサーボモータM1と、エンコーダE1と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE1は、サーボモータM1の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM1の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0046】
また、
図10に示すように、並進移動機構部70には、医療器具4の被駆動ユニット4aに設けられた回転体を回転させるためのサーボモータM2と、医療器具4を並進移動させるためのサーボモータM3と、エンコーダE2およびエンコーダE3と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE2およびエンコーダE3は、それぞれ、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0047】
また、ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節部43に対応するように、複数のサーボモータM4と、エンコーダE4と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE4は、サーボモータM4の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM4の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0048】
また、医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪(図示せず)の各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE5は、サーボモータM5の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0049】
また、医療用台車3には、医療用台車3の複数の図示しない前輪の各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、図示しない減速機とブレーキが設けられている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。また、医療用台車3のスロットル部34aには、ポテンショメータP1(
図1参照)が設けられており、スロットル部34aの捻りに応じてポテンショメータP1で検出した回転角に基づき、前輪のサーボモータM5は駆動される。また、医療用台車3の図示しない後輪は、双輪形式であり、操作ハンドル34の左右(R方向)の回動に基づき、後輪は操舵される。また、医療用台車3の操作ハンドル34には、ポテンショメータP2(
図2参照)が設けられており、医療用台車3の後輪には、サーボモータM6とエンコーダE6と図示しない減速機が設けられている。減速機は、サーボモータM6の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。操作ハンドル34の左右(R方向)の回動に応じてポテンショメータP2で検出した回転角に基づき、サーボモータM6は駆動される。すなわち、操作ハンドル34の左右(R方向)の回動による後輪の操舵は、サーボモータM6によりパワーアシストされるように構成されている。なお、サーボモータM5およびサーボモータM6は、特許請求の範囲の「医療用台車駆動部」の一例である。
【0050】
また、医療用台車3は、前輪が駆動されることにより、前後方向に移動する。また、医療用台車3の操作ハンドル34が回動されることにより、後輪が操舵されて、医療用台車3が左右方向に回動する。
【0051】
医療用台車3の制御部31は、指令に基づいて複数のアーム60の移動を制御するアーム制御部31aと、指令に基づいてポジショナ40の移動および医療用台車3の前輪および後輪(図示せず)の駆動を制御するポジショナ制御部31bとを含む。アーム制御部31aには、アーム60を駆動するためのサーボモータM1を制御するためのサーボ制御部C1が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C1には、サーボモータM1の回転角を検出するためのエンコーダE1が電気的に接続されている。
【0052】
また、アーム制御部31aには、医療器具4を駆動するためのサーボモータM2を制御するためのサーボ制御部C2が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C2には、サーボモータM2の回転角を検出するためのエンコーダE2が電気的に接続されている。また、アーム制御部31aには、並進移動機構部70を並進移動するためのサーボモータM3を制御するためのサーボ制御部C3が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C3には、サーボモータM3の回転角を検出するためのエンコーダE3が電気的に接続されている。
【0053】
そして、遠隔操作装置2に入力された動作指令が、アーム制御部31aに入力される。アーム制御部31aは、入力された動作指令と、エンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1(C2、C2)に出力する。サーボ制御部C1(C2、C3)は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1(M2、M3)に出力する。これにより、アーム60は、遠隔操作装置2に入力された動作指令に応じて移動する。
【0054】
また、アーム制御部31aは、操作部80のジョイスティック82からの入力信号に基づいてアーム60を操作する。具体的には、アーム制御部31aは、ジョイスティック82から入力された入力信号(動作指令)と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1に出力する。サーボ制御部C1は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1に出力する。これにより、アーム60は、ジョイスティック82に入力された動作指令に応じて移動する。
【0055】
アーム制御部31aは、操作部80のスイッチ部83からの入力信号に基づいてアーム60を操作するように構成されている。具体的には、アーム制御部31aは、スイッチ部83から入力された入力信号(動作指令)と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1またはC3に出力する。サーボ制御部C1またはC3は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1またはE3により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1またはM3に出力する。これにより、アーム60は、スイッチ部83に入力された動作指令に応じて移動する。
【0056】
また、
図10に示すように、ポジショナ制御部31bには、ポジショナ40を移動するサーボモータM4を制御するためのサーボ制御部C4が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C4には、サーボモータM4の回転角を検出するためのエンコーダE4が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部31bには、医療用台車3の前輪(図示せず)を駆動するサーボモータM5を制御するためのサーボ制御部C5が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C5には、サーボモータM5の回転角を検出するためのエンコーダE5が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部31bには、医療用台車3の後輪(図示せず)を駆動するサーボモータM6を制御するためのサーボ制御部C6が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C6には、サーボモータM6の回転角を検出するためのエンコーダE6が電気的に接続されている。
【0057】
また、入力装置33からの動作指令が、ポジショナ制御部31bに入力される。ポジショナ制御部31bは、入力装置33から入力された動作指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C4に出力する。サーボ制御部C4は、ポジショナ制御部31bから入力された位置指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM4に出力する。これにより、ポジショナ40は、入力装置33に入力された動作指令に応じて移動する。詳細な説明は省略するが、同様な手順により、ポジショナ制御部31bは、操作ハンドル34からの動作指令に応じて、医療用台車3を移動させる。
【0058】
(アームの軸)
次に、
図11を参照して、アーム60の軸について説明する。
【0059】
第1実施形態では、
図11に示すように、アーム60の関節軸は、7軸以上(第1実施形態では、8軸)設けられている。具体的には、アーム60は、回転軸としてのJ1~J7軸と、直動軸としてのJ8軸とを備えている。J1~J7軸は、アーム部61の関節部64の回転軸に対応する。また、J7軸は、並進移動機構部70(
図3参照)の基端側リンク部72に対応する。J8軸は、並進移動機構部70の先端側リンク部73を基端側リンク部72に対してZa方向に沿って相対的に移動させる軸に対応する。すなわち、
図10に示すサーボモータM1は、アーム60のJ1~J7軸に対応するように設けられている。また、サーボモータM3は、J8軸に対応するように設けられている。なお、J1軸およびJ7軸は、それぞれ、特許請求の範囲の「基端軸」および「回動軸」の一例である。
【0060】
(医療器具(鉗子)の軸)
次に、
図12を参照して、医療器具4(鉗子4b)の軸について説明する。
【0061】
図12に示すように、医療器具4(鉗子4b)は、シャフト4cの回転軸(シャフト4cが延びる方向に沿った軸)としてのJ9軸と、シャフト4cに接続される第2支持体4fの回転軸としてのJ10軸と、第1支持体4eに対して鉗子4bが回転する軸としてのJ11軸と、鉗子4bの開閉軸としてのJ12軸とを備えている。なお、アーム60のホルダ71に設けられたサーボモータM2は、複数(たとえば、4個)設けられており、複数のサーボモータM2によって、被駆動ユニット4aが駆動される。これにより、J9軸~J12軸周りに、医療器具4が駆動される。
【0062】
次に、
図13を参照して、操作用マニピュレータアーム21からアーム60までの制御の流れについて説明する。
【0063】
遠隔操作装置2の操作用マニピュレータアーム21によって、医療器具4に対する操作が受け付けられる。
【0064】
制御部31のアーム制御部31aは、医療器具姿勢制御部31c、干渉回避部31e、医療器具逆運動学算出部31h、およびアーム関節制御部31dを含む。また、アーム関節制御部31dは、冗長関節制御部31fと、アーム逆運動学算出部31gとを含む。
【0065】
医療器具姿勢制御部31cには、操作用マニピュレータアーム21から、受け付けられた操作に対する医療器具4の目標位置・姿勢指令が入力されるとともに、ピボット位置PP(PP1、PP2)の位置情報が入力される。医療器具姿勢制御部31cは、目標位置・姿勢指令と、ピボット位置PPの位置情報と、干渉回避部31eによって計算された回避角度とに基づいて、医療器具4の目標位置・姿勢を算出する。算出された医療器具4の目標位置・姿勢は、医療器具逆運動学算出部31hに入力される。医療器具逆運動学算出部31hは、医療器具4の目標位置・姿勢と、関節可動範囲とに基づいて、医療器具4の目標回転角度指令を算出し、医療器具4の目標回転角度指令を医療器具4のサーボ制御部C2に送信する。サーボ制御部C2は、送信された目標回転角度指令に基づいて、医療器具4を駆動する。
【0066】
また、医療器具姿勢制御部31cは、目標位置・姿勢指令と、ピボット位置PPの位置情報と、干渉回避部31eによって計算された回避角度とに基づいて、アーム60の先端目標位置・姿勢を算出する。算出されたアーム60の先端目標位置・姿勢は、アーム逆運動学算出部31gに送信される。
【0067】
また、アーム逆運動学算出部31gには、関節可動範囲が入力される。そして、アーム逆運動学算出部31gは、アーム60の先端目標位置・姿勢と、冗長関節角度と、関節可動範囲とに基づいて、アーム60の目標関節角度指令を算出し、アーム60の目標関節角度指令をアーム60のサーボ制御部C1およびC3に送信する。サーボ制御部C1およびC3は、送信された目標関節角度指令に基づいて、アーム60を駆動する。
【0068】
アーム60から、アーム60の実際の関節角度が、冗長関節制御部31fと、干渉回避部31eとに入力される。また、干渉回避部31eには、最小接近可能距離と医療器具4の幅Wとが入力される。そして、干渉回避部31eは、アーム60の実際の関節角度と、最小接近可能距離と、医療器具4の幅Wとに基づいて、回避角度(後述する、第1基準線L1が接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するようにアーム60を移動させるための回転量)を算出し、医療器具姿勢制御部31cに送信する。
【0069】
また、冗長関節制御部31fには、制約条件が入力される。そして、冗長関節制御部31fは、アーム60の実際の関節角度と、制約条件とに基づいて算出された冗長関節角度(アーム60の8軸のうち、冗長軸とした2軸分)を、アーム逆運動学算出部31gに送信する。
【0070】
(アーム干渉回避制御のための制御部の構成)
次に、アーム干渉回避制御のための制御部31の具体的な構成について説明する。制御部31は、操作用マニピュレータアーム21によって受け付けられた操作に基づいて医療器具4を動作させる制御を行う。以下の説明では、内視鏡6が取り付けられたアーム60cが停止している状態(操作対象外)であるとする。また、アームベース50において内視鏡6が取り付けられたアーム60cに隣り合うように配置されているアーム60bが操作用マニピュレータアーム21によって操作されるとする。
【0071】
また、以下の説明では、アーム60bに取り付けられた医療器具4が延びる方向をZa方向とし、Za方向に直交する方向をYa方向(または、Xa方向)とする。アーム60cに取り付けられた内視鏡6が延びる方向をZb方向とし、Zb方向に直交する方向をYb方向(または、Xb方向)とする。
【0072】
図14に示すように、第1実施形態では、制御部31(アーム関節制御部31d)は、複数のアーム60のうちのアーム60cに取り付けられた内視鏡6に対して接近してはいけない接近禁止範囲Aを設定する。接近禁止範囲Aは、アーム60bがアーム60cに衝突しないように設定された内視鏡6が延びる方向(Zb方向)の直線を軸とする略円柱形状を有する空間である。
【0073】
図15(a)に示すように、接近禁止範囲Aの半径は、たとえば、Zb方向から見て、アーム60cに取り付けられた内視鏡6に接近可能な最小接近可能距離r(
図15(d)参照)と、アーム60bに取り付けられた医療器具4の幅Wの半分(W/2、
図15(d)参照)との和である。なお、医療器具4の幅Wとは、アーム60bにおいて、Zb方向に直交するX方向の幅Wを意味する。
【0074】
なお、制御部31(アーム関節制御部31d)は、アーム60bに取り付けられた医療器具4が、アーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、以下の制御(第1基準線L1の設定、第1回転量の計算、第1回転量と第2回転量との比較)を行う。
【0075】
図14に示すように、第1実施形態では、制御部31(アーム関節制御部31d)は、医療器具4が延びるZa方向に直交し、かつ、アーム60のうちの医療器具4が取り付けられる先端側リンク部73に接続される連結リンク部74を通過する第1基準線L1を設定する。具体的には、第1基準線L1は、シャフト4cが延びるZa方向に直交し、かつ、連結リンク部74のうちのシャフト4cの先端側(Za1方向側)の端部75に接する。また、第1基準線L1は、並進移動機構部70のうちの連結リンク部74のZa1方向側の端部75に接する(沿う)ように、シャフト4cからYa2方向側に延びるベクトルである。言い換えると、第1基準線L1は、並進移動機構部70のうちの最もトロカールT(ポート)に近い部分(端部75)に接する。なお、ポートとは、患者Pの体表面Sに設けられる医療器具4を挿入するための孔を意味する。また、第1基準線L1は、特許請求の範囲の「基準線」の一例である。
【0076】
そして、制御部31(アーム関節制御部31d)は、第1基準線L1が接近禁止範囲Aの外縁に沿うようにシャフト4cを軸としてアーム60を回転させた場合のアーム60bの回転量(以下、第1回転量とする)を算出する。具体的には、制御部31は、第1基準線L1が略円柱形状の接近禁止範囲Aの外周面A1の接線方向に沿うようにシャフト4cを軸としてアーム60bを回転させた場合のアーム60bの第1回転量を算出する。
【0077】
そして、第1実施形態では、アーム干渉回避制御(
図15参照)を行う際のアーム60bの第1回転量が、受け付けられた操作に応じてシャフト4cを軸としてアーム60bを回転させるように制御する際のアーム60bの回転量(以下、第2回転量という)よりも大きい場合、アーム干渉回避制御を行う。つまり、制御部31は、第2回転量と第1回転量を比較して、第2回転量よりも第1回転量が大きい場合、アーム60bの回転量として第1回転量を採用する。
【0078】
そして、第1実施形態では、
図15(b)および
図15(c)に示すように、制御部31(アーム関節制御部31d)は、アーム60bの回転量として第1回転量を採用した場合、第1基準線L1が、接近禁止範囲Aの外縁(略円柱形状の接近禁止範囲Aの外周面A1の接線方向)に沿って移動するように、アーム60bをアーム60cに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。これにより、操作用マニピュレータアーム21によって受け付けられた操作に応じた第2回転量よりも第1回転量の方が大きいので、アーム60bがアーム60cとの干渉を避けるように移動する。このように、制御部31は、アーム60bに取り付けられた医療器具4が、アーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、第1基準線L1が、略円柱形状の接近禁止範囲Aの外周面A1の接線方向(B方向)に沿って移動するように、アーム干渉回避制御を行う。
【0079】
また、第1実施形態では、
図14および
図15(a)に示すように、制御部31(アーム関節制御部31d)は、アーム60cに取り付けられた内視鏡6に設定されたピボット位置PP1と、アーム60bに取り付けられた医療器具4に設定されたピボット位置PP2とを結ぶ直線L20(
図15(a)の太線)と、アーム60cに取り付けられた内視鏡6が延びる方向(Zb方向)の直線とを含む平面SF1(Xb-Zb平面)に対して、アーム60cに対する内視鏡6の第1取付位置P11と、アーム60bに対する医療器具4の第2取付位置P12とが反対側に位置している場合に、アーム干渉回避制御を行う。なお、「取付位置」とは、内視鏡6(医療器具4)がアーム60に対して取り付けられる位置を意味する。
【0080】
また、第1実施形態では、
図16に示すように、制御部31(アーム関節制御部31d)は、アーム60cが移動されることにより、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく状態(
図16(a)参照)が解除された場合、アーム60bを、受け付けられた操作に基づく位置に徐々に移動するように制御(
図16(b)、(c)参照)する。
【0081】
具体的には、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づいている状態(
図16(a)参照)において、アーム60cが操作対象に切り替えられ、アーム60cが移動される。この際、アーム60cは、内視鏡6のピボット位置PP1は、動かさずに、アーム60cが傾くように移動する。この場合、アーム60cの傾きに伴って、接近禁止範囲Aも傾く。これにより、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく状態(
図16(a)参照)が解除される。その後、アーム60bを、受け付けられた操作に基づく位置に徐々に移動するように制御(
図16(b)、(c)参照)する。この際、医療器具4のピボット位置PP2が動かない状態で、アーム60bが移動される。なお、徐々に戻す動作は、アーム60bが操作対象となっていないときだけでなく、操作対象に切り替わった後で開始されてもよい。
【0082】
(外科手術システムの制御方法)
次に、
図17を参照して、外科手術システム100の制御方法(アーム60bのアーム干渉回避制御)について説明する。なお、平面SF1(Xb-Zb平面)に対して、アーム60cに対する内視鏡6の第1取付位置P11と、アーム60bに対する医療器具4の第2取付位置P12とが反対側に位置している(
図15(a)参照)とする。
【0083】
まず、ステップS1において、制御部31(アーム制御部31a)は、操作用マニピュレータアーム21により医療器具4に対する操作を受け付ける。そして、制御部31は、受け付けられた操作に応じた第2回転量を算出する。
【0084】
次に、ステップS2において、制御部31(アーム制御部31a)は、複数のアーム60のうちのアーム60cに取り付けられた内視鏡6に対して接近してはいけない接近禁止範囲Aを設定する。
【0085】
次に、ステップS3において、制御部31(アーム制御部31a)は、受け付けられた操作に対してアーム60b(アーム部61、並進移動機構部70)が、接近禁止範囲Aの範囲内に侵入するか否かを判定する。
【0086】
ステップS3において、yesの場合、ステップS4において、医療器具4(シャフト4c)が延びるZa方向に直交し、かつ、連結リンク部74を通過する(端部75に接する)第1基準線L1を設定する。
【0087】
ステップS5において、第1基準線L1が接近禁止範囲Aの外縁(接線方向)に沿うようにアーム60bを移動させた場合のアーム60bの第1回転量を算出する。
【0088】
ステップS6において、制御部31(アーム制御部31a)は、第2回転量と第1回転量を比較して、第2回転量よりも第1回転量が大きいか否かを判定する。
【0089】
ステップS6においてyesに場合、ステップS7において、第1基準線L1が、接近禁止範囲Aの外縁(接線方向)に沿って移動するように、アーム60bをアーム60cに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。すなわち、制御部31は、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、アーム60bをアーム60cに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。
【0090】
ステップS3においてnoの場合、および、ステップS6においてnoに場合、制御部31は、ステップS8において、第2回転量に対応する姿勢にアーム60bを徐々に移動させる。
【0091】
上記のステップS1~S8の動作は、アーム60の動作中、常に行われる。また、上記の説明は、内視鏡6が取り付けられるアーム60cの一方側に隣り合うアーム60bについて説明したが、アーム60cの他方側に隣り合うアーム60dに対しても同様にアーム干渉回避制御が行われる。
【0092】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0093】
(外科手術システム、医療用マニピュレータの効果)
第1実施形態では、上記のように、制御部31は、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、第1基準線L1が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム60bをアーム60cに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行う。これにより、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、第1基準線L1が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動されることにより、アーム60bがアーム60cに対して回り込むように移動する。この結果、アーム60bがアーム60cに対して近づくのが抑制されるので、アーム60同士の干渉を回避することができる。また、アーム60bに対して設定された第1基準線L1を、アーム60cの接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動させるだけでアーム60同士の干渉を回避することができるので、アーム60cおよびアーム60bの両方に接近禁止範囲Aを設定するとともに接近禁止範囲A同士の仮想変位力を算出する場合と比べて、干渉を回避するための制御を容易化することができる。この結果、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム60同士の干渉を回避することができる。
【0094】
また、第1実施形態では、上記のように、接近禁止範囲Aは、アーム60bがアーム60cに衝突しないように設定された内視鏡6が延びるZb方向を軸とする略円柱形状を有する空間であり、制御部31は、アーム60bに取り付けられた医療器具4が、アーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、第1基準線L1が、略円柱形状の接近禁止範囲Aの外周面A1の接線方向に沿って移動するように、アーム干渉回避制御を行う。これにより、接近禁止範囲Aが、内視鏡6が延びるZb方向に延びるように略円柱形状に設定されるので、略円柱形状の接近禁止範囲Aが延びる比較的広い範囲内において、アーム60同士の干渉を回避することができる。
【0095】
また、第1実施形態では、上記のように、第1基準線L1は、医療器具4が延びるZa方向であるシャフト4cが延びる方向に直交し、かつ、連結リンク部74のうちのシャフト4cの先端側の端部75に接するように設定されている。そして、制御部31は、第1基準線L1が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム干渉回避制御を行う。ここで、連結リンク部74のうちのシャフト4cの先端側の端部75が、アーム60c(または、アーム60cに取り付けられた内視鏡6)に比較的干渉しやすい。そこで、上記のように、連結リンク部74のうちのシャフト4cの先端側の端部75に接する第1基準線L1が接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するようにアーム干渉回避制御を行うことによって、比較的干渉しやすい連結リンク部74のうちのシャフト4cの先端側の端部75の干渉を効果的に抑制することができる。
【0096】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部31は、アーム干渉回避制御を行う際のアーム60bの第1回転量が、受け付けられた操作に応じてアーム60bを移動させるように制御する際のアーム60bの第2回転量よりも大きい場合、アーム干渉回避制御を行う。これにより、アーム干渉回避制御の第1回転量と受け付けられた操作に応じた制御の第2回転量とのうちの大きい方の回転量に基づいてアーム60bが移動されるので(つまり、アーム60cからより離間するように移動されるので)、アーム60同士の干渉をより抑制することができる。
【0097】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部31は、アーム60cに取り付けられた内視鏡6に設定されたピボット位置PP1とアーム60cに取り付けられた医療器具4に設定されたピボット位置PP2とを結ぶ直線L20と、アーム60cに取り付けられた内視鏡6が延びる方向の直線とを含む平面SF1に対して、アーム60cに対する内視鏡6の第1取付位置P11と、アーム60bに対する医療器具4の第2取付位置P12とが反対側に位置している場合に、アーム干渉回避制御を行う。ここで、平面SF1に対して、アーム60cに対する内視鏡6の第1取付位置P11と、アーム60bに対する医療器具4の第2取付位置P12とが同じ側に位置している場合に第1基準線L1が接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するようにアーム60bを移動させると、アーム60cおよび60b同士が干渉してしまう場合がある。そこで、上記のように、構成することによって、アーム60同士の干渉を適切に抑制することができる。
【0098】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部31は、アーム60cが移動されることにより、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく状態が解除された場合、アーム60bは、受け付けられた操作に基づく位置に徐々に戻るように制御する。また、アーム60bが再び操作対象になった後から徐々に戻しても良い。これにより、回避動作によって狭くなった動作範囲を復元することができる。
【0099】
また、第1実施形態では、上記のように、遠隔操作装置2は、複数のアーム60が取り付けられるアームベース50を有し、アーム60cとアーム60bが隣り合うように配置されている。ここで、アーム60cとアーム60bとは、アームベース50において隣り合うように配置されている場合、特に、アーム60cとアーム60bとが干渉しやすいので、第1基準線L1が接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するようにアーム干渉回避制御を行うことは、特に有効である。
【0100】
また、第1実施形態では、上記のように、アーム60(60a~60d)の関節軸は、7軸以上設けられている。ここで、医療器具4を移動させる際の支点となる位置であるピボット位置PPを維持するためのアーム60の姿勢は、アーム60の6軸の関節軸の回転量(移動量)によって決定することができるので、アーム60の関節軸が7軸以上設けられていることによって、冗長軸が発生することになる。すなわち、ピボット位置PPを維持しながら、アーム60bが異なる姿勢をとることができる。そこで、アーム60の関節軸を7軸以上設けることによって、ピボット位置PPを維持しながら、アーム60cの干渉を抑制するようにアーム60bの姿勢を変更することができる。
【0101】
(外科手術システムの制御方法の効果)
第1実施形態では、上記のように、外科手術システム100の制御方法は、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、第1基準線L1が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム60bをアーム60cに対して相対的に移動させるアーム干渉回避制御を行うステップS7を含む。これにより、アーム60bがアーム60cに対して回り込むように移動するので、アーム60cおよびアーム60bの両方に接近禁止範囲Aを設定し、仮想変位力を計算する場合と比べて、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム60同士の干渉を回避することができる。
【0102】
[第2実施形態]
第2実施形態による外科手術システム200の構成について説明する。
【0103】
図18に示すように、第2実施形態では、シャフト4cが延びるZa方向に直交し、かつ、連結リンク部74を回動させるJ7軸の回動中心(基端側リンク部72の回動中心D、
図19参照)を通る第2基準線L2が設定されている。そして、制御部231は、第2基準線L2が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム干渉回避制御を行う。なお、第2基準線L2は、特許請求の範囲の「基準線」の一例である。以下、具体的に説明する。
【0104】
なお、アーム60に取り付けられた医療器具4を移動させる際の支点となる位置であるピボット位置PP2が、アーム60(アーム60b)に対して設定されている。また、第2実施形態では、制御部231は、予め、アーム60bに取り付けられた医療器具4を移動させる際の支点となる位置であるピボット位置PP2に対して医療器具4を放射状に動かすための参照点RPをJ1軸に沿った直線上に設定する。具体的には、J1軸上の参照点RPから、医療器具4のシャフト4cに対して垂線を引いた場合の垂線の方向に沿って、J8軸の中心(直動するJ8軸が移動する範囲の中心)とJ7軸の回動中心Dとが配置されるように、参照点RP1が設定される。以下、具体的に説明する。
【0105】
図19に示すように、ステップS11(
図20参照)において、制御部231は、操作用マニピュレータアーム21により医療器具4に対する操作を受け付ける。そして、制御部231は、アーム60の配置位置に応じて、参照点RPをx軸方向に移動させる。なお、移動後の参照点を規定の参照点RP1として設定する。なお、
図19では、内視鏡6が取り付けられるアーム60cの参照点RP1を示しているが、医療器具4が取り付けられるアーム60cについても同様である。
【0106】
ステップS2およびステップS3の動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0107】
次に、ステップS12において、並進移動機構部70に設けられるJ8軸の中心とJ7軸の回動中心Dとを通過するように設定されている第2基準線L2が、接近禁止範囲Aの外縁(接線方向)に沿うように参照点RP2を算出する。具体的には、まず、アーム60cの内視鏡6の座標系を定義する。原点は、アーム60c(内視鏡6)のピボット位置PP1である。y軸は、ピボット位置PP1と、アーム60b(医療器具4)のピボット位置PP2とを結ぶベクトルと、内視鏡6のシャフト6aの軸ベクトル(z軸)との外積方向に沿う。x軸は、内視鏡6のシャフト6aの軸ベクトルと、y軸ベクトルとの外積方向に沿う。
【0108】
次に、アーム60bの医療器具4の原点を、内視鏡6の座標系のxy平面上に射影する。なお、医療器具4の原点とは、医療器具4を制御する座標系の原点である。
【0109】
次に、内視鏡6の座標系において、第2基準線L2が接近禁止範囲Aの接線方向に沿うような参照点RP2を算出する。なお、参照点RP2は、J1軸線に直交するx軸線上に配置される。これにより、第2基準線L2の延長線上に参照点RP2が配置されるように参照点RP2が移動される。
【0110】
そして、ステップS13において、制御部31は、参照点RP1の移動量(参照点RFからの移動量)よりも、移動後の参照点RP2の移動量が大きいの方が大きいか(J1軸から離間するか)否かを判定する。
【0111】
そして、ステップS13においてyesの場合、ステップS14において、第2基準線L2が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム干渉回避制御が行われる。たとえば、
図21(a)に示すあらかじめ定めたアーム60の配置位置に応じた参照点RP1の移動量L11よりも、
図21(b)および
図21(c)に示すように、第2基準線L2が接近禁止範囲Aの接線方向に沿うような参照点RP2の移動量L12(L13)が大きい場合、アーム干渉回避制御が行われる。これにより、第2実施形態では、制御部231は、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、第2基準線L2の延長線上に参照点RP2を移動させることにより、第2基準線L2が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム干渉回避制御を行う。
【0112】
ステップS3、または、ステップS13においてnoの場合、ステップS15に進んで、規定の参照点RP1に対応する姿勢にアーム60bを移動させる。
【0113】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0114】
第2実施形態では、上記のように、第2基準線L2は、シャフト4cが延びる方向に直交し、かつ、連結リンク部74を回動させるJ7軸の回動中心Dを通るように設定されている。制御部231は、第2基準線L2が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム干渉回避制御を行う。これにより、比較的干渉しやすい並進移動機構部70が接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動されるので、アーム60同士の干渉を効果的に抑制することができる。
【0115】
また、第2実施形態では、上記のように、制御部231は、予め、アーム60に取り付けられた医療器具4を移動させる際の支点となる位置であるピボット位置PP1に対して医療器具4を放射状に動かすための参照点RPをJ1軸に沿った直線上に設定しており、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく場合に、第2基準線L2が接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように参照点RP2を移動させることにより、アーム干渉回避制御を行う。これにより、予め設定されている参照点RPを用いてアーム干渉回避制御を行うことができるので、外科手術システム200の制御の変更が大きくなるのを抑制することができる。
【0116】
また、第2実施形態では、上記のように、制御部231は、受け付けた操作に基づく参照点RP1の移動量よりも、アーム干渉回避制御により移動される参照点RP2の移動量が大きい場合に、アーム干渉回避制御を行う。これにより、アーム60cがアーム60bに対してより離間するように移動されるので、アーム60同士の干渉を適切に抑制することができる。
【0117】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0118】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、アーム60cに対してアーム60bが移動することにより、アーム60cとアーム60bとの干渉が回避される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アーム60bに対してアーム60cを移動することにより、アーム60cとアーム60bとの干渉を回避してもよい。また、アーム60bとアーム60cとの両方を移動することにより、アーム60cとアーム60bとの干渉を回避してもよい。
【0119】
また、上記第1および第2実施形態では、第1基準線L1(第2基準線L2)が、接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するように、アーム60bを移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図22に示すように、シャフト4c(Za軸)と、シャフト4c(Za軸)に垂直で連結リンク部74を通過する第1基準線L1(ベクトル)とによって張られる平面のうち、第1基準線L1よりもシャフト4cの基端側の部分である平面SFを設定し、平面SFが接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するようにアーム60bを移動させてもよい。このように平面SFが接近禁止範囲Aの外縁に沿って移動するようにアーム60bを移動させることによっても、上記第1および第2実施形態と同様に、干渉を回避するための制御を容易化しながら、アーム60同士の干渉を回避することができる。
【0120】
また、上記第1および第2実施形態では、接近禁止範囲Aが略円柱形状を有する空間である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、接近禁止範囲Aが略円柱形状以外の形状(角柱形状など)を有していてもよい。
【0121】
また、上記第1実施形態では、第1基準線L1が連結リンク部74のうちのシャフト4cの先端側の端部75に接するように設定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、並進移動機構部70において、連結リンク部74のシャフト4cの先端側の端部75よりもアーム60cに干渉しやすい部分があれば、この部分に接するように第1基準線L1を設定してもよい。
【0122】
また、上記第1実施形態では、平面SF1(Xb-Zb平面)に対して、アーム60cに対する内視鏡6の第1取付位置P11と、アーム60bに対する医療器具4の第2取付位置P12とが反対側に位置している場合にアーム干渉回避制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2実施形態のように内視鏡6の座標系を定義して、医療器具4が内視鏡6の座標系のy軸の正側に位置している場合に、アーム干渉回避制御を行うようにしてもよい。
【0123】
また、上記第1実施形態では、平面SF1が、Xb-Zb平面である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図23に示すように、アーム60cに取り付けられた内視鏡6に設定されたピボット位置PP1と、アーム60bに取り付けられた医療器具4に設定されたピボット位置PP2とを結ぶ直線L20と、アーム60bに取り付けられた医療器具4が延びる方向(Za方向)の直線とを含む平面SF3(Xa-Za平面)を定義してもよい。そして、制御部31(アーム関節制御部31d)は、平面SF3(Xa-Za平面)に対して、アーム60cに対する内視鏡6の第1取付位置P11と、アーム60bに対する医療器具4の第2取付位置P12とが反対側に位置している場合に、アーム干渉回避制御を行ってもよい。
【0124】
また、上記第1および第2実施形態では、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく状態が解除された場合、アーム60bを、受け付けられた操作に基づく位置に徐々に移動する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アーム60bがアーム60cの接近禁止範囲Aの範囲内に近づく状態が解除されても、アーム60bを受け付けられた操作に基づく位置に移動させないようにしてもよい。
【0125】
また、上記第1および第2実施形態では、アーム60が4つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アーム60の数は、少なくとも1つ以上設けられていれば他の任意の数であってもよい。
【0126】
また、上記第1および第2実施形態では、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アーム部61が7軸より多い軸構成の多関節ロボットなどから構成されてもよい。また、ポジショナ40が7軸多関節ロボット以外の軸構成(例えば、6軸や8軸)の多関節ロボットなどから構成されていてもよい。
【0127】
また、上記第1および第2実施形態では、全てのアーム60が8軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、4つのアーム60のうちの一部が8軸多関節ロボットから構成されていてもよい。
【0128】
また、上記第1および第2実施形態では、医療用マニピュレータ1が、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、アーム60とを備えている例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50は必ずしも必要なく、医療用マニピュレータ1がアーム60だけで構成されてもよい。
【0129】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0130】
1 医療用マニピュレータ(患者側装置)
2 遠隔操作装置(操作者側装置)
4 医療器具
4c シャフト
21 操作用マニピュレータアーム(操作部)
31 制御部
60 アーム
60c アーム(第1のアーム)
60b アーム(第2のアーム)
50 アームベース
73 先端側リンク部(第1リンク部)
74 連結リンク部(第2リンク部)
75 端部
100 外科手術システム(手術支援システム)
A 接近禁止範囲
A1 外周面
A2 中心
B 接線方向
J1軸(基端軸)
J7軸(回動軸)
L1 第1基準線(基準線)
L2 第2基準線(基準線)
RP1、RP2 参照点
SF 平面