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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123261
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】護岸壁
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/14 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
E02B3/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020464
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000211237
【氏名又は名称】ランデス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大月 隆行
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA19
2D118BA03
2D118BA05
2D118CA07
2D118FA06
2D118HA12
2D118HA34
2D118HB02
2D118HB04
(57)【要約】
【課題】河川の氾濫を防止する構造を有しながらも、製造及び設置に要するコストを削減し、また、環境の異なる様々な河川に設置することを可能とする。
【解決手段】水を貯留可能な貯留部と、貯留部への水の流入、及び、貯留部からの水の流出を可能とする開口部と、を備え、複数のブロックが連結することにより構成されるため、河川の氾濫を防止する構造を有しながらも、製造及び設置に要するコストを削減し、また、環境の異なる様々な河川に設置することを可能にしている。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留可能な貯留部と、
前記貯留部への水の流入、及び、前記貯留部からの水の流出を可能とする開口部と、
を備え、
複数のブロックが連結することにより構成される護岸壁。
【請求項2】
前記貯留部は、上面側及び下面側に開口した複数の前記ブロックが連結することにより形成されることを特徴とする請求項1記載の護岸壁。
【請求項3】
前記開口部は、前記ブロックの有する切り欠き部から構成されるものを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の護岸壁。
【請求項4】
前記開口部は、前記ブロックの有する孔部から構成されるものを含むことを特徴とする請求項1~3記載の護岸壁。
【請求項5】
前記開口部は、複数の前記ブロックが段状に連結することにより生じる隙間から構成されるものを含むことを特徴とする請求項1~4記載の護岸壁。
【請求項6】
前記ブロックは、一方の側面から他方の側面にわたって設けられた横部材を有することを特徴とする請求項1~5記載の護岸壁。
【請求項7】
前記ブロックは、側面側に開口したことを特徴とする請求項1~6記載の護岸壁。
【請求項8】
連結された複数の前記ブロックにおいて、河床の直上に位置するブロックは、上方に位置するブロックよりも広い前記開口部を有することを特徴とする請求項1~7記載の護岸壁。
【請求項9】
連結された複数の前記ブロックにおいて、河床の直上に位置するブロックは、前面の下縁に前記開口部を有することを特徴とする請求項1~8記載の護岸壁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川において、護岸壁が広く用いられている。しかし、従来の護岸壁は、河川の増水に対応する構造を有しないものであった。このため、従来の護岸壁を用いた河川は、水位が上昇した場合に、氾濫が起こる可能性が高かった。そこで、河川に流れる水を貯留可能とした護岸壁が提案されている。
【0003】
このような従来技術として、特許文献1には、河川の水の流れを案内する壁と、河川に流れる水を溜める貯留部と、河川の底からの高さが異なる少なくとも2個の開口部とを備える河川用護岸壁が提案されている。特許文献1が開示する河川用護岸壁は、河川に流れる水量の低減化を図り、河川の下流域での氾濫を防ぐことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-138401公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する河川用護岸壁において、貯留部は、一体として形成された第一の壁と第二の壁とにより構成されるものであるため、製造及び設置に多大なコストを要するものである。また、特許文献1が開示する河川用護岸壁において、貯留部は、大きさや形状が一定のものであるであるため、環境の異なる様々な河川に設置することができないといった問題がある。
【0006】
本発明に係る護岸壁は、上記課題を解決するためになされたものであり、水を貯留可能な貯留部と、貯留部への水の流入、及び、貯留部からの水の流出を可能とする開口部と、を備え、複数のブロックが連結することにより構成されるものであるため、河川の氾濫を防止する構造を有しながらも、製造及び設置に要するコストを削減し、また、環境の異なる様々な河川に設置することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る護岸壁は、水を貯留可能な貯留部と、貯留部への水の流入、及び、貯留部からの水の流出を可能とする開口部と、を備え、複数のブロックが連結することにより構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る護岸壁において、貯留部は、上面側及び下面側に開口した複数のブロックが連結することにより形成されることが好ましい。
【0009】
本発明に係る護岸壁において、開口部は、ブロックの有する切り欠き部から構成されるものを含むことが好ましい。
【0010】
本発明に係る護岸壁において、開口部は、ブロックの有する孔部から構成されるものを含むことが好ましい。
【0011】
本発明に係る護岸壁において、開口部は、複数のブロックが段状に連結することにより生じる隙間から構成されるものを含むことが好ましい。
【0012】
本発明に係る護岸壁において、ブロックは、一方の側面から他方の側面にわたって設けられた横部材を有することが好ましい。
【0013】
本発明に係る護岸壁において、ブロックは、側面側に開口したことが好ましい。
【0014】
本発明に係る護岸壁において、連結された複数のブロックの内、河床の直上に位置するブロックは、上方に位置するブロックよりも広い開口部を有することが好ましい。
【0015】
本発明に係る護岸壁において、連結された複数のブロックの内、河床の直上に位置するブロックは、前面の下縁に開口部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る護岸壁は、水を貯留可能な貯留部と、貯留部への水の流入、及び、貯留部からの水の流出を可能とする開口部と、を備え、複数のブロックが連結することにより構成されるものであるため、河川の氾濫を防止する構造を有しながらも、製造及び設置に要するコストを削減し、また、環境の異なる様々な河川に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る護岸壁を構成するブロックの一例を示す斜視図である。
図2】本例のブロックを示す正面図である。
図3】本例のブロックを示す背面図である。
図4】本例のブロックを示す左側面図である。
図5】本例のブロックを示す右側面図である。
図6】本例のブロックを示す平面図である。
図7】本例のブロックを示す底面図である。
図8図2のA-A線による本例のブロックの断面図である。
図9】本例のブロックが連結した状態を示す概略斜視図である。
図10】本例のブロックが連結した状態を示す正面図である。
図11図10のA-A線による本例のブロックが連結した状態の断面図である。
図12】本発明に係る護岸壁を構成するブロックの一例を示す斜視図である。
図13】本発明に係る護岸壁の一例を示す概略断面図である。
図14】本発明に係る護岸壁の一例を示す概略断面図である。
図15】本発明に係る護岸壁を構成するブロックの一例を示す斜視図である。
図16】本例のブロックを示す正面図である。
図17】本例のブロックを示す背面図である。
図18】本例のブロックを示す左側面図である。
図19】本例のブロックを示す右側面図である。
図20】本例のブロックを示す平面図である。
図21】本例のブロックを示す底面図である。
図22図16のA-A線による本例のブロックの断面図である。
図23】本例のブロックが連結した状態を示す斜視図である。
図24】本例のブロックが連結した状態を示す正面図である。
図25図24のA-A線による本例のブロックの断面図である。
図26】従来の護岸壁を河川に設置した状態を示す概略断面図である。
図27】本発明に係る護岸壁を河川に設置した状態の一例を示す概略断面図である。
図28】本発明に係る護岸壁を河川に設置した状態の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。以下、図2における図面上方向を上とし、図2における図面下方向を下として説明する。また、図2における図面上方向及び図面下方向を縦方向とし、図2における図面左方向及び図面右方向を横方向とし、図6における図面上方向及び図面下方向を奥行方向として説明する。
【0019】
図1~8に示すように、本例のブロック100は、上面側及び下面側に開口した箱型の形状となっており、前面101、後面102、及び側面103,103により構成される。
【0020】
図9~11に示すように、本例の護岸壁200は、複数のブロック100が連結することにより構成される。ブロック100の前面101は、護岸壁200を河川に設置した場合における、河川に面する部分である。
【0021】
図1、6及び7に示すように、ブロック100の側面103は、前面101側及び後面102側の端部を除いてブロック100の内側方向へ凹んだ凹部104を有する形状となっている。図9に示すように、縦方向及び横方向へ密着するように複数のブロック100が配置されると、凹部104により、隣り合うブロック100が互いに接しない空間が形成される。複数のブロック100は、当該空間に胴込めコンクリート105が充填されることにより連結し、護岸壁200を構成する。また、当該空間に鉄筋106を配置し、胴込めコンクリート105を充填することで、護岸壁200は、鉄筋コンクリート構造となり、強度を高めることができる。
【0022】
図9~11に示すように、上面側及び下面側が開口した複数のブロック100が連結すると、各ブロック100の前面101、後面102,及び側面103,103により、護岸壁200の内部に、水を貯留可能な空間が形成される。本例の護岸壁200において、水を貯留可能な空間を貯留部として説明する。なお、本例の護岸壁200は、基礎の上に設置されるものであるため、連結された複数のブロック100のうち、最も下に位置するブロック100の開口した下面側からは、貯留された水が流出しない構成となっている。
【0023】
図1~3、6及び8に示すように、ブロック100は、切り欠き部107を有する。切り欠き部107は、前面101の上縁に設けられ、切り欠き部分は正面視で台形となっている。図9~11に示すように、複数のブロック100により護岸壁200が構成されると、ブロック100の有する切り欠き部107は、真上に位置する他のブロック100の前面101の下縁との間にスリット状の開口形状を形成する。当該スリット状の開口形状は、河川に面する部分である前面101において、河川から貯留部への水の流入、及び、貯留部から河川への水の流出を可能とする。本例の護岸壁200において、貯留部への水の流入、及び貯留部からの水の流出を可能とする部分を開口部として説明する。
【0024】
本例のブロック100において、切り欠き部107は、前面101の上縁に設けられる構成となっているが、本発明の護岸壁において、ブロックの有する切り欠き部は、前面の下縁に設けられる構成であってもよく、本例の構成に限定されない。
【0025】
本発明の護岸壁において、ブロックの有する切り欠き部の大きさや形状は、本例の構成に限定されないが、切り欠き部は、複数のブロックにより護岸壁が構成された場合において、縦方向の長さが50ミリメートル以下であるスリット状の開口形状となると好ましい。こうした構成とすることで、河川に流れる砂礫や塵芥等が開口部を通じて貯留部へ侵入することを防ぐことができる。
【0026】
本例のブロック100は、図12に示すような構成としてもよい。図12に示すブロック10は、孔部301を有する。孔部301は、前面101に5箇所設けられ、孔部分は正面視で長方形となっている。複数のブロック100により護岸壁200が構成されると、ブロック100の有する孔部301は、河川に面する部分である前面101において、河川から貯留部への水の流入、及び、貯留部から河川への水の流出を可能とする開口部として機能する。なお、図12に示すブロック100において、前面101の上縁に設けられる切り欠き部分は、護岸壁200の貯留部が満水となった場合に、貯留部への空気の流入機能、及び、貯留部からの空気の流出機能を有する。
【0027】
図12に示すブロック100において、孔部301は、前面101に5箇所設けられ、また、孔部分は正面視で長方形となる構成となっているが、本発明の護岸壁において、ブロックの有する孔部の数、形状及び位置は、本例の構成に限定されない。
【0028】
本例の護岸壁200は、図13又は14に示すような構成としてもよい。図13及び14に示す護岸壁200は、複数のブロック100が段状に連結することにより生じる隙間401を有する。
【0029】
図13に示す護岸壁200における各ブロック100は、前面101が河川側へ交互に突出するように積み上げられた構成となっている。ここで、各ブロック100は、上面側及び下面側に開口した形状となっているため、下方に位置するブロック100における前面101と、当該ブロックの真上に位置するブロック100における前面101との間に、ブロック100の内部から河川側へ開口した隙間401が生じる。
【0030】
図14に示す護岸壁200における各ブロック100は、下方へ向かうにつれて前面101が河川側へ突出するように積み上げられた構成となっている。ここで、各ブロック100は、上面側が開口した形状となっているため、下方に位置するブロック100における前面101と、当該ブロックの真上に位置するブロック100における前面101との間に、ブロック100の内部から河川側へ開口した隙間401が生じる。
【0031】
図13及び14に示す護岸壁200において、複数のブロック100が段状に連結することにより生じる隙間401は、河川から貯留部への水の流入、及び、貯留部から河川への水の流出を可能とする開口部として機能する。
【0032】
図13及び14に示す護岸壁200において、開口部は、隙間401により構成されるため、開口部を構成するための切り欠き部107や孔部301等をブロック100に設ける必要がない。こうした構成とすることで、ブロック100の製造に要するコストを削減することが可能となる。
【0033】
本発明の護岸壁において、開口部を構成する隙間は、複数のブロックが段状に連結することにより生じる隙間であって、貯留部への水の流入、及び、貯留部からの水の流出を可能とするものであれば、図13又は14に示す構成に限定されない。
【0034】
河川が増水し、護岸壁200の開口部に水位が達すると、河川に流れる水は、開口部を通じて貯留部へ流入し、貯留される。このように、護岸壁200は、河川に流れる水を貯留することが可能であるため、河川が増水した場合においても、水位の上昇を抑制し、河川の氾濫を防止することが可能となる。
【0035】
河川の水位が低下すると、貯留部に貯留された水は、開口部を通じて河川へ流出される。ここで、護岸壁200の開口部は、例えば切り欠き部107,孔部301,隙間401等によって構成されるように、開口部分が狭いものであり、また、複数箇所において設けられるものであるため、護岸壁200は、貯留部から河川への水の流出を、時間をかけて少しずつ行うことができる。これにより、貯留部から河川への水の流出による下流部の急激な増水を防止することが可能となる。
【0036】
本例の護岸壁200は、一体として形成された壁等により構成されるものではなく、複数のブロック100により構成されるものである。ブロック100は、護岸壁200の設計に応じて汎用的に用いることが可能であるため、護岸壁200は、全体として製造に要するコストが低いものである。また、ブロック100は、連結が可能であり、分離した状態で搬送及び施工等が行われるため、護岸壁200は、設置に要するコストについても低いものである。
【0037】
本例の護岸壁200は、ブロック100の数を増減することにより、形状を調節することができる。例えば、縦方向に連結するブロック100の数を増減することで、護岸壁200の高さを調節することが可能となり、横方向に連結するブロック100の数を増減することで、護岸壁200の幅を調節することが可能となる。本例の護岸壁200は、ブロック100の数を増減することにより、形状を調節することができるため、環境の異なる様々な河川においても設置することが可能となる。
【0038】
本例の護岸壁200は、各ブロック100の形状を変更することによっても、形状を調節することができる。例えば、ブロック100の奥行方向への長さを変更することで、護岸壁200の奥行方向への長さを調節することが可能となる。また、例えば、図9、11、13及び14に示すように、複数のブロック100が段状に連結することにより構成された護岸壁200において、段ごとに、奥行方向への長さが異なるブロック100を用いることで、護岸壁200の奥行方向への長さをそれぞれ調節することができる。本例の護岸壁200は、各ブロック100の形状を変更することにより、形状を調節することができるため、環境の異なる様々な河川においても設置することが可能となる。
【0039】
本例の護岸壁200は、特徴の異なる複数のブロック100を組み合わせることによって、貯留機能、流入機能及び流出機能を調節することができる。例えば、開口部を構成するブロック100と、開口部を構成しないブロック100とを組み合わせて連結することで、護岸壁200の有する開口部の数を調節することが可能となり、護岸壁200による貯留機能、流入機能及び流出機能を調節することができる。
【0040】
本例のブロック100は、図15~22に示すような構成としてもよい。図15~22に示す本例のブロック100において、側面103は、前面101付近において、ブロック100の内側方向へ凹んだ凹部104を有する形状となっている。図23に示すように、縦方向及び横方向へ密着するように複数のブロック100が配置されると、凹部104により、隣り合うブロック100が互いに接しない空間が形成される。複数のブロック100は、当該空間に胴込めコンクリート105が充填されることにより連結し、護岸壁200を構成する。また、当該空間に鉄筋106を配置し、胴込めコンクリート105を充填することで、護岸壁200は、鉄筋コンクリート構造となり、強度を高めることができる。胴込めコンクリート105及び鉄筋106は、河川に面する部分である前面101付近に設けられるため、本例の護岸壁200は、河川に設置した場合においても耐久性が高いものとなっている。
【0041】
図15~22に示す本例のブロック100は、一方の側面103から他方の側面103にわたって設けられた横部材108を有する。横部材108は、板状であり、上側の面が前面101方向へ傾斜した形状となっている。また、横部材108は、間隔をあけて複数設けられる構成となっている。図23~25に示すように、複数のブロック100により護岸壁200が構成されると、ブロック100の有する横部材108は、貯留部内に乱流を生じさせる部材として機能する。横部材108により、貯留部内の水流に乱れが生じると、貯留部内に侵入した土砂等は掃流される。これにより、護岸壁200は、貯留部内への土砂等の堆積を抑制し、開口部を通じて河川へ排出することができる。また、横部材108は、護岸壁200の施工時において、作業者等の貯留部内への落下を防止する部材として機能するため、作業の安全性を高めることができる。
【0042】
本例のブロック100において、横部材108は、板状であり、上側の面が前面101側に傾斜した形状となっており、また、間隔をあけて複数設けられる構成となっているが、本発明の護岸壁において、ブロックの有する横部材の形状及び数は、本例の構成に限定されない。
【0043】
図1~8、15~22に示すように、本例のブロック100は、側面103側に開口している。
【0044】
図1~8に示す本例のブロック100において、側面103は、円状に開口した側面孔109を有する。図9に示すように、複数のブロック100は、当該凹部より形成される空間に胴込めコンクリート105が充填されることにより連結し、護岸壁200を構成する。ここで、側面孔109へ管501が通されることにより、隣り合う各ブロック100が内部に有する空間は一続きとなる。
【0045】
図15~22に示す本例のブロック100において、側面103は、ブロック100の内側方向へ凹んだ凹部104を除き、上方が開口した側面切り欠き110を有する形状となっている。図23及び25に示すように、縦方向及び横方向へ密着するように複数のブロック100が配置されると、側面切り欠き110により、隣り合う各ブロック100が内部に有する空間は一続きとなる。
【0046】
図1~8、15~22に示すように、本例のブロック100は、側面孔109又は側面切り欠き110を有するため、隣り合う各ブロック100が内部に有する空間は一続きとなる。これにより、護岸壁200の貯留部は、各ブロック100による一続きの空間により形成される。こうした構成とすることで、護岸壁200の貯留部は、横方向に連結した各ブロック100の内部において貯留される水の量に偏りを生じさせない。また、こうした構成とすることで、護岸壁200の貯留部は、側面孔109又は側面切り欠き110を通じて、河川の下流方向への水流を内部に有することとなり、貯留部内に侵入した土砂等を掃流させることが可能となる。貯留部内に侵入した土砂等を掃流させることによって、護岸壁200は、貯留部内への土砂等の堆積を抑制し、開口部を通じて河川へ排出することができる。
【0047】
図9~11、23~25に示すように、護岸壁200は、河床開口部111を有するブロック100が河床601の直上に位置するように設置される。河床開口部111は、下方に開口した切り欠き部分からなり、上方に位置するブロック100の有する切り欠き部107より広い開口部を構成する。護岸壁200は、貯留部から河川への水の流出を河床開口部111に集中させることで、貯留部内に、下方へ向かう水流を生じさせることが可能となる。これにより、護岸壁200は、河床開口部111を通じて、貯留部内に侵入した土砂等を河川へ排出することができる。
【0048】
河床開口部111は、下方に開口した切り欠き部分からなり、前面101の下縁に設けられる構成となっている。こうした構成とすることで、河床開口部111を通じて、貯留部の底部に堆積した土砂等を河川へ排出することが容易となり、貯留部への土砂等の堆積を防止することができる。
【0049】
図26に示すように、従来の護岸壁は、河川の増水に対応する構造を有しないものが一般的である。また、従来の護岸壁が設置される河川において、川幅は、氾濫を防ぐため、河川の流量に合わせて広げられることが一般的である。しかし、河川によっては、川幅を広げることが困難な場合もある。
【0050】
図27及び28に示すように、本例の護岸壁200は、河川の流量に合わせて貯留部の大きさを調節することが可能であるため、川幅を広げることなく、河川の水位の上昇を抑制し、氾濫を防止することができる。
【0051】
図27及び28に示すように、護岸壁200において、複数のブロック100を直立に積み上げることで、河川の氾濫を防止しつつ、護岸壁200の上部の幅を河川の方向へ広げることが可能となる。また、護岸壁200の上部の幅を河川の方向へ広げることにより、護岸壁200の上方の地面を道路等として利用することができる。このため、本例の護岸壁200を用いると、河川の周辺において、道路等の拡幅が可能となる。
【0052】
河川において、氾濫による周辺への被害を抑えるために、遊水池が設置される場合がある。しかし、遊水池は、広い土地を必要とするため、設置が困難な場合も多い。本例の護岸壁200は、複数のブロック100により構成され、設置場所の施工条件に合わせて形状を調節することが可能であり、また、図27及び28に示すように、道路等の下に設置することが可能であるため、遊水池を設置することが困難な環境においても、河川の水位の上昇を抑制し、氾濫を防止することができる。
【0053】
本例の護岸壁200は、設置場所を河川としているが、本発明の護岸壁は、湖沼等においても設置することが可能であり、本例の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0054】
100 ブロック
101 前面
102 後面
103 側面
104 凹部
105 胴込めコンクリート
106 鉄筋
107 切り欠き部
108 横部材
109 側面孔
110 側面切り欠き
111 河床開口部
200 護岸壁
301 孔部
401 隙間
501 管
601 河床

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28