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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123292
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 17/00 20060101AFI20220817BHJP
   A63H 29/00 20060101ALI20220817BHJP
   A63H 29/22 20060101ALI20220817BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A63H17/00 E
A63H29/00 A
A63H29/22 E
A63H29/22 J
F16H49/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020515
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】519277520
【氏名又は名称】株式会社リビングロボット
(74)【代理人】
【識別番号】100186510
【弁理士】
【氏名又は名称】豊村 祐士
(72)【発明者】
【氏名】川内 康裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 珠幾
(72)【発明者】
【氏名】遠山 理
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】徳永 浩二
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA02
2C150AA06
2C150CA08
2C150DA13
2C150EB01
(57)【要約】
【課題】駆動対象に異常な負荷が加わった際に動力の伝達を確実に遮断して安全性を確保しつつ、かつ駆動源を搭載したユニット、駆動対象及び動力伝達機構の損傷を防止する。
【解決手段】駆動源1cと、前記駆動源1cに接続されるとともに第1の磁石1bが配置された第1の駆動力伝達部1dと、が筐体1pの内部に設けられた駆動ユニット1と、第2の磁石2bが配置された第2の駆動力伝達部2cが設けられた従動ユニット(脚部2)と、を備え、前記第1の磁石1bと前記第2の磁石2bとを介して前記第1の駆動力伝達部1dから前記第2の駆動力伝達部2cに非接触で駆動力が伝達されるとともに、前記従動ユニット(脚部2)が前記駆動ユニット1から着脱可能に構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、前記駆動源に接続されるとともに第1の磁石が配置された第1の駆動力伝達部と、が筐体の内部に設けられた駆動ユニットと、
第2の磁石が配置された第2の駆動力伝達部が設けられた従動ユニットと、を備え、
前記第1の磁石と前記第2の磁石とを介して前記第1の駆動力伝達部から前記第2の駆動力伝達部に非接触で駆動力が伝達されるとともに、前記従動ユニットが前記駆動ユニットに対して着脱可能に構成されていることを特徴とする玩具。
【請求項2】
前記従動ユニットに、前記第1の磁石と前記第2の磁石とが互いに保持できない負荷が加わった際、前記従動ユニットが前記駆動ユニットから脱落することを特徴とする請求項1に記載の玩具。
【請求項3】
前記第1の磁石と前記第2の磁石とが、少なくとも前記筐体を挟んで対向する状態で、前記従動ユニットが前記駆動ユニットに装着されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の玩具。
【請求項4】
前記第1の駆動力伝達部は略円板形状を成し、前記第1の磁石は略円板形状の前記第1の駆動力伝達部の周方向に等間隔に複数配置され、前記第1の駆動力伝達部の一面の側において、複数の前記第1の磁石のうち少なくとも1つの磁石の磁極を、他の第1の磁石の磁極と異ならせたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の玩具。
【請求項5】
前記駆動ユニットは、制御部と、前記従動ユニットの種別を検出するユニット種別検出部と、前記駆動源の駆動プロファイルを予め記憶した記憶部と、を更に有し、
前記制御部は前記ユニット種別検出部の検出結果に基づき、前記駆動源の駆動プロファイルを選択することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の玩具。
【請求項6】
前記ユニット種別検出部は、前記従動ユニットが脚形状または車輪形状のいずれであるかを検出することを特徴とする請求項5に記載の玩具。
【請求項7】
前記従動ユニットとともに前記駆動ユニットを中空に支持する補助ユニットを備え、前記駆動ユニットの重心を、前記従動ユニットと前記補助ユニットとの間で、かつ前記従動ユニットよりも前記補助ユニットに近い位置としたことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の玩具。
【請求項8】
前記駆動ユニットは、前記第2の駆動力伝達部を回動自在に支持する脚支持部を備え、
前記従動ユニットは脚形状を成すとともに、脚部本体と、前記脚部本体及び前記第2の駆動力伝達部の外周を連結するリンク部材と、を備え、
前記第2の駆動力伝達部は、前記脚部本体に回動及び回動半径方向の往復移動が可能に支持され、
前記第2の駆動力伝達部の回動方向に応じて前記リンク部材が変位することで、前記脚部本体に対して前記第2の駆動力伝達部が相対的に前記回動半径方向に往復移動し、
前記脚支持部が、前記第2の駆動力伝達部の前記回動半径方向の変位を規制することで、前記第2の駆動力伝達部の回動方向に応じて前記脚部本体の回動半径が変化することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源が生成した動力を所定の駆動対象に伝達する動力伝達機構を備える玩具、特に知育玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般社団法人日本知育玩具協会によれば、知育玩具とは「長く遊べる良質な玩具であって、遊びを通して自然の法則を学び、生涯必要となる集中力、意欲、社会性、創造力、やり抜く力を身につける、文化的価値のある玩具のことをいう」とされている。
【0003】
知育玩具を使用する対象者は0~5歳の乳幼児とされることから、知育玩具は、楽しめ、面白く、丈夫で、安全で、心身の成長に役立つものでなければならない。そしてこのうち安全性は特に重要だとされている。安全性に関しては、玩具業界によって昭和46年に創設されたST(Safety.Toy)基準が知られている。ここでST基準とは、玩具の安全基準であり、機械的安全性(怪我をしない形状かどうか)、可燃安全性、化学的安全性(規制素材の有無、塗料の検査)への配慮が求められる。もちろん、この基準は低学年の児童向けの玩具に対しても遵守されるべき内容となっている。
【0004】
ここで知育玩具が、駆動源を内蔵する駆動ユニットと、駆動源によって駆動される駆動対象とを備える「動く玩具」である場合、上述した安全性への配慮とともに、更に駆動ユニットから駆動対象に駆動力を伝達する動力伝達機構には、乳幼児が多少乱暴に扱っても損傷することのない構造が求められる。
【0005】
また、2020年度から小学校でのプログラミング教育が必修化された。プログラミング教育では、プログラマーの養成のみならず「プログラミング的思考」、言い換えると「論理的なものの考え方」という基礎的な学力の習得に重きが置かれている。このような状況において、知育玩具にはプログラミング教育に繋がる要素が求められている、と言っても過言ではない。
【0006】
更に、昨今の高齢者社会においては、高齢者の生活を豊かにし、リハビリや介護予防にもつながる、大人が遊んで楽しい玩具が重要視されつつあり、高齢者が知育玩具を利用するケースも考えられるようになっている。
【0007】
さて、発電機や発動機等に関する技術ではあるが、モータにより与えられた回転力がシャフトの先端に設けられた固定円盤に伝えられ、その円盤内に埋め込まれた磁石が、スプライン軸にスライドするように設けられた移動円盤の中に埋め込まれた磁石に作用し、スプライン軸に大きな負荷が加わると、シャフトは回転するもののスプライン軸が停止する無接触スリッピングクラッチが知られている。(特許文献1)
【0008】
特許文献1によれば、移動円盤は、円盤移動レバーによって固定円盤側に移動させられると、両方の磁石の引き合う力によって回転運動を始め、より近づけると、強い回転力が伝わってくる、と同時にスプライン軸も回転する。そしてスプライン軸に異常な負荷が加わると、スプライン軸は停止し、安全クラッチの役目、及び機械の保護をする、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2-311161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された技術によれば、移動円盤に接続されたスプライン軸に異常な負荷が加わった場合、駆動源(ここではモータ)に接続された固定円盤と移動円盤との間でスリップが生じるものの、負荷が除かれると移動円盤は再び回転を始めることとなる。即ちスプライン軸に異常な負荷が加わった際においても、駆動力はスプライン軸に伝達され続けることには変わりない。
【0011】
このような従来技術を玩具に応用した場合、駆動対象に異常な負荷が加わった状態においても駆動力が伝達され続け、玩具で遊ぶ乳幼児にとって怪我等のリスクとなる。また特許文献1によれば、動力の伝達を遮断するには、円盤移動レバーを操作して、磁力が実質的に固定円盤と移動円盤との間に作用しないように、これらの間隔を大きくする必要がある。有事の際に、このような操作を知育玩具で遊ぶ乳幼児が行うことは困難であり、また乳幼児の保護者等の監視負担も大きなものとなる。
【0012】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するべく案出されたものであり、駆動対象に異常な負荷が加わった際に動力の伝達を確実に遮断して安全性を確保しつつ、かつ駆動源を搭載したユニット、駆動対象及び動力伝達機構の損傷を防止することが可能な玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するためになされた本発明は、駆動源と、前記駆動源に接続されるとともに第1の磁石が配置された第1の駆動力伝達部と、が筐体の内部に設けられた駆動ユニットと、第2の磁石が配置された第2の駆動力伝達部が設けられた従動ユニットと、を備え、前記第1の磁石と前記第2の磁石とを介して前記第1の駆動力伝達部から前記第2の駆動力伝達部に非接触で駆動力が伝達されるとともに、前記従動ユニットが前記駆動ユニットに対して着脱可能に構成されている玩具である。
【0014】
これによって、駆動対象に異常な負荷が加わった際に動力の伝達を確実に遮断して安全性を確保しつつ、かつ駆動源を搭載したユニット、駆動対象及び動力伝達機構の損傷を防止することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、前記従動ユニットに、前記第1の磁石と前記第2の磁石とが互いに保持できない負荷が加わった際、前記従動ユニットが前記駆動ユニットから脱落するようにしたものである。
【0016】
これによって、例えば利用者が従動ユニットを把持して持ち上げたようなケースや従動ユニットの動作を妨げたようなケースにおいて、従動ユニットは駆動ユニットから容易に脱落し、従動ユニットに駆動力が伝達し続けて利用者が怪我をするような状況を確実に回避できる。
【0017】
また、本発明は、前記第1の磁石と前記第2の磁石とが、少なくとも前記筐体を挟んで対向する状態で、前記従動ユニットが前記駆動ユニットに装着されるようにしたものである。
【0018】
これによって、第1の磁石は駆動ユニットの筐体で囲まれており、利用者は当該第1の磁石とともに回動する第1の駆動力伝達部に触れることができないことから、利用者の安全がより確保される。
【0019】
また、本発明は、前記第1の駆動力伝達部は略円板形状を成し、前記第1の磁石は略円板形状の前記第1の駆動力伝達部の周方向に等間隔に複数配置され、前記第1の駆動力伝達部の一面の側において、複数の前記第1の磁石のうち少なくとも1つの磁石の磁極を、他の第1の磁石の磁極と異ならせたものである。
【0020】
これによって、従動ユニットを駆動ユニットに装着する際に、利用者が従動ユニットを誤った方向に装着することを防止し、更に駆動力が伝達されている最中に従動ユニットの回動が阻害されたような場合に、第1の磁石及び第2の磁石が構成する磁極ペアの一部に斥力を生じさせて、駆動ユニット1から従動ユニットを脱落しやすくし、利用者が怪我等をするリスクを低減させることが可能となる。
【0021】
また、本発明は、前記駆動ユニットは、制御部と、前記従動ユニットの種別を検出するユニット種別検出部と、前記駆動源の駆動プロファイルを予め記憶した記憶部と、を更に有し、前記制御部は前記ユニット種別検出部の検出結果に基づき、前記駆動源の駆動プロファイルを選択するようにしたものである。
【0022】
これによって、従動ユニットの種別に応じた適切な制御を行うことができる。
【0023】
また、本発明は、前記ユニット種別検出部は、前記従動ユニットが脚形状または車輪形状のいずれであるかを検出するようにしたものである。
【0024】
これによって、脚形状あるいは車輪形状とされた従動ユニットの種別に応じて、適切な制御を行うことができる。
【0025】
また、本発明は、前記従動ユニットとともに前記駆動ユニットを中空に支持する補助ユニットを備え、前記駆動ユニットの重心を、前記従動ユニットと前記補助ユニットとの間で、かつ前記従動ユニットよりも前記補助ユニットに近い位置としたものである。
【0026】
これによって、従動ユニットが回動する状況において、補助ユニットを確実に床面に接するようにし、従動ユニットを含め、いわゆる三点支持の状態を作りだすことで、推進力を確保することができる。
【0027】
また、本発明は、前記駆動ユニットは、前記第2の駆動力伝達部を回動自在に支持する脚支持部を備え、前記従動ユニットは脚形状を成すとともに、脚部本体と、前記脚部本体及び前記第2の駆動力伝達部の外周を連結するリンク部材と、を備え、前記第2の駆動力伝達部は、前記脚部本体に回動及び回動半径方向の往復移動が可能に支持され、前記第2の駆動力伝達部の回動方向に応じて前記リンク部材が変位することで、前記脚部本体に対して前記第2の駆動力伝達部が相対的に前記回動半径方向に往復移動し、前記脚支持部が、前記第2の駆動力伝達部の前記回動半径方向の変位を規制することで、前記第2の駆動力伝達部の回動方向に応じて前記脚部本体の回動半径が変化するようにしたものである。
【0028】
これによって、脚部を前後に振る振子様の動作によって、推進力を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
このように本発明によれば、駆動対象に異常な負荷が加わった際に動力の伝達を確実に遮断して安全性を確保しつつ、かつ駆動源を搭載したユニット、駆動対象及び動力伝達機構の損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る玩具TOY1の全体構成を示す斜視図
図2】玩具TOY1の駆動ユニット1と、駆動ユニット1に装着される脚部2及び車輪3を示す説明図
図3】玩具TOY1の動作状態を説明する側面図
図4】(a)は、脚部2が駆動ユニット1に装着された状態を示す断面図、同(b)は、車輪3が駆動ユニット1に装着された状態を示す断面図
図5】(a)は、脚部2の分解図、同(b)は、同(a)に示す第2の駆動力伝達部2cの表裏を反転させた説明図
図6】(a)は、第2の駆動力伝達部2cを同(b)に示す状態から方向D1に回動させた際の、脚部2の状態を示す説明図、同(b)は、第2の駆動力伝達部2cを同(a)に示す状態から方向D2に回動させた際の、脚部2の状態を示す説明図
図7】(a)~(e)は、第2の駆動力伝達部2cを方向D1、方向D2に回動させたときの、脚部2の変位の状態を示す説明図
図8】(a)~(d)は、第1の駆動力伝達部1d及び第2の駆動力伝達部2cの磁極配置を説明する説明図
図9】玩具TOY1のハードウェア構成を示すブロック図
図10】玩具TOY1の変形例を示す説明図
図11】(a)は、従動ユニットとしての脚部2に施された脚マーカ2qを説明する説明図、同(b)は、従動ユニットとしての車輪3に施された車輪マーカ3qを説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る玩具TOY1の全体構成を示す斜視図である。
【0032】
玩具TOY1は、乳幼児や低年齢の児童(以下、「利用者」と称することがある。)がこれを用いて遊ぶことが想定された知育玩具である。詳細には玩具TOY1は、利用者が組み立てて遊ぶ「積み木」であり、素材として主に木材を用いた、いわゆる木育玩具である。具体的には、駆動ユニット1(特に駆動ユニット1の外装としての筐体1p(図4参照))、脚部2、車輪3は主に木材で構成されている。
【0033】
ここで木育玩具とは、日本デザイン学会研究発表大会概要集66(0),40,2019によれば、「素材に木を使い子どもの知育や成長を促す効果のある玩具」と定義され、心理面や環境意識に関する効果が認められると記述されている。また、保育関連のインターネットサイト(ほいくらいふ:木育って知ってる?木を保育に活かして子どもの豊かな心を育てよう!(https://hoiku-me.com/activities/environment/10021/))には、木育によって心身を健やかに保ち、思いやり・優しさが育つ効果、感性や社会性を高め環境に対する認識を高める効果、遊び・体験・学習等を通じて想像力・創造性が養われる等の効果が紹介されている。
【0034】
更に、玩具TOY1は、電動する駆動源1c(図4(a)参照)を内蔵し、この駆動源1cが発生する駆動力によって床面を移動する「動くおもちゃ」でもある。図1において玩具TOY1は、駆動ユニット1と、駆動ユニット1の前方左右に装着された従動ユニットとしての左脚部2L,右脚部2Rと、駆動ユニット1の後方左右に装着された補助ユニットとしての左車輪3L,右車輪3Rとで構成される。なお、図1では省略しているが(図3図10も同様)、玩具TOY1には、機能拡張用の機能ユニット50(図9参照)が装着可能とされている。
【0035】
なお、以降の説明において、玩具TOY1が移動する(進行する)方向を前、その逆方向を後、進行方向右手を右、その逆方向を左、仮に人が玩具TOY1に搭乗したとするとき、頭の方向を上、その逆方向を下と称することがある。また、右脚部2Rと左脚部2Lとを区別しないときは脚部2と称し、同様に右車輪3Rと左車輪3Lとを区別しないときは車輪3のように称する。
【0036】
図2は、玩具TOY1の駆動ユニット1と、駆動ユニット1に装着される脚部2及び車輪3を示す説明図である。駆動ユニット1の左側面において、前方には円柱形状の脚支持部1aLが、後方にはこれも円柱形状の車輪支持部1aWがそれぞれ突出するように設けられている。そして脚支持部1aLと車輪支持部1aWとに対応して、左脚部2L(詳細には、第2の駆動力伝達部2c(後述する))には脚凹部2aが、左車輪3Lには車輪凹部3aが設けられている。
【0037】
脚凹部2aと脚支持部1aLとが緩く嵌合することで、左脚部2Lが駆動ユニット1に装着される。脚支持部1aLの直径は脚凹部2aの直径よりも0.1~0.2mm程度小さく構成されている。即ち、左脚部2Lは脚支持部1aLにスラスト方向に着脱可能で、更に左脚部2Lが脚支持部1aLに装着された状態において、左脚部2Lはラジアル方向に位置(変位)が規制され、かつ脚支持部1aLの周方向に回動自在に支持される。
【0038】
同様に、車輪凹部3aと車輪支持部1aWとが緩く嵌合することで、左車輪3Lが駆動ユニット1に装着される。車輪支持部1aWの直径は車輪凹部3aよりも小さく構成されており、左脚部2Lと同様に、左車輪3Lは車輪支持部1aWに、スラスト方向に着脱可能で、ラジアル方向に位置(変位)が規制され、かつ車輪支持部1aWの周方向に回動自在な状態で支持される。
【0039】
右脚部2R、右車輪3Rについても左脚部2L、左車輪3Lと同様に駆動ユニット1に支持される。
【0040】
図3は、玩具TOY1の動作状態を説明する側面図である。脚部2は、側面視で略円弧状に形成された脚底部2tの外周の中央が最下方に位置する基準位置P0から方向Dfに角度θだけ回動して前方位置P1に到達する。前方位置P1に到達した左脚部2Lは、その後方向Drに回動を開始し、基準位置P0を通過して更に基準位置P0から角度θだけ回動して後方位置P2に到達する。なお、角度θについては、後述する駆動源1c(図4等を参照)の制御パラメータを適宜設定することで調整可能であり、脚部2が回動する方向Dfと方向Drに応じて個別に設定してもよく、方向Drについては脚部2が後方に振れ過ぎて車輪3と干渉しない限り任意に定めることができる。
【0041】
ここで、上述した左脚部2Lの回動に対応して、右脚部2R(図1参照)は、左脚部2Lが前方位置P1にあるときは後方位置P2となり、逆に左脚部2Lが後方位置P2にあるときは前方位置P1となるように、その回動方向と位置とが制御される。このように従動ユニットとしての左脚部2L及び右脚部2Rは、それぞれが互い違いに前後方向に振れる「振子様の動作」を行う。ここで、角度θは、玩具TOY1を方向Dpに移動(正確には、左右の脚部2は交互に推進力を生むため、ジグザク様に移動)させる観点で、左脚部2Lと右脚部2Rとで同一に設定されているが、それぞれについて角度θを異ならせてもよい。左脚部2Lと右脚部2Rとで角度θを変えることで、玩具TOY1は床面に対して略円弧を描いて移動する。
【0042】
一方、駆動ユニット1の車輪支持部1aWに回動自在に支持された左車輪3L(及び右車輪3R(図1参照))は、脚部2と共に駆動ユニット1を中空に支持するものの、駆動力が付与されておらず、脚部2が振子様の動作をして駆動ユニット1が方向Dpに移動するのに伴って、方向Dxに回転(連れ回り)する。即ち、車輪3は駆動されずに、移動に関しては補助ユニットとして機能する。
【0043】
図4(a)は、脚部2が駆動ユニット1に装着された状態を示す断面図、同(b)は、車輪3が駆動ユニット1に装着された状態を示す断面図である。なお図4(a)は、図1に示すA-A断面の概略を示し、図4(b)は、同B-B断面の概略を示す。図4(a)に示すように、駆動ユニット1の筐体1p内には、駆動源1cと、駆動源1cの駆動軸と接続された略円板形状を成す第1の駆動力伝達部1d(駆動円板)と、第1の駆動力伝達部1dに配置された複数の第1の磁石1bと、反射型フォトセンサ等で構成されて第1の駆動力伝達部1dの回動位置を検出する駆動円板位置検出部1eと、脚部2を含む従動ユニットの種別を検出するユニット種別検出部1fが設けられている。なお、図4(a),(b)では、左脚部2L、左車輪3Lの周辺機構を示しているが、右脚部2R、右車輪3R及びその周辺機構については、図4に対して左右対称に現れる。即ち、駆動源1c、第1の駆動力伝達部1d等は左右一対設けられている(図9参照)。
【0044】
ここで駆動源1cは例えばDCサーボモータが用いられるが、ステッピングモータ等を用いてもよく、更にギヤードモータとしてもよい。駆動源1cを駆動することで、第1の磁石1bを搭載した第1の駆動力伝達部1dが回動する。ここで第1の駆動力伝達部1dと筐体1pの内面(内壁)との間には隙間が設けられ、第1の駆動力伝達部1dが回動する際に筐体1pと摺動しないようにされている。
【0045】
略円板形状を成す第1の駆動力伝達部1dの外周には、周方向に複数(例えば4個)の永久磁石が配置されている。第1の駆動力伝達部1dには図示しない基準マーカが施されており、当該基準マーカを、駆動円板位置検出部1eで検出することで第1の駆動力伝達部1dのホームポジションが検出される。図示しないスイッチ等によって駆動ユニット1に電源が投入されると、制御部1n(図9参照)は駆動源1cを制御し、必要に応じて第1の駆動力伝達部1dを回動させてホームポジション(図8(a)の吸着ポジション)に復帰させる。なお、第1の駆動力伝達部1dがホームポジションに復帰することで、複数の第1の磁石1bの位置も一意に決定される。
【0046】
一方脚部2は、第2の駆動力伝達部2cと、第2の駆動力伝達部2cに搭載された複数の第2の磁石2bを含んでいる。即ち、駆動ユニット1の第1の磁石1bと脚部2の第2の磁石2bとが、少なくとも駆動ユニット1の筐体1pを挟んで対向する状態で、従動ユニット(脚部2)が駆動ユニット1に装着される。第1の磁石1bとともに回動する第1の駆動力伝達部1dは、駆動ユニット1の筐体1pによって全方位を囲まれ、外部に露出しておらず、利用者は回動する第1の駆動力伝達部1dに触れることができない。これによって利用者の安全が確保される。
【0047】
そして駆動源1cを駆動すると、その駆動力は、筐体1pを挟んで非接触の状態で対向する駆動ユニット1の第1の駆動力伝達部1dと脚部2の第2の駆動力伝達部2cとの間で伝達され、いわゆる外周駆動によって脚部2は上述した「振子様の動作」を行う。即ち、本実施形態においては、従動ユニットとしての脚部2が駆動対象である。なお、駆動ユニット1の脚支持部1aLの先端部はR面取り(C面取りでもよい)が施され、互いに接触する脚支持部1aLの先端面と脚凹部2aの底面との間の摺動抵抗が小さくされている。もちろん、脚支持部1aLの先端面あるいは脚凹部2aの底面に、フッ素樹脂等をコーティングしたシート等を貼付することで、更に摺動抵抗を低減してもよい。
【0048】
図4(b)に示すように、駆動ユニット1の後方(車輪3が装着される部位)には複数の第1の磁石1bが固定されている。車輪3は車輪本体3dと、車輪本体支持体3cと、車輪本体支持体3cに固定された複数の第3の磁石3bと、車輪部蓋体3eとで構成されている。ここで車輪本体3dから車輪本体支持体3cが脱落しないよう、車輪本体支持体3cの位置は車輪部蓋体3eによって規制されている。車輪3を駆動ユニット1に装着したとき、筐体1pを挟んで第1の磁石1bと第3の磁石3bとが吸引しあって、駆動ユニット1に車輪本体支持体3cが保持される。
【0049】
他方、車輪本体支持体3cと車輪本体3dとは互いに回動自在に構成されており、玩具TOY1の移動に伴って車輪3が連れ回りするのを妨げない。なお、車輪本体支持体3cと車輪本体3dとの間、及び(または)車輪本体支持体3cと車輪部蓋体3eとの間にフッ素樹脂等をコーティングしたシート等を挟んで、摺動抵抗を低減してもよい。
【0050】
このように構成された玩具TOY1では、脚部2及び車輪3は磁力によって駆動ユニット1に対して着脱可能に保持されている。更に駆動ユニット1に設けられた第1の磁石1b、脚部2に設けられた第2の磁石2b、車輪3に設けられた第3の磁石3bの磁力を適宜調整することで、脚部2あるいは車輪3に、これらを駆動ユニット1から引き離す方向に所定の荷重(例えば駆動ユニット1の重量に相当する荷重)が加わったとき、脚部2や車輪3を駆動ユニット1から脱落させることが可能である。
【0051】
特に脚部2については、脚部2が駆動ユニット1から駆動力を伝達されているか否かにかかわらず、駆動ユニット1から脱落させる(取り外す)ことができる。これによって、例えば利用者が脚部2を把持して持ち上げたようなケースや脚部2の回動を妨げたようなケース、即ち第1の磁石1bと第2の磁石2bとが互いに保持できない負荷が加わった状況において、脚部2や車輪3は駆動ユニット1から容易に脱落し、脚部2に駆動力が伝達し続けて利用者が怪我をするような状況を確実に回避できる。
【0052】
このように、本実施形態では、駆動源1cと、駆動源1cに接続されるとともに第1の磁石1bが配置された第1の駆動力伝達部1dと、が筐体1pの内部に設けられた駆動ユニット1と、第2の磁石2bが配置された第2の駆動力伝達部2cが設けられた従動ユニット(脚部2)と、を備え、第1の磁石1bと第2の磁石2bとを介して第1の駆動力伝達部1dから第2の駆動力伝達部2cに非接触で駆動力が伝達されるとともに、従動ユニット(脚部2)が駆動ユニット1から着脱可能に構成されている。
【0053】
また本実施形態では、従動ユニット(脚部2)に、第1の磁石1bと第2の磁石2bとが互いに保持できない負荷が加わった際、従動ユニット(脚部2)が駆動ユニット1から脱落するようにされている。
【0054】
図5(a)は、脚部2の分解図、同(b)は、同(a)に示す第2の駆動力伝達部2cの表裏を反転させた説明図である。以下、図5(a),(b)を用いて脚部2の構成を詳細に説明する。従動ユニットとしての脚部2は、第2の駆動力伝達部2cと、複数の第2の磁石2bと、脚部本体2dと、リンク部材2iと、脚部蓋体2eとで構成される。なお、本実施形態ではこれらの構成要素を木製としているが、一部をプラスティックや金属で構成してもよい。
【0055】
第2の駆動力伝達部2c(従動体)は、その表面中央部に脚凹部2aが設けられ、その裏面の外周に従動体突出部2gが設けられた略円板形状の部材である。そして脚凹部2aが設けられた面には、従動体突出部2gと対向する部位に金属製の第1シャフト2kが設けられている。更に従動体突出部2gが設けられた面の外周には周方向の90°毎に磁石ホルダ2sが4つ設けられている。磁石ホルダ2sには第2の磁石2bが固定されている。第2の磁石2bは接着剤を用いても固定してもよく、磁石ホルダ2sの内径と第2の磁石2bの外径とが実質的に同寸となるように調整して、第2の磁石2bを磁石ホルダ2sに押し込んで保持してもよい。第2の磁石2bとしては永久磁石である例えばネオジム磁石を好適に用いることができ、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石等を用いてもよい(磁石に関しては、上述した第1の磁石1b、後述する第3の磁石3bも同様)。
【0056】
なお第2の磁石2bの個数は4個に限定されるものではなく、2個以上設けられていればよい。そして略円板形状の第2の駆動力伝達部2cの中心部には金属製の第2シャフト2jが脚部本体2dの方向に突出するように設けられている。
【0057】
脚部本体2dには、厚み方向(軸Ax1が延伸する方向)に凹形状とされた変位機構収納部2pが設けられ、変位機構収納部2pの一部は突出部収納部2hとリンク収納部2wを構成している。変位機構収納部2pのうち突出部収納部2h及びリンク収納部2w以外の部分は略円形状に平坦凹部2uが形成され、更に平坦凹部2uに形成された凹部の略中心には、脚部本体2dの回動半径方向(図(5)では上下方向に相当)にガイド溝2fが延伸されている。変位機構収納部2pには、平坦凹部2uと第2の磁石2bの露出面とが向き合うように第2の駆動力伝達部2cが収納され、更に第2の駆動力伝達部2cの一部をなす従動体突出部2gが突出部収納部2hに収納される。
【0058】
ここで第2の駆動力伝達部2cの中心部に設けられた第2シャフト2jは、軸Ax1として示すようにガイド溝2fに収納される。第2シャフト2jがガイド溝2fに収納されることで、第2の駆動力伝達部2cには、変位機構収納部2pの内部において、平坦凹部2uに沿ってガイド溝2fが延伸する範囲での上下移動(回動半径方向への移動)、及び回動が許容されている(ただし後述するように、第2の駆動力伝達部2cが回動する範囲は規制される)。なお、第2シャフト2jを金属に代えて木材で構成してもよい。その場合は機械的強度を確保する観点から、第2シャフト2jの外径を5mm程度として、この外径に合わせてガイド溝2fの幅(回動半径方向と直交する方向の幅)を決定すればよい。
【0059】
リンク収納部2wは、変位機構収納部2pのうち第2の駆動力伝達部2cが収納される領域(平坦凹部2u)から更に脚底部2tの方向に延伸して形成された凹部領域であって、リンク部材2iが回動変位する空間を備えている。更にリンク収納部2wのうち最も脚底部2tに近い領域には金属製の第3シャフト2mが突出するように設けられている。
【0060】
第2の磁石2bを配した第2の駆動力伝達部2cが変位機構収納部2pに収納された状態で、第1シャフト2kがリンク部材2iの長手方向の一端に設けられた第1連結孔2i1に挿入され、第3シャフト2mがリンク部材2iの他端に設けられた第2連結孔2i2に挿入される。ここで、リンク機構の観点において、リンク部材2iのうち第1連結孔2i1が設けられた端部は自由端として、他方、第2連結孔2i2が設けられた端部は固定端として機能する。
【0061】
駆動ユニット1に設けられた第1の駆動力伝達部1d(図4(a)参照)を回動させると、第1の磁石1bと第2の磁石2bとを介して駆動力が伝達され、第2の駆動力伝達部2cが第2シャフト2jを中心として回動する。そして、第2の駆動力伝達部2cが回動すると、リンク部材2iによって連結された脚部本体2dが回動する。
【0062】
脚部蓋体2eは、脚部本体2dに第2の駆動力伝達部2c、リンク部材2i等が収納された状態で脚部本体2dに取り付けられる。脚部蓋体2eが脚部本体2dに取り付けられることで、第2の駆動力伝達部2cの外周部及びリンク部材2iのうち第2連結孔2i2が設けられた側は脚部蓋体2eで覆われ、これらの構成要素が変位機構収納部2pから脱落しないように保持される。
【0063】
なお図示するように、第2の駆動力伝達部2cの外周部分において、第1シャフト2kの周囲にはリンク部材2iの第1連結孔2i1の側を収納する空間が構成され、またリンク収納部2wの第3シャフト2mの周囲にもリンク部材2iの第2連結孔2i2の側を収納する空間が構成されている。リンク部材2iの両端部はこれらの空間(リンク部材2iの変位を規制する空間)に収納される。リンク部材2iの両端部がこれらの空間から脱落しない限りにおいて、脚部本体2dと第2の駆動力伝達部2cの外周とが、リンク部材2iによって連結されていることに変わりはない。
【0064】
即ち、リンク機構が適切に作用するとの観点において、リンク部材2iの支持軸としての第1シャフト2k及び第3シャフト2mは必須の構成要素ではない。また、同様にリンク部材2iに設けられた第1連結孔2i1及び第2連結孔2i2も必須の構成要素ではない。このように金属製のシャフトを構成要素から除外することで、安全性を更に高めることが可能となる。
【0065】
図6(a)は、第2の駆動力伝達部2cを同(b)に示す状態から方向D1に回動させた際の、脚部2の状態を示す説明図、同(b)は、第2の駆動力伝達部2cを同(a)に示す状態から方向D2に回動させた際の、脚部2の状態を示す説明図である。なお、図6においては、説明を容易にするため、脚部2から脚部蓋体2e(図5(a)参照)が除去された状態を示している。以下、図5を併用して説明を続ける。
【0066】
図6(a),(b)に示すように、第2の駆動力伝達部2cを図6(b)に示す状態から方向D1に回動させると、リンク部材2iは第2の駆動力伝達部2cの回動に伴って第3シャフト2m(第2連結孔2i2)を固定端として反時計回りに回動する。しかしながらリンク部材2iは、リンク収納部2wの前方の外縁である第1壁部2n1に当接すると、それ以上回動することができない(図6(a)の状態)。
【0067】
即ち、第1壁部2n1は、第2の駆動力伝達部2cを方向D1に回動させたときのリンク部材2iの回動変位を規制する。なおこのとき、従動体突出部2gの回動変位が同様に規制されてもよい。この状態で更に第2の駆動力伝達部2cを方向D1に回動させると、第2の駆動力伝達部2cの駆動力はリンク部材2i(及び従動体突出部2g)を介して脚部本体2dに伝達され、脚部本体2dが第2シャフト2jを中心として方向Dfに回動する(以降、この動作を「脚部2が前方に振れる(振れた)」と称することがある。)。
【0068】
このとき、第2の駆動力伝達部2cの外周とリンク部材2iとを連結する第1シャフト2kの位置(自由端)は、第2の駆動力伝達部2cの回動中心に設けられた第2シャフト2jとリンク収納部2wの脚底部2t側に設けられた第3シャフト2m(固定端)とを結ぶ線分L0から外れ、前方に位置している。即ち、第2の駆動力伝達部2cの回動中心である第2シャフト2jの位置と、第2の駆動力伝達部2cの外周に位置する第1シャフト2kの位置と、脚底部2tの近傍に設けられた第3シャフト2mの位置とを、この順序で結ぶと、略「く」の字形状となる。このとき図6(a)に示すように、変位機構収納部2pの上方(脚頂部2vの側)には、第2の駆動力伝達部2cとの間で空隙が生じている。
【0069】
一方、第2の駆動力伝達部2cを図6(a)に示す状態から方向D2に回動させると、リンク部材2iは第2の駆動力伝達部2cの回動に伴って第3シャフト2m(第2連結孔2i2)を固定端として時計回りに回動する。しかしながらリンク部材2iは、リンク収納部2wの後方の外縁である第2壁部2n2に当接すると、それ以上回動することができない(図6(b)の状態)。
【0070】
即ち、第2壁部2n2は、第2の駆動力伝達部2cを方向D2に回動させたときのリンク部材2iの回動変位を規制する。なおこのとき、従動体突出部2gの回動変位が同様に規制されてもよい。この状態で更に第2の駆動力伝達部2cを方向D2に回動させると、第2の駆動力伝達部2cの駆動力はリンク部材2i(及び従動体突出部2g)を介して脚部本体2dに伝達され、脚部本体2dが第2シャフト2jを中心として方向Drに回動する(以降、この動作を「脚部2が後方に振れる(振れた)」と称することがある。)。
【0071】
このとき、第1シャフト2k(自由端)は、第2シャフト2jの位置と第3シャフト2mの位置(固定端)とを結ぶ線分L0の上に位置する。即ち、第2の駆動力伝達部2cの回動中心である第2シャフト2jの位置と、第2の駆動力伝達部2cの外周に設けられた第1シャフト2kの位置と、脚底部2tの近傍に設けられた第3シャフト2mの位置とを、この順序で結ぶと、略直線状となる。このとき図6(b)に示すように、変位機構収納部2pの下方(脚底部2tの側)には、第2の駆動力伝達部2cとの間で空隙が生じている。
【0072】
図6(a)と図6(b)とを比較すると、図6(a)に示すように脚部2が前方に振れる過程では、第2の駆動力伝達部2cは脚部本体2dに対して相対的に下方(脚底部2t側)に変位し、図6(b)に示すように脚部2が後方に振れる過程では、第2の駆動力伝達部2cは脚部本体2dに対して相対的に上方(脚頂部2v側)に変位することが分かる。なお、この相対的な変位(脚部2の回動半径方向の変位)は、第2の駆動力伝達部2cの第2シャフト2jが脚部本体2dに設けられたガイド溝2fに案内されることで実現される。
【0073】
さて、脚部2が駆動ユニット1に装着されたとき、第2の駆動力伝達部2cの脚凹部2aは脚支持部1aLによって支持されている。即ち、第2の駆動力伝達部2cは脚支持部1aLによってラジアル方向の変位が制限され(図4(a)参照)、第2の駆動力伝達部2cの中央に配置された第2シャフト2jも上下方向の変位が制限される。従って、脚部2が振子様の動作をするとき、基準位置P0(図3参照)においては、図6(b)に示す脚部2が後方に振れたときの回動半径R(第2シャフト2jを中心とする回動半径)=Rrは、図6(a)に示す脚部2が前方に振れたときの回動半径R(Rf)より大きくなる。
【0074】
これを言い換えると、脚部本体2d内部で回動する第2の駆動力伝達部2cの外周と脚部本体2dとを連結するリンク部材2iが、第2の駆動力伝達部2cの回動に伴って脚部本体2dの長手方向と非平行となることで、第2の駆動力伝達部2cと脚底部2tとの距離が短くなり、第2の駆動力伝達部2cの中心に設けられた第2シャフト2jを回動軸とする脚部2の回動半径Rが小さくなる。
【0075】
他方、図6(b)に示すように、リンク部材2iが、脚部本体2dの長手方向と略平行となることで、第2の駆動力伝達部2cと脚底部2tとの距離が長くなり、第2シャフト2jを回動軸とする脚部2の回動半径Rが大きくなる。
【0076】
図7(a)~(e)は、第2の駆動力伝達部2cを方向D1、方向D2に回動させたときの、脚部2の変位の状態を示す説明図である。図7(a)は、脚部2が前方に振れた状態を示している。このとき脚部2の回動半径Rは、Rfとなり相対的に小さくなっている。その後、図7(b)に示すように脚部2が基準位置P0(図3参照)まで回動した状態では、回動半径RはRrとなり相対的に大きくなっている。
【0077】
さて、図7(a)の状態において、第2の駆動力伝達部2cを方向D2に回動させると、リンク部材2iが第2壁部2n2に当接するまで、脚部2の回動半径Rは徐々に大きくなっていく。そして、リンク部材2iが第2壁部2n2に当接した以降は、第2の駆動力伝達部2cの回動に伴って脚部2は方向D2に回動半径R=Rrで回動し、図7(b)に示す状態に至る。そして更に第2の駆動力伝達部2cを方向D2に回動させることで、図7(c)に示すように脚部2は後方に振れた状態となる。
【0078】
図7(c)の状態において第2の駆動力伝達部2cを方向D1に回動させると、リンク部材2iが第1壁部2n1に当接するまで、脚部2の回動半径Rは徐々に小さくなっていく。そして、リンク部材2iが第1壁部2n1に当接した以降は、第2の駆動力伝達部2cの回動に伴って脚部2は方向D1に回動半径R=Rfで回動し、図7(d)に示す状態に至る。そして更に第2の駆動力伝達部2cを方向D1に回動させることで、図7(e)に示すように脚部2は前方に振れた状態(図7(a)と同じ状態)に復帰する。
【0079】
上述した動作によって、脚部2が前方に振れるときは、回動半径Rが小さくなって(Rf)脚底部2tは床面に接さず、逆に脚部2が後方に振れるときは、その回動半径Rが大きくなって(Rr)脚底部2tが床面に接する(図6参照)。即ち、脚部2が前方から後方に振れるときのみ脚底部2tが床面に接し推進力が生じる。これによって玩具TOY1が方向Dp(図3参照)に移動する。この推進力は右脚部2Rと左脚部2Lのそれぞれで交互に発生する。これによって、脚部2を前後に振る「振子様の動作」を行うことによって、推進力を得ることが可能となる。
【0080】
以降、図3を併用して説明を続ける。図3に示すように、駆動ユニット1の重心G0は、前後方向における駆動ユニット1の中心Cenよりも、後方(車輪支持部1aWに近い側)となるようにされている。即ち、玩具TOY1は、従動ユニットとしての脚部2とともに駆動ユニット1を中空に支持する補助ユニットとしての車輪3を備え、駆動ユニット1の重心G0を、従動ユニット(脚部2)と補助ユニット(車輪3)との間で、かつ従動ユニットよりも補助ユニットに近い位置としている。
【0081】
さて、振子様の運動においては、例えば右脚部2Rが前方に振れた状態から方向Drに回動して基準位置P0に達したとき、反対の左脚部2Lは後方に振れた状態から方向Dfに回動して同様に基準位置P0に到達するように制御される。上述したように、このとき右脚部2Rの回動半径R(Rr)は、左脚部2Lの回動半径R(Rf)よりも大きくなっており、右脚部2Rの脚底部2tのみが床面に接する。そして、このとき右車輪3R及び左車輪3Lはいずれも床面に接して、いわゆる三点支持の状態となることで、玩具TOY1は前進するための推進力を得ることができる。このことは、振子様の運動において、左脚部2Lの脚底部2tが床面に接する際についても同様である。
【0082】
ここで、仮に駆動ユニット1の重心G0が車輪3よりも脚部2に近い側に設けられているとすると、左右の脚部2が基準位置P0に到達したとき駆動ユニット1の前部が左右いずれかに傾斜し、左右の脚底部2tが共に床面に接するとともに、左右の車輪3のいずれかが床面から浮く状態となることがある。このときは右脚部2Rと左脚部2Lとで逆方向の推進力が発生し、玩具TOY1は前進することができなくなる。これを回避するため、駆動ユニット1の重心G0は脚部2よりも車輪3に近い位置とされている。
【0083】
図8(a)~(d)は、第1の駆動力伝達部1d及び第2の駆動力伝達部2cの磁極配置を説明する説明図である。以降、図4(a)を併用して説明を続ける。上述したように駆動ユニット1に設けられた略円板形状の第1の駆動力伝達部1dの外周近傍には複数(ここでは4個)の第1の磁石1bが外周方向90°毎に設けられている。また、脚部2に設けられた略円板形状の第2の駆動力伝達部2cにも、第1の磁石1bと対応する位置に複数(4個)の第2の磁石2bが設けられている。
【0084】
第1の磁石1bと第2の磁石2bとの間で磁石による吸引力が作用することで、第1の駆動力伝達部1dと第2の駆動力伝達部2cとの間において、非接触で動力が伝達される。即ち、第1の駆動力伝達部1dと第2の駆動力伝達部2cとが動力伝達機構を構成している。ただし、駆動源1cで生成された駆動力を脚部2に伝達させるという観点では、リンク部材2i、従動体突出部2g、脚部本体2d(図5図6参照)も動力伝達機構に含まれる。
【0085】
ここで図8(a)は、駆動円板位置検出部1eによる第1の駆動力伝達部1dの周方向における位置検出結果に基づいて、第1の駆動力伝達部1dの周方向の位置がホームポジションに復帰した状態を示している。この状態で利用者が駆動ユニット1に脚部2を装着しようとするとき、左右の脚部2がともに基準位置P0(図3参照)に装着されるよう第1の磁石1b及び第2の磁石2bの位置が定められている。
【0086】
更に、第1の駆動力伝達部1dと第2の駆動力伝達部2cとが図8(a)に示す位置関係(以下、「吸着ポジション」と称することがある。)である場合を除いて、利用者が駆動ユニット1に脚部2を装着できないよう、第1の磁石1b及び第2の磁石2bの磁極配置が定められている。
【0087】
具体的には、第1の駆動力伝達部1dにおいては、第2の駆動力伝達部2cと対向する面において、第1の磁石1bのうち3個をN極、1個をS極とする磁極配置にしている。そして第2の駆動力伝達部2cにおいては、第1の駆動力伝達部1dと対向する面において、第2の磁石2bのうち3個をS極、1個をN極とする磁極配置にしている。もちろんN極とS極とを全て入れ替えて、第1の磁石1bのうち3個をS極、1個をN極とし、第2の磁石2bのうち3個をN極、1個をS極とする磁極配置としてもよい。
【0088】
ここで利用者が脚部2を駆動ユニット1に装着しようとするとき、図8(a)に示す吸着ポジションにおいては、第1の磁石1b及び第2の磁石2bの全てが異極ペアを構成して引き合う(両矢印で示している)ことから、脚部2は駆動ユニット1に容易に装着される。他方、図8(b)に示すように第2の駆動力伝達部2c(即ち脚部2)を吸着ポジションから相対的に90°時計回りに回動させた状態、図8(c)に示すように180°回動させた状態、図8(d)に示すように270゜回動させた状態では、4つのペアのうち二つはS極あるいはN極の同極が対向し、部分的に斥力が作用するため脚部2を駆動ユニット1に装着することができない。
【0089】
上述の例では、4つの第1の磁石1b(第2の磁石2b)のうち3個をN極(S極)とし、1個をS極(N極)とする磁極配置としているが、4つの第1の磁石1b(第2の磁石2b)のうち2個をN極、他の2個をS極とする例(周方向に同一磁極を二つ連続して配置した場合)について以下に示す。
【0090】
CASE1[吸着ポジション]
第1の磁石1b:NNSS
第2の磁石2b:SSNN
全て異極ペアであり、装着可能。
CASE2[吸着ポジション+90°]
第1の磁石1b:NNSS
第2の磁石2b:NSSN
二つの同極ペアが存在し、装着不可。
CASE3[吸着ポジション+180°]
第1の磁石1b:NNSS
第2の磁石2b:NNSS
全て同極ペアであり、装着不可。
CASE4[吸着ポジション+270°]
第1の磁石1b:NNSS
第2の磁石2b:SNNS
二つの同極ペアが存在し、装着不可。
このように、CASE1[吸着ポジション]以外では、第1の磁石1bと第2の磁石2bとの間で必ず同極ペアが存在し、脚部2は正しく装着できない。
【0091】
このように、上述の二つの例のいずれにおいても、図8(a)に示す状態、あるいはCASE1の状態以外では、第1の磁石1bと第2の磁石2bとの間に斥力を発生する磁極ペア(同極ペア)が存在する。このため、例えば回動する脚部2に磁石同士の吸引力を超える負荷が加わって、第1の駆動力伝達部1dと第2の駆動力伝達部2cとが吸着ポジション以外の位置関係になると、まず第1段階(第1の磁石1bと第2の磁石2bとが対向しない状態)では、磁石による吸引力が作用しなくなり、第1の駆動力伝達部1dから第2の駆動力伝達部2cへの動力伝達が停止される。
【0092】
更に第2段階(第1の磁石1bと第2の磁石2bとが、吸着ポジション以外の位置で対向する)では、第1の駆動力伝達部1dと第2の駆動力伝達部2cとの間(第1の磁石1b及び第2の磁石2bのうちの一部)で斥力が発生して脚部2は駆動ユニット1から容易に脱落する。なお上述したように、駆動ユニット1の脚支持部1aLの先端にはR面取りが施されており(図4(a)参照)、斥力が作用して安定に支持されなくなった脚部2はより容易に脱落する。なお、脚部2の振子様の動作においては、脚部が前後に一往復する時間は数秒に設定されており、上述した第1段階及び第2段階の状態は十分に維持される。
【0093】
即ち、本実施形態では、第1の駆動力伝達部1dは略円板形状を成し、第1の磁石1bは略円板形状の第1の駆動力伝達部1dの周方向に等間隔(ここでは90°間隔)に複数(ここでは4個)配置され、第1の駆動力伝達部1dの一面の側(脚部2を駆動ユニット1に装着した際に第2の磁石2bと対向する側)において、複数の第1の磁石1bのうち少なくとも1つの磁石の磁極を、他の第1の磁石1bの磁極と異ならせている。
【0094】
このようにすることで、脚部2を駆動ユニット1に装着する際に、利用者が脚部2を誤った方向に装着することを防止し、更に駆動力が伝達されている最中に従動ユニットの回動が阻害されたような場合(回動する脚部2に磁石同士の吸引力を越える負荷が加わった場合)に、斥力によって脚部2を駆動ユニット1から脱落しやすくして、利用者が怪我等をするリスクを低減できる。
【0095】
また、このような構成を備えることで、利用者が多少乱暴に扱っても、脚部2を駆動ユニット1に着脱する際、あるいは駆動ユニット1から脚部2が脱落する際に、駆動源1cを搭載した駆動ユニット1、駆動対象である脚部2、及び第1の駆動力伝達部1dや第2の駆動力伝達部2c等で構成される動力伝達機構が損傷するようなことはない。
【0096】
図9は、玩具TOY1のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、以降の説明において、これまで説明した構成要素については詳細な説明は省略する。玩具TOY1は、駆動ユニット1と、既に説明した脚部2及び車輪3(図1等参照)と、機能ユニット50とで構成される。
【0097】
駆動ユニット1は、既に説明した左右一対に配置された駆動源1cや第1の駆動力伝達部1d等の他に、制御部1nと、ドライバ1qと、本体通信部1jと、本体受電部1kと、送電部1mと、ユニット種別検出部1fと、を備えている。
【0098】
制御部1nは、ROM1i(Read Only Memory)やRAM1h(Random access memory)等で構成される記憶部と、例えばCPU(Central Processing Unit)等で構成される演算部1gとを備える。演算部1gは、記憶部に記憶されたプログラムやデータに基づき、駆動ユニット1の各構成要素を制御する。また記憶部には、駆動源1cを制御する際の駆動速度、駆動方向、駆動時間等の制御パラメータを記述した駆動プロファイルが予め格納されている。制御部1nを構成するROM1i、RAM1h、演算部1gはバスで結合されている。制御部1nは、同様にバスで結合された他の構成要素を制御する。
【0099】
ドライバ1qは駆動源1cを駆動するモータドライバである。制御部1nはROM1iに記憶された駆動プロファイルに基づいてドライバ1qに制御指令を出力する。制御パラメータには上述した脚部2の振子様の動作に関するデータが含まれ、脚部2は基準位置P0から角度θだけ前後方向に振れる(図3参照)。
【0100】
本体通信部1jは、例えば近距離無線規格である「Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)」規格に準拠した通信モジュールを含み、外部との間で所定のデータを送受信する。データを送受信する対象としては、例えばスマートフォンやタブレットPCといった情報端末や後述する機能ユニット50が挙げられる。即ち、本体通信部1jは、利用者の保護者等が所有する情報端末(図示せず)との間で双方向に通信を行うことが可能である。これによって、例えば利用者が玩具TOY1で遊んだ時間を演算部1gに内蔵されたタイマで計測し、その結果を情報端末に通知することが可能となる。逆に、情報端末で動作するアプリケーションソフトウェアを用いて、上述した制御パラメータや駆動プロファイルを変更することも可能である。
【0101】
玩具TOY1は所定のワイヤレス給電規格に対応している。本体受電部1kは受電用コイル、ワイヤレス給電受信回路(ともに図示せず)等で構成され、外部磁界の変化を電流(電力)に変換し、当該電力は図示しないバッテリに蓄電されるとともに、各構成要素に給電される。送電部1mは送電用コイル、ワイヤレス給電送信回路(ともに図示せず)等で構成され、後述する機能ユニット50に非接触で電力を供給する。また、玩具TOY1には図示しないスイッチが設けられており、利用者等が当該スイッチを操作することで玩具TOY1が起動/停止する。ただし駆動源1cに関しては、従動モジュールが装着されていない状態では停止状態に制御される。
【0102】
ユニット種別検出部1fは、例えば反射型フォトセンサで構成され、駆動ユニット1に装着されたユニットの種別(ここでは、従動ユニットとしての脚部2、補助ユニットとしての車輪3、後述する機能ユニット50)の種別を検出する。ユニット種別検出部1fとしては光学式の検出手段のみならず、通信エリアが極めて短い、いわゆる近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)を行うことによって、ユニットの種別を検出してもよい。更に、ユニット種別検出部1fをホールセンサ等で構成し、ホールセンサで検出される磁極に基づいてユニットの種別を検出してもよい。なお本実施形態では、従動ユニットである脚部2と車輪3とについては光学式の検出手段を採用して装着の有無と種別とを判別し、また機能ユニット50についてはNFCを採用して、機能ユニット50から送信されたIDを検出することで、装着の有無と種別を詳細に判定している。
【0103】
機能ユニット50は、駆動ユニット1の機能ユニット支持部1aFM(図1等では図示を省略している)に装着されるユニットであり、CPU、ROM、RAM(ともに図示せず)等で構成される第2制御部50aと、入出力デバイス50bと、機能ユニット受電部50cと、機能ユニット通信部50dと、を備える。第2制御部50aは、ROM等に予め格納されたプログラムやデータに基づき、図示しないバスを介して機能ユニット50の各構成要素を制御する。
【0104】
機能ユニット受電部50cは、受電用コイル(図示せず)等で構成される。機能ユニット受電部50cは駆動ユニット1の送電部1mが出力した磁界の変化を電流(電力)に変換し、当該電力は図示しないバッテリに蓄電され、各構成要素に給電される。
【0105】
機能ユニット通信部50dは、例えば近距離無線規格であるBLE規格に準拠した通信モジュールを含み、駆動ユニット1の本体通信部1jに対して、機能ユニット50の固有の識別子であるID(identifier)とともに、機能ユニット50の属性(機能ユニット50が発揮しうる機能)を示す情報を周期的(例えば30秒毎)に送信するとともに、本体通信部1jとの間で機能ユニット50の属性に基づくデータ(例えば音声データや画像データ)を送受信する。
【0106】
さて、上述したように、玩具TOY1は本来的に「積み木」として遊びに供されることが想定されている。知育玩具としての玩具TOY1は、駆動ユニット1に上述した脚部2、車輪3を装着して動かすこと以外にも、機能ユニット50を装着することで様々な態様で遊ぶことが可能に構成されている。機能ユニット50と駆動ユニット1とが連携することで、玩具TOY1の機能が大幅に拡張される。
【0107】
なお、駆動ユニット1に対して複数の機能ユニット50を装着可能なように、機能ユニット支持部1aFMが複数設けられてもよい。更に、玩具TOY1が「積み木」であることを考慮すると、機能ユニット50の外装は木製とし、三角柱や四角柱等の多角柱、あるいは円柱といったように形状のバリエーションを持たせることが好ましい。もちろん、「積み木」のパーツとしての機能以外に他の機能を持たない木製の積み木ユニットが提供されてもよい。
【0108】
以下、一例として機能ユニット50の入出力デバイス50bとしてスピーカが搭載されている態様(スピーカユニット)について説明する。制御部1nは、ユニット種別検出部1fの出力に基づいて脚部2や車輪3が駆動ユニット1に装着されたことを検出すると、本体通信部1jを介して機能ユニット50に所定の音声再生コマンドを出力する。第2制御部50aには、複数の音声再生コマンドに対するそれぞれの音声データが予め記憶されており、この場合には、例えば「ガシャン」といった装着音(擬音語,オノマトペ)がスピーカから再生される。もちろん、脚部2や車輪3を駆動ユニット1から取り外した際に、他の音声を出力してもよい。
【0109】
また、利用者が玩具TOY1で遊んだ時間が所定の値を超えた場合等に、「ぼくは疲れてきたよ。そろそろお片付けをしない?」等の音声を再生して、利用者を後片付けに誘導するようなことも可能である。
【0110】
また、駆動ユニット1、従動ユニット(脚部2、車輪3)、機能ユニット50が近距離通信手段等を用いて相互に通信が可能な構成としてもよい。ここで駆動ユニット1をマスター、他のユニットをスレーブの関係としておいてもよい。駆動ユニット1からのリクエストに対してアクノリッジを返さないユニットがあったとき、駆動ユニット1はスピーカユニットに音声データを送信し、「仲間とはぐれて寂しいよ」のような音声を出力させて、玩具TOY1がセットとして揃っていない、即ち後片付けが完了していないことを利用者に知らしめてもよい。仮に、スピーカユニットからの応答がない場合、駆動ユニット1は保護者等が所有する情報端末等に対して、当該メッセージを送ってもよい。
【0111】
また、入出力デバイス50bとしてイメージセンサが搭載されている態様(カメラユニット)では、機能ユニット通信部50dと本体通信部1jとを介して、イメージセンサによって取得された画像データを機能ユニット50から駆動ユニット1に送信してもよい。この構成において、制御部1nは、例えば受信した画像データに基づき、障害物を回避するように脚部2の制御パラメータを修正して駆動源1cを制御するようにしてもよい。
【0112】
更に、機能ユニット50としては、上述したスピーカユニットやカメラユニットの他にも、以下に示すように様々な機能を備えるユニットが考えられる。
【0113】
例えば、太陽電池、送電用コイル、ワイヤレス給電送信回路等を搭載して、太陽電池で発電した電力を他のユニットに供給するソーラバッテリユニット、入出力デバイス50bとして液晶パネルや有機ELパネルを搭載して表示を行うディスプレイユニット、LEDや有機EL素子を搭載して照明として機能する照明ユニット、キーボードやマウスといった入力装置を接続するインタフェースユニット、振動モータ等を搭載して上述した装着音に替えて振動するバイブレータユニット、マイクロフォンを搭載して音声を取得するマイクユニット、照度センサ等を搭載して玩具TOY1が置かれた環境の明るさを検出する照度検出ユニット、人感センサを搭載して玩具TOY1の近傍における人の所在を検出する人検知ユニット、ステレオカメラ等を搭載して障害物等の距離を測定する測距ユニット、臭いセンサを搭載して環境の匂いを検出する臭い検出ユニット、圧力センサを搭載して気圧を計測する気圧ユニット、GPSモジュールを搭載して玩具TOY1の置かれた位置を測定する測位ユニット等を採用してもよい。もちろん、機能ユニット50を、入出力デバイス50bとして例えばマイクロフォンとスピーカとを共に備える複合型ユニットとして構成してもよい。
【0114】
このように、本実施形態の玩具TOY1は、駆動ユニット1に様々なユニットを着脱可能に構成されており、装着されるユニットの種別に応じて様々な遊びの態様が提供される。これによって、利用者はどのユニットをどの部位に装着すれば目的とする機能(例えば「動かす」ことや「喋らせる」こと)が得られるかを、遊びを通して学ぶことができる。更に利用者は、複数のユニットの組み合わせによって新しい遊び方を見出すことも可能となる。これによって、論理的なものの考え方の基礎が養われ、将来的なプログラミング的思考の下地にもなり得るものと期待される。
【0115】
図10は、玩具TOY1の変形例を示す説明図である。上述した実施形態においては、駆動ユニット1に装着された脚部2が振子様に動作して玩具TOY1を前進させた。変形例では駆動ユニット1の脚支持部1aLには脚部2ではなく、車輪凹部3aを備える従動ユニットとしての車輪3(以降、「前輪」と称することがある。)が装着される。そして車輪支持部1aWには上述の実施形態と同様に、車輪凹部3aを備える補助ユニットとしての車輪3(以降、「後輪」と称することがある。)が装着される。
【0116】
変形例においては、前輪は図4(b)に示す車輪本体支持体3cと車輪本体3dとが第3の磁石3bを挟んで固定されており、脚支持部1aLに支持された車輪本体支持体3cが回動すると、車輪本体3dも回動する。そして駆動源1cに接続された第1の駆動力伝達部1dが回動すると、その駆動力は磁石を介して前輪を方向Dxに回動させる。即ち、変形例においては、従動ユニットとしての前輪が駆動対象である。車輪支持部1aWに支持された後輪については上述したように、駆動ユニット1が方向Dpに前進するのに伴って連れ回りする。
【0117】
図11(a)は、従動ユニットとしての脚部2に施された脚マーカ2qを説明する説明図、同(b)は、従動ユニットとしての車輪3に施された車輪マーカ3qを説明する説明図である。以降、図8図9を併用して説明を続ける。
【0118】
図11(a)に示すように、脚部2の脚部蓋体2eには円環状に脚マーカ2qが形成されている。脚マーカ2qは、例えば内周を白色、外周を黒色とする彩色が周方向に延伸するように施されている。他方、図11(b)に示すように、車輪3の車輪部蓋体3eには、円環状に車輪マーカ3qが形成されている。車輪マーカ3qは、例えば内周を黒色、外周を白色とする彩色が周方向に延伸するように施されている。
【0119】
さて、図9の記載では、駆動ユニット1には脚部2が装着されているが、本実施形態においては、脚支持部1aLには脚部2に代えて車輪3(前輪)を装着することが可能である。当該前輪の車輪本体支持体3cには脚部2と同様に、第3の磁石3bが設けられ、この第3の磁石3bが第1の駆動力伝達部1dに配置された第1の磁石1bに吸引されて、前輪が駆動ユニット1に装着される(図8(a)吸着ポジションにおいて、第2の駆動力伝達部2cを車輪本体支持体3cと、第2の磁石2bを第3の磁石3bと読み替えて参照。)。
【0120】
なお脚部2と異なり、前輪を含め車輪3には床面と接すべき脚底部2tのごとき部位が存在しないため、第1の駆動力伝達部1dに配置される第1の磁石1bの磁力が十分であれば、第3の磁石3bに代えて鉄等の強磁性体で構成されたドーナツ形状の板状部材を配置してもよい。
【0121】
ここで、上述したように、従動ユニットとしての脚部2及び前輪には、それぞれ脚マーカ2q及び車輪マーカ3qが設けられており、各マーカの位置は従動ユニットが駆動ユニット1に装着されたときに、図9に示すユニット種別検出部1fと対向するように構成されている。制御部1nは、ユニット種別検出部1fの検出結果に基づいて、脚支持部1aLに装着された脚部2であるか、車輪3(前輪)であるかを判別する。
【0122】
そして、制御部1nは、この判別結果に基づき、駆動源1cを制御する際の駆動プロファイルを選択する。即ち、脚支持部1aLに脚部2が装着されたのであれば、上述した振子様の運動を行わせるための駆動プロファイルを選択し、前輪が装着されたのであれば、車輪3を方向Dxに回転させるための駆動プロファイルを選択する。そして制御部1nは、選択された駆動プロファイルに基づいて駆動源1cを制御する。
【0123】
即ち、駆動ユニット1は、制御部1nと、従動ユニット(ここでは脚部2あるいは車輪3)の種別を検出するユニット種別検出部1fと、駆動源1cの駆動プロファイルを記憶する記憶部と、を更に有し、制御部1nはユニット種別検出部1fの検出結果に基づき、駆動源1cの駆動プロファイルを選択・決定する。これによって、従動ユニットの種別(脚形状あるいは車輪形状)に応じた適切な制御を行うことができる。
【0124】
なお、ユニット種別検出部1fが脚マーカ2qまたは車輪マーカ3qのいずれをも検出しない場合、制御部1nは駆動源1cを停止させるようドライバ1qを制御する。更に制御部1nは、駆動源1cが駆動中において、ユニット種別検出部1fが脚マーカ2qまたは車輪マーカ3qを検出しなくなると(即ち、従動ユニットが脱落した状態を検出すると)、駆動源1cを停止させる。これによって無駄に電力が消費されるのを防止する。
【0125】
以上、本発明に係る玩具TOY1について特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、駆動ユニット1の後部(本実施形態で車輪3が装着されている部位)にも駆動源1cを配置し、脚部2を装着するように構成してもよい。この場合、玩具TOY1はいわゆる4足歩行の態様となる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明に係る玩具は、駆動対象に異常な負荷が加わった際に動力の伝達を確実に遮断して安全性を確保しつつ、かつ駆動源を搭載したユニット、駆動対象及び動力伝達機構の損傷を防止することが可能となることから、乳幼児や児童向けの玩具のみならず、大人が遊んで楽しい玩具として、いわゆる後期高齢者向けの玩具にも好適に応用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 駆動ユニット
1aL 脚支持部
1aW 車輪支持部
1aFM 機能ユニット支持部
1b 第1の磁石
1c 駆動源
1d 第1の駆動力伝達部(駆動円板)
1f ユニット種別検出部
1n 制御部
1p 筐体
1q ドライバ
2 脚部(従動ユニット)
2R 右脚部
2L 左脚部
2a 脚凹部
2b 第2の磁石
2c 第2の駆動力伝達部(従動体)
2d 脚部本体
2f ガイド溝
2g 従動体突出部
2i リンク部材
2i1 第1連結孔
2i2 第2連結孔
2m 第3シャフト
2j 第2シャフト
2k 第1シャフト
2p 変位機構収納部
2t 脚底部
2u 平坦凹部
3 車輪(補助ユニット)
3R 右車輪
3L 左車輪
3b 第3の磁石
3c 車輪本体支持体
3d 車輪本体
50 機能ユニット
50a 第2制御部
50b 入出力デバイス
TOY1 玩具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11