(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123301
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】車両用電子ミラー装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20220817BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20220817BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/00 A
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020527
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】楠本 信平
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC12
5C054FE12
5C054FE25
5C054FF03
5C054HA30
5H181AA01
5H181CC04
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】電子ミラー(ディスプレイ)に表示された間接視界と、ドライバが移動対象物を直接目視する直接視界とを併用して、自社側方の移動対象物(追い抜き車など)の認識負荷の低減を図ることができる車両用電子ミラー装置の提供を目的とする。
【解決手段】車体側部20に配置され自車両10の側方および後方領域Xを撮像するカメラ21と、運転席17前方に配置されたディスプレイ27と、ディスプレイ27にカメラ21が取得した映像を左右反転して表示する制御部30と、を備えた車両用電子ミラー装置であって、制御部30は、車両平面視において、ディスプレイ27に表示する自車両10の側方および後方領域Xの前縁Xaが、直接視界領域Zの後縁Zbと一致するように、映像を加工してディスプレイ27に表示することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に配置され自車の側方および後方領域を撮像するカメラと、
運転席前方に配置されたディスプレイと、
当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置であって、
上記制御部は、車両平面視において、上記ディスプレイに表示する自車の側方および後方領域の前縁が、直接視界の後縁と一致するように、映像を加工して上記ディスプレイに表示することを特徴とする
車両用電子ミラー装置。
【請求項2】
上記運転席に着座したドライバを含む車室内を撮像する車内カメラを有し、
上記制御部は、上記車内カメラが撮像したドライバ映像から判定するドライバの顔向きに基づいて、
上記直接視界の後縁を推定する
請求項1に記載の車両用電子ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用電子ミラー装置に関し、詳しくは、車体側部に配置され自車の側方および後方領域を撮像するカメラと、運転席前方に配置されたディスプレイと、当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両用電子ミラー装置としては、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、上記特許文献1に開示された従来の車両用電子ミラー装置は、従前よりドライバが親しんできたドアミラー画角(約30度の挟角の画角)と、斜め後方死角がない広い画角(約90度の広角の画角)と、を映し出す仕様をもち、運転状況に応じて画角を切り替え可能としたものである。
【0003】
しかしながら、当該従来の車両用電子ミラー装置は、ドライバが目視する直接視界との連携が全く考慮されていない。
このため、約90度の広い画角での広角表示とした場合、同一の移動対象物(例えば、自車を追い抜こうとしている追い抜き車の前部)が、間接視界としての電子ミラー映像内と、ドライバが直接目視する直接視界との両方に見えるため、ドライバは、移動対象物の位置を把握するために、間接視界の映像と直接視界の移動対象物とをつなげて、これらが同一の移動対象物であると認識するのに、脳内で、空間認知と物体認知とを統合させる高次処理が必要となり、脳内処理負担が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、電子ミラー(ディスプレイ)に表示された間接視界と、ドライバが移動対象物を直接目視する直接視界とを併用して、自社側方の移動対象物(追い抜き車など)の認識負荷の低減を図ることができる車両用電子ミラー装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両用電子ミラー装置は、車体側部に配置され自車の側方および後方領域を撮像するカメラと、運転席前方に配置されたディスプレイと、当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置であって、上記制御部は、車両平面視において、上記ディスプレイに表示する自車の側方および後方領域の前縁が、直接視界の後縁と一致するように、映像を加工して上記ディスプレイに表示するものである。
【0007】
上述の直接視界とは、ドライバが車両後方への振り返り動作をしないで車両前方乃至上記ディスプレイの方向を向いている時に目視できる180度~200度の視界のことを指す。
また、上述のカメラとしては、CCDまたはCMOS撮影素子等の固体撮像素子から成るカメラを採用してもよい。
さらに、上述のディスプレイは、液晶表示装置やEL(Electroluminescence、エレクトロルミネセンス)素子により構成してもよい。
【0008】
上記構成によれば、上述のカメラは自車の側方および後方領域を撮像し、上述の制御部はカメラが取得した映像を左右反転して鏡像映像と成してディスプレイに表示する。しかも、該制御部は、車両平面視において、ディスプレイに表示する自車の側方および後方領域の前縁が、直接視界の後縁と一致するように、映像を加工してディスプレイに表示する。
【0009】
このように、電子ミラー(ディスプレイ)に表示された間接視界と、ドライバが移動対象物を直接目視する直接視界とを併用することで、自車側方の移動対象物(追い抜き車など)の認識負荷の低減を図ることができる。
【0010】
詳しくは、ディスプレイから消えた移動対象物(追い抜き車)の前部が、直方にドライバの直接視界(側方の目の端の視界)に入ってくるため、移動対象物(追い抜き車)が間接視界から消えた後、タイムラグを存して直接視界で移動対象物が見える所謂死角がある場合や、移動対象物がディスプレイと直接視界との両方に重複(オーバラップ)して見える場合に対し、同一の移動対象物であると認識するための脳内処理が不要となり、移動対象物の存在の把握が容易になる。
【0011】
ここに、脳内処理とは、人間が脳内で行なう空間認知と物体認知とを統合させる高次処理のことである。
具体的には、移動対象物が消えた後に現われる時、消えた前後の時間差をそろえる(視界から外れるタイミングと、視界に現われるタイミングとを一致させる)と、脳は自動的に同じ移動対象物であると、認識しやすくなるので、脳内での高次処理が不要となり、前注意的処理(低次処理)にて認知することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記運転席に着座したドライバを含む車室内を撮像する車内カメラを有し、上記制御部は、上記車内カメラが撮像したドライバ映像から判定するドライバの顔向きに基づいて、上記直接視界の後縁を推定するものである。
上述の車内カメラとしては、固体撮像素子から成る広角カメラが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、車内カメラは、運転席に着座したドライバを含む車室内を撮像し、上述の制御部は、車内カメラが撮像したドライバ映像から判定されるドライバの顔向きに基づいて上述の直接視界の後縁を推定する。
【0014】
このように、ドライバの顔向きに基づいて直接視界の後縁が推定され、推定された直接視界の後縁とディスプレイに表示される自車の『側方および後方領域』(いわゆる側後方領域)の前縁とが一致するように映像を加工してディスプレイに表示される。
【0015】
この結果、ドライバの個人差(車両側方を見るために軽く顔を横に向ける度合の違い)や運転状態の違い(加齢や疲労により側方視認の度合が低下していること)があっても、自車側方の移動対象物(追い抜き車など)の認識負荷の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、電子ミラー(ディスプレイ)に表示された間接視界と、ドライバが移動対象物を直接目視する直接視界とを併用することで、自社側方の移動対象物(追い抜き車など)の認識負荷の低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の車両用電子ミラー装置を備えた車両の平面図。
【
図2】自車の側方および後方領域の前縁と直接視界の後縁との一致を示す平面図。
【
図4】追い抜き車がディスプレイに表示された状態を示す説明図。
【
図5】
図4のディスプレイから追い抜き車の映像が消えたと同時に直接視界に追い抜き車が現われた状態を示す説明図。
【
図6】ディスプレイに対する表示処理を示すフローチャート。
【
図7】物体ベースの注意効果の評価手法を用いて被験者に実験を行なった結果を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
電子ミラー(ディスプレイ)に表示された間接視界と、ドライバが移動対象物を直接目視する直接視界とを併用して、自社側方の移動対象物(追い抜き車など)の認識負荷の低減を図るという目的を、車体側部に配置され自車の側方および後方領域を撮像するカメラと、運転席前方に配置されたディスプレイと、当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置であって、上記制御部は、車両平面視において、上記ディスプレイに表示する自車の側方および後方領域の前縁が、直接視界の後縁と一致するように、映像を加工して上記ディスプレイに表示するという構成にて実現した。
【実施例0019】
この発明の実施例の説明に先立って、まず、
図7を参照して、被験者に対して『物体ベースの注意効果』の評価手法を用いて実験を行なった結果について説明する。
図7に示す特性図の横軸は、オーバラップあり、境界一致、死角あり、の各条件を示している。
【0020】
オーバラップありとは、間接視界(ディスプレイの画面上)と直接視界との両方に車両が目視される場合で、ディスプレイの画面には自車後方に他車両の車全体が目視される場合である。
【0021】
境界一致とは、車両平面視において、ディスプレイに表示される自車の側方および後方領域の前縁が、直接視界の後縁と一致する場合で、ディスプレイから消えた追い抜き車の前部が直ちに直接視界に入ってくる場合で、消える前の追い抜き車は車全体ではなく車両後部のみがディスプレイに表示される場合である。
【0022】
死角ありとは、間接視界(ディスプレイの画面上)から車両が消えた後、タイムラグを有して直接視界で車両が目視される場合で、間接視界から車両が消えるタイミングと直接視界に車両が現われるタイミングとの間に時間差がある場合である。
【0023】
図7に示す特性図の縦軸は、SCR上昇量を示す。SCR(skin conductance response スキンコンダクタンスレスポンス)は、交感神経の活動に連動して増加する手の平の汗の量を電気的に計測した値である。SCRはその中で高周波の応答を取り出したもので、人の精神的な負荷を反映している。
【0024】
図7の縦軸において、SCRの数値が大きい程、精神的な負荷が大きいことを示している。
また
図7の縦軸において『一致条件』とはディスプレイの画面に映し出された車両と、直接視界に入ってくる車両とが同一(一致)の車両であることを示しており、『不一致条件』とはディスプレイの画面に映し出された車両と、直接視界に入ってくる車両とが別(不一致)の車両であることを示している。
【0025】
この実験では、被験者の前方に設置した大型ディスプレイに、電子ミラー(ディスプレイ)を含む車室インテリアと、フロントウインドウとサイドウインドウを通じた直接視界のコンピュータグラフィックを表示し、電子ミラー(間接視界)に現れた追い抜き車に重畳して『〇』の指標を表示し、サイドウインドウ部分(直接視界)に現れた追い抜き車には『〇』又は『×』の指標を表示し、サイドウインドウに『〇』が表示された時に手元のスイッチを押し、『×』が表示された時にはスイッチを押さない、というタスク(task、任務)を被験者に課した。
【0026】
図7における反応とは、サイドウインドウに『〇』が表示されて、スイッチを押した際の被験者の精神的負荷であり、非反応とは『×』が表示されてスイッチ押しを我慢した際(タスクに基づいてスイッチを押さなかった場合)の精神的負荷である。
【0027】
被験者にとっては、電子ミラーに映った車とサイドウインドウに見える車が同一であると認識し、かつ双方に同一の『〇』が表示された場合にスイッチを押すのが最も自然であり、精神的負荷が小さくなると予想される。
【0028】
また、被験者にとって、電子ミラー内の車に『〇』が、サイドウインドウの車に『×』が表示され、これらが別の車両であると認識している場合にスイッチを押さないのも自然であり、精神的負荷が小さくなると予想される。
【0029】
一方、被験者が、電子ミラー内の車とサイドウインドウの車が同一車両であると認識しているにも関わらず、サイドウインドウの車に『×』が表示されたために、スイッチを押さない場合は、精神的負荷が大きくなると予想される。
【0030】
オーバラップありの場合、サイドウインドウの追い抜き車に『〇』が表示されてスイッチを押す場合も、『×』が表示されてスイッチを押さない場合ともに、精神的負荷が小さい。更に『×』が表示されてスイッチを押さない場合の方が、精神的負荷がより小さい。これは、被験者が電子ミラーの追い越し車と、同時に見えるサイドウインドウの追い越し車が、別の車両であると認識する傾向にあるためと解釈できる。
【0031】
死角ありの場合も、オーバラップありの場合とほぼ同一の精神的負荷を示している。死角がある場合も、被験者が電子ミラーの追い越し車と、ドアミラーから消滅した後、間をもってサイドウインドウに現れる追い越し車が、別の車両であると認識する傾向にあるためと解釈できる。
【0032】
境界一致の場合は、サイドウインドウの追い抜き車に『〇』が表示されてスイッチを押す場合も、『×』が表示されてスイッチを押さない場合ともに、精神的負荷が大きい。
【0033】
特に、サイドウインドウに『×』が表示されてスイッチを押さない場合に、精神的負荷が大きい。これは、境界一致の場合は、被験者が、電子ミラーの追い越し車と、サイドウインドウの追い越し車が、同一の車両であると認識する傾向にあり、それにも関わらず、被験者にとって同一車両であることと同意義であるスイッチを押すことを我慢するために、精神的負荷が大きくなったものと解釈される。
【0034】
サイドウインドウに『〇』が表示され、スイッチを押す場合にも精神的負荷が大きい原因は、被験者が、電子ミラーに表示された車両と、表示部サイドウインドウに現われた車両とが脳内で同一の車両であると自動的に処理する負荷が現れたものと推測できる。
【0035】
上述の境界一致の場合は、電子ミラーから消えた車両の前部が直ちにドライバの直接視界に入り、ディスプレイ映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるという知覚が生起される(知覚的群化が生じる)。本願はこのような知見に基づいて発明されたものである。
【0036】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用電子ミラー装置を示し、
図1は当該車両用電子ミラー装置を備えた車両の平面図、
図2は自車の側方および後方領域の前縁と直接視界の後縁との一致を示す平面図、
図3は制御回路ブロック図である。
【0037】
また、
図4は追い抜き車がディスプレイに表示された状態を示す説明図、
図5は
図4のディスプレイから追い抜き車の映像が消えたと同時に直接視界に追い抜き車の前部が現われた状態を示す説明図、
図6はディスプレイに対する表示処理を示すフローチャートである。
【0038】
図1において、車両10(移動対象物としての追い抜き車と区別するために、以下、自車両10と称す)は、車室の上部を覆うルーフパネル11を設け、該ルーフパネル11の前部には、前低後高状に傾斜した前傾構造のフロントウインドウガラス12を配設する一方、上記ルーフパネル11の後部には、前高後低状に傾斜した後傾構造のリヤウインドウガラス13を配設している。
【0039】
また、フロントドアウインドウガラス14、リヤドアウインドウガラス15、クオータウインドウ部16から成る左右のサイドウインドウ部の下縁部に相当して、車両の左右両側部には、車両の前後方向に延びるベルトライン部(BL)が形成されている。
【0040】
一方で、車室内のフロアパネル上部には運転席17(ドライバーズシート)と、助手席(パッセンジャーズシート)とから成るフロントシートと、リヤシート(但し、運転席17以外の各シートについては、便宜上、その図示を省略している)が設けられ、左右の各フロントドア18の車両前端部外側には、後方視認用のドアミラー部19が設けられている。
【0041】
図1に示すように、自車両10の車体側部としての車両右側のルーフサイドレール20、詳しくは、運転席17におけるシートクッションの位置と対応するルーフサイドレール20の所定位置には、自車両10の側方および後方領域を撮像するカメラ21が配置されている。
【0042】
この実施例では、カメラ21として、CCDまたはCMOS撮影素子等の固体撮像素子から成るカメラを採用し、
図2に示すように自車両10の側方および後方領域を車両平面視において視野角が約60度の狭角にて車外映像を取得可能に構成している。
【0043】
一方、
図4、
図5に示すように、車室のフロントシート前方には車幅方向に延びるインストルメントパネル22が設けられている。このインストルメントパネル22においてステアリングホイール23(
図1参照)と対応するステアリングホイール前方部分には、メータフード24が一体的に形成されている。
【0044】
また、
図4、
図5に示すように、ヒンジピラー(図示せず)上端と、上述のルーフサイドレール20の前端とを前低後高状に傾斜方向に連結するフロントピラー部25が設けられており、左右一対のフロントピラー部25の上端部を車幅方向に連結するフロントヘッダ部26が設けられている。
【0045】
一方、
図1、
図4、
図5に示すように、運転席17の前方であって、該運転席17の車幅方向中央よりもフロントピラー部25寄りの位置には、ディスプレイ27が配置されている。この実施例では、該ディスプレイ27は、フロントヘッダ部26にボールジョイント(図示せず)を介して支持されており、当該ディスプレイ27の角度をドライバの体格に対応して3次元的に調整し得るように構成している。
【0046】
上述のディスプレイ27は、上記カメラ21で取得した車外映像(自車両の側方および後方領域の映像)を表示するものであって、該ディスプレイ27は、液晶表示装置やEL(Electroluminescence、エレクトロルミネセンス)素子により構成することができる。
【0047】
なお、
図1においては、説明の便宜上、フロントウインドウガラス12からその下方の構造物を透視した状態で図示している。また、
図4、
図5においても説明の便宜上、フロントウインドウガラス12からその前方を透視した状態で図示すると共に、フロントドアウインドウガラス14からその外方を透視した状態で図示している。
【0048】
図3は車両用電子ミラー装置の制御回路ブロックであって、制御部としてのCPU30(Central Processing Unit)は、上述のカメラ21および車内カメラ31からの入力に基づいて、ROM28(Read Only Memory)に格納されたプログラムに従って、ディスプレイ27、反転部32、映像加工部33、直接視界の後縁推定部34を駆動制御し、またRAM29(Random Access Memory)は必要なデータを読出し可能に記憶する。
【0049】
上述のカメラ21は自車両10の側方および後方領域X(
図2参照)を撮像する。また、上述の車内カメラ31は運転席17に着座したドライバD(
図2に図示の便宜上ドライバDの頭部のみを示す)を含む車室内を撮像する。この車内カメラ31としては、CCDまたはCMOS撮影素子等の固体撮像素子から成るカメラが採用されるが、この車内カメラ31としては、広角カメラが好ましい。
【0050】
上述のディスプレイ27は、カメラ21が取得した映像を、反転部32で左右反転して鏡像と成した後に表示する表示手段である。
上述の反転部32は、カメラ21が取得した映像を左右反転して鏡像を形成する。
【0051】
上述の映像加工部33は、ディスプレイ27に表示される自車両10の側方領域(詳しくは、
図2に示す側方および後方領域X)の前縁XaがドライバDの直接視界領域Zの後縁Zbと一致するように映像を加工する。なお、
図2においては、ドライバDがディスプレイ27を目視している状態下での直接視界領域Zを視野角180度にて図示している。
上述の直接視界の後縁推定部34は、車内カメラ31が撮像したドライバ映像から判定する顔向きに基づいて直接視界領域Zの後縁Zb(
図2参照)を推定する。
【0052】
上述の顔向きの判定は、ドライバDの目の位置、鼻の位置、口の位置の少なくとも3点の特徴量から顔のヨー(yaw)方向への向きを計算することで、リアルタイムに判定することができる。
また、上述のCPU30、反転部32、映像加工部33、直接視界の後縁推定部34の各要素により映像処理手段35が形成されている。
【0053】
ここで、上述のCPU30はディスプレイ27に対してカメラ21が取得した車外映像を左右反転して表示する制御部である。
また、上述のCPU30は、車両平面視において、ディスプレイ27に表示する自車両10の側方および後方領域Xの前縁Xaが、直接視界領域Zの後縁Zbと一致するように、映像を加工してディスプレイ27に表示するように構成している。
【0054】
さらに、上述のCPU30は、車内カメラ31が撮像したドライバ映像から判定するドライバDの顔向きに基づいて、直接視界領域Zの後縁Zbを推定するように構成している。
【0055】
図6はディスプレイ27に対する表示処理を示すフローチャートである。
同図に示すフローチャートのステップS1で、CPU30はカメラ21および車内カメラ31を駆動して、カメラ21により自車両10の側方および後方領域Xを撮像すると共に、車内カメラ31により運転席17に着座したドライバDを含む車室内を撮像する。
【0056】
ステップS2で、CPU30はカメラ21が撮像した車外撮像データと、車内カメラ31が撮像したドライバDを含む車内撮像データと、を当該CPU30に取込む。
ステップS3で、CPU30は映像処理手段35の反転部32により、カメラ21が取得した映像を左右反転し、鏡像映像を形成する。
【0057】
ステップS4で、CPU30は映像処理手段35の直接視界の後縁推定部34により、車内カメラ31が撮像したドライバ映像から、当該ドライバDの顔向きに基づいて直接視界領域Zの後縁Zb(
図2参照)を推定する。
【0058】
ステップS5で、CPU30は映像処理手段35の映像加工部33により、自車両10の側方および後方領域Xの前縁Xaが、ステップS4で推定した直接視界領域Zの後縁Zbと一致するように映像を加工する。
ステップS6で、CPU30はディスプレイ27を駆動して、上記ステップS5で加工された映像を当該ディスプレイ27に表示する。
【0059】
このようにして自車両10の側方および後方領域Xの前縁Xaが直接視界領域Zの後縁Zbと一致するので、移動対象物としての追い抜き車40(
図2参照)が存在する場合には、一旦、
図4に示す如くディスプレイ27に追い抜き車40の映像40V(車両後部の映像)が映し出される。この映像40Vがディスプレイ27から消えた直後に、
図5に示すように、当該追い抜き車40の前部がドライバDの直接視界(特に、側方の目の端の視界)に入ってくる。このため、ドライバDは脳内での高次処理が不要となり、前注意的処理(低次処理)にて、
図4に映像40Vで示す追い抜き車40と、
図5に示す追い抜き車40とが同一車両であると容易に把握することができ、認識負荷の低減を図ることができる。
なお、
図4、
図5において、ディスプレイ27内の符号10Vは自車両10の後側部の映像である。
【0060】
このように、上記実施例の車両用電子ミラー装置は、車体側部(ルーフサイドレール20)に配置され自車両10の側方および後方領域Xを撮像するカメラ21と、運転席17前方に配置されたディスプレイ27と、当該ディスプレイ27に上記カメラ21が取得した映像を左右反転して表示する制御部(CPU30)と、を備えた車両用電子ミラー装置であって、上記制御部(CPU30)は、車両平面視において、上記ディスプレイ27に表示する自車両10の側方および後方領域Xの前縁Xaが、直接視界の後縁(直接視界領域Zの後縁Zb)と一致するように、映像を加工して上記ディスプレイ27に表示するものである(
図2、
図3参照)。
【0061】
この構成によれば、上述のカメラ21は自車両10の側方および後方領域Xを撮像し、上述の制御部(CPU30)はカメラ21が取得した映像を左右反転して鏡像映像と成してディスプレイ27に表示する。しかも、該制御部(CPU30)は、車両平面視において、ディスプレイ27に表示する自車両10の側方および後方領域Xの前縁Xaが、直接視界の後縁(直接視界領域Zの後縁Zb)と一致するように、映像を加工してディスプレイ27に表示する。
【0062】
このように、電子ミラー(ディスプレイ27)に表示された間接視界と、ドライバDが移動対象物を直接目視する直接視界とを併用することで、自車側方の移動対象物(追い抜き車40など)の認識負荷の低減を図ることができる。
【0063】
詳しくは、ディスプレイ27から消えた移動対象物(追い抜き車40)の前部が、
図5に示すように、直方にドライバDの直接視界(側方の目の端の視界)に入ってくるため、移動対象物(追い抜き車40)が間接視界から消えた後、タイムラグを存して直接視界で移動対象物が見える所謂死角がある場合や、移動対象物がディスプレイ27と直接視界との両方に重複(オーバラップ)して見える場合に対し、同一の移動対象物であると認識するための脳内処理が不要となり、移動対象物の存在の把握が容易になる。
【0064】
ここに、脳内処理とは、人間が脳内で行なう空間認知と物体認知とを統合させる高次処理のことである。
具体的には、移動対象物が消えた後に現われる時、消えた前後の時間差をそろえる(視界から外れるタイミングと、視界に現われるタイミングとを一致させる)と、脳は自動的に同じ移動対象物であると、認識しやすくなるので、脳内での高次処理が不要となり、前注意的処理(低次処理)にて認知することができる。
【0065】
また、この発明の一実施形態においては、上記運転席17に着座したドライバDを含む車室内を撮像する車内カメラ31を有し、上記制御部(CPU30)は、上記車内カメラ31が撮像したドライバ映像から判定するドライバDの顔向きに基づいて、上記直接視界の後縁(直接視界領域Zの後縁Zb)を推定するものである(
図3、
図6参照)。
【0066】
この構成によれば、車内カメラ31は、運転席17に着座したドライバDを含む車室内を撮像し、上述の制御部(CPU30)は、車内カメラ31が撮像したドライバ映像から判定されるドライバDの顔向きに基づいて上述の直接視界の後縁(直接視界領域Zの後縁Zb)を推定する。
【0067】
このように、ドライバDの顔向きに基づいて直接視界の後縁(直接視界領域Zの後縁Zb)が推定され、推定された直接視界の後縁(直接視界領域Zの後縁Zb)とディスプレイ27に表示される自車両10の側方および後方領域Xの前縁Xaとが一致するように映像を加工してディスプレイ27に表示される。
【0068】
この結果、ドライバDの個人差(車両側方を見るために軽く顔を横に向ける度合の違い)や運転状態の違い(加齢や疲労により側方視認の度合が低下していること)があっても、自車側方の移動対象物(追い抜き車40など)の認識負荷の低減を図ることができる。
【0069】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車両は、実施例の自車両10に対応し、
以下同様に、
車体側部は、ルーフサイドレール20に対応し、
制御部は、CPU30に対応し、
直接視界の後縁は、直接視界領域Zの後縁Zbに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0070】
例えば、上記実施例においては移動対象物として追い抜き車40(自動車)を例示したが、該移動対象物はトラックやオートバイ等の他の追い抜き車であってもよい。
以上説明したように、本発明は、車体側部に配置され自車の側方および後方領域を撮像するカメラと、運転席前方に配置されたディスプレイと、当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置について有用である。