(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123302
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】車両用電子ミラー装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20220817BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20220817BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/00 A
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020528
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】楠本 信平
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC13
5C054FC15
5C054FD07
5C054FE24
5C054FE25
5C054FE26
5C054HA30
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC15
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】追い抜き車が、ミラー映像から消えて直接視できるまでの時間が、ドライバの想定と合致するように、画角を設定することで、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるというドライバの知覚を生起し、追い抜き車の挙動把握の負担軽減を図る車両用電子ミラー装置を提供する。
【解決手段】車体側部に配置され自車両10の側方乃至後方領域Xを撮像するカメラ20と、運転席17前方に配置されたディスプレイ27と、ディスプレイ27にカメラ20が取得した映像を左右反転して表示する制御部30と、を備え、制御部30は、追い抜き車50と自車両10との相対速度差が小さい程、車両平面視においてディスプレイ27に表示する自車両10の側方乃至後方領域Xの前縁Xbが前進するよう画角θv2を大きくしてディスプレイ27に表示することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に配置され自車両の側方乃至後方領域を撮像するカメラと、
運転席前方に配置されたディスプレイと、
当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた
車両用電子ミラー装置であって、
上記制御部は、追い抜き車と自車両との相対速度差が小さい程、車両平面視において上記ディスプレイに表示する自車両の側方乃至後方領域の前縁が前進するよう画角を大きくして上記ディスプレイに表示することを特徴とする
車両用電子ミラー装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記追い抜き車と上記自車両との相対速度差に応じて生ずる、車両平面視におけるドライバ視点を原点とした上記ディスプレイ内を移動する上記追い抜き車の方位角の変化率を、予め記憶しておいた、上記追い抜き車の方位角の変化率と、追い抜き車が直接視界に現われるとドライバが知覚する知覚到達時間と、の関係を参照し、対応する知覚到達時間が得られるように上記画角を変化させる
請求項1に記載の車両用電子ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用電子ミラー装置に関し、詳しくは、車体側部に配置され自車両の側方乃至後方領域を撮像するカメラと、運転席前方に配置されたディスプレイと、当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両用電子ミラー装置としては、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、上記特許文献1に開示された従来の車両用電子ミラー装置は、従前よりドライバが親しんできたドアミラー画角(約30度の挟角の画角)と、斜め後方死角がない広い画角(約90度の広角の画角)と、を映し出す仕様をもち、運転状況に応じて画角を切り替え可能としたものである。
【0003】
しかしながら、当該従来の車両用電子ミラー装置は、ドライバが目視する直接視界との関係が一切考慮されていない。
このため、従来装置においては、自車両を追い抜こうとする追い抜き車がミラー映像から消えて直接視界に入ってくる迄の時間が、ドライバが想定する時間と異なる場合があり、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であると判断するドライバの知覚が遅れ、追い抜き車の挙動把握の負担が生ずるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題点を解決するために、本発明者等は、電子ミラーの画角の検討において、ミラー面に映る追い抜き車の車速が遅い程、ドライバが想定する、追い抜き車が間接視界(ミラー映像)から消えて死角に入り、再びサイドウインドウの直接視界に入ってくるまでの時間(知覚到達時間)が、実際に直接視界に入ってくるまでの時間(物理的時間)よりも短いことを見出した。
【0006】
詳しくは、
図8に示すように、自車両の運転席に着座した被験者SU(図示の便宜上、頭部のみを示す)に対し、対向車100を設け、対向車100を自車両の一車線分側方に向けて走行させ、被験者SUには対向車100が自車両の真横にきたタイミングでスイッチを押す旨のタスク(task、任務)を課すという実験を直接視界条件下にて行なった。
【0007】
そして、
図8に示すように、被験者SUが車両前方を目視している時の視線e1と、被験者SUが接近してくる対向車100を目視している時の視線e2と、の成す角度である方位角θの変化率に対し、対向車100の車速を変化させて知覚到達時間を推定した結果を
図9に示す。
【0008】
図9に示す特性図は、横軸に方位角変化率をとり、縦軸に知覚到達時間をとって示す知覚特性αの特性図である。なお、
図9に点線で示す特性βは、対向車100の物理的な動き方(つまり方位角変化率)と、物理的時間との関係を示す。
図9に示すように、知覚特性αは、方位角変化率が大きい程(相対速度差が小さい程)、特性βに対して知覚到達時間が短くなる(実際の物理的時間よりも早いタイミングで対向車100が自車両の真横にくると感じる)。
【0009】
また、対向車100の見かけの大きさの変化よりも、方位角変化率の変化の方が被験者SUにとっては感度が高くなることも判明した。
上記実験は対向車100を用いて行なったが、この実験結果は、自車両を追い抜こうとする追い抜き車の場合にも適用することができる。本発明はこのような知見に基づいて成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、追い抜き車が、ミラー映像から消えて直接視できるまでの時間が、ドライバの想定と合致するように、画角を設定することで、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるというドライバの知覚を生起し、追い抜き車の挙動把握の負担軽減を図ることができる車両用電子ミラー装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車両用電子ミラー装置は、車体側部に配置され自車両の側方乃至後方領域を撮像するカメラと、運転席前方に配置されたディスプレイと、当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置であって、上記制御部は、追い抜き車と自車両との相対速度差が小さい程、車両平面視において上記ディスプレイに表示する自車両の側方乃至後方領域の前縁が前進するよう画角を大きくして上記ディスプレイに表示するものである。
【0012】
上述のカメラとしては、CCD(電荷結合素子)またはCMOS撮影素子等(CMOSとは相補性金属酸化膜半導体の意)の固体撮像素子から成るカメラを採用してもよい。
また、上述のディスプレイは、液晶表示装置やEL(Electroluminescence、エレクトロルミネセンス)素子により構成してもよい。
【0013】
さらに、上述の相対速度差を得る方法としては、追い抜き車と自車両との速度差を、リヤサイドレーダのユニットがドップラー効果に基づいて算出し、制御部に伝えるように成してもよく、あるいは、制御部が生成するミラー映像内の追い抜き車の動きから、画像処理的に相対速度差を算出するように構成してもよい。
【0014】
なお、上述のリヤサイドレーダのユニット(ドップラーレーダ)は、周波数が一定の電波を、自車両から他車両(追い抜き車)に向けて発射し、反射した電波との周波数の差により、自車両と他車両との相対速度差を求めるように構成される。
【0015】
上記構成によれば、上述のカメラは、自車両の側方乃至後方領域を撮像し、上述の制御部はカメラが取得した映像を左右反転して上述のディスプレイに表示する。
この際、上述の制御部は、追い抜き車と自車両との相対速度差が小さい程、車両平面視においてディスプレイに表示する自車両の側方乃至後方領域の前縁が前進するよう画角を大きくしてディスプレイに表示する。
【0016】
このように、追い抜き車の車速が遅く、上記相対速度差が小さい程、ミラー映像(ディスプレイ上の映像)から消えてドライバの直接視界に入ってくる迄の時間(知覚到達時間)が短くなり、ドライバの想定と合致するので、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるというドライバの知覚が生起され(知覚的群化が発生し)、追い抜き車の挙動把握の負担軽減を図ることができる。
【0017】
ここで、上述の直接視界とは、ドライバが車両後方への振り返り動作をしないで車両前方乃至上記ディスプレイの方向を向いている時に目視できる180度~200度の視界のことを指す。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記制御部は、上記追い抜き車と上記自車両との相対速度差に応じて生ずる、車両平面視におけるドライバ視点を原点とした上記ディスプレイ内を移動する上記追い抜き車の方位角の変化率を、予め記憶しておいた、上記追い抜き車の方位角の変化率と、追い抜き車が直接視界に現われるとドライバが知覚する知覚到達時間と、の関係を参照し、対応する知覚到達時間が得られるように上記画角を変化させるものである。
【0019】
上述の『上記追い抜き車の方位角の変化率と、追い抜き車が直接視界に現われるとドライバが知覚する知覚到達時間との関係』は、RAM(ランダム アクセス メモリ)内にマップとして読出し可能に記憶させておいてもよい。
【0020】
上記構成によれば、上述の相対速度差の大きさに応じて所期の知覚到達時間が得られるように上記画角を変化させるので、相対速度差の大小の如何にかかわらず、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるというドライバの知覚が生起され(知覚的群化が発生し)、追い抜き車の挙動把握の負担軽減を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、追い抜き車が、ミラー映像から消えて直接視できるまでの時間が、ドライバの想定と合致するように、画角を設定することで、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるというドライバの知覚を生起し、追い抜き車の挙動把握の負担軽減を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の車両用電子ミラー装置を備えた車両の平面図。
【
図2】ディスプレイに表示される自車両の側方乃至後方領域の画角設定を示す説明図。
【
図4】追い抜き車がディスプレイに表示された状態を示す説明図。
【
図5】相対速度差が小さい場合の表示画像を例示する説明図。
【
図6】相対速度差が大きい場合の表示画像を例示する説明図。
【
図8】対向車を用いて知覚特性を求める実験の説明図。
【
図9】方位角変化率に対する知覚到達時間の変化を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
追い抜き車が、ミラー映像から消えて直接視できるまでの時間が、ドライバの想定と合致するように、画角を設定することで、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるというドライバの知覚を生起し、追い抜き車の挙動把握の負担軽減を図るという目的を、車体側部に配置され自車両の側方乃至後方領域を撮像するカメラと、運転席前方に配置されたディスプレイと、当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置であって、上記制御部は、追い抜き車と自車両との相対速度差が小さい程、車両平面視において上記ディスプレイに表示する自車両の側方乃至後方領域の前縁が前進するよう画角を大きくして上記ディスプレイに表示するという構成にて実現した。
【実施例0024】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用電子ミラー装置を示し、
図1は当該電子ミラー装置を備えた車両の平面図、
図2はディスプレイに表示される自車両の側方乃至後方領域の画角設定を示す説明図、
図3は制御回路ブロック図、
図4はディスプレイの配置位置と当該ディスプレイに追い抜き車が表示された状態とを示す説明図である。
【0025】
図1において、車両10(移動対象物としての追い抜き車と区別するために、以下、自車両10と称す)は、車室の上部を覆うルーフパネル11を設け、該ルーフパネル11の前部には、前低後高状に傾斜した前傾構造のフロントウインドウガラス12を配設する一方、上記ルーフパネル11の後部には、前高後低状に傾斜した後傾構造のリヤウインドウガラス13を配設している。
【0026】
また、フロントサイドウインドウガラス14(いわゆるフロントドアガラス)、リヤサイドウインドウガラス15(いわゆるリヤドアガラス)、クオータウインドウ部16から成る左右のサイドウインドウ部の下縁部に相当して、車両の左右両側部には、車両の前後方向に延びるベルトライン部(BL)が形成されている。
【0027】
一方で、車室内のフロアパネル上部には運転席17(ドライバーズシート)と、助手席(パッセンジャーズシート)とから成るフロントシートと、リヤシート(但し、運転席17以外の各シートについては、便宜上、その図示を省略している)が設けられている。また、左右の各フロントドア18の車両前端部外側には、ドアミラー部19が設けられている。
【0028】
図1に示すように、運転席17側のドアミラー部19には、自車両10の側方乃至後方領域X(
図2参照)を撮像するカメラ20が配置されている。この実施例では、自車両10として右ハンドル車を例示しているので、上述のカメラ20は左右一対のドアミラー部19,19のうちの車両右側(運転席17側)のドアミラー部19に設けられている。
【0029】
上述のカメラ20としては、CCDまたはCMOS撮影素子等の固体撮像素子から成るカメラを採用し、
図2に示すように自車両10の側方乃至後方領域Xを車両平面視において所定の視野角にて車外映像を取得可能に構成している。
【0030】
一方、
図4に示すように、車室のフロントシート前方には車幅方向に延びるインストルメントパネル22が設けられている。このインストルメントパネル22においてステアリングホイール23(
図1参照)と対応するステアリングホイール前方部分には、メータフード24が一体的に形成されている。
【0031】
また、
図4に示すように、車両上下方向に延びるヒンジピラー(図示せず)上端と、車両前後方向に延びるルーフサイドレールの前端とを前低後高状に傾斜方向に連結するフロントピラー部25が設けられており、左右一対のフロントピラー部25の上端部を車幅方向に連結するフロントヘッダ部26が設けられている。
【0032】
一方、
図1、
図4に示すように、運転席17の前方であって、該運転席17の車幅方向中央よりもフロントピラー部25寄りの位置には、表示手段としてのディスプレイ27が配置されている。この実施例では、上記ディスプレイ27は、フロントヘッダ部26にボールジョイント(図示せず)を介して支持されており、当該ディスプレイ27の角度をドライバの体格に対応して3次元的に調整し得るように構成している。
【0033】
上述のディスプレイ27は、上記カメラ20で取得した車外映像(自車両10の側方乃至後方領域Xの映像)を表示するものである。該ディスプレイ27は、液晶表示装置、いわゆるLCD(リキュッド クリスタル ディスプレイ)やEL(Electroluminescence、エレクトロルミネセンス)素子により構成することができる。
【0034】
なお、
図1においては、説明の便宜上、フロントウインドウガラス12からその下方の構造物を透視した状態で図示している。また、
図4においても説明の便宜上、フロントウインドウガラス12からその前方を透視した状態で図示すると共に、フロントサイドウインドウガラス14からその外方を透視した状態で図示している。
【0035】
図3は車両用電子ミラー装置の制御回路ブロック図であって、制御部としてのCPU30(Central Processing Unit)は、上述のカメラ20からの入力に基づいて、ROM28(Read Only Memory)に格納されたプログラムに従って、ディスプレイ27、反転部31、相対速度差算出部32、画角変更部33を駆動制御し、またRAM29(Random Access Memory)は必要なデータやマップ40を読出し可能に記憶する。
【0036】
ここで、上述のマップ40は、追い抜き車50(
図2参照)の方位角θa(
図4参照)の変化率△θaと、追い抜き車50が自車両10の直接視界領域Zの後縁Zb(
図2参照)に現われるとドライバDが知覚する知覚到達時間Tと、の関係をデータ化して読出し可能に記憶している。上述のマップ40の詳細は
図9と同様であるが、このマップ40に記憶される知覚特性αは非線形の特性である。
【0037】
上述のカメラ20は自車両10の側方乃至後方領域X(
図2参照)を撮像する。
上述のディスプレイ27は、カメラ20が取得した映像を、反転部31で左右反転して鏡像と成した後に表示する表示手段である。
【0038】
上述の反転部31は、カメラ20が取得した映像を左右反転して鏡像を形成する。
上述の相対速度差算出部32は、追い抜き車50と自車両10との相対速度差△Vを算出する。
【0039】
ここで、上記相対速度差算出部32は、リヤサイドレーダーのユニットがドップラー効果に基づいて算出し、算出結果をCPU30に入力すべく構成してもよく、CPU30が生成するディスプレイ27映像内の追い抜き車50V(
図4参照)の動きから、画像処理的に相対速度差△Vを算出してもよい。
【0040】
上述の画角変更部33は、追い抜き車50と自車両10との相対速度差△Vに応じて生ずる、車両平面視におけるドライバ視点を原点としたディスプレイ27内を移動する追い抜き車50V(
図4参照)の方位角θaの変化率△θaを、RAM29に予め記憶しておいたマップ40を参照して、対応する知覚到達時間Tが得られるように画角を変化させる。
【0041】
図4で示した方位角θaは、運転席17に着座したドライバD(
図1参照)が車両正面前方を目視している時の視線e11と、ドライバDがディスプレイ27内を移動する追い抜き車50Vを目視している時の視線e12と、の成す角度である。方位角θaの変化率△θaは、ディスプレイ27内を移動する追い抜き車50Vの車速に応じて方位角θaが変化する度合である。
【0042】
上述のCPU30は、
図2に示すように、追い抜き車50と自車両10との相対速度差△Vが大きい程(つまり、追い抜き車50の車速が相対的に大きい程)、車両平面視においてディスプレイ27に表示する自車両10の側方乃至後方領域Xの前縁(ミラー映像の前縁)Xaが直接視界領域Zの後縁Zbに対して後退するように画角θV1を小さくしてディスプレイ27に表示する(
図6参照)。
【0043】
一方で、上述のCPU30は、
図2に示すように、追い抜き車50と自車両10との相対速度差△Vが小さい程(つまり、追い抜き車50の車速が相対的に小さい程)、車両平面視においてディスプレイ27に表示する自車両10の側方乃至後方領域Xの前縁(ミラー映像の前縁)Xbが直接視界領域Zの後縁Zb方向に前進するように画角θV2(但し、θV2>θV1)を大きくしてディスプレイ27に表示する(
図5参照)。
【0044】
この実施例では、画角θV1を小さくしてディスプレイ27に表示する場合、
図6に示すように、ディスプレイ27内の追い抜き車50Vの進行方向前方にマスク35を形成するように構成している。
上述のディスプレイ27内に形成されるマスク35によるマスキング面積は、相対速度差△Vが大きくなる程、広くなるものである。
【0045】
図3に示すように、上述のCPU30と、反転部31と、相対速度差算出部32と、画角変更部33と、の各要素により、映像処理手段34が形成されている。
なお、
図2に示す符号Lは間接視界に相当する側方乃至後方領域Xの前縁Xaと、直接視界領域Zの後縁Zbとの間に対応する視界間の間隔である。また、
図4、
図5、
図6に示す符号10Vはカメラ20が撮像した自車両10の後側部の映像である。
【0046】
図7は表示制御を示すフローチャートである。
同図に示すフローチャートのステップS1で、CPU30はカメラ20を駆動して、当該カメラ20により自車両10の側方乃至後方領域Xを撮像する。
【0047】
ステップS2で、CPU30は上記カメラ20が撮像した車外撮像データを当該CPU30に取込む。
ステップS3で、CPU30は映像処理手段34の反転部31により、カメラ20が取得した映像を左右反転し、鏡像を形成する。
【0048】
ステップS4で、CPU30は映像処理手段34の相対速度差算出部32により、自車両10と追い抜き車50との相対速度差△Vを算出すると共に、算出した相対速度差△Vから方位角θaの変化率△θaを推定する。
【0049】
ステップS5で、CPU30は映像処理手段34の画角変更部33を駆動する。画角変更部33はRAM29に読出し可能に記憶したマップ40を参照して、方位角変化率△θaに応じてドライバDが知覚する知覚到達時間Tが得られるように画角を変化させる。
【0050】
すなわち、追い抜き車50と自車両10との相対速度差△Vが大きい程(つまり、方位角変化率△θaが小さい程)、車両平面視においてディスプレイ27に表示する自車両10の側方乃至後方領域Xの前縁(ミラー映像の前縁)Xaが直接視界領域Zの後縁Zbから後退するように画角θV1を小さく設定する(
図2参照)。
【0051】
逆に、追い抜き車50と自車両10との相対速度差△Vが小さい程(つまり、方位角変化率△θaが大きい程)、車両平面視においてディスプレイ27に表示する自車両10の側方乃至後方領域Xの前縁(ミラー映像の前縁)Xbが直接視界領域Zの後縁Zb方向に前進するように画角θV2(但し、θV2>θV1)を大きく設定する(
図2参照)。
【0052】
なお、
図2では便宜上、画角θV1,θV2の2つのみを図示したが、相対速度差△Vの大小の差異に応じて、これら画角θV1,θV2を含む任意の画角が設定されるものである。
【0053】
ステップS6で、CPU30は上記ステップS5で設定された画角により、追い抜き車50の映像50Vをディスプレイ27に表示する。
すなわち、相対速度差△Vが大きいことにより、画角θV1が小さく設定された場合には、追い抜き車50は
図6に示すように表示される一方で、相対速度差△Vが小さいことにより、画角θV2が大きく設定された場合には、追い抜き車50は
図5に示すように表示される。ここで、
図6に示す画角θV1が小さい場合には、ディスプレイ27内の追い抜き車50Vの進行方向前方にマスク35が併せて表示される。
【0054】
このように、上記実施例の車両用電子ミラー装置は、車体側部(運転席17側のドアミラー部19)に配置され自車両10の側方乃至後方領域Xを撮像するカメラ20と、運転席17前方に配置されたディスプレイ27と、当該ディスプレイ27に上記カメラ20が取得した映像を左右反転して表示する制御部(CPU30)と、を備えた車両用電子ミラー装置であって、上記制御部(CPU30)は、追い抜き車50と自車両10との相対速度差△Vが小さい程、車両平面視において上記ディスプレイ27に表示する自車両10の側方乃至後方領域Xの前縁Xbが前進するよう画角θV2を大きくして上記ディスプレイ27に表示するものである(
図1~
図3、
図5、
図7参照)。
【0055】
この構成によれば、上述のカメラ20は、自車両10の側方乃至後方領域Xを撮像し、上述の制御部(CPU30)はカメラ20が取得した映像を左右反転して上述のディスプレイ27に表示する。
【0056】
この際、上述の制御部(CPU30)は、追い抜き車50と自車両10との相対速度差△Vが小さい程、車両平面視においてディスプレイ27に表示する自車両10の側方乃至後方領域Xの前縁Xbが前進するよう画角θV2を大きくしてディスプレイ27に表示する(
図5参照)。
【0057】
このように、追い抜き車50の車速が遅く、上記相対速度差△Vが小さい程、ミラー映像(ディスプレイ27上の映像)から消えてドライバの直接視界(特に、直接視界領域Zの後縁Zb)に入ってくる迄の時間(知覚到達時間T)が短くなり、ドライバの想定と合致するので、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるというドライバの知覚が生起され(知覚的群化が発生し)、追い抜き車50の挙動把握の負担軽減を図ることができる。
【0058】
また、この発明の一実施形態においては、上記制御部(CPU30)は、上記追い抜き車50と上記自車両10との相対速度差△Vに応じて生ずる、車両平面視におけるドライバ視点を原点とした上記ディスプレイ27内を移動する上記追い抜き車50の方位角θaの変化率△θaを、予め記憶しておいた、上記追い抜き車50の方位角θaの変化率△θaと追い抜き車50が直接視界(直接視界領域Z)に現われるとドライバDが知覚する知覚到達時間Tと、の関係(RAM29に記憶したマップ40)を参照し、対応する知覚到達時間Tが得られるように上記画角を変化させるものである(
図2、
図3参照)。
【0059】
この構成によれば、上述の相対速度差△Vの大きさに応じて所期の知覚到達時間Tが得られるように上記画角を変化させるので、相対速度差△Vの大小の如何にかかわらず、ミラー映像内の車両と、直接視界に入ってきた車両とが同一であるというドライバDの知覚が生起され、追い抜き車50の挙動把握の負担軽減を図ることができる。
【0060】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車体側部は、実施例の運転席17側のドアミラー部19に対応し、
以下同様に、
制御部は、CPU30に対応し、
直接視界は、直接視界領域Zにおける視界に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
以上説明したように、本発明は、車体側部に配置され自車両の側方乃至後方領域を撮像するカメラと、運転席前方に配置されたディスプレイと、当該ディスプレイに上記カメラが取得した映像を左右反転して表示する制御部と、を備えた車両用電子ミラー装置について有用である。