(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123328
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】サブコレットチャック
(51)【国際特許分類】
B23B 31/20 20060101AFI20220817BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B23B31/20 G
B23Q3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020562
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】513310209
【氏名又は名称】内田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】内田 成俊
(72)【発明者】
【氏名】久米 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】内田 典孝
(72)【発明者】
【氏名】内田 知宏
【テーマコード(参考)】
3C016
3C032
【Fターム(参考)】
3C016FA38
3C032GG01
3C032JJ01
3C032JJ14
(57)【要約】
【課題】被把持物における把持部分の損傷を抑えることができるサブコレットチャックを提供する。
【解決手段】サブコレットチャック200は、コレットチャック100の内側に3つのサブ爪体201と1つのクランプベース210とを備えている。サブ爪体201は、被把持物WKを把持する把持部201aを有するとともにコレットチャック100の爪部104に対向する受圧部201bを有している。また、サブ爪体201は、貫通押付け体205に対して変位代Sを備えた爪体貫通孔202が形成されている。貫通押付け体205は、爪体貫通孔202を貫通してクランプベース210に押圧弾性体206を介して締め付けられている。クランプベース210は、3つのサブ爪体201を支持している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体における一方の端部側が周方向に少なくとも2つに分割された爪部を有して同爪部が径方向に傾倒することで被把持物を把持するコレットチャックに装着されて被把持物を把持するサブコレットチャックであって、
前記爪部における前記被把持物を把持する側に隣接配置されて同被把持物を把持する少なくとも2つのサブ爪体と、
前記サブ爪体を前記筒体の径方向に往復変位させるための径方向スライド機構を介して前記サブ爪体を支持するクランプベースとを有することを特徴とするサブコレットチャック。
【請求項2】
請求項1に記載したサブコレットチャックにおいて、さらに、
互いに隣接する前記サブ爪体同士を前記被把持物を開放する側に弾性的に変位させる力を作用させる開放機構を有することを特徴とするサブコレットチャック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したサブコレットチャックにおいて、さらに、
前記クランプベースは、
前記被把持物内に挿し込まれて同被把持物の位置を決める位置決めピンを有していることを特徴とするサブコレットチャック。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したサブコレットチャックにおいて、
前記クランプベースは、
前記少なくとも2つに分割された爪部の間に配置されていることを特徴とするサブコレットチャック。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したサブコレットチャックにおいて、
前記径方向スライド機構は、
前記サブ爪体を貫通する爪体貫通孔と、
前記爪体貫通孔を貫通して前記クランプベースに取り付けられて前記サブ爪体を前記クランプベースに押し付ける貫通押付け体とを有し、
前記爪体貫通孔は、
同孔内において前記貫通押付け体の相対変位を許容する変位代を有する大きさに形成されており、
前記貫通押付け体は、
前記サブ爪体を前記クランプベースに摺動可能な力で押し付けていることを特徴とするサブコレットチャック。
【請求項6】
請求項5に記載したサブコレットチャックにおいて、
前記径方向スライド機構は、
前記サブ爪体と前記貫通押付け体との間に前記サブ爪体を前記クランプベースに弾性的に押し付けるための押圧弾性体を備えることを特徴とするサブコレットチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工の対象となる被把持物を把持するコレットチャックに装着されて被把持物を把持するサブコレットチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機械加工の対象となる被把持物を把持するコレットチャックが知られている。例えば、下記特許文献1には、筒状に形成されて径方向に拡縮する胴径部材の内部に3つの口径部材を配置して被把持物を把持するコレットチャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたコレットチャックにおいては、胴径部材の先端部に3つに分割されて形成された嵌合部が径方向内側に傾倒することで口径部材を介して被把持物を把持するため、径方向内側に傾倒する口径部材の内周面が被把持物に対して周方向に沿った線状に接触することによる接触荷重の集中によって被把持物における把持部分が損傷することがあるという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、被把持物における把持部分の損傷を抑えることができるサブコレットチャックを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、筒体における一方の端部側が周方向に少なくとも2つに分割された爪部を有して同爪部が径方向に傾倒することで被把持物を把持するコレットチャックに装着されて被把持物を把持するサブコレットチャックであって、爪部における被把持物を把持する側に隣接配置されて同被把持物を把持する少なくとも2つのサブ爪体と、サブ爪体を筒体の径方向に往復変位させるための径方向スライド機構を介してサブ爪体を支持するクランプベースとを有することにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、サブコレットチャックは、コレットチャックの爪部における被把持物を把持する側に複数のサブ爪体が径方向スライド機構を介してコレットチャックの径方向に往復変位可能に設けられることで爪部が傾倒した際にサブ爪体が径方向に平行移動するため被把持物を面接触で把持することができ把持部分に押圧痕などの損傷を抑えることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記サブコレットチャックにおいて、さらに、互いに隣接するサブ爪体同士を被把持物を開放する側に弾性的に変位させる力を作用させる開放機構を有することにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、サブコレットチャックは、互いに隣接するサブ爪体同士を被把持物を開放する側に弾性的に変位させる力を作用させる開放機構を有しているため、爪部による被把持物の開放と同時にサブ爪体による被把持物の開放が行われることで被把持物の取付作業および取外し作業の各作業性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記サブコレットチャックにおいて、さらに、クランプベースは、被把持物内に挿し込まれて同被把持物の位置を決める位置決めピンを有していることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、サブコレットチャックは、クランプベースが被把持物内に挿し込まれて同被把持物の位置を決める位置決めピンを有しているため、被把持物の位置決め作業を容易にして取付作業の作業性および加工精度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記サブコレットチャックにおいて、クランプベースは、少なくとも2つに分割された爪部の間に配置されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、サブコレットチャックは、クランプベースが少なくとも2つに分割された爪部の間に配置されているため、サブコレットチャックの大型化を抑えてコンパクトに構成することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記サブコレットチャックにおいて、径方向スライド機構は、サブ爪体を貫通する爪体貫通孔と、爪体貫通孔を貫通してクランプベースに取り付けられてサブ爪体をクランプベースに押し付ける貫通押付け体とを有し、爪体貫通孔は、同孔内において貫通押付け体の相対変位を許容する変位代を有する大きさに形成されており、貫通押付け体は、サブ爪体をクランプベースに摺動可能な力で押し付けていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、サブコレットチャックは、径方向スライド機構サブ爪体に形成された爪体貫通孔と、この爪体貫通孔を変位代を介して貫通してクランプベースに取り付けられる貫通押付け体とによってサブ爪体をクランプベースに対して摺動可能な力で押し付けているため、簡単な構成でサブ爪体を径方向に変位させることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記サブコレットチャックにおいて、径方向スライド機構は、サブ爪体と貫通押付け体との間にサブ爪体をクランプベースに弾性的に押し付けるための押圧弾性体を備えることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、サブコレットチャックは、径方向スライド機構がサブ爪体と貫通押付け体との間にサブ爪体をクランプベースに弾性的に押し付けるための押圧弾性体を備えて構成されているため、サブ爪体を用意に径方向に往復変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るサブコレットチャックの構成の概略をコレットチャックのコレット本体に取り付けた状態で示す正面図である。
【
図2】
図1の2-2線から見たサブコレットチャックが装着されたコレットチャックの側面断面図である。
【
図3】
図2に示す破線円3内の構成を拡大して示す部分拡大図である。
【
図4】
図2に示すサブコレットチャックにおいてサブ爪体を取り外して把持部分の大きな被把持物を把持した状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るサブコレットチャックの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るサブコレットチャック200の構成の概略をコレットチャック100のコレット本体101に取り付けた状態で示す正面図である。また、
図2は、
図1の2-2線から見たサブコレットチャック200が装着されたコレットチャック100の側面断面図である。このサブコレットチャック200は、旋盤、フライス盤またはマシニングセンタなどの工作機械において回転駆動する主軸が備えるコレットチャック100に取り付けられて被把持物WKを着脱自在に保持する機械装置である。
【0020】
サブコレットチャック200を説明する前に、このサブコレットチャック200が取り付けられる対象であるコレットチャック100について説明する。コレットチャック100は、サブコレットチャック200を着脱自在に保持するための機械装置であり、工作機械(図示せず)の主軸に取り付けられている。このコレットチャック100は、コレット本体101を備えている。
【0021】
コレット本体101は、サブコレットチャック200のサブ爪体201を被把持物WKに押し付ける部品であり、金属材料を筒状に形成して構成されている。より具体的には、コレット本体101は、主として、基部102、傾倒部103および爪部104をそれぞれ備えて構成されている。
【0022】
基部102は、円筒状に形成されるとともにその内周面に後述するホルダナット107がネジ嵌合する雌ネジが形成されている。傾倒部103は、筒状に形成された基部102の両端面のうちの一方(図示右側)の端面における周方向上で均等な間隔の6つの位置からそれぞれ軸方向に延びて張り出す部分であり、基部102の外周面に沿って曲面状に湾曲した板状に形成されている。これら6つの傾倒部103は、コレット本体101の中心軸に対して内側および外側にそれぞれ撓み変形する弾性を有して形成されている。
【0023】
爪部104は、サブ爪体201を押圧する部分であり、6つの傾倒部103の一方の端部からそれぞれコレット本体101の径方向外側および内側にそれぞれ張り出して形成されている。この場合、6つの爪部104の各外周面104aには、後述するコレットガイド105上を摺動するために傾倒部103側から爪部104の端部側に向かって径方向外側に広がるテーパ状に形成されている。また、6つの爪部104の各内周面104bは、3つのサブ爪体201の外径よりも若干大きな内径の円弧面に形成されている。
【0024】
なお、この爪部104は、コレットチャック100にサブコレットチャック200を取り付けない場合においては、サブコレットチャック200が把持する被把持物WKよりも大径の被把持物WKを把持することができる。
【0025】
コレットガイド105は、コレット本体101をコレット本体101の軸方向に摺動可能に保持しつつ6つの爪部104を内側に変位させるための部品であり、金属材料を円筒状に形成して構成されている。このコレットガイド105における一方(図示右側)の端部側の内周部には、ガイド側摺動面105aが形成されている。ガイド側摺動面105aは、コレット本体101における6つの外周面104aが摺動して爪部104をそれぞれ内側に変位させるための部分であり、軸方向外側に向かってテーパ状に広がって形成されている。このコレットガイド105は、コレットガイド105における一方(図示右側)の端部側がフランジ状に張り出して形成されており、この張り出した部分が外筒106の端面にボルトによって固定されている。
【0026】
外筒106は、コレットガイド105を収容した状態で保持する部品であり、金属材料を円筒状に形成して構成されている。この外筒106は、コレットガイド105が取り付けられる側とは反対側(図示左側)の端面がボルト(図示せず)を介して工作機械の主軸に取り付けられる。
【0027】
ホルダナット107は、コレット本体101をコレット本体101の中心軸線方向に進退させるための部品であり、金属製の円筒体の外周部の周方向における6つの位置から径方向外側に張り出す張出部107aを備えて構成されている。これら6つの張出部107aは、コレット本体101の基部102の内周面にネジ嵌合する部分であり雄ネジが形成されている。このホルダナット107は、円筒体内部にドローバー連結具108を備えた状態で同円筒体の外周部がクランプベース受け109に保持されている。
【0028】
ドローバー連結具108は、工作機械の主軸から延びるドローバーDBの先端部をホルダナット107に連結するための部品であり、金属材料を円筒状に形成して構成されている。このドローバー連結具108は、一方(図示左側)の端部側の内部にドローバーDBの先端部がネジ嵌合するとともにドローバー連結具108全体がホルダナット107内に摺動可能な状態で収容されている。
【0029】
クランプベース受け109は、ホルダナット107をホルダナット107の中心軸方向に進退可能な状態で収容しつつクランプベース210を支持する部品であり、金属製の円筒体の一方(図示左側)の端部が張り出したフランジ状に形成されている。このクランプベース受け109は、円筒体の一部に前記6つの張出部107aが貫通する貫通孔が形成されている。また、クランプベース受け109は、径方向外側に張り出すフランジ部109aがコレットガイド105の内周面に嵌合するとともにフランジ部109aとは反対側の端部にクランプベース210を支持している。
【0030】
(サブコレットチャック200の構成)
サブコレットチャック200は、サブ爪体201を備えている。サブ爪体201は、被把持物WKを把持するための部品であり、金属製または樹脂製の少なくとも2つのブロック体で構成されている。具体的には、サブ爪体201は、被把持物WKの外周部を三方から押さえて掴む金属製の3つのブロック体で構成されている。これらの各サブ爪体201は、それぞれ把持部201a、受圧部201b、ベース面201c、ワーク面201dおよび爪体貫通孔202がそれぞれ形成されている。
【0031】
把持部201aは、被把持物WKの外周部の一部を押さえる部分であり、被把持物WKにおける把持部分の形状に対応する形状に形成されている。本実施形態においては、把持部201aは、凹状に凹む円弧状の曲面で構成されている。受圧部201bは、コレット本体101の爪部104から押圧力を受ける部分であり、凸状に張り出す円弧状の曲面で構成されている。この受圧部201bは、爪部104の曲率と同じ曲率の曲面で構成されていてもよいが、本実施形態においては爪部104の曲率よりも大きな曲率の曲面で構成されている。
【0032】
ベース面201cは、クランプベース210に突き当てられる部分であり、把持部201aと受圧部201bとの間に形成される平坦面で構成されている。ワーク面201dは、被把持物WKが突き当てられる部分であり、把持部201aと受圧部201bとの間で前記ベース面201cに対向した状態で形成される平坦面で構成されている。
【0033】
爪体貫通孔202は、後述する貫通押付け体205が貫通する部分であり、サブ爪体201に対してコレット本体101の軸方向に平行に延びてベース面201cおよびワーク面201dにそれぞれに開口する貫通孔で構成されている。この爪体貫通孔202は、小径部202a、大径部202bおよび中間底部202cを有して構成されている。
【0034】
小径部202aは、貫通押付け体205の大径部202bよりも大きな内径に形成されている。この場合、小径部202aの内径は、サブ爪体201が被把持物WKを把持していない状態から把持する状態まで変位を許容する大きさに形成されている。大径部202bは、貫通押付け体205の押圧弾性体および頭部よりも大きな内径に形成されている。この場合、大径部202bの内径は、サブ爪体201が被把持物WKを把持していない状態から把持する状態まで変位を許容する大きさに形成されている。
【0035】
すなわち、爪体貫通孔202は、貫通押付け体205との間にサブ爪体201が被把持物WKを把持していない状態から把持する状態まで変位を許容する変位代Sを有する大きさに形成されている。また、大径部202bは、貫通押付け体205の押圧弾性体および頭部をそれぞれ収容可能な長さ(深さ)に形成されている。
【0036】
中間底部202cは、貫通押付け体205の押圧弾性体の一方(図示左側)の端部が押し付けられる部分であり、平坦な円環状に形成されている。また、このサブ爪体201の側面には、開放弾性体収容部203が形成されている。
【0037】
開放弾性体収容部203は、開放弾性体204を収容するための部分であり、ワーク面201dおよび隣接配置されるサブ爪体201に対向する両側面にそれぞれ開口して形成されている。この場合、開放弾性体収容部203は、ワーク面201dにおける開口部分が蓋体203aによって塞がれている。蓋体203aは、開放弾性体収容部203内に収容した開放弾性体204の脱落を防止するための部品であり、金属製の板状態で構成されている。この蓋体203aは、ワーク面201dに対して面一の状態でネジ止めされている。なお、
図1は、蓋体203aの図示を省略している。
【0038】
開放弾性体204は、互いに隣り合って配置される2つのサブ爪体201同士を互いに離間させて被把持物WKの把持を開放するための部品であり、互いに隣り合う2つのサブ爪体201間に配置されている。本実施形態においては、開放弾性体204は、金属製のコイルスプリングによって構成されている。したがって、この開放弾性体204は、両端部が互いに隣り合う2つのサブ爪体201にそれぞれ形成された開放弾性体収容部203内にそれぞれ収容されて保持されている。
【0039】
貫通押付け体205は、サブ爪体201をクランプベース210に弾性的に押し付けた状態で取り付けるため部品であり、金属製または樹脂製の棒状に形成されている。より具体的には、貫通押付け体205は、
図3に示すように、小径部205a、大径部205bおよび頭部205cをそれぞれ備えている。
【0040】
小径部205aは、爪体貫通孔202を貫通してクランプベース210内にねじ込まれる部分であり、軸体の外周面に雄ネジが形成されて構成されている。大径部205bは、爪体貫通孔202内に配置される部分であり、小径部205aの外径よりも太い外径の軸体で構成されている。この大径部205bの外周部には、押圧弾性体206が設けられている。
【0041】
頭部205cは、貫通押付け体205を軸周りに回転させるための六角レンチを嵌合させるための六角穴が形成されるとともに前記押圧弾性体206を大径部205bの外周部に位置させるための部分であり、大径部205bおよび押圧弾性体206の各外径よりも太い外径の円柱状に形成されている。すなわち、貫通押付け体205は、本実施形態においては、ボルトで構成されている。
【0042】
押圧弾性体206は、サブ爪体201をクランプベース210に弾性的に押圧させるための部品であり、金属製のコイルスプリングによって構成されている。この押圧弾性体206は、貫通押付け体205の大径部205bの外側に配置されて一方(図示左側)の端部が中間底部202cを押圧するとともに他方(図示右側)の端部が貫通押付け体205の頭部205cを押圧することでサブ爪体201をクランプベース210に弾性的に押圧させる。
【0043】
クランプベース210は、3つのサブ爪体201をそれぞれ着脱自在に保持するとともに3つのサブ爪体201をそれぞれ保持しない場合に被把持物WKの軸方向の位置を規定するための部品であり、金属材料を円筒状に形成して構成されている。このクランプベース210における軸方向における一方(図示左側)の端部は、クランプベース受け109の端面に突き当てられる部分であり、中央部にクランプベース受け109の端面に嵌合する円環状に張り出した嵌合部210aが形成されている。一方、クランプベース210における軸方向における他方(図示右側)の端部は、サブ爪体201が突き当てられて取り付けられるサブコレット受け部210bが形成されている。
【0044】
この場合、サブコレット受け部210bには、貫通押付け体205の小径部がねじ込まれる雌ネジが形成されている。また、このクランプベース210には、中心部に軸方向に沿ってワーク収容部211が形成されるとともにこのワーク収容部211に面して位置決めピン212が設けられている。ワーク収容部211は、被把持物WKの一部を収容する部分であり、サブコレット受け部210bに開口する有底穴で構成されている。
【0045】
位置決めピン212は、サブコレットチャック200によって把持される被把持物WKの位置を規定するための部品であり、金属材または樹脂材を先端の尖った細い棒状に形成して構成されている。この位置決めピン212は、先端部がワーク収容部211内に突出するようにクランプベース210の中心部に形成された貫通孔内に軸方向に摺動自在な状態で保持されている。この場合、位置決めピン212は、位置決めピン212の後端部に設けられたスプリング213によって弾性的にワーク収容部211側に押圧されている。
【0046】
スプリング213は、コイルスプリングで構成されており、一方(図示左側)の端部が嵌合部210a内にボルトを介して取り付けられる底板214内に嵌合するとともに、他方(図示右側)の端部が位置決めピン212の後端部内に嵌合している。このクランプベース210は、クランプベース210を貫通するボルト215によってクランプベース受け109に着脱自在な状態で取り付けられている。
【0047】
(サブコレットチャック200の作動)
次に、上記のように構成したサブコレットチャック200の作動について説明する。このサブコレットチャック200は、被把持物WKに対して切削加工などの機械加工を行う工作機械(例えば、旋盤)の主軸(図示せず)に取り付けられる。この場合、サブコレットチャック200は、工作機械に取り付けられたコレットチャック100に対して取り付けられる。
【0048】
まず、作業者は、3つのサブ爪体201と1つのクランプベース210からなる一組のサブコレットチャック200を用意する。この場合、3つのサブ爪体201は、蓋体203aおよび開放弾性体204がそれぞれ取り付けられていない状態で用意される。また、クランプベース210は、位置決めピン212が取り付けられた状態で用意される。
【0049】
次に、作業者は、クランプベース210をクランプベース受け109に取り付ける。具体的には、作業者は、クランプベース210における嵌合部210aをクランプベース受け109に嵌合させた後、ボルト215を用いてクランプベース210をクランプベース受け109に取り付ける。次に、作業者は、3つのサブ爪体201をクランプベース210にそれぞれ取り付ける。
【0050】
具体的には、作業者は、3つのサブ爪体201をそれぞれ貫通押付け体205を介してクランプベース210のサブコレット受け部210b上に円環状に配置して取り付ける。この場合、各貫通押付け体205は、大径部205bの外側に押圧弾性体206が取り付けられている。この場合、各サブ爪体201は、各サブ爪体201間の隙間が各爪部104間の隙間に一致させて両隙間を径方向に繋がるようにクランプベース210に取り付けることで切削屑の排出性を向上させることができる。次に、作業者は、互いに隣り合う2つのサブ爪体201間において互いに対向し合う開放弾性体収容部203内に開放弾性体204を配置して各開放弾性体収容部203を蓋体203aで覆う。
【0051】
これにより、3つのサブ爪体201は、3つの開放弾性体204によって互いに離隔する方向に押圧される。この場合、3つの各サブ爪体201は、貫通押付け体205によってクランプベース210に弾性的に取り付けられているとともに、爪体貫通孔202と貫通押付け体205との間には変位代Sが形成されている。このため、3つの各サブ爪体201は、開放弾性体204の弾性力によって互いに離隔する方向にクランプベース210のサブコレット受け部210b上を摺動する。すなわち、サブコレットチャック200は、3つのサブ爪体201の各把持部201aによって囲まれた円形の領域が最も拡大するように3つの各サブ爪体201が径方向外側に変位する。
【0052】
次に、作業者は、被把持物WKを用意してサブコレットチャック200に把持させる。具体的には、作業者は、被把持物WKにおける把持させる部分を円環状に配置された3つのサブ爪体201の中心部に挿し込んでワーク収容部211内に位置させる。この場合、作業者は、被把持物WKに位置決め用のセンター穴が形成されている場合にはワーク収容部211内に突出する位置決めピン212にこのセンター穴を挿し込むことで被把持物WKについてサブコレットチャック200の径方向における位置を規制することができる。この場合、作業者は、位置決めピン212のスプリング213の弾性力に抗しながら被把持物WKを押し込んでサブ爪体201のワーク面201dに突き当てる。なお、被把持物WKは、センター穴が形成されていなくてもよいことは当然である。
【0053】
次に、作業者は、コレットチャック100における爪部104を閉じさせる。具体的には、作業者は、工作機械を操作してドローバーDBを図示左側に引かせる。これにより、コレットチャック100は、コレットガイド105のガイド側摺動面105a上を6つの爪部104の各外周面104aが摺動することで各爪部104が径方向の内側に傾倒して3つのサブ爪体201をそれぞれ径方向内側に押圧する。
【0054】
この場合、3つのサブ爪体201は、貫通押付け体205によってクランプベース210に弾性的に取り付けられているとともに、爪体貫通孔202と貫通押付け体205との間には変位代Sが形成されている。このため、3つの各サブ爪体201は、開放弾性体204の弾性力に抗しながら互いに接近する方向にクランプベース210のサブコレット受け部210b上を摺動する。
【0055】
この場合、各サブ爪体201は、クランプベース210のサブコレット受け部210b上に沿って変位するため、サブ爪体201全体が径方向に対して平行移動する。すなわち、爪体貫通孔202、貫通押付け体205および押圧弾性体206が本発明に係る径方向スライド機構に相当する。これにより、サブコレットチャック200は、3つの各サブ爪体201の把持部201aの全体で被把持物WKの外周部を把持する。
【0056】
次に、作業者は、被把持物WKに対して機械加工を行う。具体的には、作業者は、工作機械を操作することによって主軸を回転させることでコレットチャック100およびサブコレットチャック200を介して被把持物WKを回転させるとともに工作機械が備える刃物(図示せず)を被把持物WKに接触させて切削加工などの機械加工を行う。この機械加工において被把持物WKは、サブコレットチャック200によって強固に把持されている。
【0057】
次に、作業者は、被把持物WKの機械加工を終えた場合には、工作機械を操作することによりドローバーDBを押し出させて図示右側に変位させる。これにより、コレットチャック100は、コレット本体101の図示右側に変位することで6つの爪部104が径方向外側に広がる。この場合、サブコレットチャック200における3つの各サブ爪体201は、コレットチャック100の爪部104による押圧力が弱まるため開放弾性体204の弾性力によって径方向外側に変位する。すなわち、サブコレットチャック200は、コレットチャック100の爪部104の開口とともにサブ爪体201が開口する。
【0058】
これにより、作業者は、3つのサブ爪体201によって把持された被把持物WKをサブコレットチャック200から取り外すことができる。この場合、作業者は、被把持物WKが位置決めピン212のスプリング213の弾性力によって3つのサブ爪体201の内側から抜き易くなる。これにより、作業者は、被把持物WKの加工を終えることができる。そして、作業者は、別の被把持物WKについて機械加工を行う場合には、前記と同様にして新たな被把持物WKをサブコレットチャック200に把持させることができる。
【0059】
また、作業者は、サブ爪体201を取り外した状態で被把持物WKを加工することもできる。具体的には、作業者は、貫通押付け体205をクランプベース210から取り外すことでサブ爪体201をクランプベース210から取り外す。次いで、作業者は、
図4に示すように、被把持物WK2の一部をクランプベース210のワーク収容部211内に挿し込んで位置決めピン212を嵌合させた状態で工作機械を操作してドローバーDBを図示左側に引かせる。
【0060】
これにより、コレットチャック100は、コレットガイド105のガイド側摺動面105a上を6つの爪部104の各外周面104aが摺動することで各爪部104が径方向の内側に傾倒して被把持物WKの外周部を把持する。これにより、作業者は、工作機械を作動させることで被把持物WKに対して機械加工を行うことができる。すなわち、サブコレットチャック200は、把持部分の大きさの異なる被把持物WK2を把持することができる。また、作業者は、クランプベース210をクランプベース受け109から取り外した状態でも被把持物WK2を把持させることができる。
【0061】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、サブコレットチャック200は、コレットチャック100の爪部104における被把持物WKを把持する側に複数のサブ爪体201が径方向スライド機構を介してコレットチャック100の径方向に往復変位可能に設けられることで爪部104が傾倒した際にサブ爪体201が径方向に平行移動するため被把持物WKを面接触で把持することができ把持部分に押圧痕などの損傷を抑えることができる。
【0062】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、変形例の説明においては、新たに符号を付さない上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付している。
【0063】
例えば、上記実施形態においては、コレットチャック100は、6つの爪部104を備えて構成した。しかし、コレットチャック100は、周方向に少なくとも2つ以上に分割された爪部104を備えて構成されていればよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、サブコレットチャック200は、3つのサブ爪体201を備えて構成した。しかし、サブコレットチャック200は、少なくとも2つ以上のサブ爪体201を備えて構成されていればよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、サブコレットチャック200は、開放弾性体204によって各サブ爪体201が被把持物WKを開放する側に弾性的に変位するように構成した。すなわち、開放弾性体204が本発明に係る開放機構に相当する。しかし、サブコレットチャック200は、開放弾性体204を省略して構成することもできる。
【0066】
また、上記実施形態においては、爪体貫通孔202、貫通押付け体205および押圧弾性体206によって本発明に係る径方向スライド機構を構成した。しかし、本発明に係る径方向スライド機構は、サブ爪体201を平行方向に往復変位させることができるように構成されていればよい。したがって、径方向スライド機構は、例えば、押圧弾性体206を省略して爪体貫通孔202と貫通押付け体205とで構成することもできる。この場合、貫通押付け体205は、サブ爪体201がクランプベース210に対して変位を許容する締付力でクランプベース210に締め付けられる。
【0067】
また、径方向スライド機構は、爪部104とサブ爪体201とをエラストマまたはゴム材などの弾性体を介して互いに固着するとともにサブ爪体201のベース面201cがクランプベース210のサブコレット受け部210b上を摺動するように構成することもできる。
【0068】
また、上記実施形態においては、サブ爪体201の把持部201aは、凹状の円弧状に形成した。しかし、サブ爪体201は、被把持物WKを把持することができる形状に形成されていればよい。したがって、サブ爪体201の把持部201aは、凸状の円弧状のほか、三角形などの多角形状のほか、非幾何学形状(異形形状)であってもよい。また、把持部201aは、サブ爪体201と一体的に構成せず、別体で構成して種々の形状の把持部201aを付け替えられるように構成することもできる。
【0069】
また、上記実施形態においては、押圧弾性体206は、コイルスプリングで構成した。しかし、押圧弾性体206は、サブ爪体201をクランプベース210に対して弾性的に押し付けるように構成されていればよい。したがって、押圧弾性体206は、例えば、弾性を有する筒状のエラストマまたはゴム材で構成することもできる。
【0070】
また、上記実施形態においては、サブコレットチャック200は、位置決めピン212を備えて構成した。しかし、サブコレットチャック200は、位置決めピン212を省略して構成することもできる。
【0071】
また、上記実施形態においては、サブコレットチャック200は、サブ爪体201が被把持物WKの外周部を掴むように構成した。しかし、サブコレットチャック200は、サブ爪体201が被把持物WKの孔部について径方向内側から外側に向かって掴むように構成することもできる。この場合、サブコレットチャック200は、クランプベース210を爪部104の外側に配置することができる。また、この場合、サブコレットチャック200は、開放機構は互いに隣接し合うサブ爪体201同士を互いに引っ張り合うコイルスプリングで構成することができる。
【0072】
また、上記実施形態においては、サブコレットチャック200を装着する工作機械として旋盤を想定した。しかし、サブコレットチャック200は、フライス盤、マシニングセンタ、研削盤、ボール盤またはホブ盤など旋盤以外の各種工作機械に装着できるほか、被把持物WKに対して検査や測定を行う検査装置および測定装置に装着して使用することもできる。また、サブコレットチャック200は、工作機械以外の被把持物WKを把持する装置または設備に装着することもできる。例えば、サブコレットチャック200は、多関節ロボット(図示せず)において被把持物WKを把持するハンドに装着することもできる。
【符号の説明】
【0073】
WK,WK2…被把持物、DB…ドローバー、S…変位代、
100…コレットチャック、
101…コレット本体、102…基部、103…傾倒部、104…爪部、104a…外周面、104b…内周面、105…コレットガイド、105a…ガイド側摺動面、106…外筒、107…ホルダナット、107a…張出部、108…ドローバー連結具、109…クランプベース受け、109a…フランジ部、
200…サブコレットチャック、
201…サブ爪体、201a…把持部、201b…受圧部、201c…ベース面、201d…ワーク面、202…爪体貫通孔、202a…小径部、202b…大径部、202c…中間底部、203…開放弾性体収容部、203a…蓋体、204…開放弾性体、205…貫通押付け体、205a…小径部、205b…大径部、205c…頭部、206…押圧弾性体、
210…クランプベース、210a…嵌合部、210b…サブコレット受け部、211…ワーク収容部、212…位置決めピン、213…スプリング、214…底板、215…ボルト。