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特開2022-123333スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤ
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  • 特開-スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123333
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20220817BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020571
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】藤森 弘章
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
【Fターム(参考)】
3B153AA15
3B153AA32
3B153BB13
3B153CC52
3B153FF16
3B153GG05
3B153GG07
3D131AA39
3D131AA46
3D131AA49
3D131BA18
3D131BB03
(57)【要約】
【課題】 ゴム浸透性を改善することを可能にしたスチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】 複数本の補強コードを含む補強層としてカーカス層4を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、カーカス層4の補強コードとして、1本のフィラメント11からなる第1層L1と5本のフィラメント12からなる第2層L2と10本のフィラメント13からなる第3層L3とを含む1+5+10構造を有するスチールコード10が使用され、第1層L1、第2層L2及び第3層L3は1回の撚り工程で撚り合わせることで形成され、第3層L3の5つの頂点位置P1の相互間に規定される5つの非頂点位置P2のうち少なくとも1つの非頂点位置P2にあるフィラメント13Bに2次元の波付けが施されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本のフィラメントからなる第1層と5本のフィラメントからなる第2層と10本のフィラメントからなる第3層とを含む1+5+10構造を有するスチールコードにおいて、前記第1層、前記第2層及び前記第3層は1回の撚り工程で撚り合わせることで形成され、前記第3層の5つの頂点位置の相互間に規定される5つの非頂点位置のうち少なくとも1つの非頂点位置にあるフィラメントに2次元の波付けが施されていることを特徴とするスチールコード。
【請求項2】
前記第3層のフィラメントの素線径Dsと波付け高さDhとが1.07≦Dh/Ds≦2.0の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
前記5つの非頂点位置にある全てのフィラメントに2次元の波付けが施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスチールコード。
【請求項4】
前記波付けが施されたフィラメントはその振幅方向がコード径方向と一致するように配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスチールコード。
【請求項5】
複数本の補強コードを含む補強層を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、前記補強コードとして、1本のフィラメントからなる第1層と5本のフィラメントからなる第2層と10本のフィラメントからなる第3層とを含む1+5+10構造を有するスチールコードが使用され、前記第1層、前記第2層及び前記第3層は1回の撚り工程で撚り合わせることで形成され、前記第3層の5つの頂点位置の相互間に規定される5つの非頂点位置のうち少なくとも1つの非頂点位置にあるフィラメントに2次元の波付けが施されていることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【請求項6】
前記第3層のフィラメントの素線径Dsと波付け高さDhとが1.07≦Dh/Ds≦2.0の関係を満足することを特徴とする請求項5に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項7】
前記5つの非頂点位置にある全てのフィラメントに2次元の波付けが施されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項8】
前記波付けが施されたフィラメントはその振幅方向がコード径方向と一致するように配置されていることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1+5+10構造を有するスチールコード及び該スチールコードをカーカス層に代表される補強層の補強コードとして用いた空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、ゴム浸透性を改善することを可能にしたスチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック・バス用の空気入りラジアルタイヤにおいて、カーカス層の補強コードとして、1本のフィラメントからなる第1層と5本のフィラメントからなる第2層と10本のフィラメントからなる第3層とを含む1+5+10構造を有するスチールコードが一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述のような1+5+10構造を有するスチールコードは、3層を1回で撚ることができるため生産コストを抑えられるという利点がある一方で、フィラメント間隔が詰まるためコード内部へのゴム浸透性が悪いという欠点がある。そのため、コード内部に水分が滲み込むと、その水分がスチールコードの長手方向に沿って伝播し、広い範囲で錆が成長し、その結果として、空気入りラジアルタイヤの耐久性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-280288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ゴム浸透性を改善することを可能にしたスチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のスチールコードは、1本のフィラメントからなる第1層と5本のフィラメントからなる第2層と10本のフィラメントからなる第3層とを含む1+5+10構造を有するスチールコードにおいて、前記第1層、前記第2層及び前記第3層は1回の撚り工程で撚り合わせることで形成され、前記第3層の5つの頂点位置の相互間に規定される5つの非頂点位置のうち少なくとも1つの非頂点位置にあるフィラメントに2次元の波付けが施されていることを特徴とするものである。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、複数本の補強コードを含む補強層を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、前記補強コードとして、1本のフィラメントからなる第1層と5本のフィラメントからなる第2層と10本のフィラメントからなる第3層とを含む1+5+10構造を有するスチールコードが使用され、前記第1層、前記第2層及び前記第3層は1回の撚り工程で撚り合わせることで形成され、前記第3層の5つの頂点位置の相互間に規定される5つの非頂点位置のうち少なくとも1つの非頂点位置にあるフィラメントに2次元の波付けが施されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は、生産コストが低い1+5+10構造を有するスチールコードについて鋭意研究した結果、第3層の非頂点位置にあるフィラメントに2次元の波付けを施すことにより、ゴム浸透性が効果的に改善されることを知見し、本発明に至ったのである。
【0009】
即ち、本発明では、空気入りラジアルタイヤの補強層の補強コードとして、1本のフィラメントからなる第1層と5本のフィラメントからなる第2層と10本のフィラメントからなる第3層とを含む1+5+10構造を有するスチールコードを採用するにあたって、第1層、第2層及び第3層は1回の撚り工程で撚り合わせることで形成され、第3層の5つの頂点位置の相互間に規定される5つの非頂点位置のうち少なくとも1つの非頂点位置にあるフィラメントに2次元の波付けが施されていることにより、フィラメント間に十分な隙間が形成されるので、コード内部へのゴム浸透性を改善し、空気入りラジアルタイヤの耐久性を改善することができる。
【0010】
上記スチールコードにおいて、第3層のフィラメントの素線径Dsと波付け高さDhとが1.07≦Dh/Ds≦2.0の関係を満足することが好ましい。このように波付け高さDhを規定することにより、コード内部へのゴム浸透性を改善しつつ、コード端末のバラケを効果的に防止することができる。
【0011】
上記スチールコードにおいて、5つの非頂点位置にある全てのフィラメントに2次元の波付けが施されていることが好ましい。これにより、コード内部へのゴム浸透性を効果的に改善することができる。
【0012】
上記スチールコードにおいて、波付けが施されたフィラメントはその振幅方向がコード径方向と一致するように配置されていることが好ましい。これにより、スチールコードの形状が安定化し、コード端末のバラケを効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明において、上記スチールコードが使用される空気入りラジアルタイヤの補強層は特に限定されるものではなく、例えば、カーカス層、ベルト層、サイド補強層を挙げることができる。しかしながら、上記スチールコードの特性を考慮すると、該スチールコードが使用される補強層はカーカス層であることが好ましい。
【0014】
本発明は、トラック・バス用の空気入りラジアルタイヤに適用することが好適であるが、上述のようなスチールコードが補強層の補強コードとして使用される限りにおいて、上記以外の用途の空気入りラジアルタイヤにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す子午線半断面図である。
図2】本発明で使用される1+5+10構造を有するスチールコードの一例を示す断面図である。
図3】本発明で使用される1+5+10構造を有するスチールコードにおいて2次元の波付けが施された第3層のフィラメントを抽出して示す断面図である。
図4】本発明で使用される1+5+10構造を有するスチールコードにおいて2次元の波付けが施された第3層のフィラメントを抽出して示す側面図である。
図5】従来の1+5+10構造を有するスチールコードを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含むカーカス層4が装架され、そのカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。
【0017】
また、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層6が埋設されている。これらベルト層6はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層6において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば20°~60°の範囲に設定されている。
【0018】
上記空気入りラジアルタイヤにおいて、カーカス層4の補強コードとして、後述する1+5+10構造を有するスチールコードが使用されている。
【0019】
図2は本発明で使用される1+5+10構造を有するスチールコードを示し、図3及び図4はそのスチールコードにおいて2次元の波付けが施された第3層のフィラメントを抽出して示すものである。
【0020】
図2に示すように、スチールコード10は、1本のフィラメント11からなる第1層L1と5本のフィラメント12からなる第2層L2と10本のフィラメント13からなる第3層L3とを含む1+5+10構造を有している。この1+5+10構造を有するスチールコード10は、1本のフィラメント11からなる第1層L1と5本のフィラメント12からなる第2層L2と10本のフィラメント13からなる第3層L3とを束ねた状態で、これら3つの層L1~L3を1回で撚り合わせることで形成される。そのため、スチールコード10の生産コストを抑えることができるという利点がある。
【0021】
スチールコード10において、第3層L3には5つの頂点位置P1が存在する。頂点位置P1とは、第1層L1のフィラメント11と第2層L2のフィラメント12と第3層L3のフィラメント13がコード径方向に沿って直列に並ぶ位置である。そして、5つの頂点位置P1の相互間には5つの非頂点位置P2が規定される。第3層L3において、頂点位置P1にあるフィラメント13をフィラメント13Aとし、非頂点位置P2にあるフィラメント13をフィラメント13Bとする。これら5つの非頂点位置P2のうちの少なくとも1つの非頂点位置P2にあるフィラメント13B、より好ましくは、5つの非頂点位置P2にある全てのフィラメント13Bには、図2図4に示すように、2次元の波付けが施されている。これとは対照的に、5つの頂点位置P1にあるフィラメント13Aには、2次元の波付けが施されていない。
【0022】
上述した空気入りラジアルタイヤでは、カーカス層4の補強コードとして、1本のフィラメント11からなる第1層L1と5本のフィラメント12からなる第2層L2と10本のフィラメント13からなる第3層L3とを含む1+5+10構造を有するスチールコード10を採用するにあたって、第3層L3の5つの頂点位置P1の相互間に規定される5つの非頂点位置P2のうち少なくとも1つの非頂点位置P2にあるフィラメント13Bに2次元の波付けが施されているので、フィラメント12,13間に十分な隙間が形成される。これにより、スチールコード10の内部へのゴム浸透性を改善し、空気入りラジアルタイヤの耐久性を改善することができる。
【0023】
図5は従来の1+5+10構造を有するスチールコードを示すものである。図5において、スチールコード20は、1本のフィラメント21からなる第1層L1と5本のフィラメント22からなる第2層L2と10本のフィラメント23からなる第3層L3とを含む1+5+10構造を有している。スチールコード20において、5つの頂点位置P1にあるフィラメント23A及び5つの非頂点位置P2にあるフィラメント23Bには、2次元の波付けが施されていない。そのため、非頂点位置P2にあるフィラメント23Bとその両側に位置するフィラメント23A,23Aが直線的に並んでおり、スチールコード20の断面形状が概ね五角形になっている。この場合、第3層L3において非頂点位置P2にあるフィラメント23Bが第2層L2のフィラメント22,22間の隙間を閉塞するように配置されるためゴム浸透性が悪い。
【0024】
これに対して、上述したスチールコード10では、第3層L3において非頂点位置P2にあるフィラメント13Bに2次元の波付けが施されているので、ゴム浸透性の改善効果が極めて高いのである。これにより、生産コストが低いという1+5+10構造を有するスチールコード10の利点を活かしながら、そのゴム浸透性を改善することが可能になる。なお、1+5+10構造を有するスチールコード10では、第3層L3において頂点位置P1にあるフィラメント13Aに2次元の波付けが施されていても、ゴム浸透性の改善効果は殆ど得られない。
【0025】
上記スチールコード10において、第3層L3のフィラメント13(13B)の素線径Dsと波付け高さDhとは1.07≦Dh/Ds≦2.0の関係を満足していると良い。このように波付け高さDhを規定することにより、スチールコード10の内部へのゴム浸透性を改善しつつ、スチールコード10のバラケを防止することができる。ここで、Dh/Ds<1.07であるとゴム浸透性の改善効果が低下し、Dh/Ds>2.0であるとコード形状が不安定になり、コード端末のバラケを生じ易くなる。
【0026】
上記スチールコード10において、第1層L1を構成するフィラメント11の素線径Dc、第2層L2を構成するフィラメント12の素線径Dm及び第3層L3を構成するフィラメント13の素線径Dsは、同一であっても良く、或いは、互いに異なっていても良いが、その素線径Dc,Dm,Dsが例えば0.15mm~0.25mmの範囲に設定されることが好ましい。
【0027】
特に、第1層L1のフィラメント11の素線径Dcと第2層L2のフィラメント12の素線径Dmと第3層L3のフィラメント13の素線径DsとがDc<Dm<Dsの関係を満足していると良い。このように第1層L1のフィラメント11の素線径Dc、第2層L2のフィラメント12の素線径Dm及び第3層L3のフィラメント13の素線径Dsをコード径方向外側に向かって順次大きくするより、1+5+10構造を有するスチールコード10の形状が安定化し、コード端末のバラケを効果的に抑制することができる。
【0028】
上述したスチールコード10において、図2に示すように、波付けが施されたフィラメント13Bはその振幅方向がコード径方向と一致するように配置されていると良い。これにより、スチールコード10の形状が安定化し、コード端末のバラケを効果的に抑制することができる。つまり、波付けが施されたフィラメント13Bの振幅方向をコード径方向と一致させることにより、非頂点位置P2にあるフィラメント13Bが頂点位置P1にあるフィラメント13Aを変位させることなく、図示のような安定した配置構造を実現することができる。
【実施例0029】
タイヤサイズ11R22.5の空気入りラジアルタイヤのカーカス層を構成する補強コードとして、従来例、比較例1及び実施例1~6のスチールコードを製作した。
【0030】
即ち、従来例、比較例1及び実施例1~6において、カーカス層の補強コードとして、1本のフィラメントからなる第1層と5本のフィラメントからなる第2層と10本のフィラメントからなる第3層とを含む1+5+10構造を有するスチールコードを使用した。そして、第3層において波付けが施されたフィラメントの本数(波付け本数)、第3層のフィラメントの素線径と波付け高さとの比Dh/Dsを表1のように設定した。なお、第1層のフィラメントの素線径Dcは0.15mmとし、第2層のフィラメントの素線径Dmは0.20mmとし、第3層のフィラメントの素線径Dsは0.22mmとした。
【0031】
そして、下記の評価方法により、スチールコードのゴム付き率、端末バラケ、耐疲労性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0032】
スチールコードのゴム付き率:
カーカス層に使用されるスチールコードをゴム中に埋設して加硫することで試験片を作製した後、スチールコードの切断端が露出するように試験片を切断し、その試験片のスチールコードの切断端を濃度25%、温度25℃の塩水に浸して14日間放置した。その後、試験片からスチールコードを引き抜き、コード表面におけるゴム付き率(%)を測定した。ゴム付き率が高いほどコード内部へのゴム浸透性が良好であることを意味する。
【0033】
スチールコードの端末バラケ:
カーカス層に使用されるスチールコードを切り口から70cm離れた位置で把持しながらペンチで切断し、その切断端におけるフィラメントのバラケを観察した。評価結果は、切断後にバラケを生じない場合を「A」にて示し、バラケの長さが50mm以下である場合を「B」にて示し、バラケの長さが50mm超である場合を「C」にて示した。
【0034】
スチールコードの耐疲労性:
カーカス層に使用されるスチールコードをゴム中に埋設して加硫することで試験片を作製した後、その試験片をローラー径が35mmである3点ローラー式の回転曲げ疲労試験機に装着し、コード張力180Nの条件で試験片中のスチールコードが破断するまで曲げ回数の対数値を記録した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどスチールコードの耐疲労性が優れていることを意味する。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、実施例1~6は、従来例との対比において、カーカス層を構成するスチールコードのゴム付き率が高く、即ち、コード内部へのゴム浸透性が良好であった。但し、実施例3は、第3層のフィラメントの素線径と波付け高さとの比Dh/Dsが小さいため、ゴム浸透性の改善効果が少なかった。実施例6は、第3層のフィラメントの素線径と波付け高さとの比Dh/Dsが大きいため、ゴム浸透性の改善効果が大きいものの、スチールコードの端末バラケが生じ易いものであった。
【0037】
一方、比較例1は、第3層の頂点位置にあるフィラメントに波付けが施されているものの、第3層の非頂点位置にあるフィラメントには波付けが施されていないため、コード内部へのゴム浸透性が不十分であった。
【符号の説明】
【0038】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ベルト層
10 スチールコード
11 第1層のフィラメント
12 第2層のフィラメント
13 第3層のフィラメント
13A 頂点位置にあるフィラメント
13B 非頂点位置にあるフィラメント
図1
図2
図3
図4
図5