IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シロキ工業株式会社の特許一覧 ▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図1
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図2
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図3
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図4
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図5
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図6
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図7
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図8
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図9
  • 特開-車両用可動部材の駆動装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123336
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】車両用可動部材の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/06 20060101AFI20220817BHJP
   A47C 7/50 20060101ALI20220817BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20220817BHJP
   B60N 2/75 20180101ALI20220817BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220817BHJP
   F16D 43/02 20060101ALI20220817BHJP
   F16D 41/02 20060101ALI20220817BHJP
   F16D 41/20 20060101ALI20220817BHJP
   F16D 49/04 20060101ALI20220817BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20220817BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20220817BHJP
【FI】
B60N3/06
A47C7/50 A
A47C7/54 B
B60N2/75
B60N2/90
F16D43/02
F16D41/02 B
F16D41/20 A
F16D49/04
F16D65/16
F16D121:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020580
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】逸見 敏克
(72)【発明者】
【氏名】中川 勝則
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
3J058
3J068
【Fターム(参考)】
3B087DC02
3B087DE10
3B088JA02
3B088JB02
3J058AA03
3J058AA06
3J058AA13
3J058AA19
3J058AA23
3J058AA30
3J058AA38
3J058BA12
3J058CA34
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC76
3J068AA02
3J068AA07
3J068BB04
3J068GA03
(57)【要約】
【課題】操作性に優れる車両用可動部材の駆動装置を提供する。
【解決手段】車両用可動部材の駆動装置(20、40)は、第1の方向(P1、P11)と第2の方向(P2、P12)に動作可能な可動部材(13、14)と、回転操作可能な操作部材(15、16)と、操作部材を回転操作したときには可動部材を第1の方向と第2の方向に動作させ、操作部材を操作しないときには、第1の方向への可動部材の動作を規制し、第2の方向への可動部材の動作を許すブレーキ機構(30)とを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と第2の方向に動作可能な可動部材と、
回転操作可能な操作部材と、
前記操作部材を回転操作したときには前記可動部材を前記第1の方向と前記第2の方向に動作させ、前記操作部材を操作しないときには、前記第1の方向への前記可動部材の動作を規制し、前記第2の方向への前記可動部材の動作を許すブレーキ機構と、
を備えることを特徴とする車両用可動部材の駆動装置。
【請求項2】
前記ブレーキ機構は、
前記操作部材の回転に伴って回転する駆動軸と、
前記駆動軸と同軸上に設けられ、前記可動部材の動作に伴って回転するストッパ軸と、
収容部材に収容されて前記収容部材と摩擦接触し、前記駆動軸から回転方向の力を受けたときに縮径して前記駆動軸から前記ストッパ軸への回転伝達を可能にさせ、前記ストッパ軸から回転方向の力を受けたときに拡径して前記ストッパ軸及び前記駆動軸の回転を規制するブレーキスプリングと、
を有し、
前記ブレーキスプリングは一対の端部を備え、
前記駆動軸は、一方向と逆方向に回転したときにそれぞれ前記一対の端部を接近させる方向に押圧して前記ブレーキスプリングを縮径させ、
前記ストッパ軸は、前記可動部材の前記第1の方向への動作に対応する一方向に回転したときには前記一対の端部の一方を他方から離間させる方向に押圧して前記ブレーキスプリングを拡径させ、前記可動部材の前記第2の方向への動作に対応する逆方向に回転したときには前記一対の端部に当接せずに前記駆動軸に回転を伝達することを特徴とする請求項1に記載の車両用可動部材の駆動装置。
【請求項3】
前記ブレーキスプリングの前記一対の端部は、前記駆動軸の軸方向に位置を異ならせて設けられ、
前記ストッパ軸は、前記駆動軸の軸方向で前記一対の端部の一方と重なり他方とは重ならない長さの当接部を有し、前記一方向に回転したときに前記当接部によって前記一対の端部の一方を押圧することを特徴とする請求項2に記載の車両用可動部材の駆動装置。
【請求項4】
前記可動部材は、車両用シートのオットマン又はアームレストであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用可動部材の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用可動部材の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートに付随するオットマン装置において、オットマンの展開や格納をハンドル等の操作部材の操作で行うものが知られている。特許文献1のオットマン装置では、オットマン本体を支持するリンク機構を構成するリンクの一部にセクタギヤが形成され、セクタギヤと噛合する回転伝達機構に操作ハンドルが連結されている。そして、回転伝達機構が、操作ハンドル側からの回転伝達を許容する一方で、セクタギヤからの回転伝達を阻止することにより、ハンドル操作以外の入力で不意にオットマン本体が動き出すのを阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-240350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オットマンを使用する際に、ハンドル等の操作部材の操作によらずに、オットマンへの直接的な操作によって素早く使用状態にさせたいという要求がある。しかし、オットマンの格納と展開の両方の動作入力をハンドル操作に限定している特許文献1の構成では、上記の要求に応えることが難しいという課題があった。
【0005】
このような課題は、オットマンに限らず、他の車両用可動部材においても存在する。例えば、車両用シートの肘掛け部であるアームレストに関して、操作部材の操作による動作に加えて、アームレストへの直接的な操作によって使用位置へ迅速に展開させることができると、使い勝手が向上する。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、操作性に優れる車両用可動部材の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である車両用可動部材の駆動装置は、第1の方向と第2の方向に動作可能な可動部材と、回転操作可能な操作部材と、前記操作部材を回転操作したときには前記可動部材を前記第1の方向と前記第2の方向に動作させ、前記操作部材を操作しないときには、前記第1の方向への前記可動部材の動作を規制し、前記第2の方向への前記可動部材の動作を許すブレーキ機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記ブレーキ機構は、前記操作部材の回転に伴って回転する駆動軸と、前記駆動軸と同軸上に設けられ、前記可動部材の動作に伴って回転するストッパ軸と、収容部材に収容されて前記収容部材と摩擦接触し、前記駆動軸から回転方向の力を受けたときに縮径して前記駆動軸から前記ストッパ軸への回転伝達を可能にさせ、前記ストッパ軸から回転方向の力を受けたときに拡径して前記ストッパ軸及び前記駆動軸の回転を規制するブレーキスプリングと、を有する。前記ブレーキスプリングは一対の端部を備える。前記駆動軸は、一方向と逆方向に回転したときにそれぞれ前記一対の端部を接近させる方向に押圧して前記ブレーキスプリングを縮径させる。前記ストッパ軸は、前記可動部材の前記第1の方向への動作に対応する一方向に回転したときには、前記一対の端部の一方を他方から離間させる方向に押圧して前記ブレーキスプリングを拡径させ、前記可動部材の前記第2の方向への動作に対応する逆方向に回転したときには、前記一対の端部に当接せずに前記駆動軸に回転を伝達する。
【0009】
前記ブレーキスプリングの前記一対の端部は、前記駆動軸の軸方向に位置を異ならせて設けられ、前記ストッパ軸は、前記駆動軸の軸方向で前記一対の端部の一方と重なり他方とは重ならない長さの当接部を有し、前記一方向に回転したときに前記当接部によって前記一対の端部の一方を押圧する。
【0010】
前記可動部材は、車両用シートのオットマン又はアームレストであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用可動部材の駆動装置によれば、第2の方向(または、非使用位置側から使用位置側)への可動部材の動作を、操作部材を介した操作だけでなく、可動部材への直接的な操作でも可能にしたことで、操作性の向上が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両用シートの概略構成を示す側面図である。
図2】車両用シートに設けたオットマンの駆動装置の一部を示す断面図である。
図3】オットマンの駆動装置を構成するブレーキ機構の分解状態を示す側面図である。
図4】ブレーキ機構を軸方向に沿って見た図である。
図5】操作ハンドルをオットマンの格納方向に操作した場合のブレーキ機構を示す図である。
図6】操作ハンドルをオットマンの展開方向に操作した場合のブレーキ機構を示す図である。
図7】オットマンの格納方向に回転させる力がストッパ軸に入力された場合のブレーキ機構を示す図である。
図8】オットマンの展開方向に回転させる力がストッパ軸に入力された場合のブレーキ機構を示す図である。
図9】比較例のブレーキ機構において、オットマンの格納方向に回転させる力がストッパ軸に入力された場合を示す図である。
図10】比較例のブレーキ機構において、オットマンの展開方向に回転させる力がストッパ軸に入力された場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。図1は自動車の車内に設置される車両用シート10を側方から見たものである。以下の説明における前後、左右、上下の各方向は、車両用シート10が設置される自動車を基準とした方向を意味する。左右方向は車幅方向とも表現される。
【0014】
車両用シート10は、座面部であるシートクッション11と、背もたれ部であるシートバック12と、脚乗せ用の可動部材であるオットマン13と、肘掛け用の可動部材であるアームレスト14とを備えている。シートクッション11は、図示を省略するシート支持構造によって、車両の床面から所定の高さに支持されている。シート支持構造には、車両用シート10を前後方向に位置調整可能にするシートトラック等が含まれてもよい。シートバック12は、シートクッション11の後端部付近に対して前後方向に傾動可能に支持されている。
【0015】
オットマン13は、シートクッション11の前側に可動に支持されており、図1に示す格納位置13Aと展開位置13Bとの間で動作(傾動)する。格納位置13Aはオットマン13を使用しない非使用位置であり、展開位置13Bはオットマン13の使用位置である。格納位置13Aでは、オットマン13は先端を下方に向けてシートクッション11の前部に格納される。展開位置13Bでは、オットマン13は先端を前方に向けてシートクッション11に連続する形状になる。展開位置13B側から格納位置13A側に向かうオットマン13の動作方向を格納方向P1(第1の方向)とし、格納位置13A側から展開位置13B側に向かうオットマン13の動作方向を展開方向P2(第2の方向)とする。
【0016】
シートクッション11に対してオットマン13を可動に支持する構造については、後述するオットマン駆動装置20(図2参照)によってオットマン13の動作を制御できるものであれば良く、その形態は限定されない。例えば、オットマン13のうちシートクッション11に近い後端付近を、車幅方向に向く一本の軸を中心として回転可能に支持した単軸構造を用いることができる。あるいは、複数のリンクからなるリンク構造を用いて、回転中心の位置を変化させながらオットマン13を傾動させることも可能である。
【0017】
シートクッション11の前端近くの側部には、オットマン13を動作させるための操作部材である操作ハンドル15が設けられている。操作ハンドル15は、車幅方向に延びる軸線を中心として回転可能である。オットマン13と操作ハンドル15の間の動力伝達経路上には、オットマン駆動装置20が設けられている。オットマン駆動装置20は、本発明による車両用可動部材の駆動装置の一例である。ユーザー(着座者)による操作ハンドル15の回転操作がオットマン駆動装置20に入力されると、オットマン13が動作する。オットマン駆動装置20は後述するブレーキ機構30を備えており、操作ハンドル15の操作方向(回転方向)及び操作量(回転量)に応じて、格納位置13Aから展開位置13Bまでの任意の角度位置でオットマン13を停止させることができる。
【0018】
図2に示すように、オットマン駆動装置20では、ピニオン21と第1ギヤ22と第2ギヤ23を含むギヤ列が支持部材24上に配されており、ピニオン21の回転を減速して伝達する。
【0019】
ピニオン21は駆動軸25に対して回転可能に支持されている。駆動軸25は操作ハンドル15に接続しており、操作ハンドル15の回転操作によって、車幅方向に延びる軸線25xを中心として駆動軸25が回転する。後述するブレーキ機構30を構成するストッパ軸32と回転伝達部34を介して、駆動軸25の回転がピニオン21に伝達される。ピニオン21に噛合する第1ギヤ22は、駆動軸25と平行に延びるギヤ支持軸26に対して回転可能に支持されている。第1ギヤ22に噛合する第2ギヤ23は、駆動軸25と平行に延びるギヤ支持軸27に対して回転可能に支持されている。
【0020】
操作ハンドル15の回転操作によってピニオン21に入力された回転力は、第1ギヤ22及び第2ギヤ23を介してオットマン13側に伝達される。例えば、オットマン13が上述した単軸構造で支持されている場合は、当該軸を中心とするギヤに対して第2ギヤ23が噛合して回転力を伝達する。オットマン13が上述したリンク構造で支持されている場合は、リンクの一部に形成したセクタギヤに対して第2ギヤ23が噛合して、リンク機構を動作させる力を伝達する。
【0021】
操作ハンドル15の回転方向に応じて、オットマン13の動作方向が変化する。つまり、オットマン13の動作方向と駆動軸25(操作ハンドル15及びピニオン21)の回転方向には相関関係がある。以下では、オットマン13の格納方向P1への動作に対応する駆動軸25(操作ハンドル15及びピニオン21)の回転方向を格納動作方向R1(一方向)とし、オットマン13の展開方向P2への動作に対応する駆動軸25(操作ハンドル15及びピニオン21)の回転方向を展開動作方向R2(逆方向)とする。格納動作方向R1と展開動作方向R2は、図4から図8に矢印で示している。
【0022】
オットマン駆動装置20は、オットマン13と操作ハンドル15の間での駆動力の伝達を制御するブレーキ機構30を備えている。ブレーキ機構30は、操作ハンドル15を回転操作したときには、格納動作方向R1と展開動作方向R2のいずれの回転力もオットマン13側に伝達して、オットマン13を格納方向P1と展開方向P2に動作させる。また、ブレーキ機構30は、操作ハンドル15を操作せずにオットマン13に対して格納方向P1への荷重を入力したときには、駆動軸25を回転させずに格納方向P1へのオットマン13の動作を規制し、操作ハンドル15を操作せずにオットマン13に対して展開方向P2への荷重を入力したときには、駆動軸25を回転可能にして展開方向P2へのオットマン13の動作を許す。以下、ブレーキ機構30の構成と動作について詳細に説明する。以下の説明における軸方向は、駆動軸25の軸線25xに沿う方向を意味する。
【0023】
図3は分解状態のブレーキ機構30を示しており、図4は軸線25xに沿ってピニオン21側から見たブレーキ機構30を示している。ブレーキ機構30は、上述したピニオン21及び駆動軸25に加えて、スプリングケース31とストッパ軸32とブレーキスプリング33とを備えている。
【0024】
ブレーキ機構30における収容部材であるスプリングケース31は、支持部材24に取り付けられて固定される。スプリングケース31は、円筒状の筒状壁31aと、筒状壁31aの軸方向の一端を塞ぐ底壁31bとを有し、筒状壁31aと底壁31bによって囲まれるスプリング収納空間Sを形成している。底壁31bの中央には、スプリング収納空間Sの内部と外部を連通する円形の貫通孔31cが形成されている。筒状壁31aのうち底壁31bと反対側の端部は開放されている。
【0025】
駆動軸25は、スプリングケース31の貫通孔31cに挿通されてスプリング収納空間Sの両側に突出している。駆動軸25のうち底壁31b側から突出する一方の軸端部25aに操作ハンドル15が接続している。駆動軸25の他方の軸端部25bには、ピニオン21が回転可能に支持されている。
【0026】
駆動軸25には、スプリング収納空間S内に位置する回転伝達部34が設けられている。駆動軸25の軸部と回転伝達部34を一体的に形成しても良いし、駆動軸25の軸部とは別に回転伝達部34を形成した上で、回転伝達部34を駆動軸25の軸部に固定しても良い。いずれの場合も、回転伝達部34は駆動軸25の一部として機能し、駆動軸25と回転伝達部34は一体的に回転する。
【0027】
回転伝達部34は、円柱部34aと、円柱部34aの一部を内径側に凹ませた形状の凹部34bとを有している。円柱部34aは軸線25xを中心とする円筒状の外周面を有する。円柱部34aの外周面とスプリングケース31の筒状壁31aの内周面との間には、ブレーキスプリング33を収容可能な環状の隙間が形成されている。凹部34bにおける回転方向の一端と他端には、円柱部34aとの境界を構成する第1の段差部34c及び第2の段差部34dが形成されている。第1の段差部34cと第2の段差部34dは、駆動軸25の回転方向に所定の間隔を空けて向かい合う壁面である。回転伝達部34の軸方向の一端には、円柱部34aよりも大径の支持板部34eが設けられている。
【0028】
ストッパ軸32はピニオン21に固定されて、ピニオン21とストッパ軸32が一体的に回転する。なお、ピニオン21とストッパ軸32を予め一体的に形成しても良い。ピニオン21及びストッパ軸32は、軸方向で押さえ板35(図2)と回転伝達部34との間に保持されている。ストッパ軸32は、ピニオン21の軸方向の一端部に接続する座板部32aと、座板部32aの周縁から軸方向に突出する当接部32bとを有している。座板部32aはピニオン21よりも大径であり、回転伝達部34の支持板部34eに対して座板部32aが接することで、軸方向でのストッパ軸32の位置が定まる。
【0029】
ストッパ軸32の当接部32bは、座板部32aに対して軸方向でピニオン21とは反対側に突出しており、回転伝達部34の凹部34b内に挿入される。当接部32bは、軸線25xを中心とする円筒の一部であり、回転方向の一端と他端に第1の当接面32cと第2の当接面32dとを有している。当接部32bを凹部34bに挿入した状態で、第1の当接面32cは第1の段差部34cに対向し、第2の当接面32dは第2の段差部34dに対向する。回転方向における第1の当接面32cから第2の当接面32dまでの距離(当接部32bの幅)は、回転方向における第1の段差部34cから第2の段差部34dまでの距離(凹部34bの幅)よりも小さく、当接部32bは凹部34bに対して回転方向に隙間がある状態で挿入されている。
【0030】
ブレーキスプリング33はトーションばねであり、螺旋状に巻回されたコイル部33aと、コイル部33aの一端を内径側に屈曲させた形状の第1のばね端部33bと、コイル部33aの他端を内径側に屈曲させた形状の第2のばね端部33cとを有している。コイル部33aの径は、回転伝達部34の円柱部34aの外周面とスプリングケース31の筒状壁31aの内周面との間に収まる大きさである。支持板部34eに当接することで、軸方向でのコイル部33aの位置が定まる。第1のばね端部33bと第2のばね端部33cはそれぞれ、回転伝達部34の凹部34bに対して外径側から内径側に向けて挿入されており、第1のばね端部33bが第1の段差部34cの近傍に位置し、第2のばね端部33cが第2の段差部34dの近傍に位置する。
【0031】
ブレーキスプリング33は、自由状態よりも僅かに縮径させて(第1のばね端部33bと第2のばね端部33cの間隔を狭めて)スプリング収納空間S内に配置される。この縮径状態から復元しようとする力によって、ブレーキスプリング33のコイル部33aは、筒状壁31aの内周面と円柱部34aの外周面に所定の圧力で摩擦接触して、駆動軸25に回転抵抗を付与する。
【0032】
図3に示すように、ブレーキスプリング33では、コイル部33aが軸方向に所定の厚み(幅)を有することにより、コイル部33aの一端と他端から延設される第1のばね端部33bと第2のばね端部33cは、軸方向での位置が互いに異なっている。コイル部33aのうち第2のばね端部33c側の端面から第1のばね端部33bの直前までの軸方向の寸法を、幅H3とする。
【0033】
図3に示すように、ストッパ軸32の当接部32bの軸方向の長さH1は、回転伝達部34の支持板部34eの軸方向の厚さH2よりも大きく、且つ支持板部34eの厚さH2とコイル部33aの幅H3の和よりも小さい。換言すれば、当接部32bは、座板部32aに近い側の第2のばね端部33cに重なる位置まで突出する一方で、座板部32aから遠い側の第1のばね端部33bには重ならない(第1のばね端部33bまで届かない)ように、軸方向の長さH1が設定されている。従って、ストッパ軸32が回転したときに当接部32bは、第2のばね端部33cに対して当接可能で、第1のばね端部33bに対しては当接しない。
【0034】
以上のように構成したブレーキ機構30の動作を、主に図5から図8を参照して説明する。図5から図8は、スプリングケース31を省略(透視)した状態のブレーキ機構30を側面視と断面視で示しており、断面視は図中のM-M線に沿う位置の断面である。なお、以下の説明における格納方向P1へのオットマン13の動作の開始位置は、展開位置13Bには限定されず、格納位置13A以外であれば良い。また、展開方向P2へのオットマン13の動作の開始位置は、格納位置13Aには限定されず、展開位置13B以外であれば良い。つまり、格納位置13Aや展開位置13Bを始点にした場合に限らず、格納位置13Aと展開位置13Bの間の中間位置からの動作にも適用される。
【0035】
操作ハンドル15やオットマン13の操作を行わず、ブレーキ機構30に対して外部からの入力が無い状態では、ブレーキスプリング33のコイル部33aは、筒状壁31aの内周面と円柱部34aの外周面に摩擦接触して、駆動軸25を回転方向で一定の位置に保持させる。
【0036】
ユーザーが操作ハンドル15を回転操作して駆動軸25を格納動作方向R1に回転させると、図5に示すように、回転伝達部34の第1の段差部34cがブレーキスプリング33の第1のばね端部33bに当接して、第1のばね端部33bを第2のばね端部33cに接近させる力が与えられる。第1のばね端部33bと第2のばね端部33cの接近(間隔の減少)は、コイル部33aを縮径させる動作であるため、コイル部33aは筒状壁31aの内周面に密着しない(摩擦接触を解除する)状態になり、ブレーキスプリング33はスプリングケース31に対するストッパ軸32及び回転伝達部34の回転を制限しなくなる。つまり、ブレーキ機構30がブレーキ解除状態になる。すると、格納動作方向R1への駆動軸25の回転が許され、格納動作方向R1に回転する回転伝達部34の第1の段差部34cが第1の当接面32cに当接してストッパ軸32を押圧し、ストッパ軸32が駆動軸25(回転伝達部34)と共に格納動作方向R1に回転する。その結果、格納動作方向R1に回転するピニオン21から第1ギヤ22及び第2ギヤ23を経由してオットマン13に動力が伝達されて、オットマン13が格納方向P1(図1)に動作する。
【0037】
ユーザーが操作ハンドル15を回転操作して駆動軸25を展開動作方向R2に回転させると、図6に示すように、回転伝達部34の第2の段差部34dがブレーキスプリング33の第2のばね端部33cに当接して、第2のばね端部33cを第1のばね端部33bに接近させる力が与えられる。第2のばね端部33cと第1のばね端部33bの接近(間隔の減少)は、コイル部33aを縮径させる動作であるため、コイル部33aは筒状壁31aの内周面に密着しない状態になり、ブレーキスプリング33はスプリングケース31に対するストッパ軸32及び回転伝達部34の回転を制限しなくなる。つまり、ブレーキ機構30がブレーキ解除状態になる。すると、展開動作方向R2への駆動軸25の回転が許され、展開動作方向R2に回転する回転伝達部34の第2の段差部34dが第2のばね端部33cを押圧し、第2のばね端部33cが第2の当接面32dに当接してストッパ軸32を押圧し、ストッパ軸32が駆動軸25(回転伝達部34)と共に展開動作方向R2に回転する。その結果、展開動作方向R2に回転するピニオン21から第1ギヤ22及び第2ギヤ23を経由してオットマン13に動力が伝達されて、オットマン13が展開方向P2(図1)に動作する。
【0038】
このように、操作ハンドル15を回転操作したときには、ブレーキ機構30は、ブレーキスプリング33を縮径させて、格納動作方向R1と展開動作方向R2のいずれにも駆動軸25からストッパ軸32への回転伝達を許し、オットマン13を格納方向P1と展開方向P2に動作させることができる。
【0039】
オットマン13が格納位置13A以外の位置にある状態で、ユーザーがオットマン13を押し下げる操作を行うなどして、オットマン13に対して格納方向P1への荷重が入力された場合、第2ギヤ23と第1ギヤ22を介してピニオン21に回転力が伝達されて、ストッパ軸32が格納動作方向R1に回転しようとする。すると、図7に示すように、当接部32bの第2の当接面32dがブレーキスプリング33の第2のばね端部33cに当接して、第2のばね端部33cを第1のばね端部33bから離間させる力が与えられる。第2のばね端部33cと第1のばね端部33bの離間(間隔の増大)は、コイル部33aを拡径させる動作であるため、筒状壁31aの内周面及び円柱部34aの外周面へのコイル部33aの摩擦接触が強まり、格納動作方向R1への回転伝達部34(駆動軸25)の回転が阻止される。回転が規制された回転伝達部34の第2の段差部34dに対して第2のばね端部33cが当接するので、第2のばね端部33cを押圧するストッパ軸32は格納動作方向R1へのそれ以上の回転が規制される。つまり、ブレーキ機構30がブレーキ作動状態になり、格納方向P1へのオットマン13の動作を規制する。
【0040】
オットマン13が展開位置13B以外の位置にある状態で、ユーザーがオットマン13を展開方向P2に押し上げる操作を行った場合、第2ギヤ23と第1ギヤ22を介してピニオン21に回転力が伝達されて、ストッパ軸32が展開動作方向R2に回転しようとする。すると、図8に示すように、当接部32bの第1の当接面32cは、軸方向で重ならない位置関係にあるブレーキスプリング33の第1のばね端部33bには当接せずに、回転伝達部34の第1の段差部34cに対して直接に当接し、当接部32bから回転伝達部34へ展開動作方向R2の回転力が伝達される。すると、回転伝達部34の第2の段差部34dが第2のばね端部33cに当接して、第2のばね端部33cを第1のばね端部33bに接近させる力が与えられる。つまり、操作ハンドル15を回転操作して駆動軸25を展開動作方向R2に回転させた図6の場合と同様の状態になり、コイル部33aが縮径する変形によってブレーキスプリング33の摩擦接触が弱まり、ブレーキ機構30がブレーキ解除状態になる。その結果、ブレーキ機構30による規制を受けることなく、オットマン13を直接に(操作ハンドル15の操作によらずに)押し上げて展開方向P2に動作させることができる。
【0041】
このように、ブレーキ機構30では、オットマン13に対して格納方向P1への荷重が入力された場合は、格納方向P1へのオットマン13の動作を規制するブレーキ作動状態になり、オットマン13に対して展開方向P2への荷重が入力された場合は、展開方向P2へのオットマン13の動作を許すブレーキ解除状態になる。これにより、オットマン13の展開動作については、操作ハンドル15の回転操作だけでなく、オットマン13に対する直接の操作で行わせることも可能となり、ユーザーがオットマン13を簡単且つ迅速に展開させて使用状態にできる。一方、オットマン13の格納方向P1への動作は、操作ハンドル15を回転操作しない限り、ブレーキ機構30によって規制されるので、使用状態(展開状態)にあるオットマン13が意図せず格納方向P1に動作してしまうおそれは無い。
【0042】
以上のようなブレーキ機構30の機能は、ストッパ軸32の当接部32bの長さH1(図3)を、ブレーキスプリング33の第1のばね端部33bとは重ならず、第2のばね端部33cとのみ重なるように設定することで実現している。従って、既存のブレーキ機構に比して部品点数が増加したり構造が複雑化したりすることなく、簡単且つ低コストに得ることができるという利点がある
【0043】
本実施形態のブレーキ機構30とは異なる比較例のブレーキ機構130を図9及び図10に示す。ブレーキ機構130において、先に説明したブレーキ機構30と共通する構成については、同じ符号で示して説明を省略する。
【0044】
ブレーキ機構130では、ストッパ軸132の当接部132bにおける軸方向の長さが、ブレーキスプリング33の第1のばね端部33bと第2のばね端部33cの両方に重なるように設定されている。これにより、ストッパ軸132が格納動作方向R1に回転するときには、当接部132bの第2の当接面132dがブレーキスプリング33の第2のばね端部33cに当接して押圧する(図9参照)ことに加えて、ストッパ軸132が展開動作方向R2に回転するときには、当接部132bの第1の当接面132cがブレーキスプリング33の第1のばね端部33bに当接して押圧する(図10参照)。つまり、ストッパ軸132の格納動作方向R1と展開動作方向R2の両方の回転によって、ブレーキスプリング33が拡径されてブレーキ機構130がブレーキ作動状態になる。
【0045】
オットマン13が展開位置13B以外の位置にある状態で、ユーザーがオットマン13を展開方向P2に押し上げる操作を行った場合、図10に示すようにブレーキ機構130がブレーキ作動状態になって、展開方向P2へのオットマン13の動作が規制される。この点において、上記実施形態のブレーキ機構30とは異なっており、比較例のブレーキ機構130を用いた場合には、オットマン13を直接に(操作ハンドル15の操作によらずに)押し上げて展開方向P2に動作させることができない。
【0046】
本発明による駆動装置を適用する可動部材は、オットマンには限定されない。例えば、車両用シート10のアームレスト14(図1)の駆動装置にも適用が可能である。アームレスト14は、シートバック12の側部に可動に支持されており、図1に示す格納位置14Aと展開位置14Bとの間で動作(傾動)する。格納位置14Aはアームレスト14の非使用位置であり、展開位置13Bはアームレスト14の使用位置である。格納位置14Aでは、アームレスト14は先端を下方に向けてシートバック12の側部に沿って格納される。展開位置14Bでは、アームレスト14は先端を前方に向けてシートバック12から突出する。展開位置14B側から格納位置14A側に向かうアームレスト14の動作方向を格納方向P11(第1の方向)とし、格納位置14A側から展開位置14B側に向かうアームレスト14の動作方向を展開方向P12(第2の方向)とする。
【0047】
アームレスト14の近傍には、アームレスト14を動作させる操作部材である操作レバー16が設けられている。操作レバー16は、車幅方向に延びる軸線を中心として回転可能である。アームレスト14と操作レバー16の間の動力伝達経路上には、アームレスト駆動装置40が設けられている。アームレスト駆動装置40は、本発明による車両用可動部材の駆動装置の一例である。
【0048】
アームレスト駆動装置40の詳細については図示及び説明を省略するが、上述のオットマン駆動装置20のブレーキ機構30と同様のブレーキ機構を有している。例えば、ブレーキ機構30における駆動軸25の軸端部25aに相当する部分を操作レバー16に接続し、ピニオン21に相当する部分をアームレスト14の駆動用ギヤに噛合させた構成にする。
【0049】
当該構成により、ユーザー(着座者)による操作レバー16の回転操作がアームレスト駆動装置40に入力されると、ブレーキ機構がブレーキ解除状態になり、操作レバー16の操作方向に応じてアームレスト14が格納方向P11と展開方向P12に動作する。また、操作レバー16を操作せずにアームレスト14に対して格納方向P11への荷重が入力された場合は、アームレスト駆動装置40のブレーキ機構は、格納方向P11へのアームレスト14の動作を規制するブレーキ作動状態になる。さらに、操作レバー16を操作せずにアームレスト14に対して展開方向P12への荷重が入力された場合は、アームレスト駆動装置40のブレーキ機構は、展開方向P12へのアームレスト14の動作を許すブレーキ解除状態になる。
【0050】
従って、アームレスト14の展開動作を、操作レバー16の回転操作だけでなく、アームレスト14に対する直接の操作で行わせることも可能となり、ユーザーがアームレスト14を簡単且つ迅速に展開させて使用状態にできる。一方、アームレスト14の格納方向P11への動作は、操作レバー16を回転操作しない限り、アームレスト駆動装置40のブレーキ機構によって規制されるので、使用状態(展開状態)にあるアームレスト14が意図せず格納方向P11に動作してしまうおそれは無い。
【0051】
本発明を適用する車両用可動部材は、以上に説明したオットマン13やアームレスト14のように、使用時に上方からの荷重を支え、非使用時に下方へ向けて動作して格納されるタイプの可動部材が好適である。この種の可動部材の場合、展開位置(使用位置)では、操作部材を介した操作以外の要因(ユーザーの脚や腕の重さ、可動部材の自重等)で不用意に格納位置側に移動しないように保持して高い安定性を得ることが必要とされる。その一方で、格納位置から展開位置への動作は操作部材の操作を介さずに迅速に行いたいという要求があり、ブレーキ機構により動作規制させることよりも、展開位置への素早い動作を実現することの有用性が高い場合があるためである。
【0052】
また、本発明の実施の形態は上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【符号の説明】
【0053】
10 車両用シート
11 シートクッション
12 シートバック
13 オットマン(可動部材)
13A 格納位置(使用位置)
13B 展開位置(非使用位置)
14 アームレスト(可動部材)
14A 格納位置(使用位置)
14B 展開位置(非使用位置)
15 操作ハンドル(操作部材)
16 操作レバー(操作部材)
20 オットマン駆動装置(車両用可動部材の駆動装置)
21 ピニオン
25 駆動軸
30 ブレーキ機構
31 スプリングケース(収容部材)
31a 筒状壁
32 ストッパ軸
32b 当接部
32c 第1の当接面
32d 第2の当接面
33 ブレーキスプリング
33a コイル部
33b 第1のばね端部
33c 第2のばね端部
34 回転伝達部
34c 第1の段差部
34d 第2の段差部
40 アームレスト駆動装置(車両用可動部材の駆動装置)
P1 オットマンの格納方向(第1の方向)
P2 オットマンの展開方向(第2の方向)
P11 アームレストの格納方向(第1の方向)
P12 アームレストの展開方向(第2の方向)
R1 格納動作方向(一方向)
R2 展開動作方向(逆方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10