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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123375
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】フラッシュランプ及び光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/54 20060101AFI20220817BHJP
   H01J 61/80 20060101ALI20220817BHJP
   H01J 61/30 20060101ALI20220817BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H01J61/54 H
H01J61/80
H01J61/30 Q
H01L21/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020654
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 征彦
【テーマコード(参考)】
5C043
【Fターム(参考)】
5C043AA06
5C043AA07
5C043AA14
5C043CC14
5C043CD01
5C043CD19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長時間使用した場合にもランプ内面の変色を抑制できるフラッシュランプ及び光源装置を提供する。
【解決手段】フラッシュランプ1は、発光ガスが封入された長尺な発光管2と、発光管の第一端側に、発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、発光管の第一端とは反対側の第二端側に、発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部22と、第一電極導入部内に設けられた第一電極23と、第二電極導入部内に設けられた第二電極24と、発光管の外周面に沿って、発光管の長手方向に延びるように配置されたトリガ部材3と、発光管の第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、発光管の周方向の断面視において、第二電極の中心軸24cを基準としたときの、第一電極の中心軸2cとトリガ部材とを結ぶ線3Lのなす角度θが90°以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ガスが封入された長尺な発光管と、
前記発光管の第一端側に、前記発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、
前記発光管の前記第一端とは反対側の第二端側に、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、
前記第一電極導入部内に設けられた第一電極と、
前記第二電極導入部内に設けられた第二電極と、
前記発光管の外周面に沿って、前記発光管の長手方向に延びるように配置されたトリガ部材と、
前記発光管の前記第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、
前記発光管の周方向の断面視において、前記第二電極の中心軸を基準としたときの、前記第一電極の中心軸と前記トリガ部材とを結ぶ線のなす角度が90°以下である、フラッシュランプ。
【請求項2】
前記トリガ部材のうち導電体である先端と、前記第二電極の中心軸との距離が、前記第二電極の外径以下である、請求項1に記載のフラッシュランプ。
【請求項3】
前記第二電極の先端は、前記発光管の内壁面から前記長手方向軸側へ突出するように配置されている、請求項1に記載のフラッシュランプ。
【請求項4】
前記第二電極の先端の突出長さが5mm以上である、請求項3に記載のフラッシュランプ。
【請求項5】
前記トリガ部材は、少なくとも一端部に封止部が形成された管状の誘電体部材と、前記誘電体部材の内部に封入された導電性部材と、前記導電性部材に電気的に接続され、前記封止部に埋設された金属箔と、を備える、請求項1に記載のフラッシュランプ。
【請求項6】
発光ガスが封入された長尺な発光管と、
前記発光管の第一端側に、前記発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、
前記発光管の前記第一端とは反対側の第二端側に、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、
前記第一電極導入部内に設けられた第一電極と、
前記第二電極導入部内に設けられた第二電極と、
前記発光管の外周面に沿って、前記発光管の長手方向に延びるように配置されたトリガ部材と、
前記発光管の前記第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、
前記発光管の周方向の断面視において、前記第二電極の中心軸を基準としたときの、前記第一電極の中心軸と前記トリガ部材とを結ぶ線のなす角度が100°以下であり、
前記トリガ部材のうち導電体である先端と、前記第二電極の中心軸との距離が4.5mm以下であり、
前記第二電極の先端が、前記発光管の内壁面から前記長手方向軸側へ突出するように配置され、前記第二電極の先端の突出長さが5~10mmである、フラッシュランプ。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のフラッシュランプを複数備えた、光源装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュランプ及び光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板のフラッシュアニール工程においては、比較的高いエネルギーで10msec以下の短時間でフラッシュランプ(以下、単にランプとも称する)を閃光させ、ワーク加熱を行う場合が多い。
【0003】
ランプを閃光させるためには、第一に、予めランプに接続されたコンデンサに所定の値の電圧を印加して充電し、閃光時の電流に使用する電荷を蓄える。第二に、ランプ外面にトリガ電圧と称される高周波電圧を印加し、電極間を絶縁破壊して閃光を行う。
【0004】
トリガ電圧は、ランプ外面に巻きつけるなどの方法で固定した導体に作用させる場合が多い。フラッシュランプを含む一般的な放電ランプでは、発光管外周に金属製のワイヤーを巻きつけるなどの方法で導体とランプを接触状態で固定する(例えば、特許文献1)。
【0005】
他方、上記のように高いエネルギー下で閃光を行うランプにおいて、ワイヤーをランプ外面に配置すると、ランプ閃光時の衝撃でワイヤーの位置がずれたり、ワイヤーが高温度となり溶断したりするなどの現象で閃光性能が悪化する場合があった。
【0006】
また、ワイヤー成分が閃光時の熱により蒸発し、ランプハウスやワークを汚染したり、発光管外部に付着して石英ガラスの再結晶を促すことでランプが破裂したりするなどの不具合も発生していた(特許文献2を参照)。
【0007】
上記問題への対処として、石英ガラスなどの誘電体からなる密閉容器内に上記ワイヤーに相当する導体を密封したもの(トリガ管)を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2~4)。トリガ管は、その容器外面がランプ外面に接触するように固定される。この状態でトリガ管に高周波電圧を印加すると、上記不具合が発生せずにワイヤーを使用した場合と同様にランプを閃光できる。本技術を用いると、閃光による加熱時も前述した位置ずれ、汚染や再結晶を防ぐことが可能である。
【0008】
特許文献2~4では、トリガ管容器内は真空あるいは不活性ガスが封入された状態であることが望ましいと記載されており、不活性ガスを封入すると真空下よりも低いトリガ印加電圧下で閃光が発生するとの記載がある。
【0009】
特許文献2~4に記載されたランプは、形状が中心軸対称であり、両端に電極が配置された構成である。他方、特許文献5には、軸対称形状ではなく、図7に示すように一方の電極94が他方の電極93に対し直角の角度配置となるランプ91が開示されている。この構成によれば、ランプ91の端部に設けられた光出射面95から効率よく光を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-10139号公報
【特許文献2】特開2003-203606号公報
【特許文献3】特開2009-170208号公報
【特許文献4】特開2014-2952号公報
【特許文献5】特開2020-155346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献5のように電極93,94が配置されたランプ91の場合、発光管92の周囲に配置されるトリガ管96の位置、形状によっては、ランプ内面の一部が早期に過熱、変色する事案が発生していた。例えば数十万回の点灯を繰り返した場合、ランプ内面の変色は、最終的には同部分からの破損に繋がるおそれがある。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑み、長時間使用した場合にもランプ内面の変色を抑制できるフラッシュランプ及び光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るフラッシュランプは、発光ガスが封入された長尺な発光管と、
前記発光管の第一端側に、前記発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、
前記発光管の前記第一端とは反対側の第二端側に、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、
前記第一電極導入部内に設けられた第一電極と、
前記第二電極導入部内に設けられた第二電極と、
前記発光管の外周面に沿って、前記発光管の長手方向に延びるように配置されたトリガ部材と、
前記発光管の前記第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、
前記発光管の周方向の断面視において、前記第二電極の中心軸を基準としたときの、前記第一電極の中心軸と前記トリガ部材とを結ぶ線のなす角度が90°以下である。
【0014】
本発明によれば、長時間使用した場合にも発光管の内面の変色を抑制できる。詳細は、「発明の実施するための形態」の項において実施例を参照して後述される。
【0015】
本発明に係るフラッシュランプにおいて、前記トリガ部材のうち導電体である先端と、前記第二電極の中心軸との距離が、前記第二電極の外径以下である、という構成でもよい。
【0016】
本発明に係るフラッシュランプにおいて、前記第二電極の先端は、前記発光管の内壁面から前記長手方向側へ突出するように配置されている、という構成でもよい。
【0017】
本発明に係るフラッシュランプにおいて、前記第二電極の先端の突出長さが5mm以上である、という構成でもよい。
【0018】
本発明に係るフラッシュランプにおいて、前記トリガ部材は、少なくとも一端部に封止部が形成された管状の誘電体部材と、前記誘電体部材の内部に封入された導電性部材と、前記導電性部材に電気的に接続され、前記封止部に埋設された金属箔と、を備える、という構成でもよい。
【0019】
また、本発明に係るフラッシュランプは、発光ガスが封入された長尺な発光管と、
前記発光管の第一端側に、前記発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、
前記発光管の前記第一端とは反対側の第二端側に、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、
前記第一電極導入部内に設けられた第一電極と、
前記第二電極導入部内に設けられた第二電極と、
前記発光管の外周面に沿って、前記発光管の長手方向に延びるように配置されたトリガ部材と、
前記発光管の前記第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、
前記発光管の周方向の断面視において、前記第二電極の中心軸を基準としたときの、前記第一電極の中心軸と前記トリガ部材とを結ぶ線のなす角度が100°以下であり、
前記トリガ部材のうち導電体である先端と、前記第二電極の中心軸との距離が4.5mm以下であり、
前記第二電極の先端が、前記発光管の内壁面から前記長手方向軸側へ突出するように配置され、前記第二電極の先端の突出長さが5~10mmである。
【0020】
また、本発明に係る光源装置は、上記何れかのフラッシュランプを複数備えたものである。
【0021】
本発明によれば、長時間使用した場合にも発光管の内面の変色を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係るフラッシュランプの斜視図
図2】フラッシュランプの長手方向に沿った断面図
図3A】フラッシュランプの正面図
図3B】フラッシュランプの側面図
図4】フラッシュランプの長手方向に対して垂直方向に沿った断面図
図5】フラッシュランプの部分拡大図
図6】フラッシュランプの点灯回路を示す説明図
図7】従来のフラッシュランプの一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るフラッシュランプ及び光源装置の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0024】
[第一実施形態]
本発明に係るフラッシュランプの第一実施形態について説明する。
【0025】
図1は、フラッシュランプの一例を示す斜視図である。図1に示すように、フラッシュランプ1は、発光ガスが封入された長尺な発光管2を備える。発光管2を形成する材料は、例えば石英ガラスである。発光管2が延伸する方向を長手方向と称する。発光管2は円筒状に形成されており、発光管2の中心軸を長手方向軸2cとする。発光管2の寸法は、例えば、外径が25mm、内径が20mmであるが、本発明において発光管2の寸法は限定されない。
【0026】
以下の説明においては、図1に示すように、発光管2の長手方向をX方向、後述する第二電極導入部22が延伸する方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。
【0027】
図2は、フラッシュランプ1の長手方向に沿った断面図である。また、図3Aはフラッシュランプ1をZ方向から見た正面図、図3Bはフラッシュランプ1をX方向から見た側面図である。発光管2の第一端側(+X側)には第一電極導入部21が設けられ、第一電極導入部21の内部には第一電極23が設けられている。第一電極導入部21は、円筒状に形成されている。第一電極導入部21は、発光管2の長手方向軸2cと同軸となるように配置されている。第一電極導入部21は、発光管2に連通されている。第一電極導入部21の内径は発光管2の内径よりも小さい。第一電極23の中心軸は、発光管2の長手方向軸2cと一致している。第一電極23の寸法は、例えば外径10mmである。第一電極23の材料は、例えばランタナ入りタングステンである。
【0028】
発光管2の第一端と反対側の第二端側(-X側)には第二電極導入部22が設けられ、第二電極導入部22の内部には第二電極24が設けられている。第二電極導入部22は、円筒状に形成されている。第二電極導入部22は、発光管2の長手方向軸2cに対して交差するように配置されている。本実施形態では、第二電極導入部22は、発光管2の長手方向軸2cに対して直交する方向(Y方向)に延びている。しかし、第二電極導入部22と発光管2は90°以外の角度で交差するように配置されてもよい。第二電極導入部22は、発光管2に連通されている。第二電極24の中心軸24cは、発光管2の長手方向軸2cに対して直交する。第二電極24の寸法は、例えば外径10mmである。第二電極24の材料は、例えばランタナ入りタングステンである。
【0029】
本実施形態では、第一電極23が陰極であり、第二電極24が陽極である。第一電極23と第二電極24の間の距離、具体的には第一電極23の先端から第二電極24の中心軸24cまでのX方向の距離は、例えば400mmである。
【0030】
発光管2の第二端側の先端部には、光出射面25が設けられている。発光管2内に封入された発光ガスによって生じる光は光出射面25を介して出射される。複数のフラッシュランプ1をそれぞれの光出射面25が同じ向きとなるように配置し、一つの光源装置を構成してもよい。
【0031】
発光管2に封入される発光ガスは、例えば、キセノンガスである。発光管2に封入されるキセノンガスの圧力は、例えば室温下で60kPaである。発光管2に封入された発光ガスがキセノンガスである場合、放電により波長200~1100nmの光が生成される。
【0032】
フラッシュランプ1は、発光管2の外周面に沿って、発光管2の長手方向に延びるように配置されたトリガ部材3を備える。
【0033】
トリガ部材3は、封止されたトリガ管31と、トリガ管31の内部に封入された導電性部材32と、を備える。トリガ管31は、少なくとも一端部に封止部31aが形成された管状の誘電体部材である。本実施形態では、トリガ管31の材料は、石英ガラスである。また、トリガ管31の形状は、両端部が封止された円筒状の直管である。トリガ管31の寸法は、例えば、外径4mm、内径2mm、全長430mmであるが、本発明においてトリガ管31の寸法は限定されない。
【0034】
導電性部材32の材料は、例えばタングステンである。また、導電性部材32の形状は、外径1mm、全長400mmの丸棒である。導電性部材32の一端には、封止用のモリブデン箔33が電気的に接続される。モリブデン箔33は、トリガ管31の封止部31aに埋設されている。モリブデン箔33の片端にはピン34が溶接されている。ピン34の材料は、例えばモリブデンである。ピン34の形状は、外径1mmの丸棒である。リード線を介してこのピン34とトリガ回路(後述する)を電気的に接続し、トリガ管31の外部から内部の導電性部材32へ給電を行う。また、トリガ管31の内部には、放電始動性改善および導電性部材32の酸化防止の観点で微量の不活性ガスが封入される。
【0035】
発光管2とトリガ部材3は、専用の固定治具(図示していない)を用いて固定される。固定治具の材質は、例えばセラミックスである。トリガ部材3は発光管2の外表面に接し、発光管2とトリガ部材3の中心軸が略平行となるように配置される。また、ランプから出射される光によるリード線の変色を防ぎ、かつ照射物にリード線の影を作らないようにするため、トリガ部材3は、ピン34が光出射面25の反対側である第一端側に配置されるように構成されている。
【0036】
図4は、発光管2の長手方向に対して垂直方向に沿った断面図である。図4に示すように、発光管2の周方向の断面視において、第二電極24の中心軸24cを基準としたときの、第一電極23の中心軸(発光管2の長手方向軸2c)とトリガ部材3とを結ぶ線3Lのなす角度θは90°以下である。好ましくは、角度θは80°以下であり、より好ましくは70°以下である。また、好ましくは、角度θは30°以上である。角度θが90°を超えると、放電経路が不安定となり、図3Aに示す領域2dの付近に放電経路が形成され、発光管2の内表面のうち、領域2dに変色が生じるおそれがある。領域2dに変色が生じた場合、変色した領域2dには、大きな残留応力が発生しやすく、クラックが発生する場合もある。領域2dに発生した残留応力及びクラックは、フラッシュランプ1が破裂する原因となる可能性が高い。なお、線3Lは、導電性部材32の中心を通る線である。
【0037】
図5は、図3Aに示すフラッシュランプ1の部分拡大図である。トリガ部材3の導電性部材32の先端32aと、第二電極24の中心軸24cとの発光管2の長手方向(X方向)における距離dは、第二電極24の外径24D以下であることが好ましく、第二電極24の外径24Dの半分以下であることがより好ましい。本実施形態では、距離dは10mm以下である。
【0038】
なお、図3及び図5に示す例では、導電性部材32の先端32aが、第二電極24の中心軸24cよりも+X側に配置されているが、これに限定されない。導電性部材32は、先端32aが第二電極24の中心軸24cよりも-X側に配置されるように構成されてもよい。
【0039】
また、第二電極24の先端24aは、発光管2の内壁面2aから長手方向軸2c側へ突出するように配置されている。第二電極24の先端24aを、発光管2の内壁面2aと同じか、それよりも外側に配置すると、図3A図5に示す発光管2の内表面のうち、領域2dに変色が生じるおそれがある。
【0040】
第二電極24の先端24aの発光管2の内壁面2aからの突出長さhは、5mm以上であるのが好ましい。これにより、発光管2の内面での変色を抑制できる。また、第二電極24の先端24aの突出長さhは、10mm以下であるのが好ましい。突出長さhが10mmを超えると、光出射面25からの出射光に対し、第二電極24の影となる領域が増えてランプ出力が減衰する可能性がある。
【0041】
図6は、フラッシュランプ1の点灯回路を示す説明図である。発光管2の両端の電極にランプ点灯回路41が接続されている。トリガ部材3は、トリガ回路42に接続されている。フラッシュランプ1には、瞬間的に放電させるためのエネルギー源として、時間幅の短いパルス電流が入力される。パルス電流の時間幅とエネルギー量は、コンデンサCの容量、コイルLのインダクタンス、充電器Vの電圧の値により調整することができる。
【0042】
まず、充電器Vの電圧がコンデンサCに印加され、コンデンサCにエネルギーが蓄えられる。次いで、トリガ回路42からトリガ部材3に電圧が印加されることで、発光管2の電極間で絶縁破壊が起こり、コンデンサCに蓄えられたエネルギーが瞬時に発光管2に投入され、放電が開始する(フラッシュ点灯する)。
【0043】
[第二実施形態]
本発明に係るフラッシュランプの第二実施形態について、第一実施形態と異なる箇所を主として説明する。なお、第一実施形態と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0044】
第二実施形態においては、第二電極24の中心軸24cと、第一電極23の中心軸とトリガ部材3とを結ぶ線3Lとのなす角度θは100°以下である。導電性部材32の先端32aと、第二電極24の中心軸24cとの距離dが4.5mm以下である。第二電極24の先端24aが、発光管2の内壁面2aから発光管2の長手方向軸2c側へ突出するように配置され、第二電極24の先端24aの突出長さhが5~10mmである。第二実施形態では、距離dを4.5mm以下とし、かつ突出長さhを5~10mmとしているため、角度θが90°を超えていても発光管2の内面での変色を抑制できる。
【0045】
[実施例]
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0046】
図1~6に示すフラッシュランプの角度θ、距離d、及び突出長さhを表1~3のように設定したものを用意し、寿命評価を行った。表1の寿命評価では、距離d及び突出長さhの値をそれぞれ2パターンずつ変更した合計4種類の条件で固定した上で、それぞれの条件下で角度θを40~120°の間で変化させた。表2の寿命評価では、角度θ及び距離dの値をそれぞれ2パターンずつ変更した合計4種類の条件で固定した上で、それぞれの条件下で突出長さhを0~10mmの間で変化させた。表3の寿命評価では、突出長さh及び角度θの値をそれぞれ2パターンずつ変更した合計4種類の条件で固定した上で、それぞれの条件下で距離dを-7mm~+7mmの間で変化させた。なお、表3において、距離dが「-」(負の値)とは、導電性部材32の先端32aが、第二電極24の中心軸24cを越えて延びている状態を示す。
【0047】
発光管2の寸法は、外径25mm、内径20mmとした。電極23,24は、寸法が外径9mmで、材質がランタナ入りタングステンである。発光管2の内部には、室温下で60kPaの圧力となる量のキセノンガスを封入した。
【0048】
トリガ管31の寸法は、外径4mm、内径2mm、全長430mmとした。導電性部材32の寸法は、外径1mm、全長400mmで、材料はタングステン丸棒である。
【0049】
寿命評価の実験に用いたフラッシュランプの点灯回路には、電気容量500μFのコンデンサとインダクタンス50μHのコイルを接続した。フラッシュランプに投入する電力値は、コンデンサの充電電圧を調整して、3000Jの一定値とした。点灯は最大2000回まで行い、発光管の内面に生じる変色領域の面積を調べた。評価は、変色領域の面積が4mm未満の場合を「A」又は「B」とし、4mm以上の場合を「C」とした。これは、経験的に変色領域の面積が4mm以上となると、長時間の使用によりランプの破裂が生じやすくなるためである。なお、変色領域の面積が4mm未満の場合において、変色が肉眼で明確に認識できない場合(例えば変色領域の面積が0.2mm未満の場合)を「A」とした。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
結果として、表1に示す結果が得られた。結果として、角度θが90°以下であれば、ランプが破裂する原因となり得る変色を抑制できた。ただし、角度100°の場合でも、表1に示す通り、突出長さh、距離dの組み合わせによっては変色が抑制されることがある。なお、角度80°以下では変色がほぼ起こらなかった。この結果、角度θが90°以下であれば変色を抑制でき、特に、角度θが80°以下であれば変色自体を防止できる。
【0054】
結果として、表2に示す結果が得られた。結果として、角度θが90°以下であれば、突出長さhを変化させた場合にも変色を抑制できた。ただし、角度100°の場合でも、表2に示す通り、突出長さhを5mm以上とした場合、変色が抑制されることがある。
【0055】
結果として、表3に示す結果が得られた。結果として、角度θが90°以下であれば、距離dを変化させた場合にも変色を抑制できた。ただし、角度100°の場合でも、表3に示す通り、距離dを4.5mm以下とした場合、変色が抑制されることがある。なお、距離dの絶対値が大きい場合ほど、ランプが破裂するに至るまでの点灯回数が少なく、よりランプの破裂が発生しやすい傾向が見られた。また、距離dを4.5mm以下(電極の外径である9mmの半分以下)とした場合、ランプが破裂するに至るまでの回数が増加する傾向があった。
【0056】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0058】
上記第一及び第二実施形態に係るフラッシュランプ1において、トリガ部材3は、少なくとも一端部に封止部31aが形成されたトリガ管31と、トリガ管31の内部に封入された導電性部材32と、導電性部材32に電気的に接続され、封止部31aに埋設されたモリブデン箔33と、を備える、という構成であるが、これに限定されない。トリガ部材3は、棒状の導電体のみで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 :フラッシュランプ
2 :発光管
2a :内壁面
2c :長手方向軸
3 :トリガ部材
21 :第一電極導入部
22 :第二電極導入部
23 :第一電極
24 :第二電極
24D :第二電極の外径
24a :第二電極の先端
24c :第二電極の中心軸
25 :光出射面
31 :トリガ管
31a :封止部
32 :導電性部材
32a :導電性部材の先端
33 :モリブデン箔
34 :ピン
θ :第二電極の中心軸を基準としたときの、第一電極の中心軸とトリガ部材とを結ぶ線のなす角度
d :導電性部材の先端から第二電極の中心軸までの距離
h :第二電極の先端が、発光管の内壁面から突出している長さ

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7