(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123404
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/103 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
G08B17/103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020703
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 友雅
(72)【発明者】
【氏名】坂上 聡
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085BA32
5C085DA08
5C085FA20
(57)【要約】
【課題】減光式煙感知器における煙の検出精度を向上させる。
【解決手段】発射光を発する送光素子11と、発射光を再帰性反射板に向けて屈折させる送光レンズ12と、再帰性反射板で発射光が反射して生じた反射光を受ける受光レンズ14と、光軸が送光素子11の光軸と一致しない位置、又は送光素子11が発射光を発する向きと異なる向きに設けられており、受光レンズ14を介して反射光を受ける受光素子13と、を有し、受光レンズ14は送光レンズ12を内包している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射光を発する送光素子と、
前記発射光を再帰性反射板に向けて屈折させる送光レンズと、
前記再帰性反射板で前記発射光が反射して生じた反射光を受ける受光レンズと、
光軸が前記送光素子の光軸と一致しない位置、又は前記送光素子が前記発射光を発する向きと異なる向きに設けられており、前記受光レンズを介して前記反射光を受ける受光素子と、
を有し、
前記受光レンズは前記送光レンズを内包している煙感知器。
【請求項2】
前記受光素子は、前記受光レンズの光軸上の位置に設けられており、
前記送光素子は、前記受光レンズの光軸と重なっていない前記送光レンズの光軸上の位置に設けられている、
請求項1に記載の煙感知器。
【請求項3】
前記受光素子は、前記送光レンズの光軸上において、前記送光素子が前記発射光を発する向きと反対の向きに前記反射光を受けるように設けられており、
前記煙感知器は、前記受光レンズを通過した前記反射光を前記受光素子に向けて反射する反射鏡をさらに有する、
請求項1に記載の煙感知器。
【請求項4】
前記送光レンズは、光軸が前記受光レンズの光軸と重なる位置に設けられている、
請求項3に記載の煙感知器。
【請求項5】
前記受光レンズを通過した前記反射光を反射する第1反射鏡と、
前記送光素子が発した前記発射光を前記送光レンズに向けて反射する第2反射鏡と、
前記第1反射鏡が反射した前記反射光を前記受光素子に向けて反射する第3反射鏡と、
を有する、
請求項1に記載の煙感知器。
【請求項6】
前記送光素子と前記受光素子とが対向する位置に設けられており、
前記第2反射鏡の裏面に前記第3反射鏡が設けられている、
請求項5に記載の煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙を感知する煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
投光器から照射した光が再帰性反射板で反射した光の強度に基づいて煙を感知する減光式煙感知器が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案出願公開昭63-143996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減光式煙感知器は、多くの場合、大空間での火災検出に用いられる。再帰性反射板を用いる場合、送光部(受光部)と再帰性反射板は対向する離れた壁面等に設置され、その距離は最大100mになることもある。したがって、再帰性反射板を用いる場合は、送光部と受光部が200m離れることになり、送光部より発した光は減衰して受光部に届くので、受光する光の量は僅かとなるため、S/N比を向上させる技術が望まれている。送光の光束を絞れば減衰量は減らすことができるが、光束を絞ると設置時に光軸調整の精度が必要になり、建物の歪みの影響も大きくなるため、経験上光束の拡散角は1~2度程度である。
【0005】
従来の再帰性反射板を利用する減光式煙感知器においては、送光部と受光部とそれぞれのレンズが並んで配置され、送光素子の光軸上における、送光素子が光を発する側と反対側の壁面等に再帰性反射板が設けられている。受光素子は、再帰性反射板で反射した光を送光素子の側方で受けるように構成されていた。その結果、筐体サイズを大型化せずに、受光素子のレンズ径を大きくすることができないため、受光素子の光軸方向に入射する反射光の量を多く取れずS/N比の改善による煙の検出精度向上が難しいという問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、再帰性反射板を利用する減光式煙感知器における煙の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の煙感知器は、発射光を発する送光素子と、前記発射光を再帰性反射板に向けて屈折させる送光レンズと、前記再帰性反射板で前記発射光が反射して生じた反射光を受ける受光レンズと、光軸が前記送光素子の光軸と一致しない位置、又は前記送光素子が前記発射光を発する向きと異なる向きに設けられており、前記受光レンズを介して前記反射光を受ける受光素子と、を有し、前記受光レンズは前記送光レンズを内包している。
【0008】
前記受光素子は、前記受光レンズの光軸上の位置に設けられており、前記送光素子は、前記受光レンズの光軸と重なっていない前記送光レンズの光軸上の位置に設けられていてもよい。前記受光素子は、前記送光レンズの光軸上において、前記送光素子が前記発射光を発する向きと反対の向きに前記反射光を受けるように設けられており、前記煙感知器は、前記受光レンズを通過した前記反射光を前記受光素子に向けて反射する反射鏡をさらに有してもよい。
【0009】
前記送光レンズは、光軸が前記受光レンズの光軸と重なる位置に設けられていてもよい。前記煙感知器は、前記受光レンズを通過した前記反射光を反射する第1反射鏡と、前記送光素子が発した前記発射光を前記送光レンズに向けて反射する第2反射鏡と、前記第1反射鏡が反射した前記反射光を前記受光素子に向けて反射する第3反射鏡と、を有してもよい。
【0010】
前記送光素子と前記受光素子とが対向する位置に設けられており、前記第2反射鏡の裏面に前記第3反射鏡が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、減光式煙感知器における煙の検出精度を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】第3の実施形態の煙感知器において本体部の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[従来の煙感知器100の構成]
本発明の煙感知器100の前提となる技術を説明するために、従来の煙感知器100についてまず説明する。
図1は、従来の煙感知器100の構成を示す。煙感知器100は、筐体1に収容された送光素子11と、送光レンズ12と、受光素子13と、受光レンズ14とを備える。
【0014】
煙感知器100は、発射光を再帰性反射板2に向けて発する。発射光の進む向きを
図1中に矢印で示す。煙感知器100は、再帰性反射板2で反射光が反射して生じた反射光を受ける。測定空間内に煙が存在する状態では、発射光及び反射光の光路が煙により遮られるため、煙感知器100が受ける反射光の強さが低下する。煙感知器100は、この反射光の低下量に基づいて、測定空間内の煙を感知する。
【0015】
再帰性反射板2は、煙感知器100からの発射光を煙感知器100へ反射させる。再帰性反射板2は、例えば、ガラスビーズ球を樹脂の中に多数混入させた構造を有する。再帰性反射板2は、この構造により、発射光とほぼ平行且つ逆方向へ発射光を反射させる。
【0016】
送光素子11は、発射光を発する光源である。送光レンズ12は、送光素子11が発した発射光を再帰性反射板2に向けて屈折させる。受光素子13は、受光レンズ14を介して再帰性反射板2からの反射光を受ける。受光レンズ14は、再帰性反射板2からの反射光を受ける。
【0017】
受光レンズ14は、反射光を受光素子13の位置に収束させる。
図1の煙感知器100では、煙感知器100の同一の筐体内に送光レンズ12及び受光レンズ14が並べて設置されているため、筐体サイズに比べ受光レンズ14の口径が小さくなる。このため、受光素子13に入射する反射光の量が少なくS/N比が低下してしまい、煙の有無の検出精度が不足するという問題が生じていた。
【0018】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態の煙感知器100の構成を示す。
図2(a)は、煙感知器100の構成(A-A線断面図)を示す。
図2(b)は、煙感知器100を再帰性反射板2側から見た形状を示す。再帰性反射板2は、
図1に示す再帰性反射板2と同様であるため、
図2中では、再帰性反射板2を省略している。
【0019】
煙感知器100は、筐体1に収容された送光素子11と、送光レンズ12と、受光素子13と、受光レンズ14とを備える。送光素子11及び受光素子13は、
図1の送光素子11及び受光素子13と同様である。送光素子11は、送光レンズ12の光軸上の位置に設けられている。送光素子11は、配線基板15上に設けられている。配線基板15は、例えばプリント基板である。
【0020】
受光素子13は、受光レンズ14の光軸上の位置に設けられている。受光素子13は、その光軸が送光素子11の光軸とは一致しない位置に設けられている。受光素子13は、送光素子11と同じ配線基板15上に設けられている。
【0021】
送光レンズ12は、
図1と同様に、発射光を再帰性反射板2に向けて屈折させる。送光レンズ12は、受光レンズ14に内包されている。送光レンズ12は、受光レンズ14の光軸と受光レンズ14の外縁との間に設けられている。送光レンズ12は、例えば、受光レンズ14の厚み方向における中央位置に設けられている。送光素子11が発した発射光は、
図2(a)中の破線及び矢印で示すように、送光レンズ12において屈折してほぼ平行光となる。ほぼ平行光となった発射光は、再帰性反射板2の方向へ進む。
【0022】
図2(b)は、送光レンズ12及び受光レンズ14を再帰性反射板2側から見た様子を示す。
図2(b)に示すように、送光レンズ12の光軸A1は、受光レンズ14の光軸A2と重なっていない。
【0023】
受光レンズ14は、
図1の受光レンズ14と同様に、再帰性反射板2からの反射光を受ける。反射光は、
図2(a)中の破線及び矢印で示すように、受光レンズ14により屈折して受光素子13に集まる。受光レンズ14の焦点距離は、送光レンズ12の焦点距離とほぼ同じとなり、各素子との距離に合う焦点距離になる。受光レンズ14の焦点距離は、受光レンズ14の厚み方向の中心位置から受光素子13までの距離である。
【0024】
第1の実施形態の煙感知器100では、送光レンズ12が受光レンズ14に内包されているので、送光レンズ12及び受光レンズ14を並べて設ける場合(
図1)に比べて、受光レンズ14を大きくすることができる。煙感知器100は、大型の受光レンズ14を用いることにより、受光素子13の光軸方向に入射する反射光の量を増加させることができるので、煙感知器100を大型化させることなく、S/N比を改善することにより煙の検出精度を向上させることができる。
【0025】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態の煙感知器100を示す。第2の実施形態の煙感知器100は、筐体1の内部に凹面を有する反射鏡を備える。ここでは、反射鏡は凹面としたが、凹面に限定しない。
図3(a)は、煙感知器100の構成(A-A線断面図)を示す。
図3(b)は、煙感知器100を再帰性反射板2側から見た形状を示す。煙感知器100は、筐体1に収容された送光素子11、送光レンズ12、受光素子13、受光レンズ14、配線基板15及び反射鏡21を備える。
【0026】
図3(a)に示す受光素子13は、送光素子11が配置されている配線基板15において送光素子11とは反対側の面に設置されている。受光素子13は、送光素子11が発射光を発する向きと異なる向きに設けられている。受光素子13は、例えば、送光レンズ12の光軸上において、送光素子11が発射光を発する向きと反対の向きに反射光を受けるように設けられている。受光素子13は、送光素子11が発射光を発する方向と垂直な方向に反射光を受けるように設けられてもよい。
【0027】
送光レンズ12は、その一部が受光レンズ14の中央位置と重なるように設けられている。
図3(b)に示すように、送光レンズ12は、例えばその光軸A1が受光レンズ14の光軸A2と重なる位置に設けられている。
【0028】
反射鏡21は、煙感知器100内において受光素子13に向かい合う位置に設けられている。反射鏡21は、受光レンズ14を通過した反射光を受光素子13に向けて反射する。
【0029】
第2の実施形態の煙感知器100は、反射鏡21を介して受光素子13へ反射光を入射させるので、受光素子13と受光レンズ14との距離は、受光レンズ14の焦点距離よりも短くてよい。したがって、反射鏡21を用いずに受光素子13へ反射光を入射させる場合(
図2)に比べて、煙感知器100の筐体の厚さLを小さくすることができる。
【0030】
また、第2の実施形態の煙感知器100においては、送光素子11と送光レンズ12との距離を、受光素子13と受光レンズ14との距離、及び受光レンズ14の焦点距離よりも小さくすることができる。したがって、煙感知器100では、送光素子11を送光レンズ12に近付けることができるので、送光レンズ12の口径を小さくすることができる。このため、受光レンズ14の有効面積が大きくなり、S/N比を改善することができる。
【0031】
[第3の実施形態]
図4は、第3の実施形態の煙感知器100の構成を示す。第3の実施形態の煙感知器100は、筐体1の内部に第1反射鏡22及び両面鏡23を備える。送光素子11は、配線基板15aに設けられている。受光素子13は、配線基板15aとは異なる配線基板15bに設けられている。受光素子13は、送光素子11と対向する位置に設けられている。
【0032】
第1反射鏡22は、受光レンズ14を通過した反射光を反射する。
図4の例では、第1反射鏡22は、反射光を両面鏡23へ向けて反射する。
【0033】
両面鏡23は、その表側を第2反射鏡として、送光素子11が発した発射光を送光レンズ12に向けて反射する。両面鏡23は、その裏側を第3反射鏡として、第1反射鏡22が反射した反射光を受光素子13に向けて反射する。この第3反射鏡は、第2反射鏡の裏面に設けられている。第2反射鏡及び第3反射鏡は、両面鏡23からなる例に限定されず、複数の反射鏡としてそれぞれ煙感知器100内に配置されてもよい。
【0034】
第3の実施形態の煙感知器100は、第1反射鏡22及び両面鏡23を有することにより、送光素子11及び受光素子13を、受光レンズ14の光軸と重ならない位置に設けることができる。その結果、煙感知器100の筐体の厚さLを小さくすることができる。
【0035】
[第1から第3の実施形態の煙感知器100による効果]
第1から第3の実施形態の煙感知器100では、送光レンズ12が受光レンズ14に内包されているので、送光レンズ12及び受光レンズ14を並べて設ける場合(
図1)に比べて、煙感知器100を小型化することができる。煙感知器100は、そのサイズを大きくすることを抑制しつつ、受光レンズ14を大型化することができる。煙感知器100は、大型の受光レンズ14を用いることにより、受光素子13の光軸方向に入射する反射光の量を増加させることができる。このため、煙感知器100は、S/N比を改善することにより煙の検出精度を向上させることができる。
【0036】
[第1の参考例]
図5は、第1の参考例の煙感知器200の構成を示す。煙感知器200は、第1本体部30及び第2本体部40を備える。第1本体部30は、送光素子11、送光レンズ12、配線基板15a及び反射鏡22を備える。第2本体部40は、受光素子13、受光レンズ14、配線基板15b及び反射鏡24を備える。
【0037】
送光素子11は、配線基板15aに設けられている。反射鏡22は、送光素子11が発した発射光を送光レンズ12に向けて反射させる。受光素子13は、配線基板15bに設けられる。反射鏡24は、受光レンズ14を通過した発射光を受光素子13へ向けて反射させる。このようにして、送光素子11と受光素子13とが別の筐体に設けられることにより、個々の筐体を小型化することが可能になる。
【0038】
[第2の参考例]
図6は、第2の参考例の煙感知器200の構成を示す。
図6に示すように、煙感知器200においては、第1本体部30に、反射鏡22a及び反射鏡22bが設けられている。第2本体部40に、反射鏡24a及び反射鏡24bが設けられている。
【0039】
反射鏡22aは、送光素子11が発した発射光を反射鏡22bへ向けて反射する。反射鏡22bは、反射鏡22aが反射した発射光を送光レンズ12へ向けて反射する。反射鏡24aは、受光レンズ14を通過した発射光を反射鏡24bへ向けて反射する。反射鏡24bは、反射鏡24aが反射した発射光を受光素子13へ向けて発射する。
【0040】
第1本体部30は、反射鏡22a及び22bを用いて発射光を第2本体部40へ向けて発することにより、その筐体を小型化することができる。第2本体部40は、反射鏡24a及び24bを用いて発射光を受けることにより、受光レンズ14から受光素子13までの距離を確保しつつ、その筐体を小型化することができる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0042】
1 筐体
2 再帰性反射板
11 送光素子
12 送光レンズ
13 受光素子
14 受光レンズ
15 配線基板
15a 配線基板
15b 配線基板
21 反射鏡
22 反射鏡
22a 反射鏡
22b 反射鏡
23 両面鏡
24 反射鏡
24a 反射鏡
24b 反射鏡
30 第1本体部
40 第2本体部
100 煙感知器
200 煙感知器