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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123428
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】車両用のドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/06 20140101AFI20220817BHJP
   E05B 85/06 20140101ALI20220817BHJP
   E05B 81/30 20140101ALI20220817BHJP
   E05B 81/42 20140101ALI20220817BHJP
【FI】
E05B81/06
E05B85/06
E05B81/30
E05B81/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020752
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆
(72)【発明者】
【氏名】片原 幸太
(72)【発明者】
【氏名】宮代 龍
(72)【発明者】
【氏名】末松 徹也
(72)【発明者】
【氏名】高藤 聡
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250HH01
2E250JJ49
2E250KK01
2E250KK02
2E250LL01
2E250PP15
2E250QQ04
2E250QQ10
2E250RR13
(57)【要約】
【課題】手動切替機構による状態の切り替えの確実性の向上を図る。
【解決手段】ドアロック装置20は、ラッチ機構50をアンラッチ状態に切替可能なメカリンク位置とアンラッチ状態に切替不能なメカリンクカット位置とに移動可能なオープンリンク30と、メカリンクカット位置に位置するとオープンリンク30をメカリンクカット位置に保持しメカリンク位置に位置するとオープンリンク30をメカリンク位置に保持するアクティブレバー25と、アクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置に移動させることができるインサイドドアハンドル131と、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置する状態でインサイドドアハンドル25が操作された合に、駆動力によってアクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動させるモータ22と、を有する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期位置から作動位置に移動することにより、車両ドアを閉止状態に保持可能なラッチ状態と前記車両ドアの閉止状態を解除可能なアンラッチ状態とに切替可能に構成されているラッチ機構を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替えることができるように構成されている第一部材と、
前記第一部材に係合することにより前記ラッチ機構を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替可能なメカリンク位置と、前記第一部材に係合しないことにより前記ラッチ機構を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替不能なメカリンクカット位置と、に移動可能な第二部材と、
前記第二部材に連係しており、第一位置に位置することにより前記第二部材を前記メカリンクカット位置に保持し、第二位置に位置することにより前記第二部材を前記メカリンク位置に保持する第三部材と、
駆動力によって前記第三部材を前記第一位置と前記第二位置との一方に選択的に移動させることができるように構成される駆動力源と、
使用者の手動操作により初期位置から作動位置に移動できるように構成されており、前記第三部材が前記第一位置に位置する状態で前記初期位置から前記作動位置に移動すると、前記第三部材を前記第一位置から前記第二位置に移動させるように構成されている操作部材と、
前記駆動力源を駆動する制御ユニットと、
を有しており、
前記制御ユニットは、前記第三部材が前記第一位置に位置する状態で前記操作部材が初期位置から作動位置に移動した場合、前記第三部材が前記第一位置から前記第二位置へ移動するように前記駆動力源を駆動するように構成されている、
車両用のドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記制御ユニットは、
前記第三部材が前記操作部材の手動操作により前記第一位置から前記第二位置に移動したか否かを判定し、
前記第三部材が前記操作部材の手動操作により前記第一位置から前記第二位置に移動したと判定した場合、さらに、前記第三部材を前記第二位置から前記第一位置に移動させる条件である再ロック条件が成立したか否かを判定し、
前記再ロック条件が成立したと判定した場合、前記第三部材が前記第二位置から前記第一位置に移動するように前記駆動力源を駆動するように構成されている、
車両用のドアロック装置。
【請求項3】
初期位置から作動位置に移動することにより、車両ドアを閉止状態に保持可能なラッチ状態と前記車両ドアの閉止状態を解除可能なアンラッチ状態とに切替可能に構成されているラッチ機構を前記アンラッチ状態に切替えることができるように構成されている第一部材と、
前記第一部材に係合することにより前記ラッチ機構を前記アンラッチ状態に切替可能なメカリンク位置と、前記第一部材に係合しないことにより前記ラッチ機構を前記アンラッチ状態に切替不能なメカリンクカット位置と、に移動可能な第二部材と、
前記第二部材に連係しており、第一位置に位置することにより前記第二部材を前記メカリンクカット位置に保持し、第二位置に位置することにより前記第二部材を前記メカリンク位置に保持する第三部材と、
駆動力によって前記第三部材を前記第一位置と前記第二位置との一方に選択的に移動させることができるように構成される駆動力源と、
車外側からキーが挿入されることで回転操作が可能になるように構成されているとともに、所定の方向への前記回転操作によって前記第二位置に位置する前記第三部材を前記第一位置に移動させることができ、前記所定の方向とは反対方向への前記回転操作によって前記第一位置に位置する前記第三部材を前記第二位置に移動させることができるように構成されているキーシリンダと、
前記駆動力源を駆動する制御ユニットと、
を有しており、
前記制御ユニットは、
前記第三部材が前記第二位置に位置する場合、前記第三部材を前記第二位置から前記第一位置に移動させる条件である再ロック条件が成立したか否か、および前記キーシリンダが操作中であるか否かを判定し、
前記再ロック条件が成立したと判定し、かつ、前記キーシリンダが操作中ではないと判定した場合、前記第三部材が前記第一位置に移動するように前記駆動力源を駆動し、
前記再ロック条件が成立したと判定し、かつ、前記キーシリンダが操作中であると判定した場合、前記駆動力源を駆動しないように構成される、
車両用のドアロック装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記駆動力源と前記第三部材との間に介在しており、前記駆動力源の駆動力によって第一回転位置と第二回転位置との間を回転する回転部材と、
前記回転部材を前記第一回転位置と前記第二回転位置との間の中立位置に弾性付勢する第一付勢部材と、
初期位置と作動位置との間を移動可能に構成され、前記初期位置から前記作動位置まで移動することにより、前記第二部材を介することなく前記第一部材を前記初期位置から前記作動位置へ移動させることができるように構成された第四部材と、
前記回転部材の回転軌跡から外れた退避位置と前記回転部材の回転軌跡内の阻止位置との間を移動可能に構成された阻止部材と、
前記阻止部材を前記退避位置に向かって弾性付勢する第二付勢部材と、
をさらに備え、
前記第三部材は、前記第一位置にあるときに前記回転部材が前記中立位置から前記第一回転位置まで回転した場合に前記第一位置から前記第二位置に向かって移動するとともに、前記第二位置にあるときに前記回転部材が前記中立位置から前記中立位置と前記第二回転位置との間の第三回転位置まで回転した場合に前記第二位置から前記第一位置に向かって移動するように、前記回転部材に係合し、
前記第四部材は、前記回転部材が前記中立位置から前記第二回転位置まで回転した場合に前記第二回転位置にて前記初期位置から前記作動位置まで回転するように、前記回転部材に係合し、
前記阻止部材は、前記第三部材が前記第一位置から前記第二位置に移動した時に前記第二付勢部材の弾性付勢力に抗して前記退避位置から前記阻止位置に移動するように、前記第三部材に係合し、
前記回転部材は、前記第三部材が前記第二位置にあるときに前記中立位置から前記第三回転位置に向かう方向に回転した場合に、前記第三回転位置にて前記阻止部材に係合することにより、前記第三回転位置から前記第二回転位置に向かう方向への回転が阻止されるように構成される、
車両用のドアロック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、制御装置が使用者による操作に応じてモータ等を作動させることにより、ドアロック装置をメカリンクカット状態(手動操作により車両ドアを開放することができない状態。ロック状態とも称する)、メカリンク状態(手動操作により車両ドアを開放することができる状態。アンロック状態とも称する)、アンラッチ状態(車両ドアを開放可能な状態)の何れかに切り替えるように構成されている車両用ドア開閉制御装置が開示されている。特許文献1に開示のドアロック装置は、駆動力源の駆動力によって、メカリンクカット状態、メカリンク状態、および「ラッチ機構がアンラッチ状態である状態」に切り替えることができる自動切替機構を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-31858号公報
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、ドアロック装置に対しては、手動操作によってもメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替えられるようにしたいという要請がある。このため、ドアロック装置は、手動操作によってメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替えるための手動切替機構を有している。したがって、ドアロック装置には、前述の自動切替機構と手動切替機構との両方を有するものがある。
【0005】
使用者がドアロック装置の状態を切り替えるために手動切替機構を手動操作した場合、手動操作が不十分または不完全であると、ドアロック装置の状態が切り替わらないことがある。そして、使用者が手動操作したもののドアロック装置の状態が実際に切り替わっていない場合、その後に駆動力源が作動すると、ドアロック装置が使用者の意図しない状態に切り替わるおそれがある。また、使用者が手動切替機構を手動操作している間は、ドアロック装置は、前記3つの状態のいずれでもない中間の状態になる。このような中間の状態で駆動力源が作動すると、ドアロック装置が使用者の意図しない状態に切り替わるおそれがある。しかしながら、特許文献1には、手動操作によってドアロック装置の状態を確実に切り替えるための構成は開示されていない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的の一つは、自動切替機構と手動切替機構との両方を有するドアロック装置において、手動切替機構による状態の切り替えの確実性の向上を図ることである。さらに、本発明の目的の他の一つは、手動操作中に自動切替機構が動作することによりドアロック装置が使用者の意図しない状態に切り替わることを防止することである。
【0007】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用ドアロック装置(20)は、
初期位置から作動位置に移動することにより、車両ドア(12)を閉止状態に保持可能なラッチ状態と前記車両ドアの閉止状態を解除可能なアンラッチ状態とに切替可能に構成されているラッチ機構(50)を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替えることができるように構成されている第一部材(52)と、
前記第一部材(52)に係合することにより前記ラッチ機構(50)を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替可能なメカリンク位置と、前記第一部材(52)に係合しないことにより前記ラッチ機構(50)を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替不能なメカリンクカット位置と、に移動可能な第二部材(30)と、
前記第二部材(30)に連係しており、第一位置(メカリンクカット位置)に位置することにより前記第二部材(30)を前記メカリンクカット位置に保持し、第二位置(メカリンク位置)に位置することにより前記第二部材(30)を前記メカリンク位置に保持する第三部材(25)と、
駆動力によって前記第三部材(25)を前記第一位置(メカリンクカット位置)と前記第二位置(メカリンク位置)との一方に選択的に移動させることができるように構成される駆動力源(22)と、
使用者の手動操作により初期位置から作動位置に移動できるように構成されており、前記第三部材(25)が前記第一位置(メカリンクカット位置)に位置する状態で前記初期位置から前記作動位置に移動すると、前記第三部材(25)を前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)に移動させるように構成されている操作部材(131)と、
前記駆動力源を駆動する制御ユニット(601)と、
を有している。
【0008】
そして、前記制御ユニット(601)は、前記第三部材(25)が前記第一位置(メカリンクカット位置)に位置する状態で前記操作部材(131)が初期位置から作動位置に移動した場合、前記第三部材(25)が前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)へ移動するように前記駆動力源(22)を駆動するように構成されている。
【0009】
本発明によれば、前記第三部材(25)を第一位置から第二位置に移動させるように操作部材(131)が手動操作された場合、制御ユニット(601)は、第三部材(25)が第一位置(メカリンクカット位置)から第二位置(メカリンク位置)に移動するように駆動力源(22)を駆動する。このような構成によれば、操作部材(131)に対する手動操作の操作量が不十分なために手動操作によっては第三部材(25)が第一位置から第二位置に移動しない場合であっても、駆動力源(22)の駆動力によって、第三部材(25)が第一位置から第二位置に移動する。したがって、ドアロック装置(25)を確実にメカリンクカット状態(第二部材(20)がメカリンクカット位置に位置する状態)からメカリンク状態(第二部材が(30)メカリンク位置に位置する状態)に切り替えることができる。
【0010】
本発明の一側面において、前記制御ユニット(601)は、
前記第三部材(25)が前記操作部材(131)の手動操作により前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)に移動したか否かを判定し、
前記第三部材(25)が前記操作部材(131)の手動操作により前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)に移動したと判定した場合、さらに、前記第三部材(25)を前記第二位置(メカリンク位置)から前記第一位置(メカリンクカット位置)に移動させる条件である再ロック条件が成立したか否かを判定し、
前記再ロック条件が成立したと判定した場合、前記第三部材(25)が前記第二位置(メカリンク位置)から前記第一位置(メカリンクカット位置)に移動するように前記駆動力源(22)を駆動するように構成されていてもよい。
【0011】
このような構成であると、制御ユニット(601)は、ドアロック装置(20)がメカリンク状態(第二部材(30)がメカリンク位置に位置する状態)である場合に再ロック条件が成立すると、第三部材(25)を第二位置(メカリンク位置)から第一位置(メカリンクカット位置)へ移動させる動作である再ロック動作を実行する。これにより、ドアロック装置(20)は、操作部材(131)の通常のドア開操作(具体的には、操作部材(131)を、初期位置から作動位置に1回移動させる操作)によっては、車両ドア(12)を開放できない状態に維持される。
【0012】
そして、再ロック条件が成立して制御ユニット(601)が駆動力源(22)を駆動した場合に、ドアロック装置(20)が使用者の意図しない状態に切り替わることが防止される。すなわち、操作部材(131)の手動操作の操作量が不足していたために第三部材(25)が第一位置(メカリンクカット位置)から第二位置(メカリンク位置)に移動していないにもかかわらず、制御ユニット(601)は、第三部材(25)が前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)に移動したと誤判定するおそれがある。そして、この誤判定の後に再ロック条件が成立すると、制御ユニット(601)は、第三部材(25)が第二位置(メカリンク位置)に位置していないにもかかわらず、第三部材(25)を第二位置(メカリンク位置)から第一位置(メカリンクカット位置)に移動するように駆動力源(22)を駆動する。すなわち、第三部材(25)が第二位置(メカリンク位置)に位置していないにもかかわらず、第二位置(メカリンク位置)に位置していることを前提とする制御を実行する。その結果、ドアロック装置(20)が使用者の意図しない状態(予期しない状態)に切り替わるおそれがある。しかしながら、上記構成によれば、操作部材(131)が手動操作された際に、駆動力源(22)の駆動力によって、第三部材(25)は確実に第一位置(メカリンクカット位置)から第二位置(メカリンク位置)に移動している。したがって、再ロック条件の成立後に、第三部材(25)を第二位置(メカリンク位置)から第一位置(メカリンクカット位置)に確実に移動させることができる。すなわち、ドアロック装置(20)が使用者の意図しない状態に切り替わることを防止できる。
【0013】
また、本発明に係る車両用ドアロック装置(20)は、
初期位置から作動位置に移動することにより、車両ドア(12)を閉止状態に保持可能なラッチ状態と前記車両ドアの閉止状態を解除可能なアンラッチ状態とに切替可能に構成されているラッチ機構(50)を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替えることができるように構成されている第一部材(52)と、
前記第一部材(52)に係合することにより前記ラッチ機構(50)を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替可能なメカリンク位置と、前記第一部材(52)に係合しないことにより前記ラッチ機構(50)を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替不能なメカリンクカット位置と、に移動可能な第二部材(30)と、
前記第二部材(30)に連係しており、第一位置(メカリンクカット位置)に位置することにより前記第二部材(30)を前記メカリンクカット位置に保持し、第二位置(メカリンク位置)に位置することにより前記第二部材(30)を前記メカリンク位置に保持する第三部材(25)と、
駆動力によって前記第三部材(25)を前記第一位置(メカリンクカット位置)と前記第二位置(メカリンク位置)との一方に選択的に移動させることができるように構成される駆動力源(22)と、
車外側からキーが挿入されることで回転操作が可能になるように構成されているとともに、所定の方向への前記回転操作によって前記第二位置(メカリンク位置)に位置する前記第三部材(アクティブレバー)を前記第一位置(メカリンクカット位置)に移動させることができ、前記所定の方向とは反対方向への前記回転操作によって前記第一位置(メカリンクカット位置)に位置する前記第三部材(アクティブレバー)を前記第二位置(メカリンク位置)に移動させることができるように構成されているキーシリンダ(142)と、
前記駆動力源(22)を駆動する制御ユニット(601)と、
を有している。
【0014】
そして、前記制御ユニット(601)は、
前記第三部材(25)が前記第二位置(メカリンク位置)に位置する場合、前記第三部材(25)を前記第一位置(メカリンクカット位置)に移動させる条件である再ロック条件が成立したか否か、および前記キーシリンダ(142)が操作中であるか否かを判定し、
前記再ロック条件が成立したと判定し、かつ、前記キーシリンダ(142)が操作中ではないと判定した場合、前記第三部材(25)が前記第一位置(メカリンクカット位置)に移動するように前記駆動力源(22)を駆動し、
前記再ロック条件が成立したと判定し、かつ、前記キーシリンダ(142)が操作中であると判定した場合、前記駆動力源(22)を駆動しないように構成される。
【0015】
本発明によれば、ドアロック装置(20)が使用者の意図しない状態に切り替わることが防止される。すなわち、キーシリンダ(142)が操作中である場合には、第三部材(25)が第一位置(メカリンクカット位置)と第二位置(メカリンク位置)の中間に位置することがある。この状態で再ロック条件が成立して駆動力源(22)が駆動されると、ドアロック装置(20)の状態が使用者の意図しない状態に切り替わることがある。そこで、再ロック条件が成立した場合であって、キーシリンダ(142)が操作中である場合には、制御ユニット(601)は、前記第三部材(25)を前記第一位置(メカリンクカット位置)に移動させる動作を実行しない。これにより、ドアロック装置(20)が使用者の意図しない状態に切り替わることが防止できる。
【0016】
本発明の一側面において、ドアロック装置(20)は、
前記駆動力源(22)と前記第三部材(25)との間に介在しており、前記駆動力源(22)の駆動力によって第一回転位置と第二回転位置との間を回転する回転部材(23)と、
前記回転部材(23)を前記第一回転位置と前記第二回転位置との間の中立位置に弾性付勢する第一付勢部材(24)と、
初期位置と作動位置との間を移動可能に構成され、前記初期位置から前記作動位置まで移動することにより、前記第二部材(30)を介することなく前記第一部材(52)を前記初期位置から前記作動位置へ移動させることができるように構成された第四部材(29)と、
前記回転部材(23)の回転軌跡から外れた退避位置と前記回転部材(23)の回転軌跡内の阻止位置との間を移動可能に構成された阻止部材(38)と、
前記阻止部材(38)を前記退避位置に向かって弾性付勢する第二付勢部材(39)と、
をさらに備えてもよい。
【0017】
そして、前記第三部材(25)は、前記第一位置(メカリンクカット位置)にあるときに前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第一回転位置まで回転した場合に前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)に向かって移動するとともに、前記第二位置(メカリンク位置)にあるときに前記回転部材(23)が前記中立位置から前記中立位置と前記第二回転位置との間の第三回転位置まで回転した場合に前記第二位置(メカリンク位置)から前記第一位置(メカリンクカット位置)に向かって移動するように、前記回転部材(23)に係合し、
前記第四部材(29)は、前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第二回転位置まで回転した場合に前記第二回転位置にて前記初期位置から前記作動位置まで回転するように、前記回転部材(23)に係合し、
前記阻止部材(38)は、前記第三部材(25)が前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)に移動した時に前記第二付勢部材(39)の弾性付勢力に抗して前記退避位置から前記阻止位置に移動するように、前記第三部材(25)に係合し、
前記回転部材(23)は、前記第三部材(25)が前記第二位置(メカリンク位置)にあるときに前記中立位置から前記第三回転位置に向かう方向に回転した場合に、前記第三回転位置にて前記阻止部材(38)に係合することにより、前記第三回転位置から前記第二回転位置に向かう方向への回転が阻止されるように構成される。
【0018】
このような構成であると、第三部材(25)が第二位置(メカリンク位置)にあるときに、阻止部材は第二付勢部材(39)の弾性付勢力に抗して阻止位置に位置する。このとき回転部材(23)を中立位置から第三回転位置に移動させると、第三部材(25)が第二位置(メカリンク位置)から第一位置(メカリンクカット位置)に向かって移動する。一方で、阻止部材(38)は、第三回転位置の回転部材に係合することにより、その位置が阻止位置に保持される。このため、第三回転位置にある回転部材(23)が阻止レバー(38)に係合することによって、回転部材(23)が第三回転位置を通過して第二回転位置に移動することが防止される。
【0019】
つまり、再ロック条件が成立した場合に第三部材(25)を第二位置(メカリンク位置)から第一位置(メカリンクカット位置)へ移動させる動作である再ロック動作(駆動力源(22)の駆動力によって回転部材(23)を中立位置から第三回転位置に移動させる動作)を実行する構成であれば、次のような効果を奏する。操作部材(131)に対してドアロック装置(20)をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作がなされた場合、駆動力源(22)の駆動力によって第三部材(25)は確実に第二位置に移動しており、これに伴い阻止部材(38)も阻止位置に移動している。したがって、再ロック動作を実行した場合、回転部材(23)を阻止部材(38)によって確実に第三回転位置で停止させることができる(第三回転位置を通過して第二回転位置まで到達しないようにできる)。したがって、ドアロック装置20が使用者の意図しない状態(車両ドアが開放できる状態)に切り替わることが防止される。
【0020】
さらに、キーシリンダ(142)の操作中には再ロック条件が成立しても駆動力源(22)を駆動しない構成であれば、次のような効果を奏する。キーシリンダ(142)の操作により第三部材(25)が第一位置に移動すると、阻止部材(38)が阻止位置から退避位置に移動する。そして、阻止部材(38)が退避位置に位置すると、回転部材(23)は中立位置から第三回転位置を通過して第二回転位置に移動可能になる。このため、仮にこの状態で再ロック動作(駆動力源(22)の駆動力によって回転部材(23)を中立位置から第三回転位置に移動させる動作)が実行されると、回転部材(23)が第三回転位置で停止せずに第二回転位置に移動し、その結果、ラッチ機構(50)がアンラッチ状態に切り替わるおそれがある。しかしながら、キーシリンダ(142)の操作中には再ロック条件が成立しても駆動力源(22)が駆動されない(再ロック動作が実行されない)から、キーシリンダ(142)の操作中に、ラッチ機構(50)がアンラッチ状態に切り替わることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、車両ドアの構成例を示す模式図である。
図2図2は、図1のII-II矢視断面図である。
図3図3は、ドアロック装置の構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、ドアロック装置のメカリンクカット状態を示す図である。
図5図5は、ドアロック装置のメカリンク状態を示す図である。
図6図6は、ドアロック装置のアンラッチ状態への切替動作を示す図である。
図7図7は、ドアロック装置のメカリンク状態からメカリンクカット状態への切替動作を示す図である。
図8図8は、ドアロック装置のメカリンク状態からメカリンクカット状態への切替動作を示す図である。
図9図9は、ドアロック装置の制御系を示す図である。
図10図10は、ドアロック装置の状態の遷移を示す図である。
図11図11は、ドアロック装置のメカリンク状態からメカリンクカット状態への切替動作を示す図である。
図12図12は、CPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
図13図13は、CPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(車両ドア)
図1は、ドアロック装置20が適用された車両ドア12の側面図であり、車外側から見た図である。図2は、ドアロック装置20が適用された車両ドア12の後端部近傍の断面図であり、図1のII-II矢視断面図である。
【0023】
車両ドア12は、車体10に対して回転可能に連結されており、車体10に対して回転移動することで閉止と開放ができるように構成されている。車両ドア12は、その下半部を構成するドア本体部121と、その上半部に設けられているドアサッシュ122とを備えている。ドア本体部121は、インナパネル123、アウタパネル124、およびトリム125を有している。アウタパネル124は、車両ドア12の外側面を構成する。インナパネル123は、アウタパネル124の車内側に固定されている。トリム125は、インナパネル123の車内側に固定されており、ドア本体部121の内側面を構成する。
【0024】
アウタパネル124にはアウトサイドドアハンドル装置14が取り付けられている。アウトサイドドアハンドル装置14は、車体10に対して回転可能なアウトサイドドアハンドル141と、キーを差し込んで回転させることができるキーシリンダ142とを有している。キーシリンダ142は、図略の付勢部材によって中立位置に常時付勢されており、中立位置に位置する場合にキーを挿抜可能に構成されている。そして、使用者は、キーシリンダ142にキーを差し込むことによって、キーシリンダ142を中立位置から両方向に回転させることができる。トリム125には、インサイドドアハンドル装置13が取り付けられている。インサイドドアハンドル装置13は、車両ドア12に対して回転移動可能なインサイドドアハンドル131を有する。なお、アウトサイドドアハンドル141およびインサイドドアハンドル131は、いずれも図略の付勢部材によって初期位置に向けて弾性付勢されており、操作されていない間は初期位置に保持されている。車両の使用者は、アウトサイドドアハンドル141およびインサイドドアハンドル131を、付勢部材の付勢力に抗して回転させることにより、初期位置から作動位置へ移動させることができる。なお、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141の作動位置は、初期位置から所定の角度回転した位置である。
【0025】
(ドアロック装置の概略)
図2に示すように、ドアロック装置20は、車両ドア12の内部空間(すなわち、インナパネル123とアウタパネル124とに囲まれる空間)に配置されている。なお、ドアロック装置20の一部は、車両ドア12の後端部において外部に露出している。そして、ドアロック装置20は、インナパネル123(すなわち車両ドア12)に固定されている。
【0026】
ドアロック装置20は、筐体であるハウジング21、ラッチ機構50、手動切替機構、および自動切替機構を有している。ラッチ機構50は、車両ドア12を閉止状態に保持可能なラッチ状態と、車両ドア12の閉止状態を解除可能なアンラッチ状態と、に切替可能に構成されている。さらに、ドアロック装置20は、メカリンク状態、メカリンクカット状態、および「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替え可能に構成されている。メカリンク状態は、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141に対する所定の手動操作によってラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることを許容する状態である。メカリンクカット状態は、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141に対する所定の手動操作によってはラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができない状態である。
【0027】
手動切替機構は、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141に対する所定の手動操作(具体的には、初期位置から作動位置に1回移動させる操作。「ドア開操作」と称することもある)によってドアロック装置20をメカリンク状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えることができるように(換言すると、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができるように)構成されている。さらに手動切替機構は、インサイドドアハンドル131に対する所定の手動操作によってドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替え可能に構成されている。
【0028】
自動切替機構は、後述するモータ22の駆動力によって、ドアロック装置20を、メカリンク状態、メカリンクカット状態、および「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」のいずれかに切り替えることができるように構成されている。さらに、自動切替機構は、キーシリンダ142の手動操作によって、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態へ切り替えること、およびメカリンク状態からメカリンクカット状態へ切り替えることができるように構成されている。
【0029】
図3は、ドアロック装置20の機械的な構成を示す分解斜視図である。ドアロック装置20は、ハウジング21、モータ22、回転部材23、回転部材付勢部材24、アクティブレバー25、節度スプリング40、コントロールレバー26、アウトサイドロッキングレバー28、キースイッチレバー27、阻止レバー38、阻止レバー付勢部材39、リリースレバー29、インサイドレバー32、インサイドオープンレバー33、アウトサイドオープンレバー36、アウトサイドオープンレバー付勢部材37、オープンリンク30、およびラッチ機構50を有している。
【0030】
ハウジング21は、ドアロック装置20の筐体である。ハウジング21は、第一支持部211、第二支持部212、第三支持部213、第四支持部214、第五支持部215、および第六支持部216を有している。第一支持部211は、回転部材23を回転可能に支持する部分である。第二支持部212は、アクティブレバー25およびインサイドレバー32を同軸に回転可能に支持する部分である。第三支持部213は、コントロールレバー26を回転可能に支持する部分である。第四支持部214は、リリースレバー29を回転可能に支持する部分である。第五支持部215は、インサイドオープンレバー33を回転可能に支持する部分である。第六支持部216は、アウトサイドオープンレバー36を回転可能に支持する部分である。これらの支持部は、ハウジング21に一体に形成された円筒状の突起である。
【0031】
回転部材23、アクティブレバー25、コントロールレバー26、リリースレバー29、インサイドレバー32、インサイドオープンレバー33、およびアウトサイドオープンレバー36には、それぞれ軸孔が形成されている。そして、これら各部材の軸孔に第一支持部211~第六支持部216のそれぞれが挿入されることで、これらの各部材が各支持部を中心としてハウジング21に対して回転可能に支持される。なお、オープンリンク30は、アウトサイドオープンレバー36によって回転可能に支持されている。
【0032】
(ラッチ機構)
ラッチ機構50は、ハウジング21のうち図3の領域Aの部分に配設される。ラッチ機構50は、ラッチ51(図2参照)とポール(図略)とリフトレバー52(図4図8および図11参照)とを有している。ラッチ51は、ドアロック装置20のフレーム(なお、フレームはハウジング21に取り付けられている部材である)などに回転可能に支持されており、回転することによってアンラッチ位置とラッチ位置(ラッチ位置にはハーフラッチ位置およびフルラッチ位置が含まれる)とに移動可能である。アンラッチ位置は、車体10に設けられているストライカ101を保持しない位置(換言すると、係合可能な位置)、すなわちラッチ51とストライカ101との噛み合いを解除することができる位置である。ラッチ位置は、車両ドア12が閉止状態にある場合において、車体10に設けられているストライカ101を保持する位置(換言すると、係合する位置)、すなわちラッチ51とストライカ101との噛み合いを解除することができない位置である。ラッチ51はラッチ復帰バネによってアンラッチ位置に向けて常時付勢されている。
【0033】
ポールは、ドアロック装置20のフレームなどに回転可能に支持されており、係合位置と非係合位置とに移動可能である。係合位置は、ラッチ51と係合することでラッチ51をラッチ位置に保持する(換言すると、アンラッチ位置への回転移動を阻止する)位置である。非係合位置は、ラッチ51に係合しない位置であり、ラッチ51がアンラッチ位置へ回転移動することを許容する位置である。また、ポールはポール復帰バネによって係合位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0034】
リフトレバー52は、ドアロック装置20のフレームなどに回転可能に支持されており、回転することによって初期位置と作動位置とに移動可能である。そして、リフトレバー52は、初期位置から作動位置に移動すると、ポールを押してポールを係合位置から非係合位置に移動させる。なお、リフトレバー52は、ポールを介して伝達されるポール復帰バネの付勢力によって、初期位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0035】
そして、ラッチ機構50は、車両ドア12が閉止状態にある場合に、ラッチ51がラッチ位置に位置することでラッチ51とストライカ101との噛み合い状態を保持し、ポールが係合位置に位置してラッチ51をラッチ位置に保持する。これにより、ラッチ機構50は、車両ドア12を車体10に対して閉止状態に保持する。この状態が、ラッチ機構50のラッチ状態である。車両ドア12が閉止状態にありかつラッチ機構50がラッチ状態にある場合にリフトレバー52が初期位置から作動位置へ移動すると、リフトレバー52がポールを押して、ポールを係合位置から非係合位置へ移動させる。これによりポールとラッチ51の係合が解除され、ラッチ51がラッチ復帰バネの付勢力によってアンラッチ位置に回転移動し、車両ドア12の閉止状態が解除可能になる。この状態が、ラッチ機構50のアンラッチ状態である。このように、ラッチ機構50は、リフトレバー52が初期位置から作動位置に移動することによりラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されている。
【0036】
(手動切替機構)
手動切替機構には、インサイドオープンレバー33、インサイドレバー32、アウトサイドオープンレバー36、およびオープンリンク30が含まれる。
【0037】
インサイドオープンレバー33は、初期位置と作動位置との間を回転移動可能である。図4図8および図11は、インサイドオープンレバー33が初期位置に位置する状態を示す。インサイドオープンレバー33の作動位置は、図4図8および図11中では、初期位置から時計回りの方向に所定の角度回転した位置である。インサイドオープンレバー33は、図略の付勢部材(例えばバネなど)によって初期位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0038】
インサイドオープンレバー33は、インサイドドアハンドル131と連係している。例えば、インサイドオープンレバー33とインサイドドアハンドル131とは、図略の操作ワイヤによって連結されている。インサイドドアハンドル131が初期位置に位置する状態では、インサイドオープンレバー33は、付勢部材によって初期位置に保持される。インサイドドアハンドル131が操作されると(すなわち、インサイドドアハンドル131が初期位置から作動位置へ移動すると)、インサイドオープンレバー33は、初期位置から作動位置に移動する。
【0039】
インサイドオープンレバー33は、第一係合部331および第二係合部332を有している。インサイドオープンレバー33の第一係合部331は、インサイドレバー32の第一係合部321と係合可能に係合可能に構成されている。そして、インサイドオープンレバー33が初期位置から作動位置に移動すると、インサイドオープンレバー33の第一係合部331はインサイドレバー32の第一係合部321に係合してインサイドレバー32の第一係合部321を押す。
【0040】
インサイドオープンレバー33の第二係合部332は、アクティブレバー25に設けられている第四係合部254と係合可能である。インサイドオープンレバー33が初期位置から作動位置に向かって移動すると、インサイドオープンレバー33の第二係合部332は、メカリンクカット位置(後述)に位置するアクティブレバー25の第三係合部253に係合する。そして、インサイドオープンレバー33の第二係合部332は、アクティブレバー25の第三係合部253を押すことによって、アクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置(後述)に移動させる。
【0041】
インサイドレバー32は、ハウジング21に対して回転することにより初期位置と作動位置とに移動可能である。図4図8および図11は、インサイドレバー32が初期位置に位置している状態を示す。インサイドレバー32の作動位置は、図4図8および図11中において、初期位置から反時計回りの方向に所定の角度回転移動した位置である。
【0042】
インサイドレバー32は、第一係合部321および第二係合部322を有している。インサイドレバー32の第一係合部321は、インサイドオープンレバー33の第一係合部331に係合可能に構成されている。インサイドレバー32の第二係合部322は、アウトサイドオープンレバー36の係合部362に係合可能に係合可能に構成されている。そして、インサイドオープンレバー33が初期位置から作動位置に移動すると、インサイドレバー32の第一係合部321がインサイドオープンレバー33の第一係合部331に押され、インサイドレバー32は初期位置から作動位置へ移動する。インサイドレバー32が初期位置から作動位置へ移動すると、インサイドレバー32の第二係合部322がアウトサイドオープンレバー36の係合部362に係合してアウトサイドオープンレバー36の係合部362を押す。
【0043】
アウトサイドオープンレバー36は、ハウジング21に対して回転することによって初期位置と作動位置とに移動可能である。図4図8および図11は、アウトサイドオープンレバー36が初期位置に位置する状態を示す。なお、アウトサイドオープンレバー36の回転中心線は、図4図8および図11中では左右に略平行な方向である。アウトサイドオープンレバー36は、アウトサイドオープンレバー付勢部材37によって初期位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0044】
アウトサイドオープンレバー36は、アウトサイドドアハンドル141と連係している。具体的には、アウトサイドオープンレバー36は、操作ワイヤによってアウトサイドドアハンドル141と連結されている。アウトサイドドアハンドル141およびインサイドレバー32が初期位置に位置している場合、アウトサイドオープンレバー36は、アウトサイドオープンレバー付勢部材37の付勢力によって初期位置に保持される。アウトサイドドアハンドル141とインサイドレバー32の少なくとも一方が初期位置から作動位置に移動した場合、アウトサイドオープンレバー36は、アウトサイドオープンレバー付勢部材37の付勢力に抗して初期位置から作動位置へ移動する。
【0045】
オープンリンク30は、アウトサイドオープンレバー36の支持部361によって回転可能に支持されている。このため、オープンリンク30は、アウトサイドオープンレバー36とともにハウジング21に対して相対的に回転可能であるとともに、アウトサイドオープンレバー36に対して相対的に回転可能である。そして、オープンリンク30は、アウトサイドオープンレバー36に対して相対的に回転することにより、メカリンク位置とメカリンクカット位置とに移動可能である。なお、オープンリンク30は第二係合部302を有している。オープンリンク30の第二係合部302は、後述するオープンリンク付勢部材31に係合している。そして、オープンリンク30は、オープンリンク付勢部材31を介してアクティブレバー25と連係しており、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置するかメカリンク位置に位置するかに応じて、メカリンク位置とメカリンクカット位置のいずれか一方に位置する。オープンリンク30の第二係合部302は、オープンリンク30のアウトサイドオープンレバー36に対する相対的な回転中心線に平行な方向(図4図8および図11においては紙面手前側)に突出する突起状の構成を有する。
【0046】
オープンリンク30は、ラッチ機構50のリフトレバー52に係脱可能な第一係合部301を有している。オープンリンク30がメカリンク位置に位置する状態でアウトサイドオープンレバー36が初期位置から作動位置に移動すると、オープンリンク30の第一係合部301は、ラッチ機構50のリフトレバー52に当接する。そして、オープンリンク30の第一係合部301は、リフトレバー52を初期位置から作動位置に移動させる。このため、ラッチ機構50はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。一方、オープンリンク30がメカリンクカット位置に位置する状態では、アウトサイドオープンレバー36が初期位置から作動位置に移動しても、オープンリンク30の第一係合部301は、ラッチ機構50のリフトレバー52に当接しない。このためこの場合には、リフトレバー52は初期位置に保持される。したがって、ラッチ機構50はラッチ状態に保持される。
【0047】
このように、ドアロック装置20は、オープンリンク30がメカリンク位置に位置する状態では、使用者がアウトサイドドアハンドル141とインサイドドアハンドル131の任意の一方を手動操作することにより、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができるように構成されている。さらに、ドアロック装置20は、オープンリンク30がメカリンクカット位置に位置する状態では、使用者がアウトサイドドアハンドル141とインサイドドアハンドル131のいずれを手動操作しても、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができないように構成されている。ただし、オープンリンク30がメカリンクカット位置に位置する状態であっても、インサイドドアハンドル131に対して所定の緊急アンラッチ操作を行うことにより、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができる(後述)。
【0048】
(自動切替機構)
自動切替機構には、モータ22、回転部材23、阻止レバー38、アクティブレバー25、コントロールレバー26、およびリリースレバー29が含まれる。
【0049】
モータ22は、回転部材23の回転駆動力源であり、後述するドアロックECU601の制御によって正逆両方向の回転駆動力を発生させる。モータ22は、ハウジング21に固定されている。モータ22の回転軸221にはウォーム222が設けられており、モータ22はこのウォーム222を介して回転部材23を回転させる。
【0050】
回転部材23は、モータ22とアクティブレバー25およびリリースレバー29との間に介在する部材であり、モータ22から伝達される回転動力によって正逆回転する。具体的には、回転部材23はウォームホイールであり、モータ22の回転軸221に設けられているウォーム222と噛み合っている。なお、モータ22のウォーム222と回転部材23(ウォームホイール)とは逆駆動可能に構成されている。すなわち、回転部材23は、モータ22に通電されていない状態(すなわち、モータ22が駆動していない状態)では、後述する回転部材付勢部材24の付勢力によって回転することができる。
【0051】
回転部材23は、回転部材付勢部材24によって、回転方向(第一支持部211の中心線を中心とする円の周方向)に関して、図4に示す中立位置に向けて常時弾性付勢されている。そして、回転部材23は、モータ22の駆動力により、中立位置から図5に示す第一回転位置、図6に示す第二回転位置、および図7に示す第三回転位置に回転移動可能である。第一回転位置は、中立位置から所定の一方向(図4図8および図11においては反時計回り方向)に回転した位置である。第二回転位置および第三回転位置は、中立位置から前記所定の一方向とは反対方向(図4図8および図11においては時計回り方向)に回転した位置である。第二回転位置は、中立位置からの回転角度が第三回転位置よりも大きい位置である。なお、中立位置は第一回転位置と第三回転位置との間に位置する。
【0052】
そして、モータ22の所定の方向の回転駆動により、回転部材23は中立位置から第一回転位置に移動し、モータ22の前記所定の方向とは反対方向の回転駆動により、回転部材23は中立位置から第三回転位置または第二回転位置に移動する。モータ22の回転駆動により回転部材23を中立位置から第一回転位置、第二回転位置、および第三回転位置のいずれかに移動させた後、モータ22の回転駆動を停止すると(モータ22への通電を停止すると)、回転部材23は回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置に移動する。
【0053】
回転部材23は、第一係合部231、第二係合部232、第三係合部233、および第四係合部234を有している。回転部材23の第一係合部231は、回転部材23の軸線方向の一方に突出する突起状の構成を有しており、後述するアクティブレバー25の第一係合部251と第二係合部252に択一的に係合可能に構成されている。回転部材23の第二係合部232は、第一係合部231が突出する側とは反対側に突出する突起状の構成を有しており、リリースレバー29の第一係合部291に係合可能に構成されている。回転部材23の第三係合部233は、第二係合部232と同じ側に突出する突起状の構造を有しており、阻止レバー38と当接可能に構成されている。ただし、回転部材23の第三係合部233は、回転部材23の位置にかかわらずリリースレバー29には係合しないように構成されている。回転部材23の第四係合部234は、第二係合部232および第三係合部233と同じ側に突出する突起状の構成を有しており、阻止位置に位置する阻止レバー38の第一係合部381に係合可能に構成されている。
【0054】
回転部材付勢部材24は、回転部材23を中立位置に向けて弾性付勢する。回転部材付勢部材24は、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネである。そして、ねじりコイルバネの一方のアームが回転部材23に係合しており、他方のアームがハウジング21に係合している。
【0055】
阻止レバー38は、モータ22の回転駆動によって回転部材23を中立位置から第三回転位置に移動させる際に、回転部材23が第三回転位置を超えて第二回転位置に移動することを阻止する。阻止レバー38は、概ね棒状に形成されており、ハウジング21に設けられているガイドによって、ハウジング21に対して直線往復移動可能に支持されている。そして、阻止レバー38は、ハウジング21に対して直線移動することにより、図4および図6に示す退避位置と、図5図7図8、および図11に示す阻止位置の間を移動できる。なお、阻止位置は、特定の1点の位置ではなく、ある程度の範囲を有する位置である。
【0056】
退避位置は、回転部材23の回転を阻止しない位置であり、具体的には回転部材23の第三係合部233と第四係合部234の回転軌跡の外側の位置である。阻止位置は、阻止レバー38が回転部材23の第三係合部233に当接し且つ回転部材23の第四係合部234と係合することにより、回転部材23が中立位置および第三回転位置から第二回転位置へ向かって回転移動することを阻止する位置である。阻止位置は、具体的には、阻止レバー38の少なくとも一部が回転部材23の第三係合部233および第四係合部234の移動軌跡内に入り込んでいる位置であり、かつ、阻止レバー38の一部が第三回転位置に位置する回転部材23の第三係合部233の側面(回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって回転する場合に、回転方向前側に位置する面)に当接する位置である。
【0057】
阻止レバー38は、第一係合部381および第二係合部382を有する。阻止レバー38の第一係合部381は、回転部材23の第四係合部234と係合可能な段差面である。阻止レバー38の第一係合部381は、阻止レバー38が阻止位置に位置している状態では、回転部材23の第四係合部234の回転移動の軌跡よりも半径方向内側に位置する。このため、阻止レバー38が阻止位置に位置する状態では、回転部材23が中立位置から第三回転位置に回転移動することで、回転部材23の第四係合部234が阻止位置にある阻止レバー38の第一係合部381に係合可能である。そして、阻止レバー38の第一係合部381に回転部材23の第四係合部234が係合している状態(すなわち、阻止レバー38の第一係合部381の退避位置の側に回転部材23の第四係合部234が存在する状態)では、阻止レバー38は退避位置に移動できず、阻止位置に保持される。
【0058】
阻止レバー38の第二係合部382は、アクティブレバー25の第三係合部253と係合可能に構成されている。
【0059】
阻止レバー付勢部材39は、阻止レバー38を退避位置に向けて常時弾性付勢する。阻止レバー付勢部材39は、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネである。そして、一方のアームが阻止レバー38に係合しており、他方のアームがハウジング21に係合している。なお、阻止レバー付勢部材39の付勢力は、後述するアクティブレバー25を付勢する節度スプリング40の付勢力よりも小さい。
【0060】
アクティブレバー25は、回転することにより第一位置であるメカリンクカット位置と第二位置であるメカリンク位置とに移動可能である。図4図6および図7はアクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置する状態を示し、図5図8図9および図11はアクティブレバー25がメカリンク位置に位置する状態を示す。アクティブレバー25は、節度スプリング40(図2参照)によって、メカリンクカット位置とメカリンク位置のいずれか一方に向かって択一的に弾性付勢されている。具体的には、アクティブレバー25は、メカリンクカット位置とメカリンク位置との所定の中間点よりもメカリンクカット位置に近い側では、節度スプリング40によってメカリンクカット位置に向かって弾性付勢される。一方、アクティブレバー25は、前記所定の中間点よりもメカリンク位置に近い側では、節度スプリング40によってメカリンク位置に向かって弾性付勢される。このため、アクティブレバー25は、節度スプリング40以外の外力が掛かっていない状態では、メカリンク位置またはメカリンクカット位置に保持される。
【0061】
アクティブレバー25は、第一係合部251、第二係合部252、第三係合部253、および第四係合部254を有している。アクティブレバー25の第一係合部251は、回転部材23の第一係合部231に係合可能に構成されている。アクティブレバー25の第一係合部251は、図4に示すように、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置する状態では、回転部材23の第一係合部231の移動軌跡上、かつ、中立位置に位置する回転部材23の第一係合部231よりも第一回転位置の側(図中では反時計回転方向側)に位置する。アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置している状態で、回転部材23が中立位置から第一回転位置に向かって移動すると、アクティブレバー25の第一係合部251が回転部材23の第一係合部231に押される。このため、アクティブレバー25はメカリンク位置の側に向かって移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンクカット位置とメカリンク位置の所定の中間点よりもメカリンク位置の側に移動すると、節度スプリング40の弾性付勢力によってメカリンク位置に移動する。
【0062】
アクティブレバー25の第二係合部252は、回転部材23の第一係合部231に係合可能に構成されている。アクティブレバー25の第二係合部252は、図8に示すように、アクティブレバー25がメカリンク位置に位置する状態では、回転部材23の第一係合部231の移動軌跡上、かつ、中立位置に位置する回転部材23の第一係合部231よりも第三回転位置の側(図中では時計回転方向側)に位置する。アクティブレバー25がメカリンク位置に位置している状態で、回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって移動すると、アクティブレバー25の第二係合部252が回転部材23の第一係合部231に押される。このため、アクティブレバー25はメカリンクカット位置の側に向かって移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンク位置とメカリンクカット位置との所定の中間点よりもメカリンクカット位置の側に移動すると、節度スプリング40の弾性付勢力によってメカリンクカット位置に移動する。
【0063】
なお、図4および図8に示すように、アクティブレバー25の第一係合部251および第二係合部252は、回転部材23が中立位置に位置している場合、アクティブレバー25がメカリンクカット位置とメカリンク位置のいずれに位置していても、回転部材23の第一係合部231と係合せずに回転部材23の第一係合部231から離間している。
【0064】
アクティブレバー25の第三係合部253は、阻止レバー38の第二係合部382に係合可能に構成されている。アクティブレバー25の第三係合部253は、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置すると、阻止レバー38の第二係合部382に係合しない。このため、阻止レバー38は退避位置に移動できる。アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動すると、アクティブレバー25の第三係合部253が阻止レバー38の第二係合部382に当接し、阻止レバー38を阻止レバー付勢部材39の付勢力に抗して退避位置から阻止位置へ移動させる。そして、アクティブレバー25は、メカリンク位置に位置している状態では、阻止レバー38を阻止位置に保持する。
【0065】
アクティブレバー25は、オープンリンク付勢部材31を介してオープンリンク30と連係している。具体的には、オープンリンク付勢部材31は、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネである。オープンリンク付勢部材31の2本のアームは略平行であり、2本のアームどうしの間隔が広がるように弾性変形できる。そして、オープンリンク30の第二係合部302は、オープンリンク付勢部材31の2本のアームに挟まれている。アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置すると、オープンリンク30はオープンリンク付勢部材31によってメカリンクカット位置に弾性付勢され、アクティブレバー25がメカリンク位置に位置すると、オープンリンク30はオープンリンク付勢部材31によってメカリンク位置に弾性付勢される。なお、アクティブレバー25には取付部256が設けられていて、この取付部256にオープンリンク付勢部材31が取り付けられている。
【0066】
アクティブレバー25の第五係合部255は、コントロールレバー26の第一アーム部261と係合している。
【0067】
コントロールレバー26は、アクティブレバー25と連動して回転する。アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置する場合のコントロールレバー26の位置を、アクティブレバー25と同様に「メカリンクカット位置」と称し、アクティブレバー25がメカリンク位置に位置する場合のコントロールレバー26の位置を「メカリンク位置」と称する。
【0068】
コントロールレバー26は、第一アーム部261、第二アーム部262、および第三アーム部263を有している。第一アーム部261は、アクティブレバー25の第五係合部255に係合している。第二アーム部262は、第一ポジションスイッチ602のONとOFFを切り替えるための部分である。第三アーム部263は、第二ポジションスイッチ603のONとOFFを切り替えるための部分である。そして、コントロールレバー26がメカリンクカット位置に位置すると、第二アーム部262と第三アーム部263はそれぞれ第一ポジションスイッチ602と第二ポジションスイッチ603の操作子に接触しない。このため、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603は、OFFの状態に保持される。コントロールレバー26がメカリンク位置に移動すると、第二アーム部262と第三アーム部263は、それぞれ第一ポジションスイッチ602と第二ポジションスイッチ603の操作子に接触する。このため、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がONに切り替わる。
【0069】
コントロールレバー26は、キースイッチレバー27およびアウトサイドロッキングレバー28(図3参照)を介してキーシリンダ142に連係している。このため、車両の使用者は、キーシリンダ142にキーを差し込んで所定の方向に回転させることにより、コントロールレバー26およびアクティブレバー25をメカリンク位置からメカリンクカット位置へ移動させることができる。同様に、車両の使用者は、キーシリンダ142にキーを差し込んで前記所定の方向とは反対方向に回転させることにより、コントロールレバー26およびアクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動させることができる。
【0070】
リリースレバー29は、ハウジング21に対して回転することによって、図4図5図7図8および図11に示す初期位置と図6に示す作動位置とに移動可能である。リリースレバー29は、第一係合部291および第二係合部292を有している。リリースレバー29の第一係合部291は、回転部材23の第二係合部232と係合可能に構成されている。リリースレバー29の第二係合部292は、リフトレバー52の第二係合部522に係合可能に構成されている。回転部材23が中立位置から第三回転位置を超えて第二回転位置に向かって回転移動すると、リリースレバー29の第一係合部291は、回転部材23の第二係合部232に係合し、回転部材23の第二係合部232に押される。これにより、リリースレバー29は初期位置から作動位置へ向かって移動する。リリースレバー29が初期位置から作動位置へ移動すると、リリースレバー29の第二係合部292がラッチ機構50のリフトレバー52の第二係合部522に係合してリフトレバー52の第二係合部522を押し、リフトレバー52を初期位置から作動位置へ移動させる。
【0071】
このように、リリースレバー29は、回転部材23の中立位置から第二回転位置への回転移動に連動して初期位置から作動位置に移動(回転)することにより、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。なお、リリースレバー29は、オープンリンク30を介さずにリフトレバー52を直接的に押す。すなわち、リリースレバー29は、オープンリンク30がメカリンク位置に位置するかメカリンクカット位置に位置するかにかかわらず、リフトレバー52を初期位置から作動位置へ移動させることができる。
【0072】
(システム構成)
図9は、ドアロック装置20の制御系を示す図である。図9に示すように、ドアロック装置20は、ドアロックECU601、第一ポジションスイッチ602、第二ポジションスイッチ603、第一キー連動スイッチ604、第二キー連動スイッチ605、ロックスイッチ606、およびアンラッチスイッチ607を有している。
【0073】
ドアロックECU601は、モータ22を回転駆動する制御ユニットであり、マイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース(I/F)等を含む。CPUは、ROMに格納されているインストラクション又はプログラム又はルーチンを読み出し、RAMに展開して実行できる。
【0074】
第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603は、コントロールレバー26の位置を検出するためのスイッチである。第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603は、コントロールレバー26がメカリンクカット位置に位置するとOFFになり、コントロールレバー26がメカリンク位置に位置するとONになる。そして、ドアロックECU601は、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFであるかONであるかを取得でき、取得した第一ポジションスイッチ602と第二ポジションスイッチ603のONとOFFの状態に基づいて、コントロールレバー26がメカリンクカット位置に位置するかメカリンク位置に位置するかを判定できる。
【0075】
第一キー連動スイッチ604は、キーシリンダ142が中立位置に位置している場合にはOFFになり、キーシリンダ142が中立位置から所定の方向(具体的には、コントロールレバー26がメカリンク位置に移動する方向)に回転している場合にはONになるように構成されている。第二キー連動スイッチ605は、キーシリンダ142が中立位置に位置している場合にはOFFになり、キーシリンダ142が中立位置から前記所定の方向とは反対方向(具体的には、コントロールレバー26がメカリンクカット位置に移動する方向)に回転している場合にはONになるように構成されている。ドアロックECU601は、第一キー連動スイッチ604および第二キー連動スイッチ605がONであるかOFFであるか(すなわち、キーシリンダ142が操作中であるか否か)を検出できる。
【0076】
ロックスイッチ606は、使用者が、「ドアロック装置20をメカリンク状態とメカリンクカット状態の何れかの状態に切り替えるため」および「ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合に、ドアロック装置20のモードをアンラッチ許可モードとアンラッチ不許可モードとのいずれかの状態に切り替えるため」に操作する電気的なスイッチである。ドアロックECU601は、ロックスイッチ606に対してドアロック装置20をアンラッチ許可モードに切り替えるため操作があったか否か、ドアロック装置20をアンラッチ許可モードに切り替えるための操作があったか否か、およびドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替えるための操作があったか否かを検出できる。アンラッチスイッチ607は、使用者がラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替えるため(車両ドア12を開放可能な状態にするため)に操作する電気的なスイッチである。ドアロックECU601は、アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替えるため操作があったか否かを検出できる。
【0077】
(ドアロック装置の動作)
次に、ドアロック装置20の動作について説明する。図10は、ドアロック装置20の状態遷移図である。ドアロック装置20は、前述のとおり、メカリンク状態、メカリンクカット状態、および「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」の3つの状態に切り替え可能である。なお、メカリンクカット状態およびメカリンク状態では、ラッチ機構50はラッチ状態である。ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合、ドアロックECU601は、アンラッチ許可モードとアンラッチ不許可モードといずれか一方のモードでドアロック装置20を制御する。アンラッチ許可モードは、使用者によるアンラッチスイッチ607の操作によってラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができる状態(モード)である。アンラッチ不許可モードは、使用者によるアンラッチスイッチ607の操作によってはラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができない状態(モード)である。使用者は、ロックスイッチ606を操作することにより、アンラッチ許可モードとアンラッチ不許可モードとの任意の一方を選択できる。
【0078】
(メカリンクカット状態)
図4に示すように、ドアロック装置20のメカリンクカット状態は、回転部材23が中立位置に位置しており、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置しており、かつ、阻止レバー38が退避位置に位置している状態である。ドアロックECU601は、通常はドアロック装置20をメカリンクカット状態に維持する。なお、ドアロックECU601は、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がいずれもOFFである場合、ドアロック装置20がメカリンクカット状態であると判定する。
【0079】
回転部材23が中立位置に位置していると、阻止レバー38の第一係合部381と回転部材23の第四係合部234とは係合しない。また、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置していると、阻止レバー38は退避位置への移動が許容される。このため、阻止レバー38は阻止レバー付勢部材39の付勢力によって退避位置に保持される。
【0080】
ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合、アクティブレバー25は、節度スプリング40の付勢力によって、メカリンクカット位置に保持される。そして、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置していると、オープンリンク30はアクティブレバー25に取り付けられているオープンリンク付勢部材31によってメカリンクカット位置に保持される。
【0081】
メカリンクカット状態でインサイドドアハンドル131が手動操作されると、インサイドドアハンドル131の動きがインサイドオープンレバー33とインサイドレバー32を介してアウトサイドオープンレバー36に伝達され、アウトサイドオープンレバー36は初期位置から作動位置へ移動する。しかしながら、オープンリンク30がメカリンクカット位置に位置しているため、アウトサイドオープンレバー36の初期位置から作動位置への移動に伴ってオープンリンク30が移動しても、オープンリンク30はリフトレバー52の第一係合部521に係合しない。このため、リフトレバー52は初期位置から移動せず、ラッチ機構50はラッチ状態に保持される。すなわち、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141のドア開操作では、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができない。
【0082】
(メカリンク状態)
図8に示すように、ドアロック装置20のメカリンク状態は、回転部材23が中立位置に位置しており、アクティブレバー25およびコントロールレバー26がメカリンク位置に位置しており、かつ、阻止レバー38が阻止位置に位置している状態である。この状態では、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603は、いずれもONである。
【0083】
(メカリンクカット状態から「ラッチ機構がアンラッチ状態である状態」への切り替え)
ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンクカット状態のアンラッチ許可モードである場合に、アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチにするための操作があったことを検出すると、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。具体的には、ドアロックECU601は、モータ22を駆動して回転部材23を中立位置から第二回転位置に移動させる。なお、図4に示すように、メカリンクカット状態では阻止レバー38は退避位置に位置しているため、回転部材23は、中立位置から第三回転位置を通過して第二回転位置に移動できる。
【0084】
図6に示すように、回転部材23が中立位置から第二回転位置に移動すると、回転部材23の第二係合部232がリリースレバー29の第一係合部291を押し、リリースレバー29を初期位置から作動位置へ移動させる。そして、リリースレバー29が初期位置から作動位置に移動すると、リリースレバー29はリフトレバー52を押し、リフトレバー52は初期位置から作動位置に移動する。その結果、ラッチ機構50はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。
【0085】
ドアロックECU601は、回転部材23が第二回転位置に到達すると、モータ22の駆動を停止する。このため、回転部材23は、回転部材付勢部材24の付勢力によって、第二回転位置から中立位置に戻る。したがって、ラッチ機構50はアンラッチ状態からラッチ状態に戻り、その結果、ドアロック装置20は「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」からメカリンクカット状態に切り替わる。
【0086】
なお、ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンクカット状態にあり制御モードがアンラッチ不許可モードである場合には、アンラッチスイッチ607に対する操作を検出しても、ドアロック装置20をメカリンクカット状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えない。すなわち、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンクカット状態に維持する。
【0087】
(メカリンクカット状態からメカリンク状態への切り替え)
図10に示すように、ドアロックECU601は、メカリンクカット状態である場合に、所定の条件(以下、「緊急解除条件」と記すことがある)が成立したことを検出すると、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える。例えば、ドアロックECU601は、車両が物体に衝突したと判定した場合、および、バッテリーの電圧(充電量)が閾値以下になった場合、のいずれかの場合、緊急解除条件が成立したと判定し、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える。このほか、ドアロックECU601は、ロックスイッチ606に対する「ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える操作」を検出した場合、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える。これにより、使用者は、インサイドドアハンドル131またはアウトサイドドアハンドル141のドア開操作によってラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替えられる。
【0088】
具体的には、ドアロックECU601は、モータ22を駆動することにより、回転部材23を中立位置から第一回転位置に移動させる。図5には、回転部材23が第一回転位置に移動した状態が示される。図5に示すように、回転部材23が中立位置から第一回転位置に向かって移動すると、回転部材23の第一係合部231が、メカリンクカット位置のアクティブレバー25の第一係合部251と係合してこの第一係合部251を押す。このため、アクティブレバー25はメカリンクカット位置からメカリンク位置へ向かって回転移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンクカット位置とメカリンク位置との所定の中間点を超えると、節度スプリング40の付勢力によってメカリンク位置に移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンク位置にてストッパ等に当接することにより、メカリンク位置に位置決めされる。アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動すると、アクティブレバー25の動作がオープンリンク付勢部材31を介してオープンリンク30に伝達され、オープンリンク30はメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動する。
【0089】
アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動すると、この移動に連動して、コントロールレバー26もメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動する。この結果、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わる。さらに、モータ22の駆動開始後、所定時間が経過した後に、モータ22の回転駆動が停止される。モータ22の回転駆動が停止されると、回転部材23は回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置に移動する。ただし、アクティブレバー25は、節度スプリング40の付勢力によってメカリンク位置に保持される。そして、アクティブレバー25がメカリンク位置に保持されることで、阻止レバー38は阻止位置に保持される。このように、回転部材23が中立位置から第一回転位置へ移動することにより、ドアロック装置20はメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わる。
【0090】
なお、インサイドドアハンドル131の操作によっても、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替えることができる。具体的には、ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合、インサイドドアハンドル131が操作されると(初期位置から作動位置へ移動すると)、インサイドドアハンドル131の操作に連動して、インサイドオープンレバー33が初期位置から作動位置へ移動する。それにより、インサイドオープンレバー33の第二係合部332が、アクティブレバー25の第四係合部254を押し、アクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動させる。その結果、ドアロック装置20はメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わる。さらに、前述のように、キーシリンダ142に対する手動操作によっても、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替えることができる。
【0091】
(メカリンク状態からメカリンクカット状態への切り替え動作)
図10に示すように、ドアロックECU601は、所定の条件(以下、「再ロック条件」と記すことがある)が成立した場合、ドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替える。再ロック条件が成立したか否かを判定する方法は、次のとおりである。ドアロックECU601は、インサイドドアハンドル131に対する手動操作、またはキーシリンダ142に対する操作(キーシリンダ142を介したコントロールレバー26の操作)によりドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わった後、所定の時間(例えば1秒)経過した場合、再ロック条件が成立したと判定する。例えば、ドアロックECU601は、ロックスイッチ606に対する「ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える操作」を検出することなく第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わったことを検出した場合、インサイドドアハンドル131に対する手動操作によりドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わったと判定する。同様に、ドアロックECU601は、第一キー連動スイッチ604がONに切り替わるとともに第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わったことを検出した場合、キーシリンダ142に対する手動操作によってドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わったと判定する。そして、ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わった後、所定の時間(例えば1秒)が経過した場合、再ロック条件が成立したと判定する。
【0092】
そして、再ロック条件が成立したと判定すると、ドアロックECU601は、モータ22を駆動して回転部材23を図8に示す中立位置から第三回転位置に向かって回転させる。図11は、回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって所定量回転した状態を示す。モータ22の回転駆動力によって回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって所定量回転すると、図11に示すように、回転部材23の第一係合部231がアクティブレバー25の第二係合部252に係合するよりも先に、回転部材23の第四係合部234が阻止レバー38の第一係合部381と係合する。回転部材23の第四係合部234が阻止レバー38の第一係合部381と係合すると、阻止レバー38は阻止位置から退避位置へ移動できない状態となる。
【0093】
図7は、回転部材23が図11に示す位置からさらに回転して第三回転位置に達した状態を示す図である。回転部材23が第三回転位置に達すると、回転部材23の第一係合部231がアクティブレバー25の第二係合部252を押し、アクティブレバー25はメカリンク位置からメカリンクカット位置へ向かって移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンク位置とメカリンクカット位置の中間点を過ぎると、節度スプリング40の付勢力によってメカリンクカット位置に移動し、ストッパ等に当接することによってメカリンクカット位置に位置決めされる。
【0094】
アクティブレバー25がメカリンクカット位置に移動すると、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603はONからOFFに切り替わる。ドアロックECU601は、モータ22の回転駆動を開始してから所定の時間が経過すると、モータ22の回転駆動を停止する(モータ22への通電を停止する)。なお、この「所定の時間」は、モータ22の回転駆動によって回転部材23を中立位置から第三回転位置に移動させるために必要な時間である。モータ22の回転駆動が停止された後においても、慣性によって回転部材23の回転が継続することがある。このため、回転部材23は慣性によって第三回転位置を通り過ぎて第二回転位置に向かって移動しようとする。また、アクティブレバー25がメカリンク位置からメカリンクカット位置に移動した場合、アクティブレバー25の第三係合部253と阻止レバー38の第二係合部382との係合が外れるので、阻止レバー38は阻止レバー付勢部材39の付勢力により阻止位置から退避位置に移動しようとする。
【0095】
しかしながら、アクティブレバー25がメカリンク位置からメカリンクカット位置に移動したときには、阻止レバー38の第一係合部381と回転部材23の第四係合部234が既に係合している。このため阻止レバー38は阻止位置から退避位置の側に移動できない。よって、阻止レバー38は阻止位置に保持される。そして、阻止レバー38が阻止位置に位置しているため、回転部材23は第三回転位置において阻止レバー38に当接してその移動が阻止される。具体的には、回転部材23の第三係合部233が、第三回転位置にて、阻止レバー38の一方の側面を構成する側壁に当接する。このため、阻止レバー38によって回転部材23が第三回転位置を行き過ぎること(すなわち、第三回転位置よりも第二回転位置の側に移動すること)が阻止される。
【0096】
モータ22の回転駆動が停止し、かつ、上記したような回転部材23の慣性が消失した後は、回転部材23は回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置へ移動する。回転部材23が中立位置へ移動すると、回転部材23の第四係合部234と阻止レバー38の第一係合部381の係合が解除される。このため、阻止レバー38は、阻止レバー付勢部材39の付勢力によって阻止位置から退避位置へ移動し、ドアロック装置20は図4に示すメカリンクカット状態になる。
【0097】
このように、インサイドドアハンドル131またはキーシリンダ142に対する操作によってドアロック装置20がメカリンクカット状態からメカリンク状態に切替えられた後、所定の時間が経過すると、ドアロックECU601は、再ロック条件が成立したと判定する。そして、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替える。この動作が再ロック動作である。このような動作により、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンクカット状態に保持する。換言すると、ドアロック装置20は、通常はメカリンクカット状態に保持される。
【0098】
(メカリンク状態から「ラッチ機構がアンラッチ状態である状態」への切り替え動作)
ドアロックECU601は、アンラッチスイッチ607に対する操作を検出すると、ドアロック装置20をメカリンク状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替える。ただし、ドアロック装置20は、モータ22の駆動力によっては、メカリンク状態から直接に「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えることができない。このため、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンク状態からいったんメカリンクカット状態に切替え、その後、メカリンクカット状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替える。モータ22の駆動力によってドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替える動作、およびドアロック装置20をメカリンクカット状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替える動作は前記のとおりである。
【0099】
具体的には、ドアロックECU601は、モータ22を正転させることによって、メカリンク状態のドアロック装置20の回転部材23を中立位置から第三回転位置に移動させ、その後、回転部材23を第二回転位置に移動させる。なお、ドアロック装置20がメカリンク状態であるとき、阻止レバー38が阻止位置に位置する。このため回転部材23を中立位置から第二回転位置に向けて回転させた場合、回転部材23は第三回転位置にて阻止レバーによりそれ以上の回転が阻止される。このように回転部材23を中立位置から直接に第三回転位置を超えて第二回転位置まで移動させることができない。そこで、回転部材23を中立位置から第三回転位置に移動させ、その後モータ22の回転駆動を停止する。モータ22の回転駆動が停止すると、回転部材23は、回転部材付勢部材24の付勢力により中立位置まで戻る。その後、ドアロックECU601は、モータ22を再度回転駆動させることにより、回転部材23を第二回転位置に移動させる。このような動作により、ドアロック装置20を「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替える。
【0100】
なお、ドアロック装置20がメカリンク状態である場合、上述のように、アウトサイドドアハンドル141またはインサイドドアハンドル131に対するドア開操作により、ドアロック装置20を「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切替ることができる。
【0101】
(緊急アンラッチ操作)
緊急アンラッチ操作は、ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合に、ドアロック装置20をメカリンクカット状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えるためのインサイドドアハンドル131に対する手動操作である。前記のとおり、ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合にインサイドドアハンドル131が操作されると、ドアロック装置20はメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わる。さらに、ドアロック装置20がメカリンク状態である場合にインサイドドアハンドル131が操作されると、ドアロック装置20はメカリンク状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替わる。ただし、インサイドドアハンドル131が操作されることによってドアロック装置20がメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わった場合、切り替わってから所定の時間が経過すると再ロック条件が成立する。そして、再ロック条件が成立すると、ドアロックECU601は、モータ22を駆動してドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替える。したがって、「1回目のインサイドドアハンドル131の操作の後、再ロック条件が成立するまでに2回目のインサイドドアハンドル131の操作を行う」という緊急アンラッチ操作により、ドアロック装置20をメカリンクカット状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に手動で切り替えることができる。
【0102】
(キーシリンダの操作による状態の切替)
車両の使用者は、キーシリンダ142にキーを差し込んで回転させることにより(すなわち、手動操作により)、コントロールレバー26およびアクティブレバー25をメカリンク位置からメカリンクカット位置へ移動させること、およびメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動させることができる。すなわち、使用者は、キーシリンダ142を操作することによって、ドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替えること、およびメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替えることができる。
【0103】
(ドア開放を防止する制御)
前述のとおり、ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合、インサイドドアハンドル131とキーシリンダ142の一方に対する手動操作によってドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替えることができる。インサイドドアハンドル131またはキーシリンダ142が手動操作された場合のアクティブレバー25の移動量は、インサイドオープンレバー33またはコントロールレバー26の移動量(回転角度)に応じて決まる。このため、使用者によるインサイドドアハンドル131の操作量またはキーシリンダ142の操作量が少ないと、アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置に完全に移動しないことがある。より正確には、アクティブレバー25が、節度スプリング40の付勢力の向きがメカリンク側に変わる位置(メカリンクカット位置とメカリンク位置との所定の中間点)にまで移動しないことがある。
【0104】
一方で、コントロールレバー26がメカリンクカット位置からメカリンク位置に向かって移動すると、アクティブレバー25がメカリンク位置に到達していない場合であっても、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わることがある。すなわち、コントロールレバー26がメカリンク位置に移動した場合に第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603が確実にOFFからONに切り替わるように、コントロールレバー26がメカリンク位置に到達するよりも少し前のタイミングで(すなわち、メカリンク位置よりもメカリンクカット位置の側の位置において)、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わるように、これらのスイッチが位置決めされる。このため、アクティブレバー25がメカリンク位置に到達していない(ドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わっていない)にもかかわらず、ドアロックECU601は、「ドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わった」と誤判定することがある。
【0105】
上記の誤判定後に再ロック条件が成立すると、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替えるために、モータ22を駆動して回転部材23を中立位置から第三回転位置に向けて回転させる。しかしながらこの場合には、実際にはドアロック装置20がメカリンクカット状態であり、阻止レバー38が阻止位置に移動していない(退避位置に位置している)から、回転部材23は第三回転位置を通過して第二回転位置に到達することがある。その結果、ラッチ機構50がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。このように、使用者によるインサイドドアハンドル131またはキーシリンダ142の操作中または操作後に再ロック条件が成立して再ロック動作が実行されると、意図せぬドアの閉止状態の解除がなされるおそれがある。そこで、ドアロックECU601は、このような使用者の意図しないドアの閉止状態の解除を防止するため、次の2つの制御を実行する。
【0106】
(1)アシスト制御
ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作を検出した場合、モータ22を所定の時間にわたって駆動することにより、回転部材23を中立位置から第一回転位置に移動させる。これにより、アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置に移動することをアシストし、アクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置へ確実に移動させる。したがって、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作があった場合、ドアロック装置20を確実にメカリンク状態に切り替えることができる。すなわち、手動切替機構によるドアロック装置20の状態の切り替えの確実性の向上を図ることができる。
【0107】
「ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作」の検出方法は次のとおりである。インサイドドアハンドル131が手動操作されてアクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置に移動した場合、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わる。そこで、ドアロックCU601は、ロックスイッチ606に対する操作を検出していないが、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603の少なくとも一方がOFFからONに切り替わったことを検出した場合、「ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作」があったと判定する。また、使用者がキーシリンダ142にキーを差し込んでキーシリンダ142を回転させることによってアクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置に移動した場合、第一キー連動スイッチ604がOFFからONに切り替わるとともに、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わる。したがって、ドアロックECU601は、第一キー連動スイッチ604がONになったことを検出するとともに、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603の少なくとも一方がOFFからONに切り替わったことを検出した場合も、「ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作」があったと判定する。
【0108】
(2)再ロック動作禁止制御
ドアロックECU601は、少なくとも「ドアロック装置20がメカリンク状態である」と判定した場合(前述のように、ドアロック装置20が実際にはメカリンクカット状態であるにもかかわらず、メカリンク状態であると判定されることがある)、キーシリンダ142が手動操作されている間は、再ロック動作を実行しない。すなわち、使用者がキーシリンダ142を手動操作している間は、ドアロック装置20がメカリンクカット状態とメカリンク状態の中間の状態になることがある。具体的には、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がONであるが、阻止レバー38が阻止位置に到達していない(回転部材23の回転を阻止しない)状態になることがある。この状態で回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって移動すると、回転部材23は第三回転位置で停止せずに第二回転位置に到達することがある。そこで、ドアロックECU601は、キーシリンダ142が操作されている間に再ロック条件が成立しても、ドアロックECU601は、再ロック動作を実行しない。なお、ドアロックECU601は、第一キー連動スイッチ604または第二キー連動スイッチ605がONである場合、キーシリンダ142が手動操作されていると判定する。
【0109】
このように、本実施形態によれば、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作がされた状態、またはされている状態で再ロック条件が成立した場合に、ドアロック装置20が「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替わることが防止される。これにより、車両ドア12が使用者の意図に反して開放されることを防止できる。
【0110】
ここで、ドアロック装置20の具体的な動作について説明する。図12は、ドアロックECU601のCPUが上述のアシスト制御を実現するために実行するルーチンを示すフローチャートである。ドアロックECU601のCPUは、図12のフローチャートに示すルーチンを、所定の周期で繰り返し実行する。以下、ドアロックECU601のCPUを、単に「CPU」と記す。
【0111】
ステップS101において、CPUは、ドアロック装置20がメカリンクカット状態であるか否かを判定する。ドアロック装置20の状態がメカリンクカット状態でない場合には、CPUはこのルーチンをいったん終了する。ドアロック装置20の状態がメカリンクカット状態である場合には、CPUは、ステップS102に進む。
【0112】
ステップS102において、CPUは、ドアロック装置20の状態をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作があったか否かを判定する。このような手動操作が無い場合、CPUはこのルーチンをいったん終了する。このような手動操作があった場合、CPUは、ステップS103に進む。
【0113】
ステップS103において、CPUは、モータ22を回転駆動させることにより、回転部材23を中立位置からメカリンクカット位置に移動させる。そしてその後、CPUは、モータ22の回転駆動を終了する。
【0114】
CPUが上記したルーチンを実行することにより、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える手動操作があった場合、モータ22の駆動力によってアクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置に移動することがアシストされる。したがって、ドアロック装置20の状態をメカリンクカット状態からメカリンク状態に確実に切り替えることができる。
【0115】
図13は、ドアロックECU601のCPUが上述の再ロック動作禁止制御を実現するために実行するルーチンを示すフローチャートである。ドアロックECU601のCPUは、図13のフローチャートに示すルーチンを、所定の周期で繰り返し実行する。
【0116】
ステップS201において、CPUは、ドアロック装置20がメカリンク状態であるか否かを判定する。ドアロック装置20の状態がメカリンク状態でない場合には、CPUはこのルーチンをいったん終了する。ドアロック装置20の状態がメカリンク状態である場合には、CPUは、ステップS202に進む。
【0117】
ステップS202において、CPUは、再ロック条件が成立したか否かを判定する。再ロック条件が成立していない場合、CPUはこのルーチンをいったん終了する。再ロック条件が成立した場合、CPUは、ステップS303に進む。
【0118】
ステップS203において、CPUは、第一キー連動スイッチ604および第二キー連動スイッチ605の状態に基づいて、キーシリンダ142が操作中であるか否かを判定する。キーシリンダ142が操作中である場合、CPUはステップS201に戻る。キーシリンダ142が操作中でない場合、CPUは、ステップS204に進む。
【0119】
ステップS204において、CPUは、再ロック動作を実行する。具体的には、CPUは、モータ22を回転駆動させることにより、回転部材23が中立位置からメカリンクカット位置に移動させる。そしてその後、CPUは、モータ22の回転駆動を終了する。
【0120】
CPUが上記のルーチンを実行することによって、キーシリンダ142の手動操作中には再ロック条件が成立しても再ロック動作を実行しないようにできる。したがって、キーシリンダ142の手動操作中にモータ22が回転駆動することによりドアロック装置20が使用者の意図しない状態に切り替わること、特に「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替わることが防止される。
【0121】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0122】
例えば、ラッチ機構50の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。要は、リフトレバー52が初期位置から作動位置に移動することで、ラッチ機構50がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されていればよい。
【0123】
また、前記実施形態では、ドアロックECU601がモータ22を駆動する構成を示したが、このような構成に限定されない。モータ22は、ドアロックECU601以外の制御ユニット、例えばボディECUによって駆動されてもよい。
【符号の説明】
【0124】
12…車両ドア、20…ドアロック装置、22…モータ、25…アクティブレバー、30…オープンリンク、38…阻止レバー、50…ラッチ機構、52…リフトレバー、131…インサイドドアハンドル、141…アウトサイドドアハンドル、142…キーシリンダ、601…ドアロックECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13