(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123431
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】車両用のドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/06 20140101AFI20220817BHJP
E05B 81/76 20140101ALI20220817BHJP
E05B 81/42 20140101ALI20220817BHJP
E05B 81/30 20140101ALI20220817BHJP
【FI】
E05B81/06
E05B81/76
E05B81/42
E05B81/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020755
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆
(72)【発明者】
【氏名】安部 龍一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良
(72)【発明者】
【氏名】高藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】末松 徹也
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250HH01
2E250JJ49
2E250KK01
2E250KK02
2E250LL01
2E250QQ03
2E250QQ10
2E250RR13
2E250SS09
(57)【要約】
【課題】確実に状態を切り替えることができるドアロック装置を提供する。
【解決手段】ドアロック装置20は、モータ22の駆動力によって回転する回転部材23と、モータ22を制御するドアロックECU601とを有し、ドアロック装置20は、回転部材23が中立位置から第一位置に移動するとメカリンク状態に切り替わり、第二位置に移動すると「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替わり、第三位置に移動するとメカリンクカット状態に切り替わるように構成され、ドアロックECU601は、メカリンク状態であるときにアンラッチ操作を検出すると、回転部材23が中立位置から第三回転位置に移動するようにモータ22を回転駆動し、その後、所定の時間にわたってモータ22の回転駆動を停止し、さらにその後、回転部材23が中立位置から第二回転位置に移動するようにモータ22を回転駆動する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に開閉可能に連結された車両ドアを開放可能なアンラッチ状態と、前記車両ドアが開放できないラッチ状態と、に切り替え可能に構成されたラッチ機構と、
前記ラッチ機構を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切り替えるアンラッチ操作が可能なアンラッチスイッチと、
第一回転位置と、第二回転位置と、前記第一回転位置と前記第二回転位置との間の第三回転位置とに回転移動可能な回転部材と、
前記回転部材を前記第一回転位置と前記第三回転位置との間の中立位置に弾性付勢する第一付勢部材と、
前記回転部材を回転させるための駆動力を発生する駆動力源と、
前記駆動力源の駆動を制御する制御ユニットと、
前記回転部材に係合することにより前記回転部材が前記中立位置から前記第三回転位置を超えて前記第二回転位置に移動することを阻止する阻止位置と、前記回転部材に係合しないことにより前記回転部材が前記中立位置から前記第三回転位置を超えて前記第二回転位置に移動することを許容する退避位置とに移動可能に構成される阻止部材と、
前記阻止部材を前記退避位置に向かう方向に弾性付勢する第二付勢部材と、
第一位置と第二位置との間を移動可能であり、前記第一位置にあるときに前記回転部材が前記中立位置から前記第一回転位置まで回転すると前記第一位置から前記第二位置に向かう方向に移動し、前記第二位置にあるときに前記回転部材が前記中立位置から前記第三回転位置まで回転すると前記第二位置から前記第一位置に向かう方向に移動し、前記第一位置から前記第二位置に移動した場合、前記阻止部材を前記第二付勢部材の付勢力に抗して前記阻止位置に移動させ、前記第二位置から前記第一位置に移動した場合、前記阻止部材が前記阻止位置から前記退避位置へ移動することを許容するように構成されている第三部材と、
初期位置と作動位置との間を回転可能であり、前記回転部材が前記中立位置から前記第三回転位置を超えて前記第二回転位置に移動すると、前記回転部材に係合することによって前記初期位置から前記作動位置に移動し、前記初期位置から前記作動位置に移動することによって前記ラッチ機構を前記アンラッチ状態に切り替えるように構成されている第四部材と、
を備え、
前記制御ユニットは、前記第三部材が前記第二位置に位置するときに前記アンラッチ操作を検出すると、前記回転部材が前記中立位置から前記第三回転位置に移動するように前記駆動力源を駆動する第一ステップと、前記第一ステップの後、所定の時間にわたって前記駆動力源の駆動を停止する第二ステップと、前記第二ステップの後、前記回転部材が前記第三回転位置を通過して前記第二回転位置に移動するように前記駆動力源を回転駆動する第三ステップと、を含む制御を実行するように構成される、
車両用のドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のドアロック装置であって、
前記制御ユニットは、前記第三部材が前記第二位置に位置するときに前記アンラッチ操作を検出すると、前記第三ステップの後に、さらに、前記回転部材が前記中立位置から前記第一回転位置に移動するように前記駆動力源を駆動する第四ステップを実行するように構成される、
車両用のドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置には、電気的操作(例えばモータの駆動力)により車両ドアを開放する電気駆動手段を有するものがある。特許文献1には、モータの回転動力によって回転する回転部材と、この回転部材の回転によって作動するトリガレバーとを有し、トリガレバーを作動させて電気的に車両ドアを開放する通常操作が行われる車両用ドアロック装置が開示される。この車両用ドアロック装置では、電気的操作により車両ドアを開放する際に、機械的操作(例えばドアハンドルの手動操作)に用いられるロックレバーは常にメカリンクカット位置(「ロック位置」と称することもある)に保持される。ロックレバーがメカリンクカット位置に位置している場合、機械的操作により車両ドアを開放することができない。また、電気的操作により車両ドアを開放する通常操作から機械的操作により車両ドアを開放する緊急操作に切り替える場合には、回転部材が通常操作時の回転方向とは反対の方向に回転し、ロックレバーがメカリンクカット位置からメカリンク位置(「アンロック位置」と称することもある)まで移動する。これにより機械的操作により車両ドアを開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
一つのモータの正逆回転方向の切替えによって、メカリンクカット状態(機械的操作により車両ドアを開放することができない状態)とメカリンク状態(機械的操作により車両ドアを開放することができる状態)と「ラッチ機構がアンラッチ状態である状態(電気的操作により車両ドアが開放する状態)」の3つの状態を切り替える場合、ドアロック装置の状態をスムーズに切り替えることが困難な場合がある。例えば、モータの駆動により回転する回転部材に第一回転位置(車両用ドアロック装置をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える位置)と第二回転位置(車両用ドアロック装置のラッチ機構をアンラッチ状態に切り替えて車両ドアを開放することができる位置)と第三回転位置(車両用ドアロック装置をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替える位置)とが設定された構成を想定する。この場合、回転部材の中立位置(回転部材が回転駆動していない場合の位置)が第一回転位置と第三回転位置との間に設定されると、ドアロック装置のラッチ機構をアンラッチ状態に切り替えるためには、回転部材を中立位置から例えば第三回転位置を通過して第二回転位置に移動させなければならない。
【0005】
このため、ドアロック装置をメカリンク状態から「ラッチ機構がアンラッチ状態である状態」に切り替えるためには、いったんドアロック装置をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替えなければならない。そして、回転部材が中立位置から第三回転位置に移動して、ドアロック装置がメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替わる動作中に回転部材をさらに第三回転位置から第二回転位置に向けて回転させると、回転部材の回転力がドアロック装置のメカリンク状態からメカリンクカット状態への切り替わり動作を阻害し、ドアロック装置がメカリンクカット状態に切り替わらないおそれがある。その結果、ドアロック装置のラッチ機構をアンラッチ状態に切替えられないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、モータの駆動によって回転する回転部材によって状態を切り替える車両用のドアロック装置において、確実に状態を切り替えることができるようにすることを目的とする。
【0007】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用ドアロック装置(20)は、
車体(10)に開閉可能に連結された車両ドア(12)が開放可能なアンラッチ状態と、前記車両ドア(12)が開放できないラッチ状態と、に切り替え可能に構成されたラッチ機構(50)と、
前記ラッチ機構(50)を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切り替えるアンラッチ操作が可能なアンラッチスイッチ(607)と、
第一回転位置と、第二回転位置と、前記第一回転位置と前記第二回転位置との間の第三回転位置とに回転移動可能な回転部材(23)と、
前記回転部材(23)を前記第一回転位置と前記第三回転位置との間の中立位置に弾性付勢する第一付勢部材(24)と、
前記回転部材(23)を回転させるための駆動力を発生する駆動力源(22)と、
前記駆動力源(22)の駆動を制御する制御ユニット(601)と、
前記回転部材(23)に係合することにより前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第三回転位置を超えて前記第二回転位置に移動することを阻止する阻止位置と、前記回転部材(23)に係合しないことにより前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第三回転位置を超えて前記第二回転位置に移動することを許容する退避位置とに移動可能に構成される阻止部材(38)と、
前記阻止部材(38)を前記退避位置に向かう方向に弾性付勢する第二付勢部材(39)と、
第一位置(メカリンクカット位置)と第二位置(メカリンク位置)との間を移動可能であり、前記第一位置(メカリンクカット位置)にあるときに前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第一回転位置まで回転すると前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)に向かう方向に移動し、前記第二位置(メカリンク位置)にあるときに前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第三回転位置まで回転すると前記第二位置(メカリンク位置)から前記第一位置(メカリンクカット位置)に向かう方向に移動し、前記第一位置(メカリンクカット位置)から前記第二位置(メカリンク位置)に移動した場合、前記阻止部材(38)を前記第二付勢部材の付勢力に抗して前記阻止位置に移動させ、前記第二位置(メカリンク位置)から前記第一位置(メカリンクカット位置)に移動した場合、前記阻止部材(38)が前記阻止位置から前記退避位置へ移動することを許容するように構成されている第三部材(25)と、
初期位置と作動位置との間を回転可能であり、前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第三回転位置を超えて前記第二回転位置に移動すると、前記回転部材(23)に係合することによって前記初期位置から前記作動位置に移動し、前記初期位置から前記作動位置に移動することによって前記ラッチ機構(50)を前記アンラッチ状態に切り替えるように構成されている第四部材(29)と、
を備える。
【0008】
そして、前記制御ユニット(601)は、前記第三部材(25)が第二位置(メカリンク位置)に位置するときに前記アンラッチ操作を検出すると、前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第三回転位置に移動するように前記駆動力源(22)を駆動する第一ステップと、前記第一ステップの後、所定の時間にわたって前記駆動力源(22)の駆動を停止する第二ステップと、前記第二ステップの後、前記回転部材(23)が前記第三回転位置を超えて前記第二回転位置に移動するように前記駆動力源(22)を回転駆動する第三ステップと、を含む制御を実行するように構成される。
【0009】
本発明によれば、制御ユニット(601)が第一ステップを実行することにより、回転部材(23)が中立位置から第三回転位置へ移動し、これにより第三部材(25)は第二位置(メカリンク位置)から第一位置(メカリンクカット位置)に移動する。また、回転部材(23)が阻止位置にある阻止部材(38)と係合することにより、阻止部材(38)が阻止位置に保持されるとともに回転部材(23)が第三回転位置にて回転規制される。次に、制御ユニット(601)が第二ステップを実行することにより、駆動力源(22)の駆動が所定時間にわたり停止する。すると、回転部材(23)は第一付勢部材(24)の付勢力によって中立位置に向かって移動し、これにより回転部材(23)と阻止部材(38)との係合が解除されて阻止部材(38)は第二付勢部材(39)の付勢力によって阻止位置から退避位置に移動する。その後、制御ユニット(601)が第三ステップを実行することにより、回転部材(23)が中立位置から第三回転位置を通過して第二回転位置へ移動する。このとき阻止部材(38)は既に退避位置に移動しているので、回転部材(23)が第三回転位置にて阻止部材(38)に係合して回転規制されることはない。そして、回転部材(23)が第二回転位置に達すると、第四部材(29)が初期位置から作動位置に移動して、ラッチ機構(50)がアンラッチ状態に切り替わる。
【0010】
このように、制御ユニット(601)が第二ステップを実行することにより、阻止部材(38)を阻止位置から退避位置に移動させ、その後に第三ステップを実行して回転部材(23)を第二回転位置まで回転移動させる。換言すると、阻止部材(38)が第二付勢部材(39)の付勢力によって阻止位置から退避位置に移動するまで(正確には、移動に要する時間が経過するまで)、第三ステップを実行しない。このため、第三ステップにおいて回転部材(23)を中立位置から第三回転位置を通過して第二回転位置へ移動させる際に、阻止部材(38)が回転部材(23)の回転を阻害しない。したがって、ドアロック装置(50)を、メカリンク状態から確実に「ラッチ機構(50)がアンラッチ状態である状態」に切り替えることができる。
【0011】
本発明の一側面において、
前記制御ユニット(601)は、前記第三部材(25)が前記第二位置(メカリンク位置)に位置するときに前記アンラッチ操作を検出すると、前記第三ステップの後に、さらに、前記回転部材(23)が前記中立位置から前記第一回転位置に移動するように前記駆動力源(22)を駆動する第四ステップを実行するように構成される。
【0012】
このような構成によれば、制御ユニット(601)は、ドアロック装置(20)がメカリンク状態(第三部材(25)が第二位置に位置する状態)であるときアンラッチ操作が検出された場合、制御ユニット(30)は、ラッチ機構(50)をアンラッチ状態に切り替えた後、第四ステップを実行して、回転部材(23)を中立位置から第一回転位置に移動させる。回転部材(23)が第一回転位置に移動すると、第三部材(25)が第一位置(メカリンクカット位置)から第二位置(メカリンク位置)に移動する。第三部材(25)が第二位置に移動すると、ドアロック装置20はメカリンク状態に切り替わる。
【0013】
このように、制御ユニット(601)は、ドアロック装置(20)がメカリンク状態であるときにアンラッチ操作が行われた場合、ラッチ機構(50)をアンラッチ状態に切り替えた後に、ドアロック装置(20)を再びメカリンク状態に設定する。このため、アンラッチ操作後に車両ドア(12)を開き、その後に車両ドア(12)を閉じた場合、ドアロック装置(20)を機械的操作(すなわち手動操作)によりラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができるので、キーの閉じ込めを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、車両ドアの構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、ドアロック装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、ドアロック装置のメカリンクカット状態を示す図である。
【
図5】
図5は、ドアロック装置のメカリンク状態を示す図である。
【
図6】
図6は、ドアロック装置のアンラッチ状態への切替動作を示す図である。
【
図7】
図7は、ドアロック装置のメカリンク状態からメカリンクカット状態への切替動作を示す図である。
【
図8】
図8は、ドアロック装置のメカリンク状態からメカリンクカット状態への切替動作を示す図である。
【
図9】
図9は、ドアロック装置の制御系の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、ドアロック装置の状態の遷移を示す図である。
【
図11】
図11は、ドアロック装置のメカリンク状態からメカリンクカット状態への切替動作を示す図である。
【
図12】
図12は、CPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(車両ドア)
図1は、ドアロック装置20が適用された車両ドア12の側面図であり、車外側から見た図である。
図2は、ドアロック装置20が適用された車両ドア12の後端部近傍の断面図であり、
図1のII-II矢視断面図である。
【0016】
車両ドア12は、車体10に対して回転可能に連結されており、車体10に対して回転移動することで閉止と開放ができるように構成されている。車両ドア12は、その下半部を構成するドア本体部121と、その上半部に設けられているドアサッシュ122とを備えている。ドア本体部121は、インナパネル123、アウタパネル124、およびトリム125を有している。アウタパネル124は、車両ドア12の外側面を構成する。インナパネル123は、アウタパネル124の車内側に固定されている。トリム125は、インナパネル123の車内側に固定されており、ドア本体部121の内側面を構成する。
【0017】
アウタパネル124にはアウトサイドドアハンドル装置14が取り付けられている。アウトサイドドアハンドル装置14は、車体10に対して回転可能なアウトサイドドアハンドル141と、キーを差し込んで回転させることができるキーシリンダ142とを有している。キーシリンダ142は、図略の付勢部材によって中立位置に常時付勢されており、中立位置に位置する場合にキーを挿抜可能に構成されている。そして、使用者は、キーシリンダ142にキーを差し込むことによって、キーシリンダ142を中立位置から両方向に回転させることができる。トリム125には、インサイドドアハンドル装置13が取り付けられている。インサイドドアハンドル装置13は、車両ドア12に対して回転移動可能なインサイドドアハンドル131を有する。なお、アウトサイドドアハンドル141およびインサイドドアハンドル131は、いずれも図略の付勢部材によって初期位置に向けて弾性付勢されており、操作されていない間は初期位置に保持されている。車両の使用者は、アウトサイドドアハンドル141およびインサイドドアハンドル131を、付勢部材の付勢力に抗して回転させることにより、初期位置から作動位置へ移動させることができる。なお、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141の作動位置は、初期位置から所定の角度回転した位置である。
【0018】
(ドアロック装置の概略)
図2に示すように、ドアロック装置20は、車両ドア12の内部空間(すなわち、インナパネル123とアウタパネル124とに囲まれる空間)に配置されている。なお、ドアロック装置20の一部は、車両ドア12の後端部において外部に露出している。そして、ドアロック装置20は、インナパネル123(すなわち車両ドア12)に固定されている。
【0019】
ドアロック装置20は、筐体であるハウジング21、ラッチ機構50、手動切替機構、および自動切替機構を有している。ラッチ機構50は、車両ドア12を閉止状態に保持可能なラッチ状態と、車両ドア12の閉止状態を解除可能なアンラッチ状態と、に切替可能に構成されている。さらに、ドアロック装置20は、メカリンク状態、メカリンクカット状態、および「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替え可能に構成されている。メカリンク状態は、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141に対する所定の手動操作によってラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることを許容する状態である。メカリンクカット状態は、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141に対する所定の手動操作によってはラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができない状態である。
【0020】
手動切替機構は、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141に対する所定の機械的操作(具体的には、初期位置から作動位置に1回移動させる手動操作。「ドア開操作」と称することもある)によってドアロック装置20をメカリンク状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えることができるように(換言すると、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができるように)構成されている。さらに手動切替機構は、インサイドドアハンドル131に対する所定の機械的操作(手動操作)によってドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替え可能に構成されている。
【0021】
自動切替機構は、後述するモータ22の駆動力によって、ドアロック装置20を、メカリンク状態、メカリンクカット状態、および「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」のいずれかに切り替えることができるように構成されている。さらに、自動切替機構は、キーシリンダ142の手動操作によって、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態へ切り替えること、およびメカリンク状態からメカリンクカット状態へ切り替えることができるように構成されている。
【0022】
図3は、ドアロック装置20の機械的な構成を示す分解斜視図である。ドアロック装置20は、ハウジング21、モータ22、回転部材23、回転部材付勢部材24、アクティブレバー25、節度スプリング40、コントロールレバー26、アウトサイドロッキングレバー28、キースイッチレバー27、阻止レバー38、阻止レバー付勢部材39、リリースレバー29、インサイドレバー32、インサイドオープンレバー33、アウトサイドオープンレバー36、アウトサイドオープンレバー付勢部材37、オープンリンク30、およびラッチ機構50を有している。
【0023】
ハウジング21は、ドアロック装置20の筐体である。ハウジング21は、第一支持部211、第二支持部212、第三支持部213、第四支持部214、第五支持部215、および第六支持部216を有している。第一支持部211は、回転部材23を回転可能に支持する部分である。第二支持部212は、アクティブレバー25およびインサイドレバー32を同軸に回転可能に支持する部分である。第三支持部213は、コントロールレバー26を回転可能に支持する部分である。第四支持部214は、リリースレバー29を回転可能に支持する部分である。第五支持部215は、インサイドオープンレバー33を回転可能に支持する部分である。第六支持部216は、アウトサイドオープンレバー36を回転可能に支持する部分である。これらの支持部は、ハウジング21に一体に形成された円筒状の突起である。
【0024】
回転部材23、アクティブレバー25、コントロールレバー26、リリースレバー29、インサイドレバー32、インサイドオープンレバー33、およびアウトサイドオープンレバー36には、それぞれ軸孔が形成されている。そして、これら各部材の軸孔に第一支持部211~第六支持部216のそれぞれが挿入されることで、これらの各部材が各支持部を中心としてハウジング21に対して回転可能に支持される。なお、オープンリンク30は、アウトサイドオープンレバー36によって回転可能に支持されている。
【0025】
(ラッチ機構)
ラッチ機構50は、ハウジング21のうち
図3の領域Aの部分に配設される。ラッチ機構50は、ラッチ51(
図2参照)とポール(図略)とリフトレバー52(
図4~
図8および
図11参照)とを有している。ラッチ51は、ドアロック装置20のフレーム(なお、フレームはハウジング21に取り付けられている部材である)などに回転可能に支持されており、回転することによってアンラッチ位置とラッチ位置(ラッチ位置にはハーフラッチ位置およびフルラッチ位置が含まれる)とに移動可能である。アンラッチ位置は、車体10に設けられているストライカ101を保持しない位置(換言すると、係合可能な位置)、すなわちラッチ51とストライカ101との噛み合いを解除することができる位置である。ラッチ位置は、車両ドア12が閉止状態である場合において、車体10に設けられているストライカ101を保持する位置(換言すると、係合する位置)、すなわちラッチ51とストライカ101との噛み合いを解除することができない位置である。ラッチ51はラッチ復帰バネによってアンラッチ位置に向けて常時付勢されている。
【0026】
ポールは、ドアロック装置20のフレームなどに回転可能に支持されており、係合位置と非係合位置とに移動可能である。係合位置は、ラッチ51と係合することでラッチ51をラッチ位置に保持する(換言すると、アンラッチ位置への回転移動を阻止する)位置である。非係合位置は、ラッチ51に係合しない位置であり、ラッチ51がアンラッチ位置へ回転移動することを許容する位置である。また、ポールはポール復帰バネによって係合位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0027】
リフトレバー52は、ドアロック装置20のフレームなどに回転可能に支持されており、回転することによって初期位置と作動位置とに移動可能である。そして、リフトレバー52は、初期位置から作動位置に移動すると、ポールを押してポールを係合位置から非係合位置に移動させる。なお、リフトレバー52は、ポールを介して伝達されるポール復帰バネの付勢力によって、初期位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0028】
そして、ラッチ機構50は、車両ドア12が閉止状態である場合に、ラッチ51がラッチ位置に位置することでラッチ51とストライカ101との噛み合い状態を保持し、ポールが係合位置に位置してラッチ51をラッチ位置に保持する。これにより、ラッチ機構50は、車両ドア12を車体10に対して閉止状態に保持する。この状態が、ラッチ機構50のラッチ状態である。車両ドア12が閉止状態にありかつラッチ機構50がラッチ状態である場合にリフトレバー52が初期位置から作動位置へ移動すると、リフトレバー52がポールを押して、ポールを係合位置から非係合位置へ移動させる。これによりポールとラッチ51の係合が解除され、ラッチ51がラッチ復帰バネの付勢力によってアンラッチ位置に回転移動し、車両ドア12の閉止状態が解除可能になる。この状態が、ラッチ機構50のアンラッチ状態である。このように、ラッチ機構50は、リフトレバー52が初期位置から作動位置に移動することによりラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されている。
【0029】
(手動切替機構)
手動切替機構には、インサイドオープンレバー33、インサイドレバー32、アウトサイドオープンレバー36、およびオープンリンク30が含まれる。
【0030】
インサイドオープンレバー33は、初期位置と作動位置との間を回転移動可能である。
図4~
図8および
図11は、インサイドオープンレバー33が初期位置に位置する状態を示す。インサイドオープンレバー33の作動位置は、
図4~
図8および
図11中では、初期位置から時計回りの方向に所定の角度回転した位置である。インサイドオープンレバー33は、図略の付勢部材(例えばバネなど)によって初期位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0031】
インサイドオープンレバー33は、インサイドドアハンドル131と連係している。例えば、インサイドオープンレバー33とインサイドドアハンドル131とは、図略の操作ワイヤによって連結されている。インサイドドアハンドル131が初期位置に位置する状態では、インサイドオープンレバー33は、付勢部材によって初期位置に保持される。インサイドドアハンドル131が操作されると(すなわち、インサイドドアハンドル131が初期位置から作動位置へ移動すると)、インサイドオープンレバー33は、初期位置から作動位置に移動する。
【0032】
インサイドオープンレバー33は、第一係合部331および第二係合部332を有している。インサイドオープンレバー33の第一係合部331は、インサイドレバー32の第一係合部321と係合可能に係合可能に構成されている。そして、インサイドオープンレバー33が初期位置から作動位置に移動すると、インサイドオープンレバー33の第一係合部331はインサイドレバー32の第一係合部321に係合してインサイドレバー32の第一係合部321を押す。
【0033】
インサイドオープンレバー33の第二係合部332は、アクティブレバー25に設けられている第四係合部254と係合可能である。インサイドオープンレバー33が初期位置から作動位置に向かって移動すると、インサイドオープンレバー33の第二係合部332は、メカリンクカット位置(後述)に位置するアクティブレバー25の第三係合部253に係合する。そして、インサイドオープンレバー33の第二係合部332は、アクティブレバー25の第三係合部253を押すことによって、アクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置(後述)に移動させる。
【0034】
インサイドレバー32は、ハウジング21に対して回転することにより初期位置と作動位置とに移動可能である。
図4~
図8および
図11は、インサイドレバー32が初期位置に位置している状態を示す。インサイドレバー32の作動位置は、
図4~
図8および
図11中において、初期位置から反時計回りの方向に所定の角度回転移動した位置である。
【0035】
インサイドレバー32は、第一係合部321および第二係合部322を有している。インサイドレバー32の第一係合部321は、インサイドオープンレバー33の第一係合部331に係合可能に構成されている。インサイドレバー32の第二係合部322は、アウトサイドオープンレバー36の係合部362に係合可能に係合可能に構成されている。そして、インサイドオープンレバー33が初期位置から作動位置に移動すると、インサイドレバー32の第一係合部321がインサイドオープンレバー33の第一係合部331に押され、インサイドレバー32は初期位置から作動位置へ移動する。インサイドレバー32が初期位置から作動位置へ移動すると、インサイドレバー32の第二係合部322がアウトサイドオープンレバー36の係合部362に係合してアウトサイドオープンレバー36の係合部362を押す。
【0036】
アウトサイドオープンレバー36は、ハウジング21に対して回転することによって初期位置と作動位置とに移動可能である。
図4~
図8および
図11は、アウトサイドオープンレバー36が初期位置に位置する状態を示す。なお、アウトサイドオープンレバー36の回転中心線は、
図4~
図8および
図11中では左右に略平行な方向である。アウトサイドオープンレバー36は、アウトサイドオープンレバー付勢部材37によって初期位置に向けて常時弾性付勢されている。
【0037】
アウトサイドオープンレバー36は、アウトサイドドアハンドル141と連係している。具体的には、アウトサイドオープンレバー36は、操作ワイヤによってアウトサイドドアハンドル141と連結されている。アウトサイドドアハンドル141およびインサイドレバー32が初期位置に位置している場合、アウトサイドオープンレバー36は、アウトサイドオープンレバー付勢部材37の付勢力によって初期位置に保持される。アウトサイドドアハンドル141とインサイドレバー32の少なくとも一方が初期位置から作動位置に移動した場合、アウトサイドオープンレバー36は、アウトサイドオープンレバー付勢部材37の付勢力に抗して初期位置から作動位置へ移動する。
【0038】
オープンリンク30は、アウトサイドオープンレバー36の支持部361によって回転可能に支持されている。このため、オープンリンク30は、アウトサイドオープンレバー36とともにハウジング21に対して相対的に回転可能であるとともに、アウトサイドオープンレバー36に対して相対的に回転可能である。そして、オープンリンク30は、アウトサイドオープンレバー36に対して相対的に回転することにより、メカリンク位置とメカリンクカット位置とに移動可能である。なお、オープンリンク30は第二係合部302を有している。オープンリンク30の第二係合部302は、後述するオープンリンク付勢部材31に係合している。そして、オープンリンク30は、オープンリンク付勢部材31を介してアクティブレバー25と連係しており、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置するかメカリンク位置に位置するかに応じて、メカリンク位置とメカリンクカット位置のいずれか一方に位置する。オープンリンク30の第二係合部302は、オープンリンク30のアウトサイドオープンレバー36に対する相対的な回転中心線に平行な方向(
図4~
図8および
図11においては紙面手前側)に突出する突起状の構成を有する。
【0039】
オープンリンク30は、ラッチ機構50のリフトレバー52に係脱可能な第一係合部301を有している。オープンリンク30がメカリンク位置に位置する状態でアウトサイドオープンレバー36が初期位置から作動位置に移動すると、オープンリンク30の第一係合部301は、ラッチ機構50のリフトレバー52に係合する。そして、オープンリンク30の第一係合部301は、リフトレバー52を初期位置から作動位置に移動させる。このため、ラッチ機構50はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。一方、オープンリンク30がメカリンクカット位置に位置する状態では、アウトサイドオープンレバー36が初期位置から作動位置に移動しても、オープンリンク30の第一係合部301は、ラッチ機構50のリフトレバー52に係合しない。このためこの場合には、リフトレバー52は初期位置に保持される。したがって、ラッチ機構50はラッチ状態に保持される。
【0040】
このように、ドアロック装置20は、オープンリンク30がメカリンク位置に位置する状態では、使用者がアウトサイドドアハンドル141とインサイドドアハンドル131の任意の一方を手動操作することにより、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができるように構成されている。さらに、ドアロック装置20は、オープンリンク30がメカリンクカット位置に位置する状態では、使用者がアウトサイドドアハンドル141とインサイドドアハンドル131のいずれを手動操作しても、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができないように構成されている。ただし、オープンリンク30がメカリンクカット位置に位置する状態であっても、インサイドドアハンドル131に対して所定の緊急アンラッチ操作を行うことにより、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができる(後述)。
【0041】
(自動切替機構)
自動切替機構には、モータ22、回転部材23、阻止レバー38、アクティブレバー25、コントロールレバー26、およびリリースレバー29が含まれる。
【0042】
モータ22は、回転部材23の回転駆動力源であり、後述するドアロックECU601の制御によって正逆両方向の回転駆動力を発生させる。モータ22は、ハウジング21に固定されている。モータ22の回転軸221にはウォーム222が設けられており、モータ22はこのウォーム222を介して回転部材23を回転させる。
【0043】
回転部材23は、モータ22とアクティブレバー25およびリリースレバー29との間に介在する部材であり、モータ22から伝達される回転動力によって正逆回転する。具体的には、回転部材23はウォームホイールであり、モータ22の回転軸221に設けられているウォーム222と噛み合っている。なお、モータ22のウォーム222と回転部材23(ウォームホイール)とは逆駆動可能に構成されている。すなわち、回転部材23は、モータ22に通電されていない状態(すなわち、モータ22が駆動していない状態)では、後述する回転部材付勢部材24の付勢力によって回転することができる。
【0044】
回転部材23は、回転部材付勢部材24によって、回転方向(第一支持部211の中心線を中心とする円の周方向)に関して、
図4に示す中立位置に向けて常時弾性付勢されている。そして、回転部材23は、モータ22の駆動力により、中立位置から
図5に示す第一回転位置、
図6に示す第二回転位置、および
図7に示す第三回転位置に回転移動可能である。第一回転位置は、中立位置から所定の一方向(
図4~
図8および
図11においては反時計回り方向)に回転した位置である。第二回転位置および第三回転位置は、中立位置から前記所定の一方向とは反対方向(
図4~
図8および
図11においては時計回り方向)に回転した位置である。第二回転位置は、中立位置からの回転角度が第三回転位置よりも大きい位置である。なお、中立位置は第一回転位置と第三回転位置との間に位置する。
【0045】
そして、モータ22の所定の方向の回転駆動により、回転部材23は中立位置から第一回転位置に移動し、モータ22の前記所定の方向とは反対方向の回転駆動により、回転部材23は中立位置から第三回転位置または第二回転位置に移動する。モータ22の回転駆動により回転部材23を中立位置から第一回転位置、第二回転位置、および第三回転位置のいずれかに移動させた後、モータ22の回転駆動を停止すると(モータ22への通電を停止すると)、回転部材23は回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置に移動する。
【0046】
回転部材23は、第一係合部231、第二係合部232、第三係合部233、および第四係合部234を有している。回転部材23の第一係合部231は、回転部材23の軸線方向の一方に突出する突起状の構成を有しており、後述するアクティブレバー25の第一係合部251と第二係合部252に択一的に係合可能に構成されている。回転部材23の第二係合部232は、第一係合部231が突出する側とは反対側に突出する突起状の構成を有しており、リリースレバー29の第一係合部291に係脱可能に構成されている。回転部材23の第三係合部233は、第二係合部232と同じ側に突出する突起状の構造を有しており、阻止レバー38と係合可能に構成されている。ただし、回転部材23の第三係合部233は、回転部材23の位置にかかわらずリリースレバー29には係合しないように構成されている。回転部材23の第四係合部234は、第二係合部232および第三係合部233と同じ側に突出する突起状の構成を有しており、阻止位置に位置する阻止レバー38の第一係合部381に係合可能に構成されている。
【0047】
回転部材付勢部材24は、回転部材23を中立位置に向けて弾性付勢する。回転部材付勢部材24は、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネである。そして、ねじりコイルバネの一方のアームが回転部材23に係合しており、他方のアームがハウジング21に係合している。
【0048】
阻止レバー38は、モータ22の回転駆動によって回転部材23を中立位置から第三回転位置に移動させる際に、回転部材23が第三回転位置を超えて第二回転位置に移動することを阻止する。阻止レバー38は、概ね棒状に形成されており、ハウジング21に設けられているガイドによって、ハウジング21に対して直線往復移動可能に支持されている。そして、阻止レバー38は、ハウジング21に対して直線移動することにより、
図4および
図6に示す退避位置と、
図5、
図7、
図8、および
図11に示す阻止位置の間を移動できる。なお、阻止位置は、特定の1点の位置ではなく、ある程度の範囲を有する位置である。
【0049】
退避位置は、回転部材23の回転を阻止しない位置であり、具体的には回転部材23の第三係合部233と第四係合部234の回転軌跡の外側の位置である。阻止位置は、阻止レバー38が回転部材23の第三係合部233に係合し且つ回転部材23の第四係合部234と係合することにより、回転部材23が中立位置および第三回転位置から第二回転位置へ向かって回転移動することを阻止する位置である。阻止位置は、具体的には、阻止レバー38の少なくとも一部が回転部材23の第三係合部233および第四係合部234の移動軌跡内に入り込んでいる位置であり、かつ、阻止レバー38の一部が第三回転位置に位置する回転部材23の第三係合部233の側面(回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって回転する場合に、回転方向前側に位置する面)に係合する位置である。
【0050】
阻止レバー38は、第一係合部381および第二係合部382を有する。阻止レバー38の第一係合部381は、回転部材23の第四係合部234と係合可能な段差面である。阻止レバー38の第一係合部381は、阻止レバー38が阻止位置に位置している状態では、回転部材23の第四係合部234の回転移動の軌跡よりも半径方向内側に位置する。このため、阻止レバー38が阻止位置に位置する状態では、回転部材23が中立位置から第三回転位置に回転移動することで、回転部材23の第四係合部234が阻止位置にある阻止レバー38の第一係合部381に係合可能である。そして、阻止レバー38の第一係合部381に回転部材23の第四係合部234が係合している状態(すなわち、阻止レバー38の第一係合部381の退避位置の側に回転部材23の第四係合部234が存在する状態)では、阻止レバー38は退避位置に移動できず、阻止位置に保持される。
【0051】
阻止レバー38の第二係合部382は、アクティブレバー25の第三係合部253と係合可能に構成されている。
【0052】
阻止レバー付勢部材39は、阻止レバー38を退避位置に向けて常時弾性付勢する。阻止レバー付勢部材39は、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネである。そして、一方のアームが阻止レバー38に係合しており、他方のアームがハウジング21に係合している。なお、阻止レバー付勢部材39の付勢力は、後述するアクティブレバー25を付勢する節度スプリング40(
図2参照)の付勢力よりも小さい。
【0053】
アクティブレバー25は、回転することにより第一位置であるメカリンクカット位置と第二位置であるメカリンク位置とに移動可能である。
図4、
図6および
図7はアクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置する状態を示し、
図5、
図8、
図9および
図11はアクティブレバー25がメカリンク位置に位置する状態を示す。アクティブレバー25は、節度スプリング40によって、メカリンクカット位置とメカリンク位置のいずれか一方に向かって択一的に弾性付勢されている。具体的には、アクティブレバー25は、メカリンクカット位置とメカリンク位置との所定の中間点よりもメカリンクカット位置に近い側では、節度スプリング40によってメカリンクカット位置に向かって弾性付勢される。一方、アクティブレバー25は、前記所定の中間点よりもメカリンク位置に近い側では、節度スプリング40(
図2参照)によってメカリンク位置に向かって弾性付勢される。このため、アクティブレバー25は、節度スプリング40以外の外力が掛かっていない状態では、メカリンク位置またはメカリンクカット位置に保持される。
【0054】
アクティブレバー25は、第一係合部251、第二係合部252、第三係合部253、および第四係合部254を有している。アクティブレバー25の第一係合部251は、回転部材23の第一係合部231に係合可能に構成されている。アクティブレバー25の第一係合部251は、
図4に示すように、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置する状態では、回転部材23の第一係合部231の移動軌跡上、かつ、中立位置に位置する回転部材23の第一係合部231よりも第一回転位置の側(図中では反時計回転方向側)に位置する。アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置している状態で、回転部材23が中立位置から第一回転位置に向かって移動すると、アクティブレバー25の第一係合部251が回転部材23の第一係合部231に押される。このため、アクティブレバー25はメカリンク位置の側に向かって移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンクカット位置とメカリンク位置の所定の中間点よりもメカリンク位置の側に移動すると、節度スプリング40の弾性付勢力によってメカリンク位置に移動する。
【0055】
アクティブレバー25の第二係合部252は、回転部材23の第一係合部231に係合可能に構成されている。アクティブレバー25の第二係合部252は、
図8に示すように、アクティブレバー25がメカリンク位置に位置する状態では、回転部材23の第一係合部231の移動軌跡上、かつ、中立位置に位置する回転部材23の第一係合部231よりも第三回転位置の側(図中では時計回転方向側)に位置する。アクティブレバー25がメカリンク位置に位置している状態で、回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって移動すると、アクティブレバー25の第二係合部252が回転部材23の第一係合部231に押される。このため、アクティブレバー25はメカリンクカット位置の側に向かって移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンク位置とメカリンクカット位置との所定の中間点よりもメカリンクカット位置の側に移動すると、節度スプリング40の弾性付勢力によってメカリンクカット位置に移動する。
【0056】
なお、
図4および
図8に示すように、アクティブレバー25の第一係合部251および第二係合部252は、回転部材23が中立位置に位置している場合、アクティブレバー25がメカリンクカット位置とメカリンク位置のいずれに位置していても、回転部材23の第一係合部231と係合せずに回転部材23の第一係合部231から離間している。
【0057】
アクティブレバー25の第三係合部253は、阻止レバー38の第二係合部382に係合可能に構成されている。アクティブレバー25の第三係合部253は、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置すると、阻止レバー38の第二係合部382に係合しない。このため、阻止レバー38は退避位置に移動できる。アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動すると、アクティブレバー25の第三係合部253が阻止レバー38の第二係合部382に係合し、阻止レバー38を阻止レバー付勢部材39の付勢力に抗して退避位置から阻止位置へ移動させる。そして、アクティブレバー25は、メカリンク位置に位置している状態では、阻止レバー38を阻止位置に保持する。
【0058】
アクティブレバー25は、オープンリンク付勢部材31を介してオープンリンク30と連係している。具体的には、オープンリンク付勢部材31は、両端部のそれぞれにアームを有するねじりコイルバネである。オープンリンク付勢部材31の2本のアームは略平行であり、2本のアームどうしの間隔が広がるように弾性変形できる。そして、オープンリンク30の第二係合部302は、オープンリンク付勢部材31の2本のアームに挟まれている。アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置すると、オープンリンク30はオープンリンク付勢部材31によってメカリンクカット位置に弾性付勢され、アクティブレバー25がメカリンク位置に位置すると、オープンリンク30はオープンリンク付勢部材31によってメカリンク位置に弾性付勢される。なお、アクティブレバー25には取付部256が設けられていて、この取付部256にオープンリンク付勢部材31が取り付けられている。
【0059】
アクティブレバー25の第五係合部255は、コントロールレバー26の第一アーム部261と係合している。
【0060】
コントロールレバー26は、アクティブレバー25と連動して回転する。アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置する場合のコントロールレバー26の位置を、アクティブレバー25と同様に「メカリンクカット位置」と称し、アクティブレバー25がメカリンク位置に位置する場合のコントロールレバー26の位置を「メカリンク位置」と称する。
【0061】
コントロールレバー26は、第一アーム部261、第二アーム部262、および第三アーム部263を有している。第一アーム部261は、アクティブレバー25の第五係合部255に係合している。第二アーム部262は、第一ポジションスイッチ602のONとOFFを切り替えるための部分である。第三アーム部263は、第二ポジションスイッチ603のONとOFFを切り替えるための部分である。そして、コントロールレバー26がメカリンクカット位置に位置すると、第二アーム部262と第三アーム部263はそれぞれ第一ポジションスイッチ602と第二ポジションスイッチ603の操作子に接触しない。このため、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603は、OFFの状態に保持される。コントロールレバー26がメカリンク位置に移動すると、第二アーム部262と第三アーム部263は、それぞれ第一ポジションスイッチ602と第二ポジションスイッチ603の操作子に接触する。このため、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がONに切り替わる。
【0062】
コントロールレバー26は、キースイッチレバー27およびアウトサイドロッキングレバー28(
図3参照)を介してキーシリンダ142に連係している。このため、車両の使用者は、キーシリンダ142にキーを差し込んで所定の方向に回転させることにより、コントロールレバー26およびアクティブレバー25をメカリンク位置からメカリンクカット位置へ移動させることができる。同様に、車両の使用者は、キーシリンダ142にキーを差し込んで前記所定の方向とは反対方向に回転させることにより、コントロールレバー26およびアクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動させることができる。
【0063】
リリースレバー29は、ハウジング21に対して回転することによって、
図4、
図5、
図7、
図8および
図11に示す初期位置と
図6に示す作動位置とに移動可能である。リリースレバー29は、第一係合部291および第二係合部292を有している。リリースレバー29の第一係合部291は、回転部材23の第二係合部232と係合可能に構成されている。リリースレバー29の第二係合部292は、リフトレバー52の第二係合部522に係合可能に構成されている。回転部材23が中立位置から第三回転位置を超えて第二回転位置に向かって回転移動すると、リリースレバー29の第一係合部291は、回転部材23の第二係合部232に係合し、回転部材23の第二係合部232に押される。これにより、リリースレバー29は初期位置から作動位置へ向かって移動する。リリースレバー29が初期位置から作動位置へ移動すると、リリースレバー29の第二係合部292がラッチ機構50のリフトレバー52の第二係合部522に係合してリフトレバー52の第二係合部522を押し、リフトレバー52を初期位置から作動位置へ移動させる。
【0064】
このように、リリースレバー29は、回転部材23の中立位置から第二回転位置への回転移動に連動して初期位置から作動位置に移動(回転)することにより、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。なお、リリースレバー29は、オープンリンク30を介さずにリフトレバー52を直接的に押す。すなわち、リリースレバー29は、オープンリンク30がメカリンク位置に位置するかメカリンクカット位置に位置するかにかかわらず、リフトレバー52を初期位置から作動位置へ移動させることができる。
【0065】
(システム構成)
図9は、ドアロック装置20の制御系を示す図である。
図9に示すように、ドアロック装置20は、ドアロックECU601、第一ポジションスイッチ602、第二ポジションスイッチ603、第一キー連動スイッチ604、第二キー連動スイッチ605、ロックスイッチ606、アンラッチスイッチ607、およびドアセンサ608を有している。
【0066】
ドアロックECU601は、モータ22を回転駆動する制御ユニットであり、マイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース(I/F)等を含む。CPUは、ROMに格納されているインストラクション又はプログラム又はルーチンを読み出し、RAMに展開して実行できる。
【0067】
第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603は、コントロールレバー26の位置を検出するためのスイッチである。第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603は、コントロールレバー26がメカリンクカット位置に位置するとOFFになり、コントロールレバー26がメカリンク位置に位置するとONになる。そして、ドアロックECU601は、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFであるかONであるかを取得でき、取得した第一ポジションスイッチ602と第二ポジションスイッチ603のONとOFFの状態に基づいて、コントロールレバー26がメカリンクカット位置に位置するかメカリンク位置に位置するかを判定できる。
【0068】
第一キー連動スイッチ604は、キーシリンダ142が中立位置に位置している場合にはOFFになり、キーシリンダ142が中立位置から所定の方向(具体的には、コントロールレバー26がメカリンク位置に移動する方向)に回転している場合にはONになるように構成されている。第二キー連動スイッチ605は、キーシリンダ142が中立位置に位置している場合にはOFFになり、キーシリンダ142が中立位置から前記所定の方向とは反対方向(具体的には、コントロールレバー26がメカリンクカット位置に移動する方向)に回転している場合にはONになるように構成されている。ドアロックECU601は、第一キー連動スイッチ604および第二キー連動スイッチ605がONであるかOFFであるか(すなわち、キーシリンダ142が操作中であるか否か)を検出できる。
【0069】
ロックスイッチ606は、使用者が、「ドアロック装置20をメカリンク状態とメカリンクカット状態の何れかの状態に切り替えるため」および「ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合に、アンラッチ許可モードとアンラッチ不許可モードとのいずれかの状態に切り替えるため」に操作する電気的なスイッチである。ドアロックECU601は、ロックスイッチ606に対してドアロック装置20をアンラッチ許可モードに切り替えるため操作があったか否か、ドアロック装置20をアンラッチ許可モードに切り替えるための操作があったか否か、およびドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替えるための操作があったか否かを検出できる。アンラッチスイッチ607は、使用者がラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替えるため(車両ドア12を開放可能な状態にするため)に操作する電気的なスイッチである。ドアロックECU601は、アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替えるため操作があったか否かを検出できる。
【0070】
ドアセンサ608は、車両ドア12が閉止状態であるか否かを検出できる。ドアロックECU601は、ドアセンサ608の検出結果を取得できる。
【0071】
(ドアロック装置の動作)
次に、ドアロック装置20の動作について説明する。
図10は、ドアロック装置20の状態遷移図である。ドアロック装置20は、前述のとおり、メカリンク状態、メカリンクカット状態、および「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」の3つの状態に切り替え可能である。なお、メカリンクカット状態およびメカリンク状態では、ラッチ機構50はラッチ状態である。ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合、ドアロックECU601は、アンラッチ許可モードとアンラッチ不許可モードといずれか一方のモードでドアロック装置20を制御する。アンラッチ許可モードは、使用者によるアンラッチスイッチ607の操作によってラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができる状態(モード)である。アンラッチ不許可モードは、使用者によるアンラッチスイッチ607の操作によってはラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができない状態(モード)である。使用者は、ロックスイッチ606を操作することにより、アンラッチ許可モードとアンラッチ不許可モードとの任意の一方を選択できる。
【0072】
(メカリンクカット状態)
図4に示すように、ドアロック装置20のメカリンクカット状態は、回転部材23が中立位置に位置しており、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置しており、かつ、阻止レバー38が退避位置に位置している状態である。ドアロックECU601は、通常はドアロック装置20をメカリンクカット状態に維持する。なお、ドアロックECU601は、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がいずれもOFFである場合、ドアロック装置20がメカリンクカット状態であると判定する。
【0073】
回転部材23が中立位置に位置していると、阻止レバー38の第一係合部381と回転部材23の第四係合部234とは係合しない。また、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置していると、阻止レバー38は退避位置への移動が許容される。このため、阻止レバー38は阻止レバー付勢部材39の付勢力によって退避位置に保持される。
【0074】
ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合、アクティブレバー25は、節度スプリング40の付勢力によって、メカリンクカット位置に保持される。そして、アクティブレバー25がメカリンクカット位置に位置していると、オープンリンク30はアクティブレバー25に取り付けられているオープンリンク付勢部材31によってメカリンクカット位置に保持される。
【0075】
メカリンクカット状態でインサイドドアハンドル131が手動操作されると、インサイドドアハンドル131の動きがインサイドオープンレバー33とインサイドレバー32を介してアウトサイドオープンレバー36に伝達され、アウトサイドオープンレバー36は初期位置から作動位置へ移動する。しかしながら、オープンリンク30がメカリンクカット位置に位置しているため、アウトサイドオープンレバー36の初期位置から作動位置への移動に伴ってオープンリンク30が移動しても、オープンリンク30はリフトレバー52の第一係合部521に係合しない。このため、リフトレバー52は初期位置から移動せず、ラッチ機構50はラッチ状態に保持される。すなわち、インサイドドアハンドル131およびアウトサイドドアハンドル141のドア開操作では、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができない。
【0076】
ただし、ドアロック装置20がメカリンクカット状態であっても、インサイドドアハンドル131に対する緊急アンラッチ操作により、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができる。前記のとおり、ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合にインサイドドアハンドル131が操作されると、ドアロック装置20はメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わる。さらに、ドアロック装置20がメカリンク状態である場合にインサイドドアハンドル131が操作されると、ドアロック装置20はメカリンク状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替わる。ただし、インサイドドアハンドル131が操作されることによってドアロック装置20がメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わった後、後述する再ロック条件が成立すると、ドアロックECU601は、モータ22を駆動してドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替える。このため、「1回目のインサイドドアハンドル131の操作の後、再ロック条件が成立するまでに2回目のインサイドドアハンドル131の操作を行う」という緊急アンラッチ操作により、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えることができる。
【0077】
(メカリンク状態)
図8に示すように、ドアロック装置20のメカリンク状態は、回転部材23が中立位置に位置しており、アクティブレバー25およびコントロールレバー26がメカリンク位置に位置しており、かつ、阻止レバー38が阻止位置に位置している状態である。この状態では、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603は、いずれもONである。
【0078】
(メカリンクカット状態から「ラッチ機構がアンラッチ状態である状態」への切り替え)
ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンクカット状態のアンラッチ許可モードである場合に、アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチにするための操作があったことを検出すると、ラッチ機構50をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。具体的には、ドアロックECU601は、モータ22を駆動して回転部材23を中立位置から第二回転位置に移動させる。なお、
図4に示すように、メカリンクカット状態では阻止レバー38は退避位置に位置しているため、回転部材23は、中立位置から第三回転位置を通過して第二回転位置に移動できる。
【0079】
図6に示すように、回転部材23が中立位置から第二回転位置に移動すると、回転部材23の第二係合部232がリリースレバー29の第一係合部291を押し、リリースレバー29を初期位置から作動位置へ移動させる。そして、リリースレバー29が初期位置から作動位置に移動すると、リリースレバー29はリフトレバー52を押し、リフトレバー52は初期位置から作動位置に移動する。その結果、ラッチ機構50はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。
【0080】
ドアロックECU601は、回転部材23が第二回転位置に到達すると、モータ22の駆動を停止する。このため、回転部材23は、回転部材付勢部材24の付勢力によって、第二回転位置から中立位置に戻る。したがって、ラッチ機構50はアンラッチ状態からラッチ状態に戻り、その結果、ドアロック装置20は「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」からメカリンクカット状態に切り替わる。
【0081】
なお、ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンクカット状態にあり制御モードがアンラッチ不許可モードである場合には、アンラッチスイッチ607に対する操作を検出しても、ドアロック装置20をメカリンクカット状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えない。すなわち、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンクカット状態に維持する。
【0082】
(メカリンクカット状態からメカリンク状態への切り替え)
図10に示すように、ドアロックECU601は、メカリンクカット状態である場合に、所定の条件(以下、「緊急解除条件」と記すことがある)が成立したことを検出すると、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える。例えば、ドアロックECU601は、車両が物体に衝突したと判定した場合、および、バッテリーの電圧(充電量)が閾値以下になった場合、のいずれかの場合、緊急解除条件が成立したと判定し、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える。このほか、ドアロックECU601は、ロックスイッチ606に対する「ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える操作」を検出した場合、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える。これにより、使用者は、インサイドドアハンドル131またはアウトサイドドアハンドル141のドア開操作によってラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替えられる。
【0083】
具体的には、ドアロックECU601は、モータ22を駆動することにより、回転部材23を中立位置から第一回転位置に移動させる。
図5には、回転部材23が第一回転位置に移動した状態が示される。
図5に示すように、回転部材23が中立位置から第一回転位置に向かって移動すると、回転部材23の第一係合部231が、メカリンクカット位置のアクティブレバー25の第一係合部251と係合してこの第一係合部251を押す。このため、アクティブレバー25はメカリンクカット位置からメカリンク位置へ向かって回転移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンクカット位置とメカリンク位置との所定の中間点を超えると、節度スプリング40の付勢力によってメカリンク位置に移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンク位置にてストッパ等に係合することにより、メカリンク位置に位置決めされる。アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動すると、アクティブレバー25の動作がオープンリンク付勢部材31を介してオープンリンク30に伝達され、オープンリンク30はメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動する。
【0084】
アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動すると、この移動に連動して、コントロールレバー26もメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動する。この結果、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わる。モータ22の駆動開始後、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わったことが検出されると、モータ22の回転駆動が停止される。モータ22の回転駆動が停止されると、回転部材23は回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置に移動する。ただし、アクティブレバー25は、節度スプリング40の付勢力によってメカリンク位置に保持される。そして、アクティブレバー25がメカリンク位置に保持されることで、阻止レバー38は阻止位置に保持される。このように、回転部材23が中立位置から第一回転位置へ移動することにより、ドアロック装置20はメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わる。
【0085】
なお、インサイドドアハンドル131の操作によっても、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替えることができる。具体的には、ドアロック装置20がメカリンクカット状態である場合、インサイドドアハンドル131が操作されると(初期位置から作動位置へ移動すると)、インサイドドアハンドル131の操作に連動して、インサイドオープンレバー33が初期位置から作動位置へ移動する。それにより、インサイドオープンレバー33の第二係合部332が、アクティブレバー25の第四係合部254を押し、アクティブレバー25をメカリンクカット位置からメカリンク位置へ移動させる。その結果、ドアロック装置20はメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わる。さらに、前述のように、キーシリンダ142に対する手動操作によっても、ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替えることができる。
【0086】
(メカリンク状態からメカリンクカット状態への切り替え動作)
図10に示すように、ドアロックECU601は、所定の条件(以下、「再ロック条件」と記すことがある)が成立した場合、ドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替える。再ロック条件が成立したか否かを判定する方法は、次のとおりである。ドアロックECU601は、インサイドドアハンドル131に対する手動操作、またはキーシリンダ142に対する操作(キーシリンダ142を介したコントロールレバー26の操作)によりドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わった後、所定の時間(例えば1秒)経過した場合、再ロック条件が成立したと判定する。例えば、ドアロックECU601は、ロックスイッチ606に対する「ドアロック装置20をメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える操作」を検出することなく第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わったことを検出した場合、インサイドドアハンドル131に対する手動操作によりドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わったと判定する。同様に、ドアロックECU601は、第一キー連動スイッチ604がONに切り替わるとともに第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603がOFFからONに切り替わったことを検出した場合、キーシリンダ142に対する手動操作によってドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わったと判定する。そして、ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わった後、所定の時間(例えば1秒)が経過した場合、再ロック条件が成立したと判定する。
【0087】
そして、再ロック条件が成立したと判定すると、ドアロックECU601は、モータ22を駆動して回転部材23を
図8に示す中立位置から第三回転位置に向かって回転させる。
図11は、回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって所定量回転した状態を示す。モータ22の回転駆動力によって回転部材23が中立位置から第三回転位置に向かって所定量回転すると、
図11に示すように、回転部材23の第一係合部231がアクティブレバー25の第二係合部252に係合するよりも先に、回転部材23の第四係合部234が阻止レバー38の第一係合部381と係合する。回転部材23の第四係合部234が阻止レバー38の第一係合部381と係合すると、阻止レバー38は阻止位置から退避位置へ移動できない状態となる。
【0088】
図7は、回転部材23が
図11に示す位置からさらに回転して第三回転位置に達した状態を示す図である。回転部材23が第三回転位置に達すると、回転部材23の第一係合部231がアクティブレバー25の第二係合部252を押し、アクティブレバー25はメカリンク位置からメカリンクカット位置へ向かって移動する。そして、アクティブレバー25は、メカリンク位置とメカリンクカット位置の中間点を過ぎると、節度スプリング40の付勢力によってメカリンクカット位置に移動し、ストッパ等に係合することによってメカリンクカット位置に位置決めされる。
【0089】
アクティブレバー25がメカリンクカット位置に移動すると、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603はONからOFFに切り替わる。ドアロックECU601は、モータ22の回転駆動を開始してから所定の時間が経過すると、モータ22の回転駆動を停止する(モータ22への通電を停止する)。なお、この「所定の時間」は、モータ22の回転駆動によって回転部材23を中立位置から第三回転位置に移動させるために必要な時間である。モータ22の回転駆動が停止された後においても、慣性によって回転部材23の回転が継続することがある。このため、回転部材23は慣性によって第三回転位置を通り過ぎて第二回転位置に向かって移動しようとする。また、アクティブレバー25がメカリンク位置からメカリンクカット位置に移動した場合、アクティブレバー25の第三係合部253と阻止レバー38の第二係合部382との係合が外れるので、阻止レバー38は阻止レバー付勢部材39の付勢力により阻止位置から退避位置に移動しようとする。しかしながら、アクティブレバー25がメカリンク位置からメカリンクカット位置に移動したときには、阻止レバー38の第一係合部381と回転部材23の第四係合部234が既に係合している。このため、阻止レバー38は阻止位置から退避位置の側に移動できない。よって、阻止レバー38は阻止位置に保持される。そして、阻止レバー38が阻止位置に位置しているため、回転部材23は第三回転位置において阻止レバー38に係合してその移動が阻止される。具体的には、回転部材23の第三係合部233が、第三回転位置にて、阻止レバー38の一方の側面を構成する側壁に係合する。このため、阻止レバー38によって回転部材23が第三回転位置を行き過ぎること(すなわち、第三回転位置よりも第二回転位置の側に移動すること)が阻止される。
【0090】
モータ22の回転駆動が停止し、かつ、上記したような回転部材23の慣性が消失した後は、回転部材23は回転部材付勢部材24の付勢力によって中立位置へ移動する。回転部材23が中立位置へ移動すると、回転部材23の第四係合部234と阻止レバー38の第一係合部381の係合が解除される。このため、阻止レバー38は、阻止レバー付勢部材39の付勢力によって阻止位置から退避位置へ移動し、ドアロック装置20は
図4に示すメカリンクカット状態になる。
【0091】
このように、インサイドドアハンドル131またはキーシリンダ142に対する操作によってドアロック装置20がメカリンクカット状態からメカリンク状態に切替えられた後、所定の時間が経過すると、ドアロックECU601は、再ロック条件が成立したと判定する。そして、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンク状態からメカリンクカット状態に切り替える。この動作が再ロック動作である。このような動作により、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンクカット状態に保持する。換言すると、ドアロック装置20は、通常はメカリンクカット状態に保持される。
【0092】
(メカリンク状態から「ラッチ機構がアンラッチ状態である状態」への切り替え動作)
ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンク状態である場合にアンラッチスイッチ607に対する操作を検出すると、ドアロック装置20をメカリンク状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替える。ただし、ドアロック装置20は、モータ22の駆動力によっては、メカリンク状態から直接に「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えることができない。このため、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンク状態からいったんメカリンクカット状態に切替え、その後、メカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替える。
【0093】
具体的には、ドアロックECU601は、第一ステップとして、モータ22を回転駆動させることによって、メカリンク状態のドアロック装置20の回転部材23を中立位置から第三回転位置に移動させる。前述のとおり、ドアロック装置20がメカリンク状態であると、阻止レバー38は阻止位置に位置しているため、回転部材23は阻止レバー38に係合することにより第三回転位置で停止する。そして、回転部材23が中立位置から第三回転位置に移動すると、アクティブレバー25がメカリンク位置からメカリンクカット位置に移動する。
【0094】
ここで、回転部材23が第三回転位置に移動した後、回転部材23を連続的に第二回転位置まで移動させようとしても、回転部材23は阻止レバー38との係合によって第三回転位置にて回転規制されているため、第二回転位置まで移動できない。このように、回転部材23は、中立位置から第二回転位置まで直接に移動できない。換言すれば、ドアロック装置20は、モータ22の駆動力によっては、回転部材23が中立位置にあるメカリンク状態から直接に、回転部材23が第二回転位置にある「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えることができない。
【0095】
そこで、本実施形態においては、ドアロックECU601は、第一ステップにて回転部材23を中立位置から第三回転位置に移動させるためにモータ22の回転駆動を開始してから所定の時間経過後、モータ22の回転駆動を停止する。これにより、回転部材23は、回転部材付勢部材24の付勢力によって第三回転位置から中立位置に向かって移動する。その結果、阻止レバー38の第一係合部381と回転部材23の第四係合部234との係合が解除され、阻止レバー38は阻止位置から解除位置に移動する。これにより、ドアロック装置20はメカリンクカット状態になる。
【0096】
その後、ドアロックECU601は、再びモータ22を回転駆動し、回転部材23を中立位置から第三回転位置を通過して第二回転位置に移動させる。ただし、ドアロックECU601がモータ22の回転駆動を停止してから阻止レバー38が退避位置に移動するまでには、ある程度の時間を要する。そして、阻止レバー38の阻止位置への移動が完了していない時点でドアロックECU601がモータ22を回転駆動すると、回転部材23の第三係合部233または第四係合部234が阻止レバー38に係合し、回転部材23は第三回転位置を超えて第二回転位置に移動できない。
【0097】
そこで、ドアロックECU601は、第一ステップの後、第二ステップとして、モータ22の回転駆動を停止してから、阻止レバー38が阻止位置に移動するまで、モータ22を回転駆動せずに待機する。この時間(待機時間)は、回転部材付勢部材24の付勢力によって回転部材23が第三回転位置から「回転部材23の第四係合部234と阻止レバー38の第一係合部381との係合が解除される位置」に移動するまでに要する時間、および、阻止レバー付勢部材39の付勢力によって阻止レバー38が阻止位置から退避位置に移動するまでに要する時間に応じて適宜設定される。したがってこの待機時間は特に限定されるものではないが、一例として500msecが適用できる。
【0098】
上記待機時間の経過後(すなわち、第二ステップの後)、ドアロックECU601は、第三ステップとして、回転部材23が第三回転位置を通過して第二回転位置に移動するようにモータ22を回転駆動する。これにより、回転部材23が第二回転位置まで移動して、ドアロック装置20はメカリンクカット状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替わる。ここで、第三ステップの実行時には阻止レバー38は第二ステップの実行により既に退避位置に移動しているので、第三ステップの実行時に回転部材23が第三回転位置にて阻止レバー38に係合して回転規制されることはなく、回転部材23は第三回転位置を通過して第二回転位置まで移動する。その後、ドアロックECU601は、モータ22の回転駆動を停止する。これにより、回転部材23は、回転部材付勢部材24の付勢力によって、第二回転位置から中立位置に移動する。したがって、ドアロック装置はメカリンクカット状態に切り替わる。このような動作によれば、ドアロック装置20をメカリンク状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に確実に切り替えることができる。
【0099】
(キーの閉じ込みを防止する動作)
次に、キーの閉じ込み(車内に乗員が存在せず、かつ、車内にキーが存在する状態で、ドアロック装置がメカリンクカット状態になること)を防止する制御について説明する。前述のとおり、ドアロック装置20は、「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替わった後、メカリンクカット状態に切り替わる。また、ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンク状態である場合に再ロック条件が成立すると、ドアロック装置20をメカリンクカット状態に切り替える。このため、車中の使用者がアンラッチスイッチ607を操作して降車した後、車両ドア12が閉止状態になると、ドアロック装置20はメカリンクカット状態に切り替わる。したがって、使用者は、降車の際にキーを車内に置き忘れると、車外から車両ドア12を開放できなくなる。
【0100】
このほか、使用者がキーを持って降車したものの、降車後にトランクを開け、トランクにキーを置き忘れたままトランクを閉じてしまうことがある。この場合、ドアロック装置20がメカリンクカット状態に切り替わっているため、使用者は手動操作によっては車両ドア12を開放できない。さらに、使用者が降車後にバッテリーを交換することがある。この場合、ドアロック装置20がメカリンクカット状態に切り替わってからバッテリーが取り外されると、使用者がキーを持っていても車外から車両ドア12を開放できない。そして、バッテリーを交換した際、ボンネット内にキーを置き忘れた状態でボンネットを閉じてしまうことがある。ボンネットを開放するには車内に配置されている所定のレバーを操作する必要があるが、使用者はキーを持っていないから車両ドア12を開放できず、その結果ボンネットを開放できない。
【0101】
このようなキーの閉じ込みは、特に、ドアロック装置20がメカリンク状態のときに、起こりやすい。ドアロック装置20がメカリンク状態であるときには、使用者は手動により車両ドアを開放することができるとの認識を持っている。従って、例えば降車した後すぐに車両ドアを外部から手動で開けるとの意図をもって、車両ドアを開け、キーを車両内に残したまま車外に出て車両ドアを閉じる場合が考えられる。このときに再ロックにより車両ドアがメカリンクカット状態になると、その後に外部から手動で車両ドアを開けることができない。
【0102】
そこで、ドアロック装置20がメカリンク状態である間にラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替える操作(アンラッチスイッチ607の操作および手動操作)があった場合、ドアロックECU601は、乗員が降車するものとみなす。そしてこの場合には、ドアロックECU601は、ラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替えた後、すなわち、前述の第一ステップ、第二ステップ、および第三ステップの後、第四ステップとしてドアロック装置をメカリンク状態に切り替える。具体的には、ドアロック装置20がメカリンク状態であると、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603はいずれもONの状態である。そこで、ドアロックECU601は、第一ポジションスイッチ602および第二ポジションスイッチ603はいずれもONである間にアンラッチスイッチ607への操作が検出された場合、上述の「メカリンク状態から『ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態』への切り替え動作」を実行する(すなわち上述の第一ステップ、第二ステップ、第三ステップを実行する)。そして、ドアロックECU601は、この動作の終了後(第三ステップの実行終了後)、かつ、回転部材付勢部材24の付勢力によってドアロック装置20がメカリンクカット状態に切り替わった後、回転部材23が中立位置から第一回転位置に移動するように、モータ22を回転駆動する。そして、回転部材23が中立位置から第一回転位置に移動すると、アクティブレバー25がメカリンクカット位置からメカリンク位置に移動する。その結果、ドアロック装置20がメカリンクカット状態からメカリンク状態に切り替わる。そして、ドアロックECU601は、ドアロック装置20をメカリンク状態に維持する。
【0103】
一方、ドアロックECU601は、第一ポジションスイッチおよび第二ポジションスイッチがONの状態のまま、ドアセンサ608により車両ドア12が開放されたことを検出した場合、ドアロック装置20がメカリンク状態である間にラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替える手動操作があったと判定する。そして、ドアロックECU601は、その後、ドアセンサ608によって車両ドア12が閉止状態になったことを検出すると、ドアロック装置20をメカリンク状態に維持する。
【0104】
なお、ドアロックECU601は、ドアロック装置20がメカリンク状態から「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替わり、その後ドアロック装置20をメカリンク状態に維持している場合に、所定の解除条件が成立すると、ドアロック装置20をメカリンク状態に維持する動作を解除する。例えば、ドアロックECU601は、ロックスイッチ606に対する操作があった場合、所定の解除条件が成立したと判定し、ドアロック装置20をメカリンクカット状態に切り替える。
【0105】
このような動作によれば、車両ドア12を開放しその後閉止した場合にドアロック装置20がメカリンク状態に切り替わるから、車内(キャビン、トランクルーム、およびボンネット)にキーを置き忘れた場合、車外から車両ドア12を開放できる。
【0106】
なお、ドアロックECU601が「ラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替えた後に、ドアロック装置をメカリンク状態に切り替える」という動作を実行する条件として、「ドアロック装置20がメカリンク状態である間にラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替える操作があった場合」という条件に加え、次のような条件が追加されてもよい。
追加条件:ラッチ機構50がアンラッチ状態に切り替えられる前、またはアンラッチ状態である間に、トランクとボンネットの少なくとも一方を開放する操作が実行された場合。すなわち、ドアロック装置20がアンラッチ状態に切り替わってから車両ドア12が開放されるまで、または車両ドア12が開放されている間に、トランクとボンネットの少なくとも一方を開放する操作が実行された場合。
【0107】
このような動作によれば、ドアロック装置20がメカリンク状態であるときに車両ドアを開放するとともにトランク又はボンネットが開放された場合に限り、ドアロック装置20がメカリンク状態に維持される。このため、キーをトランクまたはボンネットに置き忘れた場合に、車内からトランクまたはボンネットを開放できる。
【0108】
ここで、ドアロック装置20の具体的な動作について説明する。
図12は、ドアロックECU601のCPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。ドアロックECU601のCPUは、
図12のフローチャートに示すルーチンを、所定の周期で繰り返し実行する。以下、ドアロックECU601のCPUを、単に「CPU」と記す。
【0109】
ステップS101において、CPUは、アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替える操作がされたか否かを判定する。CPUは、このような操作がされたと判定した場合、ステップS102に進む。CPUは、このような操作がされていないと判定した場合、このルーチンをいったん終了する。
【0110】
ステップS102において、CPUは、アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替える操作がされた時点で、ドアロック装置20がメカリンク状態にあったかメカリンクカット状態にあったかを判定する。CPUは、ドアロック装置20がメカリンクカット状態であった場合、ステップS107に進む。CPUは、ドアロック装置20がメカリンク状態であった場合は、ステップS103に進む。
【0111】
ステップS103において、CPUは、「アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替える操作がされた時点で、ドアロック装置20がメカリンク状態であったこと」を記憶する処理を行う(例えばメカリンクフラグをONに設定する)。そしてCPUは、ステップS104に進む。
【0112】
ステップS104において、CPUは、回転部材23が中立位置から第三回転位置に移動するように、所定の時間にわたってモータ22を回転駆動する。そして、CPUは、モータ22の回転駆動を所定の時間継続した後、モータ22の回転駆動を停止する。そしてCPUは、ステップS105に進む。
【0113】
ステップS105において、CPUは、モータ22の回転駆動を停止してからの経過時間の計時を開始する。そしてCPUは、ステップS106に進む。
【0114】
ステップS106において、CPUは、モータ22の回転駆動を停止してから所定の時間(待機時間)が経過したか否かを判定する。CPUは、所定の時間が経過するまでこのステップで待機する。CPUは、所定の時間が経過した場合、ステップS107に進む。
【0115】
ステップS107において、CPUは、回転部材23が第二回転位置に移動するように、所定の時間にわたってモータ22を回転駆動する。このときCPUは、回転部材23が第三回転位置を通過して第二回転位置まで移動するように、回転部材23を所定の回転方向に回転させる。そして、CPUは、ステップS108に進む。
【0116】
ステップS108において、CPUは、モータ22の回転駆動を開始してから所定の時間が経過したか否かを判定する。CPUは、所定の時間が経過するまでこのステップで待機する。すなわち、CPUは、モータ22の回転駆動を継続することにより、回転部材23を中立位置から第二回転位置に移動させる。そして、CPUは、所定の時間が経過した場合、ステップS109に進む。
【0117】
ステップS109において、CPUは、モータ22の回転駆動を停止する。そして、CPUは、ステップS110に進む。
【0118】
ステップS110において、CPUは、「アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替える操作がされた時点で、ドアロック装置20がメカリンク状態であったこと」を記憶する処理を行ったか否かを判定する。CPUは、上記の記憶処理を行っていない場合(例えばメカリンクフラグがオフである場合)、このルーチンを終了する。したがって、ドアロック装置20がメカリンクカット状態である間にアンラッチスイッチ607が操作された場合、CPUは、ドアロック装置20を「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替えた後、メカリンクカット状態に切り替える。そしてその後、CPUは、ドアロック装置20をメカリンクカット状態に維持する。
【0119】
ステップS110において、CPUは、「アンラッチスイッチ607に対してラッチ機構50をアンラッチ状態に切り替える操作がされた時点で、ドアロック装置20がメカリンク状態であったこと」を記憶する処理を行っていると判定した場合(例えばメカリンクフラグがオンである場合)、ステップS111に進む。
【0120】
ステップS111において、CPUは、回転部材23が中立位置から第一回転位置に移動するように、所定の時間にわたってモータ22を回転駆動する。そして、CPUは、ステップS112に進む。
【0121】
ステップS112において、CPUは、モータ22の回転駆動を停止する。したがって、ドアロック装置20がメカリンク状態である間にアンラッチスイッチ607が操作された場合、CPUは、ドアロック装置20をメカリンクカット状態に切替え、その後引き続いて「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」に切り替える。そして、CPUは、ドアロック装置20が「ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態」からメカリンクカット状態に切り替わった後、引き続いてドアロック装置20をメカリンク状態に切り替える。その後、CPUは、ドアロック装置20をメカリンク状態に維持する。
【0122】
このようなルーチンによれば、上述の「メカリンク状態から『ラッチ機構50がアンラッチ状態である状態』への切り替え動作」および「キーの閉じ込みを防止する動作」が実現する。
【0123】
なお、CPUは、ステップS110において、「ドアロック装置20がメカリンク状態であったことを記憶する処理を行った」か否かの判定に加え、ラッチ機構50がアンラッチ状態に切り替えられる前、またはアンラッチ状態である間に、トランクとボンネットの少なくとも一方を開放する操作が実行されたか否かを判定してもよい。そして、CPUは、「ドアロック装置20がメカリンク状態であったことを記憶している」と判定し、かつ、ラッチ機構50がアンラッチ状態に切り替えられる前、またはアンラッチ状態である間に、トランクとボンネットの少なくとも一方を開放する操作が実行されたと判定した場合、ステップS111に進んでもよい。
【0124】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0125】
例えば、ラッチ機構50の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。要は、リフトレバー52が初期位置から作動位置に移動することで、ラッチ機構50がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されていればよい。
【0126】
さらに、前記実施形態では、ドアロックECU601がモータ22を回転駆動する制御ユニットである構成を示したが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、車両が有する他のECU(例えば、ボディECUなど)がモータ22を回転駆動する制御ユニットであってもよい。
【符号の説明】
【0127】
12…車両ドア、20…ドアロック装置、22…モータ、25…アクティブレバー、30…オープンリンク、38…阻止レバー、50…ラッチ機構、52…リフトレバー、131…インサイドドアハンドル、141…アウトサイドドアハンドル、142…キーシリンダ、601…ドアロックECU