(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123455
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】発電プラント及びその制御方法並びに改造方法
(51)【国際特許分類】
F01D 21/00 20060101AFI20220817BHJP
F01D 17/20 20060101ALI20220817BHJP
F01K 7/22 20060101ALI20220817BHJP
F01K 7/24 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
F01D21/00 G
F01D17/20 C
F01K7/22 B
F01K7/24 D
F01K7/24 C
F01D21/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020782
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】堂本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】小原 和貴
(72)【発明者】
【氏名】當房 誠
(72)【発明者】
【氏名】福岡 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】森山 慧
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071AA06
3G071BA06
3G071CA09
3G071EA02
(57)【要約】
【課題】簡略な構成でFCB機能を実現することのできる発電プラント及びその制御方法並びに改造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】発電プラントは、ボイラと、ボイラで生成された蒸気により駆動される高圧タービン111と、高圧タービン111から排出された蒸気を再過熱する再熱器105、106と、再熱器105、106で再過熱された蒸気により駆動される中圧タービン112と、ボイラで生成された蒸気を、高圧タービン111をバイパスして再熱器105、106へ供給するバイパス系統SBと、再熱器105、106で再過熱された蒸気を中圧タービン112の上流側において系外に排出する調節系統SCとを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラと、
前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、
前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、
前記再熱器で再過熱された蒸気により駆動される第2タービンと、
前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして前記再熱器へ供給するバイパス系統と、
前記再熱器で再過熱された蒸気を前記第2タービンの上流側において系外に排出する調節系統と、
を備える発電プラント。
【請求項2】
前記再熱器で再過熱された蒸気の圧力設定値に基づいて、前記調節系統に設けられた調節弁を制御する制御装置を備える請求項1に記載の発電プラント。
【請求項3】
前記制御装置は、ファストカットバック運転を行う場合に、前記調節弁を開状態とし、低下するように設定された前記圧力設定値に基づいて、前記調節弁の開閉状態を制御する請求項2に記載の発電プラント。
【請求項4】
前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして復水器へ供給するタービンバイパス系統を備え、
前記制御装置は、前記ボイラから前記第1タービンへ供給される蒸気の主蒸気圧力設定値に基づいて、前記タービンバイパス系統に設けられた調整弁を制御する請求項2または3に記載の発電プラント。
【請求項5】
前記制御装置は、ファストカットバック運転を行う場合に、前記調整弁を開状態とし、低下するように設定された前記主蒸気圧力設定値に基づいて、前記調整弁の開閉状態を制御する請求項4に記載の発電プラント。
【請求項6】
前記ボイラで生成された蒸気を過熱する過熱器を備え、
前記制御装置は、前記過熱器で過熱された蒸気の温度に基づいて、前記過熱器へ供給するスプレイ水の供給量を制御する請求項2から5のいずれか1項に記載の発電プラント。
【請求項7】
ボイラと、
前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、
前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、
前記ボイラで生成された蒸気を過熱する過熱器と、
前記再熱器へスプレイ水を供給する再熱器スプレイ水系統と、
前記過熱器へスプレイ水を供給する過熱器用スプレイ水系統と、
ファストカットバック運転を行わない場合に、予め設定された制御則に基づいて前記再熱器及び前記過熱器へ供給するスプレイ水の供給量を制御する第1制御モードと、ファストカットバック運転を行う場合に、前記再熱器の蒸気流量と前記過熱器の蒸気流量との流量差に応じて、前記再熱器及び前記過熱器のそれぞれへ供給するスプレイ水の供給量を制御する第2制御モードとを有する制御装置と、
を備える発電プラント。
【請求項8】
前記再熱器スプレイ水系統は、前記再熱器の下流側に設けられており、ファストカットバック運転を行う場合における前記再熱器の蒸気流量と前記過熱器の蒸気流量との流量差に基づいて、前記再熱器において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されている請求項7に記載の発電プラント。
【請求項9】
前記再熱器スプレイ水系統は、前記再熱器の上流側に設けられており、ファストカットバック運転を行う場合における前記再熱器の蒸気流量と前記過熱器の蒸気流量との流量差に基づいて、前記再熱器において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されている請求項7に記載の発電プラント。
【請求項10】
前記再熱器スプレイ水系統は、多段構成された前記再熱器の間に設けられており、ファストカットバック運転を行う場合における前記再熱器の蒸気流量と前記過熱器の蒸気流量との流量差に基づいて、前記再熱器において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されている請求項7に記載の発電プラント。
【請求項11】
ボイラと、前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、前記再熱器で再過熱された蒸気により駆動される第2タービンとを備える発電プラントの制御方法であって、
前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして前記再熱器へ供給する工程と、
前記再熱器で再過熱された蒸気を前記第2タービンの上流側において系外に排出する工程と、
を有する制御方法。
【請求項12】
ボイラと、前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、前記ボイラで生成された蒸気を過熱する過熱器と、前記再熱器へスプレイ水を供給する再熱器スプレイ水系統と、前記過熱器へスプレイ水を供給する過熱器用スプレイ水系統と、を備える発電プラントの制御方法であって、
ファストカットバック運転を行わない場合に、予め設定された制御則に基づいて前記再熱器及び前記過熱器へ供給するスプレイ水の供給量を制御する工程と、
ファストカットバック運転を行う場合に、前記再熱器の蒸気流量と前記過熱器の蒸気流量との流量差に応じて、前記再熱器及び前記過熱器のそれぞれへ供給するスプレイ水の供給量を制御する工程と、
を有する制御方法。
【請求項13】
ボイラと、前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、前記再熱器で再過熱された蒸気により駆動される第2タービンと、前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして復水器へ供給するタービンバイパス系統とを備える発電プラントの改造方法であって、
前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして前記再熱器へ供給するバイパス系統を設ける工程と、
前記再熱器で再過熱された蒸気を前記第2タービンの上流側において系外に排出する調節系統を設ける工程と、
を有する改造方法。
【請求項14】
前記第1タービンから前記再熱器へ流れる蒸気の流通系統に設けられた逆止弁を設ける工程と、
前記第1タービンと前記逆止弁の間から、蒸気を前記復水器へ供給する系統を設ける工程と、
を有する請求項13に記載の改造方法。
【請求項15】
前記発電プラントは、前記ボイラで生成された蒸気を過熱する過熱器と、前記過熱器へスプレイ水を供給する過熱器用スプレイ水系統とを備えており、
スプレイ水の供給可能量を増大するように前記過熱器用スプレイ水系統を改造する工程を有する請求項13または14に記載の改造方法。
【請求項16】
ボイラと、前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、前記ボイラで生成された蒸気を過熱する過熱器と、前記再熱器で再過熱された蒸気により駆動される第2タービンと、前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして復水器へ供給するタービンバイパス系統とを備える発電プラントの改造方法であって、
前記再熱器へスプレイ水を供給する再熱器スプレイ水系統を設ける工程を有する改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電プラント及びその制御方法並びに改造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電プラントにおいては、電力系統に事故が発生した場合に、発電プラントを停止せず負荷を所内負荷まで急降下させて運転を継続するファストカットバック(FCB)運転が行われる場合がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国内では、送電系統の信頼性が高いため、発電プラントはFCB機能を有していない場合が多い。しかしながら、大規模な自然災害時には、電力系統が機能不全に陥るリスクがある。また、大規模な自然災害時にもインフラ設備が迅速に復旧できるよう、国内では国土強靭化に向けた取り組みが推進されており、発電プラントにおいてもFCB機能の重要性が認識される。
【0005】
また、再生可能エネルギー導入促進に伴い、発電プラントは電力需給バランス調整の役割が期待される。発電プラントがFCB機能を有していれば、柔軟な出力調整が可能になる。
【0006】
このように、発電プラントにおけるFCB機能の重要性が高まっている。しかしながら、FCB機能のために構成が複雑化する可能性があり、構成の簡略化が望まれている。構成が簡略化されれば、新設だけでなく、既設の発電プラントにおいても改造によりFCB機能を付加することができる。改造の場合、例えば600MW級プラントの改造工事費用は100億円規模になることも想定され、改造の簡略化は特に重要である。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡略な構成でFCB機能を実現することのできる発電プラント及びその制御方法並びに改造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様は、ボイラと、前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、前記再熱器で再過熱された蒸気により駆動される第2タービンと、前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして前記再熱器へ供給するバイパス系統と、前記再熱器で再過熱された蒸気を前記第2タービンの上流側において系外に排出する調節系統と、を備える発電プラントである。
【0009】
本開示の第2態様は、ボイラと、前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、前記再熱器で再過熱された蒸気により駆動される第2タービンとを備える発電プラントの制御方法であって、前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして前記再熱器へ供給する工程と、前記再熱器で再過熱された蒸気を前記第2タービンの上流側において系外に排出する工程と、を有する制御方法である。
【0010】
本開示の第3態様は、ボイラと、前記ボイラで生成された蒸気により駆動される第1タービンと、前記第1タービンから排出された蒸気を再過熱する再熱器と、前記再熱器で再過熱された蒸気により駆動される第2タービンと、前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして復水器へ供給するタービンバイパス系統とを備える発電プラントの改造方法であって、前記ボイラで生成された蒸気を、前記第1タービンをバイパスして前記再熱器へ供給するバイパス系統を設ける工程と、前記再熱器で再過熱された蒸気を前記第2タービンの上流側において系外に排出する調節系統を設ける工程と、を有する改造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、簡略な構成でFCB機能を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る石炭焚きボイラを表す概略構成図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る石炭焚きボイラに設けられた熱交換器を表す概略図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係るFCBに関する発電プラントの具体的構成例を示す図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係るFCB運転を実行した場合の状態変化を示した図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る発電プラントにおける所内単独運転時のフローバランスを示した図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る発電プラントの改造例を示す図である。
【
図8】参考例の発電プラントの構成を示す図である。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る発電プラントの具体的構成例を示す図である。
【
図10】本開示の第2実施形態に係るFCB運転を実行した場合の状態変化を示した図である。
【
図11】本開示の第2実施形態に係る発電プラントにおける所内単独運転時のフローバランスを示した図である。
【
図12】本開示の第2実施形態に係る発電プラントの改造例を示す図である。
【
図13】本開示の第2実施形態の変形例の発電プラントの構成例を示す図である。
【
図14】本開示の第2実施形態の変形例の発電プラントの構成例を示す図である。
【
図15】本開示の第2実施形態の変形例の発電プラントの構成例を示す図である。
【
図16】本開示の第2実施形態に係る必要スプレイ水量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示に係る発電プラント及びその制御方法並びに改造方法の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0015】
図1は、本実施形態の石炭焚きボイラを表す概略構成図である。
【0016】
本実施形態の石炭焚きボイラ10は、石炭(炭素含有固体燃料)を粉砕した微粉炭を微粉燃料として用い、この微粉燃料をバーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能な石炭焚き(微粉炭焚き)ボイラである。
【0017】
本実施形態において、
図1に示すように、石炭焚きボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と燃焼ガス通路13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11を構成する火炉壁101は、複数の伝熱管とこれらを接続するフィンとで構成され、微粉燃料の燃焼により発生した熱を伝熱管の内部を流通する水や蒸気と熱交換して、火炉壁の温度上昇を抑制している。
【0018】
燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁の下部側に設けられている。本実施形態では、燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数のバーナ(例えば21,22,23,24,25)を有している。例えばバーナ21,22,23,24,25は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って複数段(例えば、
図1では5段)配置されている。但し、火炉の形状や一つの段におけるバーナの数、段数、配置などはこの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭供給管26,27,28,29,30を介して複数の粉砕機(ミル)31,32,33,34,35に連結されている。この粉砕機31,32,33,34,35は、例えば、粉砕機のハウジング内に粉砕テーブル(図示省略)が駆動回転可能に支持され、この粉砕テーブルの上方に複数の粉砕ローラ(図示省略)が粉砕テーブルの回転に連動回転可能に支持されて構成されている。石炭が、複数の粉砕ローラと粉砕テーブルとの間に投入されると、粉砕され、搬送用ガス(一次空気、酸化性ガス)により粉砕機のハウジング内の分級機(図示省略)に搬送されて、所定の粒径範囲内に分級された微粉燃料を、微粉炭供給管26,27,28,29,30からバーナ21,22,23,24,25に供給することができる。
【0020】
また、火炉11は、バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト(風道)37の一端部が連結されている。空気ダクト37は、他端部に押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)38が設けられている。
【0021】
燃焼ガス通路13は、
図1に示すように、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路13は、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107が設けられており、火炉11で発生した燃焼ガスと各熱交換器の内部を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。
【0022】
燃焼ガス通路13は、
図1に示すように、その下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排出される煙道14が連結されている。煙道14は、空気ダクト37との間にエアヒータ(空気予熱器)42が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、煙道14を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行い、バーナ21,22,23,24,25に供給する燃焼用空気を昇温することができる。
【0023】
また、煙道14は、エアヒータ42より上流側の位置に脱硝装置43が設けられている。脱硝装置43は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を煙道14内に供給し、還元剤が供給された燃焼ガス中の窒素酸化物と還元剤との反応を、脱硝装置43内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。
煙道14に連結されるガスダクト41は、エアヒータ42より下流側の位置に、電気集塵機などの集塵装置44、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)45、脱硫装置46などが設けられ、下流端部に煙突50が設けられている。
【0024】
一方、複数の粉砕機31,32,33,34,35が駆動すると、生成された微粉燃料が搬送用ガス(一次空気、酸化性ガス)と共に微粉炭供給管26,27,28,29,30を通してバーナ21,22,23,24,25に供給される。また、煙道14から排出された排ガスとエアヒータ42で熱交換することで、加熱された燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)が、空気ダクト37から風箱36を介してバーナ21,22,23,24,25に供給される。バーナ21,22,23,24,25は、微粉燃料と搬送用ガスとが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに微粉燃料混合気が着火することで火炎を形成することができる。火炉11内の下部で火炎が生じ、高温の燃焼ガスがこの火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路13に排出される。なお、酸化性ガスとして、本実施形態では空気を用いる。空気よりも酸素割合が多いものや逆に少ないものであってもよく、燃料流量との適正化を図ることで使用可能になる。
【0025】
また、火炉11は、バーナ21,22,23,24,25の装着位置より上方にアディショナル空気ポート39が設けられている。アディショナル空気ポート39に空気ダクト37から分岐したアディショナル空気ダクト40の端部が連結されている。従って、押込通風機38により送られた燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)を空気ダクト37から風箱36に供給し、この風箱36から各バーナ21,22,23,24,25に供給することができると共に、押込通風機38により送られた燃焼用追加空気(アディショナル空気)をアディショナル空気ダクト40からアディショナル空気ポート39に供給することができる。
【0026】
火炉11は、下部の領域Aにて、微粉燃料混合気と燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)とが燃焼して火炎が生じる。ここで火炉11は、空気の供給量が微粉炭の供給量に対して、理論空気量未満となるように設定されることで、内部が還元雰囲気に保持される。即ち、微粉炭の燃焼により発生した窒素酸化物(NOx)が火炉11の領域Bで還元され、その後、アディショナル空気ポート39から燃焼用追加空気(アディショナル空気)が追加供給されることで微粉炭の酸化燃焼が完結され、微粉炭の燃焼によるNOxの発生量が低減される。
【0027】
その後、燃焼ガスは、
図1に示すように、燃焼ガス通路13に配置される第2過熱器103、第3過熱器104、第1過熱器102、(以下単に過熱器と記載する場合もある)、第2再熱器106、第1再熱器105(以下単に再熱器と記載する場合もある)、節炭器107で熱交換した後、脱硝装置43により窒素酸化物が還元除去され、集塵装置44で粒子状物質が除去され、脱硫装置46にて硫黄酸化物が除去された後、煙突50から大気中に排出される。なお、各熱交換器は燃焼ガス流れに対して、必ずしも前記記載順に配置されなくともよい。
【0028】
次に、熱交換器として、燃焼ガス通路13に設けられた過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107について詳細に説明する。
図2は、石炭焚きボイラ10に設けられた熱交換器を表す概略図である。
なお、
図1では燃焼ガス通路13内の各熱交換器(過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107)の位置を正確に示しているものではなく、各熱交換器の燃焼ガス流れに対する配置順も
図1の記載に限定されるものではない。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の発電プラント1は、石炭焚きボイラ10に設けられた熱交換器(過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107)と、石炭焚きボイラ10が生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン110と、蒸気タービン110に連結され蒸気タービン110の回転によって発電を行う発電機115とを備える。
【0030】
石炭焚きボイラ10で生成した蒸気により回転駆動される蒸気タービン110は、例えば、高圧タービン111と中圧タービン112と低圧タービン113とから構成され、後述する再熱器からの蒸気が中圧タービン112に流入したのちに低圧タービン113に流入する。低圧タービン113には、復水器114が連結されており、低圧タービン113を回転駆動した蒸気が、この復水器114で冷却水(例えば、海水)により冷却されて復水となる。復水器114は、給水ラインL1を介して節炭器107に連結されている。給水ラインL1には、例えば、復水ポンプ(CP)121、低圧給水ヒータ122、給水ポンプ(BFP)123、高圧給水ヒータ124が設けられている。低圧給水ヒータ122と高圧給水ヒータ124には、蒸気タービン111,112,113を駆動する蒸気の一部が抽気されて、抽気ライン(図示省略)を介して高圧給水ヒータ124と低圧給水ヒータ122に熱源として供給され、節炭器107へ供給される給水が加熱される。
【0031】
例えば、石炭焚きボイラ10が貫流ボイラの場合について、説明をする。節炭器107は、火炉壁101の各蒸発管に連結されている。節炭器107で加熱された給水は、火炉壁101を構成する蒸発管を通過する際に、火炉11内の火炎から輻射を受けて加熱され、汽水分離器126へと導かれる。汽水分離器126にて分離された蒸気は、過熱器102,103,104へと供給され、汽水分離器126にて分離されたドレン水は、汽水分離器ドレンタンク127を介し、ドレン水ラインL2を介して復水器114へと導かれる。
【0032】
また、貫流ボイラの起動時や低負荷運転時等においては、節炭器107から供給される給水が火炉壁101を構成する蒸発管を通過する際に全量が蒸発せず、その結果、汽水分離器126に水位が存在する運転状態(ウエット運転状態)となることがある。このウエット運転状態においては、汽水分離器126にて分離されたドレン水は、ボイラ循環ポンプ(BCP)128を用いて循環ラインL6により、給水ラインL1の途中に合流させることで、節炭器107から火炉壁101を構成する蒸発管へと循環して供給してもよい。
【0033】
燃焼ガスが燃焼ガス通路13を流れるとき、この燃焼ガスは、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107で熱回収される。一方、給水ポンプ(BFP)123から供給された給水は、節炭器107で予熱された後、火炉壁101を構成する蒸発管を通過する際に加熱されて蒸気となり、汽水分離器126に導かれる。汽水分離器126で分離された蒸気は、過熱器102,103,104に導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器102,103,104で生成された過熱蒸気は、蒸気ラインL3を介して高圧タービン111に供給され、高圧タービン111を回転駆動する。高圧タービン111から排出された蒸気は、蒸気ラインL4を介して、再熱器105,106に導入されて再度過熱される。再度過熱された蒸気は、蒸気ラインL5を介して、中圧タービン112を経て低圧タービン113に供給され、中圧タービン112および低圧タービン113を回転駆動する。各蒸気タービン111,112,113の回転軸は、発電機115を回転駆動して、発電が行われる。低圧タービン113から排出された蒸気は、復水器114で冷却されることで復水となり、給水ラインL1を介して、再び、節炭器107に送られる。
【0034】
また、燃焼ガス通路13には、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107など各熱交換器の伝熱管の間隙、または各熱交換器の間隙に図示しないスーツブロワ(除灰装置)が配置されていてもよい。スーツブロワは、燃焼ガス通路13の壁面に対して略垂直な方向に延在して配置される。スーツブロワは、燃焼ガス通路13の壁面に対して垂直方向を軸方向として、軸方向に直交する方向に蒸気(気体)を噴射し、また噴射方向も変動することができる噴射装置である。スーツブロワから過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107など熱交換器に向けて噴射された蒸気は、熱交換器の各伝熱管の表面に付着・堆積した燃焼灰を除去し、熱交換器の各伝熱管における熱交換効率の低下を抑制する。
【0035】
次に、本実施形態に係るFCB機能について説明する。
FCBとは、ファストカットバック(Fast Cut Back)の略称である。FCBとは、プラントの急速な負荷の絞り込みのことである。FCBでは、負荷の絞り込みの後に、所内単独運転へ移行する。所内単独運転では、発電プラント1は、電力系統へ電力を供給せず、所内(発電プラント1が設置されている発電所など)の電力のみをまかない、運転を継続する。運転が継続された状態となるため、再度電力系統へ接続される場合にも迅速に復旧することができる。
【0036】
図3は、FCBに関する発電プラント1の具体的構成例を示す図である。
図3に示すように、ボイラ10の火炉11(火炉壁101)で発生させた蒸気は、過熱器102,103,104を介し、主蒸気としてガバナ弁133を介して高圧タービン111へ送られる。そして、高圧タービン111で仕事を終えて排出された蒸気は、逆止弁135を介して、低温再熱蒸気として再熱器105,106へ送られる。再熱器105,106で再過熱された蒸気は、高温再熱蒸気として、ガバナ弁134を介して中圧タービン112へ送られる。中圧タービン112において仕事を終えた蒸気は、低圧タービン113へ送られる。このようにして高圧タービン111、中圧タービン112、及び低圧タービン113が駆動されて発電機115において発電が行われる。
【0037】
低圧タービン113で仕事を終えた蒸気は復水器114により復水される。復水は、復水ポンプ121により低圧給水ヒータ122、脱気器131、給水ポンプ123、及び高圧給水ヒータ124を介して、節炭器107へ送られる。節炭器107で加熱された給水は火炉11(火炉壁101)へ戻る。
【0038】
再熱器105,106は、スプレイ水が供給される再熱器スプレイ水系統SFが設けられている。再熱器スプレイ水系統SFには、スプレイ水の流量を調節する弁VF(再熱器減温スプレイ水調節弁)が設けられている。なお、再熱器105,106が多段構成となっている場合には、各再熱器の間に設置された減温器にスプレイ水が供給可能となっている。過熱器102,103,104は、スプレイ水が供給される過熱器スプレイ水系統SGが設けられている。過熱器スプレイ水系統SGには、スプレイ水の流量を調節する弁VG(過熱器減温スプレイ水調節弁)が設けられている。なお、過熱器102,103,104が多段構成となっている場合には、各過熱器の間に設置された減温器にスプレイ水が供給可能となっている。再熱器スプレイ水系統SFと過熱器スプレイ水系統SGに供給されるスプレイ水は、例えば給水ポンプ123から供給される。
【0039】
そしてさらに、発電プラント1には、タービンバイパス系統SAと、バイパス系統SBと、調節系統SCと、逆止弁135と、ベンチレータ系統SDと、バックアップ系統SEとが設けられている。また、発電プラント1には、制御装置が設けられている。
【0040】
タービンバイパス系統SAは、高圧タービン111へ供給される蒸気(主蒸気)を、復水器114へバイパスする。具体的には、タービンバイパス系統SAは、主蒸気の流通系統において、バイパス系統SBと、ガバナ弁133との間に一端が接続されている。そして、復水器114に他端が接続されている。すなわち、タービンバイパス系統SAは、主蒸気の一部を、高圧タービン111をバイパスして復水器114へ送る。タービンバイパス系統SAには、弁VA(調整弁)が設けられており、流通する蒸気の流量が調整可能となっている。
【0041】
バイパス系統SBは、高圧タービン111へ供給される蒸気(主蒸気)を、再熱器105,106へバイパスする。具体的には、バイパス系統SBは、主蒸気の流通系統において、過熱器102,103,104と、タービンバイパス系統SAとの間に一端が接続されている。そして、再熱器105,106と逆止弁135との間に他端が接続されている。すなわち、バイパス系統SBは、主蒸気の一部を、高圧タービン111をバイパスして再熱器105,106へ送る。バイパス系統SBには、弁VB(調整弁)が設けられており、流通する蒸気の流量が調整可能となっている。
【0042】
調節系統(高圧再熱蒸気圧力調節系統:HRH圧力調節系統)SCは、再熱器105,106で再過熱された蒸気(高温再熱蒸気)を中圧タービン112の上流側において系外に排出する。すなわち、調節系統SCは、再熱器105,106と、中圧タービン112のガバナ弁134との間に一端が接続されている。他端は、大気放出可能なように開放されていても良いし、サイレンサなどの装置を介して系外へ放出されるように構成されていてもよい。調節系統SCには、弁VC(調整弁)が設けられており、流通する蒸気の流量が調整可能となっている。
【0043】
逆止弁(高圧タービン排気強制逆止弁)135は、高圧タービン111の出口側であって、高圧タービン111から再熱器105,106へ流れる蒸気(低温再熱蒸気)の流通系統に設けられ、低温再熱蒸気の高圧タービン111への逆流を防止している。
【0044】
ベンチレータ系統(高圧タービン排気ベンチレータ系統)SDは、高圧タービン111から排出された蒸気を復水器114へ送る。ベンチレータ系統SDには、弁VD(電動仕切弁)が設けられており、高圧タービン排気温度が設定値を超えた場合等に自動開するようになっている。
【0045】
バックアップ系統(高圧給水ポンプ駆動タービン駆動蒸気バックアップ系統:BFP-T駆動系統)SEは、再熱器105,106へ送られる低温再熱蒸気の一部を、給水ポンプ123を駆動するポンプ駆動タービン132へ供給する。バックアップ系統SEには弁VE(調整弁)が設けられており、流通する蒸気の流量が調整可能となっている。
【0046】
制御装置は、発電プラント1の制御を行う。具体的には、発電プラント1に設けられた各装置を制御して、発電プラント1の運転状態を制御する。特に、制御装置は、FCB機能を備えている。
【0047】
図4は、本実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
図4に示すように、制御装置は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU1100と、CPU1100が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)1200と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)1300と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)1400と、ネットワーク等に接続するための通信部1500とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス1800を介して接続されている。
【0048】
また、制御装置は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。
【0049】
なお、CPU1100が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM1200に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
【0050】
後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でハードディスクドライブ1400等に記録されており、このプログラムをCPU1100がRAM1300等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROM1200やその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0051】
次に、FCB運転について説明する。
図5は、発電プラント1においてFCB運転を実行した場合の状態変化を示している。FCB運転は制御装置によって制御が実行される。
【0052】
時刻T1においてFCB運転が開始される。すると、タービン負荷(発電量)は例えば100%から5%へ絞られる。具体的には、タービン負荷は、所内負荷相当(発電プラント1が設置されている発電所等の所内で消費される電力量であり、例えば、発電プラント1の定格負荷運転時の5%程度)となるようにガバナ弁133、134の絞り込みが行われる。また、ボイラ負荷(蒸気発生量)は、例えば100%から20%へ絞られる。具体的には、ボイラ負荷は、ボイラ10が安定して連続運転が可能な負荷であるボイラ最低負荷(例えば、ボイラ定格負荷運転時の20%程度)となるように、燃料・空気・給水の絞り込みが行われる。ただ、発電プラント1では、燃料の急速な絞り込みが難しいため、ボイラ10で発生する蒸気量がボイラ最低負荷相当まで低下するまでに、一定の時間を要する。この過渡期間には、ボイラ10から発生する蒸気量と蒸気タービン110に供給される蒸気量との差異が生じ、余剰蒸気が発生する。この余剰蒸気は後述する制御において処理される。また、所内単独運転へ移行後においても、ボイラ負荷が20%であるのに対してタービン負荷は5%であるため余剰蒸気が発生し、この余剰蒸気についても後述する制御において処理される。
【0053】
FCB運転が開始されると、主蒸気圧力の制御目標値である主蒸気圧力設定値は、一定のレート(低下速度)で低下して、所定圧力値となるように設定される。所定圧力値は、所内単独運転中の低流量状態(定格負荷時の主蒸気流量の5%程度)においても、高圧タービン111の回転数を、ガバナ弁133によって安定的に制御できるような圧力に設定される。これに対応して、制御装置は、主蒸気圧力設定値に基づいて、タービンバイパス系統SAに設けられた弁VAを制御する(主蒸気圧力制御)。具体的には、制御装置は、弁VAを開状態とし、低下するように設定された主蒸気圧力設定値に基づいて、弁VAの開閉状態(開度)を制御する。これにより、主蒸気の圧力状態が、主蒸気圧力設定値の変化に対応するように変化し、適切に主蒸気の圧力を低下させることができる。
【0054】
一方で、バイパス系統SBの弁VBについては、FCB運転を開始すると開状態(例えば全開)とする。そして、所定時間(例えば1分間)開度状態を保持し、主蒸気圧力逃しのために一定のレート(閉止速度)で所定値まで開度を低下させる。弁VBの開度は、バイパス系統SBを流通する蒸気の流量が、再熱器105,106のオーバーヒートを防ぐために必要な流量となるように制御される。
【0055】
また、FCB運転が開始されると、高温再熱蒸気圧力の目標値である高温再熱蒸気圧力設定値は、一定のレートで低下して、所定圧力値となるように設定される。所定圧力値は、所内単独運転中の低流量状態(定格負荷時の再熱蒸気流量の5%程度)においても、中圧タービン112及び低圧タービン113の回転数を、ガバナ弁133によって安定的に制御できるような圧力に設定される。これに対応して、制御装置は、高温再熱蒸気圧力設定値に基づいて、調節系統SCに設けられた弁VCを制御する(高圧再熱蒸気圧力制御)。具体的には、制御装置は、弁VCを開状態(例えば全開)とし、所定時間(例えば1分間)該開度を保持する。所定時間経過後、低下するように設定された高温再熱蒸気圧力設定値に基づいて、弁VCの開閉状態(開度)を制御する。これにより、高温再熱蒸気の圧力状態が、高温再熱蒸気圧力設定値の変化に対応するように変化し、適切に再熱蒸気の圧力を低下させることができる。
【0056】
過熱器102,103,104の過熱器スプレイ水系統SGの弁VGは、各過熱器102,103,104で過熱された蒸気温度に基づいて制御される(過熱器温度制御)。すなわち、弁VGにより、過熱器102,103,104へ供給するスプレイ水の供給量を制御する。具体的には、制御装置は、各過熱器102,103,104で過熱された蒸気温度が所定温度となるように、弁VGの開度を制御する。
【0057】
再熱器105,106の再熱器スプレイ水系統SFの弁VFは、各再熱器105,106で再過熱された蒸気温度に基づいて制御される(再熱器温度制御)。すなわち、弁VFにより、再熱器105,106へ供給するスプレイ水の供給量を制御する。具体的には、制御装置は、各再熱器105,106で再過熱された蒸気温度が所定温度となるように、弁VFの開度を制御する。
【0058】
バックアップ系統SEの弁VEは、FCB運転を開始すると開状態とする。そして、徐々に開度を絞り、蒸気量を減少させる。すなわち、FCB直後のみバックアップ的に蒸気を給水ポンプ123を駆動するポンプ駆動タービン132へ供給し、その後は補助蒸気への供給に切り替えを行う。補助蒸気とは、ボイラ10で発生した蒸気の一部や発電プラント1の外部から供給され、発電プラント1において発電には用いられない蒸気であり、例えば燃料の加熱やスーツブロワなどに用いられる蒸気である。
【0059】
図5のようにFCB運転が実行されることによりタービン負荷及びボイラ負荷の絞り込みを行い、所内単独運転へ移行する。
図6は、
図3の発電プラント1における所内単独運転時のフローバランスを示した図である。一例として、ボイラ負荷を20%とし、タービン負荷を5%とする。以降、百分率の数値は、ボイラ定格負荷時の蒸気流量を100%として、主蒸気または再熱蒸気の流量割合を示す。
【0060】
図6に示すように、ボイラ10において20%の蒸気が生成され、10%の蒸気がバイパス系統SBを流れる。そして、他方の10%の蒸気のうち、5%が高圧タービン111へ供給され、5%がタービンバイパス系統SAを流れる。高圧タービン111へ供給された蒸気は、ベンチレータ系統SDを介して復水器114へ送られ、タービンバイパス系統SAを流れる蒸気は、直接、復水器114へ送られる。
【0061】
バイパス系統SBを流れる10%の蒸気は、再熱器105,106で再過熱されて高温再熱蒸気となり、5%が調節系統SCにより系外へ排出される。他方の5%は、中圧タービン112へ供給される。再熱器105,106へ供給した蒸気10%のうち、調節系統SCから系外排出する蒸気量が5%、中圧タービン112および低圧タービン113へ供給する蒸気量が5%となる。調節系統SCから系外排出した5%と同量の水を復水器114へ補給することで、ボイラ10へ供給される給水量のバランスを取る。
【0062】
このようにして、FCB運転から所内単独運転へ切り替えが行われ、発電プラント1と電力系統網との切り離しが行われる。
【0063】
次に、発電プラント1の改造について説明する。
上記の例では、
図3に示すような発電プラント1の構成を説明したが、FCB機能を有さない既設の発電プラント1を
図3に示すようなFCB機能を有する発電プラント1へ改造することも可能である。
【0064】
既設の発電プラント1は、ボイラ10と、高圧タービン(第1タービン)111と、再熱器105,106と、中圧タービン(第2タービン)112と、タービンバイパス系統SAとを備えているものとする。このような既設の発電プラント1に対して改造を行うことで、
図7に示すように、
図3と同構成の発電プラント1となる。
図7では、改造を行う箇所を太線で示している。
【0065】
改造を行う場合には、
図7に示すように、バイパス系統SBと、調節系統SCとをそれぞれ設ける。また、
図7に示すように、逆止弁135と、ベンチレータ系統SDとを設ける。また、
図7に示すように、過熱器102,103,104へ供給するスプレイ水の供給可能量を増大するように過熱器スプレイ水系統SGを改造する。具体的には、例えば、弁VGを大容量のものに取り換える。また、バックアップ系統SEを設ける。
【0066】
なお、上記の改造においては、改造の順番は限定されない。
【0067】
このように改造を行うことによって、
図8に示す参考例の発電プラント1の構成のように、改造のためにタービンバイパス系統SAを廃止して、弁VMを有する低圧タービンバイパス系統SMを設置する場合と比較して、改造を簡略化することが可能となる。また、
図8に示す参考例のような低圧タービンバイパス系統SMは、タービンバイパス系統SAやバイパス系統SBと比べて系統圧力が低く、同量の蒸気を流す場合にも、大きな配管径が必要となる。このため、改造を行う際に既設の設備に影響しないように配管を通すことが、配置上の制約のために困難を伴う。一方で、
図7のように改造することで、低圧タービンバイパス系統SMの追加を不要とするため、改造を行う上での制約を緩和することができる。また、バイパス系統SBは、タービンバイパス系統SAと併用して運用されるため、バイパス系統SBの容量の増大化を抑制することができる。このように、本実施形態に係る改造方法は、効果的に改造コストを抑制することが可能である。
【0068】
なお、上記において説明した発電プラント1の構成は、新設の場合でも改造の場合でもどちらでも対応することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る発電プラント及びその制御方法並びに改造方法によれば、ボイラ10と、高圧タービン111と、再熱器105,106と、中圧タービン112とで構成される発電プラント1において、高圧タービン111へ供給される蒸気を再熱器105,106へバイパスするバイパス系統SBと、再熱器105,106で再過熱された蒸気を中圧タービン112の上流側において系外に排出する調節系統SCとが設けられる。これにより、ボイラ10で生成した蒸気を、高圧タービン111を迂回して再熱器105,106を介し中圧タービン112へ供給される前に系外へ排出することが可能となる。例えば、FCB運転ではタービン負荷を急速に絞る必要があるが、高圧タービン111及び中圧タービン112への蒸気供給量を速やかに減少することができる。そして、高圧タービン111を迂回した蒸気は再熱器105,106を通過するため、再熱器105,106のオーバーヒートを抑制できる。そして、再熱器105,106から排出された蒸気は系外へ排出するため、構成の複雑化を抑制しつつ余剰蒸気の処理を行うことが可能となる。
【0070】
また、再熱器105,106で再過熱された再熱蒸気の圧力設定値に基づいて、調節系統SCに設けられた弁VCを制御することで、再熱蒸気の圧力を調整することができる。
【0071】
また、FCB運転を行う場合に、弁VAを開状態とすることによって高圧タービン111のバイパスを行う。そして、その後に、低下するように設定された圧力設定値に基づいて、弁VAの開閉状態を制御することで、主蒸気の圧力を低下させるように調整することができる。
【0072】
また、改造を行う場合には、既設の発電プラント1に対して、バイパス系統SBと、調節系統SCとを設ける。このため、改造に要する構成を効果的に簡略化し、コストの抑制が可能となる。また、改造のための設置上の制約も緩和することができる。既設のタービンバイパス系統SAと合わせて、バイパス系統SBと調節系統SCを用いることでFCB運転に対応することが可能となる。
【0073】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る発電プラント及びその制御方法並びに改造方法について説明する。
本実施形態では、第1実施形態とは異なる発電プラントの構成について説明する。以下、本実施形態に係る発電プラント及びその制御方法並びに改造方法について、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0074】
本実施形態における発電プラント1では、
図9に示すように、バイパス系統SB及び調節系統SCに替えて、補助再熱器スプレイ水系統SKが設けられている。逆止弁135とベンチレータ系統SDについても不要とすることができる。補助再熱器スプレイ水系統SKは、再熱器105,106の下流側に設けられている。FCB時や所内単独運転時に、高温再熱蒸気温度を、発電プラント1において再熱蒸気が流通する部位の設計許容温度以下に抑えるために設けられている。補助再熱器スプレイ水系統SKには、弁VKが設けられている。この弁VKによって、再熱器105,106の出口側へ供給されるスプレイ水の量が調整される。補助再熱器スプレイ水系統SKのスプレイ水は、例えば給水ポンプ123から供給される。
【0075】
次に、FCB運転について説明する。
図10は、発電プラント1においてFCB運転を実行した場合の状態変化を示している。FCB運転については制御装置によって制御が実行される。
【0076】
時刻T1においてFCB運転が開始される。すると、タービン負荷は例えば100%から5%へ絞られる。また、ボイラ負荷は、例えば100%から20%へ絞られる。
【0077】
FCB運転が開始されると、主蒸気圧力の目標値である主蒸気圧力設定値は、一定のレート(低下速度)で低下し、所定の圧力値となるように設定されている。所定圧力値は、所内単独運転中の低流量状態(定格負荷時の主蒸気流量の5%程度)において、高圧タービン111の回転数を、ガバナ弁133によって安定的に制御できるような圧力に設定される。これに対応して、制御装置は、主蒸気圧力設定値に基づいて、タービンバイパス系統SAに設けられた弁VAを制御する。具体的には、制御装置は、弁VAを開状態(例えば全開)とする。そして、所定時間(例えば1分間)開度状態を保持し、所定時間経過後、低下するように設定された主蒸気圧力設定値に基づいて、弁VAの開閉状態(開度)を制御する。これにより、主蒸気の圧力状態が、主蒸気圧力設定値の変化に対応するように変化し、適切に主蒸気の圧力を低下させることができる。
【0078】
高温再熱蒸気圧力については、圧力調整は行われず、なりゆきで低下する。
【0079】
過熱器102,103,104の過熱器スプレイ水系統SGの弁VGは、各過熱器102,103,104で過熱された蒸気温度(過熱器温度)に基づいて制御される。すなわち、弁VGにより、過熱器102,103,104へ供給するスプレイ水の供給量を制御する。具体的には、過熱器102,103,104で過熱された蒸気温度が所定温度となるように、弁VGの開度が制御される。
【0080】
補助再熱器スプレイ水系統SKの弁VKは、FCB運転が開始すると、再熱器105,106で再過熱された蒸気の温度(高温再熱蒸気温度)に基づいて制御される。すなわち、弁VKにより、再熱器105,106へ供給するスプレイ水の供給量を制御する。具体的には、再熱器105、106の出口の蒸気温度が所定温度となるように、弁VKの開度が制御される。これにより、高温再熱蒸気温度が上昇し過ぎることが抑制される。
【0081】
再熱器スプレイ水系統SFの弁VFについても、再熱器105,106で再過熱された蒸気の温度に基づいて制御される。具体的には、再熱器105,106の出口の蒸気温度が所定温度となるように、弁VFの開度が制御される。なお、再熱器105,106の再熱器スプレイ水系統SFのスプレイ水では供給量が不足する可能性があるため、補助再熱器スプレイ水系統SKと協働することで、より確実に高温再熱蒸気温度の過度な上昇を抑制することができる。
【0082】
バックアップ系統SEの弁VEは、FCB運転を開始すると開状態とする。そして、徐々に開度を絞り、給水ポンプ123を駆動するポンプ駆動タービン132へ供給する蒸気量を減少させる。
【0083】
図10のようにFCB運転が実行されることによりタービン負荷とボイラ負荷の絞り込みを行い、所内単独運転へ移行する。
図11は、
図9の発電プラント1における所内単独運転時のフローバランスを示した図である。一例として、ボイラ負荷を20%とし、タービン負荷を5%とする。
【0084】
図11に示すように、ボイラ10において20%の主蒸気が生成され、5%が高圧タービン111へ供給され、15%がタービンバイパス系統SAを流れる。高圧タービン111へ供給された蒸気は、再熱器105,106へ送られ、タービンバイパス系統SAを流れる蒸気は復水器114へ送られる。再熱器105,106で再過熱された蒸気は、中圧タービン112へ送られる。
【0085】
このようにして、FCB運転から所内単独運転へ切り替えが行われ、電力系統網との切り離しが行われる。
図11に示すように、所内単独運転時に再熱器105、106を流れる蒸気流量は5%程度であり、第1実施形態の場合(10%)と比べると小さい。一方で、ボイラ負荷は第1実施形態の場合(20%)と同程度であり、過熱器102,103,104を流れる蒸気流量は20%程度であることから、相対的に、
図11の構成は高温再熱蒸気温度が高くなると考えられる。このため、再熱器105,106のスプレイ水の必要流量は増加する。補助再熱器スプレイ水系統SKを設けることで、高温再熱蒸気温度が過度に上昇することを抑制する。
【0086】
次に、発電プラント1の改造について説明する。
上記の例では、
図9に示すような発電プラント1の構成を説明したが、FCB機能を有さない既設の発電プラント1を
図9に示すようなFCB機能を有する発電プラント1へ改造することも可能である。
【0087】
既設の発電プラント1は、ボイラ10と、高圧タービン111と、再熱器105,106と、過熱器102,103,104と、タービンバイパス系統SAとを備えているものとする。このような既設の発電プラント1に対して改造を行うことで、
図12に示すように、
図9と同構成の発電プラント1となる。
図12では、改造を行う箇所を太線で示している。
【0088】
改造を行う場合には、
図12に示すように、補助再熱器スプレイ水系統SKを設ける。また、バックアップ系統SEを設ける。
【0089】
また、FCB時および所内単独運転時に、過熱器102,103,104の減温スプレイ水量不足により過熱器温度が設計温度を超過する場合は、過熱器スプレイ水系統SGの容量を増加する改造を行う。具体的には、例えば弁VGを大容量のものと取り換える。
【0090】
なお、上記の改造においては、改造の順番は限定されない。
【0091】
このように改造を行うことによって、改造を簡略化することが可能となる。また、改造を行う上での制約を緩和することができる。また、逆止弁135やベンチレータ系統SDを不要とすることができるため、構成を簡略化することができる。
【0092】
なお、上記において説明した発電プラント1の構成は、新設の場合でも改造の場合でもどちらでも対応することができる。
【0093】
次に、本実施形態に係る発電プラント1の変形例を説明する。
本実施形態では、補助再熱器スプレイ水系統SKを、再熱器105,106の下流側(出口側)に設置する場合について説明したが、
図13に示すように、補助再熱器スプレイ水系統SKは、再熱器105,106の上流側(入口側)に設けることとしてもよい。このように補助再熱器スプレイ水系統SKを再熱器105,106の上流側に設ける場合であっても、補助再熱器スプレイ水系統SKを再熱器105,106の下流側に設けた場合と同様に、FCB運転を行うことができる。
【0094】
また、再熱器105,106に対して設けられている再熱器スプレイ水系統SFを補助再熱器スプレイ水系統SKの機能も兼ねて用いることとしてもよい。この場合には、
図14に示すような構成となる。このような場合には、FCB運転等において高温再熱蒸気の温度は上昇し易い状態となるため、再熱器スプレイ水系統SFを大容量化する改造を行うことが好ましい。具体的には、例えば弁VFを大容量化する改造を行い、FCB運転時においても高温再熱蒸気の温度が過度に上昇し過ぎないようにスプレイ水を供給可能な構成とされることがよい。
【0095】
また、本実施形態や上記変形例では、高温再熱蒸気の過度な温度上昇を抑制して、再熱器105,106や中圧タービン112を保護することを目的としているが、各装置が高温再熱蒸気の温度上昇に耐え得る場合や、ボイラ負荷の更なる絞り込み等によって過度な温度上昇が発生しないと想定される場合には、再熱器105,106の下流側や上流側へ補助再熱器スプレイ水系統SKを設けないこととしてもよい。この場合には、
図15に示すような構成となる。
図15のような構成では、再熱器105,106に対して設けられている再熱器スプレイ水系統SFを補助再熱器スプレイ水系統SKの機能も兼ねて用いる。ただし、
図14の変形例と異なり、既設の再熱器スプレイ水系統SFの改造は行わない。
【0096】
図16は、再熱器スプレイ水系統SFに加えて補助再熱器スプレイ水系統SKが必要か否かを説明する図である。再熱器105、106を流れる蒸気流量(再熱器蒸気流量)が、過熱器102、103、104を流れる蒸気流量(過熱器蒸気流量)に比べて小さいほど再熱器出口蒸気温度は高くなり、高温再熱蒸気温度を所定値とするために必要となるスプレイ水の流量が増加する。スプレイ水の必要流量が、再熱器スプレイ水系統SF(既設設備)の容量(
図16の基準流量)を超えると、高温再熱蒸気温度の上昇を抑制することができないため、再熱器スプレイ水系統SFに加えて、補助再熱器スプレイ水系統SKが必要となる。
図16では、縦軸をスプレイ水の必要流量とし、横軸を過熱器蒸気流量-再熱器蒸気流量(差分)としている。
図16は概念的に一例を示した図である。
【0097】
図16に示すように、過熱器蒸気流量に対して、再熱器蒸気流量が小さくなり、差分が大きくなると、あるポイントΔ1において、スプレイ水の必要流量が、再熱器スプレイ水系統SFの容量を超過する。このため、ポイントΔ1よりも左側の領域では、補助再熱器スプレイ水系統SKが不要であり、右側の領域では、補助再熱器スプレイ水系統SKが必要となる。特に、FCB運転を行う場合には、過熱器蒸気流量と再熱器蒸気流量との差分が大きくなる傾向にあるため、補助再熱器スプレイ水系統SKが必要となる可能性が高い。
【0098】
補助再熱器スプレイ水系統SKが必要である場合には、FCB運転を行う場合における再熱器105,106の蒸気流量と、過熱器102,103,104の蒸気流量との流量差に基づいて、高温再熱蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されている。なお、
図14に示すように、弁VFを改造する場合も同様に容量設計がされる。
【0099】
一方で、FCB時のボイラ負荷をより抑えることができれば(例えば10%~15%)、過熱器蒸気流量と再熱器蒸気流量との差分が小さくなり、
図16に示すポイントΔ1よりも左側の領域となる場合は、
図15に示すように、補助再熱器スプレイ水系統SKを不要とすることもできる。この場合には、再熱器スプレイ水系統SFによって、高温再熱蒸気の温度が所定値以下となるように調整される。
【0100】
このように、本実施形態における
図9の構成の場合や、
図13から
図15の変形例の場合では、FCB運転時には過熱器蒸気流量と再熱器蒸気流量との差分が大きく変化するため、通常運転時(過熱器蒸気流量と再熱器蒸気流量が同等となる、FCB運転ではない運転時)から制御モードを切り替える。具体的には、FCB運転を行わない場合(通常運転時)には、予め設定された制御則に基づいて再熱器105,106及び過熱器102,103,104へ供給するスプレイ水の供給量を制御する(第1制御モード)。第1制御モードでは、過熱器蒸気流量と再熱器蒸気流量との差は小さく、通常運転として予め想定された範囲内であるため、再熱器蒸気温度に基づいて再熱器105,106へのスプレイ水の供給量を制御し、過熱器蒸気温度に基づいて過熱器102,103,104へのスプレイ水の供給量を制御する。
【0101】
そして、FCB運転を行う場合には、再熱器105,106の蒸気流量と過熱器102,103,104の蒸気流量との流量差が大きくなるため、この流量差に応じた制御を行う(第2制御モード)。具体的には、この流量差により再熱器105,106や高温再熱蒸気の温度異常が発生しないように、再熱器105,106へ供給するスプレイ水の供給量を制御する。例えば、第1モードよりも大量のスプレイ水が供給可能なように、高温再熱蒸気温度に基づいて再熱器105,106へのスプレイ水の供給量を制御する。
【0102】
以上説明したように、本実施形態に係る発電プラント及びその制御方法並びに改造方法によれば、ボイラ10と、高圧タービン111と、再熱器105,106と、過熱器102,103,104とを備える発電プラント1において、FCB運転に対応することが可能となる。すなわち、FCB運転を行わない場合(いわゆる通常運転)では、予め設定された制御則に基づいて再熱器105,106及び過熱器102,103,104へ供給するスプレイ水の供給量を制御する(第1制御モード)。一方でFCB運転を行う場合には、過熱器102,103,104を流れる蒸気の流量に対して、再熱器105,106を流れる蒸気の流量が過度に少なくなるなどのアンバランスが生じる場合がある。このため、FCB運転を行う場合には、再熱器105,106の蒸気流量と過熱器102,103,104の蒸気流量の流量差を考慮してスプレイ水の供給量を制御する(第2制御モード)ことで、高温再熱蒸気温度を抑えることができる。
【0103】
また、補助再熱器スプレイ水系統SKは、再熱器105,106の下流側に設けられることで効果的に再熱蒸気の温度を低下させることができる。そして、FCB運転を行う場合における再熱器105,106の蒸気流量と過熱器102,103,104の蒸気流量との流量差に基づいて、再熱器105,106において再過熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されていることで、より確実に高温再熱蒸気温度を所定値以下に抑えることが可能となる。
【0104】
また、既設の発電プラント1に対して、再熱器105,106へスプレイ水を供給する補助再熱器スプレイ水系統SKを設ける改造を行う。このため、改造に要する構成の複雑化を効果的に抑え、コストの抑制が可能となる。また、改造のための設置上の制約も緩和することができる。
【0105】
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。すなわち、上記の第1実施形態、及び第2実施形態については、それぞれ組み合わせることも可能である。
【0106】
また、上述した実施形態では、本発明のボイラを石炭焚きボイラとしたが、燃料としては、バイオマス燃料や石油精製時に発生するPC(石油コークス:Petroleum Coke)燃料、石油残渣などの固体燃料を使用するボイラであってもよい。また、燃料として固体燃料に限らず、重油、軽油、重質油などの石油類や工場廃液などの液体燃料も使用することができ、更には、燃料として気体燃料(天然ガス、副生ガスなど)も使用することができる。さらに、これら燃料を組み合わせて使用する混焼焚きボイラにも適用することができる。
【0107】
以上説明した各実施形態に記載の発電プラント及びその制御方法並びに改造方法は例えば以下のように把握される。
本開示に係る発電プラント(1)は、ボイラ(10)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気により駆動される第1タービン(111)と、前記第1タービン(111)から排出された蒸気を再過熱する再熱器(105、106)と、前記再熱器(105、106)で再過熱された蒸気により駆動される第2タービン(112)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気(少なくとも一部)を、前記第1タービン(111)をバイパスして前記再熱器(105、106)へ供給するバイパス系統(SB)と、前記再熱器(105、106)で再過熱された蒸気を前記第2タービン(112)の上流側において系外に排出する調節系統(SC)と、を備える。なお、第1タービン(111)とは、高圧タービン111であり、第2タービン(112)とは、中圧タービン112(低圧タービン113としてもよい)である。
【0108】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、ボイラ(10)と、第1タービン(111)と、再熱器(105、106)と、第2タービン(112)とで構成される発電プラント(1)において、第1タービン(111)へ供給される蒸気を再熱器(105、106)へバイパスするバイパス系統(SB)と、再熱器(105、106)で再過熱された蒸気を第2タービン(112)の上流側において系外に排出する調節系統(SC)とが設けられる。これにより、ボイラ(10)で生成した蒸気を、第1タービン(111)を迂回して再熱器(105、106)を介し第2タービン(112)へ供給される前に系外へ排出することが可能となる。例えば、ファストカットバック運転ではボイラ及びタービンの負荷を急激に絞る必要があり、第1タービン(111)及び第2タービン(112)へ供給される蒸気量を減少することができる。そして、第1タービン(111)を迂回した蒸気は再熱器(105、106)を通過するため、再熱器(105、106)を流れる蒸気流量が過小となることによるオーバーヒートを抑制できる。そして、再熱器(105、106)から排出された蒸気は系外へ排出するため、構成の複雑化を抑制しつつ余剰蒸気の処理を行うことが可能となる。
【0109】
本開示に係る発電プラント(1)は、前記再熱器(105、106)で再過熱された蒸気の圧力設定値に基づいて、前記調節系統(SC)に設けられた調節弁(VC)を制御する制御装置を備えることとしてもよい。調節弁(VC)とは弁VCである。
【0110】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、再熱器(105、106)で再過熱された蒸気の圧力設定値に基づいて、調節系統(SC)に設けられた調節弁(VC)を制御することで、再過熱された蒸気の圧力を調整することができる。
【0111】
本開示に係る発電プラント(1)は、前記制御装置は、ファストカットバック運転を行う場合に、前記調節弁(VC)を開状態とし、低下するように設定された前記圧力設定値に基づいて、前記調節弁(VC)の開閉状態を制御することとしてもよい。
【0112】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、ファストカットバック運転を行う場合に、調節弁(VC)を開状態とすることで、開状態によって第1タービン(111)のバイパスを行う。そして、その後に、低下するように設定された圧力設定値に基づいて、調節弁(VC)の開閉状態を制御することで、再過熱された蒸気の圧力を低下させるように調整することができる。
【0113】
本開示に係る発電プラント(1)は、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を、前記第1タービン(111)をバイパスして復水器(114)へ供給するタービンバイパス系統(SA)を備え、前記制御装置は、前記ボイラ(10)から前記第1タービン(111)へ供給される蒸気の主蒸気圧力設定値に基づいて、前記タービンバイパス系統(SA)に設けられた調整弁(VA)を制御することとしてもよい。
【0114】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、第1タービン(111)へ供給される蒸気を復水器(114)へバイパスするタービンバイパス系統(SA)の調整弁(VA)を制御することで、ボイラ(10)から第1タービン(111)へ供給される蒸気の圧力を調整することができる。
【0115】
本開示に係る発電プラント(1)は、前記制御装置は、ファストカットバック運転を行う場合に、前記調整弁(VA)を開状態とし、低下するように設定された前記主蒸気圧力設定値に基づいて、前記調整弁(VA)の開閉状態を制御することとしてもよい。
【0116】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、ファストカットバック運転を行う場合に、調整弁(VA)を開状態とすることで、開状態によって第1タービン(111)のバイパスを行う。そして、その後に、低下するように設定された主蒸気圧力設定値に基づいて、調整弁(VA)の開閉状態を制御することで、第1タービン(111)へ供給される蒸気の圧力を低下させるように調整することができる。
【0117】
本開示に係る発電プラント(1)は、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を過熱する過熱器(102、103、104)を備え、前記制御装置は、前記過熱器(102、103、104)で過熱された蒸気の温度に基づいて、前記過熱器(102、103、104)へ供給するスプレイ水の供給量を制御することとしてもよい。
【0118】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、過熱器(102、103、104)で過熱された蒸気の温度に基づいて、過熱器(102、103、104)へ供給するスプレイ水の供給量を制御することで、過熱器(102、103、104)で過熱された蒸気の温度を調整することができる。
【0119】
本開示に係る発電プラント(1)は、ボイラ(10)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気により駆動される第1タービン(111)と、前記第1タービン(111)から排出された蒸気を再過熱する再熱器(105、106)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を過熱する過熱器(102、103、104)と、前記再熱器(105、106)へスプレイ水を供給する再熱器スプレイ水系統(SF、SK)と、前記過熱器(102、103、104)へスプレイ水を供給する過熱器用スプレイ水系統(SG)と、ファストカットバック運転を行わない場合に、予め設定された制御則に基づいて前記再熱器(105、106)及び前記過熱器(102、103、104)へ供給するスプレイ水の供給量を制御する第1制御モードと、ファストカットバック運転を行う場合に、前記再熱器(105、106)の蒸気流量と前記過熱器(102、103、104)の蒸気流量との流量差に応じて、前記再熱器(105、106)及び前記過熱器(102、103、104)のそれぞれへ供給するスプレイ水の供給量を制御する第2制御モードとを有する制御装置と、を備える。
【0120】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、ボイラ(10)と、第1タービン(111)と、再熱器(105、106)と、過熱器(102、103、104)とを備える発電プラント(1)において、ファストカットバック運転に対応することが可能となる。すなわち、ファストカットバック運転を行わない場合(いわゆる通常運転)では、予め設定された制御則に基づいて再熱器(105、106)及び過熱器(102、103、104)へ供給するスプレイ水の供給量を制御する(第1制御モード)。一方でファストカットバック運転を行う場合には、過熱器(102、103、104)を流れる蒸気の流量に対して、再熱器(105、106)を流れる蒸気の流量が過度に少なくなるなどのアンバランスが生じる場合がある。このため、ファストカットバック運転を行う場合には、再熱器(105、106)の蒸気流量と過熱器(102、103、104)の蒸気流量の流量差を考慮してスプレイ水の供給量を制御する(第2制御モード)ことで、再熱蒸気温度を抑えることができる。
【0121】
本開示に係る発電プラント(1)は、前記再熱器スプレイ水系統(SK)は、前記再熱器(105、106)の下流側に設けられており、ファストカットバック運転を行う場合における前記再熱器(105、106)の蒸気流量と前記過熱器(102、103、104)の蒸気流量との流量差に基づいて、前記再熱器(105、106)において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されていることとしてもよい。
【0122】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、再熱器スプレイ水系統(SK)は、再熱器(105、106)の下流側に設けられることで効果的に再熱蒸気の温度を低下させることができる。そして、ファストカットバック運転を行う場合における再熱器(105、106)の蒸気流量と過熱器(102、103、104)の蒸気流量との流量差に基づいて、再熱器(105、106)において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されていることで、より確実に再熱蒸気の温度を所定値以下に抑えることが可能となる。
【0123】
本開示に係る発電プラント(1)は、前記再熱器スプレイ水系統(SK)は、前記再熱器(105、106)の上流側に設けられており、ファストカットバック運転を行う場合における前記再熱器(105、106)の蒸気流量と前記過熱器(102、103、104)の蒸気流量との流量差に基づいて、前記再熱器(105、106)において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されていることとしてもよい。
【0124】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、再熱器スプレイ水系統(SK)は、再熱器(105、106)の上流側に設けられることで再熱蒸気の温度を低下させることができる。そして、ファストカットバック運転を行う場合における再熱器(105、106)の蒸気流量と過熱器(102、103、104)の蒸気流量との流量差に基づいて、再熱器(105、106)において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されていることで、より確実に再熱蒸気の温度を所定値以下に抑えることが可能となる。
【0125】
本開示に係る発電プラント(1)は、前記再熱器スプレイ水系統(SK)は、多段構成された前記再熱器(105、106)の間に設けられており、ファストカットバック運転を行う場合における前記再熱器(105、106)の蒸気流量と前記過熱器(102、103、104)の蒸気流量との流量差に基づいて、前記再熱器(105、106)において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されていることとしてもよい。
【0126】
本開示に係る発電プラント(1)によれば、再熱器スプレイ水系統(SK)は、多段構成された再熱器(105、106)の間に設けられることで再熱蒸気の温度を低下させることができる。そして、ファストカットバック運転を行う場合における再熱器(105、106)の蒸気流量と過熱器(102、103、104)の蒸気流量との流量差に基づいて、再熱器(105、106)において再熱された蒸気の温度が所定値以下に調整可能なように、スプレイ水の供給容量が設計されていることで、より確実に再熱蒸気の温度を所定値以下に抑えることが可能となる。
【0127】
本開示に係る制御方法は、ボイラ(10)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気により駆動される第1タービン(111)と、前記第1タービン(111)から排出された蒸気を再過熱する再熱器(105、106)と、前記再熱器(105、106)で再過熱された蒸気により駆動される第2タービン(112)とを備える発電プラント(1)の制御方法であって、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を、前記第1タービン(111)をバイパスして前記再熱器(105、106)へ供給する工程と、前記再熱器(105、106)で再過熱された蒸気を前記第2タービン(112)の上流側において系外に排出する工程と、を有する。
【0128】
本開示に係る制御方法は、ボイラ(10)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気により駆動される第1タービン(111)と、前記第1タービン(111)から排出された蒸気を再過熱する再熱器(105、106)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を過熱する過熱器(102、103、104)と、前記再熱器(105、106)へスプレイ水を供給する再熱器スプレイ水系統(SF、SK)と、前記過熱器(102、103、104)へスプレイ水を供給する過熱器用スプレイ水系統(SG)と、を備える発電プラント(1)の制御方法であって、ファストカットバック運転を行わない場合に、予め設定された制御則に基づいて前記再熱器(105、106)及び前記過熱器(102、103、104)へ供給するスプレイ水の供給量を制御する工程と、ファストカットバック運転を行う場合に、前記再熱器(105、106)の蒸気流量と前記過熱器(102、103、104)の蒸気流量との流量差に応じて、前記再熱器(105、106)及び前記過熱器(102、103、104)のそれぞれへ供給するスプレイ水の供給量を制御する工程と、を有する。
【0129】
本開示に係る改造方法は、ボイラ(10)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気により駆動される第1タービン(111)と、前記第1タービン(111)から排出された蒸気を再過熱する再熱器(105、106)と、前記再熱器(105、106)で再過熱された蒸気により駆動される第2タービン(112)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を、前記第1タービン(111)をバイパスして復水器(114)へ供給するタービンバイパス系統(SA)とを備える発電プラント(1)の改造方法であって、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を、前記第1タービン(111)をバイパスして前記再熱器(105、106)へ供給するバイパス系統(SB)を設ける工程と、前記再熱器(105、106)で再過熱された蒸気を前記第2タービン(112)の上流側において系外に排出する調節系統(SC)を設ける工程と、を有する。
【0130】
本開示に係る改造方法によれば、ボイラ(10)と、第1タービン(111)と、再熱器(105、106)と、第2タービン(112)と、タービンバイパス系統(SA)を備える既設の発電プラント(1)に対して、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を、第1タービン(111)をバイパスして再熱器(105、106)へ供給するバイパス系統(SB)と、再熱器(105、106)で再過熱された蒸気を第2タービン(112)の上流側において系外に排出する調節系統(SC)とを設ける改造を行う。このため、改造に要する構成の複雑化を効果的に抑え、コストの抑制が可能となる。また、改造のための設置上の制約も緩和することができる。既設のタービンバイパス系統(SA)と合わせて、バイパス系統(SB)と調節系統(SC)を用いることでファストカットバック運転に対応することが可能となる。
【0131】
本開示に係る改造方法は、前記第1タービン(111)から前記再熱器(105、106)へ流れる蒸気の流通系統に設けられた逆止弁(135)を設ける工程と、前記第1タービン(111)と前記逆止弁(135)の間から、蒸気を前記復水器(114)へ供給する系統(SD)を設ける工程と、を有することとしてもよい。系統(SD)とは、ベンチレータ系統SDである。
【0132】
本開示に係る改造方法によれば、第1タービン(111)から再熱器(105、106)へ流れる蒸気の流通系統に設けられた逆止弁(135)と、第1タービン(111)と逆止弁(135)の間から、蒸気を復水器(114)へ供給する系統(SD)を設けることによって、ファストカットバック運転に対応することが可能となる。
【0133】
本開示に係る改造方法は、前記発電プラント(1)は、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を過熱する過熱器(102、103、104)と、前記過熱器(102、103、104)へスプレイ水を供給する過熱器用スプレイ水系統(SG)とを備えており、スプレイ水の供給可能量を増大するように前記過熱器用スプレイ水系統(SG)を改造する工程を有することとしてもよい。
【0134】
本開示に係る改造方法によれば、スプレイ水の供給可能量を増大するように過熱器用スプレイ水系統(SG)を改造することで、ファストカットバック運転に対応して過熱器(102、103、104)がオーバーヒート状態となることを抑制することができる。
【0135】
本開示に係る改造方法は、ボイラ(10)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気により駆動される第1タービン(111)と、前記第1タービン(111)から排出された蒸気を再過熱する再熱器(105、106)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を過熱する過熱器(102、103、104)と、前記再熱器(105、106)で再過熱された蒸気により駆動される第2タービン(112)と、前記ボイラ(10)で生成された蒸気を、前記第1タービン(111)をバイパスして復水器(114)へ供給するタービンバイパス系統(SA)とを備える発電プラント(1)の改造方法であって、前記再熱器(105、106)へスプレイ水を供給する再熱器スプレイ水系統(SF、SK)を設ける工程を有する。
【0136】
本開示に係る改造方法によれば、ボイラ(10)と、第1タービン(111)と、再熱器(105、106)と、過熱器(102、103、104)と、タービンバイパス系統(SA)を備える既設の発電プラント(1)に対して、再熱器(105、106)へスプレイ水を供給する再熱器スプレイ水系統(SK)を設ける改造を行う。このため、改造に要する構成の複雑化を効果的に抑え、コストの抑制が可能となる。また、改造のための設置上の制約も緩和することができる。既設のタービンバイパス系統(SA)と合わせて、再熱器スプレイ水系統(SK)を用いることでファストカットバック運転に対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0137】
1 :発電プラント
10 :ボイラ
11 :火炉
12 :燃焼装置
13 :燃焼ガス通路
14 :煙道
21~25:バーナ
26~30:微粉炭供給管
31~35:粉砕機
36 :風箱
37 :空気ダクト
38 :押込通風機
39 :アディショナル空気ポート
40 :アディショナル空気ダクト
41 :ガスダクト
42 :エアヒータ
43 :脱硝装置
44 :集塵装置
46 :脱硫装置
50 :煙突
101 :火炉壁
102 :第1過熱器
103 :第2過熱器
104 :第3過熱器
105 :第1再熱器
106 :第2再熱器
107 :節炭器
110 :蒸気タービン
111 :高圧タービン
112 :中圧タービン
113 :低圧タービン
114 :復水器
115 :発電機
121 :復水ポンプ
122 :低圧給水ヒータ
123 :給水ポンプ
124 :高圧給水ヒータ
126 :汽水分離器
127 :汽水分離器ドレンタンク
131 :脱気器
132 :ポンプ駆動タービン
133 :ガバナ弁
134 :ガバナ弁
135 :逆止弁
1100 :CPU
1200 :ROM
1300 :RAM
1400 :ハードディスクドライブ
1500 :通信部
1800 :バス
L1 :給水ライン
L2 :ドレン水ライン
L3 :蒸気ライン
L4 :蒸気ライン
L5 :蒸気ライン
L6 :循環ライン
SA :タービンバイパス系統
SB :バイパス系統
SC :調節系統
SD :ベンチレータ系統
SE :バックアップ系統
SF :再熱器スプレイ水系統
SG :過熱器スプレイ水系統
SK :補助再熱器スプレイ水系統
SM :低圧タービンバイパス系統