(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123469
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】路面標示認識方法及び路面標示認識装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220817BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020803
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ケラネン トンミ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョンソン
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC24
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL09
5L096AA09
5L096BA04
5L096CA04
5L096CA05
5L096DA01
5L096DA02
5L096EA35
5L096FA09
5L096FA66
5L096MA03
(57)【要約】
【課題】路面標示を精度よく認識することが可能な路面標示認識方法及び路面標示認識装置を提供する。
【解決手段】路面標示認識装置1は自車両の周囲を異なるタイミングで複数回撮像するカメラ10と、カメラ10によって異なるタイミングで撮像された複数の画像を処理するコントローラ20とを備える。コントローラ20は、複数の画像を用いてオプティカルフローを算出し、算出されたオプティカルフローが長い場合、短い場合と比較して多くの画像を複数の画像の中から選択し、選択された画像の中から所定以上の輝度を有する画素を選択し、選択された画素を用いて1枚の合成画像を生成し、生成された合成画像を用いて路面標示を認識する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲を異なるタイミングで複数回撮像するカメラと、前記カメラによって異なるタイミングで撮像された複数の画像を処理するコントローラとを備える路面標示認識方法であって、
前記コントローラは、
前記複数の画像を用いてオプティカルフローを算出し、
算出された前記オプティカルフローが長い場合、短い場合と比較して多くの画像を前記複数の画像の中から選択し、
選択された画像の中から所定以上の輝度を有する画素を選択し、
選択された前記画素を用いて1枚の合成画像を生成し、
生成された前記合成画像を用いて路面標示を認識する
ことを特徴とする路面標示認識方法。
【請求項2】
前記コントローラは、前記オプティカルフローを用いて前記画像から移動物体が存在する領域を除外する
ことを特徴とする請求項1に記載の路面標示認識方法。
【請求項3】
前記コントローラは、前記オプティカルフローに直交する方向に対して前記画像の輝度を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の路面標示認識方法。
【請求項4】
前記コントローラは、前記自車両の進行方向に直交する方向に対して前記画像の輝度を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の路面標示認識方法。
【請求項5】
前記コントローラは、前記選択された画像の中からもっとも輝度が高い画素を選択する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の路面標示認識方法。
【請求項6】
前記コントローラは、前記複数の画像の中から、前記自車両のヨーレートを検出するセンサから取得した前記ヨーレートに基づいて画像を選択する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の路面標示認識方法。
【請求項7】
自車両の周囲を異なるタイミングで複数回撮像するカメラと、
前記カメラによって異なるタイミングで撮像された複数の画像を処理するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記複数の画像を用いてオプティカルフローを算出し、
算出された前記オプティカルフローが長い場合、短い場合と比較して多くの画像を前記複数の画像の中から選択し、
選択された画像の中から所定以上の輝度を有する画素を選択し、
選択された前記画素を用いて1枚の合成画像を生成し、
生成された前記合成画像を用いて路面標示を認識する
ことを特徴とする路面標示認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面標示認識方法及び路面標示認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、路面標示を認識する発明として特許文献1に記載された発明が知られている。特許文献1に記載された発明は車速に基づいて撮影された異なる時間点の画像を合成して、白線などの車線標示線(車線区分線)を伸長させた画像を生成し、生成した画像から車線標示線を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,415,134 B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では実際の車線区分線が破線である場合であっても合成で生成された画像の車線区分線が実線になったり、車線区分線以外の路面標示に適用した場合には矢印線が二重になったりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、路面標示を精度よく認識することが可能な路面標示認識方法及び路面標示認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る路面標示認識方法は、複数の画像を用いてオプティカルフローを算出し、算出されたオプティカルフローが長い場合、短い場合と比較して多くの画像を複数の画像の中から選択し、選択された画像の中から所定以上の輝度を有する画素を選択し、選択された画素を用いて1枚の合成画像を生成し、生成された合成画像を用いて路面標示を認識する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、路面標示を精度よく認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る路面標示認識装置1の構成図である。
【
図2】
図2は、静止物領域の一例を説明する図である。
【
図3】
図3は、画像選択方法の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、小領域41における輝度の算出方法の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、もっとも輝度が高い画像の一例を説明する図である。
【
図6】
図6は、合成画像の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、路面標示認識装置1の一動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して路面標示認識装置1の構成例を説明する。
図1に示すように、路面標示認識装置1は、カメラ10と、ヨーレートセンサ11と、コントローラ20と、ステアリングアクチュエータ12と、アクセルペダルアクチュエータ13と、ブレーキアクチュエータ14を備える。
【0011】
路面標示認識装置1は自動運転機能を有する車両に搭載されてもよく、自動運転機能を有しない車両に搭載されてもよい。また、路面標示認識装置1は自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両に搭載されてもよい。また、自動運転機能は操舵制御、制動力制御、駆動力制御などの車両制御機能のうちの一部の機能のみを自動的に制御して運転者の運転を支援する運転支援機能であってもよい。本実施形態では路面標示認識装置1は自動運転機能を有する車両に搭載されるものとして説明する。
【0012】
カメラ10はCCD(charge-coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)などの撮像素子を有する。カメラ10の設置場所は特に限定されないが、一例としてカメラ10は自車両の前方、側方、後方に設置される。カメラ10は所定の周期で自車両の周囲を連続的に撮像する。つまりカメラ10は異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得する。カメラ10は自車両の周囲に存在する物体(歩行者、自転車、バイク、他車両など)、及び自車両の前方の情報(区画線、信号機、標識、横断歩道、交差点など)を検出する。カメラ10によって撮像された画像はコントローラ20に出力される。
【0013】
ヨーレートセンサ11は自車両のヨーレート(旋回方向への回転角の変化速度)を検出する。ヨーレートセンサ11は検出したヨーレートをコントローラ20に出力する。
【0014】
コントローラ20は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、路面標示認識装置1として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは路面標示認識装置1が備える複数の情報処理回路として機能する。なおここでは、ソフトウェアによって路面標示認識装置1が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して情報処理回路を構成することも可能である。また複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ20は、複数の情報処理回路の一例として、オプティカルフロー算出部21と、距離算出部22と、挙動算出部23と、静止物領域設定部24と、画像選択部25と、輝度算出部26と、画像合成部27と、道路構造物認識部28と、車両制御部29を備える。
【0015】
オプティカルフロー算出部21は、過去の画像と現在の画像とを用いて、画像中の物体がどの程度動いたかを算出する。オプティカルフローとは、画像中における物体の動きをベクトルで表すものである。算出方法の一例を説明する。時刻T1で撮像された画像を画像I1、時刻T2で撮像された画像を画像I2とする。時刻T1<時刻T2とする。オプティカルフロー算出部21は画像I1を任意の大きさに区分する。任意の大きさは特に限定されないが、ここでは画像の横方向の大きさをN画素、画像の縦方向の大きさをM画素とする。任意の大きさはN×Mとなる。オプティカルフロー算出部21は画像I1の領域(N×M)と、画像I2の領域(N×M)とを比較する。比較方法として、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Absolute Difference)、ZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)などが知られている。これらの方法は周知技術であるため説明は省略する。オプティカルフロー算出部21は、過去の画像上の特徴点に対応する実空間中の対象と同一の対象に対応する現在の画像上の特徴点を、関連する特徴点として検出する。オプティカルフロー算出部21は、互いに関連する、過去の画像上の特徴点と現在の画像上の特徴点との組み合わせをオプティカルフローとして算出する。
【0016】
距離算出部22は、互いに関連する過去の画像上の特徴点と現在の画像上の特徴点の視差(ずれ量)から、カメラ10から特徴点に対応する物体までの距離を算出する。換言すれば、距離算出部22は、自車両から特徴点に対応する物体までの距離を算出する。距離算出部22は、互いに関連する過去の画像上の特徴点と現在の画像上の特徴点との視差から、これらの特徴点に対応する実空間中の3次元座標を算出する。なお距離算出部22はレーダまたはライダをカメラ10と組み合わせて物体までの距離を算出してもよい。
【0017】
挙動算出部23は、自車両の3軸並進運動及び3軸回転運動を算出する。3軸並進運動は、自車両の前後方向、車幅方向、上下方向の運動である。3軸回転運動は、ロール軸、ピッチ軸及びヨー軸を含む3軸回りの回転運動である。これらの運動は車輪速センサ、加速度センサ、回転センサなどを用いて算出される。あるいはこれらの運動は画像を用いて算出される。画像を用いた算出方法として、非特許文献1「KITT,Bernd;GEIGER,Andreas;LATEGAHN,Henning.Visual odometry based on stereo image sequences with ransac-based outlier rejection scheme.In:2010 ieee intelligent vehicles symposium.IEEE,2010.p.486-492.」が知られている。
【0018】
静止物領域設定部24は、オプティカルフロー算出部21によるオプティカルフローと、距離算出部22による算出結果と、挙動算出部23による算出結果を組み合わせて、自車両の挙動を排除した3次元移動量(3次元運動ベクトル)を算出する。静止物領域設定部24は、算出した絶対移動量と閾値とを比較する。移動量が閾値より大きい場合、その領域には他車両などの移動物体が存在する領域と判定される。静止物領域設定部24は画像から移動物体が存在する領域を除外する。これにより移動物体が存在しない静止物領域が設定される。
【0019】
画像選択部25はオプティカルフロー算出部21によって算出されたオプティカルフローの大きさに応じて複数の画像の中から合成に用いる画像を選択する。
【0020】
輝度算出部26は所定の領域に対してオプティカルフローに直交する方向の輝度を算出する。
【0021】
画像合成部27は輝度算出部26によって算出された輝度がもっとも高い画素を用いて1枚の画像を生成する。画像合成部27は生成した画像を道路構造物認識部28に出力する。
【0022】
道路構造物認識部28は、画像合成部27から入力された画像を用いて道路構造物を認識する。本実施形態において道路構造物とは路面標示を意味する。路面標示とは法律、法令、または規則などで定められている標示であって、代表的には走行区分線(いわゆる白線)、進行方向を示す矢印線、安全地帯又は路上障害物接近に接近しつつあることを示す線などである。
【0023】
車両制御部29は、道路構造物認識部28によって認識された路面標示に基づいてステアリングアクチュエータ12、アクセルペダルアクチュエータ13、及び、ブレーキアクチュエータ14を制御する。
【0024】
次に
図2を参照して静止物領域の設定方法の一例を説明する。
【0025】
図2に示す画像30は、自車両が走行しているときにカメラ10によって撮像された画像である。
図2に示すシーンにおいて、自車両は2車線道路のうち右側車線を走行している。自車両から見て自車両が走行する車線上の前方に他車両が存在する。また隣接する対向車線にも他車両が存在する。静止物領域設定部24は上述した方法で他車両(移動物体)が存在する領域40を画像30から除外して静止物領域を設定する。
【0026】
【0027】
画像選択部25はオプティカルフローの大きさに応じて複数の画像の中から合成に用いる画像を選択する。
図3の例では複数の画像の枚数は、画像30、30a~30oの16枚である。
図3の画像30に示すように、自車両の周囲の路面標示はかすれている。具体的には、右側車線と左側車線を区分する走行区分線はかすれており、自車両が走行する車線上の矢印線もかすれており、自車両右側の線(安全地帯又は路上障害物接近に接近しつつあることを示す線)もかすれている。このように道路上の路面標示がかすれている場合がある。自動運転において路面標示の重要性はいうまでもなく、したがって路面標示がかすれている場合、コントローラ20が路面標示を認識可能な程度に画像処理することが求められる。
【0028】
走行中に同じ風景を異なるタイミングで高速で撮像した場合、風景は自車両の進行方向とは逆方向に流れるため、同じ観測点においてある画像では路面標示がかすれている一方で、別の画像では路面標示が鮮明である場合がある。そこで本実施形態では複数の画像の中から路面標示が鮮明に映っている画像を選択する。ここで路面標示が鮮明に映っている、というのはある画像の一部において見受けられることが通常である。画像30を格子状に細かく分解(例えば各画素あるいは縦横数画素の領域で分解)した場合を考える。この場合、分解した一つ一つの小領域において、路面標示がもっとも鮮明に映っている画像を選択することが好ましい。よって本実施形態ではある小領域において路面標示がもっとも鮮明に映っている画像を選択する。ただし合成に用いられるのは、その画像全部ではなく、あくまで路面標示がもっとも鮮明に映っている一部分の画素データである。よって路面標示がもっとも鮮明に映っている画像を選択するとは、より詳細には16枚の画像の中から、ある一部分において路面標示がもっとも鮮明に映っている画像を選択することを意味する。小領域の分解方法は特に限定されないが、路面標示の一部を認識しうる程度の大きさに分解すればよい。
【0029】
オプティカルフローは、通常自車両に近いほど長く、自車両から遠いほど短い。これは自車両に近いほど風景の変化が早く、自車両から遠いほど風景の変化が遅いからである。画像選択部25はオプティカルフローが長いほど多くの画像を選択する。一方画像選択部25はオプティカルフローが短いほど選択する画像を少なくする。
図3に示すように、画像30を上半分の領域R1と下半分の領域R2に分けた場合を考える。この場合、領域R1のオプティカルフローは領域R2のオプティカルフローより短い。よって
図3に示すように領域R1では画像が1つ飛びで間引きされる形で選択される。一方領域R2では16枚のすべての画像が選択される。領域R1で間引きする理由は、風景の変化が遅いから路面標示が鮮明に映っている部分が検出されにくいことと、演算処理負荷を軽減するためである。一方で領域R2で16枚のすべての画像を選択する理由は、風景の変化が早いから路面標示が鮮明に映っている部分が検出されやすいためである。領域R1では8枚の画像の中からそれぞれの小領域において路面標示がもっとも鮮明に映っている画像が選択される。領域R2では16枚の画像の中からそれぞれの小領域において路面標示がもっとも鮮明に映っている画像が選択される。なお8枚、16枚というのは例示であってこれに限定されない。オプティカルフローが長い領域ほど多くの画像が選択されれば足りる。
【0030】
次の
図4を参照して、ある一部分において路面標示がもっとも鮮明に映っている画像を選択する方法の一例を説明する。
【0031】
図4の符号41で示される小領域41が上述した小領域に相当する。輝度算出部26はこの小領域41に対してオプティカルフローに直交する方向の輝度を算出する。より詳しくは、輝度算出部26は画像30、30a~30oの16枚すべての画像の小領域41に対して輝度を算出する。路面標示が鮮明に映っているほど輝度が高くなる。
図5に示すように画像30、30a~30oのうち、小領域41において、もっとも輝度が高い画像が画像30eだったと仮定する。この場合画像合成部27は小領域41については画像30eの画素50を用いる。他の小領域についても同様の処理が繰り返される。画像合成部27は、領域R1のそれぞれの小領域については、8枚の画像の中からもっとも輝度が高い画素を選択し、領域R2のそれぞれの小領域については、16枚の画像の中からもっとも輝度が高い画素を選択する。そして画像合成部27はそれぞれの小領域について選択した画素を用いて1枚の画像を生成する。このように生成された画像は、それぞれの小領域においてもっとも輝度が高い画素で構成される。なおそれぞれの小領域においてもっとも輝度が高い画素が合成される元になる画像は、16枚のうちもっとも先に撮像された画像、すなわち画像30である。
図6に示すように画像30のそれぞれの小領域においてもっとも輝度が高い画素が合成された結果、合成画像60が生成される。合成画像60から分かるように、画像30と比較して、右側車線と左側車線を区分する走行区分線、自車両が走行する車線上の矢印線、及び自車両右側の線(安全地帯又は路上障害物接近に接近しつつあることを示す線)が鮮明になっている。これにより路面標示の認識精度が向上する。
【0032】
上述した例では自車両が直線走行している場合を想定している。走行中には右折あるいは左折する場合がある。自車両が右折あるいは左折する場合、その前後で画像に大きな変化が生じる。このため自車両が右折あるいは左折するシーンにおいて本発明を適用する場合、自車両が右折あるいは左折するまでの画像を用いればよい。例えば
図3において、画像30gが撮像されたタイミングで自車両が右折した場合、画像30、30a~30gまでの画像を用いればよい。なお自車両が右折あるいは左折したか否かはヨーレートセンサ11から取得したヨーレートを用いて判断すればよい。
【0033】
また、それぞれの小領域において、もっとも輝度が高い画像が選択されると説明したがこれに限定されない。所定以上の輝度を有する画像が選択されてもよい。所定以上の輝度とはコントローラ20が認識可能な輝度であればよい。
【0034】
次に、
図7のフローチャートを参照して、路面標示認識装置1の一動作例を説明する。
【0035】
ステップS101において、自車両に搭載されたカメラ10によって自車両の周囲が異なるタイミングで撮像される。処理はステップS103に進みコントローラ20はヨーレートセンサ11から自車両のヨーレートを取得する。
【0036】
処理はステップS105に進み、静止物領域設定部24は画像30から移動物体が存在する領域40を除外する(
図2参照)。これにより移動物体が存在しない静止物領域が設定される。
【0037】
処理はステップS107に進み、画像選択部25はオプティカルフローが長いほど多くの画像を選択する。一方画像選択部25はオプティカルフローが短いほど選択する画像を少なくする。処理はステップS109に進み、輝度算出部26はこの小領域41に対してオプティカルフローに直交する方向の輝度を算出する。処理はステップS111に進み、画像合成部27は領域R1のそれぞれの小領域については、8枚の画像の中からもっとも輝度が高い画素を選択し、領域R2のそれぞれの小領域については、16枚の画像の中からもっとも輝度が高い画素を選択する(
図3~5参照)。そして画像合成部27はそれぞれの小領域について選択した画素を用いて1枚の画像を生成する(
図6参照)。
【0038】
処理はステップS113に進み、道路構造物認識部28は画像合成部27から入力された画像を用いて路面標示を認識する。処理はステップS115に進み、車両制御部29は道路構造物認識部28によって認識された路面標示に基づいてステアリングアクチュエータ12、アクセルペダルアクチュエータ13、及びブレーキアクチュエータ14を制御する。
【0039】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る路面標示認識装置1によれば、以下の作用効果が得られる。
【0040】
路面標示認識装置1は自車両の周囲を異なるタイミングで複数回撮像するカメラ10と、カメラ10によって異なるタイミングで撮像された複数の画像を処理するコントローラ20とを備える。コントローラ20は複数の画像を用いてオプティカルフローを算出し、算出されたオプティカルフローが長い場合、短い場合と比較して多くの画像を複数の画像の中から選択する。これは例えば
図3に示すようにオプティカルフローが短い領域R1では画像が1つ飛びで間引きされる形で選択され、一方オプティカルフローが長い領域R2では16枚のすべての画像が選択されることを意味する。コントローラ20は選択された画像の中から所定以上の輝度を有する画素を選択し、選択された画素を用いて1枚の合成画像を生成する。そしてコントローラ20は生成された合成画像を用いて路面標示を認識する。
図6に示すように合成画像60において合成される前の画像30と比較して右側車線と左側車線を区分する走行区分線、自車両が走行する車線上の矢印線、及び自車両右側の線(安全地帯又は路上障害物接近に接近しつつあることを示す線)が鮮明になっている。このように本実施形態によれば路面標示の認識精度が向上する。
【0041】
またコントローラ20はオプティカルフローを用いて画像から移動物体が存在する領域40を除外する(
図2参照)。これにより移動物体の影響が排除される。
【0042】
またコントローラ20はオプティカルフローに直交する方向に対して画像の輝度を算出する。これにより自車両の走行に影響を及ぼす路面標示を合成の対象とすることが可能となる。
【0043】
なおコントローラ20は自車両の進行方向に直交する方向に対して画像の輝度を算出してもよい。これにより自車両の走行に影響を及ぼす路面標示を合成の対象とすることが可能となる。
【0044】
またコントローラ20は選択された画像の中からもっとも輝度が高い画素を選択する。このようなもっとも輝度が高い画素を用いることにより合成後の画像における路面標示が鮮明になる。
【0045】
なおコントローラ20は複数の画像の中からヨーレートに基づいて画像を選択してもよい。具体的にはコントローラ20は自車両が右折あるいは左折したと判断された場合、自車両が右折あるいは左折するまでの画像を選択し、それ以降の画像は無視してもよい。これにより自車両が右折あるいは左折した場合における画像の変化の影響を低減できる。
【0046】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0047】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0048】
1 路面標示認識装置
10 カメラ
11 ヨーレートセンサ
12 ステアリングアクチュエータ
13 アクセルペダルアクチュエータ
14 ブレーキアクチュエータ
20 コントローラ
21 オプティカルフロー算出部
22 距離算出部
23 挙動算出部
24 静止物領域設定部
25 画像選択部
26 輝度算出部
27 画像合成部
28 道路構造物認識部
29 車両制御部